特許第6548797号(P6548797)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6548797-アンジオテンシンI変換酵素活性阻害剤 図000002
  • 特許6548797-アンジオテンシンI変換酵素活性阻害剤 図000003
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6548797
(24)【登録日】2019年7月5日
(45)【発行日】2019年7月24日
(54)【発明の名称】アンジオテンシンI変換酵素活性阻害剤
(51)【国際特許分類】
   A61K 35/10 20150101AFI20190711BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20190711BHJP
   A61P 9/12 20060101ALI20190711BHJP
   A23L 33/10 20160101ALI20190711BHJP
【FI】
   A61K35/10
   A61P43/00 111
   A61P9/12
   A23L33/10
【請求項の数】3
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2018-159754(P2018-159754)
(22)【出願日】2018年8月10日
【審査請求日】2019年3月8日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】317006487
【氏名又は名称】琥珀バイオテクノロジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000800
【氏名又は名称】特許業務法人創成国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】武田 令子
(72)【発明者】
【氏名】榮岩 春奈
(72)【発明者】
【氏名】山本 卓也
(72)【発明者】
【氏名】山野 幹夫
【審査官】 六笠 紀子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−057556(JP,A)
【文献】 中国特許出願公開第101468188(CN,A)
【文献】 国際公開第2018/212362(WO,A1)
【文献】 特開2003−171265(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 35/10
A61K 31/194
A61P 9/12
WPI
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
抽出溶媒が含水エタノール(含水率:1質量%〜60質量%)である琥珀抽出物を含有することを特徴とするアンジオテンシンI変換酵素活性阻害剤。
【請求項2】
請求項1記載のアンジオテンシンI変換酵素活性阻害剤を配合してなるアンジオテンシンI変換酵素活性阻害用経口投与組成物。
【請求項3】
態様が医薬品、医薬部外品、飲食物又は食品添加物である請求項2に記載のアンジオテンシンI変換酵素活性阻害用経口投与組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は琥珀抽出物を含むアンジオテンシンI変換酵素活性阻害剤に関する。
【背景技術】
【0002】
琥珀とは、主にマツ属植物の樹脂が長期間地下に埋没し凝結してできた化石であり、中国では古くからその粉末が漢方薬として用いられている。主に樹脂、精油、コハク酸等を含み、エタノールやジエチルエーテルあるいはベンゼンに少量溶ける(例えば、非特許文献1を参照)。
【0003】
日本では宝飾品としてよく知られているが、近年では、粉末や抽出物を化粧品や健康食品に用いる例が増えている。例えば、琥珀粉末を化粧品に配合し、肌感触を改善する技術(例えば、特許文献1を参照)、琥珀抽出物を皮膚外用剤に配合する技術(例えば、特許文献2、特許文献3を参照)、琥珀抽出物中の美白効果を利用する技術(例えば、特許文献4、特許文献5を参照)、琥珀抽出画分中の皮膚ターンオーバー促進因子を利用する技術(例えば、特許文献6を参照)、琥珀抽出物中の皮膚のスキンファーミング効果を利用する技術(例えば、特許文献7を参照)、琥珀抽出画分中のヒアルロン酸産生促進因子を利用する技術(例えば、特許文献8を参照)、琥珀抽出画分中の血管新生促進因子を利用する技術(例えば、特許文献9を参照)などが知られている。
【0004】
このように、琥珀には様々な物理化学的、生物学的効果が知られており、非常に有用な素材として様々な分野で用いられてきており、無限の可能性を秘める素材として期待されている。
【0005】
血圧を調節するメカニズムのひとつにレニン−アンジオテンシン系が知られている。アンジオテンシンI変換酵素(ACE)は、このレニン−アンジオテンシン系において、アンジオテンシンIから血圧上昇物質であるアンジオテンシンIIを生成する酵素であり、高血圧症を防ぐうえでキーファクターであると考えられている。最近では高血圧症の予防、改善を目的として特定保健用食品や機能性表示食品のような機能性食品が上市されているが、その中でもACE活性阻害作用を有する食品成分の研究が多くなされている。
【0006】
このような作用を示すものとしては、メチル化カテキン(例えば、特許文献10を参照)、タンパク質分解産物などのペプチド(例えば、特許文献11、特許文献12を参照)などが知られているが、より実効性の高い、新規な素材が継続的に市場で求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2004−83478号公報
【特許文献2】特開H9−227334号公報
【特許文献3】特開2001−131048号公報
【特許文献4】特開2010−235551号公報
【特許文献5】特開2012−240967号公報
【特許文献6】特開2007−314522号公報
【特許文献7】特開2008−189669号公報
【特許文献8】特開2008−266260号公報
【特許文献9】特開2011−256164号公報
【特許文献10】特開2011−79789号公報
【特許文献11】特開2009−51813号公報
【特許文献12】特開2008−297208号公報
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】中薬大辞典 第二巻 上海科学技術出版社(江蘇新医学院「中薬大辞典」編集部)小学館編)公知文献1参照
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、日常的な摂取が簡便である飲食品に組み込むことができるACE活性阻害剤を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
このような状況を鑑みて、本発明者らは鋭意研究した結果、琥珀抽出物にこれまで知られていなかったACE活性阻害効果を見出し、本発明を完成させるに至った。即ち、本発明は、以下に示すとおりである。
<1>抽出溶媒が含水エタノール(含水率:1質量%〜60質量%)である琥珀抽出物を含有することを特徴とするアンジオテンシンI変換酵素活性阻害剤。
<2><1>に記載のアンジオテンシンI変換酵素活性阻害剤を配合してなるアンジオテンシンI変換酵素活性阻害用経口投与組成物。
>態様が医薬品、医薬部外品、飲食物又は食品添加物である<>に記載のアンジオテンシンI変換酵素活性阻害用経口投与組成物。
【発明の効果】
【0011】
本発明の琥珀抽出物を含有することを特徴とするACE活性阻害剤は、血圧上昇物質であるアンジオテンシンIIの生成を阻害することができる
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】製造例1の琥珀抽出物によるアンジオテンシンI変換酵素活性阻害を示すグラフ
【0013】
図2】製造例2の琥珀抽出物服用による拡張期血圧、収縮期血圧の降下促進を示すグラフ
【発明を実施するための形態】
【0014】
<本発明の琥珀抽出物>
本発明のACE活性阻害剤は、有効成分として琥珀抽出物を含有することを特徴とする。ここで、本発明で言う琥珀抽出物とは、琥珀そのもの、琥珀を粉砕、細切等加工した加工物、琥珀又はその加工物に溶媒を加え抽出した抽出物、抽出物から溶媒を除去した抽出物の溶媒除去物、それらの精製物等が例示でき、これらの内では抽出物又はその溶媒除去物が特に好ましい。又、本発明で用いる琥珀の産地は特に限定されることはないが、産出量、埋蔵量を考慮し、ロシア・カリーニングラード産のものが好ましく例示できる。
【0015】
抽出物の溶媒としては、例えば、水、メタノールやエタノール、1,3−ブタンジオール、プロピレングリコール、グリセリン等のアルコール類、酢酸エチルや蟻酸メチル等のエステル類、アセトニトリル等のニトリル類、ジエチルエーテルやテトラヒドロフラン等のエーテル類、クロロホルムや塩化メチレン等のハロゲン化炭化水素類、アセトンやメチルエチルケトン等のケトン類等が例示でき、これらの1種又は2種以上を単独あるいは混合して用いればよい。これらの内好ましいものは水又はアルコール類、より好ましいものは含水アルコールである。さらにアルコールとしてはエタノールが好ましい。含水率は1質量%〜60質量%が好ましく、10質量%〜50質量%がさらに好ましい。これより高くても低くても、抽出効率が悪くなる場合が存する。
【0016】
抽出の方法は、例えば琥珀の粉砕物に2〜20倍量の溶媒を加え、室温であれば数日間、沸点付近の温度であれば数時間浸漬すればよい。その後濾過等によって不溶物を除去し、減圧濃縮等すればよい。又、これをシリカゲル、オクタデシルシリル化シリカゲル、イオン交換樹脂等を充填したカラムでカラムクロマトグラフィーによって精製してもよい。
【0017】
<製造例1>
ロシア・カリーニングラード産の琥珀の粉末100gを50%エタノールで抽出し、それを減圧濃縮、凍結乾燥し、50%エタノール抽出物8gを得た。
【0018】
本発明の抽出物を含む飲料の例としては、茶飲料、コーヒー飲料、清涼飲料、酒、乳飲料、炭酸飲料、健康飲料、栄養ドリンク、スポーツドリンク等とこれら飲料の濃縮原液及び調製粉末等であり、食品の例としては、ガム、キャンディー、ゼリー、錠菓、健康食品、栄養補給食品、サプリメント等である。
【0019】
本発明の抽出物を高血圧症の予防薬等の医薬として用いる場合には、散剤、顆粒剤、錠剤、カプセル剤、液剤、注射剤等の形態で提供される。本発明の抽出物をそのまま、あるいは水等で希釈して、経口的に投与できる。もしくはこれを公知の医薬用担体と共に製剤化することにより調製される。例えば、本発明の抽出物をシロップ剤などの経口液状製剤として、又はエキス、粉末などに加工して、薬学的に許容される担体と配合し、錠剤、カプセル剤、顆粒剤、散剤などの経口固形製剤として投与できる。薬学的に許容できる担体としては、製剤素材として慣用の各種有機あるいは無機担体物質が用いられ、固形製剤における賦形剤、滑沢剤、結合剤、崩壊剤、液状製剤における溶剤、賦形剤、懸濁化剤、結合剤などとして配合される。また、必要に応じて、防腐剤、抗酸化剤、着色料、甘味剤などの製剤添加物を用いることもできる。
【0020】
本発明の抽出物を含む飲食品又は医薬組成物には、本発明の抽出物を任意の濃度で含ませることができる。好ましくは、本発明の抽出物を飲食品又は医薬組成物全量に対して、0.01〜50質量%の濃度で含み、より好ましくは0.05〜20質量%の濃度で含む。
【0021】
また、有効な用量は、患者の年齢及び体重、疾病の種類及び重篤度並びに投与の経路により適宜決定することができる。
【実施例】
【0022】
以下、実施例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【実施例1】
【0023】
ACE活性阻害試験
ACE Kit−WST(同仁化学研究所社製)を用いて、以下の順序に従ってACE活性を測定した。
(1)製造例1の琥珀抽出物10mgをジメチルスルホキシド1mlで溶解し、遠心後の上澄みを順次純水で5倍希釈していきそれぞれサンプル溶液とした。
(2)96ウェルプレートの各ウェルに、サンプル溶液(sample)もしくは純水(blank1、blank2)を20μlずつ入れる。
(3)各ウェルに基質バッファーを20μlずつ加える。
(4)blank2のウェルに純水を20μlずつ加える。
(5)サンプル溶液を入れたウェルとblank1のウェルに酵素溶液を20μlずつ加え、37℃で60分間インキュベートする。
(6)各ウェルに発色液を200μlずつ加え、室温で10分間インキュベートする。
(7)プレートリーダーで450nmの吸光度を測定する。
(8)ACE阻害活性(阻害率%)は下記の計算式により算出する。
ACE阻害活性値(阻害率%)=[(Ablank1−Asample)/(Ablank1−Ablank2)]x100
【0024】
図1の結果より、本発明の琥珀抽出物はACE活性を濃度依存的に阻害することが確認された。
【実施例2】
【0025】
琥珀抽出物の血圧に対する影響
血圧が高めな被験者10名に、製造例1の琥珀抽出物100mgを4週間1日1回服用してもらい、服用前(0W)と服用2週間後(2W)及び4週間後(4W)に血圧(収縮期及び拡張期)を測定した。
【0026】
図2の結果より、本発明の琥珀抽出物は収縮期血圧、拡張期血圧ともに降下を促進することが確認された。
【要約】      (修正有)
【課題】日常的な摂取が簡便である飲食品に組み込むことができるACE活性阻害剤を提供する。
【解決手段】アンジオテンシンI変換酵素活性阻害剤は、琥珀抽出物を有効成分として含有することを特徴とする。
【選択図】図1
図1
図2