特許第6548810号(P6548810)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6548810
(24)【登録日】2019年7月5日
(45)【発行日】2019年7月24日
(54)【発明の名称】変換体による一次光の波長変換
(51)【国際特許分類】
   F21V 9/32 20180101AFI20190711BHJP
   F21V 7/26 20180101ALI20190711BHJP
   F21S 41/176 20180101ALI20190711BHJP
   F21S 45/10 20180101ALI20190711BHJP
   F21V 23/00 20150101ALI20190711BHJP
   F21V 25/04 20060101ALI20190711BHJP
   G02B 5/20 20060101ALI20190711BHJP
   F21W 102/13 20180101ALN20190711BHJP
   F21W 102/30 20180101ALN20190711BHJP
   F21W 103/20 20180101ALN20190711BHJP
   F21W 103/55 20180101ALN20190711BHJP
   F21Y 115/10 20160101ALN20190711BHJP
   F21Y 115/30 20160101ALN20190711BHJP
【FI】
   F21V9/32
   F21V7/26
   F21S41/176
   F21S45/10
   F21V23/00 111
   F21V25/04
   G02B5/20
   F21W102:13
   F21W102:30
   F21W103:20
   F21W103:55
   F21Y115:10
   F21Y115:30
【請求項の数】10
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2018-502112(P2018-502112)
(86)(22)【出願日】2016年6月2日
(65)【公表番号】特表2018-528576(P2018-528576A)
(43)【公表日】2018年9月27日
(86)【国際出願番号】EP2016062481
(87)【国際公開番号】WO2017012763
(87)【国際公開日】20170126
【審査請求日】2018年3月14日
(31)【優先権主張番号】102015213460.1
(32)【優先日】2015年7月17日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】512288684
【氏名又は名称】オスラム ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】OSRAM GmbH
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ペーター フォークト
(72)【発明者】
【氏名】アンドレ ナウエン
【審査官】 竹中 辰利
(56)【参考文献】
【文献】 特開2001−097319(JP,A)
【文献】 特開2010−118267(JP,A)
【文献】 国際公開第2012/124522(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F21V 9/32
F21S 41/176
F21S 45/10
F21V 7/26
F21V 23/00
F21V 25/04
G02B 5/20
F21W 102/13
F21W 102/30
F21W 103/20
F21W 103/55
F21Y 115/10
F21Y 115/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
・一次光(P)を照射するために設けられた被照射面(3)を有する、波長変換発光材料からなる基体(2)と、
・前記被照射面(3)の外側で前記基体(2)に設けられた少なくとも1つの導電性の伝導経路(4;12,13;22)と
有し、
前記基体(2)は、発光材料板であり、前記発光材料板の被照射面(3)は、前記基体(2)の平坦な側の中央に位置し、
前記被照射面(3)を有する前記平坦な側の縁部(A)の少なくとも一部に沿って、少なくとも1つの縁部側の伝導経路(4;12;22)が延在しており、
前記縁部側の伝導経路(22)は、縁部側に設けられた少なくとも1つの機械的な事前損傷箇所(K)に沿って延在している、変換体(1;11;21)。
【請求項2】
前記縁部側の伝導経路(4;12)は、前記被照射面(3)を有する前記平坦な側の前記縁部(A)の実質的に全体に沿って延在している、
請求項記載の変換体(1;11)。
【請求項3】
前記縁部側の伝導経路(12)と前記被照射面(3)との間に少なくとも1つの別の伝導経路(13)が延在している、
請求項または記載の変換体(11)。
【請求項4】
前記縁部側の伝導経路(12)に類似した形状で、前記縁部側の伝導経路(12)に対して距離を置いて、少なくとも1つの別の伝導経路(13)が延在している、
請求項記載の変換体(11)。
【請求項5】
前記基体(2)は、波長変換セラミックから形成されている、
請求項1からまでのいずれか1項記載の変換体(1;11;21)。
【請求項6】
前記導電性の伝導経路(4;12,13;22)は、導体路、とりわけアルミニウムからなる導体路である、
請求項1からまでのいずれか1項記載の変換体(1;11;21)。
【請求項7】
前記導電性の伝導経路は、前記基体(2)に埋め込まれた、とりわけタングステンを含むワイヤである、
請求項1からまでのいずれか1項記載の変換体。
【請求項8】
請求項3または4記載の変換体(11)と、前記少なくとも1つの伝導経路(4;12,13;22)に接続された評価装置(G)とを有する変換装置(E1;E2;E3)において、
前記評価装置(G)は、少なくとも1つの伝導経路(4;12,13;22)の電気的特性の変化に基づいて前記基体(2)内の亀裂を検出するように構成され、
前記評価装置(G)は、少なくとも1つの伝導経路(4;12,13;22)の切断に基づいて前記基体(2)内の亀裂を検出するように構成され、
前記評価装置(G)は、
・前記縁部側の伝導経路(12)の切断を検出すると、少なくとも1つの第1のアクションをトリガし、
・少なくとも1つの別の伝導経路(13)の切断を検出すると、前記基体(2)への照射のスイッチオフをトリガする
ように構成されている、
変換装置(E1;E2;E3)。
【請求項9】
前記変換装置(E1;E2;E3)は、照明装置(B1;B2;B3)の一部である、
請求項記載の変換装置(E1;E2;E3)。
【請求項10】
・請求項8または9記載の少なくとも1つの変換装置(E1;E2;E3)と、
・対応する前記基体(2)の前記被照射面(3)に照射を行うための少なくとも1つの半導体一次光源(L)と、
を有する照明装置(B1;B2;B3)において、
・前記評価装置(G)は、前記少なくとも1つの半導体一次光源(L)に接続されている、
照明装置(B1;B2;B3)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一次光を照射するために設けられた被照射面を有する、波長変換発光材料からなる基体を有する変換体に関する。本発明は、少なくとも1つの変換体と評価装置とを有する変換装置であって、前記評価装置は、基体内の亀裂を検出するように構成されている、変換装置にも関する。本発明はさらに、少なくとも1つの変換装置と、対応する基体の被照射面に照射を行うための少なくとも1つの半導体一次光源とを有する照明装置に関する。本発明は、例えば基体としての波長変換セラミック体に適用することができる。本発明は、例えばLARP装置、とりわけ車両用照明装置(例えばヘッドライト)、または舞台照明もしくは効果照明のような特殊照明に適用することができる。
【0002】
所定の一次光波長の一次光(例えば青色光)を波長変換セラミック体に照射し、そこで一次光をより長い波長の光(例えば黄色光)に少なくとも部分的に変換して再び放射することが公知である。セラミック体は、(例えば独国特許出願公開第102007010719号明細書(DE 10 2007 010 719 A1)に開示されているように)ガーネット構造を有する希土類ドープされたセラミックから形成することができ、典型的には板(プレート)の形状である。セラミック体は、典型的にはその中央に一次光が照射される。一次光がレーザ光であり、一次光を生成するレーザからセラミック体が離間されている場合には、LARP(“Laser Activated Remote Phosphor”レーザ励起式リモートフォスファー)装置とも呼ばれる。
【0003】
セラミック体に照射が行われると、被照射面において顕著な局所的な温度上昇が生じ、この温度上昇は、セラミック体において熱的に誘導される応力の発生をもたらし、場合によっては亀裂形成による波長変換セラミック体の損傷をもたらす可能性がある。亀裂形成の危険性は、一次光のスイッチオンとスイッチオフの繰り返しによって時間の経過と共に増加するおそれがある。なぜなら、これに関連して熱的に誘導される交番負荷は、緩慢な亀裂成長をもたらす可能性があるからである。
【0004】
これまで、波長変換セラミック体の亀裂は、セラミック体から放射された光を面倒にも光学的に分析することによって検出可能であった。
【0005】
本発明の課題は、先行技術の欠点を少なくとも部分的に克服することであり、とりわけ、亀裂形成による発光材料体の損傷を検出することができる簡単かつ安価な手段を提供することである。
【0006】
上記の課題は、独立請求項に記載の特徴によって解決される。好ましい実施形態は、とりわけ従属請求項から得ることができる。
【0007】
上記の課題は、一次光を照射するために設けられた被照射面を有する、波長変換発光材料からなる基体と、前記被照射面の外側で前記基体に設けられた少なくとも1つの導電性の伝導経路とを有する、変換体によって解決される。
【0008】
この変換体は、基体を通る亀裂が、この基体に固定的に接続された電気的な伝導経路も通って伝播するという利点をもたらす。なぜなら、基体に形成された亀裂のエッジは、このエッジに隣接する電気的な伝導経路も引っ張り、または引き裂き、これによってこの伝導経路に損傷を与えるからである。伝導経路の損傷は、電気的な評価装置によって簡単かつ安価に、かつ特に正確に検出することができる。したがって、伝導経路の損傷から、基体の損傷を推測することができる。
【0009】
この場合、基体に照射が行われると、基体の被照射面は、熱的に誘導される半径方向の圧縮を受け、この圧縮によってセラミック体が、とりわけ被照射面の外側においても半径方向外側に押圧されるということが十分に利用される。これによって今度は、被照射面の周りに周方向に応力が形成され、この応力によって亀裂を引き起こすことができる。亀裂の伝播方向は、基体の形状および基体の応力分布から良好に予測可能であるので、亀裂の進展もまた良好に予測可能である。少なくとも1つの伝導経路を適切に敷設することにより、少なくとも1つの伝導経路の対応する損傷によって亀裂形成を高確率でも検出することが可能となる。
【0010】
変換体は、基体と、この基体に固定的に接続された少なくとも1つの導電性の伝導経路とを有するとりわけ一体的な(すなわち破壊せずには分割できない)本体であると理解される。
【0011】
伝導経路は、とりわけ実質的に一次元で広がっている電気的な線路であると理解され、すなわち、この線路の長手方向の長さは、幅および高さよりも格段に(とりわけ少なくとも2倍、とりわけ少なくとも1桁)大きくなっている。伝導経路は、例えば基体に組み込まれたワイヤ、または基体上に表面的に設けられた導体路とすることができる。
【0012】
しかしながら、伝導経路は、基本的には任意の形状を有することができ、一般的には伝導面とも呼ぶことができる。このことは、これから発生する可能性のある亀裂形成の場所が良好に判明している場合にとりわけ有効である。
【0013】
1つの発展形態では、基体は、脆性の本体である。この基体は、塑性変形を伴わずにまたはわずかな塑性変形しか伴わずに、すなわち脆性破壊によって、自身の弾性限界の近傍で壊れる。
【0014】
基体は、発光材料を含むか、または発光材料からなり、したがって、入射した一次光を異なる波長の二次光に少なくとも部分的に変換またはコンバートすることができる。複数の発光材料が存在する場合には、これらの発光材料は、互いに異なる波長の二次光を生成することができる。二次光の波長は、一次光の波長より長くてもよいし(いわゆる「ダウンコンバージョン」)、または一次光の波長より短くてもよい(いわゆる「アップコンバージョン」)。例えば青色の一次光を、発光材料によって緑色、黄色、橙色、または赤色の二次光に変換することができる。部分的のみの波長変換または波長コンバージョンの場合には、二次光と、変換されていない一次光との混合光が基体から放射され、この混合光を有効光として使用することができる。例えば白色の有効光を、変換されていない青色の一次光と黄色の二次光との混合光から生成してもよい。しかしながら、有効光において有効光がもはや存在しないか、または無視できる程度の割合でしか存在しないような完全変換も可能である。変換の程度は、例えば基体の厚さおよび/または発光材料濃度に依存する。複数の発光材料が存在する場合には、1つの一次光からそれぞれ異なるスペクトル組成の複数の二次光成分、例えば黄色の二次光および赤色の二次光を生成することができる。例えば赤色の二次光を、例えばいわゆる「温白色」のように、より暖かみのある色調を有効光に付与するために使用してもよい。複数の発光材料が存在する場合には、少なくとも1つの発光材料は、二次光を再び波長変換するために、例えば緑色の二次光を赤色の二次光に変換するために適していてもよい。二次光から再び波長変換されたこのような光を、「三次光」とも呼んでもよい。
【0015】
1つの実施形態では、前記基体は、発光材料板であり、前記発光材料板の被照射面は、1つの平坦な側に位置する。前記被照射面は、とりわけ平坦な側の中央に位置することができる。中央という配置は、とりわけ被照射面が発光材料板の縁部にまで達しておらず、全ての側でこの縁部から離間されている配置であると理解される。
【0016】
さらなる実施形態では、前記被照射面を有する前記平坦な側の(自由)縁部の少なくとも一部または一区分に沿って、少なくとも1つの伝導経路(以下では一般性を制限することなく「縁部側の伝導経路」と呼ばれる)が延在している。このことは、基体内の亀裂形成を特に早期に検出することができるという利点をもたらす。この場合、被照射面が加熱されると、基体の中央での半径方向の圧縮によって自由縁部で周方向に引張応力が形成され、この引張応力が、そこで場合によって設けられている事前損傷箇所を、基板の内部よりも容易に引き裂いて開けることができるか、またはさらに進展させることができるという認識が十分に利用される。さらに、亀裂開始箇所(ノッチ、初期亀裂など)は、大抵の場合、基体内よりも縁部においてより頻繁に発生する。したがって亀裂は、まず始めに基体の縁部に形成されることが多い。
【0017】
縁部に「沿って」という配置は、伝導経路が縁部に直接的に隣接していることを含み、場合によってはそれどころか、縁部に隣接している縁部側面または狭幅側面を覆っていることを含むことができる。伝導経路がワイヤである場合には、縁部に直接的に隣接しているという配置は、ワイヤが製造技術的に実質的に可能な限り縁部の近傍に配置されるようなワイヤの配置を意味することができる。
【0018】
縁部に「沿って」という配置は、伝導経路が縁部からわずかな距離だけ離間されているということを含むこともできる。わずかな距離は、例えば200マイクロメートル以下、とりわけ100マイクロメートル以下、とりわけ75マイクロメートル以下、とりわけ50マイクロメートル以下、とりわけ25マイクロメートル以下とすることができる。
【0019】
そのうちの1つの発展形態では、複数の縁部側の伝導経路が、平坦な側の縁部のそれぞれの部分または区分に沿って延在している。
【0020】
さらなる実施形態では、前記縁部側の伝導経路は、前記被照射面を有する前記平坦な側の前記縁部の実質的に(すなわち伝導経路における所定の(狭幅の)中断部を除いて)全体に沿って延在している。このことは、縁部側で開始された亀裂を特に高確率で検出することができるという利点をもたらす。中断部(例えば狭幅の間隙)は、伝導経路における短絡を阻止するために使用される。
【0021】
さらなる実施形態では、前記縁部側の伝導経路は、縁部側に(意図的に)設けられた少なくとも1つの機械的な事前損傷箇所に沿って延在している。これによって、起こり得る最初の亀裂形成の場所を事前に意図的に設定しておくことが可能となり、これによって、熱的な過負荷を特に確実に検出することが可能となる。したがって、亀裂をトリガするための引張応力のトリガ閾値を少なくとも近似的に設定することも可能となる。必要とされる伝導経路の材料が特に少なくなり、さらに伝導経路の形状を特に自由に選択可能となる(例えば伝導面の意味において)ことが、さらなる利点として得られる。事前損傷箇所は、ノッチとすることができる。
【0022】
さらなる実施形態では、前記縁部側の伝導経路と前記被照射面との間に少なくとも1つの別の伝導経路が延在している。これによって、亀裂伝播の進展を特に確実に検出することが可能となる。例えば、さらにより短い亀裂を、縁部側の伝導経路の電気的特性の変化によって検出することができ、また、被照射面の方向へさらなる亀裂伝播を、少なくとも1つの別の伝導経路の電気的特性の変化によって検出することができる。
【0023】
さらなる実施形態では、前記縁部側の伝導経路に類似した形状で、前記縁部側の伝導経路に対して距離を置いて、少なくとも1つの別の伝導経路が延在している。これによって、所定の亀裂長さを有する亀裂進展を、実質的に全ての縁部位置から少なくともほぼ検出することが可能となる。
【0024】
また1つの実施形態では、前記基体は、波長変換セラミックから形成されており、例えばガーネット構造を有する希土類ドープされたセラミックから形成されている。
【0025】
これに代わる発展形態では、基体は、粉末状の発光材料粒子が埋め込まれた脆性のマトリックス材料から形成されている。脆性のマトリックス材料は、例えばガラスとすることができる。
【0026】
さらなる実施形態では、少なくとも1つの導電性の伝導経路は、導体路、とりわけ金属製の導体路である。導体路は、安価な方法で特に簡単に、精密かつ微細に構造化された状態で、基体の表面に被着させることができる。
【0027】
1つの発展形態では、少なくとも1つの金属製の導体路は、アルミニウムから形成されている。アルミニウムは、比較的柔軟かつ延性であるので、基体内に亀裂が伝播するときに伝導経路の下で容易に一緒に引き裂かれるという利点を有する。したがってとりわけ、亀裂が伝導経路の下を、この伝導経路に損傷を与えることなく通過するということを阻止することができる。アルミニウムは、例えばスパッタリングによって堆積されたアルミニウムとすることができる。アルミニウムの厚さは、例えば100nm〜300nm、とりわけ約200nmとすることができる。
【0028】
またさらなる実施形態では、前記導電性の伝導経路は、前記基体に埋め込まれた、とりわけタングステンを含む(すなわち純タングステンまたはタングステン合金からなる)ワイヤである。このことは、伝導経路が特に温度に対して脆弱ではなくなり、さらに一次光の望ましくない照射に対してロバストにもなるという利点をもたらす。1つの発展形態では、ワイヤを基体の全ての側に埋め込むことができる。
【0029】
タングステンおよびタングステン合金は、耐熱性が高いので、基体を形成する未焼成体に挿入してこの未焼成体と一緒に焼結することによって固定的に基体に組み込むことができる。
【0030】
またさらなる実施形態では、導電性の伝導経路(とりわけ導体路)は、100マイクロメートル〜750マイクロメートルの間、とりわけ100マイクロメートル〜500マイクロメートルの間、とりわけ100マイクロメートル〜300マイクロメートルの間、とりわけ150マイクロメートル〜250マイクロメートルの間、とりわけ約200マイクロメートルの幅を有する。これらは、伝導経路の電気的特性の変化を確実に検出するため、かつ亀裂を十分に早期の検出するために、特に有利な寸法であることが判明している。
【0031】
1つの発展形態では、少なくとも1つの伝導経路が、基体の一方の側に被着されており、これによって特に簡単な製造が可能となる。この側は、被照射面が位置する平坦な側とすることができる。これに代えて、この側を、被照射面とは反対側に位置する平坦な面とすることができる。
【0032】
これに代わる発展形態では、基体の両方の平坦な側に、それぞれ少なくとも1つの伝導経路、とりわけそれぞれ同じ形状の伝導経路が被着されている。
【0033】
さらなる発展形態では、基体は、基体の平坦な側を上から見た平面図において円形または長方形の形状を有し、これは、縁部の形状にも一致している。しかしながら基体の形状は、これらに限定されていない。
【0034】
とりわけ基体が円形の形状を有する場合には、その直径は、1〜2ミリメートルの間とすることができる。
【0035】
上記の課題は、上述したような少なくとも1つの変換体と、前記少なくとも1つの伝導経路に電気的に接続された評価装置とを有する変換装置において、前記評価装置は、少なくとも1つの伝導経路の電気的特性の変化に基づいて前記基体内の亀裂を検出するように構成されている、変換装置によっても解決される。
【0036】
これによって、光学的な手法を用いた場合よりも格段に正確かつ安価に亀裂を検出することが可能となる。
【0037】
変換装置は、変換体と同様に構成することができ、同じ利点をもたらすことができる。
【0038】
評価装置は、例えば少なくとも1つの伝導経路の電気抵抗、電圧、または伝導経路を流れる電流を求めるように構成することができる。したがって、例えば伝導経路に対して直列に接続された直列抵抗R1を介した簡単な電圧測定によって伝導経路を監視することができる。これに代えて、直列抵抗R1と少なくとも1つの伝導経路とを分圧器の可変抵抗として使用することができ、分圧された電圧をこのようにして監視することができる。
【0039】
伝導経路が損傷していない場合(亀裂がない場合)には、電気抵抗が小さく、伝導経路を通って導かれる電流は大きいとされ得る。亀裂形成によって伝導経路が損傷している場合には、電気抵抗が増加して電流が減少することによって電気的特性が測定可能に変化する。評価装置は、他の電気的特性、例えば電圧または容量を測定することもできる。測定装置および測定装置に接続された評価装置は、急激に変化する測定信号(例えば電圧測定値)や、急激に変化する曲線形状、例えば曲線勾配(例えば測定信号の一次導関数に相当)の急激な増加を有する測定信号を検出するためにとりわけ適している。測定装置および/または評価装置はさらに、データメモリを有することができ、このデータメモリは、とりわけ変換装置の非動作状態または消灯期間に測定された測定値を保存し、これらを呼出可能に用意する。これにより、非動作状態での時間的に連続して存在する複数の測定信号を互いに比較することが可能となり、これを、測定装置または測定装置に接続された評価装置の較正のために使用することができる。このようにして、例えば周囲の温度上昇に起因して増加した抵抗値を、評価時に考慮することが可能となり、場合によっては評価時に補償することが可能となる。
【0040】
1つの発展形態では、評価装置は、基体内の亀裂を、これによって引き起こされる伝導経路の断面積の減少によって検出するように構成されている。したがって、基体内の亀裂を、とりわけ亀裂成長が緩慢な(特に臨界未満である)場合にも、特に早期に検出することが可能となる。
【0041】
1つの実施形態では、前記評価装置は、少なくとも1つの伝導経路の切断に基づいて前記基体内の亀裂を検出するように構成されている。このことは、例えば抵抗値が実質的に無限大まで急激に変化すること、または電流が実質的にゼロまで低下することによって特に一義的かつ迅速に検出することができる。
【0042】
さらなる実施形態では、前記評価装置は、前記縁部側の伝導経路の損傷、とりわけ切断を検出すると、少なくとも1つの第1のアクションをトリガし、少なくとも1つの別の伝導経路の損傷、とりわけ切断を検出すると、少なくとも1つの第2のアクション、とりわけ前記基体への照射のイナクティブまたはスイッチオフをトリガするように構成されている。したがって、亀裂伝播に対する段階的な応答を達成することができ、このことは、亀裂が縁部側の伝導経路から被照射面のより近傍に位置する別の伝導経路までどちらかと言えば緩慢に進展するような場合に、とりわけ有利である。基体への照射をスイッチオフすることにより、亀裂が被照射面を通って進入した場合に、この被照射面に照射が行われることが阻止される。このことによって今度は、基体が損傷した場合、またはそれどころか破壊した場合におけるコヒーレントな一次光の放射、ひいては目に対する危険が阻止される。基体への照射のスイッチオフは、半導体光源を消灯することによって、または一次光の光路に絞りを挿入することによって実施することができる。
【0043】
1つの発展形態では、少なくとも1つの第1のアクションは、一次光の放射出力の低減を含む。したがって、亀裂進展を緩慢にすることができ、さらなる照射の実施によって「非常灯機能」を維持することができる。
【0044】
さらなる発展形態では、少なくとも1つの第1のアクションは、例えば上位の担当部所への警告信号の出力を含むことができ、例えばユーザ、管理センターなどに注意信号が出力される。
【0045】
さらなる実施形態では、前記変換装置は、照明装置、とりわけ車両用照明装置、または効果照明、舞台照明、もしくは屋外照明の一部である。車両用照明装置は、とりわけ例えばヘッドライトの形態での車両の屋外照明のために設けることができる。ヘッドライトは、例えばロービーム、ハイビーム、フォグライト、コーナリングライト、および/またはデイタイムランニングライトの機能などを有することができる。
【0046】
上記の課題はさらに、上述したような少なくとも1つの変換体、および/または上述したような少なくとも1つの変換装置と、対応する前記基体の前記被照射面に照射を行うための少なくとも1つの半導体一次光源とを有する照明装置によっても解決される。
【0047】
少なくとも1つの半導体一次光源は、少なくとも1つのレーザダイオード、および/または少なくとも1つの発光ダイオードとすることができるか、またはこれらを有することができる。
【0048】
1つの実施形態では、前記評価装置は、前記少なくとも1つの半導体一次光源に、場合によっては車両の車載電子機器のような制御装置を介して、または効果照明システムの制御パネルを介して接続されている。
【0049】
照明装置は、基体の、被照射面とは反対側に位置する側から有効光が放射されるような透過型の配置において、変換体または基体を動作させることができる。有効光は、完全変換の場合には二次光に相当し、部分変換の場合には変換されていない一次光と二次光との混合光に相当し得る。
【0050】
これに加えてまたはこれに代えて、照明装置は、基体の、被照射面も有する側から有効光が放射されるような反射型の配置において、変換体または基体を動作させることができる。
【0051】
上述した本発明の特性、特徴、および利点、ならびにこれらが達成される方法および形式は、図面に関連してより詳細に説明される実施例の以下の概略的な説明との関連において、より明瞭かつ明確に理解され得る。図面では明確化のために、同じまたは同じ機能を有する要素には同じ参照符号が付され得る。
【図面の簡単な説明】
【0052】
図1】第1の実施形態による変換体を有する照明装置の平面図である。
図2】第2の実施形態による変換体の平面図である。
図3】第3の実施形態による変換体の平面図である。
【0053】
図1は、第1の実施例による変換体1を有する変換装置E1を備えた照明装置B1の平面図を示す。
【0054】
変換体1は、波長変換セラミックからなる円板形の基体2を有し、これは、円形の変換セラミック板とも呼ぶことができる。図示されている基体2の表側の中央には、−例えば青色の−一次光Pが照射されるべき仮想の被照射面3が設けられている。一次光Pは、被照射面3の外側には全く入射すべきではないか、またはわずかにしか入射すべきではない。
【0055】
図示されている基体2の少なくとも表側には、スパッタリングによって堆積されたアルミニウムからなる導体路4の形態の導電性の伝導経路が被着されている。導体路4は、実質的に完全に円環形に形成されており、基体2の縁部Aまで到達する外側輪郭を有する。したがって導体路4は、実質的に完全に縁部Aに沿って延在している。導体路4は、電流が流れる際の短絡を阻止するために、間隙状の中断部5のところだけが分離または中断されている。
【0056】
導体路4は、約200マイクロメートルの幅と、約200ナノメートルの厚さとを有する。基体2の直径は、約1〜2ミリメートルである。
【0057】
導体路4の開放端部には、変換装置E1の評価装置Gが接続されており、この評価装置Gは、直流電圧源Uおよび直列抵抗R1を有する。直列抵抗R1は、導体路4に対して直列に直流電圧源Uに接続されている。直列抵抗R1に印加される電圧は、評価装置Gに所属する測定装置Mを介して感知することができる。測定装置Mによって検出された電圧測定値は、測定装置Mに接続された制御装置Cによって、少なくとも1つのレーザLの形態の一次光源を駆動するために使用することができる。制御装置Cは、評価装置Gの一部とすることができるか、または自立した構成要素とすることができる。制御装置Cと評価装置Gとを、1つの構成要素に、例えば評価機能を有する1つの制御装置Cに一体化することもできる。評価装置Gと変換体1とを含む変換装置E1は、1つのモジュールとして存在することができる。
【0058】
照明装置B1は、1つの実施形態では以下のようにして動作可能である:
【0059】
制御装置Cは、少なくとも1つのレーザLを、このレーザLが定格放射出力の一次光Pを被照射面3に照射するように駆動する。基体2に亀裂がない場合には導体路4にも亀裂がなく、この導体路4は、実際上は電気抵抗R2≒0を有する。測定装置Mは、次に、直列抵抗R1において、直流電圧源によって生成された電圧Uを測定電圧Umとして測定し、すなわち、実際上U=Umが当てはまる。
【0060】
縁部Aにおいて亀裂(図示せず)が開始されると、この亀裂は、基体2の内部へと進展し、導体路4の類似の亀裂または対応する分離部を形成する。亀裂が導体路4の下方の領域で部分的にのみ移動している場合、導体路4はそこで裂け始めるが、まだ完全には中断されない。その結果として生じる断面積の縮小に起因して、抵抗R2は、測定可能な有限値まで増加する。測定装置Mは、次に、直列抵抗R1においてUm=R1/(R1+R2)・Uの値を測定電圧Umとして測定する。1つの変形例では、制御装置Cは、次いで既に、少なくとも1つのレーザLの放射出力を低減して、さらなる亀裂伝播を緩慢にすること、またはそれどころか差し当たり阻止することができる。
【0061】
亀裂が導体路4の下の基体2を完全に横断し、これによって導体路4もそこで切断または分離された場合には、測定装置Mが値Um=0を測定し、これは非常に良好に検出することが可能である。制御装置Cは、次に、少なくとも1つのレーザLの放射出力を(さらに大幅に)低減して、さらなる亀裂伝播を緩慢にすること、またはそれどころか差し当たり阻止することができる。制御装置Cは、さらなる亀裂伝播を確実に阻止するために、とりわけ一次光Pの放射出力をゼロまで低減する(とりわけレーザLをスイッチオフまたはイナクティブにする)ことができる。
【0062】
この保護機能は、とりわけ濃縮された一次光Pが基体2の損傷に起因して照明装置B1から漏出してしまうことを阻止するために使用される。
【0063】
図2は、第2の実施例による変換体11を有する照明装置B2の平面図を示す。変換体11は、基体2に同心状に被着された2つの環形の導体路12および13を有し、そのうちの一方の導体路12は、導体路4に類似した縁部側の導体路である。導体路12は、基体2の縁部で亀裂が開始されたときに、とりわけ導体路12の切断を有利に測定および評価することが可能となるように、非常に薄くすることができる。他方の導体路13は、縁部側の導体路12と被照射面3との間に延在している。他方の導体路13は、導体路12と同様に環形に形成されており、したがって導体路12に類似の形状を有するように形成されている。導体路12および13の狭幅の中断部14および15は、亀裂が中断部14および15の両方を貫通して伝播することを阻止するために、互いに所定の角度だけずらされている。測定装置Mと導体路13との間の電気接続線路(図示せず)は、例えば薄くて狭幅の導体路状のアルミニウムコーティングの形態で、または光学的に透明なITO導体路の形態で、有利には縁部側の導体路12の中断部14を通るように案内することができる。
【0064】
1つの発展形態では、導体路12および13の電気的特性を、導体路4と同様の方法で感知することができ、例えば、とりわけ2つの導体路12および13のそれぞれに対して個別的に、それぞれの測定電圧Umを測定することができる。このために2つの評価装置Gを設けることができるが、これらの評価装置Gを、例えば1つの共通の直流電圧源Uを利用することによって少なくとも部分的に互いに一体化することもできる。その場合、変換装置E2は、変換体11と2つの評価装置Gとを有することができる。
【0065】
制御装置Cは、その場合、少なくとも1つのレーザLを駆動するためにそれぞれの測定電圧Umを使用することができる。
【0066】
照明装置B2は、その場合、1つの実施形態では以下のようにして−とりわけ図1の照明装置B1と同様の方法で−動作可能である:
【0067】
制御装置Cは、少なくとも1つのレーザLを、このレーザLが定格放射出力の一次光Pを基体2の被照射面3に照射するように駆動する。
【0068】
基体2に亀裂がない場合には導体路12および13にも亀裂がなく、この導体路12および13は、実際上は電気抵抗R2≒0を有する。(各々または共通の)測定装置Mは、次に、それぞれの直列抵抗R1において、(各々または共通の)直流電圧源Uによって生成された電圧を測定電圧Umとして測定する。
【0069】
縁部Aにおいて亀裂(図示せず)が開始されると、この亀裂は、基体2の内部へと進展し、まず始めに縁部側の導体路12を分離させ、これによって縁部側の導体路12が中断される。制御装置Cは、次いで、少なくとも1つのレーザLの放射出力を低減して、さらなる亀裂伝播を緩慢にすること、またはそれどころか差し当たり阻止することができる。
【0070】
縁部側の導体路12の切断によって制御装置Cは、他のアクションをトリガすることもでき、例えば照明装置B2のユーザに注意を出力すること、かつ/またはサービス担当部所(例えば工場)に通知することもできる。
【0071】
亀裂が導体路13の下の基体2を横断し、これによって導体路13もそこで切断または分離された場合には、制御装置Cは、さらなる亀裂伝播を確実に阻止するために、かつ/または亀裂を有する被照射面3への照射を阻止するために、例えば一次光Pの放射出力をゼロまで低減する(とりわけレーザLをスイッチオフまたはイナクティブにする)ことができる。
【0072】
この保護機能も、とりわけ濃縮された一次光Pが基体2の損傷に起因して照明装置B2から漏出してしまうことを阻止するために使用される。
【0073】
図3は、第3の実施例による変換体21を備えた変換装置E3を有する照明装置B3の平面図を示す。
【0074】
照明装置B3は、例えば照明装置B1と同様の方法で動作可能である。しかしながらここでは、導体路22は、縁部側で周を巡るように形成されているのではなく、短い区間または扇形区分(例えば全周または縁部Aの45°以下、とりわけ20°以下、とりわけ10°以下)に沿ってのみ延在している。それでもなお、被照射面3への一次光Pの照射に起因して熱的に誘導される縁部側の引張応力による、基体2に対する機械的な過負荷を確実に検出できるようにするために、縁部Aのうち、導体路22が載置されている区分に、(マイクロ)ノッチKの形態で意図的に設けられた所定の事前損傷箇所が存在している。縁部Aでの引張応力が少なくともおおよそ設定可能な閾値に到達すると、ノッチKにおいて内部の方向に進展する亀裂が形成され、この亀裂を導体路22の中断などによって検出することができる。
【0075】
それぞれのノッチKを有する複数の導体路22を、例えば縁部Aまたは周にわたって均一に分布するように設けることもできる。
【0076】
本発明の細部を、図示された実施例によって詳細に説明および記載したが、本発明は、これらの実施例に限定されているわけではなく、本発明の保護範囲から逸脱することなく当業者によって他の変形形態を導出することが可能である。
【0077】
したがって、アルミニウムからなる導体路の代わりに、銅または錫のような他の金属からなる導体路を使用することも可能である。導体路の代わりに、基体に埋め込まれた、とりわけタングステンからなるワイヤ、またはタングステンを含むワイヤを設けることも可能である。
【0078】
基体および(1つまたは複数の)導体路を、楕円形、矩形(例えば長方形、とりわけ正方形)、および一般的に自由な形状に形成することも可能である。
【0079】
さらに、2つ以上のさらなる導体路を設けることも可能である。
【0080】
一般的に、「1つ」などの表現は、例えば「厳密に1つ」などの表現によって明示的に除外されない限り、とりわけ「少なくとも1つ」または「1つまたは複数の」などの意味で、単数または複数を意味すると理解することができる。
【0081】
また、明示的に除外されない限り、数値の記載は、正確に記載された数値と同様に、通常の許容公差の範囲も含むことができる。
【符号の説明】
【0082】
1 変換体
2 基体
3 被照射面
4 導体路
5 中断部
11 変換体
12 縁部側の導体路
13 さらなる導体路
14 縁部側の導体路の中断部
15 さらなる導体路の中断部
21 変換体
22 導体路
A 基体の縁部
B1 照明装置
B2 照明装置
B3 照明装置
C 制御装置
E1 変換装置
E2 変換装置
E3 変換装置
G 評価装置
K ノッチ
L レーザ
M 測定装置
P 一次光
R1 直列抵抗
R2 導体路の抵抗
U 直流電圧源
Um 測定電圧
図1
図2
図3