特許第6548839号(P6548839)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6548839
(24)【登録日】2019年7月5日
(45)【発行日】2019年7月24日
(54)【発明の名称】流体から重金属を除去する方法
(51)【国際特許分類】
   B01D 53/64 20060101AFI20190711BHJP
   B01D 53/70 20060101ALI20190711BHJP
   B01D 53/81 20060101ALI20190711BHJP
   B01J 20/20 20060101ALI20190711BHJP
【FI】
   B01D53/64ZAB
   B01D53/64 100
   B01D53/70
   B01D53/81
   B01J20/20 D
【請求項の数】15
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2018-563461(P2018-563461)
(86)(22)【出願日】2017年3月23日
(65)【公表番号】特表2019-510631(P2019-510631A)
(43)【公表日】2019年4月18日
(86)【国際出願番号】EP2017056902
(87)【国際公開番号】WO2017174365
(87)【国際公開日】20171012
【審査請求日】2018年11月30日
(31)【優先権主張番号】93013
(32)【優先日】2016年4月4日
(33)【優先権主張国】LU
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】514114493
【氏名又は名称】セペペウ カーボン プロセス アンド プラント エンジニアリング エス アー
【氏名又は名称原語表記】CPPE CARBON PROCESS & PLANT ENGINEERING S.A.
(74)【代理人】
【識別番号】100110319
【弁理士】
【氏名又は名称】根本 恵司
(72)【発明者】
【氏名】ストリックロス、アラン
【審査官】 ▲高▼ 美葉子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−126661(JP,A)
【文献】 米国特許第07722843(US,B1)
【文献】 特開2003−192407(JP,A)
【文献】 特開昭59−10343(JP,A)
【文献】 特開2016−185510(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 53/34−53/85
B01D 53/92
B01D 53/96
B01J 20/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定層吸収体中で、30%vol.と60%vol.間の、硫黄を含浸させた活性炭触媒の分離した別々の粒子と、30%vol.と60%vol.間の、鉄を含浸させた活性炭触媒の分離した別々の粒子と、5%vol.と40%vol.間のフィラー材料の分離した別々の粒子とを包含する混合物と流体を接触させ、上記フィラー材料の粒子は、粒子の平均最大寸法に基づいて、4mmを超える平均粒径を有するものであって、空乏レベルの重金属及び/又はダイオキシンを含む流体を得るために、流体を混合物に接触させた状態で混合物に重金属及び/又はダイオキシンを吸収させ、
混合物から空乏レベルの重金属及び/又はダイオキシンを含む流体を排出する、
重金属を含む流体から重金属及び/又はダイオキシンを除去する方法。
【請求項2】
流体がガスである、請求項1に記載された方法。
【請求項3】
ガスが下水、汚泥又は有害廃棄物焼却プラントからの排ガスである、請求項2に記載された方法。
【請求項4】
ガスが少なくとも50mg/dscm%重量の重金属及び/又は少なくとも200ng/dscmのダイオキシンを包含する、請求項2又は3に記載された方法。
【請求項5】
流体が液体である、請求項1に記載された方法。
【請求項6】
液体が少なくとも40mg/lの重金属及び/又は少なくとも0.02μg/lのダイオキシンを包含する、請求項5に記載された方法。
【請求項7】
混合物が40%vol.と50%vol.間の、硫黄を含浸させた活性炭触媒を包含する、請求項1乃至6のいずれか一つに記載された方法。
【請求項8】
硫黄を含浸させた活性炭触媒が5%重量と20%重量間の硫黄を包含する、請求項1乃至7のいずれか一つに記載された方法。
【請求項9】
混合物が40%vol.と50%vol.間の、鉄を含浸させた活性炭触媒を包含する、請求項1乃至8のいずれか一つに記載された方法。
【請求項10】
鉄を含浸させた活性炭触媒が10%重量と30%重量間の鉄を包含する、請求項1乃至9のいずれか一つに記載された方法。
【請求項11】
フィラー材料がプラスチック、アルミナ、セラミック材料又はその混合物を包含する、請求項1乃至10のいずれか一つに記載された方法。
【請求項12】
フィラー材料が50%vol.及び97%vol.の自由体積を包含する、請求項1乃至11のいずれか一つに記載された方法。
【請求項13】
フィラー材料が5から15%vol.の量で存在する、請求項1乃至12のいずれか一つに記載された方法。
【請求項14】
フィラー材料がサドル形状、リング形状、球形状、円環形状、プリズム形状又は不規則な形状の中から選択された一形状である、請求項1乃至13のいずれか一つに記載された方法。
【請求項15】
ガスを混合物と接触させる前に、コアレッサ、液滴分離機及び/又は熱交換器中で調節する、請求項1乃至14のいずれか一つに記載された方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して流体からの重金属の除去に関し、具体的には固定層反応装置(fixed bed reactor)における液体及び/又はガスから重金属を除去する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
活性炭触媒は、ガス及び液体からの重金属除去を含む種々の用途で広く用いられている。しかしながら、活性炭触媒の性能をさらに強化できることが分かった。
【0003】
米国特許第7,722,843号明細書は、燃焼排ガスから酸性ガスを除去するために、水性液体(an aqueous liquid)を用いる燃焼排気浄化(scrubber)システムを含む、燃焼排ガス浄化計画(scheme)における燃焼排ガス流からの水銀の除去方法を開示している。
その方法は、粉末水銀吸収剤を提供すること、浄化システム内の水性液体内に粉末水銀吸収剤を導入すること、水性液体内への水銀吸収剤の導入の後、水性液体から少なくとも一部の水銀吸収剤を分離することを包含する。
【0004】
いわゆるKombisorbon(登録商標;コンビソーボン)法(Chemosphere 第37巻、9−12号、2327−2334頁、1998年、エルゼビア・サイエンス株式会社(Elsevier Science Ltd))は、排ガスから重金属、具体的には水銀及びカドミウム、ダイオキシン及びフラン、他の生態毒性のある有機成分を除去するために設計された固定層法(fixed bed process)である。
【0005】
典型的な生ガスの条件(conditions):
ガス温度 90℃まで
塵 2−10mg/dscm(乾燥標準立方メートル)
水銀 10mg/dscmまで
ダイオキシン/フラン(TE(毒性等価)) 300ng/dscmまで
【0006】
クリーンガス基準(7%Oでの:新FBIs(USEPA(アメリカ合衆国環境保護庁)2011、連邦官報:40CFR(連邦規制集) パート(Part)60)のための新MACT 排出基準):
水銀 <1μg/dscm
ダイオキシン/フラン(TE(毒性等価)) <0.004ng/dscm
【0007】
Kombisorbon(登録商標)システムは、一般にコンディショナー(conditioner)と固定層吸収体(fixed-bed adsorber)を使用する。コンディショナーは、コアレッサ(収滴具;coalescer)、液滴分離機及び煙道ガスが吸収体に入る前に煙道ガスが最適なパラメーターに到達するように調節するための熱交換器を含んでいる。
【0008】
Kombisorbon(登録商標)法では、以下の重要な利点が得られる:
−活性炭上でHgClとして吸収することによるHg2+として知られているイオン状水銀の除去
−HgSとして知られている炭素硫化水銀(carbon mercuric sulfide)上で硫黄を形成することでHgとして知られている水銀元素
−吸収によるダイオキシンとフランの除去。
【0009】
典型的な用途は、下水汚泥又は有害廃棄物の焼却プラントである。最初の商業規模のKombisorbon(登録商標)ユニットは、1994年に下水汚泥焼却プラント内に設置された。その時以来、全世界で20以上のユニットが稼働している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、流体から重金属を除去するためのより効率的な方法と共に、改良された活性を有する活性炭触媒組成物(composition)を提供することである。
【0011】
この目的は、請求項1に記載された重金属を包含する流体から重金属を除去する方法で達成される。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の目的は、重金属を包含する流体から重金属を除去する方法であって、30%vol.と60%vol.間の、硫黄を含浸させた活性炭触媒と、30%vol.と60%vol.間の、鉄を含浸させた活性炭触媒と、5%vol.と40%vol.間のフィラー材料(filler material)とを包含し、これら3つの成分全体で100%vol.になる混合物(mixture)と流体を接触させ、空乏レベルの重金属を含む流体を得るために、流体を混合物に接触させた状態で混合物に重金属を吸収させ、混合物から空乏レベルの重金属を含む流体を排出する方法、により達成される。
【0013】
驚いたことには、硫黄を含浸させた活性炭触媒と鉄を含浸させた活性炭触媒とフィラー材料との混合物を使用すると、流体から重金属を除去する方法がより効率的であることが分かった。また、5と40%vol.間のフィラー材料を使用すると、触媒の活性がより容易に再生されることも分かった。この実証例として、Kombisorbon(登録商標)ユニットは、工業用地において定期的に(1年に2−4回)再生される。この再生期間の後の乾燥期間は、活性炭だけの場合と比較して活性炭(80%)/フィラー材料(20%)混合物を含む反応層の場合、40%(48時間の代わりに28時間)以上短縮される。
【0014】
用語重金属は、相対的に高い密度を有しかつ低濃度で有毒又は有害なあらゆる金属化学元素を意味する。重金属の例としては、水銀(Hg)、カドミウム(Cd)、ヒ素(As)、クロム(Cr)、タリウム(Tl)及び鉛(Pb)が含まれる。有毒な重金属は、特に環境状況においてその潜在的な毒性で知られているあらゆる相対的に濃密度の金属又は半金属である。用語は、主要な社会的関心が向けられている10の化学製品の世界保健機関のリストに全て示されている、カドミウム、水銀、鉛及びヒ素に特に適用されてきた。他の例としては、マグネシウム(Mg)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、亜鉛(Zn)、セレン(Se)、銀(Ag)及びアンチモン(Sb)を含んでいる。
【0015】
驚いたことには、この方法が、ガス、即ち、都市の固形廃棄物、産業固形廃棄物及び下水汚泥又は産業廃水から出る液体を除去する焼却プラントからの、セメント工業からの、石油精製からの、化学製造からの、金属仕上げからの、プリント回路製造からの、石油及びガス採取からの、及び危険な廃棄物からの排ガスから、重金属を除去するのに使用可能であることが分かった。
【0016】
種々の実施形態によれば、混合物は、少なくとも30%vol.、31%vol.、32%vol.、33%vol.、34%vol.、35%vol.、36%vol.、37%vol.、38%vol.、39%vol.、40%vol.、41%vol.、42%vol.、43%vol.、44%vol.、45%vol.、46%vol.、47%vol.、48%vol.、49%vol.、50%vol.、51%vol.、52%vol.、53%vol.、54%vol.、55%vol.、56%vol.、57%vol.、58%vol.又は59%vol.の、硫黄を含浸させた活性炭触媒を包含する。
【0017】
種々の実施形態によれば、混合物は、多くとも60%vol.、59%vol.、58%vol.、57%vol.、56%vol.、55%vol.、54%vol.、53%vol.、52%vol.、51%vol.、50%vol.、49%vol.、48%vol.、47%vol.、46%vol.、45%vol.、44%vol.、43%vol.、42%vol.、41%vol.、40%vol.、39%vol.、38%vol.、37%vol.、36%vol.、35%vol.、34%vol.、33%vol.、32%vol.又は31%vol.の、硫黄を含浸させた活性炭触媒を包含する。
【0018】
好適実施形態においては、混合物は、40%vol.と50%vol.間の、硫黄を含浸させた活性炭触媒を包含する。
【0019】
好ましくは、硫黄を含浸させた活性炭触媒は、5%重量と20%重量間の硫黄を包含する。
【0020】
種々の実施形態によれば、混合物は、少なくとも30%vol.、31%vol.、32%vol.、33%vol.、34%vol.、35%vol.、36%vol.、37%vol.、38%vol.、39%vol.、40%vol.、41%vol.、42%vol.、43%vol.、44%vol.、45%vol.、46%vol.、47%vol.、48%vol.、49%vol.、50%vol.、51%vol.、52%vol.、53%vol.、54%vol.、55%vol.、56%vol.、57%vol.、58%vol.又は59%vol.の、鉄を含浸させた活性炭触媒を包含する。
【0021】
種々の実施形態によれば、混合物は、多くとも60%vol.、59%vol.、58%vol.、57%vol.、56%vol.、55%vol.、54%vol.、53%vol.、52%vol.、51%vol.、50%vol.、49%vol.、48%vol.、47%vol.、46%vol.、45%vol.、44%vol.、43%vol.、42%vol.、41%vol.、40%vol.、39%vol.、38%vol.、37%vol.、36%vol.、35%vol.、34%vol.、33%vol.、32%vol.又は31%vol.の、鉄を含浸させた活性炭触媒を包含する。
【0022】
好適実施形態においては、混合物は、40%vol.と50%vol.間の、鉄を含浸させた活性炭触媒を包含する。
【0023】
好ましくは、鉄を含浸させた活性炭触媒は、10%重量と30%重量間の鉄を包含する。
【0024】
活性炭触媒は、好ましくは押出しされ、かつ0.80−130mmの粒径(grain size)を有する。活性炭触媒は、好ましくは粒状化され、かつ0.30から4.75mmの粒径を有する。従って、活性炭触媒は粉末状ではない。
【0025】
一実施形態において、活性炭触媒は、好ましくは、粒状化されかつ押出しされた触媒の混合物である。
【0026】
炭素触媒は、褐炭及び瀝青炭、果実の種、ココナツの殻、亜炭、泥炭、木材、おがくず/のこくず、石油コークス、骨屑及び製紙工場廃棄物(リグニン)、PVC、レーヨン、ビスコース、ポリアクリロニトリル又はフェノールのような合成ポリマーから製造できる。
【0027】
炭素触媒は、
物理的処理:熱、蒸気、酸素、CO、空気
化学的処理:酸、強塩基(strong base)又は塩類(例えば、硫酸、塩酸(chlorhydric acid)又はリン酸、水酸化カリウム又は水酸化ナトリウム、塩化カルシウム又は塩化亜鉛)で含浸
物理的及び化学的処理両者の組み合わせ
で活性化できる。
【0028】
活性炭触媒は、400から1800m/gの比表面積(specific surface area)(BET)及び酸又はアルカリpHを有することができる。
【0029】
種々の実施形態によれば、混合物は、少なくとも5%vol.、6%vol.、7%vol.、8%vol.、9%vol.、10%vol.、11%vol.、12%vol.、13%vol.、14%vol.、15%vol.、16%vol.、17%vol.、18%vol.、19%vol.、20%vol.、21%vol.、22%vol.、23%vol.、24%vol.、25%vol.、26%vol.、27%vol.、28%vol.、29%vol.、30%vol.、31%vol.、32%vol.、33%vol.、34%vol.、35%vol.、36%vol.、37%vol.、38%vol.又は39%vol.の、フィラー材料を包含する。
【0030】
種々の実施形態によれば、混合物は、多くとも40%vol.、39%vol.、38%vol.、37%vol.、36%vol.、35%vol.、34%vol.、33%vol.、32%vol.、31%vol.、30%vol.、29%vol.、28%vol.、27%vol.、26%vol.、25%vol.、24%vol.、23%vol.、22%vol.、21%vol.、20%vol.、19%vol.、18%vol.、17%vol.、16%vol.、15%vol.、14%vol.、13%vol.、12%vol.、11%vol.、10%vol.、9%vol.、8%vol.、7%vol.又は6%vol.の、フィラー材料を包含する。
【0031】
好適実施形態においては、フィラー材料は、5から15%vol.の量で存在する。
【0032】
好ましくは、フィラー材料は、プラスチック、金属、アルミナ、セラミック材料又はその混合物を包含する。
【0033】
種々の実施形態によれば、フィラー材料は、サドル(鞍形:saddle)形状、リング形状、球形状、円環(torus)形状、プリズム形状又は不規則な形状の中から選択された一形状である。
【0034】
具体的には、50−79%の自由体積を有するセラミック材料でできたフィラー材料を用い得る:
i.Novalox(登録商標)サドル(鞍形:saddle):12.7−76.2mm
ii.バール(Berl)サドル:4−50mm
iii.円筒状リング(Cylindrical ring):5−200mm
iv.Pall(登録商標)リング(ring):25−100mm
v.移行性格子ライニング(Transitional grid lining)
vi.1つの棒(bar)又は1つの十字形(cross)を備えた円筒状リング:80−200mm
vii.格子ブロック(Grid block):215×145×90mm
【0035】
具体的には、95−98%の自由体積を有する金属でできたフィラー材料を用い得る:
i.円筒状リング(Cylindrical ring):15−50mm
ii.Pall(登録商標)リング:15−90mm
iii.VSP(登録商標):25−50mm
iv.Top-Pak(登録商標):15mm
v.Novalox(登録商標)−M:15−70mm
vi.Twin-Pak(登録商標):10−15mm
vii.Interpak(登録商標):10−20mm
【0036】
具体的には、87−97%の自由体積を有するプラスチックでできたフィラー材料を用い得る:
i.Novalox(登録商標)サドル:12.7−50.8mm
ii.Pall(登録商標)リング:15−90mm
iii.VSP(登録商標):25−90mm
iv.Igel(登録商標):40mm
v. Netball(登録商標):45−90mm
【0037】
従って、フィラー材料は、混合された材料のいくつかの特性を改善、強化するために、活性炭触媒に添加された分離した別々の粒子から構成されている。フィラー材料の粒子は、一般的に、4mmを超える平均粒径(粒子の平均最大寸法(番号による)に基づいている)を有する。通常、それらの平均粒径(粒子の平均最大寸法(番号による)に基づいている)は、200mmよりも小さい。
【0038】
一実施形態において、硫黄を含浸させた活性炭触媒、鉄を含浸させた活性炭触媒及びフィラー材料の混合物は活性炭触媒とフィラー材料以外の固形成分を含まない。従って、これら3つの成分の総量が混合物の100%vol.を成している。混合物は、その構成要素が異なる粒径と異なる密度等を有するので、異種混合物であることは言うまでもない。混合物は、好ましくは、フィラーの分離した別々の粒子と活性炭触媒の分離した別々の粒子との混合物から成る。このことは、活性炭触媒を交換する必要がある時、活性炭触媒のフィラーからの分離を容易にする。
【0039】
種々の実施形態によれば、この方法は、流体がガス、好ましくは、下水焼却プラント、汚泥焼却プラント又は有害廃棄物焼却プラントからの排ガスである場合に使用することができる。
【0040】
好適実施形態においては、ガスは、少なくとも50mg/dscm、好ましくは少なくとも45mg/dscm、さらに好ましくは少なくとも40mg/dscmの重金属を包含する。
【0041】
好適実施形態においては、ガスは、少なくとも1000ng/dscm、好ましくは少なくとも500ng/dscm、さらに好ましくは少なくとも200ng/dscmのダイオキシンを包含する。ここで使用されている用語“ダイオキシン”は、残留性有機汚染物質に関するストックホルム条約(Stockholm Convention on Persistent Organic Pollutants)で定義されたPCBsを含むダイオキシン及びダイオキシン様物質を意味する。
【0042】
種々の実施形態によれば、上記方法で使用される流体は、液体であり得る。
【0043】
好ましくは、液体は、少なくとも1時間、2時間、3時間又は10時間触媒組成物(catalyst composition)と接触した状態に置かれる。
【0044】
種々の実施形態によれば、液体は、少なくとも50mg/lの重金属、好ましくは少なくとも45mg/l、さらに好ましくは少なくとも40mg/lの重金属を包含する。
【0045】
好適実施形態においては、液体は、少なくとも20μg/l、好ましくは少なくとも2μg/l、さらに好ましくは少なくとも0.02μg/lのダイオキシンを包含する。
【発明を実施するための形態】
【0046】
本発明の更なる細部及び利点は、以下のいくつかの非限定的な実施形態の詳細な説明から明らかになろう。
【0047】
試験1−ガスからの除去−プラントレベル
【0048】
ジャコビカーボンズ(Jacobi Carbons)から供給された、硫黄を含浸させた45%の活性炭と、ウオッチ−ウオータ(Watch-Water)から供給された、鉄を含浸させた45%の活性炭と、10%のプラスチックフィラー材料とから成る、特定の活性炭混合物で満たしたKombisorbon(登録商標)法の反応装置の出口で、2日間かけて放出物サンプリング(emission sampling)を実行した。
【0049】
カドミウム除去率は99.9%であり、水銀除去率は99.9%を超え、ダイオキシン除去率は99.9%を超えた。初期のレベルは、カドミウムで5mg/dscm、水銀で1mg/dscm、及びダイオキシンで350ng/dscmであった。
【0050】
活性炭混合物とフィラー材料があるため、より良好なガス流配(gas flow distribution)及び、その後の、より高度に濃縮された入口ガスのより高い汚染物質除去率での浄化が可能になった。
【0051】
フィラーがあるため、入口煙道ガスからの水蒸気で活性炭を効率的に洗浄して、SOx(硫黄酸化物)とNOx(窒素酸化物)の反応による硫酸塩を除去することが可能になった。
【0052】
フィラーがあるため、再生(regeneration)後の水流による、より迅速な乾燥工程が可能になった。
【0053】
試験1−b 比較例−ガスからの除去−プラントレベル
【0054】
ジャコビカーボンズから供給された、硫黄を含浸させた100%の活性炭で満たしたKombisorbon(登録商標)法の反応装置の出口で、2日間かけて放出物サンプリングを実行した。
【0055】
カドミウム除去率は99%であり、水銀除去率は99%を超え、ダイオキシン除去率は99%を超えた。初期のレベルは、カドミウムで5mg/dscm、水銀で1mg/dscm、及びダイオキシンで350ng/dscmであった。
【0056】
試験2−液体からの除去−実験室レベル−単一パス(single pass)
【0057】
ジャコビカーボンズから供給された、硫黄を含浸させた30%の活性炭触媒と、ウオッチ−ウオータから供給された、鉄を含浸させた30%の活性炭と、40%のプラスチックフィラー材料とから成る、500cmの混合物が、この試験中使用された。
【0058】
リン酸溶液中の重金属のレベルは著しく低下した。カドミウム及び水銀で20%の除去率であり、ヒ素で35%の除去率であった。
【0059】
試験3−液体からの除去−実験室レベル−単一パス
【0060】
硫黄を含浸させた45%の活性炭と、ウオッチ−ウオータから供給された、鉄を含浸させた45%の活性炭と、10%のプラスチックフィラー材料とから成る、500cmの混合物が、この試験中使用された。
【0061】
リン酸溶液中の重金属のレベルは、著しく低下した。カドミウム及び水銀で75%の除去率であり、ヒ素で65%の除去率であった。初期濃度は、カドミウムで39ppm、水銀で0.1ppm、ヒ素で23ppmであった。
【0062】
フィラー材料があるため、活性炭層内のリン酸媒体に由来するシリカによる目詰まりを減少させることが可能になった。
【0063】
フィラー材料があるため、活性炭を効率的に洗浄してより容易にシリカを除去することが可能になった。
【0064】
試験3−b−比較例−液体からの除去−実験室レベル−単一パス
【0065】
ジャコビカーボンズから供給された、硫黄を含浸させた100%の活性炭の500cmが、この試験中使用された。
【0066】
リン酸溶液中(As:23ppm、Hg:0.1ppm及びCd:39ppm)の重金属のレベルは低下した。水銀で20%の除去率のみかつヒ素で35%の除去率のみが達成された。
【0067】
試験3−c−比較例−液体からの除去−実験室レベル−単一パス
【0068】
ウオッチ−ウオータから供給された、鉄を含浸させた100%の活性炭触媒500cmが、この試験中使用された。
【0069】
リン酸溶液中(As:23ppm、Hg:0.1ppm及びCd:39ppm)の重金属のレベルは低下した。カドミウムと水銀で50%の除去率のみかつヒ素で15%の除去率のみが達成された。
【0070】
上記試験で使用された活性炭は、(Br,Cu,Fe,S,OH...のようなもの)を含浸させた大きな触媒比表面積((BET)、少なくとも700m/g)を持っていた。
【0071】
活性炭は、異なる形状(円筒、球、鞍体(“Sattelk▲o▼rper”),…)でかつ異なる材料(プラスチック、アルミナ、セラミック、...)から成る様々なタイプのフィラー材料と様々な比率(1/5;1/3;1/10;...)で混合された。ジャコビ(Jacobi)、キャボットカーボン(Cabot Carbon)、ケムバイロン(Chemviron)、デソテック(Desotec)、カーボテック(Carbotech)及びエーテック(ATEC)等の企業用の、異なる活性炭触媒のサプライヤーがテストされた。
【0072】
活性炭触媒が、
a.ヨウ素、臭素又はその化合物、
b.撥水剤(water repellent)
c.プラチナ、パラジウム、ロジウム等のような触媒活性金属、又は
d.プラチナ、パラジウム、ロジウム等のような金属をベースとする、有機/触媒活性金属錯体(metal complexes)
を一切含まないことに留意しなければならない。
【0073】
活性炭触媒は、ポリテトラフルオロエチレン、ポリイソブチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン又はポリトリクロルフルオロエチレン(polytrichlorfluorethylen)のような、疎水性の高分子化合物によって疎水化されていない。
【0074】
本発明は、特定の好ましい形態を参照してかなり詳細に説明したが、他の形態も可能である。したがって、添付する請求項の趣旨及び範囲は、ここに含まれる好ましい形態の説明に限定されるべきではない。
【0075】
この明細書(添付の請求項、要約及び図面を含む)に開示されている全ての特徴は、明示的に別段の定めをした場合を除き、同一、同等又は類似した有効な代替的な特徴により置き換えてもよい。従って、明示的に別段の定めをした場合を除き、開示された各特徴は、一連の同等又は類似した特徴全体の一例に過ぎない。