(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1は、予め通常螺合雌ネジ孔を形成した通常螺合部と、予め非常時係合雌ネジ孔を形成した非常時係合部と、を互いにセレーション嵌合して一体化している。
しかし、通常螺合部と非常時係合部とからなるナットをこのような方法で製造する場合は、通常螺合部と非常時係合部のセレーション嵌合部を極めて精度よく製造しないと、セレーション嵌合した際に通常螺合部の通常螺合雌ネジ孔と非常時係合部の非常時係合雌ネジ孔どうしの接続部に段差が生じてしまう(両者の回転方向の位相がずれてしまう)。仮に段差が生じると、ナットとリードスクリューの相対移動が不円滑になったり、相対移動できなくなるおそれがある。
しかしながら、通常螺合部と非常時係合部のセレーション嵌合部を極めて精度よく製造するのは決して容易ではない。
【0005】
本発明は、二部材からなりかつ両者の雌ネジ孔の仕様が異なるナットを、当該二部材に形成した雌ネジ孔どうしを互いに精度よく連通させつつ製造することが可能なナットの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のナットの製造方法は、第一雌ネジ孔を有する第一螺合部と、上記第一雌ネジ孔とは仕様が異なりかつ位相が一致する第二雌ネジ孔を有する第二螺合部と、を備えるナットの製造方法において、上記第一螺合部と上記第二螺合部を一体化する一体化ステップ、及び一体化した上記第一螺合部及び上記第二螺合部の内部に対して、第一タップネジを挿脱することにより上記第一雌ネジ孔と上記第二雌ネジ孔の少なくとも一方を形成する雌ネジ孔形成ステップ、を有することを特徴としている。
【0007】
上記第一雌ネジ孔と上記第二雌ネジ孔の谷部の径が互いに異なってもよい。
【0008】
記第一タップネジが、上記第一雌ネジ孔と対応する形状の第一ネジ孔形成部及び該第一タップネジの軸線方向位置が該第一ネジ孔形成部とは異なりかつ上記第二雌ネジ孔と対応する形状である第二ネジ孔形成部を備え、上記雌ネジ孔形成ステップが、互いに一体化した上記第一螺合部及び上記第二螺合部の内部に上記第一タップネジを挿脱することにより、上記第一ネジ孔形成部により上記第一螺合部に上記第一雌ネジ孔を形成しかつ上記第二ネジ孔形成部により上記第二螺合部に上記第二雌ネジ孔を形成するステップであってもよい。
【0009】
小径ネジ孔形成部及び該第一タップネジの軸線方向位置が該小径ネジ孔形成部とは異なりかつ上記第二雌ネジ孔と対応する形状である第二ネジ孔形成部を有する上記第一タップネジと、上記小径ネジ孔形成部より大径かつ上記第一雌ネジ孔と対応する形状の第一ネジ孔形成部を有する、上記第一タップネジとは別の第二タップネジと、を備え、上記雌ネジ孔形成ステップが、互いに一体化した上記第一螺合部及び上記第二螺合部の内部に上記第一タップネジを挿脱することにより、上記小径ネジ孔形成部により上記第一螺合部に上記第一雌ネジ孔より小径の小径雌ネジ孔を形成しかつ上記第二ネジ孔形成部により上記第二螺合部に上記第二雌ネジ孔を形成する第一形成ステップと、上記第一螺合部に形成した上記小径雌ネジ孔に対して上記第二タップネジを挿入して上記第一ネジ孔形成部によって上記小径雌ネジ孔を拡径することにより、上記第一螺合部に上記第一雌ネジ孔を形成する第二形成ステップと、を備えてもよい。
【0010】
上記第一雌ネジ孔と対応する形状の第一ネジ孔形成部を有する上記第一タップネジと、上記第二雌ネジ孔と対応する形状をなしかつ上記第一ネジ孔形成部とは仕様が異なる第二ネジ孔形成部を有する、上記第一タップネジとは別の第二タップネジと、を備え、上記雌ネジ孔形成ステップが、互いに一体化した上記第一螺合部及び上記第二螺合部の内部に上記第一タップネジを挿脱することにより、上記第一ネジ孔形成部により上記第一螺合部及び上記第二螺合部に上記第一雌ネジ孔を形成する第一形成ステップと、上記第二螺合部に形成した上記第一雌ネジ孔に対して上記第二タップネジを挿脱して上記第二ネジ孔形成部によって上記第二螺合部の上記第一雌ネジ孔の仕様を変更することにより、上記第二螺合部に上記第二雌ネジ孔を形成する第二形成ステップと、を備えてもよい。
【0011】
上記第二タップネジの先端部に、上記第一螺合部と上記第二螺合部の少なくとも一方に形成した雌ネジ孔に対して該雌ネジ孔を削ることなく係合する誘い込み雄ネジ部を設けてもよい。
【0012】
上記第一タップネジと上記第二タップネジの少なくとも一方の上記第一螺合部及び上記第二螺合部に対する挿入位置を所定位置で規制する規制手段を備えてもよい。
【発明の効果】
【0013】
第一螺合部と第二螺合部を一体化した上で、第一螺合部及び第二螺合部の内部に対して第一タップネジによって第一雌ネジ孔と第二雌ネジ孔の少なくとも一方を形成するので、第一螺合部と第二螺合部に形成した雌ネジ孔どうしを互いに精度よく連通させながら(両者の回転方向の位相を合わせながら)ナットを製造ネジするのが容易である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、
図1−
図13を参照しながら本発明の第一の実施形態について説明する。なお以下の説明中の各方向は図中の矢印方向を基準としている。
本実施形態の送りネジ機構10は、リードスクリュー11と、ナット13と、ウォーム18と、を具備するものである。
【0016】
前後方向に直線的に延びる金属製のリードスクリュー11は外周面に螺旋状の雄ネジ12が形成された長尺のロッド状部材である。リードスクリュー11の前後両端部は図示を省略した支持部材を介して固定部材(図示略)に対して固定してある。
図2に示すようにリードスクリュー11の外周面に形成した雄ネジ12は、共に螺旋状の山部12-1と該山部12-1の間の谷部12-2とを有している。山部12-1は、リードスクリュー11の中心軸線11aに対して所定の角度で正逆に傾斜する一対のフランク面L1を両側面(前後面)に有する台形断面の突条であり、谷部12-2は、軸方向に隣接する一対の山部12-1によって挟まれる台形断面の凹溝である。雄ネジ12の断面形状(山部12-1及び谷部12-2の断面形状)とネジピッチ(中心軸線11aに沿う方向で隣接する2つの山部12-1の間隔。本実施形態では1.5mm)は、リードスクリュー11の全体に亘って均一である。本実施形態の山部12−1の外径(山部12−1の頂部の径)は8.0mmである。
【0017】
ナット13は、互いに同軸をなす筒状部材である通常螺合部14(第一螺合部)及び非常時係合部16(第二螺合部)からなる一体物である。
樹脂製の通常螺合部14は、外周面の前端部を除く部分に形成したウォームギヤ部14aと、内部の後端部を除く部分に形成した通常螺合雌ネジ孔14b(第一雌ネジ孔)と、内部の後端部に形成した通常螺合雌ネジ孔14bと同軸をなす接続孔14cと、を有する。
金属製の非常時係合部16は、ウォームギヤ部14aとほぼ同じ外径サイズの円環状部であるフランジ部16aと、フランジ部16aから前方へ延びる円筒状の接続部16bと、フランジ部16aから後方へ延びる円筒状の後方延長部16cと、を備えている。さらに非常時係合部16の内部にはその全長に亘って軸方向(前後方向)に延びかつ仕様(径及び山部16d−1の肉厚(前後幅))が通常螺合雌ネジ孔14bとは異なる非常時係合雌ネジ孔16d(第二雌ネジ孔)が形成してある。
通常螺合部14と非常時係合部16は、接続部16bが接続孔14cに対して嵌合しかつ接続孔14cと非常時係合雌ネジ孔16dが互いに同軸をなす態様で互いに固定状態で一体化してある。
【0018】
通常螺合部14と非常時係合部16を一体化することにより構成したナット13の雌ネジ孔(通常螺合雌ネジ孔14b、非常時係合雌ネジ孔16d)にはリードスクリュー11が貫通状態で挿入してある。またナット13のウォームギヤ部14aには、その軸線が中心軸線11aに対して直交するウォーム18が噛合している。さらにウォーム18は図示を省略したモータと接続しており、モータの出力(回転力)を受けると自身の軸線まわりに回転する。さらに、ナット13、ウォーム18、及びモータは、リードスクリュー11に対して中心軸線11a方向に相対スライド可能なスライド部材(図示略)に支持してある。但し、ナット13とウォーム18はスライド部材に対して各々の軸線まわりに回転可能である。
通常螺合部14の通常螺合雌ネジ孔14bは、雄ネジ12の谷部12-2に対応する(略同一断面形状である)台形断面の突条からなる山部14b−1と、山部12-1に対応する(略同一断面形状である)台形断面の凹溝からなる谷部14b−2と、を内周面に螺旋状に形成したネジ孔であり、そのピッチは1.5mmである。山部14b−1は、雄ネジ12側のフランク面L1と傾斜角が共通する一対のフランク面L2を両側面(前後面)に有しており、リードスクリュー11(雄ネジ12)を通常螺合雌ネジ孔14bに螺合するとフランク面L1に対してフランク面L2が摺動可能に当接する。この螺合関係によって、リードスクリュー11の中心軸線11aとナット13(通常螺合部14)の中心軸が一致する。従って、上記モータが回転してモータの回転力がウォーム18を介してウォームギヤ部14aに伝わると、ナット13が雄ネジ12と通常螺合雌ネジ孔14bの螺合関係に従ってリードスクリュー11に沿って直線移動するので、スライド部材(ウォーム18、モータ)がリードスクリュー11に沿って直線移動する。通常螺合部14は、ビビリ振動や異音を発生することなく、リードスクリュー11に対して円滑に前後動を行う。
【0019】
非常時係合部16の非常時係合雌ネジ孔16dは、通常螺合雌ネジ孔14bと同様に、台形断面の突条からなる山部16d−1と台形断面の凹溝からなる谷部16d−2を内周面に螺旋状に形成したネジ孔であり、そのピッチは1.5mmである。但し、その内径サイズ(仕様)は通常螺合雌ネジ孔14bよりも大きく設定してある。
図2のD1は山部14b−1の歯先位置を基準とした通常螺合雌ネジ孔14bの内径サイズを示し、同図のD2は山部16d−1の歯先位置を基準とした非常時係合雌ネジ孔16dの内径サイズを示しており、D2>D1の関係になっている。ただし、D1、D2はともに山部12−1の外径より小さい。
図2では歯先基準で示しているが、谷部14b−2の歯底位置と谷部16d−2の歯底位置を基準とした場合も、通常螺合雌ネジ孔14bより非常時係合雌ネジ孔16dの方が大きい内径サイズになっている。なお本実施形態では谷部14b−2の歯底位置を基準とした通常螺合雌ネジ孔14bの内径サイズは8.3mmであり、谷部16d−2の歯底位置を基準とした非常時係合雌ネジ孔16dの内径サイズは8.7mmである。山部16d−1は、雄ネジ12のフランク面L1や通常螺合雌ネジ孔14b(山部14b−1)のフランク面L2と傾斜角が共通する一対のフランク面L3を両側面(前後面)に有している。しかし、雄ネジ12に対して螺合する通常螺合雌ネジ孔14bよりも非常時係合雌ネジ孔16dの内径サイズを大きく設定してあり、さらに山部16d−1の肉厚(前後幅。仕様)は山部14b−1の肉厚より小さい。そのため通常時は非常時係合雌ネジ孔16dは雄ネジ12に対して螺合せず(接触せず)、フランク面L1に対してフランク面L3が離間する。
非常時係合部16は、上記スライド部材に対してスライド方向への通常使用状態を超える過大荷重が作用したときに、リードスクリュー11に対するナット13の移動を規制する補強用のストッパとして機能する。即ち、スライド部材に対して上記過大荷重が瞬間的に加わった場合には、通常螺合部14の通常螺合雌ネジ孔14bにおける山部14b−1が撓んでリードスクリュー11とナット13の軸方向の相対的な位置関係が変化する。この位置変化が所定以上に大きくなると、非常時係合部16の非常時係合雌ネジ孔16d(フランク面L3)がリードスクリュー11の雄ネジ12(フランク面L1)に係合し、この係合によってリードスクリュー11に対する非常時係合部16(ナット13)の軸方向移動が規制される。非常時係合部16は通常螺合部14よりも硬質(剛性が高い)の材質(金属)により構成してあるので、過大荷重に起因するナット13のスライドを規制するストッパとして確実に機能する。
【0020】
続いて、以上説明した機能を発揮可能なナット13の製造方法について説明する。
まず内部にネジ溝を具備しない貫通孔が形成してある(通常螺合雌ネジ孔14b、非常時係合雌ネジ孔16dが形成されていない)通常螺合部14と非常時係合部16を用意し、この通常螺合部14と非常時係合部16を固定状態で一体化する。通常螺合部14と非常時係合部16の一体化は、例えば
図3に示す非常時係合部16を成形型(図示略)内に位置させながら(通常螺合部14を構成する)流動性樹脂材料を成形型内に射出し、樹脂材料が通常螺合部14の形状をなしながら硬化した後に成形型を離型するインサート成形により実現できる。また、樹脂材料によって(通常螺合雌ネジ孔14bが形成されていない)通常螺合部14を予め成形した後に、この通常螺合部14と非常時係合部16を固定手段(例えば、通常螺合部14と非常時係合部16の間に形成したセレーション嵌合構造)によって固定してもよい。
【0021】
続いて、
図5−
図7に示す第一タップネジ20を用意し、図示を省略したホルダによってその軸線を前後方向に向けながら固定状態で支持する。
第一タップネジ20は通常螺合部14及び非常時係合部16より硬質の金属によって構成した直線状の部材である。第一タップネジ20の前部は小径部20Aにより構成してあり、第一タップネジ20には小径部20Aより大径の大径部20Bが形成してあり、さらに小径部20Aと大径部20Bの間は大径部20B側から小径部20A側に向かうにつれて縮径する傾斜部20Cにより構成してある。さらに小径部20A、大径部20B、傾斜部20Cには1.5mmのピッチで連続する単一の雄ネジ21が形成してある。この雄ネジは、小径部20Aに形成した小径ネジ孔形成部21Aと、大径部20Bに形成した非常時係合雌ネジ孔形成部21B(第二ネジ孔形成部)と、傾斜部20Cに形成した傾斜ネジ孔形成部21Cとからなるものである。小径ネジ孔形成部21Aは通常螺合雌ネジ孔14b(山部14b−1、谷部14b−2)より小径の雄ネジ部であり、その山部の外径は7.5mmである。非常時係合雌ネジ孔形成部21Bは非常時係合雌ネジ孔16d(山部16d−1、谷部16d−2)に対応する形状(略同一断面形状である)であり(小径ネジ孔形成部21A及び後述する通常螺合雌ネジ孔形成部26Bより大径であり)、その山部の外径は8.7mmである。さらに小径部20A、大径部20B、傾斜部20Cの外周面には螺旋溝からなりかつ両端が開口する切削屑排出溝22が凹設してある。
続いて、ナット13を図示を省略した回転直線手段によって支持しながら、
図5に示すようにナット13を第一タップネジ20の直前に同軸状態で位置させる。そして回転直線手段が、ナット13を前方から見たときに反時計方向に回転させながらナット13を後方へ直進移動させる。すると小径部20Aの前端部が後方延長部16cの内部孔に嵌合し(
図6参照)、やがて小径部20Aの前端部がナット13の前方へ突出する。そして
図7に示すように非常時係合雌ネジ孔形成部21Bの前端と非常時係合部16(接続部16b)の前端が一致したときに上記回転直線手段(規制手段)が回転及び直線移動を停止する。このように第一タップネジ20によって通常螺合部14及び非常時係合部16を切削すると、非常時係合部16の内部全体に非常時係合雌ネジ孔16d(山部16d−1、谷部16d−2)が形成される。また通常螺合部14の内部の後端部を除く部分全体に通常螺合雌ネジ孔14b(及び非常時係合雌ネジ孔16d)より小径の小径雌ネジ孔14dが形成される。さらに通常螺合部14の内部の後端部には、非常時係合雌ネジ孔16dの前端と小径雌ネジ孔14dの後端とをつなぐ形状の傾斜雌ネジ孔14eが形成される。これら非常時係合雌ネジ孔16dの谷部16d−2、傾斜雌ネジ孔14eの谷部、及び小径雌ネジ孔14dの谷部は互いに連通している。さらに通常螺合部14及び非常時係合部16から生じた切削屑が切削屑排出溝22によって第一タップネジ20の前方へ排出されるので、これらの切削屑はナット13から前方へ排出される。
さらに回転直線手段は、この後にナット13を前方から見たときに時計方向に回転させながらナット13を前方へ移動させて、ナット13全体を第一タップネジ20から前方へ引き抜く。
【0022】
続いて、上記ホルダから第一タップネジ20を取り外した後に、該ホルダによって
図9−
図12に示す第二タップネジ25を第一タップネジ20と同じ態様により固定状態で支持する(
図9参照)。
第二タップネジ25は通常螺合部14及び非常時係合部16より硬質の金属によって構成した直線状の部材である。第二タップネジ25の前部は誘い込み部25Aにより構成してあり、第二タップネジ25の後端部を含む大部分は誘い込み部25Aより大径の中間径部25Bにより構成してあり、さらに誘い込み部25Aと中間径部25Bの間は中間接続部25Cにより構成してある。中間接続部25Cは全体が中間径部25Bより小径であり、中間接続部25Cの前部は誘い込み部25Aより小径である。さらに誘い込み部25A、中間径部25B、中間接続部25Cには1.5mmのピッチで連続しかつ雄ネジ21とは仕様が異なる単一の雄ネジ26が形成してある。この雄ネジは、誘い込み部25Aに形成した誘い込み雄ネジ部26Aと、中間径部25Bに形成した通常螺合雌ネジ孔形成部26B(第一ネジ孔形成部)と、中間接続部25Cに形成した誘い込み雄ネジ部26Aと通常螺合雌ネジ孔形成部26Bを接続する雄ネジ部とからなるものである。誘い込み雄ネジ部26Aは非常時係合雌ネジ孔16d(非常時係合雌ネジ孔形成部21B)及び通常螺合雌ネジ孔14b(通常螺合雌ネジ孔形成部26B)より小径の雄ネジ部である。通常螺合雌ネジ孔形成部26Bは通常螺合雌ネジ孔14bと対応する形状(山部の外径が8.3mm)の雄ネジ部である。即ち、通常螺合雌ネジ孔形成部26Bは小径ネジ孔形成部21Aより大径かつ非常時係合雌ネジ孔形成部21Bより小径である。さらに誘い込み部25A、中間径部25B、中間接続部25Cの外周面には、螺旋溝からなりかつ両端が開口する切削屑排出溝27が凹設してある。
図9の状態で上記回転直線手段が、ナット13を前方から見たときに反時計方向に回転させながらナット13を後方へ直進移動させる。
すると誘い込み雄ネジ部26Aが非常時係合部16の非常時係合雌ネジ孔16dに遊嵌し(
図10参照)、さらに通常螺合雌ネジ孔形成部26Bが非常時係合雌ネジ孔16dに遊嵌する(
図11参照)。やがて通常螺合雌ネジ孔形成部26Bが小径雌ネジ孔14d及び傾斜雌ネジ孔14eを切削してこれらを拡径する(小径雌ネジ孔14d及び傾斜雌ネジ孔14eの谷部の深さ及び前後幅を大きくし、山部の前後方向の厚みを薄くする)ことにより、通常螺合部14に通常螺合雌ネジ孔14bを形成し、さらに誘い込み部25Aと中間接続部25Cがナット13の前方へ突出しかつ中間径部25Bの前端部がナット13の前方へ突出する。そして
図12に示すように、中間径部25Bのナット13の前方への突出量が所定量となったときに上記回転直線手段(規制手段)が回転及び直線移動を停止する。このように第二タップネジ25によって通常螺合部14を切削すると、通常螺合部14の内部全体(通常螺合雌ネジ孔14bと傾斜雌ネジ孔14eが形成してあった部位)に通常螺合雌ネジ孔14b(山部14b−1、谷部14b−2)が形成される。さらに通常螺合部14から生じた切削屑(及び、第一タップネジ20による切削時に非常時係合部16から生じた切削屑が通常螺合部14内に残留していた場合は当該切削屑)が切削屑排出溝27によって第二タップネジ25の前方へ排出されるので、これらの切削屑はナット13から前方へ排出される。
さらに回転直線手段は、この後にナット13を前方から見たときに時計方向に回転させながらナット13を前方へ移動させて、ナット13全体を第二タップネジ25から前方へ引き抜く。すると
図13に示すようにナット13の完成品が得られる。
【0023】
以上説明したように本実施形態では通常螺合部14と非常時係合部16を一体化した上で通常螺合部14と非常時係合部16に跨る雌ネジ孔(通常螺合雌ネジ孔14b、非常時係合雌ネジ孔16d)を第一タップネジ20及び第二タップネジ25を利用して形成するので、通常螺合部14に形成した通常螺合雌ネジ孔14b(の谷部14b−2)と非常時係合部16に形成した非常時係合雌ネジ孔16d(の谷部16d−2)どうしを互いに精度よく連通(山部14b−1と山部16d−1を連続)させながら(両者の回転方向の位相を合わせながら)ナット13を容易に製造できる。
【0024】
続いて本発明の第二の実施形態について
図14−
図20を参照しながら説明する。なお第一の実施形態と同じ部材には同じ符号を付すに止めて、その詳細な説明は省略する。
本実施形態では第一の実施形態とは異なる第一タップネジ30と第二タップネジ35を利用してナット13に通常螺合雌ネジ孔14bと非常時係合雌ネジ孔16dを形成する。
第一タップネジ30は通常螺合部14及び非常時係合部16より硬質の金属によって構成した直線状の部材である。第一タップネジ30の外径は全長に亘って同一であり、外周面全体に亘って1.5mmのピッチで連続する単一の通常螺合雌ネジ孔形成部31(雄ネジ)(第一ネジ孔形成部)が形成してある。この通常螺合雌ネジ孔形成部31は通常螺合雌ネジ孔14b(山部14b−1、谷部14b−2)に対応する形状(略同一断面形状である。即ち、通常螺合雌ネジ孔形成部26Bと同一仕様)であり、その山部の外径は8.3mmである。さらに通常螺合雌ネジ孔形成部31の外周面には、螺旋溝からなりかつ両端が開口する切削屑排出溝32が凹設してある。
第二タップネジ35は非常時係合部16より硬質の金属によって構成した直線状の部材である。第二タップネジ35の前部は誘い込み部35Aにより構成してあり、第二タップネジ35の中間部には誘い込み部35Aより大径の大径部35Bが形成してあり、さらに誘い込み部35Aと大径部35Bの間は中間接続部35Cにより構成してある。中間接続部35Cは全体が大径部35Bより小径であり、中間接続部35Cの前部は誘い込み部35Aより小径である。さらに誘い込み部35A、大径部35B、中間接続部35Cには1.5mmのピッチで連続する単一の雄ネジ36が形成してある。この雄ネジ36は、誘い込み部35Aに形成した誘い込み雄ネジ部36Aと、大径部35Bに形成した非常時係合雌ネジ孔形成部36B(第二ネジ孔形成部)と、中間接続部25Cに形成した誘い込み雄ネジ部36Aと非常時係合雌ネジ孔形成部36Bを接続する雄ネジ部とからなるものである。誘い込み雄ネジ部36Aは誘い込み雄ネジ部26Aと同一仕様の雄ネジ部であり、非常時係合雌ネジ孔形成部36Bは非常時係合雌ネジ孔形成部21Bと同一仕様の雄ネジ部である。さらに誘い込み部25A、中間径部25B、中間接続部25Cの外周面には、螺旋溝からなりかつ両端が開口する切削屑排出溝37が凹設してある。
【0025】
上記ホルダによって第一タップネジ30をその軸線を前後方向に向けながら固定状態で支持し、かつ、ネジ溝を具備しない貫通孔が形成してあるナット13を上記回転直線手段によって支持し、
図14に示すようにナット13を第一タップネジ30の直後に同軸状態で位置させる。そして回転直線手段が、ナット13を前方から見たときに反時計方向に回転させながらナット13を前方へ直進移動させる。すると第一タップネジ30が通常螺合部14及び非常時係合部16の内部孔に対して通常螺合部14側から嵌合し、やがて第一タップネジ30の後端部がナット13の後方へ突出する。そして
図15に示すように第一タップネジ30のナット13からの突出量が所定量となったときに上記回転直線手段(規制手段)が回転及び直線移動を停止する。このように第一タップネジ30によって通常螺合部14及び非常時係合部16を切削すると、通常螺合部14及び非常時係合部16の内部全体に(通常螺合部14及び非常時係合部16に跨る)通常螺合雌ネジ孔14b(山部14b−1、谷部14b−2)が形成される。さらに通常螺合部14及び非常時係合部16から生じた切削屑が切削屑排出溝32によって第一タップネジ30の後方へ排出されるので、これらの切削屑はナット13から後方へ排出される。
さらに回転直線手段は、この後にナット13を前方から見たときに時計方向に回転させながらナット13を後方へ移動させて、ナット13全体を第一タップネジ30から後方へ引き抜く。
【0026】
続いて、上記ホルダから第一タップネジ30を取り外した後に、該ホルダによって
図17−
図19に示す第二タップネジ35を固定状態で支持し、ナット13を第二タップネジ35の直前に同軸状態で位置させる(
図17参照)。
この状態で上記回転直線手段が、ナット13を前方から見たときに時計方向に回転させながらナット13を後方へ直進移動させる。
すると誘い込み雄ネジ部36Aが非常時係合部16の通常螺合雌ネジ孔14bに遊嵌し(
図18参照)、やがて誘い込み雄ネジ部36Aが通常螺合部14の通常螺合雌ネジ孔14bに遊嵌し、さらに非常時係合雌ネジ孔形成部36Bが非常時係合部16の通常螺合雌ネジ孔14bを切削してその谷部14b−2の深さ及び前後幅を大きくし山部14b−1の前後方向の厚みを薄くする。そして
図19に示すように、非常時係合雌ネジ孔形成部36Bの前端位置が非常時係合部16の前端位置と一致したときに上記回転直線手段(規制手段)が回転及び直線移動を停止する。このように第二タップネジ35の非常時係合雌ネジ孔形成部36Bによって非常時係合部16を切削すると、非常時係合部16の内部全体(通常螺合雌ネジ孔14bが形成してあった部位)に非常時係合雌ネジ孔16d(山部16d−1、谷部16d−2)が形成される(このとき、通常螺合部14内における通常螺合雌ネジ孔14bのピッチ数より非常時係合雌ネジ孔16dのピッチ数が多くならない範囲で、通常螺合部14の非常時係合部16側端部に非常時係合雌ネジ孔16dを数ピッチ分だけ形成してもよい)。さらに非常時係合部16から生じた切削屑が切削屑排出溝37によって第二タップネジ35の後方へ排出されるので、これらの切削屑はナット13から後方へ排出される。
さらに回転直線手段は、この後にナット13を前方から見たときに反時計方向に回転させながらナット13を前方へ移動させて、ナット13全体を第二タップネジ35から前方へ引き抜く。すると
図20に示すようにナット13の完成品が得られる。
【0027】
以上説明した第二の実施形態でも通常螺合部14と非常時係合部16を一体化した上で通常螺合部14と非常時係合部16に跨る雌ネジ孔(通常螺合雌ネジ孔14b、非常時係合雌ネジ孔16d)を第一タップネジ30及び第二タップネジ35を利用して形成するので、通常螺合部14に形成した通常螺合雌ネジ孔14b(の谷部14b−2)と非常時係合部16に形成した非常時係合雌ネジ孔16d(の谷部16d−2)どうしを互いに精度よく連通(山部14b−1と山部16d−1を連続)させながら(両者の回転方向の位相を合わせながら)ナット13を容易に製造できる。
【0028】
続いて本発明の第三の実施形態について
図21−
図23を参照しながら説明する。なお第一の実施形態と同じ部材には同じ符号を付すに止めて、その詳細な説明は省略する。
本実施形態では非常時係合部16’(第二螺合部)に対して非常時係合雌ネジ孔16dより小径かつ通常螺合雌ネジ孔14bと同径の中間径雌ネジ孔16eを予め設けてあり(
図21参照)、この非常時係合部16’とネジ溝を具備しない貫通孔が形成してある通常螺合部14を一体化することによりナット13を構成し、このナット13に対して上記回転直線手段、ホルダ、第一タップネジ30、及び第二タップネジ35を用いて雌ネジ孔を加工する。通常螺合部14の(ネジ溝を具備しない)上記貫通孔は中間径雌ネジ孔16eより小径である。
まずはナット13を第一タップネジ30の直後に同軸状態で位置させる。そして非常時係合部16の中間径雌ネジ孔16eと第一タップネジ30の通常螺合雌ネジ孔形成部31の回転方向の位相を合わせた上で(中間径雌ネジ孔16eが位置する仮想螺旋上に通常螺合雌ネジ孔形成部31を位置させた上で)、第二の実施形態の第一タップネジ30を用いた切削工程と同じ要領によって、通常螺合部14の内部孔に対して通常螺合雌ネジ孔14bを切削加工する。このとき第一タップネジ30の通常螺合雌ネジ孔形成部31が非常時係合部16を貫通するが、非常時係合部16に形成してある中間径雌ネジ孔16eは通常螺合雌ネジ孔14bと同径であるため、通常螺合雌ネジ孔形成部31によって非常時係合部16の内面が切削されることはない。
続いて、上記ホルダから第一タップネジ30を取り外した後に、該ホルダによって第二タップネジ35を固定状態で支持し、ナット13を第二タップネジ35の直前に同軸状態で位置させる。そして第二の実施形態の第二タップネジ35を用いた切削工程と同じ要領によって、非常時係合部16の中間径雌ネジ孔16eに対して非常時係合雌ネジ孔16dを切削加工する。
以上説明した第三の実施形態でも通常螺合部14と非常時係合部16を一体化した上で通常螺合部14と非常時係合部16に跨る雌ネジ孔(通常螺合雌ネジ孔14b、非常時係合雌ネジ孔16d)を第一タップネジ30及び第二タップネジ35を利用して形成するので、通常螺合部14に形成した通常螺合雌ネジ孔14b(の谷部14b−2)と非常時係合部16に形成した非常時係合雌ネジ孔16d(の谷部16d−2)どうしを互いに精度よく連通(山部14b−1と山部16d−1を連続)させながら(両者の回転方向の位相を合わせながら)ナット13を容易に製造できる。
【0029】
以上、上記実施形態を用いて本発明を説明したが、本発明は様々な変更を施しながら実施可能である。
例えば第一の実施形態において第一タップネジ20の小径ネジ孔形成部21Aの仕様を通常螺合雌ネジ孔14bに対応する形状とし(その山部の外径を8.3mmとする。即ち、この場合はこの小径ネジ孔形成部21Aが「第一ネジ孔形成部」に相当する)、第二タップネジ25による切削工程を省略してもよい。また第三の実施形態において非常時係合部16’に対して予め(通常螺合部14と一体化する前に)非常時係合雌ネジ孔16dを形成しておき、第二タップネジ35による切削工程を省略してもよい。このようにすれば第一タップネジ20、30を用いた一回の切削工程によってナット13に対して通常螺合雌ネジ孔14bと非常時係合雌ネジ孔16dを形成可能になる。
第一タップネジ20、30や第二タップネジ25、35を軸線まわりに回転させながら前後方向に移動させることにより、固定状態のナット13に対して雌ネジ孔を加工してもよい。また第一タップネジ20、30及び第二タップネジ25、35とナット13との一方を前後動を規制した状態で自身の軸線まわりに回転させ、他方を自身の軸線まわりの回転を規制しながら前後方向に直線移動させることにより、ナット13に対して雌ネジ孔を加工してもよい。
【0030】
通常螺合雌ネジ孔14bは通常螺合部14全体に形成する必要はなく、例えば通常螺合部14の後端部(非常時係合部16側の端部)に非常時係合雌ネジ孔16dを形成し、通常螺合部14の後端部より前方に位置する部分に通常螺合雌ネジ孔14bを形成してもよい。
また通常螺合部14に形成する通常螺合雌ネジ孔14bと非常時係合部16に形成する非常時係合雌ネジ孔16dの仕様を上記実施形態とは異なる態様で変えても良い。例えば、通常螺合雌ネジ孔14bと非常時係合雌ネジ孔16dの内径は同一径であってもよい。ただし、この場合も非常時係合雌ネジ孔16dの山部16d−1の肉厚(前後幅)を通常螺合雌ネジ孔14bの山部14b−1の肉厚より小さくすることにより(谷部16d−2の前後幅を谷部14b−2の前後幅より大きくすることにより)、通常状態においてはリードスクリュー11(雄ネジ12)に対して通常螺合部14の通常螺合雌ネジ孔14bのみが螺合する(非常時係合雌ネジ孔16dは螺合しない)ようにする必要がある。
【0031】
通常螺合部14と非常時係合部16を上記とは別の材料によって成形してもよい。但し、非常時係合部16を構成する材料は通常螺合部14を構成する材料より硬質である必要があり、さらに通常螺合部14と非常時係合部16の構成材料は第一タップネジ20、第二タップネジ25、第一タップネジ30、第二タップネジ35の構成材料より軟質である必要がある。
【0032】
上記スライド部材に対してナット13を回転規制した上で固定し、上記固定部材に対して前後動を規制したリードスクリュー11を中心軸線11a回りに回転させることにより、ナット13(スライド部材)をリードスクリュー11に対して進退させてもよい。また、ナット13を固定部材に対して固定(回転も規制)した上で、ナット13に螺合した(上記固定部材に対してスライド自在な)リードスクリュー11をその軸線まわりに回転させることにより、リードスクリュー11をナット13に対して中心軸線11a方向にスライドさせてもよい。さらにナット13を固定部材に対して前後動を規制した上でナット13を回転させることにより、上記固定部材に対してスライド自在かつ中心軸線11a回りに回転規制されたリードスクリュー11を中心軸線11a方向に進退させてもよい。
リードスクリュー11、ナット13、各タップネジ20、25、30、35のネジのピッチや径は上記のものには限定されず、上記のものとは異なる大きさであってもよい。
各タップネジ20、25、30、35によって通常螺合部14と非常時係合部16に雌ネジ孔を切削加工する際の、各タップネジ20、25、30、35の通常螺合部14や非常時係合部16に対する挿入停止位置を機械的ストッパ(例えば、通常螺合部14や非常時係合部16の端面に当接することにより各タップネジ20、25、30、35の移動を規制する、各タップネジ20、25、30、35に設けたストッパ)により構成してもよい。
【0033】
第一螺合部14の第一雌ネジ孔14bの径を第二螺合部16の第二雌ネジ孔16dの径より大きくしたり(成形用雄ネジ部21Aの径を対応形状雄ネジ部21Bの径より大きくしたり)、第一雌ネジ孔14bの山部14b−1の前後幅を第二雌ネジ孔16dの山部16d−1の前後幅より小さく(成形用雄ネジ部21Aの谷部21A−2の前後幅を対応形状雄ネジ部21Bの谷部21B−2の前後幅より小さく)してもよい。