(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6548897
(24)【登録日】2019年7月5日
(45)【発行日】2019年7月24日
(54)【発明の名称】同種異系細胞の医療用途の誘導のための方法及び組成物並びに治療的利用
(51)【国際特許分類】
C12N 5/0775 20100101AFI20190711BHJP
A61L 27/38 20060101ALI20190711BHJP
A61K 35/44 20150101ALI20190711BHJP
A61P 1/16 20060101ALI20190711BHJP
A61P 3/10 20060101ALI20190711BHJP
A61P 9/00 20060101ALI20190711BHJP
A61P 9/10 20060101ALI20190711BHJP
A61P 11/00 20060101ALI20190711BHJP
A61P 11/06 20060101ALI20190711BHJP
A61P 13/12 20060101ALI20190711BHJP
A61P 15/10 20060101ALI20190711BHJP
A61P 17/02 20060101ALI20190711BHJP
A61P 19/00 20060101ALI20190711BHJP
A61P 19/02 20060101ALI20190711BHJP
A61P 25/00 20060101ALI20190711BHJP
A61P 37/02 20060101ALI20190711BHJP
A61P 37/06 20060101ALI20190711BHJP
A61P 39/00 20060101ALI20190711BHJP
【FI】
C12N5/0775
A61L27/38
A61K35/44
A61P1/16
A61P3/10
A61P9/00
A61P9/10
A61P11/00
A61P11/06
A61P13/12
A61P15/10
A61P17/02
A61P19/00
A61P19/02
A61P25/00
A61P37/02
A61P37/06
A61P39/00
【請求項の数】30
【全頁数】24
(21)【出願番号】特願2014-550544(P2014-550544)
(86)(22)【出願日】2012年12月31日
(65)【公表番号】特表2015-503918(P2015-503918A)
(43)【公表日】2015年2月5日
(86)【国際出願番号】US2012072331
(87)【国際公開番号】WO2013102219
(87)【国際公開日】20130704
【審査請求日】2015年12月22日
(31)【優先権主張番号】61/582,070
(32)【優先日】2011年12月30日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】61/591,211
(32)【優先日】2012年1月26日
(33)【優先権主張国】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】514165897
【氏名又は名称】パテル、アミット
(74)【代理人】
【識別番号】100104411
【弁理士】
【氏名又は名称】矢口 太郎
(72)【発明者】
【氏名】パテル、アミット
【審査官】
川口 裕美子
(56)【参考文献】
【文献】
国際公開第2011/038133(WO,A1)
【文献】
特表2008−509699(JP,A)
【文献】
Marc G. Jeschke et al.,Umbilical Cord Lining Membrane and Wharton’s Jelly-Derived Mesenchymal Stem Cells: the Similarities and Differences,The Open Tissue Engineering and Regenerative Medicine Journal,2011年12月30日
【文献】
Kita K,Isolation and characterization of mesenchymal stem cells from the sub-amniotic human umbilical cord lining membrane.,Stem Cells Dev.,2010年 4月,Vol.19, No.4,491-502
【文献】
CHIARA CAPELLI,Minimally manipulated whole human umbilical cord is a rich source of clinical-grade human mesenchymal stromal cells expanded in human platelet lysate ,Cytotherapy,2011年 3月18日,13,786-801
【文献】
ES細胞から中胚葉系細胞への分化 ,医学のあゆみ ,2007年 1月13日,第220巻 第2号,165-169
【文献】
高久 史麿 ,再生医学の現状と展望 ,医学のあゆみ ,2001年 2月 3日,第196巻 第5号,287-290
【文献】
D.T. Covas et al.,Isolation and culture of umbilical vein mesenchymal stem cells,Brazilian Journal of Medical and Biological Research,2003年,Vol.36,1179-1183
【文献】
Mehdi Kadivar et al.,In vitro cardiomyogenic potential of human umbilicalvein-derived mesenchymal stem cells ,Biochemical and Biophysical Research Communications,2006年,Vol.340,639-647
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 5/0775
A61K 35/44
A61L 27/38
JSTPlus/JMEDPlus(JDreamIII)
PubMed
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自己複製能及び培養増殖能を有する哺乳類の臍帯組織の上皮下層から得られる単離細胞であって、
前記単離細胞は、CD73、CD90、CD166、SSEA4、CD9、CD44、CD146、及びCD105を発現し、
前記単離細胞は、Nanog、CD106、Stro−1、CD34、CD80、及びHLA−DRを発現しないものである、単離細胞。
【請求項2】
請求項1記載の単離細胞において、当該単離細胞はSOX2について陽性である、単離細胞。
【請求項3】
請求項1記載の単離細胞において、当該単離細胞はOCT4について陽性である、単離細胞。
【請求項4】
請求項1記載の単離細胞において、当該単離細胞はSOX2及びOCT4について陽性である、単離細胞。
【請求項5】
請求項1記載の単離細胞において、当該単離細胞は、脂肪細胞、軟骨細胞、骨細胞、心筋細胞、内皮細胞、及び筋細胞から成る群から選択される細胞型への分化能を持つものである、単離細胞。
【請求項6】
請求項1記載の単離細胞において、当該単離細胞はCD63を発現するエキソソームを生成するものである、単離細胞。
【請求項7】
細胞培養物となるまで増殖された請求項1記載の単離細胞。
【請求項8】
請求項1記載の単離細胞由来の単離エキソソームであって、当該エキソソームはCD63を発現するものである、単離エキソソーム。
【請求項9】
哺乳類の臍帯の上皮下層から得られる幹細胞を培養する方法であって、
前記臍帯から前記上皮下層を切り取る工程と、
前記切り取った上皮下層を、当該上皮下層の内壁側が基材と接触するように当該内壁側を下にして当該基材の上に置く工程と、
前記基材上の前記上皮下層を培養する工程と、
初代細胞増殖のために外植体を取り出す工程であって、前記外植体はNanog、CD106、及びStro−1を発現しない、前記取り出す工程と
を有する、方法。
【請求項10】
請求項9記載の方法において、前記上皮下層を切り取る工程は、前記臍帯からワルトンゼリーを除去する工程をさらに含むものである、方法。
【請求項11】
請求項9記載の方法において、前記上皮下層は血小板溶解物を有する培地中で培養されるものである、方法。
【請求項12】
請求項11記載の方法において、前記血小板溶解物はヒト又は動物の血小板溶解物である、方法。
【請求項13】
請求項11記載の方法において、前記培地はヒト及び動物由来成分不含有の成分に由来するものである、方法。
【請求項14】
請求項9記載の方法において、前記基材は培養皿である、方法。
【請求項15】
請求項14記載の方法において、前記培養皿は、細胞培養用処理済プラスチックであり、当該細胞培養用処理済プラスチックに何ら追加的な前処理をすることなく、その上に前記上皮下層が置かれるものである、方法。
【請求項16】
請求項9記載の方法において、前記基材は半固体の細胞培養基材である、方法。
【請求項17】
請求項9記載の方法において、前記上皮下層は正常酸素環境下で培養されるものである、方法。
【請求項18】
請求項9記載の方法において、前記上皮下層は低酸素環境下で培養されるものである、方法。
【請求項19】
請求項9記載の方法において、前記上皮下層を培養する工程および前記外植体を取り出す工程は、一切酵素を使用することなく行われるものである、方法。
【請求項20】
請求項9記載の方法であって、さらに、前記外植体を継代培養する工程を有する、方法。
【請求項21】
請求項20記載の方法において、前記継代培養する工程は、一切酵素を使用することなく行われるものである、方法。
【請求項22】
請求項1記載の細胞による治療に応答する医学的症状を治療するための薬剤を製造するための請求項1記載の細胞の使用であって、前記薬剤は当該医学的症状を持つ個体に導入される、使用。
【請求項23】
請求項22記載の使用において、前記医学的症状は、COPD、糖尿病、虚血、変形性関節症、整形外科的障害、肝臓障害、慢性治療抵抗性狭心症、勃起不全、脊髄損傷、椎間板ヘルニア、うっ血性心不全、喘息、肺気腫、創傷、急性放射線症候群、自己免疫疾患、虚血性臓器不全、移植片対宿主病、及びこれらの組み合せから成る群から選択される症状を含むものである、使用。
【請求項24】
請求項22記載の使用において、前記個体への細胞の導入は、前記個体の臓器に対する前記細胞の逆行性送達または順行性送達をさらに含むものである、使用。
【請求項25】
請求項24記載の使用において、前記臓器は、心臓、肝臓、腎臓、脳、膵臓、及びこれらの組み合せから成る群から選択される臓器を含むものである、使用。
【請求項26】
COPDに有効な活性物質を製造するための請求項1記載の細胞またはそれから分化した細胞の使用であって、
前記COPDに有効な活性物質は被験体に静脈内投与されて、当該被験体の肺の下半分に送達され、
前記COPDに有効な活性物質はエアロゾル化した形態で換気を介して前記被験体に投与されて、前記被験体の肺の上半分に送達され、
前記COPDに有効な活性物質は請求項1記載の細胞またはそれから分化した細胞を含む、使用。
【請求項27】
請求項26記載の使用において、前記細胞は、エアロゾライザによって約6〜約200ミクロンの大きさにエアロゾル化されるものである、使用。
【請求項28】
請求項26記載の使用において、前記投与は同時に行われるものである、使用。
【請求項29】
請求項26記載の使用において、前記投与は連続的に行われるものである、使用。
【請求項30】
請求項26記載の使用において、前記COPDに有効な活性物質は、細胞培養物に由来する、エキソソーム、細胞溶解物、タンパク質抽出物、及びこれらの組み合せから成る群から選択される物質を含むものである、使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2011年12月30日出願の米国仮特許出願61/582070号、及び2012年1月26日出願の米国仮特許出願61/591211号に対して優先権を主張するものであり、これらの両方が参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0002】
本発明は幹細胞及びそれらに関連する様々な態様に関する。したがって、本発明は化学、生命科学、及び医学の分野に関わる。
【背景技術】
【0003】
様々な細胞及び幹細胞の集合が、研究的な利用において価値を持つことが示されてきた。しかしながら、こうした細胞型のヒト及び動物における治療的な利用を目的とした医療的な橋渡し研究の成果は、同種異系間の問題など多くの理由により限定的なものとなっている。
この出願の発明に関連する先行技術文献情報としては、以下のものがある(国際出願日以降国際段階で引用された文献及び他国に国内移行した際に引用された文献を含む)。
(先行技術文献)
(特許文献)
(特許文献1) 米国特許出願公開第2011/0312091号明細書
(特許文献2) 米国特許出願公開第2010/0216237号明細書
(特許文献3) 韓国公開特許第10−2009−0109575号公報
(非特許文献)
(非特許文献1) CAO.FU−JIANG et al.,‘Human umbilical cord mesenchymal stem cells and the treatment of spinal cord injury’,January 2009,Chinese Medical Journal,V0l.122,No.2,pp.225−231.
(非特許文献1) QIAO,CHUN et al.,‘Human mesenchymal stem cells isolated from the umbilical cord’,Cell Biology International,January 2008,Vol.32,No.1,pp.8−15.
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
本開示は、様々な細胞、幹細胞、及び幹細胞構成成分を提供するものであって、こうした細胞を作成及び使用する関連方法を含む。一態様においては、例えば、自己複製能及び培養増殖能を持った、哺乳類の臍帯組織の上皮下層から得られる単離細胞が提供される。このような単離細胞は、CD29、CD73、CD90、CD166、SSEA4、CD9、CD44、CD146、又はCD105から選択される少なくとも3つの細胞マーカーを発現し、CD45、CD34、CD14、CD79、CD106、CD86、CD80、CD19、CD117、Stro−1、又はHLA−DRから選択される少なくとも3つの細胞マーカーを発現しない。別の態様においては、前記単離細胞はCD29、CD73、CD90、CD166、SSEA4、CD9、CD44、CD146、及びCD105を発現する。さらに別の態様においては、前記単離細胞はCD45、CD34、CD14、CD79、CD106、CD86、CD80、CD19、CD117、Stro−1、及びHLA−DRを発現しない。幾つかの態様においては、前記単離細胞はSOX2、OCT4、又はSOX2及びOCT4について陽性であってもよい。さらなる態様においては、前記単離細胞はCD63、CD9、又はその両方を発現するエキソソームを生成する。本発明の範囲は単離細胞の培養を含むと理解される。
【0005】
本開示の態様によると前記細胞は様々な細胞型へと分化可能であり、そのような細胞型の全てが本発明の範囲内に入ると考えられる。このような細胞型の非限定的な実施例には、脂肪細胞、軟骨細胞、骨細胞、心筋細胞、内皮細胞、及び筋細胞など、並びにこれらの組合せが含まれる可能性がある。
【0006】
様々な細胞及び細胞生産物が、本明細書で説明される単離細胞に由来し、そうした細胞及び細胞生産物の全てが本発明の範囲内に入ると考えられる。一態様においては、例えば、本開示は前記単離細胞由来の単離エキソソームを提供するものであって、当該エキソソームはCD63、CD9、又はその両方を発現する。別の態様においては、前記単離細胞から分化した脂肪細胞が提供される。さらに別の態様においては、前記単離細胞から分化した軟骨細胞が提供される。さらなる態様においては、前記単離細胞から分化した骨細胞が提供される。その上のさらなる態様においては、前記単離細胞から分化した心筋細胞が提供される。さらに、脂肪細胞、軟骨細胞、骨細胞、又は心筋細胞から選択された少なくとも1つの細胞型を含む、前記単離細胞由来の分化細胞の培養物が提供される。
【0007】
別の態様においては、本開示は哺乳類の臍帯の上皮下層からの幹細胞を培養する方法を提供する。そうした方法は、前記臍帯から上皮下層を切り取る工程と、当該切り取った上皮下層を、基材と接触するように内壁側を下にして当該基材の上に置く工程と、当該基材上の当該上皮下層を培養する工程とを含んでもよい。前記方法は追加的に、初代細胞培養物のために外植体を取り出す工程を含んでもよい。一態様においては、前記上皮下層を切り取る工程は、前記臍帯からワルトンゼリーを除去する工程をさらに含んでいてもよい。
【0008】
前記上皮下層は、そこから外植体を生成可能な任意の培地中で培養可能であり、そうした任意の培地は本発明の範囲内に入ると考えられる。しかしながら特定の一態様においては、そうした培養培地の一つに血小板溶解物が含まれていてもよい。別の態様においては、前記培養培地はヒト又は動物の血小板溶解物を含んでもよい。さらに別の態様においては、前記培養培地はヒト及び動物由来成分不含有の成分に由来するものであってもよい。
【0009】
前記上皮下層は培養するために用いられる基材は、そこから外植体を誘導可能な任意の基材であってもよい。一態様においては、前記基材はポリマー基材であってもよい。そうしたポリマー基材の一例は、培養皿である。特定の一態様においては、前記培養皿は細胞培養用処理済プラスチックであってもよく、当該細胞培養用処理済プラスチックに何の追加的な前処理をすることなく、その上に前記上皮下層が置かれてもよい。別の態様においては、前記基材は半固体の細胞培養基材であってもよい。前記上皮下層を培養処理の間支持可能な、任意の種類の半固体基材が本発明の範囲内に入ると考えられる。
【0010】
様々な培養条件が予想され、そうした条件は実験プロトコル及び要求される様々な結果によって変化する可能性があると解される。例えば一態様においては、前記上皮下層は正常酸素環境下で培養されてもよい。別の態様においては、前記上皮下層は低酸素環境下で培養されてもよい。加えて、幾つかの態様においては、前記上皮下層の培養及び前記外植体の取り出しを、一切酵素を使用することなく行ってもよい。さらに、幾つかの態様においては、前記外植体及び/又は前記外植体から得られた細胞の継代培養を、一切酵素を使用することなく行ってもよい。
【0011】
本開示のさらに別の態様においては、本明細書中の単離細胞による治療に応答する医学的症状の治療方法は、そのような細胞を当該医学的症状を持つ個人に導入する工程を含んでもよい。これらの細胞療法を利用することにより利点を提供可能な任意の症状を治療することができる。そうした医学的症状の非限定的な例は、COPD、糖尿病、虚血、変形性関節症、整形外科的障害、肝臓障害、慢性治療抵抗性狭心症、勃起不全、脊髄損傷、椎間板ヘルニア、うっ血性心不全、喘息、肺気腫、創傷、急性放射線症候群、自己免疫疾患、虚血性臓器不全、及び移植片対宿主病など、並びにこれらの組み合せを含む。加えて、別の態様においては、本明細書中の分化細胞による治療に応答する医学的症状の治療方法は、少なくとも1種類の当該分化細胞を当該医学的症状を持つ個人に導入する工程を含んでもよい。
【0012】
さらなる態様においては、COPDの治療方法が提供される。そうした方法は、静注により被験者にCOPDに有効な活性物質を投与する工程であって、当該COPDに有効な活性物質を当該被験者の肺の下半分に送達する前記投与する工程と、当該COPDに有効な活性物質をエアロゾル化した形で換気を介して当該被験者に投与する工程であって、当該COPDに有効な活性物質を当該被験者の肺の上半分に送達する前記投与する工程とを含んでもよい。一態様においては、前記COPDに有効な活性物質は幹細胞を含む。さらに別の態様においては、前記幹細胞は本明細書中で記載されている哺乳類の臍帯の上皮下層に由来する細胞を含んでいてもよい。特定の一態様においては、前記幹細胞はエアロゾライザによって約6〜約200ミクロンの大きさにエアロゾル化されてもよい。加えて、前記2種類の投与方法が、連続的又は同時に行われてもよい。
【0013】
別の態様においては、前記COPDに有効な活性物質は、幹細胞ではない活性物質であってもよい。そうしたCOPDに有効な活性物質の非限定的な例は、細胞培養物に由来する、エキソソーム、細胞溶解物、及びタンパク質抽出物など、並びにこれらの組合せを含んでもよい。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】
図1は本開示の一態様による、臍帯の組織切片の画像を示しており上皮下層が確認される。
【
図2】
図2A〜Cは本開示の別の態様による、前記上皮下層から遊走する細胞の外植体と、細胞の染色体分析とを示している。
【
図3】
図3は本開示の別の態様による、臍帯由来細胞又は幹細胞により発現された細胞決定マーカーのFACS分析を示している。
【
図4】
図4A〜Dは本開示の別の態様による、臍帯由来細胞又は幹細胞から抽出したRNAのRT−PCR解析及び細胞の免疫細胞化学染色の画像を示している。
【
図5】
図5は本開示の別の態様による、臍帯組織由来細胞又は幹細胞の半固体のPRP基材又はPL溶解物中での培養の画像を示している。
【
図6A-B】
図6A〜Bは本開示の別の態様による、細胞外エキソソームのサイズ分析及びエキソソームの走査電子顕微鏡像を示している。
【
図6C】
図6Cは本開示の別の態様による、臍帯由来細胞又は幹細胞より生成されたエキソソームのCD63の発現を示している。
【
図7】
図7A〜Dは本開示の別の態様による、臍帯組織由来細胞又は幹細胞の脂肪細胞系への分化を実証する画像を示している。
【
図8】
図8A〜Dは本開示の別の態様による、臍帯組織由来細胞又は幹細胞の骨細胞系への分化を実証する画像を示している。
【
図9】
図9A〜Bは本開示の別の態様による、臍帯組織由来細胞又は幹細胞の軟骨細胞系への分化を実証する画像を示している
【
図10】
図10A〜Dは本開示の別の態様による、臍帯組織由来細胞又は幹細胞の軟骨細胞系への分化を実証する画像を示している
【
図11】
図11A〜Bは本開示の別の態様による、慢性虚血肢及び経時的な疼痛知覚に関するデータを示している。
【
図12】
図12は本開示の別の態様による、細胞の心臓への送達を実証する血管造影図の画像を示している。
【
図13】
図13は本開示の別の態様による、細胞の心臓への送達を実証する血管造影図の一連の画像を示している。
【
図14】
図14A〜Dは本開示の別の態様による、80歳の女性の関節内空間に幹細胞を送達する前及び送達した後の膝の画像を示している。
【
図15】
図15A〜Bは本開示の別の態様による、急性放射線症候群に関するデータを示している。
【
図16】
図16は本開示の別の態様による、急性放射線症候群に関するデータを示している。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本開示が明細書中で説明される前に、本開示は明細書中の特定の構造、処理工程、又は素材に限定されるものではなく、関連技術分野の当業者により認識されるであろうそれらの同等物にまで拡張されるものであることは、理解されるべきである。本明細書中において使用される用語は、具体例を記載するためだけに使用されているものであり、制限することを意図したものではないことも理解されるべきである。
【0016】
定義
以下の用語は後述する定義に従って使用される。
【0017】
本明細書及び添付の請求項において使用される場合、単数形の「a」、「an」、及び「the」は文脈において明らかに別記されない限り、複数形への言及も含むことが留意されるべきである。例えば、「ある細胞(a cell)」への言及は1つ又は複数のそうした細胞を含むものであり、「このフラスコ(the flask)」への言及は1つ又は複数のそうしたフラスコを含むものである。
【0018】
本明細書中で使用される用語「単離細胞」は、哺乳類の臍帯の上皮下層から単離された細胞を指すものである。
【0019】
本明細書中で使用される用語「実質的に」は、行動、特徴、性質、状態、構造、品目、又は結果の、程度又は段階が完全又はほぼ完全であることを指すものである。例えば、「実質的に」封入された物体とは、当該物体が完全に封入されているか、またはほぼ完全に封入されていることを意味するものである。絶対的な完全性から正確にどの程度変化することが許容可能かどうかは、場合により具体的な文脈に依存してもよい。しかしながら、一般的には、この完全性の程度は、絶対的かつ全体的な完全性が達成された場合と全体的に同様な結果を得るためのものである。「実質的に」の使用は、否定的な含意において用いられる場合も等しく適用可能であり、行動、特徴、性質、状態、構造、品目、又は結果の、完全またはほぼ完全な欠如を指すものである。例えば、ある粒子を「実質的に不含有の」組成物は、粒子を完全に欠いているか、又は粒子をほぼ完全に欠いていておりその効果が粒子を完全に欠いているのと同様であるかのどちらかである。言い換えれば、ある成分又は要素を「実質的に不含有の」組成物は、そうした品目を、それらの効果が測定可能でない限り、実際に含有していてもよい。
【0020】
本名細書中で使用される用語「約」は、数値的な範囲の端点に対して、所与の数値が当該端点の「やや上」又は「やや下」であってもよいと規定することによって柔軟性を与えるために使用される。
【0021】
本明細書中で使用される、複数の物品、構造的要素、組成的要素、及び/又は素材は、便宜のために共通の一覧の中に提示されることがある。しかしながら、こうした一覧は、当該一覧の各項目が、独立した唯一の項目として個々に区別されるものとして解釈されるべきである。したがって、そうした一覧の個々のいずれの項目も、同一の一覧の他のいずれの項目に対して、共通の群の中にそれらの項目が示されているという事実だけに基づいて、事実上の同等物であるとは、その逆となるような示唆が無い限り、解釈されるべきではない。
【0022】
濃度、量、及び他の数値データは、範囲の形で本明細書中に表現又は提示されていてもよい。そうした範囲の形は、単に便宜と簡略化のために使用されていると解釈されるべきであり、したがって、当該範囲の境界として明示的に記述された数値だけでなく、当該範囲内に包含される個々の数値又は部分的範囲の全ても、各数値及び部分的範囲が明示的に記述されたかのように、当該範囲に含まれると柔軟に解釈されるべきである。具体例としては、数値的範囲である「約1〜約5」は、約1〜約5において明示的に記述された数値だけでなく、この示された範囲中の個々の値及び部分的範囲も含むと解釈されるべきである。したがってこの数値的範囲には、2、3、及び4のような個々の値と、1〜3、2〜4、及び3〜5などの部分的範囲と、個々に1、2、3、4、及び5とが含まれる。
【0023】
これと同じ原則が、1つの数値を最小値又は最大値として記述している場合にも適用される。さらに、こうした解釈は、範囲の広さ又は説明されている特徴を問わず適用されるべきである。
【0024】
開示
本開示は、広範囲の症状を治療するために利用可能な、同種異系細胞集団又は幹細胞集団の新規の発見を公開するものである。さらに本開示は、幾つかの場合において動物の生産物又は酵素を使用することなく、こうした細胞を培養する新規の培地及び方法を説明するものである。したがって、細胞、幹細胞、細胞培養物、及び関連する方法であって、こうした細胞を単離する方法、培養する方法、発達させる方法、又はその他に生成する方法を含む前記方法が提供されるものである。本開示の範囲は、そうした細胞及び細胞培養物(それらに由来する化合物を含む)の、研究及び治療的利用をさらに包含するものである。
【0025】
一例として、前記細胞及び幹細胞の集団並びにこれらの集団に由来する化合物を、同種異系の適用先において用いることで、心疾患、整形外科的疾患、自己免疫疾患、糖尿病、循環器系疾患、神経疾患、勃起不全、脊髄損傷、椎間板ヘルニア、重症虚血肢、高血圧、創傷治癒、潰瘍、慢性閉塞性肺疾患、急性放射線症候群、移植片対宿主病、及び虚血性臓器不全などを含むがこれらに限定されない、広範囲の症状を治療することができる。また、創薬及び開発、並びに毒性試験に使用可能な、細胞集団及び幹細胞集団、並びに化合物を生成する方法も説明されるものである。これらの細胞集団及び幹細胞集団由来の化合物の例は、当該細胞集団及び幹細胞集団に特異的なタンパク質、RNA、及びマイクロRNAなどを含有する小胞である。
【0026】
一態様においては、自己複製能及び培養増殖能を有する哺乳類の臍帯組織の上皮下層から得られる単離細胞が提供される。そうした細胞は、ある細胞型に分化可能であり、当該細胞型は、一態様においては例えば、脂肪細胞、軟骨細胞、骨細胞、心筋細胞などである。別の態様においては、そうした細胞型の非限定的な例には、白色、褐色、又はベージュの脂肪細胞、軟骨細胞、骨細胞、心筋細胞、内皮細胞、筋細胞など、及びこれらの組合せが含まれてもよい。そうした細胞型の他の例には、神経前駆細胞、幹細胞、膵島細胞、及び腎臓前駆細胞などが含まれてもよい。
【0027】
図1にヒト臍帯の横断面を示しており、図中では臍帯動脈(umbilical artery:UA)、臍帯静脈(umbilical veins:UV)、ワルトンゼリー(Wharton’s Jelly:WJ)、及び上皮下層(subepithelial layer:SL)が示されている。前記SLからの単離細胞は、過去に臍帯サンプルから単離された細胞とは区別される様々な特徴的なマーカーを備えている。これらの単離細胞は、前記ワルトンゼリーに由来するものではなく、むしろ前記SLに由来するものである点に注意する必要がある。
【0028】
存在又は非存在のいずれかを示す様々な細胞マーカーがこれらのSL由来細胞の識別に利用可能であり、従って、当該単離細胞の新規性を示すことに利用可能である。例えば、一態様においては、前記単離細胞はCD29、CD73、CD90、CD146、CD166、SSEA4、CD9、CD44、CD146、又はCD105から選択される少なくとも3つの細胞マーカーを発現し、CD45、CD34、CD14、CD79、CD106、CD86、CD80、CD19、CD117、Stro−1、又はHLA−DRから選択される少なくとも3つの細胞マーカーを発現しない。別の態様においては、前記単離細胞は、CD29、CD73、CD90、CD146、CD166、SSEA4、CD9、CD44、CD146、又はCD105から選択される少なくとも5つの細胞マーカーを発現する。別の態様においては、前記単離細胞は、CD29、CD73、CD90、CD146、CD166、SSEA4、CD9、CD44、CD146、又はCD105から選択される少なくとも8つの細胞マーカーを発現する。さらに別の態様においては、前記単離細胞は、少なくともCD29、CD73、CD90、CD166、SSEA4、CD9、CD44、CD146、及びCD105を発現する。別の態様においては、前記単離細胞は、CD45、CD34、CD14、CD79、CD106、CD86、CD80、CD19、CD117、Stro−1、又はHLA−DRから選択される少なくとも5つの細胞マーカーを発現しない。別の態様においては、前記単離細胞は、CD45、CD34、CD14、CD79、CD106、CD86、CD80、CD19、CD117、Stro−1、又はHLA−DRから選択される少なくとも8つの細胞マーカーを発現しない。さらに別の態様においては、前記単離細胞は、少なくともCD45、CD34、CD14、CD79、CD106、CD86、CD80、CD19、CD117、Stro−1、及びHLA−DRを発現しない。その上、幾つかの態様においては、前記単離細胞はSOX2、OCT4、又はSOX2及びOCT4について陽性であってもよい。さらなる態様においては、前記単離細胞はCD63、CD9、又はその両方を発現するエキソソームを生成する。
【0029】
様々な手法を用いて本開示の前記SL由来単離細胞を抽出することが可能であり、当該細胞に大きな損傷を与えることなくそうした抽出を可能にするそうした手法は、本発明の範囲内に入ると考えられる。一態様においては、例えば、哺乳類の臍帯の上皮下層から得られる幹細胞を培養する方法は、当該臍帯から当該上皮下層を切り取る工程を含んでもよい。一態様においては、例えば、臍帯組織を収集して洗浄することで、血液、ワルトンゼリー、及びその他の前記上皮下層に関連する素材を除去してもよい。例えば非限定的な一態様において、前記臍帯組織をダルベッコリン酸緩衝食塩水(Dulbecco’s Phosphate−Buffered Saline:DPBS)のようなリン酸緩衝食塩水(Phosphate−Buffered Saline:PBS)の溶液中で複数回洗浄してもよい。幾つかの態様において、前記PBSは血小板溶解物(例えば、血小板溶解物の10%PRP溶解物)を含んでいてもよい。前記臍帯に残ったワルトンゼリー又はゼラチン状の部分を、次いで除去して廃棄してもよい。次いで、残った臍帯組織(前記SL)を、当該SLの内壁側が基材と接触するように当該SLの内壁側を下にして当該基材の上に置いてもよい。切り取った臍帯はワルトンゼリーの除去後にその全体を基材の上に直接置いてもよいし、又は当該切り取った臍帯を小さな断片(例えば、1〜3mm)に切り分け、それらの断片を基材の上に直接置いてもよい。
【0030】
前記SLの上に置かれる基材については、様々な基材が考えられる。一態様においては、前記基材は固体ポリマー素材であってもよい。固体ポリマー素材の一例には、細胞培養皿が含まれてもよい。前記細胞培養皿は、当技術分野で周知の細胞培養用処理済プラスチックで作られていてもよい。特定の一態様においては、前記細胞培養用処理済プラスチックに何の追加的な前処理をすることなく、基質である前記細胞培養皿の上に前記上皮下層が置かれてもよい。別の態様においては、前記基材は半固体の細胞培養基材であってもよい。そうした基材には、例えば、寒天又はその他のゼラチン状素材などの、半固体の培養培地が含まれてもよい。
【0031】
前記基質の上に前記SLが置かれた後、前記SLは適切な培地中で培養される。幾つかの態様においては、動物及びヒトの成分又は混入物を含まない培養培地を利用することが望ましい。一実施例として、
図2に前記SL由来の細胞の培養を示している。
図2Aで見られるように、前記SLの播種から3日後において細胞が遊走を始めた。
図2Bに動物成分不含有培地における培養の6日後の細胞を示している。さらに、
図3Cに12日経過後の細胞の核型を示している。説明してきたように、前記SL由来の細胞は特有のマーカー発現プロファイルを持っている。このプロファイルの一部を示したデータが、
図3において示されている。
【0032】
前記培養は次いで、正常酸素状態又は低酸素状態のどちらかの培養環境下で、初代細胞培養を確立するのに充分な期間培養されてもよい(幾つかの例では3〜7日である)。初代細胞培養が確立された後、前記SL組織は除去されて廃棄される。より大きな培養フラスコの中で、細胞又は幹細胞を正常酸素状態又は低酸素状態のどちらかの培養環境下において、さらに培養して増殖させる。様々な適切な細胞培養培地が考えられるが、非限定的な一実施例においては、当該培地は、1Xグルタミン、1XNEAA、0.1〜20%のPRP溶解物又は血小板溶解物、及びフェノールレッドを含まないダルベッコ変法イーグル培地(Dulbecco’s Modified Eagle Medium:DMEM)グルコース(500〜6000mg/mL)であってもよい。別の適切な培地の例は、フェノールレッド、1Xグルタミン、1XNEAA、1000ユニットのヘパリン、及び20%のPRP溶解物又は血小板溶解物を含まないDMEM低グルコースの基本培地を含んでもよい。別の実施例においては、1Xグルタミン、1XNEAA、20%のPRP溶解物又は血小板溶解物、及びフェノールレッドを含まないDMEM低グルコースの半固体基材上で直接細胞を培養してもよい。さらなる実施例においては、培養培地は、1Xグルタミン、1XNEAA、1000ユニットのヘパリンを含む低グルコース培地(500〜1000mg/mL)を含んでもよい。幾つかの態様においては、前記グルコースは1000〜4000mg/mLであってもよく、その他の態様においては前記グルコースは4000〜6000mg/mLの高グルコースであってもよい。これらの培地は、0.1%〜20%のPRP溶解物又は血小板溶解物を含むこともできる。その上のさらなる態様においては、前記培養培地は、ヘパリンの代わりに酸性クエン酸ブドウ糖(acid−citrate−dextrose:ACD)を含んだ半固体のものであってもよく、低グルコース培地(500〜1000mg/mL)、中程度グルコース培地(1000〜4000mg/mL)、又は高グルコース培地(4000〜5000mg/mL)を含み、1Xグルタミン、1XNEAA、及び20%のPRP溶解物又は血小板溶解物をさらに含んでもよい。幾つかの態様においては、前記細胞をTrypLEを用いて取り出し、二次培養し、及び/又は継代してもよい。別の態様においては、TrypLE又はその他の任意の酵素を使用することなく、取り出し、二次培養し、及び/又は継代してもよい。
【0033】
図4に前記SL組織から単離した細胞の様々な遺伝的特徴に関するデータを示している。
図4Aに、単離したSL細胞(レーン1)がSOX2及びOCT4に対して陽性であり、コントロールの細胞(Ctrl)と比較するとNANOGが陰性であることを示している。
図4Bに、培養SL細胞のDAPI染色画像を示しており、これらの細胞がCD44に陽性であることを実証している。
図4Cに、培養SL細胞のDAPI染色画像を示しており、これらの細胞がCD90に陽性であることを実証している。
図4Dに、培養SL細胞のDAPI染色画像を示しており、これらの細胞がCD146に陽性であることを実証している。
【0034】
一態様においては、哺乳類臍帯由来のSL細胞を、半固体のPRP溶解物又は血小板溶解物の基材の中で培養してもよい。本明細書の別の箇所で説明されたように、そうした細胞をプラスチックコートの組織培養フラスコの上で直接培養してもよい。正常酸素状態又は低酸素状態のどちらかの培養環境中で充分な時間が経過した後、前記培地は交換され、新たに作成された半固体のPRP溶解物又は血小板溶解物の培地が前記培養フラスコに加えられる。前記フラスコは継続して、正常酸素状態又は低酸素状態のどちらかの培養環境中で培養される。翌日には前記培地は半固体のPRP溶解物又は血小板溶解物の基材となる。前記細胞はこの基材の中で、さらなる利用の機会があるまで継続して培養される。
図5A及びBは、半固体のPRPL又はPLゲル中で成長する細胞を10Xから40Xの倍率で示している。特定の一態様においては、半固体培養の成分には、細胞培養が増殖し分化するための成長因子が含まれてもよい。非限定的な実施例は、EGF、VEGF、FNDC5、5−アザシチジン、TGF−Beta1、TGF−Beta2、インスリン、ITS、及びIGFなど、並びにこれらの組合せが含まれる。
【0035】
幾つかの場合においては、SL細胞の同種異系の確認は、分化又は未分化の細胞どちらにおいても、特に当該細胞の治療的な利用のためには非常に有用となりえる。そうした場合においては、リンパ球混合反応を実施することで前記細胞の同種異系の特性を確認することができる。特定の態様においては、本明細書の説明通りに得られた細胞は、リンパ球混合反応又はT細胞増殖を引き起こさない。
【0036】
特定の態様においては、本明細書の説明通りに得られた細胞は、1つ又は複数の遺伝子又はタンパク質を発現するように、遺伝子組換えにより変更されてもよい。ある手法において、1つ又は複数の遺伝子が発現ベクターの中に組み込まれてもよい。細胞中に遺伝子を送達する手段には、組換えレトロウイルス、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、レンチウイルス、ポックスウイルス、アルファウイルス、及び単純ヘルペスウイルス−1などのウイルスベクター、組換えバクテリア、並びに真核生物プラスミドなど、並びにこれらの組合せが、非限定的に含まれてもよい。プラスミドDNAが、そのままで、又はエキソソーム、カチオン性リポソーム、誘導体化した(抗体を結合した)ポリリジン結合体、グラミシジンS、人工ウイルス外被、若しくはその他の細胞内運搬体の助けを受けて送達されてもよいし、遺伝子の直接注入がなされてもよい。幾つかの態様において、ウイルス性でない遺伝子送達方法、例えば足場材/基材結合領域(scaffold/matrix attached region:S/MAR)をベースとしたベクターを使用してもよい。
【0037】
さらに、幾つかの態様において、単離SL細胞を用いて、エキソソーム集合を生成してもよい。これらのエキソソーム集合を、様々な研究的利用及び治療的利用のために活用してもよい。一態様においては例えば、本明細書の細胞を、正常酸素状態又は低酸素状態のどちらかの培養環境中で培養し、各培地交換の機会に上清を収集してもよい。次いで、適切な精製プロトコルを用いて、前記上清からエキソソームを精製することができる。そうしたプロトコルの非限定的な一実施例は、システムバイオ社のExoQuick単離システムである。さらなる処置、標的決定、及び治療的利用のために、精製したエキソソームを活用することができる。前記SL細胞に特異的なエキソソームは、CD63の発現について陽性である。
図6Aに本明細書中の説明の通りに得られたエキソソームのサイズの分析を示しており、
図6Bにエキソソームのサンプルの電子顕微鏡画像を示している。さらに、
図6Cに臍帯由来細胞又は幹細胞より生成したエキソソームのCD63の発現を示している。
【0038】
幾つかの態様においては、前記単離細胞及び細胞培養を、前記SL組織から単離し、そのまま利用することができる。その他の態様においては、前記単離細胞をその他の細胞型に分化させてもよい。SL組織より単離した細胞から誘導されるあらゆる有益な細胞型が、本発明の範囲内に入ると考えられる点に留意するべきである。そうした細胞型の非限定的な実施例は、脂肪細胞、軟骨細胞、骨細胞、及び心筋細胞などを含む。前記細胞を、化学物質、成長因子、上清、合成若しくは天然の化合物、又はその他の前記細胞を形質転換可能な物質に曝すことによって、分化を誘導することができる。
図7に示すように、一態様においては例えば、前記単離細胞を脂肪細胞に分化させることができる。
【0039】
SL細胞を脂肪細胞に分化させるあらゆる手法が、本発明の範囲内に入ると考えられる。脂肪細胞分化に用いられる非限定的な一実施例には、StemPro脂肪細胞分化培地(ライフテクノロジーズ社)の存在下で培養されたSL細胞が含まれる。
図7Aに、脂肪細胞マーカーのFABP4、LPL、及びPPARy(レーン1)が陽性である分化SL細胞を示している。脂肪細胞分化においては、分化確認はオイルレッドO染色及びFABP4免疫細胞化学によって決定される。
図7BにFABP4マーカーを示すDAPI染色細胞の画像を示している。
図7Cに未染色の細胞を示し、
図7DにオイルレッドO染色した細胞を示しており当該細胞中に脂肪の貯蔵があることを実証している。
【0040】
骨細胞分化に用いられる非限定的な一技術は、StemPro骨細胞分化培地(ライフテクノロジーズ社)の存在下でそうした細胞を培養する。例えば
図8Aに示すように、分化SL細胞は骨細胞マーカーのOP、ON、及びAP(レーン1)に陽性である。骨細胞分化においては、分化確認はアリザリンレッド染色及びオステオカルシン免疫細胞化学によって決定される。
図8Bにオステオカルシンの存在を示すDAPI染色細胞の画像を示している。
図8Cに未染色の細胞を示し、
図8Dにアリザリンレッド染色した細胞を示し、当該細胞中にカルシウム沈着が存在することを実証している。
【0041】
軟骨細胞分化に用いられる非限定的な一技術は、StemPro軟骨細胞分化培地(ライフテクノロジーズ社)の存在下でSL細胞を培養する。
図9Aに示すように、分化SL細胞は骨細胞マーカーのコラーゲン2A、A6、及びBG(レーン1)に陽性である。軟骨細胞分化においては、分化確認はフォン・コッサ染色によって決定される。
図9Bに軟骨細胞の小球のアルシアンブルー染色を示している。SL細胞の心筋細胞分化のための非限定的な一技術は、1Xグルタミン、1XNEAA、5〜10μMの5−AZA−2’−デオキシシチジン入りの10%のPRP溶解物又は血小板溶解物、及びフェノールレッドを含まないDMEM低グルコースの存在下で細胞を培養する。
図10Aに示すように、分化SL細胞は心筋細胞マーカーのMYF5、CNX43、及びACTIN(レーン1)に陽性である。
【0042】
心筋細胞分化においては、分化確認はANP、トロポミオシン、及びトロンピン1の染色によって決定される。
図10Bにトロンピン1の存在を実証するDAPI染色細胞の画像を示している。
図10Cにトロポミオシンの存在を実証するDAPI染色細胞の画像を示している。
図10Dに
図10B及び
図10Cの画像の重ね合わせ画像を示している。
【0043】
さらに別の態様においては、医療的症状を治療する方法が提供される。幾つかの実施形態においては、そうした方法は本明細書で説明されている細胞を前記医療的症状を持つ個人に導入する工程を含んでもよい。細胞は様々な投与量で送達されてもよく、例えば非限定的に1回の投与量が約500,000〜約1,000,000,000細胞であってもよい。幾つかの態様において、前記細胞の投与量は被験者の体重にもとづいて計算されてもよい。特定の態様において、前記細胞の範囲は、治療方法、標的組織、又は送達方法に基づいて計算されてもよい。医学的症状の非限定的な例は、COPD、糖尿病、虚血、変形性関節症、整形外科的障害、肝臓障害、慢性治療抵抗性狭心症、うっ血性心不全、喘息、肺気腫、創傷、勃起不全、脊髄損傷、椎間板ヘルニア、急性放射線症候群、神経障害、移植片対宿主病、自己免疫疾患、腎不全、及び自己免疫疾患など、並びにこれらの組合せを含んでもよい。前記治療は、被験者の前記医療的症状が治療されうる領域に細胞を導入する工程を含んでもよい。前記細胞は、筋肉内に、静脈内に、動脈内に、皮下に、外科的に、硬膜下に、腹膜内に、鼻腔内に、経口的に、局所的に、直腸に、経膣的に、吸入を介して、及びその他同種の経路で、並びにこれらの組合せによって、送達されてもよい。さらに、一態様においては、未分化SL細胞を被験者に送達して前記医療的症状を治療してもよい。別の態様においては、分化SL細胞を被験者に送達して前記医療的症状を治療してもよい。
【0044】
幹細胞もまた、逆行性送達又は順行性送達によって個人に送達されてもよい。一例として、細胞は逆行性送達を介して個人の臓器に導入されてもよい。そうした臓器の非限定的に実施例は、心臓、肝臓、腎臓、脳、及び膵臓などを含んでもよい。
【0045】
さらに、幾つかの実施例においては、SL細胞は溶解されてもよく、その溶解物が治療に用いられる。その他の態様においては、前記培養の工程から得られる上清が治療に用いられてもよい。そうした上清による治療の一例には、エキソソームの送達が含まれる。エキソソームは、エアロゾル化を介した送達、静注による送達、又はその他の効果的な送達方法によって、個人に送達されてもよい。エキソソームを用いて、開放創、潰瘍、及び火傷などを治療することもできる。
【0046】
さらなる態様においては、COPDを治療する方法が提供される。そうした方法は、静注により患者にCOPDに有効な活性物質を投与する工程であって、当該COPDに有効な活性物質を当該患者の肺の下半分に送達する前記投与する工程と、当該COPDに有効な活性物質をエアロゾル化した形で換気を介して当該患者に投与する工程であって、当該COPDに有効な活性物質を当該患者の肺の上半分に送達する前記投与する工程とを含んでもよい。幾つかの実施形態においては、前記投与する工程は同時に行われてもよい。その他の態様においては、前記投与する工程は連続的に行われてもよい。幾つかの態様においては、静注により送達された前記COPDに有効な物質は、エアロゾル化した形で送達された前記COPDに有効な物質は異なるものであってもよく、一方でその他の態様においては、両方の投与方法において同一のCOPDに有効な物質が用いられてもよい。幾つかの場合において、前記COPDに有効な活性物質が送達される間座ったままでいられることは、患者にとって有益となり得る。一態様においては、前記COPDに有効な活性物質は幹細胞を含む。別の態様においては、前記幹細胞は本明細書中で説明される細胞を含む。別の態様においては、前記活性物質は調合薬又は生物学的製剤であってもよい。COPDに効果的な活性物質のその他の非限定的な例は、細胞培養物に由来する、エキソソーム、細胞溶解物、タンパク質抽出物、タンパク質抽出物などを含んでもよい。
【0047】
様々な条件を用いて細胞をエアロゾル化することができる。一態様においては、例えば、細胞を1〜5mlの生理食塩水中に懸濁し、1〜15分の間、又は当該細胞が破裂及び/又は死滅し始めるまで、3〜100psiの圧力をかけてエアロゾル化する。
【0048】
幹細胞を損傷なく実質的に送達することが可能であれば、どのような種類のエアロゾライザを用いて幹細胞を肺まで送達してもよい。幾つかの場合において、より大きなサイズの粒子へとエアロゾル化可能なエアロゾライザを介して幹細胞をエアロゾル化することは有益になり得る。例えば、一態様においては、約2ミクロン〜約50ミクロンの粒子サイズへとエアロゾル化するエアロゾライザを用いてもよい。別の態様においては、約4ミクロン〜約30ミクロンの粒子サイズへとエアロゾル化するエアロゾライザを用いてもよい。別の態様においては、約6ミクロン〜約20ミクロンの粒子サイズへとエアロゾル化するエアロゾライザを用いてもよい。さらに別の態様においては、約6ミクロン〜約200ミクロンの粒子サイズへとエアロゾル化するエアロゾライザを用いてもよい。
【0049】
別の実施例においては、本発明の手法を急性放射線症候群の治療に利用することができる。急性放射線症候群は治療が非常に難しいものであり、生存率は放射線の被曝量とその後の致死的な感染症に対する臨床的治療とに依存するが、この臨床的治療には常在の幹細胞の増殖の補助を提供する方法が含まれる。従来の手法は、成長因子による治療又は造血幹細胞の移植を利用するものである。本開示の態様による幹細胞は、同種異系間の方式に基づいて、提供者と被移植者との間のHLA適合の必要なしに利用することができる。前記細胞は低免疫原性を示すことが明らかにされており、その後に続く複数回の注射においてさえ、免疫系に認識されない。これらの幹細胞は、IL6、IL11、LIF SCF及びFly3リガンドなどの造血成長因子、並びにTGFB1、プロスタグランジンE2、及びインドールアミン−2,3−ジオキシゲナーゼなどの免疫調節性分子のような、幾つかの生理活性分子を分泌する。
【0050】
そうした培養細胞は、放射線被曝後の解毒を補助することに加えて、炎症関連のカスケードと戦う防御機構を亢進する。さらに、これらの細胞は栄養因子及びHSCニッチ調節活性を放出し、内在性の造血及び活性を救援する。このデータは、これらの細胞が、放射線により誘導される造血不全と戦うための、防御の第一線における迅速かつ効果的な治療として役立つことを示唆している。さらに、これらの細胞を用いて重症の又はステロイド耐性の移植片対宿主病を治療してもよい。
【実施例1】
【0052】
医療用の臍帯由来細胞又は幹細胞を培養するための組成物
培地組成物1
DMEM−低グルコース−フェノール不含有
1Xグルタミン
1XNEAA
10%PRP溶解物又は血小板溶解物
1000ユニットのヘパリン
培地組成物2
DMEM−低グルコース−フェノール不含有
1Xグルタミン
1XNEAA
凍結乾燥10%PRP溶解物又は血小板溶解物タブレット
1000ユニットのヘパリン
培地組成物3
DMEM−低グルコース−フェノール不含有
1Xグルタミン
1XNEAA
10%PRP溶解物又は血小板溶解物
ACD
【実施例2】
【0053】
医療用の臍帯由来細胞又は幹細胞の培養
臍帯組織を取得し、細胞集団及び幹細胞集団への誘導の前に、母親の血液について感染病の検査を行う。臍帯の1cm断片を10%PRP溶解物又は血小板溶解物を含むDPBS溶液中で10回洗浄する。前記臍帯を次いで縦方向に切開し、前記臍帯の内壁側を露出させる。内皮細胞を生じさせる可能性のある全ての組織を除去する。前記臍帯を次いで、プラスチックと接触するように臍帯の内壁側を下にして培地組成物1を含む細胞培養皿に直接置き、正常酸素状態又は低酸素状態のどちらかの培養環境下で培養する。
【0054】
3日目に前記培地を新しい培地組成物1に入れ替えて培養し、7日目に初代細胞培養のために外植体を取り出す。前記細胞は2日毎に摂食させて約500,000〜1,000,000細胞まで増殖させ、収集してさらに増殖させる。以降の実施例で使用される培地は、特に注記の無い限り培地組成物1であることに留意する。
【実施例3】
【0055】
医療用の臍帯由来細胞又は幹細胞の酵素を用いた継代
前記細胞を継代培養するためにTrypLEを用いることができる。前記培地を実施例2のフラスコから除去し、前記細胞をDPBSで3回洗浄する。次いでTrypLEを加え、前記細胞を恒温器に移して37℃で3〜5分間置く。等量の培養/増殖培地を加えることによって酵素反応を停止させる。次いで前記細胞を室温において5分間、400xgで遠心分離機にかける。上清を取り出し、前記細胞をさらに継代培養する場合は3回洗浄し、或いは治療に用いる場合は10回洗浄する。
【実施例4】
【0056】
医療用の臍帯由来細胞又は幹細胞の酵素を用いない継代
酵素不使用の方法においては、半固体のゲルを用いることで、組織培養フラスコから前記細胞を取り出すことができる。前記細胞を通常の培養/増殖培地中で培養する。継代培養の1日前に、新たに調製したフェノールレッドを含まないDMEM低グルコース、1Xグルタミン、1XNEAA、10%PRP溶解物又は血小板溶解物、ACD半固体培地を前記細胞に加える。前記細胞を正常酸素状態又は低酸素状態のどちらかの培養環境下で一晩培養する。翌日には前記細胞の上に半固体のゲルが形成される。前記培養皿から前記細胞を取り出すためには、前記培養皿の端を軽く叩き、前記半固体ゲルを底面から取り外す。次いでこの半固体の層を取り出し、前記細胞はこの半固体ゲルの中に位置することになる。もしさらなる継代培養が必要な場合は、前記半固体細胞を追加の細胞培養フラスコ又は容器に移してさらに培養する。もし前記細胞をさらに増殖させる必要がない場合は、前記細胞を含む半固体の層を、直接治療用途に適用してもよい。
【実施例5】
【0057】
重症虚血肢の治療における臍帯由来細胞又は幹細胞の治療的利用
安静時痛(Rutherford分類4群)又は軽度組織消失(Rutherford分類5群)を示し、外科的な又は血管内治療的な血行再建術の候補とならない、慢性的な重症虚血肢を罹患していた場合、患者は本治療に適格であるとした。以下に示すうちの1つの血行動態パラメータが含まれた:室内空気中で、足関節圧<50mmHg若しくはABI<0.4;足跛血圧<40mmHg若しくはTBI<0.4;又はTcPO2<20mmHg。
【0058】
除外基準には以下を含んだ:指標の下肢が広範な壊死により切断が不可避(Rutherford分類6群);指標の下肢と同側の腸骨動脈の閉塞;指標の下肢のドップラー信号の欠如(ABI=0);血清中クレアチニン≧2.0mg/dL;抗生剤を要する活動性の感染;活動性の悪性腫瘍;又は何らかの骨髄採取を妨げる血液障害。
【0059】
全ての患者は18歳以上であり、インフォームドコンセントを提供することができた。登録された全ての患者について、術前に癌検診及び増殖性網膜症のための眼科検診を実施した。
【0060】
実施例1〜4の説明に従って細胞を生成した。血管手術を実施して、超音波ガイドを用いて予め同定しておいた虚血下肢の場所に、臍帯由来細胞又は幹細胞の一分量1mLの筋肉内投与を40回行った。手術は局所麻酔及び意識下鎮静の下で実施された。
【0061】
手術後の、1,4,8,12,及び26週間後において患者を評価した。臨床成績には、切断状況、下肢虚血のRutherford分類、及び視覚的アナログスケール(Visual Analog Scale:VAS)で決定される疼痛を含んだ。大切断は足首より上で起きたものとして定義した。血液動態の成績は、足関節上腕血圧比(Ankle Brachial Index:ABI)によって評価した。血液学及び血液化学についての実験室監視も実施した。眼科的な網膜検査をベースライン及び12週間後に糖尿病患者に実施し、増殖性網膜症について評価した。結果については
図11A及び11Bに示している。「注入のみ」は幹細胞の送達を意味しており、「コントロール」は当該幹細胞を含まない生理食塩水である。
【実施例6】
【0062】
慢性治療抵抗性狭心症及び/又はうっ血性心不全の治療における臍帯由来細胞又は幹細胞の治療的利用
最大限の医学的又は外科的な治療にも関わらずカナダ心臓血管学会(Canadian Cardiovascular Society:CCS)のクラスIII〜IVの狭心症を持つ患者であって、さらなる経皮的な又は外科的な血管再建術(冠動脈解剖学に基づく)が避けられず、単一光子放射断層撮影法(single photon emission computed tomography:SPECT)の実施により可逆性虚血である証拠が得られている患者が、登録された。
【0063】
実施例1〜4の説明に従って細胞を生成した。大腿動脈を7フレンチシースによりカニューレ処置し、6フレンチシースのカテーテルを冠状静脈洞に入れて、0.035mmの親水性ガイドワイヤーを心室間静脈又は支脈に入れて、その後冠状静脈洞の中間部分に末梢用バルーンを入れて、細胞の非選択的な送達を可能にした(クックメディカル社、インディアナ州、米国)。前記バルーンを非常に低い圧力(1〜2atm)で10分間膨らませ、血流を停滞させた。細胞50ml(50,000,000〜400,400,000個)を、毎分10mlの速度で前記バルーンを通して手動で注入した。細胞送達にかかる全処置時間の平均は30分であった。
図12に血管造影図を示し、逆行性手法を用いた心臓への細胞送達を実証している。
【0064】
患者についてのベースラインの選別審査には、臨床評価、心電図(electrocardiogram:ECG)、実験室評価(全血球計算、血液化学検査、血沈検査、クレアチンキナーゼ、トロポニンT血清中濃度)を含んだ。患者は3週間の間日々の狭心症の頻度を記録し続け、狭心症の重症度をベースライン、3、12、及び24ヶ月の時点でCCSクラスに従って等級分けした。細胞療法後12週間以内に、自転車エルゴメトリーとSPECTイメージングとを併用して運動能力を評価することで、心筋虚血と左心室(left venticular:LV)の機能を評価した。
【実施例7】
【0065】
心不全の安全性の研究
患者10人(虚血あり5人及び虚血なし5人)について、実施例6で説明された通りに、細胞の心臓への逆行性送達を実施した。
図13に、この逆行性送達のタイムラプス撮影を示している。患者についてのベースラインの選別審査には、臨床評価、心電図(electrocardiogram:ECG)、実験室評価(全血球計算、血液化学検査、血沈検査、クレアチンキナーゼ、トロポニンT血清中濃度)を含んだ。患者の経過観察を1、3、6、及び12ヶ月後に行った。表1及び2に、虚血あり及び虚血なしの患者の結果を経時的に示している。
【0066】
【表1】
【0067】
【表2】
【実施例8】
【0068】
糖尿病における臍帯由来細胞又は幹細胞の治療的利用
実施例1〜45の説明に従って細胞を生成する。治療用量は50,000,000〜400,000,000となってもよい。前記細胞を動脈アクセスを介して腹腔動脈及び/又は上腸間膜動脈へと送達し、それによって点滴の手法により膵臓の頭部及び/又は尾部に細胞を送達する。
【実施例9】
【0069】
COPD/喘息/肺気腫の治療における臍帯由来細胞又は幹細胞の治療的利用
この研究においては、被験者について以下に示す選択基準を用いた。
【0070】
以下の項目を持つ個人が選択された:
−気管支拡張剤投与後のFEV1/FVC率が<0.7である中程度又は重症のCOPD
−被験者は気管支拡張剤投与後のFEV1%予測値が≧30%でなければならない
−年間20パック超の煙草の喫煙歴のある喫煙者又は元喫煙者
以下の項目のうち1つ又は複数の項目を示す被験者はこの研究から除外された:
−喘息又はその他のCOPD以外の臨床的に関連する肺の疾患(拘束性肺疾患、サルコイドーシス、結核、突発性肺線維症、気管支拡張症、又は肺癌)と診断される
−α1−アンチトリプシン欠損症と診断される
−体重が150kgを超える又は40kg未満である
−被験者が活動性の感染症を持つ
−被験者が選別から4週間以内にCOPDの重大な悪化があったか又は機械的換気を必要とした
−制御困難な心不全、心房細動
−スクリーニングから3ヶ月以内に心配リハビリテーションを開始した
−被験者が活動性の悪性腫瘍を持つか、又は少なくとも5年の寛解期を過ごしていない悪性腫瘍歴を持つ
−被験者が余命6ヶ月未満である
実施例1〜4の説明に従って細胞を生成する。治療用量は50,000,000〜400,000,000細胞となってもよい。被験者が真っ直ぐ座っている間に、真っ直ぐ座る人にとっての自然な換気灌流によって、正常の生理的な換気灌流により肺の上半分に残るエアロゾル化送達と、肺の下半分に送達される静脈内注射との同時実施により前記細胞が投与される。この併用手法は、どちらか片方のみが実施された場合、肺全体に充分な生物製剤が送達されない事実に基づくものである。
【0071】
20人の被験者を4グループに分け、以下のものを与えた:
グループ1の5被験者にプラセボ(生理食塩水注射)を与えた
グループ2の5被験者に静注による送達を与えた(200M細胞)
グループ3の5被験者に吸入による送達を与えた(200M細胞)
グループ4の5被験者に静注及び吸入による送達を与えた(100M/100M細胞)
表3にこれらのグループ(細胞無し、静注のみ、吸入のみ、静注及び吸入)から得られた結果を示している。
【0072】
エアロゾル化に関しては、細胞を説明の通り調製し、1〜5mlの生理食塩水に懸濁し、8〜10分間30psiの圧力をかけてエアロゾル化した。
【0073】
【表3】
【実施例10】
【0074】
創傷治癒の治療における臍帯由来細胞又は幹細胞の治療的利用
実施例1〜4の説明に従って細胞を生成する。治療用量は50,000,000〜400,000,000細胞となってもよい。細胞を液体カルシウム及びトロンビンを加えたPLキャリア中に入れて、注入及び/又はエアロゾル化を介して創傷に送達する。
【実施例11】
【0075】
整形外科的な適用における臍帯由来細胞又は幹細胞の治療的利用
実施例1〜4の説明に従って細胞を生成する。治療用量は50,000,000〜400,000,000細胞となってもよい。前記細胞を超音波ガイド下で関節内空間/関節に直接注入し、また微小破壊の手法と組み合わせてもよい。これらの細胞を、液体カルシウム/トロンビンに加えてPRPL又はPLキャリアとともに送達する。一例として、
図14A及び14Bに、80歳女性の送達処置を行う前の膝の画像を示している。
図14C及び14Dに、同じ80歳女性の移植後3ヶ月の膝の画像を示している。前記移植後の画像において、患者により大きな関節内空間が観察されることに留意する。
【実施例12】
【0076】
マウスにおける急性放射線症候群における臍帯由来細胞又は幹細胞の治療的利用
メスのC57BL/6Jマウスを被移植体集団として用いた。臍帯の幹細胞をこれまでに説明した通りに単離するが、この場合においてはマウスから単離した。Cs−137放射線源を用いて、前記メスC57BL/6JマウスにTBIを与えた。致死的な照射を、9.5Gyを用いて実施した。照射後8時間以内に、マウスに静注により移植体を与えた。幹細胞で処置された動物の末梢血球数の評価により、HSCで処置された被移植体で見られるものに類似した、白血球及び血小板の回復が認められた(
図15A−Bを参照)。移植7ヶ月後において、被移植体の末梢血球数は正常な分布を示し、血液学的に健康であった(表4参照)。
【0077】
【表4】
【実施例13】
【0078】
急性放射線症候群における臍帯由来細胞又は幹細胞の治療的利用
ヒト由来の臍帯上皮下層細胞が実施例12と同じ効果を持つかどうかを確認するために、提供体としてヒト由来細胞を、及び被移植体としてnod/scid gamma(c)nullマウスを用いて、同じ実験を繰り返した。放射線全身照射(total body irradiation:TBI)後6、12、及び24時間時点で、動物を上で説明した通りに処置して静注による移植を行った。移植6ヶ月後において、TBI後に細胞を受けなかった全てのコントロールのマウス(n=30)は死亡した。
図16にTBI後6、12、及び24時間時点でヒト細胞を受けたマウスの生存率を示している。勿論、前述の構成は本開示の原理の適用性の解説のみを目的としたものであることを理解するべきである。
【0079】
多数の改変及び代替的な構成が、本開示の精神及び範囲から逸脱することなく本技術分野の当業者によって考案されうるものであり、添付の請求項はそうした改変及び構成を包含することを意図したものである。したがって、本開示の最も実際的な実施形態であると現時点でみなされるものと関連して、特殊性及び詳細性をもって本開示を上述してきたが、本技術分野の当業者にとって、多数の改変、例えばこれらに限定されないが、実施、組立、及び使用におけるサイズ、素材、形状、型、機能、及び方法の変化が、本明細書で説明された原理及び概念から逸脱することなしに行われうる。