特許第6548903号(P6548903)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6548903非水系のスプレー用毛髪化粧料およびエアゾール製品
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6548903
(24)【登録日】2019年7月5日
(45)【発行日】2019年7月24日
(54)【発明の名称】非水系のスプレー用毛髪化粧料およびエアゾール製品
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/40 20060101AFI20190711BHJP
   A61K 8/35 20060101ALI20190711BHJP
   A61K 8/34 20060101ALI20190711BHJP
   A61K 8/02 20060101ALI20190711BHJP
   A61Q 5/00 20060101ALI20190711BHJP
   A61Q 17/04 20060101ALI20190711BHJP
   A61K 8/891 20060101ALI20190711BHJP
【FI】
   A61K8/40
   A61K8/35
   A61K8/34
   A61K8/02
   A61Q5/00
   A61Q17/04
   A61K8/891
【請求項の数】10
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2015-16769(P2015-16769)
(22)【出願日】2015年1月30日
(65)【公開番号】特開2016-141625(P2016-141625A)
(43)【公開日】2016年8月8日
【審査請求日】2018年1月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】592255176
【氏名又は名称】株式会社ミルボン
(74)【代理人】
【識別番号】100111187
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 秀忠
(74)【代理人】
【識別番号】100142882
【弁理士】
【氏名又は名称】合路 裕介
(72)【発明者】
【氏名】熊▲崎▼慎也
(72)【発明者】
【氏名】清水 薫
【審査官】 小川 慶子
(56)【参考文献】
【文献】 特表2014−513105(JP,A)
【文献】 特開2014−136697(JP,A)
【文献】 特開2007−182387(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00−8/99,
A61Q 5/00−5/12,17/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)オクトクリレン、
(B)t−ブチルメトキシジベンゾイルメタン、および
(C)エタノール
が配合された原液を含
(D)噴射剤が配合された状態で用いられる、
非水系のスプレー用毛髪化粧料(ただし、原液にオキシベンゾン、ホモサレート、およびオクチサレートが配合されたものを除く)
【請求項2】
前記原液に対する(C)エタノールの配合量が、40重量%以上70重量%以下である、
請求項1に記載の非水系のスプレー用毛髪化粧料。
【請求項3】
前記原液には、マロン酸ジエチルヘキシルシリンギリデンが配合されていないか、前記原液に対するマロン酸ジエチルヘキシルシリンギリデンの配合量が1重量%以下である、
請求項1または2に記載の非水系のスプレー用毛髪化粧料。
【請求項4】
前記原液には、界面活性剤が配合されていない、または、界面活性剤の配合量が前記原液全体の2重量%以下である、
請求項1から3のいずれか1項に記載の非水系のスプレー用毛髪化粧料。
【請求項5】
前記原液には、揮発性のシリコーンが配合されており、前記揮発性のシリコーンの原液における配合量が30重量%以上である
請求項1から4のいずれか1項に記載の非水系のスプレー用毛髪化粧料。
【請求項6】
前記原液に高重合ジメチコンがさらに配合されている、
請求項1からのいずれか1項に記載の非水系のスプレー用毛髪化粧料。
【請求項7】
前記原液と前記噴射剤との重量比(原液/噴射剤)が、10/90〜50/50の範囲である、
請求項1から6のいずれか1項に記載の非水系のスプレー用毛髪化粧料。
【請求項8】
前記原液には、無機系化合物である紫外線散乱剤が配合されていない、または、無機系化合物である紫外線散乱剤の配合量が前記原液全体の0.5重量%以下である、請求項1から7のいずれか1項に記載の非水系のスプレー用毛髪化粧料。
【請求項9】
スタイリングされた毛髪に対して用いられる、請求項1から8のいずれか1項に記載の非水系のスプレー用毛髪化粧料。
【請求項10】
請求項1から9のいずれか1項に記載の非水系のスプレー用毛髪化粧料および(D)噴射剤が充填された耐圧容器を備えたエアゾール製品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紫外線吸収剤が配合された非水系のスプレー用毛髪化粧料およびエアゾール製品に関するものである。
【背景技術】
【0002】
紫外線による悪影響を避けるために、日焼け止めクリーム、口紅などの皮膚用化粧料に紫外線吸収剤を配合することは、常套手段となっている。また、皮膚用のみならず、毛髪に対する紫外線の影響を抑えるためにも、毛髪用化粧料に紫外線吸収剤が配合される。
例えば、特許文献1、特許文献2、特許文献3には、それぞれ、紫外線吸収剤が配合された化粧料が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平07−330564号公報
【特許文献2】特開平09−175974号公報
【特許文献3】特表平11−514670号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、特許文献1、特許文献2、および特許文献3に記載の化粧料では、毛髪用途に特化されていない一般的な化粧料であって、具体的には、水中油型エマルションや油中水型エマルション等のように剤の半分以上を水が占める例を提案している。
【0005】
ところが、これらの例では、剤の半分以上が水によって構成されており、水分が多いため、ラジカルが生じやすい。
したがって、毛髪に用いた場合、紫外線吸収剤を配合させていることで紫外線による毛髪へのダメージ(タンパク質への影響、脂質の流出、退色等)を抑制させることができたとしても、水分の存在により活性酸素が生じやすく、水分によって毛髪が膨潤しやすいことから活性酸素が移動しやすく、毛髪へ与えられるダメージが増大してしまうおそれがある。
【0006】
また、毛髪用スプレーとして用いる場合には、毛髪だけでなく着用している衣服にも付着することがあるため、剤の色が透明であることが求められる。しかし、多くの紫外線吸収剤は、溶剤に溶解させた状態で黄色になっていたり、複数種類の紫外線吸収剤を混ぜ合わせることでさらに黄色味が増してしまったりすることがある。特に、着用している衣服の色が白である場合には、黄色の剤の付着が目立ってしまう。
【0007】
さらに、衣服に付着した剤を一般的なアルカリ性洗剤を用いて洗濯する場合には、当該アルカリ性洗剤と反応することにより、黄色味が増大してしまうおそれもある。
本発明は、上述した点に鑑みてなされたものであり、本発明の課題は、毛髪へのダメージを抑制しつつ、黄色味を抑えることが可能な非水系のスプレー用毛髪化粧料およびエアゾール製品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
発明者等は、鋭意検討を行った結果、紫外線吸収剤が配合されたスプレー用毛髪化粧料またはエアゾール製品において、特定の紫外線吸収剤を選定して非水系とすることにより、黄色味が抑えられることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明に係るスプレー用毛髪化粧料は、非水系であり、オクトクリレン、t−ブチルメトキシジベンゾイルメタン、およびエタノールが配合された原液を含んでいる。
【0009】
ここで、「非水系」とは、水が配合されていないか、または、水が配合されている場合にはスプレー容器内の原液における水の配合量が5重量%以下であることをいうものとする。
【0010】
また、非水系のスプレー用毛髪化粧料は、例えば、原液に対する(C)エタノールの配合量が40重量%以上70重量%以下であることが好ましい。
また、非水系のスプレー用毛髪化粧料は、例えば、原液には、マロン酸ジエチルヘキシルシリンギリデンが配合されていないか、配合されているとしても原液に対するマロン酸ジエチルヘキシルシリンギリデンの配合量を1重量%以下とすることが好ましい。このように、原液に対するマロン酸ジエチルヘキシルシリンギリデンの配合量を制限することにより、アルカリ性洗剤の作用により非水系のスプレー用毛髪化粧料が黄色に発色してしまうことを抑制できる。
また、非水系のスプレー用毛髪化粧料は、例えば、原液には界面活性剤が配合されていない、または、界面活性剤の配合量が原液全体の2重量%以下であることが好ましい。この場合には、スタイリングを崩してしまうことを抑制し、手触りの悪化を抑制することが可能になる。
【0011】
また、非水系のスプレー用毛髪化粧料は、例えば、(D)噴射剤が配合された状態で用いられることが好ましい。この場合には、原液を噴射剤と共に耐圧容器に充填し、噴射させて用いることで、手を汚さずに毛髪に容易に塗布することが可能になる。
また、非水系のスプレー用毛髪化粧料は、例えば、原液に高重合ジメチコンがさらに配合されていることが好ましい。この場合には、原液を噴射剤と共に耐圧容器に充填し、噴射させて用いる場合に、目視される噴射物の滞留する度合いを抑えることが可能になる。
また、非水系のスプレー用毛髪化粧料は、例えば、原液と噴射剤との重量比(原液/噴射剤)が、10/90〜50/50の範囲であることが好ましい。この場合には、耐圧容器から噴射される際に目視される噴射物の滞留度合いを抑えることが可能になる。
【0012】
また、非水系のスプレー用毛髪化粧料は、例えば、原液には無機系化合物である紫外線散乱剤が配合されていない、または、無機系化合物である紫外線散乱剤の配合量が原液全体の0.5重量%以下であることが好ましい。この場合には、当該紫外線散乱剤に起因する手触りの悪化や塗布箇所が白くなる傾向を抑制し、耐圧容器から噴射される際に目視される噴射物の滞留度合いを抑えることが可能になる。
また、非水系のスプレー用毛髪化粧料は、例えば、スタイリングされた毛髪に対して用いられることが好ましい。この場合には、水が配合されていないか、またはその配合量が少ないため、スタイリングされた毛髪に対して用いたとしても、そのスタイルを崩すこと無く紫外線保護機能を付与することが可能になる。
【0013】
また、本発明に係るエアゾール製品は、例えば、上述のいずれかの非水系のスプレー用毛髪化粧料および(D)噴射剤が充填された耐圧容器を備えている。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係る非水系のスプレー用毛髪化粧料またはエアゾール製品によれば、毛髪へのダメージを抑制しつつ、黄色味を抑えることが可能になる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、非水系のスプレー用毛髪化粧料およびエアゾール製品について、例を挙げつつ具体的に説明するが、これらの記載は発明を限定するものではない。
本実施形態の非水系のスプレー用毛髪化粧料は、非水系であって、(A成分)オクトクリレン、(B成分)t−ブチルメトキシジベンゾイルメタン、および、(C成分)エタノールが配合された原液を含んでいる。
なお、非水系のスプレー用毛髪化粧料は、スプレー容器に充填されて用いられてもよい。また、非水系のスプレー用毛髪化粧料は、(D)噴射剤と共に耐圧容器に充填されてエアゾール製品として用いられてもよい。
なお、(A成分)と(B成分)と(C成分)を含み、(D成分)を含まない対象を「原液」と称することがある。
以下、各成分について、詳細に説明する。
【0016】
(A成分)
A成分は、オクトクリレンである。オクトクリレンは、常温で褐色透明な液体の紫外線吸収剤である。
原液におけるA成分の配合量は、1重量%以上20重量%以下であるとよく、3重量%以上10重量%以下であるとより好ましい。20重量%以下にすることで、塗布箇所のべたつきを抑制することができる。
なお、A成分は、B成分よりも多く配合されていてもよい。
【0017】
(B成分)
B成分は、t−ブチルメトキシジベンゾイルメタンである。t−ブチルメトキシジベンゾイルメタンは、常温で固体であり、エタノールに溶解された状態で目視したときに微かに黄色である透明の紫外線吸収剤である。
原液におけるB成分の配合量は、0.1重量%以上20重量%以下であるとよく、0.5重量%以上10重量%以下であるとより好ましい。
このB成分のt−ブチルメトキシジベンゾイルメタンは、単体では紫外線を吸収した後に失活する等、光安定性が乏しいが、A成分のオクトクリレンと共に用いることで光安定性が向上する。
また、紫外線吸収剤としては、混合させることで黄色味が増してしまう組合せが多いが、特にA成分とB成分とを混ぜ合わせた場合には、黄色味が抑えられた透明にすることが可能になる。
【0018】
(C成分)
C成分は、エタノールである。
C成分としてのエタノールは、A成分およびB成分の溶解性が良好である。
エタノールは、揮発性を有しているため、毛髪に付着した場合であっても、毛髪のべたつきを抑制することが可能になる。
原液におけるC成分の配合量は、下限が40重量%であるとよく、下限が50重量%であることがより好ましい。また、原液におけるC成分の配合量は、上限が70重量%であるとよく、上限が60重量%であることがより好ましい。
【0019】
(D成分(任意成分))
原液と共に(D)噴射剤を耐圧容器に充填し、エアゾール製品として使用してもよい。
このときの噴射剤は、公知のもので良く、液化石油ガス(LPG);窒素ガス、炭酸ガスなどの圧縮ガス;イソペンタンなどの炭化水素化合物;などのうち一種または二種以上が用いられる。
液化石油ガス(LPG)は、特に限定されないが、例えば、プロパンとn-ブタン(ノルマルブタン)、プロパンとi−ブタン(イソブタン)、又は、プロパンとn−ブタンとi−ブタンであるとよい。
炭酸ガスを配合させた場合は、頭皮の血行を促進させることが可能になる。
【0020】
D成分としての噴射剤は、圧縮ガスは液化石油ガス(LPG)よりも早期に容器から抜け出してしまう傾向があり、炭化水素化合物は噴射に要する圧力の確保が他の例と比べて難しいことから、液化石油ガス(LPG)が多く配合されていることが好ましい。
【0021】
原液とD成分の噴射剤との重量比(原液/噴射剤の重量比)は、耐圧容器から噴射される際に目視される噴射物の滞留度合いを抑える観点から、原液/噴射剤が10/90〜50/50の重量比率で配合されていることが好ましく、20/80〜40/60の重量比率で配合されていることがさらに好ましい。
【0022】
(原液に配合される任意成分)
原液に配合される任意成分は、特に限定されないが、例えば、界面活性剤(カチオン界面活性剤、アニオン界面活性剤、両性界面活性剤、ノニオン界面活性剤)、多価アルコール、糖類、エステル油、油脂、脂肪酸、炭化水素、ロウ、シリコーン、高分子化合物、アミノ酸、動植物抽出物、微生物由来物、無機化合物、香料、防腐剤、金属イオン封鎖剤、無機系化合物である紫外線散乱剤などが挙げられる。
【0023】
ただし、吸湿することでベタツキが生じ、スタイリングを崩してしまうおそれがあること、および、手触りを良好にできないおそれがあることから、原液には、界面活性剤が配合されていないか、または、配合されていたとしても原液全体の2重量%以下であることが好ましく、配合されていたとしても原液全体の1重量%以下であることがより好ましい。なお、界面活性剤を配合する場合には、イオン性ではない界面活性剤としてノニオン界面活性剤を配合することが好ましい。
【0024】
また、原液には、シリコーンとして高重合ジメチコンが配合されていることが好ましい。ここで、高重合とは、重合度が650以上であることをいう。高重合ジメチコンが配合された場合には、毛髪の手触り(すべり感)を向上させることができるとともに、毛髪のツヤを高めることが可能になる。さらに、原液を噴射剤と共に耐圧容器に充填し、噴射させて用いる場合に、目視される噴射物の滞留する度合いを抑えることが可能になる。これは、高重合ジメチコンの配合により、噴射物の平均粒子径が大きくなることで、噴射物の滞留時間を短くすることができていることによるものと考えられる。高重合ジメチコンの原液における配合量は、特に限定されないが、例えば、2重量%以下であってもよく、1重量%以下であることが好ましい。なお、高重合ジメチコンは、デカメチルシクロペンタシロキサン(シクロペンタシロキサン)に15質量%の割合で含有させたときの粘度が2000mPa・s以上10000Pa・s以下のものであると良い(なお、上記粘度は、B型粘度計を使用し、ローターNo.4を用いて、25℃でローター回転数60rpmとして計測したときの、計測開始から60秒後の値を意味する。)。
【0025】
また、原液には、シクロペンタシロキサン等の揮発性のシリコーンが配合されていてもよい。このような揮発性のシリコーンは、高重合ジメチコンの溶剤として機能することができるため、高重合ジメチコンと共に用いられた場合にはその溶解性を高めることが可能になる。なお、このような揮発性のシリコーンとしては、例えば、オクタメチルトリシロキサン、デカメチルテトラシロキサン、メチルポリシロキサン(0.65〜5cp程度の低粘度のもの)などの直鎖状ジメチルシリコーン;オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、ドデカメチルシクロヘキサシロキサンなどの環状ジメチルシリコーン;が挙げられる。揮発性のシリコーンの原液における配合量は、特に限定されないが、例えば、30重量%以上40重量%以下とすることができる。
【0026】
なお、原液には、無機系化合物である紫外線散乱剤が配合されていない、または、無機系化合物である紫外線散乱剤の配合量が原液全体の0.5重量%以下であることが好ましい。このような無機系化合物である紫外線散乱剤としては、酸化亜鉛や酸化チタン等が挙げられる。このように、無機系化合物である紫外線散乱剤を配合しないか配合量を少なくすることで、当該紫外線散乱剤に起因する手触りの悪化や塗布箇所が白くなる傾向を抑制し、耐圧容器から噴射される際に目視される噴射物の滞留度合いを抑えることが可能になる。
【0027】
また、原液には、(A成分)オクトクリレンや(B成分)t−ブチルメトキシジベンゾイルメタン以外の紫外線吸収剤が配合されていないことが好ましく、仮に配合されていたとしても原液全体に対して30重量%以下であることが好ましい。このような紫外線吸収剤としては、ジメチルPABAエチルヘキシル、マロン酸ジエチルヘキシルシリンギリデン、トリメトキシベンジリデンペンタンジオン等が挙げられる。このような紫外線吸収剤を配合させないまたは配合量を少なく抑えることで、スプレー用毛髪化粧料が黄色味をおびることを抑制できる。
なかでも、マロン酸ジエチルヘキシルシリンギリデンは常温で褐色透明な紫外線吸収剤であるが、アルカリ性洗剤の作用によって強い黄色の発色を示す。そのため、マロン酸ジエチルヘキシルシリンギリデンについては、非水系のスプレー用毛髪化粧料の原液に配合されていないか、配合されているとしても原液に対するマロン酸ジエチルヘキシルシリンギリデンの配合量を1重量%以下にすることが好ましい。このように、原液に対するマロン酸ジエチルヘキシルシリンギリデンの配合量を制限することにより、アルカリ性洗剤の作用によりスプレー用毛髪化粧料が黄色に発色してしまうことを抑制できる。
【0028】
(非水系)
非水系のスプレー用毛髪化粧料は、水が配合されていないか、または、水が配合されている場合にはスプレー容器内の原液における水の配合量が5重量%以下である。
また、水が配合されている場合であっても、原液に対する水の配合量は、3重量%以下であることが好ましく、1重量%以下であることがより好ましく、0.5重量%以下であることがさらに好ましい。
【0029】
このように非水系のスプレー用毛髪化粧料には水が配合されていないことまたは配合されていても少ない量とされていることから、水分の存在により活性酸素の発生が抑制され、毛髪が膨潤しにくいことから活性酸素の移動も抑制され、毛髪へ与えられるダメージ(タンパク質への影響、脂質の流出、退色等)を小さく抑えることが可能になると考えられる。また、水が配合されていないまたは配合量が少ないことから、スタイリングされた後の毛髪に対して用いた場合に、毛髪が濡れにくく、スタイリングが崩れにくい。
【0030】
(原液の剤型)
本実施形態の非水系のスプレー用毛髪化粧料の剤型は、噴射剤と共に耐圧容器に充填してエアゾール製品として用いる場合には、液状であることが好ましく、クリーム状ではなくゲル状ではないことが好ましい。
ここで、剤型を液状に調整する場合、B型粘度計を使用して25℃で計測した60秒後の原液の粘度が、例えば100mPa・s以下である。
【0031】
(SPF(Sun ProtectionFactor))
本実施形態の非水系のスプレー用毛髪化粧料のSPFは、30以上が良く、50以上が好ましい。
なお、上記SPFは、(1)ISO24444 Cosmetics−Sun protection methods−In vivo determination of the sun protection factorに基づき測定し、(2)この測定で得られたSPFiの算術平均として求められたSPFの小数点以下を切り捨てた整数をもって表される。
【0032】
(スプレー容器)
本実施形態の非水系のスプレー用毛髪化粧料は、スプレー容器に入れて用いることができる。このようにスプレー容器に入れて用いられることで、手を汚すことなく(手を洗わなくてよく)容易に毛髪に塗布することが可能になる。
非水系のスプレー用毛髪化粧料は、(D)噴射剤と共に耐圧容器に充填されてエアゾール製品として用いられてもよい。ここで、耐圧容器としては、特に限定されず、例えばアルミニウム、アルミニウム合金、ブリキ、鋼などの金属製のものであってよい。さらに、この金属製の耐圧容器は表面がメッキ加工されていてもよい。これらの耐圧容器は、内面に樹脂層が設けられているものであっても当該樹脂層が設けられていないものであってもよいし、内部に非水系のスプレー用毛髪化粧料および(D)噴射剤が充填される内袋を有するものであっても有しないものであってもよい。
【0033】
非水系のスプレー用毛髪化粧料は、(D)噴射剤を用いることなく、ミストポンプの容器に入れて用いられてもよい。すなわち、ユーザによってミストポンプの容器が操作されることで、容器内部が加圧され、当該加圧によって非水系のスプレー用毛髪化粧料が噴出されるようにしてもよい。このようなミストポンプの容器としては、例えば、一般的な霧吹き用の容器が挙げられる。
【0034】
(用途)
非水系のスプレー用毛髪化粧料の用途は、毛髪を紫外線から守る用途で用いられる限り特に限定されない。
例えば、毛髪のスタイリング剤として用いられてもよいし、スタイリングされた毛髪に対して用いられてもよい。非水系のスプレー用毛髪化粧料は、水が配合されていないかまたはその配合量が少ないため、スタイリングされた状態の毛髪に吹きかけたとしても、毛髪が濡れにくく、そのスタイルを崩すこと無く紫外線保護機能を付与することが可能になる。また、非水系のスプレー用毛髪化粧料には、エタノールが配合されているが、エタノールは揮発性があるため、毛髪が濡れにくく、スタイリングを崩しにくい。
【実施例】
【0035】
以下に実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明の趣旨を逸脱することがない限り、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0036】
<実施例1および比較例A〜D>
実施例1および比較例A〜Dの非水系のスプレー用毛髪化粧料および噴射剤を配合させたものを、表1に示す重量組成で調製した。
実施例1および比較例A〜Dでは、原液15重量部に対して噴射剤が85重量部となるように耐圧容器に充填した。ここで噴射剤として20℃における圧力が0.15MPaのLPGを用いた。
なお、実施例1の耐圧容器として、バルブが三谷バルブ社製のS13シリーズ(ステム孔径直径0.3mm、ハウジング横穴直径0.6mm、ハウジング下穴直径0.5mm)のものを用いた。また、ボタンは三谷バルブ社製のメカニカルブレーキアップタイプ(ノズル孔径直径0.43mm)のものを用いた。
【0037】
以下に、評価方法および評価基準を示す。なお、評価は、パネラー3名で実施した。
(1)原液の色つき
原液の黄色さを目視で評価した。評価基準は、以下の通りである。
◎:無色(3名中3名が無色と回答)
○:わずかに黄色い(3名中1名が黄色いと回答)
△:やや黄色い(3名中2名が黄色いと回答)
×:黄色い(3名中3名が黄色いと回答)
白濁:白濁した
(2)白布にスプレーした際の色つき
白布に約2秒スプレーを噴射した直後の色を目視で評価した。評価基準は、以下の通りである。
無色:3名中2名以上が無色と回答
黄色:3名中2名以上が黄色と回答
(3)アルカリ性洗剤による変色
白布にスプレーを約2秒噴射後、アルカリ性洗剤を適量塗布した直後、白布の変色を評価した。評価基準は、以下の通りである。
変化なし:3名中3名が白布の色の変化なしと回答
黄色に発色:3名中3名が白布の色が黄色に変化したと回答
【0038】
【表1】
【0039】
上記表1に示すように、紫外線吸収剤としてオクトクリレンとt−ブチルメトキシジベンゾイルメタンとを組合せて用いた実施例1では原液の色付きが無色と評価されたのに対して、他の紫外線吸収剤を配合させた比較例A〜Dの例では、明らかに黄色味が増していることがわかる。また、白布にスプレーした際の色つきについても同様に、実施例1が無色で優れており、他の紫外線吸収剤を配合させた比較例A〜Dの例では黄色に着色してしまっていることが分かる。なお、アルカリ性洗剤による変色評価では、比較例Dにおいて黄色に発色することが確認された。
以上より、紫外線吸収剤としては、オクトクリレンとt−ブチルメトキシジベンゾイルメタンとを組合せて用いることが、原液の黄色味を抑える観点で優れていることが分かる。
【0040】
<参考例1〜5>
表2に示すように、参考例1〜5の各紫外線吸収剤のエタノール溶液について、アルカリ性洗剤の発色を評価した。
アルカリ性洗剤の発色の評価については、白布に参考例1〜5をそれぞれ適量塗布し、その後アルカリ性洗剤を適量塗布した直後、白布の変色を評価することで行った。
変化なし:3名中3名が白布の色の変化なしと回答
黄色に発色:3名中3名が白布の色が黄色に変化したと回答
【0041】
【表2】
【0042】
上記表2に示すように、オクトクリレン単体、t−ブチルメトキシジベンゾイルメタン単体、ジメチルPABAエチルヘキシル単体では、アルカリ性洗剤の発色について変化なしの評価となった。なお、参考例4の例では、アルカリ性洗剤の発色について黄色に発色するとの評価となった。そして、参考例5の混合物の例では、アルカリ性洗剤の発色については黄色に発色するとの評価となった。
【0043】
<実施例2〜6>
実施例2〜6の非水系のスプレー用毛髪化粧料および噴射剤を配合させたものを、表3に示す組成で調製した。
実施例2では、原液30重量部に対して噴射剤が70重量部となるように耐圧容器に充填した。噴射剤として20℃における圧力が0.15MPaのLPGを用いた。
実施例3では、原液15重量部に対して噴射剤が85重量部となるように耐圧容器に充填した。噴射剤として20℃における圧力が0.3MPaのLPGを充填した。
実施例4〜6では、原液15重量部に対して噴射剤が85重量部となるように耐圧容器に充填した。噴射剤として20℃における圧力が0.15MPaのLPGを充填した。
なお、実施例2〜6においても、実施例1と同様に、耐圧容器として、バルブが三谷バルブ社製のS13シリーズ(ステム孔径直径0.3mm、ハウジング横穴直径0.6mm、ハウジング下穴直径0.5mm)のものを用いた。また、ボタンは三谷バルブ社製のメカニカルブレーキアップタイプ(ノズル孔径直径0.43mm)のものを用いた。
【0044】
以下に、評価方法および評価基準を示す。なお、評価は、パネラー3名で実施した。
なお、原液の色つき、白布にスプレーした際の色つき、アルカリ性洗剤による変色については、上記と同様である。
(4)視認噴射物の滞留度合い
スプレーを約2秒噴射した際に、空中に舞う噴射物の粒子の量と滞留時間を目視で評価した。ここで、一般的に、視認できる程度の大きさの噴射物の粒子の量が多い場合には滞留時間が長くなる傾向があることから、視認できる程度の大きさの噴射物の粒子の量が多くて滞留時間が長い場合に「滞留度合いが高い」とし、視認できる程度の大きさの噴射物の粒子の量が少なくて滞留時間が短い場合に「滞留度合いが小さい」とした。評価基準は、以下の通りである。
◎:視認噴射物の滞留度合が小さい(3名中3名が基準に較べて視認噴射物の滞留度合いが小さいと回答)
○:視認噴射物の滞留度合いがやや小さい(3名中1〜2名が基準に較べて視認噴射物の滞留度合いが小さいと回答)
△:基準と同等(3名中3名が基準と同等と回答)
×:視認噴射物の滞留度合いがやや高い(3名中1〜2名が基準に較べて視認噴射物の滞留度合いが高いと回答)
××:視認噴射物の滞留度合いが高い(3名中3名が基準に較べて視認噴射物の滞留度合いが高いと回答)
【0045】
(5)ベタツキ
スプレーを約2秒ウィッグに噴霧し、髪全体のベタツキ度合いを官能評価した。評価基準は、以下の通りである。
○:基準と同様にベタツキがない(3名中3名が基準に較べて同等と回答)
△:ややベタツキがある(3名中1〜2名が基準に較べベタつくと回答)
×:ベタツキがある(3名中3名が基準に較べてベタつくと回答)
(6)手触り(滑り)
スプレーを約2秒ウィッグに噴霧し、根元部分から毛先まで手を通した時の滑りを官能評価した。評価基準は、以下の通りである。
◎:滑りが良い(3名中3名が基準に較べて滑ると回答)
○:滑りがやや良い(3名中1〜2名が基準に較べて滑ると回答)
△:滑りがやや悪い(3名中1〜2名が基準に較べて滑らないと回答)
×:滑りが悪い(3名中3名が基準に較べて滑らないと回答)
【0046】
(7)ツヤ
スプレーを約2秒ウィッグに噴霧し、見た目のツヤ(光の反射)を官能評価した。評価基準は、以下の通りである。
◎:ツヤが良い(3名中3名が基準に較べてツヤがあると回答)
○:ツヤがやや良い(3名中1〜2名が基準に較べてツヤがあると回答)
△:ツヤがやや悪い(3名中1〜2名が基準に較べてツヤがないと回答)
×:ツヤが悪い(3名中3名が基準に較べてツヤがないと回答)
(8)黒布の白浮き
黒布にスプレーを約2秒噴射した際に、黒布が白色に色付きするかを評価した。評価基準は、以下の通りである。
なし:3名中3名が、基準に較べて色変化なしと回答
あり:3名中3名が、基準に較べて白色に色付きすると回答
【0047】
【表3】
【0048】
上記表3に示すように、噴射剤に対する原液の比率を高めると、ベタツキ度合いは悪化するものの、視認噴射物の滞留度合いは改善されて少なくなることが分かる(実施例1および実施例2参照)。
なお、実施例1と実施例3を比較すると、原液と噴射剤との配合比率が同じであるにも関わらず、25℃におけるゲージ圧がより高い方が、視認噴射物の滞留度合いが悪化することが分かる。
また、実施例1と基準となる実施例5を比較すると、高重合ジメチコンを配合した方が、視認噴射物の滞留度合い、手触り(滑り)、ツヤともに向上していることが分かる。
【0049】
また、実施例1と実施例4を比較すると、ノニオン界面活性剤を配合させた方が、ベタツキが悪化し、手触り(滑り)も悪化していることが分かる。
さらに、実施例1と実施例6を比較すると、無機系化合物である紫外線散乱剤を配合した方が、視認噴射物の滞留度合い、ベタツキ、手触り(滑り)、ツヤともに悪化していることが分かる。なお、無機系化合物である紫外線散乱剤を配合した実施例6では、他の実施例では確認されなかった白浮きが確認されている。
【産業上の利用可能性】
【0050】
本発明は、毛髪へのダメージを抑制しつつ黄色味を抑えることが可能な非水系のスプレー用毛髪化粧料およびエアゾール製品として好ましく用いることができる。