(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6548909
(24)【登録日】2019年7月5日
(45)【発行日】2019年7月24日
(54)【発明の名称】見当制御ユニット、見当制御ユニットを備える多色刷印刷システムおよび見当マークの検出方法
(51)【国際特許分類】
B41F 33/00 20060101AFI20190711BHJP
B41F 13/02 20060101ALI20190711BHJP
B41F 13/12 20060101ALI20190711BHJP
【FI】
B41F33/00 290
B41F13/02 263
B41F13/12
【請求項の数】8
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2015-35760(P2015-35760)
(22)【出願日】2015年2月25日
(65)【公開番号】特開2016-155330(P2016-155330A)
(43)【公開日】2016年9月1日
【審査請求日】2017年7月18日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002107
【氏名又は名称】住友重機械工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 賢樹
(74)【代理人】
【識別番号】100109047
【弁理士】
【氏名又は名称】村田 雄祐
(74)【代理人】
【識別番号】100109081
【弁理士】
【氏名又は名称】三木 友由
(74)【代理人】
【識別番号】100116274
【弁理士】
【氏名又は名称】富所 輝観夫
(72)【発明者】
【氏名】平山 大介
【審査官】
村田 顕一郎
(56)【参考文献】
【文献】
特開平09−226097(JP,A)
【文献】
特開2014−172359(JP,A)
【文献】
特開昭62−099149(JP,A)
【文献】
特開2006−130765(JP,A)
【文献】
特表2012−504505(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2012/0234192(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41F 13/00−13/70
B41F 33/00−33/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
見当マークが印刷された被印刷媒体からの光を分光感度特性の異なる複数の光電変換領域を有する受光素子により受光し、前記被印刷媒体からの光を受信した前記受光素子から出力される信号に基づいて前記被印刷媒体に印刷された前記見当マークを検出する見当制御ユニットであって、
前記被印刷媒体の下地の色と前記被印刷媒体に印刷された前記見当マークの色とを取得する取得部と、
前記取得部によって取得された下地の色と見当マークの色とに基づいて、各光電変換領域からの信号の強度比率を調整する調整部と、
を備え、
前記調整部は、前記取得部によって取得された下地の色と見当マークの色に関して、下地による信号強度と見当マークによる信号強度との差が最大となる光電変換領域からの信号強度のみを増幅するよう調整することを特徴とする見当制御ユニット。
【請求項2】
見当マークが印刷された被印刷媒体からの光を分光感度特性の異なる複数の光電変換領域を有する受光素子により受光し、前記被印刷媒体からの光を受信した前記受光素子から出力される信号に基づいて前記被印刷媒体に印刷された前記見当マークを検出する見当制御ユニットであって、
下地の色と見当マークの色の組み合わせと、前記組み合わせに関して、下地による信号強度と見当マークによる信号強度との差が最大となる光電変換領域と、を対応づけて保持する対応関係保持部と、
前記被印刷媒体の下地の色と前記被印刷媒体に印刷された前記見当マークの色とを取得する取得部と、
前記対応関係保持部から、前記取得部によって取得された下地の色と見当マークの色の組み合わせに対応する光電変換領域を抽出する決定部と、
前記決定部によって抽出された光電変換領域からの信号強度を増幅することにより各光電変換領域からの信号の強度比率を調整する調整部と、
を備えることを特徴とする見当制御ユニット。
【請求項3】
前記調整部は、各光電変換領域からの信号を合成した合成信号の信号強度が所定の閾値以上となるよう各光電変換領域からの信号の強度比率を調整することを特徴とする請求項1または2に記載の見当制御ユニット。
【請求項4】
前記被印刷媒体には、前記見当マークとは別の見当マークがさらに印刷されており、
本見当制御ユニットは、前記被印刷媒体からの光を、分光感度特性の異なる複数の光電変換領域を有する、前記受光素子と所定間隔を空けて配置された別の受光素子により受光し、前記別の受光素子から出力される信号に基づいて前記被印刷媒体に印刷された前記別の見当マークを検出するようにもなっており、
前記取得部は、前記被印刷媒体の下地の色と前記被印刷媒体に印刷された前記見当マークの色および前記別の見当マークの色とを取得し、
前記調整部は、前記受光素子の各光電変換領域からの信号を合成した合成信号の信号強度のピークと、前記別の受光素子の各光電変換領域からの信号を合成した合成信号の信号強度のピークとの差が所定の値以下になるように、前記受光素子の各光電変換領域からの信号の強度比率と、前記別の受光素子の各光電変換領域からの信号の強度比率と、をそれぞれ調整することを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の見当制御ユニット。
【請求項5】
見当マークが印刷された被印刷媒体からの光を分光感度特性の異なる複数の光電変換領域を有する受光素子により受光し、前記被印刷媒体からの光を受信した前記受光素子から出力される信号に基づいて前記被印刷媒体に印刷された前記見当マークを検出する見当制御ユニットであって、
前記被印刷媒体に印刷された前記見当マークと前記被印刷媒体の下地とを撮像する撮像部と、
前記撮像部によって取得された画像から見当マークの色と下地の色とを判定する色判定部と、
前記色判定部による判定の結果得られた見当マークの色と下地の色とを取得する取得部と、
前記取得部によって取得された下地の色と見当マークの色とに基づいて、各光電変換領域からの信号の強度比率を調整する調整部と、
を備えることを特徴とする見当制御ユニット。
【請求項6】
請求項1から5のいずれかに記載の見当制御ユニットを備えることを特徴とする多色刷印刷システム。
【請求項7】
見当マークが印刷された被印刷媒体からの光を分光感度特性の異なる複数の光電変換領域を有する受光素子により受光し、前記被印刷媒体からの光を受信した前記受光素子から出力される信号に基づいて前記被印刷媒体に印刷された前記見当マークを検出する見当マークの検出方法であって、
前記被印刷媒体に印刷された前記見当マークの色と前記被印刷媒体の下地の色を取得するステップと、
取得された見当マークの色と下地の色に基づいて、前記複数の光電変換領域それぞれからの信号の強度比率を調整するステップと、を含み、
前記調整するステップでは、取得された下地の色と見当マークの色に関して、下地による信号強度と見当マークによる信号強度との差が最大となる光電変換領域からの信号強度のみを増幅するよう調整することを特徴とする見当マークの検出方法。
【請求項8】
見当マークが印刷された被印刷媒体からの光を分光感度特性の異なる複数の光電変換領域を有する受光素子により受光し、前記被印刷媒体からの光を受信した前記受光素子から出力される信号に基づいて前記被印刷媒体に印刷された前記見当マークを検出する見当マークの検出方法であって、
前記被印刷媒体に印刷された前記見当マークの色と前記被印刷媒体の下地の色を取得するステップと、
下地の色と見当マークの色の組み合わせと、前記組み合わせに関して、下地による信号強度と見当マークによる信号強度との差が最大となる光電変換領域と、を対応づけて保持する対応関係保持部から、前記取得するステップにおいて取得された下地の色と見当マークの色の組み合わせに対応する光電変換領域を抽出するステップと、
前記抽出するステップにおいて抽出された光電変換領域からの信号強度を増幅することにより各光電変換領域からの信号の強度比率を調整するステップと、含むことを特徴とする見当マークの検出方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、見当制御ユニット、見当制御ユニットを備える多色刷印刷システムおよび見当マークの検出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ウェブの搬送路に沿って複数の印刷ユニットを設置し、各印刷ユニットに設けられた版胴を個別に回転駆動し、ウェブに順次印刷を施す多色刷印刷システムが知られている。多色刷印刷システムでは、各印刷ユニットでウェブに印刷された見当マークを検出し、その検出結果に基づき各版胴間で生じる印刷位置のずれを制御する。
【0003】
見当マークを検出する手法としては、ウェブに光を照射し、その反射光をセンサにより受光し、センサからの信号を用いて検出する手法が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平05−016337号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
例えば、ウェブがクリーム色で、見当マークが薄い黄色の場合など、下地となるウェブの色と見当マークの色とのコントラストが非常に小さい場合、検出信号に対するノイズの影響が大きくなり、見当マークの検出精度が低下する。
【0006】
本発明は、こうした状況に鑑みてなされたものであり、その目的は、見当マークの検出精度を高めることができる見当制御ユニットを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明のある態様の見当マーク検出ユニットは、分光感度特性の異なる複数の光電変換領域を有する受光素子で受光されるべき下地の色と見当マークの色とを取得する取得部と、取得部によって取得された下地の色と見当マークの色とに基づいて、各光電変換領域からの信号の強度比率を調整する調整部と、を備える。
【0008】
なお、以上の構成要素の任意の組み合わせや、本発明の構成要素や表現を方法、装置、システムなどの間で相互に置換したものもまた、本発明の態様として有効である。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、見当マークの検出精度を高めることができる見当制御ユニットを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】実施形態に係る多色刷印刷システムの構成を示す図である。
【
図2】
図1の見当制御ユニットの機能および構成を示すブロック図である。
【
図3】
図3(a)、(b)はそれぞれ、第1見当マーク検出部、第2見当マーク検出部による検出結果の一例を示すグラフである。
【
図4】対応関係保持部のデータ構造を示す図である。
【
図5】
図5(a)、(b)はそれぞれ、第1見当マーク検出部および第2見当マーク検出部による検出結果の他の一例を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、各図面に示される同一または同等の構成要素、部材、工程には、同一の符号を付するものとし、適宜重複した説明は省略する。また、各図面における部材の寸法は、理解を容易にするために適宜拡大、縮小して示される。また、各図面において実施の形態を説明する上で重要ではない部材の一部は省略して表示する。
【0012】
図1は、実施形態に係る多色刷印刷システム100の構成を示す。多色刷印刷システム100は、第1印刷ユニット10A、第2印刷ユニット10B(以下、総称して「印刷ユニット10」とも呼ぶ)と、見当制御ユニット20と、を備える。各印刷ユニット10は、版胴11と、圧胴12と、を含む。ウェブ2は、ガイドロール4により所定の搬送路に沿って案内され、圧胴12により版胴11に圧接される。ウェブ2には版胴11に対応した色の絵柄および見当マークが印刷される。ウェブ2には特に、第1印刷ユニット10A、第2印刷ユニット10Bのそれぞれにおいて、
図1では不図示の第1見当マーク6A、第2見当マーク6B(以下、総称して「見当マーク6」とも呼ぶ)のそれぞれが印刷される。
【0013】
見当制御ユニット20は、センサ30と、機側制御部40と、集中制御部50と、を備える。センサ30と機側制御部40は、第1見当マーク6Aと第2見当マーク6Bを検出し、第1印刷ユニット10Aと第2印刷ユニット10Bの間での見当ずれを判定する。見当ずれが生じている場合、機側制御部40は、第2印刷ユニット10Bの版胴11の回転量を増減させて、そのずれを解消させる。集中制御部50は、機側制御部40による見当マークの検出を支援する。
【0014】
図2は、見当制御ユニット20の機能および構成を示すブロック図である。センサ30は、第1光電センサ部31aと、第2光電センサ部31bと、第1撮像部37aと、第2撮像部37bと、を含む。第1光電センサ部31aと第2光電センサ部31bとは間隔Lで配置される。この間隔Lは、見当ずれが生じていないときにおける第1見当マーク6Aと第2見当マーク6Bの距離に相当する。第1光電センサ部31aおよび第2光電センサ部31bはそれぞれ、光源32と、光学系33と、光検出素子34と、信号増幅部35と、を含む。光源32は白色光源である。光源32はウェブ2に光を照射する。光源32は特に、見当マーク6が通過する領域に光を照射する。ウェブ2に照射された光の反射光は、光学系33により集光され、光検出素子34の受光素子36により受光される。光学系33は公知の技術を用いて構成される。
【0015】
受光素子36は、RGBフォトダイオードである。受光素子36は、第1光電変換領域36a、第2光電変換領域36b、第3光電変換領域36cの3つの光電変換領域を有する。各光電変換領域は、互いに異なる分光感度特性を有する。第1光電変換領域36aは赤色帯域にピーク波長をもつ特性を有し、第2光電変換領域36bは緑色帯域にピーク波長をもつ特性を有し、第3光電変換領域36cは青色帯域にピーク波長をもつ特性を有する。各光電変換領域はカソード側が接地され、受光した光を電流信号に変換してアノード側に出力する。この電流信号の大きさは、受光した光の強度と受光感度との乗算値を波長毎に積算した大きさとなる。各光電変換領域からの電流信号は電流電圧変換回路(不図示)により電圧信号に変換され、信号増幅部35に出力される。
【0016】
信号増幅部35は、第1信号増幅部35a、第2信号増幅部35bおよび第3信号増幅部35cを有する。第1信号増幅部35a、第2信号増幅部35b、第3信号増幅部35cは、それぞれ第1光電変換領域36a、第2光電変換領域36b、第3光電変換領域36cからの信号を、同じ割合で増幅する。
【0017】
第1撮像部37aは、第1光電センサ部31aがセンシングしている領域を撮像する。すなわち、第1撮像部37aは、ウェブ2と、第1見当マーク6Aと、を撮像する。第2撮像部37bは、第2光電センサ部31bがセンシングしている領域を撮像する。すなわち、第2撮像部37bは、ウェブ2と、第2見当マーク6Bと、を撮像する。第1撮像部37aおよび第2撮像部37bは、取得した撮像画像を集中制御部50に送る。
【0018】
機側制御部40は、第1調整部41a、第2調整部41b(以下、総称して「調整部41」とも呼ぶ)と、第1見当マーク検出部42a、第2見当マーク検出部42b(以下、総称して「見当マーク検出部42」とも呼ぶ)と、見合せ部43と、を備える。第1調整部41aは、第1光電センサ部31aと第1見当マーク検出部42aとの間に設けられる。第1調整部41aは、第1光電センサ部31aの受光素子36の各光電変換領域からの信号の強度比率を調整する。具体的には、第1調整部41aは、集中制御部50に指示された光電変換領域からの信号であって、後述するようにS/N比が高い信号を増幅することにより、各光電変換領域からの信号の強度比率を調整する。第2調整部41bは、第2光電センサ部31bと第2見当マーク検出部42bとの間に設けられる。第2調整部41bは第1調整部41aと同様に構成される。
【0019】
第1見当マーク検出部42aは、第1調整部41aから出力される信号に基づいて、ウェブ2に付された第1見当マーク6Aを検出する。第1見当マーク検出部42aは、第1調整部41aから出力された信号を合成し、その合成信号の信号強度と所定の検出閾値とを比較し、信号強度が検出閾値を超えたとき、見当マークであると判定する。第1調整部41aによって、各光電変換領域からの信号のうちS/N比が高い信号が増幅されるため、それらを合成した信号のS/N比も当然高くなる。そのため、第1見当マーク検出部42aは、比較的高い精度で見当マークを検出することができる。第2見当マーク検出部42bは、第2調整部41bから出力される信号に基づいて、ウェブ2に付された第2見当マーク6Bを検出する。第2見当マーク検出部42bは、第1見当マーク検出部42aと同様に構成される。
【0020】
見合せ部43には、第1見当マーク検出部42aおよび第2見当マーク検出部42bによる検出結果が入力される。見合せ部43は、これらの検出結果に基づき各版胴11間で生じる印刷位置のずれ、すなわち見当ずれの有無を判断する。
図3(a)、(b)はそれぞれ、第1見当マーク検出部42a、第2見当マーク検出部42bによる検出結果の一例を示すグラフである。
図3(a)のグラフ61は第1見当マーク検出部42aによって検出された第1見当マーク6Aの信号波形を示し、
図3(b)のグラフ62は第1見当マーク検出部42aによって検出された第2見当マーク6Bの信号波形を示す。
【0021】
ここで、上述したように、第1光電センサ部31aと第2光電センサ部31bは間隔Lで配置され、見当ずれが生じていないときの第1見当マーク6Aと第2見当マーク6Bも間隔Lで印刷される。したがって、見当ずれが生じていない場合、第1見当マーク6Aと第2見当マーク6Bは略同一のタイミングで検出される。これより、第1見当マーク検出部42aによって第1見当マーク6Aが検出された(つまり合成信号の信号強度と所定の検出閾値を超えた)時刻t1と、第2見当マーク検出部42bによって第2見当マーク6Bが検出された時刻t2とが略同一であるとき、見合せ部43は、見当ずれが生じていないと判断する。一方、時刻t1と時刻t2とが異なるとき、見合せ部43は、時刻t1と時刻t2との差分にウェブ2を送り速度を乗じた分だけ見当ずれが生じていると判断する。
【0022】
見当ずれが生じている場合、見合せ部43は、例えば第2印刷ユニット10Bの駆動モータ(不図示)またはサイドレー(不図示)に補正信号を出力する。駆動モータまたはサイドレーは、補正信号に基づき見当ずれが修正されるよう版胴11を駆動する。駆動モータはウェブ2の走行方向の見当ずれを調整し、サイドレーはウェブ2の幅方向の見当ずれを調整する。
【0023】
集中制御部50は、対応関係保持部51と、色判定部52と、色取得部53と、決定部54と、設定部55と、を含む。色判定部52は、第1撮像部37aおよび第2撮像部37bから撮像画像を受け付ける。色判定部52は、受け付けた各撮像画像から、下地であるウェブ2の色と第1見当マーク6A、第2見当マーク6Bの色を判定する。色取得部53は、色判定部52による判定の結果得られたウェブ2の色と第1見当マーク6A、第2見当マーク6Bの色、もしくは入力装置(不図示)を介してユーザによって予め入力されたウェブ2の色と第1見当マーク6A、第2見当マーク6Bの色を取得する。
【0024】
図4は、対応関係保持部51のデータ構造を示す。対応関係保持部51は、下地色51a、見当マーク色51b、光電変換領域51cと、を対応付けて保持する。下地色51aは下地であるウェブ2の色を示す。見当マーク色51bは見当マーク6の色を示す。光電変換領域51cは、ウェブ2の色が下地色51aで見当マーク6の色が見当マーク色51bの場合に、S/N比が最も高い信号を出力する光電変換領域(すなわちウェブ2による信号強度と見当マーク6による信号強度との差が最大となる光電変換領域)を示す。光電変換領域51cは、別の言い方をすると、調整部41において増幅させるべき信号を出力する光電変換領域を示す。例えば、ウェブ2が「黄色」で見当マーク6が「橙色」の場合またはウェブ2が「橙色」で見当マーク6が「黄色」の場合、すなわちウェブ2の色と見当マーク6の色の組み合わせが「黄色」と「橙色」の場合、「第2光電変換領域」がS/N比が最も高い信号を出力する光電変換領域であって、増幅させるべき信号を出力する光電変換領域であることを示している。
【0025】
決定部54は、どの光電変換領域からの信号を調整部41に増幅させるかを決定する。具体的には、決定部54は、色取得部53が取得したウェブ2の色と第1見当マーク6Aの色の組に対応する光電変換領域を、対応関係保持部51から抽出する。同様に、決定部54は、色取得部53が取得したウェブ2の色と第2見当マーク6Bの色の組に対応する光電変換領域を、対応関係保持部51から抽出する。例えば、色取得部53が取得したウェブ2の色と見当マーク6の色の組み合わせが「黄色」と「橙色」の場合、決定部54は、「第2光電変換領域」からの信号を調整部41に増幅させると決定する。
【0026】
設定部55は、第1調整部41aおよび第2調整部41bのそれぞれに対して、決定部54によって決定(抽出)された光電変換領域からの信号を増幅するよう指示する。
【0027】
以上のように構成された多色印刷システムの事前調整処理の動作を説明する。
光源32は見当マークが通過する領域に光を照射し、光検出素子34はウェブ2からの反射光を受光する。光検出素子34の各光電変換領域は、受光した光に応じた信号を出力する。また、センサ30の各撮像部は、ウェブ2および見当マークを撮像する。集中制御部50の色判定部52は撮像部が取得した撮像画像からウェブ2の色と見当マークの色を判定する。色取得部53は判定の結果得られたウェブ2の色と第1見当マーク6A、第2見当マーク6Bの色を取得する。もしくは、色取得部53は、ユーザによって予め入力されたウェブ2の色と第1見当マーク6A、第2見当マーク6Bの色を取得する。
【0028】
決定部54は、対応関係保持部51を参照して、色取得部53が取得したウェブ2の色と第1見当マーク6Aの色の組に対して、第1調整部41aにより増幅させるべき信号を出力する光電変換領域を決定する。設定部55は、第1調整部41aに対して、決定された光電変換領域を増幅させるよう指示する。同様に、決定部54は、対応関係保持部51を参照して、色取得部53が取得したウェブ2の色と第2見当マーク6Bの色の組に対して、第1調整部41aにより増幅させるべき信号を出力する光電変換領域を決定する。設定部55は、第2調整部41bに対して、決定された光電変換領域を増幅させるよう指示する。
【0029】
機側制御部40の第1調整部41aは、設定部55の指示にしたがって信号を調整する。第1見当マーク検出部42aは、第1調整部41aによって調整された信号により見当マークを検出する。同様に、第2調整部41bは、設定部55の指示にしたがって信号を調整し、第2見当マーク検出部42bは、第2調整部41bによって調整された信号により見当マークを検出する。見合せ部43は、各見当マーク検出部42の検出結果を基に見当ずれの有無を判断し、見当ずれが生じている場合は、第2印刷ユニット10Bの版胴11の回転量を増減させて、そのずれを解消させる。
【0030】
本実施形態に係る多色刷印刷システム100によれば、ウェブ2の色と見当マークの色とに基づいて、各光電変換領域からの信号の強度比率が調整される。特に、ウェブ2の色と見当マークの色とに基づいて、S/N比が高い信号が増幅されるよう各光電変換領域からの信号の強度比率が調整される。その結果、見当マークの検出精度を高めることができる。
【0031】
以上、実施の形態に係る多色刷印刷システムについて説明した。この実施の形態は例示であり、それらの各構成要素や各処理プロセスの組合せにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。以下変形例を示す。
【0032】
(変形例1)
実施の形態では、多色刷印刷システム100は、第1印刷ユニット10Aと第2印刷ユニット10Bの2つの印刷ユニットを備える場合について説明したがこれに限られない。多色刷印刷システム100は、n(≧3)個の印刷ユニットを備えていてもよい。この場合、見当制御ユニット20は、n−1個のセンサおよび機側制御部を備えてもよい。
【0033】
(変形例2)
実施の形態では特に言及しなかったが、調整部41は、見当マーク検出部42に出力される合成信号の信号強度が検出閾値以上となるように、光電変換領域からの信号を増幅させてもよい。この場合、より高い精度で見当マークを検出することができる。
【0034】
(変形例3)
図5(a)、(b)はそれぞれ、第1見当マーク検出部42a、第2見当マーク検出部42bによる検出結果の他の一例を示すグラフである。
図5(a)のグラフ71は第1見当マーク検出部42aによって検出された見当マークの信号波形を示し、
図5(b)のグラフ72は第1見当マーク検出部42aによって検出された見当マークの信号波形を示す。現実に見当ずれが生じておらず、
図5に示すように信号波形が立ち上がり始める時刻が時刻t0で同じであっても、波形の高さ、すなわち信号強度の最大値の相違により、第1見当マーク検出部42aによって第1見当マーク6Aが検出されたときの時刻t1と、第2見当マーク検出部42bによって第2見当マーク6Bが検出されたときの時刻t2とが異なるものと検出されうる。したがって、第1調整部41aと第2調整部41bとは、第1見当マーク検出部42aに出力される合成信号の信号強度の最大値と、第2見当マーク検出部42bに出力される合成信号の信号強度の最大値との差が所定値以下となるように、第1光電センサ部31aの光電変換領域からの信号と、第2光電センサ部31bの光電変換領域からの信号とを増幅させてもよい。本変形例によれば、より高い精度で見当ずれの有無を判定できる。
【0035】
(変形例4)
実施の形態では、受光素子36が3つの光電変換領域を有するRGBフォトダイオードである場合について説明したが、これに限られない。受光素子36は、2つまたは4つ以上の光電変換領域を有するRGBフォトダイオードであってもよい。また、受光素子36はRGBフォトダイオード以外でもよい。これらの場合、設計の自由度が高まる。
【0036】
(変形例5)
実施の形態では、第1光電センサ部31aおよび第2光電センサ部31bは、ウェブ2からの反射光を受光する場合について説明したが、これに限られず、例えば第1光電センサ部31aおよび第2光電センサ部31bは、ウェブ2からの透過光を受光するよう構成されてもよい。
【0037】
(変形例6)
実施の形態では、機側制御部40が、調整部41を有する場合について説明したが、これに限られない。センサ30が調整部41の機能を有してもよい。
【0038】
上述した実施の形態と変形例の任意の組み合わせもまた本発明の実施の形態として有用である。組み合わせによって生じる新たな実施の形態は、組み合わされる実施の形態および変形例それぞれの効果をあわせもつ。
【符号の説明】
【0039】
20 見当制御ユニット、 30 センサ、 30A 第1センサ、 30B 第2センサ、 31a 第1光電センサ部、 31b 第2光電センサ部、 36 受光素子、 37a 第1撮像部、 37b 第2撮像部、 40 機側制御部、 41 調整部、 42 見当マーク検出部、 43 見合せ部、 50 集中制御部、 51 対応関係保持部、 52 色判定部、 53 色取得部、 54 決定部、 55 設定部、 100 多色刷印刷システム。