特許第6548914号(P6548914)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6548914
(24)【登録日】2019年7月5日
(45)【発行日】2019年7月24日
(54)【発明の名称】制御バルブ
(51)【国際特許分類】
   F16K 27/04 20060101AFI20190711BHJP
   F16K 3/316 20060101ALI20190711BHJP
【FI】
   F16K27/04
   F16K3/316
【請求項の数】5
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2015-42744(P2015-42744)
(22)【出願日】2015年3月4日
(65)【公開番号】特開2016-161106(P2016-161106A)
(43)【公開日】2016年9月5日
【審査請求日】2018年2月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】000232807
【氏名又は名称】三菱ロジスネクスト株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002468
【氏名又は名称】特許業務法人後藤特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 友志
【審査官】 松浦 久夫
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−115289(JP,A)
【文献】 特開2003−343749(JP,A)
【文献】 特開平03−103685(JP,A)
【文献】 特開平06−193750(JP,A)
【文献】 米国特許第03113591(US,A)
【文献】 特開2001−280516(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16K 27/00 − 27/12
F16K 3/00 − 3/36
F16K 11/00 − 11/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
スプールの移動によってオイルの流動通路を切り換える制御バルブであって、
前記スプールの外周に設けられるスラストワッシャーと、
前記スラストワッシャーを介して前記スプールをスプール軸方向に付勢するスプリングと、
前記スプールの一部を収容するスプール収容孔と、少なくとも前記スプリング及び前記スラストワッシャーを収容するスプリング室とを有するハウジングと、
を備え、
前記ハウジングには、前記スプリング室内の前記オイルを排出する排出ポートと、前記スプリング室において前記スプール軸方向に沿って延びる溝部が形成されていることを特徴とする制御バルブ。
【請求項2】
請求項1に記載の制御バルブであって、
前記溝部は、前記スプリング室において前記ハウジングの端部に向かう側ほど溝の深さが深いことを特徴とする制御バルブ。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の制御バルブであって、
前記溝部は、前記排出ポートと離間していることを特徴とする制御バルブ。
【請求項4】
請求項3に記載の制御バルブであって、
前記溝部は、前記排出ポートに対して前記スプリング室の円周方向について異なる位置に形成されることを特徴とする制御バルブ。
【請求項5】
請求項1乃至請求項4のいずれか一項に記載の制御バルブであって、
前記スプリングは、前記スラストワッシャーが前記ハウジングの外側寄りに移動するように前記スプールを付勢し、
前記排出ポートは、前記スプリング室において前記ハウジングの内側寄りに設けられ、
前記溝部は、前記ハウジングの外側寄りの位置から内側に向かって延設されることを特徴とする制御バルブ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スプリング室に排出ポートを備える制御バルブに関する。
【背景技術】
【0002】
制御バルブは、流動するオイルの経路を変化させることによって、種々の機械要素の油圧制御を行わせるものである。例えば、フォークリフトのクラッチ機構などにおいて、制御バルブが用いられている。
【0003】
特許文献1には、オイルを無圧差摺動面の内部に導くオイル溝を有するスプールバルブ(制御バルブ)が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−115289号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ハウジング内にスプリング室を設ける制御バルブにおいて、ポート間を流動するオイルがスプリング室内にリークすることがある。このように、リークしたオイルを排出するために、スプリング室には排出ポートが形成される。スプールにはスラストワッシャーが設けられており、スラストワッシャーの外径とスプリング室の内径との差が小さいと、スプールとともに移動するスラストワッシャーによりオイルも移動させられる。そのため、ハウジングにはスプリング室の両端に1カ所ずつ排出ポートが設けられる。排出ポートを通じてオイルを外部に排出することにより、スプリング室内においてスプールが良好に移動可能となる。
【0006】
しかしながら、排出ポートをスプリング室内の両端に設ける構成では、排出ポートを複数形成することによる製造工程数の増加により製造コストが高くなるという問題がある。よって、スプリング室内にリークしたオイルの排出性を良好に保ちつつ、製造コストを低減することが望まれる。
【0007】
本発明の目的は、スプリング室内にリークしたオイルの排出性を良好に保ちつつ、製造コストを低減した制御バルブを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のある態様によれば、スプールの移動によってオイルの流動通路を切り換える制御バルブであって、スプールの外周に設けられるスラストワッシャーと、スラストワッシャーを介してスプールをスプール軸方向に付勢するスプリングと、を備える。制御バルブは、さらに、スプールの一部を収容するスプール収容孔と、少なくともスプリング及びスラストワッシャーを収容するスプリング室とを有するハウジングと、を備える。そして、ハウジングには、スプリング室内のオイルを排出する排出ポートと、スプリング室においてスプール軸方向に沿って延びる溝部が形成されている。
【発明の効果】
【0009】
本発明の制御バルブによれば、スプリング室には、スラストワッシャーが収容されており、スプールの移動に伴いスラストワッシャーも移動する。オイルがスプリング室にリークしていると、スプリング室に溜まったオイルがスラストワッシャーの移動を妨げる。しかしながら、本発明における制御バルブによれば、スプリング室において、スプールが付勢されるスプール軸方向に延びる溝部が形成されているため、この溝部を通じてスプリング室に溜まったオイルを移動させることができる。そのため、スプリング室に設けるべき排出ポートは1つで足りるので、排出ポートを形成する製造工程数を減らすことができる。これにより、スプリング室内にリークしたオイルの排出性を良好に保ちつつ、制御バルブの製造コストを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、本実施形態におけるスプールバルブの非作動時の断面図である。
図2図2は、本実施形態におけるスプールバルブの作動時の断面図である。
図3図3は、本実施形態におけるスプールバルブの第1の斜視図である。
図4図4は、本実施形態におけるスプールバルブの第2の斜視図である。
図5図5は、比較例におけるスプールバルブの非作動時の断面図である。
図6図6は、比較例におけるスプールバルブの作動時の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1は、本実施形態におけるスプールバルブの非作動時の断面図である。図2は、本実施形態におけるスプールバルブの作動時の断面図である。以下、これらの図を参照しつつ、本実施形態におけるスプールバルブ1(制御バルブ)の構成及び動作について説明する。
【0012】
スプールバルブ1は、スプール収容孔23を有するハウジング20と、スプール収容孔23に摺動自在に収容される円柱状のスプール10を備える。また、スプールバルブ1は、リターンスプリング30と、スラストワッシャー40を備える。
【0013】
図1及び図2に示されるように、スプール10は、先端部11と、第1小径部12と、第1大径部13と、第2小径部14と、第2大径部15とを有する。先端部11及び第1小径部12の外径は、第1大径部13及び第2大径部15の外径よりも小さく形成される。先端部11及び第1小径部12は、スプール収容孔23の右側の開口端から突出する。
【0014】
先端部11には様々な機構を介して、例えば、フォークリフトにおけるインチングペダルが接続される。そして、インチングペダルが操作されていないときにおいて、図1に示される非作動時の位置にスプール10が移動する。また、インチングペダルが操作されたときにおいて、図2に示される作動時の位置にスプール10が移動する。なお、半クラッチのようなときにおいて、スプール10は、図1で示されるスプール10の位置と図2で示されるスプール10の位置との間に位置することもある。
【0015】
第1大径部13の外径と第2大径部15の外径は、スプール収容孔23の内径とほぼ同じ径を有する。第1大径部13の外周は、ランド部13aを構成する。第2大径部15の外周は、ランド部15aを構成する。そして、ランド部13a,15aは、スプール収容孔23(23a,23b,23c,23d,23e)の内周で摺接する。
【0016】
第1大径部13は、その左端側がテーパー状に形成される。また、第1大径部13は、その左端に、第1大径部13よりも外径が小さい段部13bを有する。第2大径部15も、その右端側がテーパー状の形状にされる。このような形状にすることによって、スプール収容孔23においてスプール10の軸方向の摺動移動を行いやすくしている。
【0017】
第2大径部15の外周にはリターンスプリング30が配設される。また、第2大径部の外周には、リターンスプリング30から軸方向の反力を受けるスラストワッシャー40が設けられる。スラストワッシャー40の内径は第2大径部15の外径とほぼ同径に形成されている。また、第2大径部15の左端側には、周方向に溝15bが設けられ、この溝15bにはスナップリング41がはめ込まれる。このようにすることにより、スラストワッシャー40は、スラストワッシャー40の左側に配設されたスナップリング41と、スラストワッシャー40の右側に配設されたリターンスプリング30とによって挟み込まれる。リターンスプリング30は、スプール10が左端に位置しているときであってもなおスラストワッシャー40を左側へ付勢する程度の自然長を有する。そのため、スラストワッシャー40は、第2大径部15に対してスナップリング41のすぐ右側に隣接する位置で常に実質的に固定されることになる。
【0018】
ハウジング20は、右端側に開口するスプール収容孔23と、スプール収容孔23の左側に形成されたスプリング室27を備える。スプール収容孔23とスプリング室27は連通する。スプリング室27は、スプール収容孔23よりも大きな内径を有し、スプール10の左側の一部と、スプール10に実質的に固定されたスラストワッシャー40と、スラストワッシャー40のすぐ左側に隣接するスナップリング41と、スプール10の外周に設けられたリターンスプリング30を収容する。
【0019】
スプリング室27は、隣接するスプール収容孔23よりも大きな内径を有していることから、その段差が生ずる箇所において段部27aが形成される。段部27aには、後述するリターンスプリング30の右端が当接する。
【0020】
また、ハウジング20は、第1ポート21aと、第2ポート21bと、第3ポート21cと、第4ポート21d(これら、第1ポート21aと第2ポート21bと第3ポート21cと第4ポート21dは、流動通路に相当する)を備える。これらのポート21a,21b,21c,21dは、スプール10の径方向に延び、スプール収容孔23に開口する。
【0021】
図1に示されるようにスプール10が左側に位置しているとき、第1ポート21aと第2ポート21bは、第2小径部14の外周とスプール収容孔23bとの間に形成される第1環状溝22aを介して連通する。また、図2に示されるようにスプール10が右側に位置しているとき、第3ポート21cと第4ポート21dは、第2小径部14の外周とスプール収容孔23cとの間に形成される第2環状溝22bを介して連通する。また、このとき、これら第3ポート21cと第4ポート21dには、第2環状溝22bを介して第2ポート21bも連通する。
【0022】
スプールバブル1において、ハウジング20には1つの排出ポート28が設けられる。排出ポート28は、スプール10の径方向に延びて、スプリング室27に開口する。排出ポート28は、スプリング室27の右端側に設けられる。そして、後述するように、スプール収容孔23と第2大径部15の微少隙間を通じてスプリング室27にリークしたオイルを排出することになる。
【0023】
ハウジング20は、さらに、ストッパーピン取付孔24を備える。ストッパーピン取付孔24は、スプール10の径方向に延びてスプール収容孔23に開口する。ストッパー取付孔24には、ストッパーピン51が螺合される。
【0024】
ストッパーピン51がストッパー取付孔24に取り付けられたときにおいて、ストッパーピン51のピン端部51aがハウジング20内部において径方向にスプール収容孔23から突出する。ピン端部51aには、第1大径部13の左端面又は第2大径部15の右端面が当接する。そして、ピン端部51aは、スプール10の軸方向の移動を規制する。
【0025】
このようにすることによって、図1に示されるように、スプール10が左方向に移動したときにおいて、第1大径部13の左端面がピン端部51aに当接し、スプール10の軸方向の移動を止める。そして、前述のように、第1ポート21aと第2ポート21bとを、第1環状溝22aを介して連通させる。
【0026】
また、図2に示されるように、スプール10が右側に移動したときにおいて、第2大径部15の左側面がピン端部51aに当接し、スプール10の軸方向の移動を止める。そして、前述のように第2ポート21bと第3ポート21cと第4ポート21dとを、第2環状溝22bを介して連通させる。
【0027】
また、図1に示されるように、ハウジング20の右端にはその内側にシール部材53が設けられる。シール部材53は、第1大径ピン部12の外周と摺接し、ハウジング20内からのオイルのリークを抑制する。また、ハウジング20の左端部には、締結部材の螺合によりプレート52が固定される。このプレート52により、スプリング室27の開口端が閉塞される。
【0028】
リターンスプリング30は、スプリング室27の段部27aとスラストワッシャー40との間に設けられる。そして、リターンスプリング30の左端はスラストワッシャー40の右側面に当接し、リターンスプリング30の右端は段部27aに当接する。
【0029】
リターンスプリング30は、ハウジング20の段部27aとスラストワッシャー40との間で圧縮方向に変形させられる。これにより生じたリターンスプリング30の付勢力は、スラストワッシャー40とスナップリング41を介してスプール10に伝達される。そして、リターンスプリング30は、スプール10に対して図1の左方向の付勢力を与える。これにより、スプールバルブ1の非作動時において、スプール10は、図1に示されるように、ハウジング20内の左側に位置することになる。
【0030】
このようにして構成されたスプールバルブ1は、スプール収容孔23aとランド部15aとにより、第1ポート21aとスプリング室27との間の連通が遮断されている。しかしながら、それでもなおスプール収容孔23と第2大径部15の微少隙間を通じてスプリング室27内にオイルがリークすることがある。
【0031】
特に、第1ポート21aから第2ポート21bへとオイルが流動するときにおいて、オイルがスプリング室27にリークする場合がある。これは、流動するオイルがある圧力を有しているためである。また、第2大径部15の右端側がテーパー形状を有しているためでもある。
【0032】
また、本実施形態におけるスプールバルブ1は、スプリング室27にスプール10の軸方向に沿って延びる溝部100が設けられる。以下、図3及び図4を用いて、溝部100の構成についてさらに説明する。
【0033】
図3は、本実施形態におけるスプールバルブの第1の斜視図である。図4は、本実施形態におけるスプールバルブの第2の斜視図である。図3は、図2においてプレート52を取り外したときにおいてスプリング室27の端部側斜め上方から視認した斜視図である。図4も、図2においてプレート52を取り外したときにおいてスプリング室27の端部側上方から視認した斜視図である。
【0034】
ここでは、理解を容易にするために図3及び図4の2つの図が用いられ、溝部100の形状が説明される。なお、溝部100の形状の視認性を良好にするために、図3及び図4では、スプール10とスプリング30とスラストワッシャー40とスナップリング41を除いてスプリング室27内部が示されている。
【0035】
前述のように、スプールバルブ1には、スプリング室27に溝部100が形成されている。このようにすることによって、仮に、スプリング室27でスラストワッシャー40よりも左側にオイルが溜まっているときにおいて、スプール10が左側に移動する場合であっても、溝部100を通じてオイルをスラストワッシャー40の右側に流出させることができる。そして、スプリング室27内のオイルを排出ポート28を介して外部へと排出することができるので、スプール10を適切に移動させることができる。
【0036】
本実施形態におけるスプールバルブ1では、さらに溝部100が排出ポート28と軸方向について離間して形成されている。また、溝部100はスプール10の軸方向に延設されており、スプリング室27においてハウジング20の左端部に向かう側ほど溝の深さが深くなるように形成されている。換言すると、溝部100の左端部100bの深さは、溝部100の右端部100aの深さよりも深い。
【0037】
また、本実施形態におけるスプールバルブ1では、さらに溝部100が排出ポート28に対してスプリング室27の円周方向について異なる位置に形成されている。換言すると、溝部100は、スプリング室27の周方向について、排出ポート28寄りではあるものの、スプリング室27の底部には形成されない。このように、排出ポート28はスプリング室27の底部に形成されるのに対し、溝部100はスプリング室27の底部から周方向にオフセットされた位置に形成される。
【0038】
また、本実施形態のスプールバルブ1において、排出ポート28は、スプリング室27においてハウジング20の内側寄りに設けられている。換言すると、排出ポート28は、スプリング室27の右端側のみに形成される。
【0039】
次に、本実施形態のスプールバルブ1を上記のような構成にした理由について比較例のスプールバルブ1'との比較において説明する。
【0040】
図5は、比較例におけるスプールバルブの非作動時の断面図である。図6は、比較例におけるスプールバルブの作動時の断面図である。図5及び図6には、比較例におけるスプールバルブ1’が示されている。これらの図において、前述の本実施形態におけるスプールバルブ1と共通の構成については、同一の参照符号を付す。そして、共通の構成については説明を省略する。
【0041】
比較例のスプールバルブ1'において、ハウジング20には、2つの排出ポート28,29が設けられる。排出ポート28,29は、スプール10の径方向に延びて、スプリング室27に開口する。排出ポート28は、スプリング室27の右端側に設けられる。また、排出ポート29は、スプリング室27の左端側に設けられる。
【0042】
前述のスラストワッシャー40の外形とスプリング室27の内径との差が小さいと、スプール10の移動に伴い移動するスラストワッシャー40によりスプリング室27内においてもオイルが移動する。このとき、仮に、排出ポート28,29を設けない場合には、リークしたオイルの行き場がなくなるためにスプール10の移動性が悪化する。そのため、比較例のスプールバルブ1'には、スプリング室27において2つの排出ポート28,29が形成されているのである。したがって、スプリング室27内のオイルはスラストワッシャー40の移動にともなって、少なくとも排出ポート28,29の一方から外部へと排出される。
【0043】
比較例におけるスプールバルブ1'及び本実施形態におけるスプールバルブ1のハウジング20は、アルミダイキャストによって製造される。その後、製造されたアルミ鋳造物が切削加工され、各ポート等が形成される。
【0044】
本実施形態におけるスプールバルブ1の排出ポートの数は、比較例におけるスプールバルブ1'の排出ポートの数に比して1つ少ない。そのため、比較例のスプールバルブ1'と本実施形態におけるスプールバルブ1とで、排出ポート形成の製造工程以外の製造工程数が同じであるとすれば、本実施形態におけるスプールバルブ1の製造工程数が比較例におけるスプールバルブ1'の製造工程数よりも少なくとも1工程以上少ないことになる。
【0045】
一方、本実施形態におけるスプールバルブ1のスプリング室27には溝部100が形成されている分、比較例におけるスプールバルブ1'に比して1工程以上製造工程が多いのではないかとの懸念がある。
【0046】
しかしながら、本実施形態におけるスプールバルブ1の溝部100は、アルミダイキャスト時にハウジング20と同時に形成される。具体的には、スプリング室27と溝部100を形成するための鋳型が一体として抜かれることで、スプリング室27と溝部100とが同時に形成されるのである。その後、溝部100に関しては、切削加工等の加工は何ら施されない。そのため、本実施形態のスプールバルブ1におけるスプリング室27と溝部100の形成に要する製造工程数と、比較例のスプールバルブ1'におけるスプリング室27の形成に要する製造工程数とは、同じということになる。
【0047】
前述のように、排出ポートの製造工程数に関しては、本実施形態におけるスプールバルブ1の方が比較例におけるスプールバルブ1'よりも1工程以上少なかった。よって、本実施形態におけるスプールバルブ1の製造工程数は比較例におけるスプールバルブ1'の製造工程数よりも1工程以上少なくなるのである。よって、上記のような構成にすることによって、製造コストを低減することができる。
【0048】
次に、本実施形態におけるスプールバルブ1のスプリング室27におけるオイルの排出性について説明する。
【0049】
上記のように、ハウジング20はアルミダイキャストによって製造されるが、溝部100を形成するためには鋳型の抜き勾配が必要となる。鋳型の抜き勾配を設けた結果、溝部100の左端部100bの方が右端部100aよりも溝の深さが深くされている。
【0050】
溝部100の左端部100bの深さが右端部100aの深さよりも深くされる場合において、仮に、溝部100が排出ポート28に対してスプリング室27の円周方向に重なる位置に形成されたとする。つまり、溝部100がスプリング室27の底部に形成されたとする。そうすると、溝部100の左端部の深さが右端部の深さよりも深くなるため、溝部の左端部にオイルが溜まることになる。
【0051】
この状態でスプール10を左右に移動させたとしても、左端部にオイルが溜まっている状態は依然として変化しない。よって、ここに溜まったオイルは排出されにくいことになる。
【0052】
これに対し、本実施形態におけるスプールバルブ1では、溝部100が排出ポート28に対してスプリング室27の円周方向について異なる位置に形成されている。つまり、溝部100が排出ポート28に対してスプリング室27の円周方向についてずれた位置に形成されている。
【0053】
このようにした場合、スプリング室27にリークしたオイルは、溝部100には溜まらず、スプリング室27の底部に溜まる。スプリング室27の底部に溜まったオイルは、スプール10が左方向に移動させられたとき(図1)、スラストワッシャー40によって左方向に押し出される。押し出されたオイルは、スプリング室27の端部27b(図3図4)において行き場を失い、矢印101に示されるような経路で溝部100に移動する。
【0054】
その後、溝部100のオイルは符号102に示される矢印の方向にこぼれ落ちる(図3図4)。こぼれ落ちたオイルは、スプール10が右方向に移動させられたとき、スラストワッシャー40によって右方向に押し出される(図2)。押し出されたオイルは、排出ポート28を介して排出される。
【0055】
このようにして、溝部100が排出ポート28に対してスプリング室27の円周方向についてずれた位置に形成されることによって、オイルの排出性を良好にすることができる。
【0056】
一般的に、排出性を考慮すると、排出ポート28と溝部100は直接接続していた方が望ましいとも考えられる。しかしながら、仮に、軸方向について排出ポート28に重なるように溝部100を形成しようとすれば、アルミダイキャストに鋳型の抜き勾配を設ける必要性があるために、溝部100の深さが全体的に深くならざるを得ない。溝部100の深さが深くなりすぎると、スプリング室27における側壁が薄くなる。そうすると、強度的に不利となる場合があり得るのである。
【0057】
本実施形態におけるスプールバルブ1では、前述のように、溝部100は排出ポート28に対してスプリング室27の円周方向について異なる位置に形成されている。そして、図3及び図4における符号101,102の矢印示した経路でオイルを移動させることができさえすればオイルの排出性は良好に保たれる。よって、溝部100を軸方向に伸ばして、排出ポート28に接続させる必要すらないため、溝部100の深さを深くしすぎることにより側壁が強度的に不利になることもないのである。
【0058】
ところで、仮に、比較例におけるスプールバルブ1’のように溝部100を設けない場合には、オイルの逃げ道を作るために、スプリング室27の内周径をスラストワッシャー40の外周径よりも十分に大きく設けるという手法が考えられる。しかしながら、この手法であると、ハウジング自体を全体的に径方向に大きくせざるを得ず、その分、ハウジングの径方向のサイズが大きくなり、材料コストが高くなるという問題がある。また、スプールバルブをコンパクトな形状にしたい場合にも不利となる。
【0059】
これに対し、本実施形態におけるスプールバルブ1によれば、スプリング室27において、スプール1が付勢されるスプール1の軸方向に延びる溝部100が形成されているため、この溝部100を通じてスプリング室27に溜まったオイルを移動させることができる。そのため、スプリング室27に設けるべき排出ポート28は1つで足り、排出ポートを形成する工程を減らすことができる。よって、スプリング室27内にリークしたオイルの排出性を良好に保ちつつ、スプールバルブ1の製造コストを低減することができる。
【0060】
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態は本発明の適用例の一部を示したに過ぎず、本発明の技術的範囲を上記実施形態の具体的構成に限定する趣旨ではない。
【符号の説明】
【0061】
1 スプールバルブ
10 スプール
11 先端部
12 第1小径部
13 第1大径部
13a ランド部
13b 段部
14 第2小径部
15 第2大径部
15a ランド部
15b 溝
20 ハウジング
21a 第1ポート
21b 第2ポート
21c 第3ポート
21d 第4ポート
22a 第1環状溝
22b 第2環状溝
23 スプール収容孔
24 ストッパーピン取り付け部
27 スプリング室
27a スプリング室の段部
27b スプリング室の端部
28 排出ポート
29 排出ポート
30 スプリング
40 スラストワッシャー
41 スナップリング
51 ストッパーピン
51a ピン端部
52 プレート
53 シール部材
100 溝部
100a 溝部の右端部
100b 溝部の左端部
図1
図2
図3
図4
図5
図6