(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第2リブは、少なくとも二つの前記分離空間において前記冷媒が一方から他方へ流通可能に、前記軸受の半径方向において一部切り欠かれた切欠き部が形成されている請求項2又は3に記載の圧縮機。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述のロータリ式圧縮機構において、マフラ内に吐出される冷媒は、シリンダ室内で圧縮されて高温化しているため、運転時、マフラ及び上部軸受等の構造体を加熱する。その結果、シリンダ室内へ吸入される比較的低温の冷媒が、上部軸受等によって加熱される。したがって、ロータリ式圧縮機構は、温度上昇した冷媒を吸入して圧縮することになるため、効率が悪化してしまう。
【0007】
また、特許文献1と異なり、リブが形成されない上部軸受では、剛性が弱いため、例えば、上部軸受の低周波数領域の固有値(1kHz前後)で共振が発生する。その結果、軸受及び駆動軸(シャフト)が弾性変形し、騒音が増大するという問題がある。
【0008】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、軸受の剛性を高め、かつ、シリンダ本体への熱伝達を低減することが可能な圧縮機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明の圧縮機は以下の手段を採用する。
すなわち、本発明に係る圧縮機は、ロータリ式の圧縮機構のシリンダ本体と、前記シリンダ本体の一面側に設けられ、駆動軸を支持する軸受と、前記軸受の一面側に設置される板部とを備え、前記軸受は、前記軸受の前記一面から立設され、前記軸受の半径方向に沿って形成された壁部を有し、前記壁部と前記板部に囲まれ、前記シリンダ本体から吐出された冷媒が流通する冷媒流通部と、前記壁部と前記板部に囲まれつつ、前記壁部と前記板部によって前記冷媒流通部から隔たれ、前記冷媒が流通しない断熱部とが形成されて
おり、前記軸受には、前記軸受の外周壁と前記軸受の中心壁と前記壁部とによって凹部が形成されており、前記断熱部は、前記凹部と前記板部とによって囲まれた空間であり、前記軸受は、前記断熱部内において、前記軸受の前記一面から立設され、前記軸受の半径方向に沿って形成された第1リブを更に有する。
【0010】
この構成によれば、冷媒が流通する冷媒流通部とは別に、冷媒が流通しない断熱部が形成されており、断熱部は、軸受の半径方向に沿って形成された壁部と、軸受の一面側に設置される板部によって、冷媒流通部から隔たれている。その結果、断熱部は、冷媒が有する熱が伝達しにくい断熱空間となり、シリンダ本体の温度上昇を低減して、シリンダ本体の吸入側を流れる冷媒の温度上昇を軽減できる。冷媒流通部は、シリンダ本体から吐出される冷媒を受けることになり、消音効果を発揮する。
また、壁部が軸受の一面から立設され、軸受の半径方向に沿って形成されることから、軸受の剛性を高める。
なお、冷媒流通部と断熱部を仕切るため、壁部は、例えば、軸受の中心から異なる2方向に延設される。二つの壁部のなす角や、壁部と第1リブのなす角は、180°未満であることが望ましい。これにより、軸受の剛性を更に高めることができる。
また、軸受の一面には、軸受の半径方向に沿って壁部だけでなく、第1リブも形成される。したがって、軸受の剛性を高めることができる。
【0013】
上記発明において、前記シリンダ本体が少なくとも二つ設けられ、前記軸受は、前記冷媒流通部内において、前記軸受の前記一面から立設され、前記軸受の半径方向に沿って形成された第2リブを更に有し、前記冷媒流通部は、前記第2リブによって少なくとも二つの分離空間に分離され、一の前記分離空間は、一の前記シリンダ本体から冷媒が吐出され、他の前記分離空間は、他の前記シリンダ本体から冷媒が吐出される。
【0014】
この構成によれば、冷媒が流通する冷媒流通部は、第2リブによって、二つの分離空間に分けられる。そして、一の分離空間には、一のシリンダ本体から吐出される冷媒が流れ、他の分離空間には、他のシリンダ本体から吐出される冷媒が流れる。したがって、一のシリンダ本体と他のシリンダ本体から吐出される冷媒は、いずれも冷媒流通部の分離空間を流通して消音される。
【0015】
上記発明において、少なくとも二つの前記分離空間において、冷媒が一方から他方へ流通可能であり、前記板部には、冷媒が前記分離空間から吐出される吐出孔が1箇所のみ形成される。
【0016】
この構成によれば、一のシリンダ本体から供給された冷媒と、他のシリンダ本体から供給された冷媒は、冷媒流通部の分離空間において合流され、合流した冷媒は、板部に形成された一の吐出孔のみを介して分離空間から吐出される。その結果、一のシリンダ本体と他のシリンダ本体が設けられるとき、圧縮機構の外部で冷媒を合流する部材を別途設ける必要がない。
【0017】
上記発明において、前記第2リブは、少なくとも二つの前記分離空間において前記冷媒が一方から他方へ流通可能に、前記軸受の半径方向において一部切り欠かれた切欠き部が形成されている。
【0018】
この構成によれば、第2リブの切欠き部を介して、冷媒が流通することから、切欠き部以外で第2リブの高さを低くしなくても、少なくとも二つの分離空間の間で冷媒が流通する。したがって、分離空間において冷媒を一方から他方へ流通させるために、第2リブの高さを軸受の半径方向に沿って全て低くする場合に比べ、剛性を高めることができる。
【0019】
上記発明において、前記板部には、少なくとも二つの前記分離空間において前記冷媒が一方から他方へ流通可能に、前記第2リブに相当する位置に溝部が形成されている。
【0020】
この構成によれば、板部に形成された溝部を介して、冷媒が流通することから、第2リブの高さを低くしなくても、少なくとも二つの分離空間の間で冷媒が流通する。したがって、分離空間において冷媒を一方から他方へ流通させるために、第2リブの高さを軸受の半径方向に沿って全て低くする場合や、第2リブの一部に切欠き部を形成する場合に比べ、剛性を高めることができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、壁部によって軸受の剛性を高め、かつ、シリンダ本体への熱伝達を低減することができるため、シリンダ本体の温度上昇を低減して、シリンダ本体の吸入側を流れる冷媒の温度上昇を軽減できる。
【発明を実施するための形態】
【0023】
[第1実施形態]
以下に、本発明の第1実施形態に係る圧縮機1について、図面を参照して説明する。本実施形態に係る多気筒ロータリ式の圧縮機1は、
図1に示すように、上部及び下部が上部カバー3及び下部カバー4により密閉された円筒状の密閉容器2を備え、その内部の上方部位にモータ5が設置され、該モータ5により駆動されるロータリ式の圧縮機構6がその下方部位に設置される。
【0024】
密閉容器2の下部外周には、据え付け脚7が設けられている。また、密閉容器2の上部には、上部カバー3を貫通する吐出配管8が設けられ、吐出配管8は、多気筒ロータリ式の圧縮機1で圧縮された高圧の冷媒ガスを冷凍サイクル側へと吐き出す。更に、密閉容器2の外周部には、アキュームレータ9が組み付けられており、アキュームレータ9は、冷凍サイクル側からリターンする低圧の冷媒ガス中に含まれる油、液冷媒等の液分を分離し、ガス分のみを吸入配管10,11を介して圧縮機構6へと吸い込ませる。
【0025】
モータ5は、ステータ12とロータ13とを備える。ステータ12は、密閉容器2の内周面に圧入等によって固定設置されている。ロータ13は、駆動軸14が結合されて一体化されていることによって、ロータ13の回転駆動力が駆動軸14を介して圧縮機構6に伝達可能とされている。また、駆動軸14の下方部位には、後述するロータリ式の圧縮機構6の第1ローラ24及び第2ローラ25に対応して第1偏心ピン15及び第2偏心ピン16が設けられている。
【0026】
ロータリ式の圧縮機構6は、本実施形態では2気筒タイプとされ、その第1及び第2圧縮機構6A,6Bは、第1シリンダ室17及び第2シリンダ室18が形成される。圧縮機構6は、更に、第1シリンダ本体19及び第2シリンダ本体20と、仕切板(セパレータプレート)21と、上部軸受22と、下部軸受23などを備えている。
【0027】
第1シリンダ本体19及び第2シリンダ本体20は、駆動軸14の第1偏心ピン15及び第2偏心ピン16に対応して、密閉容器2内に固定設置されている。仕切板21は、第1シリンダ本体19と第2シリンダ本体20との間に介装され、第1シリンダ室17及び第2シリンダ室18を区画する。上部軸受22は、第1シリンダ本体19の上面に設けられ、第1シリンダ室17を区画するとともに、駆動軸14を支持する。下部軸受23は、第2シリンダ本体20の下面に設けられ、第2シリンダ室18を区画するとともに、駆動軸14を支持する。
【0028】
第1及び第2圧縮機構6A,6Bは、それぞれ、第1ローラ24及び第2ローラ25と、ブレード28及び29を備える。
【0029】
第1ローラ24及び第2ローラ25は、それぞれ、第1偏心ピン15及び第2偏心ピン16に回動自在に嵌合され、第1シリンダ室17及び第2シリンダ室18内を回動する。第1偏心ピン15及び第2偏心ピン16は、駆動軸14と結合され、駆動軸14とともに一体的に回転する。第2偏心ピン16に嵌合した第2ローラ25の重心は、駆動軸14の軸線に対し第1偏心ピン15に嵌合した第1ローラ24の重心と反対側に位置する。
【0030】
ブレード28及び29は、
図2に示すように、第1シリンダ本体19及び第2シリンダ本体20に設けられているブレード溝26,27に摺動自在に嵌合され、第1シリンダ室17及び第2シリンダ室18内を吸入室側と吐出室側とに仕切る。
【0031】
第1及び第2圧縮機構6A,6Bの第1シリンダ室17及び第2シリンダ室18内には、吸入配管10,11から吸入ポート30,31を介して低圧の冷媒ガスが吸入される。
【0032】
第1シリンダ室17内に吸入された冷媒ガスは、第1ローラ24の回動により圧縮された後、吐出孔及び吐出弁(図示省略)を介して、後述する上部軸受22の冷媒流通部38に吐出され、その後、マフラ32内に吐出される。マフラ32は、例えば、ほぼ椀形形状であり、吐出孔及び吐出弁(図示省略)を覆うように、上部軸受22に取り付けられる。第2シリンダ室18内に吸入された冷媒ガスは、第2ローラ25の回動により圧縮された後、吐出孔及び吐出弁を介して、マフラ32内に吐出される。マフラ32内に吐出された冷媒ガスは、密閉容器2内に吐き出された後、吐出配管8を経て冷凍サイクルへと送り出される。
【0033】
圧縮機構6を構成する第1シリンダ本体19及び第2シリンダ本体20と、仕切板21と、上部軸受22及び下部軸受23は、ボルトを介して一体に締め付け固定されている。また、密閉容器2内の底部には、PAG油、POE油等の冷凍機油34が充填されており、駆動軸14中に設けられている給油孔等を介して、圧縮機構6内の潤滑部位に給油可能とされている。冷凍機油34には、各々の油に適応する極圧剤が適量添加されている。なお、圧縮機構6への給油機構は、通常用いられる構成であり、ここでは詳細な説明を省略する。
【0034】
第1バランスウエイト35は、ロータ13の上面、すなわち、駆動軸14の軸線方向の一側であって、圧縮機構6が位置する側と反対側の面に設けられる。また、第1バランスウエイト35の重心は、駆動軸14の軸線に対して、第1ローラ24の重心とは反対側に位置する。第2バランスウエイト36は、ロータ13の下面、すなわち、駆動軸14の軸線方向の他側であって、圧縮機構6が位置する側の面に設けられる。また、第2バランスウエイト36の重心は、駆動軸14の軸線に対して、第2ローラ25の重心とは反対側に位置する。
【0035】
ロータ13の上面や下面に第1バランスウエイト35及び第2バランスウエイト36が設けられることによって、第1バランスウエイト35及び第2バランスウエイト36にかかる遠心力は、第1ローラ24及び第2ローラ25の回転によって生じる第1ローラ24及び第2ローラ25にかかる遠心力とバランスをとることができる。
【0036】
ロータ13は、複数の鋼板が互いに絶縁して駆動軸14の軸方向に積層されている。鋼板は、磁性金属板の一例であり、他の磁性金属板でもよい。鋼板が積層されることにより、渦電流の発生が抑制される。各鋼板は、ロータ13の外面が同一面上となるように配置される。したがって、ステータ12とロータ13との間に形成される隙間(エアギャップとも呼ばれる。)の間隔は、周方向で一定である。エアギャップは、モータ5の大きさ等にもよるが、例えば100数十μmから数百μmである。
【0037】
次に、本実施形態に係る上部軸受22について
図3から
図6を参照して詳細に説明する。
上部軸受22は、円盤形状であり、中心には、駆動軸14が貫通する円筒部37が設けられている。上部軸受22は、上部軸受22の下面が、第1シリンダ本体19の上面に接触して設けられ、上部軸受22の外周面が、密閉容器2に固定される。
上部軸受22のモータ5側の上面には、冷媒流通部38と、断熱部39が形成される。
【0038】
冷媒流通部38は、上部軸受22の上面側において、下面方向に窪んだ形状で形成された凹部40と、上部軸受22の上面に設置されたマフラ板42で囲まれた空間である。
また、断熱部39も、上部軸受22の上面側において、下面方向に窪んだ形状で形成され、かつ、冷媒流通部38を構成する凹部40と異なる部分に形成された凹部41と、マフラ板42で囲まれた空間である。
【0039】
マフラ板42は、円板形状を有し、中心には、上部軸受22の円筒部37が貫通する貫通孔43が形成されている。
【0040】
上部軸受22の上面側に形成される凹部40,41は、外周壁44と中心壁45と隔壁リブ46によって囲まれる。外周壁44は、上部軸受22の外周面にほぼ平行で、円弧状である。中心壁45は、円筒部37の外周面にほぼ平行で、円弧状である。
【0041】
隔壁リブ46は、上部軸受22の半径方向に沿って、上部軸受22の中心側から異なる2方向に形成される。隔壁リブ46は、外周壁44と中心壁45の間に設けられる。隔壁リブ46は、上部軸受22の平板面に対して突状に立設される。これにより、上部軸受22は、一面側に半径方向に沿ったリブが形成された状態となり、上部軸受22にリブがない場合に比べ、上部軸受22の剛性が向上する。
【0042】
冷媒流通部38において、上部軸受22には、吐出孔47が形成される。吐出孔47には、吐出弁(図示せず。)が設置される。吐出孔47を介して、第1シリンダ室17から吐出された冷媒が冷媒流通部38に供給される。冷媒は、一旦、冷媒流通部38の内部で貯留された後、マフラ板42に形成された吐出孔48を介して、冷媒流通部38から密閉容器2内のモータ5側へ吐出される。
【0043】
断熱部39は、隔壁リブ46によって冷媒流通部38から隔たれており、断熱部39内部には、冷媒流通部38のように、第1シリンダ室17又は第2シリンダ室18から吐出された冷媒が供給されず、また、冷媒流通部38から冷媒が流入することもない。
【0044】
断熱部39内には、リブ(第1リブ)49が設けられ、リブ49は、上部軸受22の半径方向に沿って形成される。よって、上部軸受22の上面には、半径方向に沿って突起したリブ状部分が、2本の隔壁リブ46と合わせて、周方向に少なくとも3本形成される。これにより、上部軸受22の上面は、隔壁リブ46だけでなく、断熱部39のリブ49によっても補強され、上部軸受22の剛性が向上する。その結果、リブ状部分が2本の場合に比べ、低周波数領域で曲げモードが出現しにくくなり、共振が生じにくい。
【0045】
リブ49の高さは、凹部41の底部からマフラ板42の下面に接触するまでの高さでもよいし、マフラ板42の下面に接触しない高さでもよい。なお、リブ49の高さが高いほうが、上部軸受22の剛性を高めることができる。
【0046】
隣り合うリブ49と隔壁リブ46のなす角、又は、隣り合う隔壁リブ46同士のなす角は、180°未満であることが望ましい。この場合、なす角が180°である場合に比べ、低周波数領域で曲げモードが出現しにくくなり、共振が生じにくい。
【0047】
上部軸受22には、冷媒流通部38と断熱部39以外の場所に、貫通孔50が形成される。貫通孔50には、第2シリンダ室18からの冷媒が流れる。貫通孔50を通過した冷媒は、マフラ32内へ吐出される。
【0048】
上部軸受22には、複数のボルト穴51が形成される。ボルト穴51には、マフラ板42と、第1シリンダ本体19及び第2シリンダ本体20と、仕切板21と、上部軸受22及び下部軸受23を通過するボルトが貫通し、ボルトによって、これらの各構成要素が一体に締め付けられる。
【0049】
以上、本実施形態によれば、
図7に示すように、上部軸受22において、冷媒が流通する冷媒流通部38とは別に、冷媒が流通しない断熱部39が形成されており、断熱部39は、上部軸受22の半径方向に沿って形成された隔壁リブ46と、上部軸受22の上面側に設置されるマフラ板42などによって、冷媒流通部38から隔たれている。また、断熱部39内部には、第1シリンダ室17から吐出される冷媒よりも低温の空気又は冷媒油が存在することから、断熱部39は、冷媒が有する熱が伝達しにくい断熱空間となる。
図7は、本実施形態に係る圧縮機の上部軸受とマフラ板を示す概略縦断面図である。
【0050】
したがって、断熱部39は、第1シリンダ室17から吐出される冷媒やモータ5側の冷媒などによる第1及び第2圧縮機構6A,6Bの温度上昇を低減して、第1シリンダ室17及び第2シリンダ室18に吸入される冷媒の温度上昇を軽減できる。また、冷媒流通部38は、第1シリンダ室17から吐出される冷媒を一時的に貯留し、冷媒が吐出されるときの音を減衰させ、消音効果を発揮する。
【0051】
[第2実施形態]
次に、
図8から
図10を参照して、本発明の第2実施形態に係る圧縮機について説明する。なお、第1実施形態と重複する構成要素については詳細な説明を省略する。
【0052】
上述した第1実施形態では、冷媒流通部38内にリブが形成されない場合について説明したが、本発明はこの例に限定されず、本実施形態では、冷媒流通部38内にリブ(第2リブ)52が形成される。
【0053】
具体的には、冷媒流通部38内のリブ52は、上部軸受22の半径方向に沿って形成される。これにより、上部軸受22の上面には、上部軸受22の半径方向に沿って突起したリブ状部分が、隔壁リブ46、断熱部39のリブ49だけでなく、冷媒流通部38のリブ52によっても形成される。これにより、上部軸受22の上面には、半径方向に沿って突起したリブ状部分が、周方向に少なくとも4本形成される。これにより、上部軸受22の剛性が向上する。その結果、リブ状部分が2本又は3本の場合に比べ、低周波数で曲げモードが出現しにくくなり、共振が生じにくい。
【0054】
冷媒流通部38に形成されたリブ52は、マフラ板42に接触しない高さを有する。これにより、冷媒流通部38内には、リブ52が形成されているものの、冷媒流通部38の内部で冷媒が流通可能である。
【0055】
冷媒流通部38は、リブ52を間に挟んで、第1分離空間38Aと第2分離空間38Bに分けられる。
上部軸受22には、冷媒流通部38の第1分離空間38Aにおいて、吐出孔53が形成され、第2分離空間38Bにおいて、吐出孔54が形成される。第1分離空間38Aに形成される吐出孔53には、吐出弁(図示せず。)が設置される。吐出孔53を介して、第1シリンダ室17から吐出された冷媒が第1分離空間38Aに供給され、吐出孔54を介して、第2シリンダ室18から吐出された冷媒が第2分離空間38Bに供給される。
マフラ板42には、一つの吐出孔55が、第1分離空間38A側に形成される。
【0056】
冷媒は、一旦、冷媒流通部38の第1分離空間38Aの内部と第2分離空間38Bの内部に貯留される。第2分離空間38Bに貯留された冷媒は、第1分離空間38Aへ流れ、第1分離空間38Aの内部に貯留された冷媒と合流する。そして、マフラ板42において第1分離空間38A側に形成された吐出孔55を介して、第1分離空間38Aから密閉容器2内のモータ5側へ吐出される。
【0057】
なお、マフラ板42に一つのみ形成される吐出孔55は、第1分離空間38A側ではなく、第2分離空間38B側に形成されてもよい。この場合、冷媒は、第1分離空間38Aから第2分離空間38Bへ流れる。
【0058】
本実施形態によれば、冷媒流通部38において、第1シリンダ室17から吐出された冷媒と第2シリンダ室18から吐出された冷媒が合流することから、上部軸受22の外部において冷媒を合流させる部材を別途設ける必要がない。
【0059】
また、第2シリンダ室18からの冷媒が第2分離空間38Bに導入されるため、上部軸受22の貫通孔50をそのまま通過して外部に吐出される第1実施形態と異なり、マフラ段数が増加する。したがって、本実施形態に係る圧縮機では、消音効果が向上する。
【0060】
さらに、本実施形態においても、
図10に示すように、上部軸受22において、冷媒が流通する冷媒流通部38とは別に、冷媒が流通しない断熱部39が形成されており、断熱部39は、上部軸受22の半径方向に沿って形成された隔壁リブ46と、上部軸受22の上面側に設置されるマフラ板42などによって、冷媒流通部38から隔たれている。また、断熱部39内部には、第1シリンダ室17又は第2シリンダ室18から吐出される冷媒よりも低温の空気又は冷媒油が存在することから、断熱部39は、冷媒が有する熱が伝達しにくい断熱空間となる。
【0061】
したがって、断熱部39は、第1シリンダ室17及び第2シリンダ室18から吐出される冷媒やモータ5側の冷媒などによる第1及び第2圧縮機構6A,6Bの温度上昇を低減して、第1シリンダ室17及び第2シリンダ室18に吸入される冷媒の温度上昇を軽減できる。
【0062】
なお、上述した説明では、第2シリンダ室18から吐出された冷媒が第2分離空間38Bに供給されるとしたが、本発明はこの例に限定されない。例えば、第2シリンダ室18から吐出された冷媒が冷媒流通部38に供給されず、上部軸受22には、
図11に示すように第2分離空間38Bにおいてのみ吐出孔56が形成され、吐出孔56を介して、第1シリンダ室17から吐出された冷媒が第2分離空間38Bに供給されるとしてもよい。
マフラ板42には、一つの吐出孔57が、第1分離空間38A側に形成される。
【0063】
この場合、冷媒は、一旦、冷媒流通部38の第2分離空間38Bの内部に貯留され、第1分離空間38Aへ流れる。そして、マフラ板42において第1分離空間38A側に形成された吐出孔57を介して、第1分離空間38Aから密閉容器2内のモータ5側へ吐出される。
【0064】
第2シリンダ室18からの冷媒は、第1実施形態と同様に、冷媒流通部38に貯留されることなく、上部軸受22の貫通孔(図示せず。)をそのまま通過して密閉容器2内のモータ5側へ吐出される。
【0065】
上述した実施形態では、リブ52は、上部軸受22の半径方向に沿って、マフラ板42に接しない高さで設けられる場合について説明したが、本発明はこの例に限定されない。例えば、
図12に示すように、リブ52には、半径方向の一部において切り欠かれた切欠き部58が形成され、リブ52のその他の部分は、マフラ板42に接する高さで設けられてもよい。この場合、リブ52に形成された切欠き部58を介して、冷媒が第1分離空間38Aと第2分離空間38Bとの間で流通する。
【0066】
この変形例によれば、リブ52の高さを上部軸受22の半径方向に沿って全て低くする場合に比べ、上部軸受22の剛性を高めることができる。また、マフラ板42とリブ52とが接触することから、板状のマフラ板42の変形も生じにくく、流路面積を長期にわたって一定に確保でき、信頼性も向上する。さらに、第1分離空間38Aと第2分離空間38Bの間で冷媒が流通する面積も小さくしやすく、消音効果を高めるもできる。
【0067】
また、上述した実施形態では、リブ52の高さを低くするか、又は、リブ52の一部に切欠き部58を形成して冷媒を流通させる場合について説明したが、本発明はこの例に限定されない。例えば、
図13に示すように、マフラ板42の冷媒流通部38側の面において、リブ52の位置に相当する位置に溝部59を形成してもよい。溝部59とリブ52は、互いに離隔して設けられ、溝部59とリブ52の間で冷媒が流通する。
【0068】
この変形例によれば、マフラ板42に形成された溝部59を介して、第1分離空間38Aと第2分離空間38Bの間を冷媒が流通することから、リブ52の高さを低くしなくてもよい。したがって、リブ52の高さを上部軸受22の半径方向に沿って全て低くする場合や、リブ52の一部に切欠き部58を形成する場合に比べ、上部軸受22の剛性を高めることができる。
【0069】
また、マフラ板42に形成される溝部59は、薄板からなるマフラ板42に対し、溝部59に相当する部分を曲げ加工することによって形成されてもよい。この場合、溝部59を有さないマフラ板42に比べ、マフラ板42の剛性を高めることができる。また、マフラ板42は、上部軸受22と、ボルトによって、一体に締め付けられるため、マフラ板42と上部軸受22の組み合わせの剛性も高めることができる。
【0070】
なお、マフラ板42に形成される溝部は、曲げ加工による形成に限られず、平板状のマフラ板42に対し、溝部に相当する部分を凹状に掘り下げることによって、形成されてもよい。
【0071】
さらに、上述した実施形態では、冷媒流通部38に第1分離空間38Aと第2分離空間38Bが設けられるとき、冷媒が第1分離空間38Aと第2分離空間38Bの間を流通する場合について説明したが、本発明はこの例に限定されない。リブ52は、上部軸受22の半径方向の全てにわたってマフラ板42と接触するように設けられ、第1分離空間38Aと第2分離空間38Bは、リブ52によって隔てられてもよい。
【0072】
この場合、
図9に示すように、上部軸受22には、冷媒流通部38の第1分離空間38Aと、第2分離空間38Bのそれぞれにおいて、吐出孔53,54が形成される。第1分離空間38Aに形成される吐出孔53には、吐出弁が設置される。
また、
図14に示すように、マフラ板42には、吐出孔60,61が、第1分離空間38Aと第2分離空間38Bにそれぞれ形成される。
【0073】
吐出孔53を介して、第1シリンダ室17から吐出された冷媒は、第1分離空間38Aに供給され、一旦、冷媒流通部38の第1分離空間38Aの内部に貯留され、マフラ板42において第1分離空間38A側に形成された吐出孔60を介して、第1分離空間38Aから密閉容器2内のモータ5側へ吐出される。また、吐出孔54を介して、第2シリンダ室18から吐出された冷媒は、第2分離空間38Bに供給され、一旦、冷媒流通部38の第2分離空間38Bの内部に貯留され、マフラ板42において第2分離空間38B側に形成された吐出孔61を介して、第2分離空間38Bから密閉容器2内のモータ5側へ吐出される。
【0074】
このとき、冷媒は、第1分離空間38Aと第2分離空間38Bの間を流通することはない。この場合でも、第1分離空間38Aと第2分離空間38Bのそれぞれにおいて、冷媒が貯留されることによって、消音効果が発揮される。
【0075】
なお、上述した実施形態では、マフラ32が設置される場合について説明したが、本発明はこの例に限定されず、マフラ32が設置されない場合にも適用できる。また、上述した実施形態では、圧縮機構が複数設けられた多気筒ロータリ式の圧縮機の場合について説明したが、圧縮機構が1台のみの場合にも適用できる。