【文献】
佐々木茂聡,1Mトラックマスター(仕上がり検査用)の開発と導入,日本鉄道施設協会誌,2009年 3月 1日,No.3,pp.214-216
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
鉄道軌道に敷設された2本の平行レールのうち一方のレール上を移動可能な少なくとも2個の転動輪および他方のレールに沿って移動可能な1個の転動輪を備えたフレームと、
前記2個の転動輪に対応して前記一方のレールの上面から所定距離低い部位に接触するように高さが設定された少なくとも2個の第1測定用ローラと、
前記1個の転動輪に対応して前記他方のレールの上面から所定距離低い部位に接触するように高さが設定された第2測定用ローラと、を備えた軌道計測装置であって、
前記第2測定用ローラとして、それぞれ計測対象のレールの種類に応じて異なる高さ位置にローラ部を有し、前記フレームの所定部位に着脱可能に構成された複数の交換用ローラを備え、
前記2個の第1測定用ローラおよび前記複数の交換用ローラのいずれかひとつは、車輪との接触によりレールに摩耗が生じる範囲において規定された所定部位に応じて高さが設定され、他の交換ローラはレール頭部の側面下部に接触可能な高さに設定されていることを特徴とする軌道計測装置。
前記他の交換ローラのうちのいずれかひとつは、レール頭部の側面下部に接触可能であってレール側面の継目板に接触しない高さに設定されていることを特徴とする請求項1に記載の軌道計測装置。
前記複数の交換用ローラは、ベアリングによって支承されたローラ部と、該ローラ部と反対側に位置し前記フレームの所定部位に設けられたネジ穴に螺合可能な雄ネジ部と、該雄ネジ部と前記ローラ部との間に設けられた長さ調整部とを有し、
前記長さ調整部の外周面に、所定の工具と係合可能な係合部が形成されていることを特徴とする請求項1または2に記載の軌道計測装置。
前記フレームは、一方向に長い第1フレームと、該第1フレームと直交する延設された第2フレームと、該第2フレームの先端部に伸縮可能に設けられたロッドと、該ロッドの先端部に設けられた受け台と、前記ロッドを伸長方向に付勢する付勢手段とを備え、
前記第1フレームに前記2個の転動輪および2個の第1測定用ローラが装着され、前記受け台に前記1個の転動輪および第2測定用ローラが装着されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の軌道計測装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の3輪式の軌道計測装置には、転動輪に対応してレール側部に当接する測定用ローラを設け、測定用ローラの側頭部をレールの所定位置に接触して転動させるように設定されているものがある。この所定位置として、例えばレールの頭頂面から16mmというような、列車の車輪のフランジが接触することにより摩耗が生じる位置があり、摩耗発生個所に測定用ローラを接触させることで、レールの摩耗を含んでレール間隔やレールのゆがみを測定するように構成されていた。そのため、バラスト軌道において、保線作業実施後の仕上がり状態を確認したり摩耗によるレールの交換時期を把握したりする上では好適であった。
【0006】
しかしながら、省力化軌道にあっては、省力化軌道工事施工後はレールの変位が抑えられ長期間にわたって整備が不要となるため、上記のようにレールの摩耗を含んで計測した値を用いて、工事施工後の軌道の仕上がり状態を判断すると、新品のレールにとって最適な位置からずれた状態で仕上がっている個所を問題なしとして許容してしまうこととなる。
その結果、省力化軌道工事を実施した場合、施工後にレールに所定値以上の摩耗が発生し、新しいレールと交換する必要が生じ交換をした際に、レールが正規位置からずれてしまい、敷設したレールの調整余裕が極端に少なくなってしまうことがあるという課題があることが明らかとなった。なお、上記のような問題が発生するのは、特にレールに摩耗が発生し易い軌道のカーブの箇所である。
本発明は、上記のような課題に着目してなされたもので、バラスト軌道における工事後の軌道計測の際に摩耗を含んで軌道の仕上がり状態を確認することができるとともに、省力化軌道工事後の軌道計測の際に新品のレールにとって最適な位置で仕上がっているか否か確認することが可能な軌道計測装置および軌道計測方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため本発明は、
鉄道軌道に敷設された2本の平行レールのうち一方のレール上を移動可能な少なくとも2個の転動輪および他方のレールに沿って移動可能な1個の転動輪を備えたフレームと、
前記2個の転動輪に対応して前記一方のレールの上面から所定距離低い部位に接触するように高さが設定された少なくとも2個の第1測定用ローラと、
前記1個の転動輪に対応して前記他方のレールの上面から所定距離低い部位に接触するように高さが設定された第2測定用ローラと、を備えた軌道計測装置において、
前記第2測定用ローラとして、それぞれ計測対象のレールの種類に応じて異なる高さ位置にローラ部を有し、前記フレームの所定部位に着脱可能に構成された複数の交換用ローラを備え、
前記2個の第1測定用ローラおよび前記複数の交換用ローラのいずれかひとつは、車輪との接触によりレールに摩耗が生じる範囲において規定された所定部位に応じて高さが設定され、他の交換ローラはレール頭部の側面下部に接触可能な高さに設定されるようにした。
【0008】
上記のような構成を有する軌道計測装置によれば、互いに長さの異なる複数の交換用ローラの中から計測対象のレールの種類および計測の目的に応じていずれか1つを選択して使用することで、バラスト軌道における工事後の軌道計測の際には摩耗を含んで軌道の仕上がり状態を確認することができるとともに、省力化軌道工事後の軌道計測の際には新品のレールにとって最適な位置で仕上がっているか否か確認することができる。
【0009】
また、望ましくは、前記他の交換ローラのうちのいずれかひとつは、レール頭部の側面下部に接触可能であってレール側面の継目板に接触しない高さに設定する。
かかる構成によれば、計測対象のレールが定尺レールである場合にも、継目板に邪魔されずに、精度の高い軌道計測が行うことができるようになる。
【0010】
さらに、望ましくは、前記複数の交換用ローラは、ベアリングによって支承されたローラ部と、該ローラ部と反対側に位置し前記フレームの所定部位に設けられたネジ穴に螺合可能な雄ネジ部と、該雄ネジ部と前記ローラ部との間に設けられた長さ調整部とを有し、
前記長さ調整部の外周面に、所定の工具と係合可能な係合部が形成されているように構成する。
これにより、交換用ローラを容易に着脱して簡単に交換することができるとともに、複数種類の交換用ローラがシンプルな構成であるため、製造コストを低減することができる。
【0011】
また、望ましくは、前記フレームは、一方向に長い第1フレームと、該第1フレームと直交する延設された第2フレームと、該第2フレームの先端部に伸縮可能に設けられたロッドと、該ロッドの先端部に設けられた受け台と、前記ロッドを伸長方向に付勢する付勢手段とを備え、
前記第1フレームに前記2個の転動輪および2個の第1測定用ローラが装着され、前記受け台に前記1個の転動輪および第2測定用ローラが装着されているようにする。
かかる構成によれば、ロッドの伸縮量を検出するだけでレール間隔の測定を行うことができる。
【0012】
本出願の他の発明は、
鉄道軌道に敷設された2本の平行レールのうち一方のレールに接触される少なくとも
2個の転動輪及び2個の第1測定用ローラと他方のレールに接触される
1個の転動輪及び第2測定用ローラとを有する
フレームと、前記第2測定用ローラとして、それぞれ計測対象のレールの種類に応じて異なる高さ位置にローラ部を有し前記フレームの所定部位に着脱可能に構成された複数の交換用ローラ
と、を備え、前記第1測定用ローラおよび前記複数の交換用ローラのいずれかひとつは、車輪との接触によりレールに摩耗が生じる範囲において規定された所定部位に応じて高さが設定され、他の交換ローラはレール頭部の側面下部に接触可能な高さに設定されている軌道計測装置を用いた軌道計測方法において、
保線工事施工後の軌道計測においては、車輪との接触によりレールに摩耗が生じる範囲において規定された所定部位に応じて高さが設定された交換ローラを前記第2測定用ローラとして取り付けて軌間の計測を行い、
省力化軌道工事施工後の軌道計測においては、計測対象のレールの種類に応じて高さが設定された交換ローラを前記第2測定用ローラとして取り付けるとともに、少なくとも軌道のカーブしている箇所においては、前記2個の転動輪および2個の第1測定用ローラがカーブ内側レールに接触し、前記1個の転動輪および第2測定用ローラがカーブ外側レールに接触するように軌道計測装置をレール上に載置して軌間の計測を行うようにしたものである。
【0013】
上記のような軌道計測方法によれば、バラスト軌道における工事後の軌道計測の際には摩耗を含んで軌道の仕上がり状態を確認することができるとともに、軌道がカーブしている箇所のレールに対しても、省力化軌道工事後の軌道計測の際に新品のレールにとって最適な位置で仕上がっているか否か確認することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、バラスト軌道における工事後の軌道計測の際に摩耗を含んで軌道の仕上り状態を確認することができるとともに、省力化軌道工事後の測定の際に新品のレールにとって最適な位置で仕上がっているか否か確認することが可能な軌道計測装置および軌道計測方法を実現することができるという効果がある。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明に係る軌道計測装置の実施形態および該装置を用いた軌道計測作業の仕方について、図面を参照しながら詳細に説明する。
図1は、本実施形態に係る軌道計測装置を示すもので、(A)は平面図、(B)は正面図である。なお、本実施形態の軌道計測装置による軌道計測は、例えば25mや50mのような長さを有する定尺レールからなる軌道と、200m以上の長さを有するロングレールからなる軌道に適用することができる。また、本実施形態における軌道計測の対象となるレールは、50Nレール及び60Kレール等を含む。
【0017】
本実施形態に係る軌道計測装置は、軌間すなわちレール間隔の他、レールの左右方向のうねり具合、上下変位を計測する機能を備えており、直線状のレールはもちろんのこと軌道のカーブに沿って敷設されている湾曲したレールの軌間等の計測にも使用できる。軌間や左右方向のうねり、上下変位を計測する機能を実現する手段は、従来の軌道計測装置と同様であるので、計測機能の原理や測定器の具体的な構成についての詳しい説明は省略する。
【0018】
本実施形態に係る軌道計測装置10は、
図1(A)に示すように、全体としてほぼT字形をなすフレーム構造を有し、2本のレールの一方のレール上で2輪が転動し、他方のレール上で1輪が転動するように構成された3輪式の軌道計測装置である。以下、本実施形態では、T字形をなすフレーム11のうち腕部に相当するフレーム11Aを主フレーム、脚部に相当するフレーム11Bをサブフレームと称する。
主フレーム11Aは、その両端部に一方のレール上を転動する一対のローラ装置12A,12Bが設けられ、サブフレーム11Bの先端部に他方のレール上を転動するローラ装置12Cが設けられている。また、主フレーム11Aの中央下面に、通り変位測定用ローラ26cを有するローラ装置12Dが設けられているとともに、サブフレーム11Bの基部側に、計測データを収集するデータ収集装置20を搭載するための機器載置部11Cが設けられている。
【0019】
サブフレーム11Bの先端部には、内蔵された圧縮バネ等により外側方向(
図1では右方向)へ向かって付勢されたロッド13が伸縮可能に取り付けられており、このロッド13の外端部に上記ローラ装置12Cを保持する受け台14が設けられている。
サブフレーム11Bには上記ロッド13の伸縮量を測定可能な測定器が設けられているとともに、上記ローラ装置12Cおよび主フレーム11A側のローラ装置12A,12B,には、後述するようにレール側面部に当接する測定用ローラ(26a,26b)が設けられており、これらの測定用ローラ(26a,26b)を基点としてロッド13の伸縮量から軌間(レール間隔)を算出できるようになっている。
また、主フレーム11A中央下面のローラ装置12Dには、測定用ローラ26cをレール側面に向かって付勢するバネと変位量を検出する変位センサ(いずれも図示省略)が設けられており、該センサの検出変位量からレールの通り変位量を測定可能に構成されている。なお、レール軌間の測定原理および通り変位量の測定原理は、周知の軌間測定装置で行われている方法(例えば特許文献2参照)と同じであるので、詳しい説明は省略する。
【0020】
また、上記受け台14には、ローラ装置12Cの転動を阻止したり解除したりするためのブレーキ装置(図示省略)が設けられている。また、サブフレーム11Bの中央よりやや先端寄りの位置には、装置全体をレールに沿って移動させる力を作用させる手押し棒15の端部が自在継手16によって回動可能に結合されている。
上記手押し棒15の他方の端部には、上記ブレーキ装置の操作ハンドル15aが設けられているとともに、操作ハンドル15aと受け台14との間には、操作ハンドル15aに作用した力をブレーキ装置へ伝達するケーブル17が設けられており、ハンドル15aを握るとブレーキが解除され、ハンドル15aを解放するとブレーキ装置に内蔵されているバネの力でブレーキがかかるようになっている。
【0021】
図2および
図3には、
図1の軌道計測装置におけるサブフレーム11Bの先端部のローラ装置12Cの詳細が示されている。このうち、
図2はローラ装置12Cの斜視図、
図3はローラ装置12Cを先端側(
図1の右側)から見た側面図である。
図2において、符号11Bはサブフレーム、符号13は伸縮可能なロッドで、このロッド13の先端部にローラ装置12Cを保持する受け台14が設けられている。そして、この受け台14の側面にレール上面と接触する転動輪18が水平軸の回りに回転自在に装着され、受け台14の下面に一対の測定用ローラ19a,19bが垂直軸の回りに回転自在に装着されている。転動輪18と測定用ローラ19a,19bは、それぞれベアリングを内蔵している。
【0022】
本実施形態では、受け台14と転動輪18及び測定用ローラ19a,19bによってローラ装置12Cが構成されている。測定用ローラ19a,19bは、計測機能にとっては1つでも良いが、2つ設けることで走行安定性が向上する。
また、
図3に示すように、受け台14の上面にはブレーキ装置21およびケーブル保持金具22が装着され、ブレーキ装置21にはケーブル17の一端がボルト23によって止着されている。ブレーキ装置21には、ブレーキパッドとバネが内蔵されている。ケーブル保持金具22は、逆コの字状をなしケーブル17を移動可能に保持するように構成されている。さらに、受け台14の側面であって転動輪18の上方には装置を持ち上げる際に使用する取っ手24が設けられている。
【0023】
図4には、
図1の軌道計測装置における主フレーム11Aの先端部のローラ装置12Aの詳細が示されている。
図4において、符号11Aは主フレームで、主フレーム11Aの先端部下面に、ローラ装置12Aが装着されている。具体的には、主フレーム11Aの先端部下面に受け台25が固着され、該受け台25の下面に測定用ローラ26aが鉛直軸回りに回転自在に装着されているとともに、受け台25の外側面にレール上面に接触する転動輪27が水平軸の回りに回転自在に装着されている。なお、測定用ローラ26aの両側に補助ローラ28a,28bを設けても良い。
【0024】
本実施形態では、受け台25と転動輪27及び測定用ローラ26aとによってローラ装置12Aが構成されている。主フレーム11Aの反対側の端部に設けられているローラ装置12Bも主フレーム11Aの長手方向中央に設けられているローラ装置12Dも、ローラ装置12Aと同様に構成されているので、図示及び説明を省略する。また、ローラ装置12Dには、測定用ローラ26aと同様な測定用ローラ26c(
図1参照)が設けられている。
後述するように、ローラ装置12Aと12Bの測定用ローラ26a,26b(26bは図示省略)およびフレーム中央の測定用ローラ26cは、測定基準点として作用する。特に、中央の測定用ローラ26cは計測対象のレールがカーブしている箇所である場合に測定基準点として作用することができる。測定用ローラ26cを省略して、レールのカーブを検出して曲率に応じて測定した軌間距離(ロッド13の伸縮量)を補正するようにしても良い。
【0025】
次に、本実施形態の軌道計測装置におけるローラ装置12Cの測定用ローラ19a,19bと、ローラ装置12A,12B,12Dの測定用ローラ26a,26b,26cの詳細について説明する。
本実施形態の軌道計測装置においては、ローラ装置12Cの測定用ローラ19a,19bとして、
図5(A)に示す従来の装置に用いられていた通常ローラの他に、
図5(B)〜(D)に示すように通常ローラとはそれぞれ長さが異なる3種類の交換用ローラが用意されている。
図5(A)〜(D)に示されているローラは、それぞれ下端のローラ部31と上端の雄ネジ部32の長さは同一で、ローラ部31と雄ネジ部32との中間部33の長さがそれぞれ異なるように設計されるとともに、中間部33の外周に六角ボルトと同様な形状に形成されており、受け台14に取り付けたり取り外したりする際には、この中間部33に工具(スパナ)を係合させて回すことで着脱可能に構成されている。
【0026】
より詳細には、
図5(B)〜(D)に示す交換用ローラは省力化軌道工事施工後にレールの仕上がりを確認する際に使用するもので、2番目に短い
図5(B)の交換用ローラは計測対象が50Nの定尺レールである場合に使用し、2番目に長い
図5(C)の交換用ローラは計測対象が60Kの定尺レールである場合に使用し、最も長い
図5(D)に示す交換用ローラは計測対象がロングレールである場合に使用する。一方、主フレーム11A側のローラ装置12A,12B,12Dの測定用ローラ26a,26b,26cは、最も短い
図5(A)に示す通常ローラと同じ高さとなるように設定される。なお、
図5(A)に示す通常ローラは、従来通りバラスト軌道の保線作業終了後のレールの仕上がりを確認する際に使用する。以下に、3種類の交換用ローラを用意した理由を説明する。
【0027】
図5(A)に示す通常ローラおよび主フレーム11A側の測定用ローラ26a,26b,26cは、
図6(A)に示すように、レール1の上面から例えば16mmのような部位にローラの頭側部が接触するように、ローラの高さが設定される。これは、列車の車輪のフランジ部の接触によりレールが摩耗した場合に、バラスト軌道の保線作業ではレール1の上面から16mmの位置での軌間が所定の距離になるように調整が行われるためである。
一方、バラスト軌道を省力化軌道に変更する工事が実施された場合、上記通常ローラを取り付けた従来の軌道計測装置により仕上がり状態を確認すると、前述したように、施工後にレールに所定値以上の摩耗が発生し、新しいレールと交換する必要が生じ交換をした際にレールが正規位置からずれてしまい、敷設したレールの調整余裕が極端に少なくなってしまう。
【0028】
本発明者らは、省力化軌道工事の施工後の軌間の測定の際には、
図6(B)に示すように、摩耗の生じないレールの頭部側面に接触する測定用ローラを使用して計測を行うことを検討した。その結果、測定用ローラはレールの頭部側面のできるだけ下方の摩耗の少ない部位に接触させるのが良く、それにより精度の高い計測結果が得られるものの、現在、省力化軌道工事の対象となる軌道には、50Nの定尺レールと60Kの定尺レールとロングレールが敷設されている3種類の軌道がある。そして、このうちロングレールを対象として測定用ローラの高さを設定したとすると、50Nの定尺レールと60Kの定尺レールでは、レールとレールの接続部に継目板と呼ばれる補強板がレールの側面にボルトで締結されているため、測定用ローラの高さが高すぎることとなり、
図6(C)に示すように、ローラ19が継目板2と干渉してしまい、精度の高い計測が行なえないことが分かった。
【0029】
そこで、上述したように、
図5(B)に示す50Nの定尺レールの計測に用いる交換用ローラと、
図5(C)に示す60Kの定尺レールの計測に用いる交換用ローラと、
図5(D)に示すロングレールの計測に用いる交換用ローラを用意することとした。具体的には、
図5(B)の交換用ローラはレール上面から26mm低い位置でレール側面と接触するように高さが設定され、
図5(C)の交換用ローラはレール上面から36mm低い位置でレール側面と接触するように高さが設定され、
図5(D)に示す交換用ローラはレール上面から46mm低い位置でレール側面と接触するように高さが設定されている。
また、現状では従来通り保線工事が必要な軌道も存在するので、レールの上面から16mmの部位に頭側部が接触するローラも、交換可能な通常ローラとして残すこととした。
【0030】
次に、上記実施形態の軌道計測装置の利用の仕方について説明する。
先ず、バラスト軌道の保線工事施工後の軌道計測においては、上記実施形態の軌道計測装置10のサブフレーム11B先端の受け台14に、測定用ローラ19a,19bとして
図5(A)に示す通常ローラを取り付けて計測を行う。なお、このとき主フレーム11A側の測定用ローラ26a,26b,26cは、
図5(A)に示す通常ローラと同様に、レールの上面から16mmの部位に頭側部が接触するようにローラの高さが設定されている。
【0031】
上記のように測定用ローラが設定された軌道計測装置を、保線工事施工後の軌道のレール上に載置して移動させながら軌間や左右のうねり、上下の変位の計測を行うことで、列車の車輪のフランジ部の接触によりレールに摩耗が発生していたとしても、摩耗の発生を含んで保線作業後のレールの仕上がり状態を確認することができる。なお、この軌道計測の場合、軌道の直線箇所もちろんカーブ箇所においても、左右のレールのどちらに主フレーム11A側の測定用ローラ26a,26b,26cを載せて計測しても、得られる測定値はほぼ同じとなる。
【0032】
次に、省力化軌道工事施工後の軌道計測においては、上記実施形態の軌道計測装置10のサブフレーム11B先端の受け台14に、測定用ローラ19a,19bとして、施工対象の軌道のレールの種類に応じて、
図5(B),(C),(D)のいずれかの交換用ローラを取り付けて計測を行う。なお、このとき主フレーム11A側の測定用ローラ26a,26b,26cは、
図5(A)に示す通常ローラと同様に、レールの上面から16mmの部位に頭側部が接触するようにローラの高さが設定されている。
【0033】
上記のように測定用ローラが設定された軌道計測装置を、省力化軌道工事施工後の軌道のレール上に載置して移動させながら軌間や左右のうねり、上下の変位の計測を行うことで、列車の車輪のフランジ部の接触によりレールに摩耗が発生していたとしても、レールの仕上がり状態を確認することができる。具体的には、施工後にレールに所定値以上の摩耗が発生し、新しいレールと交換する必要が生じ交換をした際にレールが正規位置からずれてしまい、敷設したレールの調整余裕が極端に少なくなってしまうのを回避できる仕上がり状態になっているか否かを確認することができる。
【0034】
なお、この省力化軌道工事施工後の軌道計測の場合、軌道の直線箇所においては、左右のレールのどちらに主フレーム11A側のローラ装置12A,12B,12Dを載せて計測しても得られる測定値は同じとなるので問題ないが、軌道のカーブ箇所においては、
図7(A)に示すように、主フレーム11A側のローラ装置12A,12B,12Dを、カーブ内側レール1A上に載せて計測を行う。その理由は、軌道のカーブ箇所では、車両に作用する遠心力によって、
図7(C)に示すように、カーブ外側レール1Bの内側に摩耗Fが発生するため、主フレーム11A側のローラ装置12A,12Bをカーブ外側レール1B上に載せて計測を行うと、測定用ローラ26a,26b,26cが摩耗部位に接触するので、摩耗を含んで軌間を計測してしまうためである。
【0035】
これに対し、主フレーム11A側のローラ装置12A,12B,12Dを、カーブ内側レール1A上に載せて計測を行うと、
図7(B)に示すように、いずれの測定用ローラ26a,26b,26cもレールの摩耗のない部位に接触して計測を行うこととなるので、所望の計測結果が得られる。よって、省力化軌道工事施工後の軌道計測の場合、少なくとも軌道のカーブ箇所においては、主フレーム11A側のローラ装置12A,12B,12Dを、カーブ内側レール1A上に載せて計測を行う必要がある。
【0036】
なお、軌道の直線箇所であっても軌道面の僅かな傾き等によってレールに摩耗が発生することがある。ただし、そのような場合であっても同一箇所では一方のレールにのみ摩耗が発生しているのが一般的である。従って、その場合、摩耗が発生していない側のレール上に主フレーム11A側のローラ装置12A,12Bが来るように、軌道計測装置を載置して計測を行うようにすればよく、それによってその後新しいレールに交換をした際にレールが正規位置からずれてしまい、敷設したレールの調整余裕が極端に少なくなってしまうのを回避することができる。
【0037】
以上、本発明を実施形態に基づいて説明したが、本発明は上記実施形態に限定されず、発明の要旨を逸脱しない範囲において、適宜変更可能である。例えば、上記実施形態では、
上記実施形態では、長さの異なる4種類の交換用ローラを用意しておいて、サブフレーム先端の測定用ローラ19a,19bとして着脱可能に取り付けるように構成したものを説明したが、測定用ローラ19a,19bを受け台14に対して高さ方向移動可能に構成し、計測対象のレールの種類に応じて測定用ローラの高さを調整して計測を行うようにしても良い。また、交換用ローラは4種類に限定されるものでなく、計測対象のレールの種類に応じて用意すればよい。