(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6548931
(24)【登録日】2019年7月5日
(45)【発行日】2019年7月24日
(54)【発明の名称】ダイナミックスピーカ装置
(51)【国際特許分類】
H04R 7/26 20060101AFI20190711BHJP
H04R 9/04 20060101ALI20190711BHJP
H04R 1/00 20060101ALI20190711BHJP
【FI】
H04R7/26
H04R9/04 105A
H04R1/00 317
【請求項の数】6
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2015-62632(P2015-62632)
(22)【出願日】2015年3月25日
(65)【公開番号】特開2016-181890(P2016-181890A)
(43)【公開日】2016年10月13日
【審査請求日】2018年3月6日
(73)【特許権者】
【識別番号】594155528
【氏名又は名称】日本エレクトロニクス・サービス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100095430
【弁理士】
【氏名又は名称】廣澤 勲
(72)【発明者】
【氏名】高木 勝海
【審査官】
須藤 竜也
(56)【参考文献】
【文献】
特開2000−333290(JP,A)
【文献】
実公昭47−015974(JP,Y1)
【文献】
特開2014−239383(JP,A)
【文献】
国際公開第2014/162404(WO,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2012/0323066(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04R 1/00
H04R 7/00 − 7/26
H04R 9/00 − 9/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状のボビンの外周にコイルが巻回されたボイスコイルと、板状の弾性体であってその一方の面に前記ボビンの一端部が固定された振動板と、前記ボビンの内側に配設され前記振動板の中央部を支持固定する振動板支持部材とを備え、
前記振動板は、中央に設けられた基部と、この基部の側端から放射状に延設された複数の延設部とで構成され、前記基部が前記振動板支持部材により支持固定され、前記複数の延設部における前記基部から離れた位置に前記ボビンの前記一端部が取り付けられ、
前記コイルに音声電流が供給されることによって前記ボイスコイルが振動し、この振動を受けて前記振動板が振動することを特徴とするダイナミックスピーカ装置。
【請求項2】
ヨークとなる有底筒状のベース体と、前記ベース体の内側の底面中央部に固定された磁石とを備え、前記ベース体の側壁と前記磁石との間に、前記磁石のバイアス磁束が通過する空間であるギャップが形成され、
前記振動板支持部材は、前記磁石に重ねて固定され、前記振動板を前記ベース体の底面に対向する向きに支持し、この状態で、前記ボイスコイルの前記コイルが前記ギャップに配置され、
前記振動板を通じて骨導音を外部出力する請求項1記載のダイナミックスピーカ装置。
【請求項3】
前記ボビンの外周面を前記ベース体に連結し、前記ボビンを振動可能に支持するダンパ部材を備える請求項2記載のダイナミックスピーカ装置。
【請求項4】
ヨークとなる有底筒状のベース体と、前記ベース体の内側の底面中央部に固定された磁石とを備え、前記ベース体の側壁と前記磁石との間に、前記磁石のバイアス磁束が通過する空間であるギャップが形成され、
前記振動板支持部材は、前記磁石に重ねて固定され、前記振動板を前記ベース体の底面に対向する向きに支持し、この状態で、前記ボイスコイルの前記コイルが前記ギャップに配置され、
さらに、中央部が開口した円盤状又は円錐台側面状の外形を有し、その外側周縁部にダンパ用エッジが設けられ、内側周縁部が前記振動板の周縁部に固定されたコーン型振動膜と、前記ベース体と一体に設けられ、前記コーン型振動膜の前記ダンパ用エッジの外周部を支持固定する振動膜支持部材とを備え、
前記コーン型振動膜を通じて気導音を外部出力する請求項1記載のダイナミックスピーカ装置。
【請求項5】
ヨークとなる有底筒状のベース体と、前記ベース体の内側の底面中央部に固定された磁石とを備え、前記ベース体の側壁と前記磁石との間に、前記磁石のバイアス磁束が通過する空間であるギャップが形成され、
前記振動板支持部材は、前記磁石に重ねて固定され、前記振動板を前記ベース体の底面に対向する向きに支持し、この状態で、前記ボイスコイルの前記コイルが前記ギャップに配置され、
さらに、中央部が膨出した丸屋根状の外形を有し、丸屋根状の開口周縁部にダンパ用エッジが設けられ、前記ダンパ用エッジの内周部が前記振動板の周縁部に固定されたドーム型振動膜と、前記ベース体と一体に設けられ、前記ドーム型振動膜の前記ダンパ用エッジの外周部を支持固定する振動膜支持部材とを備え、
前記ドーム型振動膜を通じて気導音を外部出力する請求項1記載のダイナミックスピーカ装置。
【請求項6】
前記磁石に重ねて固定されたヨーク部材を備え、
前記振動板支持部材は、前記ヨーク部材を介して前記磁石に固定されている請求項2乃至5のいずれか記載のダイナミックスピーカ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、骨伝導式又は気導式スピーカ等の用途に使用されるダイナミックスピーカ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ダイナミックスピーカ装置は、磁界中に配したコイルに音声電流を流してコイルを振動させ、音声を出力する装置であり、この構造は骨伝導スピーカや気導スピーカ等の用途に広く使用されている。
【0003】
従来、例えば特許文献1に開示されていように、磁界を発生させるヨーク及び磁石等と、筒状のボビンの外周にコイルが巻回されたボイスコイルと、ボビンに固定された振動部カバーとを備えた骨伝導スピーカがあった。この骨伝導スピーカは、ボイスコイルと一体に振動する振動部カバーを通じて、骨導音を外部出力する。ボイスコイルを振動可能に支持する部分は、ベース体の内側にボイスコイルを配し、ボビンの外周面にダンパをフランジ状に取り付け、ダンパの外側端部をベース体の側壁に連結した構造になっている。
【0004】
また、骨伝導式なので、外部から振動部カバー又は電動パッドが強く押圧されることが想定されるため、これらの部材の移動限界位置を規定することで故障を回避する工夫がされている。具体的には、スピーカ全体を収容するケース本体(筐体)を設け、振動部カバーをケース本体の開口端から突出させた構造になっており、振動部カバーが強く押圧されてケース本体の開口端まで沈むと、開口端がストッパとなってそれ以上は移動しない。
【0005】
同じく骨伝導式のスピーカ装置として、特許文献2に開示されているように、磁界を発生させるヨーク及び磁石等と、筒状のボビンの外周にコイルが巻回されたボイスコイルと、ボビンに固定された伝導パッドとを備えた骨伝導スピーカがあった。この骨伝導スピーカは、ボイスコイルと一体に振動する伝導パッドを通じて、骨導音を外部出力する。ボイスコイルを振動可能に支持する部分は、大型のハウジングの内側にボイスコイルを配し、ボビンの一端部にサスペンションをフランジ状に取り付け、サスペンションの外側端部をハウジングの側壁に連結した構造になっている。
【0006】
電動パッドの移動限界位置を規定して故障を回避する部分は、スピーカ全体を収容するカバーを設け、伝導パッドをカバーの開口端から突出させた構造になっており、電動パッドが押圧されてカバーの開口端まで沈むと、開口端がストッパになってそれ以上は移動しない。
【0007】
また、特許文献3に開示されているように、磁界を発生させるヨーク及び磁石等と、筒状のボビンの外周にコイルが巻回されたボイスコイルと、ボビンに取り付けられたコーン型振動板とを備えた気導スピーカがあった。この気導スピーカは、コーン型振動板を通じて、気導音を外部出力する。ボイスコイルを振動可能に支持する部分は、大型のフレームの内側にボイスコイルを配し、ボビンの外周面にダンパをフランジ状に取り付け、ダンパの外側端部をフレームの側壁に連結した構造になっている。
【0008】
さらに、特許文献4に開示されているように、磁界を発生させるヨーク及び磁石等と、筒状のボビンの外周にコイルが巻回されたボイスコイルと、ボビンに取り付けられたドーム型振動板とを備えた気導スピーカがあった。この気導スピーカは、ドーム型振動板を通じて、気導音を外部出力する。ボイスコイルを振動可能に支持する部分は、大型のフレームの内側にボイスコイルが配され、ボビンの一端部に所定のマグネシウムエッジがフランジ状に取り付けられ、マグネシウムエッジの外側端部がフレームの側壁に連結された構造になっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2009−290727号公報
【特許文献2】特開2006−332715号公報
【特許文献3】特開平2−268597号公報
【特許文献4】特開2005−333321号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
特許文献1,2の骨伝導式スピーカは、振動部カバー又は電動パッド移動限界位置を制限する構造が、複数の部材を精度よく組み合わせることによって実現されており、複雑で製作しにくいものである。また、ダンパやサスペンションが、ボイスコイルの直径よりも外側に大きく突出する構造なので、装置全体を小型化しにくいものである。
【0011】
また、特許文献1,2の骨伝導式スピーカと特許文献3,4の気導式スピーカを比べると構造上の共通点が少なく、それぞれに独特の部材が多く使用されている。したがって、骨伝導式スピーカと気導式スピーカの両方を生産する工場においては、使用部材の共通化や生産工程の共通化を進めることが難しく、特に生産量の少ない骨伝導スピーカは、コストがかかる原因ともなっていた。
【0012】
本発明は、上記背景技術に鑑みて成されたものであり、シンプルな構造で音響性能の優れた骨伝導スピーカを実現することができ、気導スピーカにも容易に応用できる構造のダイナミックスピーカ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、筒状のボビンの外周にコイルが巻回されたボイスコイルと、板状の弾性体であって、その一方の面に前記ボビンの一端部が固定された振動板と、前記ボビンの内側に配設され、前記振動板の中央部を支持固定する振動板支持部材とを備え、前記コイルに音声電流が供給されることによって前記ボイスコイルが振動し、この振動を受けて前記振動板が振動するダイナミックスピーカ装置である。前記振動板は、中央に設けられた基部と、この基部の側端から放射状に延設された複数の延設部とで構成され、前記基部が前記振動板支持部材により支持固定され、前記複数の延設部における前記基部から離れた位置に前記ボビンの前記一端部が取り付けられている構成にすることができる。
【0014】
例えば、ヨークとなる有底筒状のベース体と、前記ベース体の内側の底面中央部に固定された磁石とを備え、前記ベース体の側壁と前記磁石との間に、前記磁石のバイアス磁束が通過する空間であるギャップが形成され、前記振動板支持部材は、前記磁石に重ねて固定され、前記振動板を前記ベース体の底面に対向する向きに支持し、この状態で、前記ボイスコイルの前記コイルが前記ギャップに配置され、前記振動板を通じて骨導音を外部出力する構成であることが好ましい。この場合、前記ボビンの外周面を前記ベース体に連結し、前記ボビンを振動可能に支持するダンパ部材を備える構成にしてもよい。
【0015】
あるいは、ヨークとなる有底筒状のベース体と、前記ベース体の内側の底面中央部に固定された磁石とを備え、前記ベース体の側壁と前記磁石との間に、前記磁石のバイアス磁束が通過する空間であるギャップが形成され、前記振動板支持部材は、前記磁石に重ねて固定され、前記振動板を前記ベース体の底面に対向する向きに支持し、この状態で、前記ボイスコイルの前記コイルが前記ギャップに配置され、さらに、中央部が開口した円盤状又は円錐台側面状の外形を有し、その外側周縁部にダンパ用エッジが設けられ、内側周縁部が前記振動板の周縁部に固定されたコーン型振動膜と、前記ベース体と一体に設けられ、前記コーン型振動膜の前記ダンパ用エッジの外周部を支持固定する振動膜支持部材とを備え前記コーン型振動膜を通じて気導音を外部出力する構成であることが好ましい。
【0016】
あるいは、ヨークとなる有底筒状のベース体と、前記ベース体の内側の底面中央部に固定された磁石とを備え、前記ベース体の側壁と前記磁石との間に、前記磁石のバイアス磁束が通過する空間であるギャップが形成され、前記振動板支持部材は、前記ヨーク部材に重ねて固定され、前記振動板を前記ベース体の底面に対向する向きに支持し、この状態で、前記ボイスコイルの前記コイルが前記ギャップに配置され、さらに、中央部が膨出した丸屋根状の外形を有し、丸屋根状の開口周縁部にダンパ用エッジが設けられ、前記ダンパ用エッジの内周部が前記振動板の周縁部に固定されたドーム型振動膜と、前記ベース体と一体に設けられ、前記ドーム型振動膜の前記ダンパ用エッジの外周部を支持固定する振動膜支持部材とを備え、前記ドーム型振動膜を通じて気導音を外部出力する構成であることが好ましい。
【0017】
また、前記磁石に重ねて固定されたヨーク部材を備え、前記振動板支持部材は、前記ヨーク部材を介して前記磁石に固定されている構成にしてもよい。
【発明の効果】
【0018】
請求項1〜4記載のダイナミックスピーカ装置は、骨伝導式のスピーカ装置に好適な構造であり、優れた音響性能を容易に実現することができる。また、外部から押圧された振動板及びボイスコイルの移動限界位置を制限する構造を含め、全体として構造がシンプルであり、非常に製作しやすいものである。
【0019】
請求項5,6記載のダイナミックスピーカ装置は、気導式のスピーカ装置であり、上記の骨伝導式のスピーカ装置と構造上の共通点が多いので、骨伝導式と気導式の両方のスピーカ装置を生産する工場において、使用部材の共通化や生産工程の共通化を容易に進めることができ、生産性を格段に向上させることができる。
【0020】
また、請求項7記載の各ダイナミックスピーカ装置のように、所定のヨーク部材を設けることによって、ギャップ内に配されたコイルに対し、磁石のバイアス磁束を効果的に集中させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本発明のダイナミックスピーカ装置の第一の実施形態(骨伝導式)の内部構造を示す縦断面図(a)、分解斜視図(b)である。
【
図2】振動板の構造の例を示す図(a)、(b)である。
【
図3】本発明のダイナミックスピーカ装置の第二の実施形態(骨伝導式)の内部構造を示す縦断面図(a)、分解斜視図(b)である。
【
図4】本発明のダイナミックスピーカ装置の第三の実施形態(気導式)の内部構造を示す縦断面図である。
【
図5】本発明のダイナミックスピーカ装置の第四の実施形態(気導式)の内部構造を示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明のダイナミックスピーカ装置の第一の実施形態について、
図1に基づいて説明する。この実施形態のダイナミックスピーカ装置10は、骨伝導式のスピーカ装置であり、ベース体12、磁石14、ヨーク部材16、ボイスコイル18、振動板20、及び振動板支持部材22で構成され、振動板20を通じて骨導音を外部出力する。
【0023】
ベース体12は、有底円筒状の構造物であり、ここでは、磁気回路を形成するためのヨークの働きもする。磁石14は、ベース体12より小さい低背円柱状に形成され、ベース体12内側の底面12a中央部に接着固定されている。ヨーク部材16は、磁石14よりも直径が僅かに大きい円盤状に形成され、磁石14に重ねて接着固定されている。したがって、磁石14によるバイアス磁束は、ヨーク部材16内を半径方向に通過し、ヨーク部材16の側端面とベース体12の側壁12b先端部とで挟まれた空間であるギャップ24を通過し、側壁12b内を高さ方向に通過し、底面12a内を半径方向に通過して磁石14に戻る。
【0024】
ボイスコイル18は、円筒状のボビン26の外周にコイル28が巻回されたものであり、コイル28が、ボビン26の2つの端部26a,26bのうちの端部26a寄りの位置に設けられている。ボイスコイル18の直径は、円筒状の空間であるギャップ24の直径とほぼ等しい。ボイスコイル18は、図示しない駆動装置が出力する音声電流がコイル28に流れることによって駆動される。
【0025】
振動板20は、シリコーンゴム等で形成された板状の弾性体であり、中央に設けられた基部20aと、基部20aの側端から放射状に延設された4つの延設部20bとで構成されている。振動板20の大きさは、ボイスコイル18のボビン26よりも僅かに大きく、4つの延設部20bの先端部(基部20aから離れた位置)の一方の面に、ボビン26の端部26bが接着固定されている。
【0026】
振動板支持部材22は、硬質ゴム等で形成された低背円柱状の構造物であり、大きさは振動板20の基部20aと同程度である。振動板支持部材22は、ボビン26の内側に配され、一端面に振動板20の基部20aが接着固定され、他端面がヨーク部材16に重ねて接着固定されて、振動板20をベース体12の底面12aと対向する向きに支持固定する。これによって、ボイスコイル18のコイル28が、ギャップ24に配置される。
【0027】
ダイナミックスピーカ装置10は、図示しない駆動装置が出力する音声電流を受けて動作し、コイル28に音声電流が流れることによってボイスコイル28が振動し、ボイスコイル28の振動を受けて振動板20の延設部20bが振動し、振動板20を通じて骨導音を外部出力する。
【0028】
振動板20の弾性特性は、骨導音の音響性能に大きく影響するので、延設部20bの数、個々の延設部20bの形状(長さや太さ等)は、所望の音響性能が得られるよう、自由に調節することができる。また、隣り合う延設部20b同士に挟まれた空間の形状を変更することで、空気の流れを変化させ、音響特性を変化させることもできる。例えば、
図2(a)に示す振動板20は、円盤の4カ所を扇形に切り欠いたような形状であるが、
図2(b)に示すように、円盤の4カ所を円弧状に切り欠くことによって、異なった音響性能を得ることができる。
【0029】
また、ダイナミックスピーカ装置10は骨伝導式なので、使用状態において、振動板20がベース体12の方向に強く押圧されることが想定されるが、振動板20及びボイスコイル18の移動量は、振動板支持部材22がストッパとなって確実に制限されるので、シンプルで非常に故障しにくい構造ということができる。
【0030】
以上説明したように、ダイナミックスピーカ装置10は、外部からの荷重に対する強度を高く設定可能であるとともに、振動板20の振動を良好に伝達可能であり、骨伝導式として優れた音響性能を実現することができる。また、外部から押圧された振動板20及びボイスコイル18の移動限界位置を制限する構造を含め、全体として構造がシンプルであり、非常に製作しやすいものである。また、ボイスコイル18を振動可能に支持する部材(振動板20、振動板支持部材22)をコンパクトにできるので、装置の外形を容易に小型化することができる。
【0031】
次に、本発明のダイナミックスピーカの第二の実施形態について、
図3に基づいて説明する。ここで、上記実施形態と同様の構成は、同一の符号を付して説明を省略する。この実施形態のダイナミックスピーカ装置30は、骨伝導式のスピーカ装置であり、上述したダイナミックスピーカ装置10の構成に加え、ダンパ部材32が付設されている。また、上記のベース体12が、新規なベース体34に置き換えられている。
【0032】
ベース体34は、有底円筒状の構造物であり、上記のベース体12の底面12a及び側壁12bと同様の働きをする底面34a及び側壁34bを有し、さらに側壁34bの先端部にフランジ面34cが設けられている。フランジ面34cは、後述するダンパ部材32の取り付けを容易にするために設けられている。
【0033】
ダンパ部材32は、中央部が円形に開口した円盤状の可撓性部材であり、内側周縁部がボイスコイル18のボビン26の外周面(振動板20から軸方向に離れた位置)に接着固定され、外側周縁部がベース体34のフランジ面34cに接着固定されている。つまり、ボイスコイル28は、振動板20及びダンパ部材32によって振動可能に支持される。
【0034】
ダイナミックスピーカで良好な音響性能を得るためには、コイル28を磁気回路中の狭い空間であるギャップ24に正確に保持すると共に、コイル28を正確に振動させる(軸方向にストロークさせる)ことが重要である。この点、上記のダイナミックスピーカ10の場合、振動板20だけでボイスコイル18を支持するが、ダイナミックスピーカ装置30の場合は振動板20とダンパ部材32とが協働してボイスコイル18を支持するので、構造設計の自由度が高くなり、コイル28を正確に保持し振動させる構造を容易に実現することができる。
【0035】
次に、本発明のダイナミックスピーカ装置の第三の実施形態について、
図4に基づいて説明する。ここで、上記実施形態と同様の構成は、同一の符号を付して説明を省略する。この実施形態のダイナミックスピーカ装置36は、気導式のスピーカ装置であり、上述したダイナミックスピーカ装置10の構成に加え、コーン型振動膜38と振動膜支持部材40とが付設され、コーン型振動膜38を通じて気導音を外部出力する。
【0036】
コーン型振動膜38は、中央部が開口した円錐台側面状(又は円盤状)の外形を有し、その外側周縁部にダンパ用エッジ38aが設けられ、内側周縁部が前記振動板20の周縁部に固定されている。
【0037】
振動膜支持部材40は、コーン型振動膜38とほぼ同じ直径の有底円筒状の構造物であり、底面40aの中央部が円形に開口し、開口部の内側周縁が、ベース体12の側壁12bの先端部の外周面に固定されている。また、側壁40bの先端部には、コーン型振動膜38のダンパ用エッジ38aの外周部が支持固定されている。
【0038】
ダイナミックスピーカ装置36は、図示しない駆動装置が出力する音声電流を受けて動作し、コイル28に音声電流が流れることによってボイスコイル18が振動し、ボイスコイル18の振動を受けて振動板20の延設部20bが振動し、延設部20bの振動を受けてコーン型振動膜38が振動し、コーン型振動膜38を通じて気導音を外部出力する。
【0039】
ダイナミックスピーカ装置36は、以上の構成により、気導式として優れた音響性能を実現することができる。また、骨伝導式のダイナミックスピーカ装置10と比較して構造の共通点が多いので、骨伝導式と気導式の両方のスピーカ装置を設計及び生産する場合に、使用部材の共通化や生産工程の共通化を容易に進めることができ、生産性を格段に向上させることができる。
【0040】
次に、本発明のダイナミックスピーカ装置の第四の実施形態について、
図5に基づいて説明する。ここで、上記実施形態と同様の構成は、同一の符号を付して説明を省略する。この実施形態のダイナミックスピーカ装置42は、上述したダイナミックスピーカ装置36のコーン型振動膜38をドーム型振動膜44に置き換えた気導式のスピーカ装置であり、ドーム型振動膜44を通じて気導音を外部出力する。
【0041】
ドーム型振動膜44は、中央部が膨出した丸屋根状の外形を有し、丸屋根状の開口周縁部にダンパ用エッジ44aが設けられ、ダンパ用エッジ44aの内周部が振動板20の周縁部に固定され、ダンパ用エッジ44aの外周部が振動膜支持部材40の側壁40bの先端部に支持固定されている。
【0042】
ダイナミックスピーカ装置42も同様に、気導式として優れた音響性能を実現することができる。また、骨伝導式ダイナミックスピーカ装置10と比較して構造の共通点が多いので、骨伝導式と気導式の両方のスピーカ装置を設計及び生産する場合に、使用部材の共通化や生産工程の共通化を容易に進めることができ、生産性を格段に向上させることができる。
【0043】
なお、本発明のダイナミックスピーカ装置は、上記実施形態に限定されるものではない。例えば、上述した気導式のダイナミックスピーカ装置36,42は、ダンパ部材を有しない骨伝導式のダイナミックスピーカ装置10の構成にコーン型又はドーム型振動膜38,44等を付設したものであるが、ダンパ部材30を有する骨伝導式のダイナミックスピーカ装置30の構成にコーン型又はドーム型振動膜38,44を付設した構成にしてもよく、同様の優れた作用効果を得ることができる。
【0044】
振動板、振動板支持部材の形態(材質、形状等)は、音響性能に大きく影響するので、上述した作用効果が得られる範囲で適宜変更し、所望の音響性能が得られる最適な形態を選択するとよい。例えば、振動板の形状についてみると、骨伝導式のスピーカ装置の場合、
図2(a)、(b)に示すように、円盤状の複数箇所を扇形又は円弧状に切り欠くことで良好な音響特性が得られることを説明したが、気導式のスピーカ装置の場合、振動板近傍の空気の流れが音響特性に大きく影響しないので、例えば、切り欠きのない円盤状にしてもよい。
【0045】
磁界を発生するためのヨークや磁石の形態(数、形状、配置等)、ベース体及び振動膜支持部材の形態(材質、形状等)についても、上記の作用効果が得られる範囲で自由に変更することができる。例えば、上記実施形態ではベース体をヨークとして利用しているが、ベース体と専用ヨークを別々に設けてもよい。また、必要に応じてヨーク部材を省略してもよい。
【0046】
また、本発明のダイナミックスピーカ装置の構造を応用して、マイクロホンを構成することも可能である。
【符号の説明】
【0047】
10,30,36,42 ダイナミックスピーカ装置
12,34 ベース体
12a,34a 底面
12b,34b 側壁
14 磁石
16 ヨーク部材
18 ボイスコイル
20 振動板
20a 基部
20b 延設部
22 振動板支持部材
24 ギャップ
26 ボビン
26a,26b 端部
28 コイル
32 ダンパ部材
34c フランジ面
38 コーン型振動膜
38a ダンパ用エッジ
40 振動膜支持部材
44 ドーム型振動膜
44a ダンパ用エッジ