(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、同一または類似の部分には同一または類似の符号を付し、図面で同一または類似の符号が付いたものは、説明を省略する場合もある。また、本実施形態に記載されている構成の寸法、材質、形状、相対配置、加工法等はあくまで一実施形態に過ぎず、これらによってこの発明の範囲が限定解釈されるべきではない。さらに図面は模式的なものであり、寸法の比率、形状は現実のものとは異なる。
【0023】
〔実施形態1〕
図1及び
図2は、本実施形態に係るオイルリング式すべり軸受1の概略構造を示す図である。
図1は、オイルリング式すべり軸受1を軸11の軸方向から見た断面図である。
図2は、
図1のX
1−X
1線矢視断面図である。
【0024】
図3は、オイルリング式すべり軸受1に用いられるオイルリングガイド15aの斜視図である。
図3に示すように、オイルリングガイド15aは、第1部材51及び第2部材52から構成されている。第1部材51がオイルリング14aの上面と対向し、第2部材52がオイルリング14aの側面と対向するように、オイルリングガイド15aは上部軸受メタル12の端面に取り付けられている。
【0025】
第1部材51は、オイルリング14aの上面と対向することにより、オイルリング14aの頂部の回転方向上流側から下流側にわたって空間(以下、「第1空間」と呼ぶ。)201を形成する(
図4の(e)参照)。第1空間201は、第1部材51の、上記回転方向において、最も狭くなる部分がある。具体的には、
図4に示す。第1空間201は、(a)に示すように、上記回転方向において、断面O−Y
1、O−Y
2、O−Y
3と変化する。第1部材51とオイルリング14aの上面との距離は、(b)に示すa
1、(c)に示すa
2、(d)に示すa
3と徐々に狭くなるように変化し、a
3のさらに回転方向前方で最も狭くなる。最も狭くなる部分を通過すれば、再び、オイルリング14aの上面と第1部材51との距離は広くなる。つまり、オイルリング14aの頂部近傍の回転方向上流側から下流側にわたって空間が漸減する漸減空間を形成する。
【0026】
第2部材52は、オイルリング14aの側面と対向することにより、第1空間201とつながる空間(以下、「第2空間」と呼ぶ。)202を形成する(
図4の(e)参照)。なお、オイルリング14aの、一方の側面は、上述のとおり、第2部材52と対向し、他方の側面は、上部軸受メタル12の端面と対向する。上部軸受メタル12の端面は、第2部材52と同様、オイルリング14aの側面と対向することにより、第1空間201とつながる空間を形成する。当該空間も上述した第2空間202に含まれる。
【0027】
以下、第1空間201及び第2空間202の油を堰き止め、軸11と軸受メタルの摺接面へ導く作用について、説明する。軸11の回転に伴って、オイルリング14aが連れ回り、油槽22内に溜められた油がオイルリング14aに付着して軸11の上方に掻き上げられる。掻き上げられた、オイルリング14aの上面に付着した油が第1空間201を通過し始めると、当該油は、回転方向に沿って徐々に狭くなる第1空間201の最も狭くなる部分を起点として堰き止められる。堰き止められた油は、次第に、第1空間201から溢れ出すことになる。つまり、従来であれば、オイルリング14aに付着したまま、油槽22内に戻されていた油を堰き止めることで、掻き上げた油をそのまま油槽22へ戻すことなく、オイルリング14aの側面から下部軸受メタル13に供給することができる。
【0028】
第1空間201において堰き止められた油は、その油の粘性等の特性やオイルリング14aの回転速度等の如何により、第1空間201における、オイルリング14aの頂部から見て回転方向下流側から溢れ出す場合もあるし、あるいは、オイルリング14aの頂部から見て回転方向上流側から溢れ出す場合もある。
【0029】
第2空間202は、第2部材52及び上部軸受メタル12の端面と、オイルリング14aの側面とが対向し、第1空間201から油が溢れ出し、下部軸受メタル13へ供給する空間である。第2空間202は第3空間203及び第4空間204からなる。
【0030】
第3空間203は、第2空間202のうち、オイルリング14aの側面とオイルリングガイド15aが形成する空間である。第3空間203を設けることにより、第1空間201から漏れ出す油は、周方向への通路を塞がれ下方へ落下する。第3空間203は、このような、第1空間201から油の漏れ出す方向に位置しており、第1空間201から漏れ出す油の大半は第3空間203を経て、第2部材52により、第4空間204に誘導される。
【0031】
第4空間204は、第3空間203と下部軸受メタル13とをつなぐ空間である。第1空間201から第3空間203へ溢れ出した油は、第4空間204を経由し、下部軸受メタル13に供給される。
【0032】
このように、本実施形態に係るオイルリング式すべり軸受1によれば、オイルリング14aの回転により、オイルリング14aに付着した油が第1空間201を通過し始めると、当該油は、回転方向に沿って徐々に狭くなる第1空間201の最も狭くなる部分を起点として堰き止められ、第1空間201から第2空間202へ溢れ出す。したがって、従来であれば、オイルリング14aに付着したまま、再び、油槽22内に戻されていた油を、オイルリング14aの側面から下部軸受メタル13に供給することができる。
【0033】
上述の実施形態では、第1空間201が漸減空間となる形態を説明したが、第1空間201と同様、第2空間202の一部(第3空間203)がオイルリング14aの回転方向に沿って徐々に狭くなるような漸減空間としてもよい。具体的には、
図5に示す。第2空間202は、(a)に示すように、上記回転方向において、断面O−Z
1、O−Z
2、O−Z
3と変化する。第2部材52とオイルリング14aの側面の距離は、(b)に示すb
1、(c)に示すb
2、(d)に示すb
3と変化し、b
3で最も狭くなる。同様に、上部軸受メタル12の端面とオイルリング14aの側面との距離は、(b)に示すc
1、(c)に示すc
2、(d)に示すc
3と徐々に狭くなるように変化し、c
3で最も狭くなる。オイルリング14aの回転により、オイルリング14aの側面に付着した油が第2空間202を通過し始めると、当該油は、回転方向に沿って徐々に狭くなる第2空間202の最も狭くなる部分を起点として堰き止められる。第1空間201と同様、第2空間202によっても、このような油を下部軸受メタル13に供給することができる。
【0034】
上述の実施形態においては、第1空間201または第2空間202を徐々に狭くする漸減空間を説明したが、第1空間201及び第2空間202の両方を、上述したように、オイルリング14aの回転方向に沿って徐々に狭くなるようにしてもよい。
【0035】
また、第2空間202のうち第2部材52とオイルリング14aの側面または上部軸受メタル12の端面とオイルリング14aの側面との距離の何れか一方のみを徐々に狭くなるようにしても良い。
【0036】
なお、本明細書においては、オイルリング14aの上面及び側面をまとめて「外面」と表現するものとする。
【0037】
〔実施形態2〕
次に、本発明の実施形態2について説明する。なお、本実施形態と上記実施形態1との間において、対応する部分同士には同一の符号を付している。
【0038】
(オイルリング式すべり軸受1の概略構成)
図6及び
図7は、本発明の実施形態2に係るオイルリング式すべり軸受1の概略構造を示す図である。
図6は、オイルリング式すべり軸受1を軸11の軸方向から見た断面図であり、
図7は、
図6のX
2−X
2線矢視断面図である。
【0039】
オイルリング式すべり軸受1は、軸11と、上部軸受メタル12と、下部軸受メタル13と、オイルリング14aと、オイルリング14bと、オイルリングガイド15aと、オイルリングガイド15bと、を備えている。オイルリング式すべり軸受1は、
図6及び
図7に示すように、ハウジング21a内に収納されている。ハウジング21aには軸11の軸方向に貫通する貫通穴が設けられ、当該貫通穴を軸11が通るように、オイルリング式すべり軸受1がハウジング21a内の軸受保持部21bに保持されている。ハウジング21aと軸受保持部21bとは一体成形され、オイルリング式すべり軸受1を囲む軸受ハウジング21を構成している。
【0040】
軸11は、ハウジング21aの外部に設置されたモータ等の駆動装置(図示省略)によって回転駆動される。
【0041】
上部軸受メタル12及び下部軸受メタル13は、相対する接合面を介してボルトで一体に固定されることにより、1つの円筒状の軸受メタルを構成する。上部軸受メタル12及び下部軸受メタル13のそれぞれの、軸11との摺接面には、ホワイトメタル等の金属材料からなるメタル層が形成される。上部軸受メタル12及び下部軸受メタル13の各メタル層が軸11を回転可能に支持する。
【0042】
オイルリング14a及びオイルリング14bは、軸11に回転自在に懸架される。オイルリング14a及びオイルリング14bのそれぞれの下部は、
図6に示すように、油槽22内の油に浸漬している。軸11の回転に伴って、オイルリング14a及びオイルリング14bは連れ回り、油槽22内に溜められた油が軸11の上方に掻き上げられる。
【0043】
オイルリングガイド15a及びオイルリングガイド15bは、それぞれ、軸11に懸架されるオイルリング14a及びオイルリング14bの、軸11上における軸心方向の各位置を決める位置決め部材であるとともに、オイルリング14a及びオイルリング14bからの下部軸受メタル13までの空間を構成する部材の1つである。オイルリングガイド15a及びオイルリングガイド15bは、それぞれ、上部軸受メタル12の各端面に設けられたねじ穴に止めねじで螺合することで、各端面に固定され、オイルリング14a及びオイルリング14bを収納する。オイルリングガイド15a及びオイルリングガイド15bは例えば板金加工等により製作される。
【0044】
オイルリングガイド15a及びオイルリングガイド15bは、それぞれ、上部軸受メタル12の各端面との間において、オイルリング14a及びオイルリング14bを収納する空間を構成する。オイルリング式すべり軸受1では、上部軸受メタル12の各端面にオイルリングガイド15a及びオイルリングガイド15bを配置し、上部軸受メタル12の各端面と、オイルリングガイド15a及びオイルリングガイド15bとにより構成される空間に、オイルリング14a及びオイルリング14bを収納する。
【0045】
図11に示すように、オイルリングガイド15aには、上述した空間の内部に向かって突起する突起部16a−1が設けられている。同様に、上部軸受メタル12の端面にも、上述した空間の内部に向かって突起する突起部16a−2が設けられている。例えば、突起部16a−1は、オイルリングガイド15aのボルト穴に低頭ボルト16A−1を通し、その頭部(すなわち、突起部16a−1)を空間内に配置したものである。低頭ボルト16A−1の軸部は、オイルリングガイド15aの外側にてナットで締め付けられる。また、突起部16a−2は、上部軸受メタル12の端面に低頭ボルト16A−2をネジ込み、その頭部(すなわち、突起部16a−2)を、上述した空間内に配置したものである。
【0046】
軸11の回転中も停止中も、突起部16a−1と突起部16a−2との間にオイルリング14aが位置するように配置され、それら突起部16a−1及び突起部16a−2により、オイルリング14aとオイルリングガイド15aとの間隔、及び、オイルリング14aと上部軸受メタル12の端面との間隔、がそれぞれ規定され、オイルリング14aの側面に空間が形成される。これにより、オイルリング14aとオイルリングガイド15aとの接触、及び、オイルリング14aと上部軸受メタル12の端面との接触は回避される。つまり、オイルリング14aは、回転中に、突起部16a−1及び突起部16a−2のみと接触することになる。これにより、オイルリング14aとオイルリングガイド15aとの接触面積が低減される。接触面積が低減されるということはオイルリング回転中の接触による抵抗が減少し、オイルリング14aの回転が妨げられることなく、より円滑にオイルリング14a及びオイルリング14bが連れ回るという効果を奏す。
【0047】
オイルリング14b及びオイルリングガイド15bについても同様である。
【0048】
なお、
図6に示すとおり、上述した低頭ボルト16A−1に加え、オイルリングガイド15aに低頭ボルト16C−1が設けられている。この低頭ボルト16C−1に対向するように、上部軸受メタル12の端面には、低頭ボルト16A−2と同様の低頭ボルトが設けられている。このように、オイルリング14aを、周方向において低頭ボルト2点で支持することにより、オイルリング14aは、上述した空間内での軸方向への揺れ動きが防止されオイルリング14aの回転中の挙動が安定する。突起の形状、軸11の回転速度、油や外気の温度等、運転条件によっては、一箇所のみでもオイルリング14aの揺れ動きを防止可能である場合もあるし、一方、二箇所に限らず、三箇所、四箇所といった、複数の箇所にて、オイルリング14aを支持するのが好ましい場合もある。オイルリング14bについても同様である。
【0049】
(第1空間201及び第2空間202の具体的構成)
図8及び
図9は、上述の第1空間201及び第2空間202を説明するための説明図である。
図8は、オイルリング14a及びオイルリングガイド15aを軸11の軸方向から見た外観図である。
図9は、本実施形態に係るオイルリング式すべり軸受1の拡大図であり、(a)〜(d)は、第1空間201を説明する説明図であり、(e)は、第1空間201〜第4空間204を説明する説明図である。
【0050】
第1空間201は、第1部材151と、オイルリング14aの上面とが対向することにより形成される空間である。
図8に示すように、軸11の上部と接触するオイルリング14aの頂部付近のオイルリング14aの上方に、第1空間201がある。
【0051】
第1空間201は、オイルリング14aの回転方向に沿って徐々に狭くなり、最も狭くなる部分が存在する。この最も狭くなる部分を通過すれば、再び、オイルリング14aの上面と第1部材151との距離は広くなる。
【0052】
第1空間201は、オイルリング14aの頂部の回転方向上流側から下流側にわたって存在している。第1空間201において堰き止められた油は、第1空間201における、オイルリング14aの頂部から見て回転方向下流側から主に溢れ出すが、その油の粘性等の特性やオイルリング14aの回転速度等の如何により、オイルリング14aの頂部から見て回転方向上流側からも溢れ出す場合もある。
【0053】
第2空間202は、第2部材152及び上部軸受メタル12の端面と、オイルリング14aの側面とが対向することにより形成される空間を含み、第1空間201とつながり油が溢れ出す空間と溢れ出した油が軸受メタルへ供給される空間とからなる。つまり、第2空間202は、
図8に示すように、第3空間203及び第4空間204からなる。
【0054】
上述の実施形態では、第1空間201が漸減空間となる形態を説明したが、
図10に示すとおり、第1空間201と同様、第2空間202(の一部(第3空間203))がオイルリング14aの回転方向に沿って徐々に狭くなるように、第2部材152をオイルリング14aの側面に対し回転方向下流側に徐々に狭くなるよう、配置してもよい。オイルリング14aの回転により、オイルリング14aの側面に付着した油が第2空間202を通過し始めると、当該油は、回転方向に沿って徐々に狭くなる第2空間202の最も狭い部分を起点として堰き止められる。このようにしてオイルリング14aの側面に付着した油は、堰き止める等の外的な力が働かなければ、オイルリング14aに付着したまま、再び、油槽22内に戻されていた油(の一部)である。第1空間201と同様、第2空間202によっても漸減空間を形成し、油槽22に戻されていた油を下部軸受メタル13に供給することができる。
【0055】
第2空間202は、第3空間203と第4空間204から形成される。第3空間203は、第2空間202のうち、オイルリング14aの側面とオイルリングガイド15aが形成する空間である。第1空間201から漏れ出す油は、周方向への通路を塞がれ軸方向から下方へ落下する。第3空間203は、このような、第1空間201から油の漏れ出す方向に位置しており、第1空間201から漏れ出す油の大半は第3空間203を経て、第4空間204に誘導される。第3空間203から第4空間204への誘導にも第2部材152が大きく寄与している。
【0056】
第4空間204は、第3空間203と下部軸受メタル13(の下部軸受メタル端部13a)とをつなぐ空間である。第1空間201から第3空間203へ溢れ出した油は、第4空間204を経由し、下部軸受メタル端部13aに供給される。
【0057】
なお、第3空間203の、軸11の軸方向における、間隔(オイルリング14aとオイルリングガイド15aとの間隔、オイルリング14aと上部軸受メタル12の端面との間隔)は、
図11に示すように、突起部16a−1及び突起部16a−2によってオイルリング14aが軸方向に位置決めされることにより、それぞれ規定される。
【0058】
(オイルリングガイド15a及びオイルリングガイド15bの具体的構成)
次に、
図12、
図13及び
図14を用いて、オイルリングガイド15aについて説明する。なお、
図7に示すとおり、オイルリングガイド15aとオイルリングガイド15bは、それぞれ、上部軸受メタル12の、互いに対向する各端面に設けられるものであるため、そのため、それらの形状は互いに面対称の関係となる。そこで、オイルリングガイド15a及びオイルリングガイド15bに関する、以下の説明においては、各図を用いて、オイルリングガイド15aのみを説明し、オイルリングガイド15bの説明は繰り返さないものとする。
【0059】
図12は、オイルリングガイド15aの斜視図である。
図12に示すように、オイルリングガイド15aは、第1部材151、第2部材152、第3部材153、第4部材154及び第5部材155から構成されている。
【0060】
第1部材151は、オイルリング14aの上面と対向し、第3部材153は、オイルリング14aの内面(内周面)と対向し、第2部材152及び第4部材154は、それぞれオイルリング14aの側面と対向するように、オイルリングガイド15aは上部軸受メタル12の端面に取り付けられている。オイルリングガイド15aは、第5部材155をボルト等を用いて上部軸受メタル12の端面に固定される。また、第2部材152には低頭ボルト16A−1等を通すためのボルト穴156及びボルト穴157が開口されている。
【0061】
図13及び
図14は、軸11、軸受メタル(上部軸受メタル12、下部軸受メタル13)及びオイルリング14aの拡大図である。なお、
図13及び
図14では、図面の見易さのため、2点鎖線部よりさきのオイルリング式すべり軸受1の他の構成部材については図示を省略している。
図13及び
図14に示すように、軸11が矢印の方向にモータ等によって回転駆動され、軸11の回転駆動に伴って、オイルリング14aが軸11と同じ矢印の方向に回転する。
【0062】
第1部材151はオイルリング14aの上面に対向して配置されオイルリング14aの上面との間に、第1空間201を形成する。第1空間201は、上記回転方向下流側において、最も狭くなっている部分があり、漸減空間を形成する。
【0063】
軸11の回転に伴って、オイルリング14aが連れ回り、油槽22内に溜められた油がオイルリング14aに付着し、オイルリング14aの回転に伴って、軸11の上方に掻き上げられる。
【0064】
このようにしてオイルリング14aに付着した油は、堰き止める等の外的な力が働かなければ、オイルリング14aに付着したまま、再び、下部軸受メタル13の下方の油槽22内に戻されていた油である。第1空間201の最も狭くなる部分で堰き止められた油は、次第に、第1空間201から溢れ出すことになる。つまり、堰き止められることで、従来であればオイルリングに付着したまま、再び、油槽22に戻されていた油を、オイルリング14aの側面を含む第2空間202から下部軸受メタル13に供給することができる。
【0065】
なお、本実施形態では、第2部材152は軸形状にあわせて製作し組み立てられ径方向に僅少なクリアランス(数mm程度)を残す程度まで距離をつめている。こうすることにより、軸方向へ溢れ出そうとする油は数mmのクリアランス部分を除いて、第2部材152で堰き止められるため、軸11と軸受メタルの摺接面へ供給される油量が増加する。
【0066】
第3部材153は、オイルリング14aの内面と対向するように第2部材152からオイルリング14aの軸方向に向けて延長されており、第1空間201から第2空間202に溢れ出した油を下部軸受メタル13に誘導する。オイルリング14aにより掻き上げられた油は、軸11に連れ回るオイルリング14aの回転に起因する遠心力によりオイルリング14aの接線方向の力を持っているため、オイルリング頂部から見て下方にある下部軸受メタル13へ供給されず、油槽22へ飛散し、再び、油槽22内に戻ってしまうものもある。第3部材153は、油受口301(
図15を参照)の上部(本実施形態では真上)に鉛直に配置されている。これにより、第3空間203から回転方向内向きに直角とオイルリング14aの回転方向への接線方向の速度成分をもって飛び出す油は第4空間204にある第3部材153に当たることにより接線方向の速度を失い、周方向への通路を塞がれ下方へ落下する逃げ道しかないため、第4空間204を通って、真下にある下部軸受メタル13にある油受口301に誘導されやすくする。
【0067】
第4部材154は、オイルリング14aの側面と対向する。第4部材154は、オイルリングガイド15aの部材としては回転方向上流側に位置する。オイルリング14aに付着し、下方から上方に向かう油は、第1空間201に進入する以前に、オイルリング14aから剥がれる落ちる場合がある。その場合、オイルリング14aから剥がれ落ちる油は、重力により、そのまま油槽22へ戻り、潤滑油として活用されることはない。そこで、第4部材154は、オイルリング14aと対向する側と逆の方向に外側に反った形状であり、入口を広く設けることにより、油を第1空間201に誘導しやすくする。
【0068】
(下部軸受メタル13の具体的構成)
図15は、上部軸受メタル12及び下部軸受メタル13の斜視図である。
【0069】
下部軸受メタル13は、下部軸受メタル端部13a、下部軸受メタル端部13b及び下部軸受メタル中央部13cから構成されている。下部軸受メタル端部13aはオイルリング14aが軸11に懸架される位置に、下部軸受メタル端部13bはオイルリング14bが軸11に懸架される位置に、それぞれ、配置されている。また、下部軸受メタル中央部13cは上部軸受メタル12と対向するように配置されている。下部軸受メタル端部13a、下部軸受メタル端部13b及び下部軸受メタル中央部13cは、本実施形態では、同一部材で一体成形されたもので説明する。
【0070】
下部軸受メタル端部13bには、油受口301が設けられている。油受口301は、第2空間202(第3空間203と第4空間204)を経由し、誘導されてくる、第1空間201から溢れ出した油を受ける。
【0071】
油受口301は、下部軸受メタル端部13bの、軸11の頂部から見て回転方向下流側の上面に形成されている。油受口301は、回転方向経路302を経由して、下部軸受メタル中央部13cの、軸11との摺接面に形成された第1油供給経路303に連通する。油受口301が受けた油は、軸11の回転に伴って、回転方向経路302を流れ、第1油供給経路303に流れ込む。第1油供給経路303に流れ込んだ油は、軸11との摺接面に行き渡る。
【0072】
また、油受口301は、隠れ線(破線)で表した軸方向経路304に接続されている。軸方向経路304は、上部軸受メタル12と下部軸受メタル中央部13cとが同一部材で一体成形されたものであれば、この一体成形の際、軸受メタルを構成する部材を貫くように形成された経路である。また、上部軸受メタル12と下部軸受メタル中央部13cとが異なる部材から別体で成形されたものであれば、例えば、下部軸受メタル中央部13cの、上部軸受メタル12との接触面に軸方向経路304となる溝を加工すればよい。油受口301が受けた油は、軸方向経路304を経由し第2油供給経路305に流れ込む。第2油供給経路305に流れ込んだ油は第1油供給経路303に流れ込み、上述したように、軸受メタルの、軸11との摺接面に行き渡る。
【0073】
オイルリング14bが下部軸受メタル端部13bの上方に懸架されることで、オイルリング14bが掻き上げた油を、下部軸受メタル端部13bを介して、軸11と軸受メタルの摺接面に供給できると共に、下部軸受メタル端部13bと下部軸受メタル中央部13cとが一体で形成されているため、摺接面との間に段差などが生じず、より円滑に軸11と軸受メタルの摺接面に供給できる。
【0074】
下部軸受メタル端部13aについても同様である。
【0075】
ここで、従来の、上部軸受メタルにオイルリングを収納する溝を設けていた軸受装置では、溝を上部軸受メタルに設けるために、上部軸受メタルの加工が必要となる。この加工の際、上部軸受メタルに歪み等が生じ、その結果、上部軸受メタルの円筒度が低下するといった課題があった。また、上部軸受メタルの加工には多くのコスト、手間が必要であった。
【0076】
これに対し、オイルリングを軸受メタル端面に配置したオイルリング式すべり軸受1であれば、オイルリング14a及びオイルリング14bは上部軸受メタル12の各端面に取り付けられており(すなわち、軸11の軸方向における上部軸受メタル12の外側に配置されており)、これにより、上部軸受メタル12に溝を設けることは不要となる。このため、上述したような、上部軸受メタル12の溝加工が不要となり、その結果、上部軸受メタル12の歪み等による上部軸受メタル12の円筒度の低下を招くことはなく、容易に円筒度を確保できる軸受メタルを製造することができる。
【0077】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【0078】
例えば、上述の実施形態2では、軸受メタル外側にオイルリング14a及びオイルリング14bを懸架する態様で説明したが、軸受メタルへの給油量を増やすために、さらに、上部軸受メタルにオイルリングを収納する溝を設ける態様を採用してもよい。また、オイルリングの数を増やすと軸受メタルへの給油量が増加する。従って、オイルリングの使用は、上述の実施形態の2本に限らず、少ない給油量のときには軸11には1本懸架すればよい場合もあれば軸受メタルにオイルリングを収納する溝を形成したり、軸受メタル外側に2本横並びに懸下して3本以上懸架してもよい場合もある。
【0079】
また、例えば
図11に示すように、オイルリングガイド15aのボルト穴に低頭ボルト16A−1を通し、その頭部である突起部16a−1を空間内に配置したものである。このような突起部16a−1に代えて、
図16に示すように、例えば鋼板やステンレス板、アルミ板などの薄板金属からなるオイルリングガイド15aにプレス機械によって打ち抜き加工を行うことにより、突起部17を設けてもよい。また、レーザ加工等による切り起こしを行うことにより突起部を設けてもよい。なお、上述したような薄板金属に代えて、樹脂を用いてオイルリングガイド15aを成形してももちろん構わない。
【0080】
また、下部軸受メタル端部13a、下部軸受メタル端部13b及び下部軸受メタル中央部13cは、それぞれが異なる部材から別体で成形されたものであってもよい。それぞれが別体で成形されたものである場合、例えば、下部軸受メタル端部13a及び下部軸受メタル端部13bは、それぞれ、下部軸受メタル中央部13cの各端面に設けられたねじ穴に止めねじを螺合する等して、各端面に固定すればよい。また、それぞれが別体で成形される場合、下部軸受メタル中央部13cと上部軸受メタル12とを、同一部材で一体成形してもよい。要は、下部軸受メタル端部13a及び下部軸受メタル端部13bが、オイルリング14a及びオイルリング14bが軸11に懸架される位置にまで、軸11の軸方向に沿って延在すればよい。
【0081】
さらに、下部軸受メタル端部13bは下部軸受メタル中央部13cの形状にあわせたものになっているが、これに限られるものではない。例えば、
図15では下部軸受メタル端部13bは半円となっているが、1/4程度の円弧等であってもよい。ただし、このような場合においても、油が下部軸受メタル端部13bを越えて軸受メタルの外へ漏れるのを防ぐため、下部軸受メタル端部13bの終端306は第1油供給経路303よりも回転方向上流側に位置することが好ましい。下部軸受メタル端部13aについても同様である。
【0082】
最後に、上述の実施形態1及び2では、漸減空間はオイルリングガイドを用いて形成することについて説明したが、オイルリングガイドではなく、ハウジング、軸受メタルの一部を利用して形成してもよく、更にはエアウォールと呼ばれるような空気で同様に機能する空間を形成してもよい。