特許第6548937号(P6548937)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6548937
(24)【登録日】2019年7月5日
(45)【発行日】2019年7月24日
(54)【発明の名称】排水処理方法及び排水処理装置
(51)【国際特許分類】
   C02F 3/10 20060101AFI20190711BHJP
   C02F 3/12 20060101ALI20190711BHJP
【FI】
   C02F3/10 Z
   C02F3/12 B
   C02F3/12 A
【請求項の数】7
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2015-73847(P2015-73847)
(22)【出願日】2015年3月31日
(65)【公開番号】特開2016-193397(P2016-193397A)
(43)【公開日】2016年11月17日
【審査請求日】2018年1月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004400
【氏名又は名称】オルガノ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】特許業務法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】三宅 將貴
(72)【発明者】
【氏名】長谷部 吉昭
【審査官】 佐々木 典子
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2013/151434(WO,A1)
【文献】 特開平04−190897(JP,A)
【文献】 特開平05−261385(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C02F 3/02− 3/10
C02F 3/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
排水を連続式生物処理槽に連続的に流入させながら、前記排水を生物汚泥により生物処理する連続式生物処理工程と、
排水を流入させる流入工程、前記排水を曝気しながら、生物汚泥により生物処理する生物処理工程、前記生物汚泥を沈降させる沈降工程、処理水を排出させる排出工程、を半回分式生物処理槽にて繰り返して行い、グラニュール汚泥を形成する半回分式生物処理工程と、
前記半回分式生物処理槽内の前記グラニュール汚泥を前記連続式生物処理槽に供給する汚泥供給工程と、を備え、
前記汚泥供給工程では、前記半回分式生物処理槽内の液面位において前記流入工程後、前記生物処理工程前の液面位から、前記生物処理工程での曝気により上昇した液面位までの領域の前記グラニュール汚泥の少なくとも一部を、自然流下で前記連続式生物処理槽に供給することを特徴とする排水処理方法。
【請求項2】
前記半回分式生物処理槽内のMLSS濃度が予め設定した値となるように、前記生物処理工程の回数に対する前記汚泥供給工程の回数の割合を調整することを特徴とする特徴とする請求項1に記載の排水処理方法。
【請求項3】
前記半回分式生物処理槽内のMLSS濃度が予め設定した値となるように、前記汚泥供給工程における前記グラニュール汚泥の供給時間を調整することを特徴とする請求項1に記載の排水処理方法。
【請求項4】
前記半回分式生物処理槽内のMLSS濃度が予め設定した値となるように、前記汚泥供給工程中に、前記生物処理工程における前記曝気量を調整することを特徴とする請求項1に記載の排水処理方法。
【請求項5】
前記半回分式生物処理槽内のMLSS濃度が予め設定した値となるように、前記領域の間で、前記半回分式生物処理槽から引き抜くグラニュール汚泥の位置を調整することを特徴とする請求項1に記載の排水処理方法。
【請求項6】
前記半回分式生物処理工程では、前記流入工程を実施しながら、前記排出工程を実施することを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の排水処理方法。
【請求項7】
排水を連続的に流させながら、前記排水を生物汚泥により生物処理する連続式生物処理槽と、
排水を流入させる流入工程、前記排水を曝気しながら、生物汚泥により生物処理する生物処理工程、前記生物汚泥を沈降させる沈降工程、処理水を排出させる排出工程、を繰り返して行い、グラニュール汚泥を形成する半回分式生物処理槽と、
前記半回分式生物処理槽内の前記グラニュール汚泥を前記連続式生物処理槽に供給する汚泥供給手段と、を備え、
前記汚泥供給手段は、前記半回分式生物処理槽内の液面位において前記流入工程後、前記生物処理工程前の液面位から、前記生物処理工程での曝気により上昇した液面位までの領域の前記グラニュール汚泥の少なくとも一部を、自然流下で前記連続式生物処理槽に供給する自然流下方式の流路であることを特徴とする排水処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排水処理方法及び排水処理装置の技術に関する。
【背景技術】
【0002】
有機物等を含有する排水を生物学的に処理する方法として、フロック(生物汚泥)と呼ばれる微生物の集合体を利用した活性汚泥法が用いられてきた。しかし、活性汚泥法では、沈殿池でフロックと処理水を分離する際、フロックの沈降速度が遅いために沈殿池の表面積を非常に大きくしなければならないという問題点を有する場合がある。また、活性汚泥法の処理速度は、槽内の汚泥濃度に依存しており、汚泥濃度を高めることで処理速度を増加させることができるが、汚泥濃度を1500mg/Lから、高くても5000mg/L程度であり、それ以上に増加させようとすると、沈澱池での固液分離が困難となり、処理を維持することができなくなる場合がある。したがって、従来の活性汚泥法の槽容積当たりのBOD処理速度は、0.2〜0.8kg/m/day程度である。
【0003】
嫌気性生物処理では、グラニュールと呼ばれる微生物が緻密に集合し粒状となった集合体(粒状の生物汚泥)を活用することが一般的である。グラニュールは非常に沈降速度が速く、微生物が緻密に集合しているため、処理槽内の汚泥濃度を高くすることができ、排水の高速処理を実現することが可能である。しかし、嫌気性生物処理は、好気性処理(活性汚泥法)に比べて処理対象の排水種が限られていることや、処理水温を30〜35℃に維持する必要がある等の問題点を有する場合がある。また、嫌気性生物処理単独では、処理水の水質が悪く、河川等へ放流する場合には、別途活性汚泥法等の好気性処理を実施することが必要となる場合もある。
【0004】
近年、排水を間欠的に反応槽に流入させる半回分式処理装置を用いて処理を行い、さらに生物汚泥の沈降時間を短縮することで、嫌気性生物汚泥に限られず、好気性生物汚泥でもグラニュール化した生物汚泥(以下、グラニュール汚泥と称する場合がある)を形成できることが明らかとなってきた(例えば、特許文献1〜4参照)。なお、半回分式処理装置では、一般的に、1つの反応槽で(1)排水の流入、(2)排水の生物処理、(3)生物汚泥の沈降、(4)処理水の排出といった4つの工程を経ることによって処理が行われる。
【0005】
上記のように、生物汚泥をグラニュール化させることで、高速処理を達成できるが、半回分式処理装置を例えば下水処理のような大規模排水処理設備に用いる場合には、巨大な排水貯留槽を設置しなければならない場合がある。
【0006】
そこで、排水を連続的に流入させて処理する連続式生物処理装置と、好気性グラニュール汚泥を生成する半回分式生物処理槽とを備え、半回分式生物処理槽から好気性グラニュール汚泥を連続式生物処理装置に供給することで、連続式生物処理装置内の生物汚泥をグラニュール化する処理装置が提案されている(例えば、特許文献5及び6参照)。特許文献5及び6の装置によれば、沈殿池や反応槽を小型化でき、また、原水濃度にもよるが槽容積あたりのBOD処理速度を0.4〜1.6kg/m/dayにすることが可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】国際公開第2004/024638号公報
【特許文献2】特開2008−212878号公報
【特許文献3】特開2009−18263号公報
【特許文献4】特開2009−18264号公報
【特許文献5】特開2007−136367号公報
【特許文献6】特開2008−284427号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、ポンプを利用して、半回分式生物処理槽で生成したグラニュール汚泥を引き抜き、連続式生物処理装置に供給しようとすると、グラニュール汚泥にせん断力等の応力が掛かり、連続式生物処理装置に流入する前に、グラニュール汚泥が破壊される場合がある。
【0009】
そこで、本発明の目的は、半回分式生物処理槽で生成したグラニュール汚泥を連続式生物処理装置に供給する際に、グラニュール汚泥の破壊を抑制することが可能な排水処理方法及び排水処理装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の排水処理方法は、排水を連続式生物処理槽に連続的に流入させながら、前記排水を生物汚泥により生物処理する連続式生物処理工程と、排水を流入させる流入工程、前記排水を曝気しながら、生物汚泥により生物処理する生物処理工程、前記生物汚泥を沈降させる沈降工程、処理水を排出させる排出工程、を半回分式生物処理槽にて繰り返して行い、グラニュール汚泥を形成する半回分式生物処理工程と、前記半回分式生物処理槽内の前記グラニュール汚泥を前記連続式生物処理槽に供給する汚泥供給工程と、を備え、前記汚泥供給工程では、前記半回分式生物処理槽内の液面位において前記流入工程後、前記生物処理工程前の液面位から、前記生物処理工程での曝気により上昇した液面位までの領域の前記グラニュール汚泥の少なくとも一部を、自然流下で前記連続式生物処理槽に供給する排水処理方法である。
【0011】
また、前記排水処理方法において、前記半回分式生物処理槽内のMLSS濃度が予め設定した値となるように、前記生物処理工程の回数に対する前記汚泥供給工程の回数の割合を調整することが好ましい。
【0012】
また、前記排水処理方法において、前記半回分式生物処理槽内のMLSS濃度が予め設定した値となるように、前記汚泥供給工程における前記グラニュール汚泥の供給時間を調整することが好ましい。
【0013】
また、前記排水処理方法において、前記半回分式生物処理槽内のMLSS濃度が予め設定した値となるように、前記汚泥供給工程中に、前記生物処理工程における前記曝気量を調整することが好ましい。
【0014】
また、前記排水処理方法において、前記半回分式生物処理槽内のMLSS濃度が予め設定した値となるように、前記領域の間で、前記半回分式生物処理槽から引き抜くグラニュール汚泥の位置を調整することが好ましい。
【0015】
また、前記排水処理方法において、前記半回分式生物処理工程では、前記流入工程を実施しながら、前記排出工程を実施することが好ましい。
【0016】
また、本発明の排水処理装置は、排水を連続的に流させながら、前記排水を生物汚泥により生物処理する連続式生物処理槽と、排水を流入させる流入工程、前記排水を曝気しながら、生物汚泥により生物処理する生物処理工程、前記生物汚泥を沈降させる沈降工程、処理水を排出させる排出工程、を繰り返して行い、グラニュール汚泥を形成する半回分式生物処理槽と、前記半回分式生物処理槽内の前記グラニュール汚泥を前記連続式生物処理槽に供給する汚泥供給手段と、を備え、前記汚泥供給手段は、前記半回分式生物処理槽内の液面位において前記流入工程後、前記生物処理工程前の液面位から、前記生物処理工程での曝気により上昇した液面位までの領域の前記グラニュール汚泥の少なくとも一部を、自然流下で前記連続式生物処理槽に供給する自然流下方式の流路である。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、半回分式生物処理槽で生成したグラニュール汚泥を連続式生物処理装置に供給する際に、グラニュール汚泥の破壊を抑制することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本実施形態に係る排水処理装置の構成の一例を示す模式図である。
図2図1の排水処理装置で用いられる半回分式生物処理槽の構成の一例を示す模式図である。
図3】本実施形態で用いられる半回分式生物処理槽の構成の他の一例を示す模式図である。
図4】本実施形態に係る排水処理装置の構成の他の一例を示す模式図である。
図5図4に示す排水処理装置に用いられる半回分式生物処理槽の構成の一例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態について説明する。なお、本実施形態は本発明を実施する一例であって、本発明は本実施形態に限定されるものではない。
【0020】
図1は、本実施形態に係る排水処理装置の構成の一例を示す模式図である。図1に示す排水処理装置1は、連続式生物処理槽10、半回分式生物処理槽12、固液分離槽14、排水貯留槽16を備えている。本明細書において、「連続式」とは、回分式に対する方式であり、半回分式のように、排水の流入、生物処理、汚泥の沈降、処理水の排出を一つの反応槽にて繰り返し行う半回分式処理と区別されるものである。また、本実施形態において、連続式は、連続して反応槽に排水を投入して運転する方式に限定されるものではなく、ダイヤフラムポンプ等の往復運動のような原理を利用したポンプにより、反応槽に排水を供給して運転する方式等であってもよいし、反応槽の前段に原水槽を設置し、その原水槽の水位に応じてポンプの稼動−停止を制御(水位が高い場合にはポンプを稼動、水位が低い場合にはポンプを停止)して、反応槽に排水を供給する模擬連続通水方式等であってもよい。
【0021】
図1に示す排水処理装置1は、排水流入ライン20a,20b,20c、処理水排出ライン22a,22b、汚泥返送ライン24、汚泥排出ライン26、生物汚泥供給ライン28を備えている。また、図1に示す排水処理装置1は、第1排水流入ポンプ30、第2排水流入ポンプ32、処理水排出ポンプ34、汚泥返送ポンプ38を備えている。第1排水流入ポンプ30は排水流入ライン20aに設置され、第2排水流入ポンプ32は排水流入ライン20bに設置され、汚泥返送ポンプ38は汚泥返送ライン24に設置されている。生物汚泥供給ライン28にはバルブ36が設けられている。また、汚泥排出ライン26にはバルブ40が設けられている。
【0022】
排水流入ライン20aの一端は排水貯留槽16の排水出口に接続され、他端は連続式生物処理槽10の排水入口に接続されている。また、排水流入ライン20bの一端は排水貯留槽16の排水出口に接続され、他端は半回分式生物処理槽12の排水入口に接続されている。また、排水流入ライン20cの一端は連続式生物処理槽10の排水出口に接続され、他端は固液分離槽14の排水入口に接続されている。処理水排出ライン22aは固液分離槽14の処理水出口に接続されている。汚泥返送ライン24の一端は固液分離槽14の汚泥出口に接続され、他端は連続式生物処理槽10の汚泥入口に接続されている。汚泥排出ライン26は汚泥返送ライン24に接続されている。生物汚泥供給ライン28の一端は半回分式生物処理槽12の汚泥出口に接続され、他端は連続式生物処理槽10の汚泥供給口に接続されている。処理水排出ライン22bの一端は半回分式生物処理槽12の処理水出口に接続され、他端は連続式生物処理槽10の処理水入口に接続されている。
【0023】
図2は、図1の排水処理装置で用いられる半回分式生物処理槽の構成の一例を示す模式図である。図2に示す半回分式生物処理槽12では、(1)排水の流入、(2)排水を曝気しながら、生物汚泥による排水の生物処理、(3)生物汚泥の沈降、(4)処理水の排出といった4つの工程を繰り返すことでグラニュール汚泥が形成される。図2に示す半回分式生物処理槽12は、撹拌装置48、エアポンプ50、散気装置52を備えている。散気装置52はエアポンプ50に接続されており、エアポンプ50から供給される空気が散気装置52を通して槽内に供給される。また、撹拌装置48は、モータの駆動により、モータに取り付けられたシャフトが回転し、シャフトの回転と共にシャフトの先端に取り付けられた撹拌羽根が回転する構造となっている。なお、撹拌装置48は上記構成に制限されるものではない。半回分式生物処理槽12には、排水入口12a、処理水出口12bが設けられ、排水入口12aには排水流入ライン20bが接続され、処理水出口12bには処理水排出ライン22bが接続されている。また、半回分式生物処理槽12には、汚泥出口12cが設けられている。汚泥出口12cは、半回分式生物処理槽12内の液面位Aに配置され、その汚泥出口12cに生物汚泥供給ライン28が接続されている。ここで、半回分式生物処理槽12内の液面位Aは、上記(1)の排水の流入後、上記(2)の排水の曝気が開始される(生物汚泥により排水中の処理対象物質の処理が開始される)前の液面位である。また、図2に示す半回分式生物処理槽12内の液面位Bは、上記(2)の生物処理での曝気により上昇した液面位である。
【0024】
図2に示す排水流入ライン20b及び第2排水流入ポンプ32は、排水を半回分式生物処理槽12に間欠的に供給する半回分式側排水供給装置として機能する。本実施形態では、第2排水流入ポンプ32の稼働・停止により、排水の間欠供給が行われるが、例えば、排水流入ライン20bにバルブ等を設置して、バルブの開閉により排水の間欠供給を行っても良い。
【0025】
図2に示す処理水排出ライン22b及び処理水排出ポンプ34は、処理水を連続式生物処理槽10に供給する処理水供給装置として機能する。なお、適宜処理水排出ライン22bにバルブ等を設置してもよい。本実施形態では、処理水排出ライン22bが連続式生物処理槽10に接続される構成となっているが、これに制限されず、固液分離槽14や、処理水排出ライン22aに接続される構成としてもよい
【0026】
図2に示す生物汚泥供給ライン28は、半回分式生物処理槽12内の液面位Aから液面位Bまでの領域のグラニュール汚泥を自然流下で連続式生物処理槽10に供給する自然流下方式の配管である。すなわち、生物汚泥供給ライン28には、グラニュール汚泥を強制的に送液するためのポンプは設置されない。そして、生物汚泥供給ライン28を上記の自然流下方式とするためには、半回分式生物処理槽12内の液面位Aを連続式生物処理槽10内の液面位と同じかそれ以上となるように、各生物処理槽の高さ位置を調整したり、排水の流入量を調整したりすればよい。
【0027】
本実施形態では、半回分式生物処理槽12内の液面位Aから液面位Bまでの領域のグラニュール汚泥の少なくとも一部を自然流下で連続式生物処理槽に供給すればよい。したがって、半回分式生物処理槽12に設けられる汚泥出口12cは、半回分式生物処理槽12内の液面位Aから液面位Bまでの領域に配置され、その汚泥出口12cに生物汚泥供給ライン28が接続されていればよい。
【0028】
図1に示す排水流入ライン20a及び第1排水流入ポンプ30は、排水を連続式生物処理槽10に供給する連続式側排水供給装置として機能する。また、図1に示す連続式生物処理槽10は、例えば、好気条件下で、且つ半回分式生物処理槽12から供給されたグラニュール等の生物汚泥の存在下で、連続的に流入する排水を生物処理する(例えば、排水中の有機物を二酸化炭素にまで酸化処理する)ものである。
【0029】
本実施形態の固液分離槽14は、生物汚泥を含む水から生物汚泥と処理水とに分離するための分離装置であり、例えば、沈降分離、加圧浮上、濾過、膜分離等の分離装置が挙げられる。
【0030】
本実施形態の排水処理装置1の動作の一例について説明する。
【0031】
図1に示す排水貯留槽16内には、処理対象となる排水が貯留されている。処理対象となる排水は、例えば、食品加工工場排水、化学工場排水、半導体工場排水、機械工場排水、下水、し尿、河川水等の排水が挙げられる。また、排水中には、一般的に生物分解性の有機物等が含まれている。なお、排水中に生物難分解性の有機物が含まれている場合には、予め浮上分離、凝集加圧浮上装置、吸着装置等の物理化学的処理を施し、除去することが望ましい。
【0032】
まず、第1排水流入ポンプ30を稼働させ、排水貯留槽16内の処理対象排水を排水流入ライン20aから連続式生物処理槽10に供給する。連続式生物処理槽10において、好気条件下で、生物汚泥による排水の生物処理を実施する。連続式生物処理槽10で処理された処理水を排水流入ライン20cから固液分離槽14に供給して、処理水から生物汚泥を分離する。汚泥返送ポンプ38を稼働させ、固液分離された汚泥を汚泥返送ライン24から連続式生物処理槽10に返送する。また、バルブ40を開放し、汚泥排出ライン26から固液分離された汚泥を系外へ排出する。また、固液分離槽14内の処理水も処理水排出ライン22aから系外へ排出する。
【0033】
半回分式生物処理槽12を稼働させる場合には、第2排水流入ポンプ32を稼働させ、排水貯留槽16内の処理対象排水を排水流入ライン20bから半回分式生物処理槽12に供給する((1)排水の流入)。半回分式生物処理槽12に排水を所定の量になるまで導入し(図2に示す液面位A)、第2排水流入ポンプ32を停止する。次に、エアポンプ50を稼働し、散気装置52から空気を導入して、半回分式生物処理槽12内に空気の供給を開始すると共に、撹拌装置48を稼働させ、半回分式生物処理槽12内の排水を撹拌することで、排水の生物処理を行う((2)排水の生物処理)。排水の生物処理工程では、半回分式生物処理槽12内のグラニュール汚泥等の生物汚泥が分散した状態となり、また、半回分式生物処理槽12内の液面位が、曝気により、図2に示す液面位Bまで上昇する。
【0034】
排水の生物処理工程を所定時間実施した後、エアポンプ50及び撹拌装置48を停止し、生物処理工程を終了する。生物処理終了後、半回分式生物処理槽12内の生物汚泥を所定時間沈降させ、半回分式生物処理槽12内で、生物汚泥と処理水とに分離する((3)生物汚泥の沈降)。次に 処理水排出ポンプ34を稼働させ、半回分式生物処理槽12内の処理水を処理水排出ライン22bから排出させ((4)処理水の排出)、処理水排出ライン22bから連続式生物処理槽10に供給する。そして、(1)〜(4)の工程を繰り返すことで、半回分式生物処理槽12内の生物汚泥がグラニュール化され、グラニュール汚泥が形成される。
【0035】
半回分式生物処理槽12で形成されるグラニュール汚泥とは、自己造粒が進んだ汚泥のことであり、例えば汚泥の平均粒径が0.2mm以上、もしくは沈降性指標であるSVI5が80mL/g以下の生物汚泥である。また、本実施形態では、グラニュール汚泥が形成されたか否かは、例えば汚泥の沈降性指標であるSVIを測定することにより判断される。具体的には、定期的に半回分式生物処理槽12内の汚泥の沈降性試験によりSVI値を測定し、5分沈降後の体積割合から算出されるSVI5の値が所定値以下(例えば80mL/g以下)となった段階で、グラニュール汚泥が形成されたと判断することが可能である。もしくは、半回分式生物処理槽12内の汚泥の粒径分布を測定し、その平均粒径が所定値以上(例えば0.2mm以上)となった段階で、グラニュール汚泥が形成されたと判断することが可能である(なお、SVI値が低いほど、平均粒径が大きいほど良好なグラニュール汚泥であると判断可能である)。
【0036】
本実施形態では、半回分式生物処理槽12で形成されたグラニュール汚泥を連続式生物処理槽10に供給する場合、排水の生物処理工程による曝気により、半回分式生物処理槽12内の液面位が、図2に示す液面位Bまで上昇する際に、生物汚泥供給ライン28に設けられたバルブ36が開放することで、半回分式生物処理槽12内の液面位Aから液面位Bまでの領域のグラニュール汚泥の少なくとも一部が生物汚泥供給ライン28から連続式生物処理槽10に自然流下で供給される。なお、生物汚泥供給ライン28には、グラニュール汚泥だけではなく、上記領域にある処理水やグラニュール化していない生物汚泥等も通過する。また、上記領域のグラニュール汚泥の少なくとも一部を自然流下で連続式生物処理槽10に供給する限りにおいてはバルブ36を必ずしも設置する必要はないが、グラニュール汚泥の供給タイミングや供給量を調整することができる点で、バルブ36を設置することが好ましい。
【0037】
以上のように、本実施形態では、半回分式生物処理槽12内のグラニュール汚泥を連続式生物処理槽10に自然流下で供給するため、ポンプにより強制的に供給する場合と比較して、グラニュールに掛かるせん断力等の応力が緩和され、グラニュール汚泥の崩壊が抑制される。また、本実施形態では、連続式生物処理槽10に供給するグラニュール汚泥を半回分式生物処理槽12内の液面位Aから液面位Bまでの領域のグラニュール汚泥にしているため、半回分式生物処理槽12内のMLSS濃度が著しく低下することが抑制され、安定したグラニュール汚泥の形成や排水処理が可能となる。また、半回分式生物処理槽12内の液面位Aから液面位Bまでの領域のグラニュール汚泥であれば、連続式生物処理槽10より高い位置に半回分式生物処理槽12を設置しなくても、自然流下で連続式生物処理槽10に供給することが可能となるため、装置の組み立てコスト等の削減が可能となる。また、槽内に沈降状態の汚泥を自然流下で引き抜く場合、濃縮汚泥の汚泥濃度を把握することが困難であることや、濃縮汚泥が配管や水路に容易に蓄積する恐れがあるが、本実施形態のように、汚泥濃度の把握が容易な生物処理工程中の分散状態の汚泥を供給することで、グラニュール汚泥の供給量を容易に制御することが可能であり、また、配管や水路を閉塞させるリスクを減らすことも可能となる。また、自然流下で連続式生物処理槽10にグラニュール汚泥を供給する場合、グラニュール汚泥は非常に沈降しやすく配管や水路に堆積しやすい性質を有するため、配管や水路の閉塞リスクが生じるが、グラニュール汚泥の供給箇所を液面位Aより上にすることで、連続式生物処理槽10への水位差をつけることが可能となり、配管や水路の閉塞リスクの低減が可能となる。
【0038】
図2に示す半回分式生物処理槽12では、生物汚泥供給ライン28に設置したバルブ36を開放している限り、排水の生物処理工程が行われる度に、液面位Aから液面位Bまでの領域のグラニュール汚泥の少なくとも一部が生物汚泥供給ライン28から連続式生物処理槽10に供給される。そして、排水の生物処理工程が行われる度に、上記領域のグラニュール汚泥を連続式生物処理槽10に供給する場合、半回分式生物処理槽12内のMLSS濃度が低下し易く、グラニュール汚泥の形成や排水の処理効率に影響を及ぼす場合がある。そこで、半回分式生物処理槽12内のMLSS濃度が予め設定した値となるように、グラニュール汚泥を生物汚泥供給ライン28から連続式生物処理槽10に供給する回数を調整することが好ましい。例えば、半回分式生物処理槽12内のMLSS濃度が所定値を下回った場合、グラニュール汚泥の供給回数を排水の生物処理工程ごとから、排水の生物処理工程の複数回に1回の割合となるように、生物汚泥供給ライン28に設置したバルブ36の開放タイミングを調整することが好ましい。
【0039】
あるいは、半回分式生物処理槽12内のMLSS濃度が予め設定した値となるように、グラニュール汚泥を生物汚泥供給ライン28から連続式生物処理槽10に供給する時間を調整してもよい。例えば、半回分式生物処理槽12内のMLSS濃度が所定値を下回った場合、生物汚泥供給ライン28に設置したバルブ36の開放時間を短くする等して、半回分式生物処理槽12からのグラニュール汚泥の供給時間を調整することが好ましい。
【0040】
あるいは、半回分式生物処理槽12内のMLSS濃度が予め設定した値となるように、排水の生物処理工程における曝気量を調整してもよい。曝気量を増加させると、半回分式生物処理槽12内の液面位Bが高くなるため、半回分式生物処理槽12からのグラニュール汚泥の排出量が増加し、曝気量を減少させると、半回分式生物処理槽12内の液面位Bが低くなるため、半回分式生物処理槽12からのグラニュール汚泥の排出量が減少する。例えば、半回分式生物処理槽12内のMLSS濃度が所定値を下回った場合、散気装置52から供給される空気量を抑える等して、半回分式生物処理槽12からのグラニュール汚泥の排出量を調整することが好ましい。
【0041】
あるいは、半回分式生物処理槽12内のMLSS濃度が予め設定した値となるように、液面位Aから液面位Bまでの領域の間で、半回分式生物処理槽12から引き抜くグラニュール汚泥の位置を調整してもよい。以下、具体的に説明する。
【0042】
図3は、本実施形態で用いられる半回分式生物処理槽の構成の他の一例を示す模式図である。図3に示す半回分式生物処理槽13において、図1に示す半回分式生物処理槽12と同様の構成については同一の符号を付している。図3に示す半回分式生物処理槽13では、半回分式生物処理槽13内の液面位Aから液面位Bまでの領域の間に、複数の汚泥出口(13a,13b)が設けられ、それぞれに、生物汚泥供給ライン(29a,29b)が接続されている。なお、図3に示す半回分式生物処理槽13では、処理水排出ライン22bを省略している。
【0043】
図3に示す半回分式生物処理槽13では、生物汚泥供給ライン29aのバルブ36aを開放すれば、汚泥出口13aから液面位Bまでの領域のグラニュール汚泥が排出され、生物汚泥位供給ライン29bのバルブ36bを開放すれば、汚泥出口13bから液面位Bまでの領域のグラニュール汚泥が排出される。すなわち、汚泥出口13aより高い位置にある汚泥出口13bに接続された生物汚泥供給ライン29bのバルブ36bを開放した方が、生物汚泥供給ライン29aのバルブ36aを開放した場合より、グラニュール汚泥の排出量が減少する。例えば、半回分式生物処理槽13内のMLSS濃度が所定値を下回った場合、生物汚泥供給ライン29aのバルブ36aを閉じて、生物汚泥供給ライン29bのバルブ36bを開放して、半回分式生物処理槽13からのグラニュール汚泥の排出量を調整することが好ましい。
【0044】
半回分式生物処理槽12のMLSS濃度は、2000〜20000mg/Lの範囲で運転されることが望ましい。MLSS濃度の調整は前述した通りである。また、生物汚泥の健全性(沈降性、活性等)を維持するためには、適切な汚泥負荷に保つことが望ましく、好ましくは0.05〜0.60kgBOD/MLSS/dayの範囲、より好ましくは0.1〜0.5kgBOD/MLSS/dayの範囲に保たれるように、槽内からグラニュール汚泥を引き抜くことが望ましい。
【0045】
半回分式生物処理槽12でのグラニュール汚泥の形成においては、沈降時間の管理と1バッチあたりの排水流入率を適切にコントロールすることが望ましい。攪拌(曝気による攪拌を含む)を停止して汚泥を沈降させる沈降時間は水面から槽底部までの距離と汚泥の沈降速度とから計算され、例えば、4分/mから15分/mの間で設定されることが好ましく、5分/mから10分/mの間で設定されることがより好ましい。また、排水流入率(反応時有効容積に対する流入水の割合)は、例えば20%以上120%以下の範囲であることが好ましく、40%以上120%以下の範囲であることがより好ましい。処理対象物質である有機物濃度が非常に高い状態(流入工程の直後、飽食状態)と有機物濃度が非常に低い状態(生物処理工程の終盤、飢餓状態)を汚泥が繰り返し経験することによって、汚泥のグラニュール化が進行すると考えられているため、グラニュール汚泥を形成する観点では排水流入率は出来るだけ高くとった方が良いが、その一方で、排水流入率を高くすればする程、流入ポンプの容量が大きくなりコスト高となる。そのため、グラニュール汚泥の形成及びコスト削減の点で、排水流入率は40%以上120%以下の範囲が好ましい。
【0046】
半回分式生物処理槽12内のpHは、一般的な生物処理に適する6〜9の範囲に調整することが好ましく、6.5〜7.5の範囲に調整することがより好ましい。pH値が前記範囲外となる場合は酸、アルカリを利用してpH調整を実施することが好ましい。半回分式生物処理槽12においてpH調整を実施する場合、pH値を適切に測定する点で、半回分式生物処理槽12が撹拌されていない状態より、撹拌されている状態でpH調整を実施することが望ましい。半回分式生物処理槽12内の溶存酸素(DO)は、一般的な生物処理に適する0.5mg/L以上とすることが好ましく、1mg/L以上とすることがより好ましい。
【0047】
連続式生物処理槽10では、有機物等を処理対象とした標準活性汚泥法により生物処理を行う形態を例に説明したが、これに限定されるものではなく、例えば、A2O(Anaerobic−Anoxic−Oxic Process)やAO(Anaerobic−Oxic Process)等の栄養塩除去型システム(無酸素処理槽や嫌気処理槽を設置するシステム)、オキシデーションディッチ法、ステップ流入型多段活性汚泥法等のシステムにより生物処理を行う装置であってもよい。また、ポリウレタン、プラスチック、樹脂等の担体の存在下で、生物処理を行う装置であってもよい。
【0048】
連続式生物処理槽10は、例えば槽内の汚泥濃度が2000〜20000mg/Lの範囲で運転されることが望ましい。また、生物汚泥の健全性(沈降性、活性等)を維持するために、汚泥負荷は、0.05〜0.6kgBOD/MLSS/dayの範囲にすることが好ましく、0.1〜0.5kgBOD/MLSS/dayの範囲にすることがより好ましい。
【0049】
連続式生物処理槽10内のpHは、一般的な生物処理に適する6〜9の範囲に調整することが好ましく、6.5〜7.5の範囲に調整することがより好ましい。また、連続式生物処理槽10内の溶存酸素(DO)は、一般的な生物処理に適する0.5mg/L以上とすることが好ましく、1mg/L以上とすることがより好ましい。
【0050】
排水処理装置1では、固液分離槽14を備える形態を例に説明したが、固液分離槽14を必ずしも備える必要はない。しかし、排水処理装置1は、グラニュール汚泥を循環させて、排水の処理効率を向上させる等の点で、連続式生物処理槽10から排出される処理水から生物汚泥を分離する固液分離槽14と、固液分離槽14から排出される生物汚泥(グラニュール汚泥を含む)を連続式生物処理槽10に返送する汚泥返送ライン24を備えることが好ましい。
【0051】
図4は、本実施形態に係る排水処理装置の構成の他の一例を示す模式図である。図4の排水処理装置2において、図1に示す排水処理装置1と同様の構成については同一の符号を付し、その説明を省略する。図4に示す排水処理装置2では、排水流入ライン20aに排水流入ポンプ31及びバルブ44が設けられ、排水流入ライン20bには、バルブ46が設けられている。そして、排水流入ライン20bの一端は、排水流入ポンプ31とバルブ44の間の排水流入ライン20aに接続され、他端は半回分式生物処理槽15の排水入口に接続されている。また、図4に示す排水処理装置2は、半回分式生物処理槽15から排出される処理水及びグラニュール汚泥を連続式生物処理槽10に供給する汚泥処理水供給ライン58を備えている。汚泥処理水供給ライン58には、第3バルブ60が設けられている。汚泥処理水供給ライン58は、半回分式生物処理槽15から排出される処理水を連続式生物処理槽10に供給する処理水供給装置としての機能及びグラニュール汚泥を連続式生物処理槽10に供給する生物汚泥供給装置としての機能を備えている。
【0052】
図5は、図4に示す排水処理装置に用いられる半回分式生物処理槽の構成の一例を示す模式図である。図5に示す半回分式生物処理槽15において、図2に示す半回分式生物処理槽12と同様の構成については同一の符号を付し、その説明を省略する。図5に示す半回分式生物処理槽15では、処理水及びグラニュール汚泥を排出する汚泥処理水出口12dが設けられ、汚泥処理水出口12dに、汚泥処理水供給ライン58の一端が接続されている。汚泥処理水供給ライン58の他端は、連続式生物処理槽10に接続されている。本実施形態では、汚泥処理水出口12dが、液面位Aから液面位Bまでの領域に配置され、その汚泥処理水出口12dに汚泥処理水供給ライン58が接続されていればよい。また、図4に示す半回分式生物処理槽15では、排水が流入する排水入口12aは、汚泥処理水出口12dより低い位置に設けられている。
【0053】
図5に示す半回分式生物処理槽15では、排水の流入と処理水の排出が同時に行われる。すなわち、排水の流入及び処理水の排出、処理対象物質の生物処理、生物汚泥の沈降といった工程が繰り返し行われる。図5に示す半回分式生物処理槽15の動作の一例については、図4に示す排水処理装置2の動作と共に、以下に説明する。
【0054】
まず、排水流入ポンプ31を稼働させると共に、バルブ44を開放し、排水貯留槽16内の処理対象排水を排水流入ライン20aから連続式生物処理槽10に連続的に供給する。連続式生物処理槽10において排水の生物処理を実施した後、処理水を排水流入ライン20cから固液分離槽14に供給する。そして、半回分式生物処理槽15を稼働させる場合には、バルブ46及び第3バルブ60を開放し、排水を排水流入ライン20bから半回分式生物処理槽15に供給すると共に、半回分式生物処理槽15内の処理水を汚泥処理水供給ライン58から連続式生物処理槽10に供給する(排水の流入/処理水の排出)。所定量の処理水を連続式生物処理槽10に供給した後、バルブ46及び第3バルブ60を閉じる。この際、半回分式生物処理槽15内の排水の液面位が、図5に示す液面位Aとなるように、バルブ46及び第3バルブ60の開閉を調節する。次に、撹拌装置48及びエアポンプ50を稼働させ、半回分式生物処理槽15内に空気の供給を開始し、排水の生物処理を行う(生物処理工程)。この際、半回分式生物処理槽15内の液面位は、曝気により、図5に示す液面位Bまで上昇しているため、第3バルブ60を開放することで、半回分式生物処理槽15内の液面位Aから液面位Bまでの領域のグラニュール汚泥を汚泥処理水供給ライン58から連続式生物処理槽10に自然流下で供給することができる。
【0055】
所定時間経過後、エアポンプ50の動作を停止することで空気の供給を停止し、また、撹拌装置48を停止することで、生物処理を終了する。生物処理終了後、半回分式生物処理槽15内の生物汚泥を所定時間沈降させ、半回分式生物処理槽15内で、生物汚泥と処理水とに分離する(生物汚泥の沈降)。そして、再度、排水の流入/処理水の排出工程に移行する。
【0056】
本実施形態では、半回分式生物処理槽15に設けられる排水入口12aが汚泥処理水出口12dより低い位置に配置されているため、半回分式生物処理槽15内に流入した排水が生物処理されることなく半回分式生物処理槽15から排出される(排水のショートカット)ことが抑制される。その結果、半回分式生物処理槽15で効率的にグラニュール汚泥を形成することが可能となる。また、半回分式生物処理槽15内の処理水は、流入してくる排水により押し上げられる形で排出されるため、沈降性の低い生物汚泥(グラニュール化していない汚泥等)を積極的に系外に排出することが可能となる。その結果、沈降性の高い生物汚泥が半回分式生物処理槽15内に残るため、より効率的にグラニュール汚泥を形成することが可能となる。
【実施例】
【0057】
以下、実施例を挙げ、本発明をより具体的に詳細に説明するが、本発明は、以下の実施例に限定されるものではない。
【0058】
実施例では 図5に示す半回分式生物処理槽を用いて、下水の処理を以下の条件で実施した。実施例では、横683mm×縦683mm×高さ4000mmの半回分式生物処理槽を用い、槽底辺から3000mmの高さに汚泥処理水排出ラインを設置し、また、槽底部(底辺より100mmの高さ)に排水流入ラインを設置した(槽有効容積:1.4m)。汚泥処理水排出ラインの排出側に、2つの貯留槽(貯留槽1,2)を設置した。供給した排水には、下水を用いた。
【0059】
排水流入ラインから半回分式生物処理槽内に下水を導入しながら、槽内の処理水を汚泥処理水排出ラインから貯留槽1に排出する工程(工程1)を90分行った。当該工程後の半回分式生物処理槽内の排水の液面位が槽底辺から3000mmの高さとなるように下水の導入量及び処理水の排出量を調整した。次に、半回分式生物処理槽に設置した曝気装置により空気を10m/hの供給量で供給した。空気の供給により、半回分式生物処理槽内の排水の液面位が上昇し、上昇した分のグラニュール汚泥(処理水も含む)を汚泥処理水排出ラインから自然流下で貯留槽2に供給した。空気供給による排水の生物処理工程を240分間行った後(工程2後)、曝気装置を停止して、槽内の汚泥の沈降工程を30分間行った(工程3)。工程1〜3のサイクルを繰り返し行った(4サイクル/日)。
【0060】
工程1〜3の1サイクルで貯留槽2に溜められたグラニュール(処理水も含む)は約36Lであった。また、1日で、半回分式生物処理槽内の汚泥量の約10%が、半回分式生物処理槽から引き抜かれた。
【0061】
また、半回分式生物処理槽内のグラニュール汚泥と、貯留槽2内のグラニュール汚泥の粒度分布をレーザー回折式粒度分布計で測定したところ、ともに200μm程度の平均径を有していた。すなわち、半回分式生物処理槽内のグラニュールが貯留槽に供給される際に、グラニュール汚泥の破壊が起こっていないことが確認された。
【符号の説明】
【0062】
1,2 排水処理装置、10 連続式生物処理槽、12,13,15 半回分式生物処理槽、12a 排水入口、12b 処理水出口、12c,13a,13b 汚泥出口、12d 汚泥処理水出口、14 固液分離槽、16 排水貯留槽、20a,20b,20c 排水流入ライン、22a,22b 処理水排出ライン、24 汚泥返送ライン、26 汚泥排出ライン、28,29a,29b 生物汚泥供給ライン、30第1排水流入ポンプ、31 排水流入ポンプ、32 第2排水流入ポンプ、34 処理水排出ポンプ、36,36a,36b,40,44,46,60 バルブ、38 汚泥返送ポンプ、48 撹拌装置、50 エアポンプ、52 散気装置、58 汚泥処理水供給ライン。
図1
図2
図3
図4
図5