(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記共振部は、前記共振部において前記第1発振信号により生じる電界が最大となる位置に設けられた、前記第1可変リアクタンス素子とリアクタンスの可変範囲が異なる第2リアクタンス素子をさらに有する、
請求項1に記載の発振アレー。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1は、本実施形態に係る発振アレー100の概念を説明するための模式図である。発振アレー100は、発振器1と、発振器2と、発振器3と、発振器4と、共振器5とを備える。発振器1、発振器2、発振器3及び発振器4は、発振回路を有しており、電圧が印加されると共振波動場を発生する。発振器1、発振器2、発振器3及び発振器4は、例えば、基板上に形成されたスロットライン又はストリップラインと、ガンダイオード又はHEMT等を含む負性抵抗回路とにより構成されている。
【0015】
発振器1、発振器2、発振器3及び発振器4は、ほぼ同一の周波数f
0の発振信号を出力する。発振器1、発振器2、発振器3及び発振器4のうちの少なくとも一つが出力する発振信号は、他の発振回路が出力する発振信号と異なる位相で発振する。
【0016】
共振器5は、発振器1、発振器2、発振器3及び発振器4の発振信号の発振周波数f
0で共振する。共振器5は、例えば、周長が発振周波数f
0における波長λと等しいループ状のスロットライン又はマイクロストリップラインを含んで構成されている。共振器5は、発振器1、発振器2、発振器3及び発振器4のうちの少なくとも2つの発振器と電界又は磁界で結合することにより、少なくとも2つの発振器を互いに異なる位相で同期させた状態で、それぞれの発振器が出力する発振信号と共振結合する。なお、本明細書において、「AとBとが結合する」とは、AとBとが電界又は磁界で結合されることをいう。
【0017】
図1に示す例においては、発振器1及び発振器2、並びに発振器3及び発振器4は、それぞれ共振器5の反対側の位置において共振器5と結合する。発振器3及び発振器4は、発振器1が共振器5と結合する位置と、発振器2が共振器5と結合する位置との中間の位置において、共振器5と結合する。発振アレー100がこのような構成を有することにより、発振器1及び発振器2により生じる共振波動場、及び発振器3及び発振器4により生じる共振波動場とそれぞれと結合した共振器5上の共振波動場は互いに直交(縮退)している。
【0018】
また、発振器1と発振器2とは、共振器5を介して同一位相及び同一周波数で相互同期している。発振器3と発振器4とは、共振器5を介して同一位相及び同一周波数で相互同期している。発振器1及び発振器2と、発振器3及び発振器4とは、それぞれ異なる位相の同一周波数で相互同期している。このような構成により、発振アレー100は、それぞれ位相が異なる同一周波数の複数の発振信号を出力することができる。
【0019】
ここで、共振器5は、可変リアクタンス素子を有しており、発振器1及び発振器2から見たリアクタンスと、発振器3及び発振器4から見たリアクタンスとが互いに異なる。したがって、共振器5の可変リアクタンス素子に電圧を印加することにより、発振器1及び発振器2が発生する発振信号と、発振器3及び発振器4が発生する発振信号との間に、可変リアクタンス素子に印加される電圧に応じた位相差を生じさせて、摂動可変にすることができる。
【0020】
図2は、共振器5の構成例を示す図である。
図2(a)に示す共振器10は、長さが波長λに等しいスロットライン11と、スロットライン11に設けられた可変リアクタンス素子12とを有する。可変リアクタンス素子12は、例えばバラクタダイオードであり、外部から印加される電圧に応じて容量が変化する。
【0021】
共振器10においては、可変リアクタンス素子12が、
図1における発振器3と結合する位置y1に設けられている。共振器10は、可変リアクタンス素子12が設けられた位置y1から、スロットライン11に沿ってλ/4だけ離れた位置x1、x2において、発振器1及び発振器2と電界結合する。この場合、可変リアクタンス素子12が設けられた位置y1は、発振器1による電界及び発振器2による電界が最小になる節の位置なので、発振器1及び発振器2に対して、可変リアクタンス素子12はほとんど影響を与えない。
【0022】
これに対して、可変リアクタンス素子12の位置y1は、発振器3による電界の腹が生じる位置なので、発振器3は、可変リアクタンス素子12の容量変化の影響を受ける。その結果、発振器3が出力する発振信号の位相は、発振器1及び発振器2が出力する発振信号の位相に対して、可変リアクタンス素子12の容量摂動に応じた位相だけシフトした状態で安定する。また、発振器4は、共振器10を介して発振器3と相互同期することにより、発振器3と同じ位相の発振信号を出力する。このようにして、発振アレー100が共振器5として共振器10を有することにより、発振器3及び発振器4は、発振器1及び発振器2が出力する発振信号と周波数が同一で、可変リアクタンス素子12に印加される電圧に応じた量だけ位相が異なる発振信号を出力する。
【0023】
図2(b)に示す共振器20は、長さが波長λに等しいMSL(マイクロストリップライン)21と、MSL21に並列接続あるいは直列接続された可変リアクタンス素子22とを有する。可変リアクタンス素子22は、
図2(a)における可変リアクタンス素子12と同様に、
図1における発振器3と結合する位置y1に設けられている。発振アレー100が共振器5として共振器20を有する場合にも、発振器3及び発振器4は、発振器1及び発振器2が出力する発振信号と周波数が同一で、可変リアクタンス素子22に印加される電圧に応じた量だけ位相が異なる発振信号を出力する。
【0024】
図2(c)に示す共振器30は、マイクロストリップ平面回路共振器31と、マイクロストリップ平面回路共振器31に形成されたスリットをまたぐように設けられている可変リアクタンス素子32とを有する。スリットは、発振アレー100における発振器1と発振器2とを結ぶ方向であるX方向が、発振器3と発振器4とを結ぶ方向であるY方向よりも長い長方形をしており、可変リアクタンス素子32は、スリットの短手方向の両側に接続されている。この場合、可変リアクタンス素子32が設けられていることにより、Y方向の高周波電流の流れが阻害される。その結果、発振アレー100が共振器5として共振器30を有する場合にも、発振器3及び発振器4は、発振器1及び発振器2が出力する発振信号と周波数が同一で、可変リアクタンス素子32に印加される電圧に応じた量だけ位相が異なる発振信号を出力する。
【0025】
図2(d)に示す共振器40は、半波長の結合スロットライン共振器41と、可変リアクタンス素子42とを有する。可変リアクタンス素子42は、
図2(d)において実線の矢印で示されているX方向に生じる電界の腹の位置に設けられており、X方向に生じる電界に対応する発振信号の位相を変化させる。
【0026】
他方で、可変リアクタンス素子42が設けられている位置は、
図2(d)において破線の矢印で示されているY方向に生じる電界の節の位置である。したがって、Y方向に生じる電界に対応する発振信号の位相にほとんど影響を与えない。その結果、発振アレー100が共振器5として共振器40を有する場合にも、発振器3及び発振器4は、発振器1及び発振器2が出力する発振信号と周波数が同一で、可変リアクタンス素子42に印加される電圧に応じた量だけ位相が異なる発振信号を出力する。
【0027】
図3は、
図2(a)に示した共振器10の変形例を示す図である。
図3(a)の共振器10aは、
図2(a)の共振器10と同一である。
図3(b)の共振器10bは、可変リアクタンス素子12が設けられた位置y1からスロットライン11に沿ってλ/2だけ離れた位置y2に設けられた可変リアクタンス素子13を有する点で、共振器10aと異なる。可変リアクタンス素子13は、可変リアクタンス素子12と同一の容量を有する。
【0028】
共振器10bが、
図1における共振器5として用いられる場合、発振器3の発振信号が可変リアクタンス素子12の影響を受け、発振器4の発振信号が可変リアクタンス素子13の影響を受けることにより、それぞれ同一の位相だけシフトする。その結果、発振アレー100においては、共振器10bが用いられる場合においても、共振器10aが用いられる場合と同様に、発振器1及び発振器2と発振器3及び発振器4とが、それぞれ位相が異なり周波数が同一の発振信号を出力する。
【0029】
図3(c)の共振器10cは、可変リアクタンス素子12が設けられた位置y1からスロットライン11に沿ってλ/4だけ離れた位置x2、すなわち、
図1に示した発振器1及び発振器2が発生する発振信号により生じる電界が最大となる位置に設けられた可変リアクタンス素子14を有する点で、共振器10bと異なる。可変リアクタンス素子14の容量の可変範囲は、可変リアクタンス素子12の容量及び可変リアクタンス素子13の容量の可変範囲と異なっていてもよい。
【0030】
可変リアクタンス素子14が設けられることにより、可変リアクタンス素子14の容量に応じて、発振器1の発振信号及び発振器2の発振信号は、位相がシフトする。可変リアクタンス素子14の可変容量範囲が、可変リアクタンス素子12及び可変リアクタンス素子13の可変容量範囲と異なる場合、発振器1の発振信号の位相及び発振器2の発振信号の位相を、発振器3の発振信号の位相及び発振器4の発振信号の位相と異なる範囲に調整することができる。
【0031】
図3(d)の共振器10dは、可変リアクタンス素子14が設けられた位置y1からスロットライン11に沿ってλ/2だけ離れた位置x1に設けられた可変リアクタンス素子15を有する点で、共振器10cと異なる。可変リアクタンス素子15の可変容量範囲は、可変リアクタンス素子14の可変容量範囲と等しい。共振器10dが発振アレー100における共振器5として用いられる場合も、共振器10cと同様に動作する。
【0032】
図4は、複数の発振回路を共振器10aと結合させた場合における各発振信号の位相について説明する図である。
図4に示す共振器10aにおいては、図中のx1、x2、y1、y2のいずれかの位置において、発振回路と結合する。
図4における発振器101、発振器102、発振器103、発振器104は、共振器10aと電界結合する発振回路である。また、
図4における発振器112及び発振器114は、共振器10aと磁界結合する発振回路である。
【0033】
図4(a)における共振器10aは、位置x1において発振器101と電界結合し、位置y2において発振器104と電界結合している。発振器104は、共振器10aのスロットライン11上における、発振器101が発生する発振信号により生じる電界が最小となる位置y2において、共振器5と電界結合する。共振器10aにおける位置y1に可変リアクタンス素子12が設けられているので、発振器101が出力する発振信号の位相をθとすると、発振器104が出力する発振信号は、可変リアクタンス素子12の影響を受けることでθに対して、可変リアクタンス素子12に印加される電圧に応じたΔαだけ位相が変化し、θ±Δαになる。Δαの大きさは、可変リアクタンス素子12に印加される電圧、すなわち、スロットライン11の内側に印加される電圧に基づいて制御される。
【0034】
図4(b)における共振器10aは、位置x1において発振器101と電界結合している。また、共振器10aは、スロットライン11における、発振器101が発生する発振信号により生じる磁界が最小となる位置x2において、発振器112と磁界結合している。発振器112が出力する発振信号による電界が最大になる位置y1に可変リアクタンス素子12が設けられているので、発振器101が出力する発振信号の位相をθとすると、発振器112が出力する発振信号は、可変リアクタンス素子12の影響を受けることでθに対してΔαだけ位相が変化し、θ±Δαになる。
【0035】
図4(c)における共振器10aは、位置x1において発振器101と電界結合し、位置x2において発振器102と電界結合し、位置y1において発振器103と電界結合し、位置y2において発振器104と電界結合している。共振器10aにおける位置y1に可変リアクタンス素子12が設けられているので、発振器101が出力する発振信号の位相をθとすると、発振器103が出力する発振信号は、可変リアクタンス素子12の影響を受けることでθに対してΔαだけ位相が変化する。そして、発振器103と相互同期している発振器104の位相は、θ±Δαになる。なお、すべての発振器を共振器10aと磁界結合しても同等の機能が実現できる。
【0036】
図4(d)における共振器10aは、位置x1において発振器101と電界結合し、位置x2において発振器112と磁界結合し、位置y1において発振器103と電界結合し、位置y2において発振器114と磁界結合している。共振器10aにおける位置y1に可変リアクタンス素子12が設けられているので、発振器101が出力する発振信号の位相をθとすると、発振器103が出力する発振信号は、可変リアクタンス素子12の影響を受けることでθに対してΔαだけ位相が変化する。また、発振器114が出力する発振信号の位相をθとすると、発振器112が出力する発振信号は、可変リアクタンス素子12の影響を受けることでθに対してΔαだけ位相が変化する。
【0037】
<第1実施例>
図5は、第1実施例に係る発振アレー200の構成を示す図である。発振アレー200は、複数の発振器201(発振器201−1、発振器201−2、発振器201−3)と、それぞれの発振器201と電界結合する複数のスロットライン共振器50(共振器50−1、共振器50−2)とを有する。
【0038】
発振器201は、細長いループ形状のスロットライン210と、スロットライン210に設けられたガンダイオード211及びガンダイオード212とを有する。スロットライン210の内側に電圧が印加されると、ガンダイオード211及びガンダイオード212が発振することにより、周波数f
0の発振信号が出力される。発振信号の波長をλとした場合に、スロットライン210の周長は3λである。
【0039】
共振器50は、ループ形状のスロットライン51と、スロットライン51に設けられた可変リアクタンス素子52とを有する。スロットライン51の周長はλであり、位置aと位置b、位置bと位置c、位置cと位置d、位置dと位置aのスロットライン51に沿った距離は、それぞれλ/4である。位置bに設けられた可変リアクタンス素子52は、発振器201−1と共振器50とがマイクロストリップライン53を介して電界結合する位置aからλ/4の位置、すなわち電界の節の位置にあるので、発振器201−1が出力する発振信号の位相には影響を与えない。
【0040】
他方、可変リアクタンス素子52は、発振器201−2と共振器50とがマイクロストリップライン54を介して電界結合する位置dからλ/2の位置、すなわち電界の腹の位置にあるので、発振器201−2が出力する発振信号の位相に影響を与える。その結果、発振器201−1が出力する発振信号の位相をθとすると、発振器201−2が出力する発振信号の位相はθ±Δα1になる。Δα1は、共振器50−1のスロットライン51の内側に印加される電圧に応じて定まる。同様の理由で、発振器201−3が出力する発振信号の位相はθ±Δα1±Δα2になる。Δα2は、共振器50−2のスロットライン51の内側に印加される電圧に応じて定まる。そして、複数の発振器201は、それぞれが同一の偏波の電波を放射するアンテナとして機能する。
このように、発振アレー200は、周波数が同一で、共振器50に印加される電圧に応じて位相が異なる複数の発振信号を出力することができる。
【0041】
<第2実施例>
図6は、第2実施例に係る発振アレー300の構成を示す図である。発振アレー300は、複数の発振器301(発振器301−1、発振器301−2)と、発振器302と、複数の共振器60(共振器60−1、共振器60−2)とを有する。共振器60−1は、位置aにおいて発振器301−1と磁界結合し、位置bにおいて発振器302とマイクロストリップライン63を介して電界結合する。また、共振器60−2は、位置aにおいて発振器302と電界結合し、位置bにおいて発振器301−2と磁界結合する。
【0042】
共振器60は、
図2(a)に示した共振器10と同等であり、円形状のスロットライン61と、スロットライン61に設けられた可変リアクタンス素子62とを有する。スロットライン61の周長は、発振器301が出力する発振信号の波長λに等しい。
【0043】
発振器301は、細長いループ形状のスロットライン310と、スロットライン310に設けられたガンダイオード311及びガンダイオード312を有する。発振信号の波長をλとした場合に、スロットライン310の周長は2λである。スロットライン310の内側に電圧が印加されると、ガンダイオード311及びガンダイオード312が発振することにより、周波数f
0の発振信号が出力される。発振器301−1においては、共振器60−1の位置aの近傍において電界が最小になるので、共振器60−1と磁界結合する。
【0044】
発振器302は、細長いループ形状のスロットライン320と、スロットライン320に設けられたガンダイオード321及びガンダイオード322を有する。発振信号の波長をλとした場合に、スロットライン320の周長は3λである。スロットライン320の内側に電圧が印加されると、ガンダイオード321及びガンダイオード322が発振することにより、周波数f
0の発振信号が出力される。発振器302においては、共振器60−1の位置bの近傍で電界が最大になるので、マイクロストリップライン63を介して共振器60−1と電界結合する。
【0045】
発振器301−1、共振器60−1、及び発振器302の関係は、
図4(b)に示した関係と同等であり、発振器301−1が出力する発振信号の位相をθとすると、発振器302が出力する発振信号の位相はθ±Δα1になる。Δα1は、共振器60−1のスロットライン61の内側に印加される電圧に応じて定まる。同様の理由で、発振器301−2が出力する発振信号の位相はθ±Δα1±Δα2になる。Δα2は、共振器60−2のスロットライン61の内側に印加される電圧に応じて定まる。そして、複数の発振器301−1及び発振器301−2は、それぞれが同一の偏波の電波を放射するアンテナとして機能する。このように、発振アレー300は、周波数が同一で、共振器60に印加される電圧に応じて位相が異なる複数の発振信号を出力することができる。
【0046】
<第3実施例>
図7は、第3実施例に係る発振アレー400の構成を示す図である。発振アレー400は、複数の発振器401と、それぞれの発振器401と電界結合する複数の共振器50とを有する。
【0047】
発振器401は、細長いループ形状のスロットライン410と、スロットライン410に設けられた複数のガンダイオードとを有する。スロットライン410の内側に電圧を印加することによりそれぞれのガンダイオードが発振し、矢印で示す位相同期の電界が生じる。その結果、それぞれの発振器401は、スロットアレーアンテナとして機能する。
【0048】
共振器50は、第1実施例に係る発振アレー200における共振器50と同一の構成を有している。共振器50−1は、位置aにおいて発振器401−1とマイクロストリップライン53を介して電界結合し、位置dにおいて発振器401−2とマイクロストリップライン54を介して電界結合する。位置aと可変リアクタンス素子52が設けられている位置bとの距離はλ/4なので、可変リアクタンス素子52は、発振器401−1の発振信号にほとんど影響を与えない。他方、位置dと位置bとの距離はλ/2なので、可変リアクタンス素子52は、発振器401−2の発振信号に影響を与え、発振器401−2の発振信号の位相は、発振器401−1の発振信号の位相に対して、共振器50に印加される電圧に応じたΔα1だけシフトする。
【0049】
同様に、発振器401−3の発振信号の位相は、発振器401−2の発振信号の位相に対してΔα2だけシフトする。そして、複数の発振器401は、それぞれが同一の偏波の電波を放射するアンテナとして機能する。
このようにして、発振アレー400は、周波数が同一で、それぞれ位相を調整可能な複数の発振信号を出力することができる。すなわち、発振アレー400は、それぞれの位相が異なるビームを放射する複数のアンテナを有することと等価なので、ビームの向きが可変のアンテナ機能内蔵型の発振アレーを実現することができる。
【0050】
<第4実施例>
図8は、第4実施例に係る発振アレー500の構成を示す図である。発振アレー500は、
図5に示した発振アレー200と、発振アレー200と電磁結合されるアンテナアレー600とを有する。アンテナアレー600は、発振器201−1と電磁結合されるアンテナアレー601−1、発振器201−2と電磁結合されるアンテナアレー601−2、及び発振器201−3と電磁結合されるアンテナアレー601−3を有する。それぞれのアンテナアレー601−1、601−2、601−3は、互いに電磁結合される、複数の発振器602を有する。発振器602は、
図6に示した発振器301と同一の構成である。
【0051】
発振アレー200とアンテナアレー600とが電磁結合することにより、発振器201−1、発振器201−2、発振器201−3のそれぞれが発生する発振信号に同期した電界が、アンテナアレー601−1、601−2、601−3に発生する。アンテナアレー601−1、601−2、601−3は、発振器201−1、201−2、201−3が発生する電界を、複数の発振器602で同期発振して放射する。そして、複数の発振器602は、それぞれが同一の偏波の電波を放射するアンテナとして機能する。発振器201−1、201−2、201−3が発生する発振信号間の位相差は、それぞれ共振器50−1及び共振器50−2に印加される電圧に基づいて定められる。したがって、発振アレー500は、共振器50−1及び共振器50−2に印加される電圧に基づいて制御される位相差を有する複数のビームそれぞれに同期発振して放射することができる。
【0052】
<第5実施例>
図9は、第5実施例に係る発振アレー700の構成を示す図である。発振アレー700では、直線状のスロットライン701、702、703、704、705、706のそれぞれに複数のガンダイオードが設けられた複数の発振回路が平行に配置されている。
【0053】
また、隣接する2つのスロットラインの端部の近傍には、共振器50が設けられており、各スロットラインと共振器50とは、磁界結合する。具体的には、スロットライン701及びスロットライン702端部の近傍には共振器50−1が設けられており、共振器50−1が、スロットライン701及びスロットライン702と磁界結合する。スロットライン702及びスロットライン703の端部の近傍には共振器50−2が設けられており、共振器50−2が、スロットライン702及びスロットライン703と磁界結合する。以下、同様に、共振器50−3、共振器50−4、共振器50−5が設けられている。
【0054】
共振器50−1と、スロットライン701及びスロットライン702との関係は、
図4(d)における共振器10aと、発振器112及び発振器114との関係に対応する。すなわち、スロットライン701が発生する発振信号の位相をθ、周波数をf
0とすると、スロットライン702が発生する発振信号は、位相がθ±Δαで周波数がf
0である。ここで、Δαは、共振器50−1に印加される制御電圧に基づいて定められる。同様に、それぞれの発振回路が発生する発振信号と隣接する発振回路が発生する発振信号との間には、対応する共振器50に印加される制御電圧に基づいて定められる位相差が生じる。そして、スロットライン701〜706は、それぞれが同一の偏波の電波を放射するアンテナとして機能する。
このように、発振アレー700の構成においても、周波数が同一で、それぞれ位相を調整可能な複数の発振信号を出力することができる。したがって、発振アレー700は、ビーム指向性可変の発振・アンテナ機能複合のRFモジュールとして機能する。
【0055】
[本実施形態における効果]
本実施形態においては、縮退共振波動場と2〜4個の発振波動場を電磁結合するとともに、可変リアクタンス素子などを用いて共振器の縮退を摂動制御することによって、発振器の相互同期と位相差可変制御とを行うことができる。4個までの発振器を電界・磁界結合して制御することが可能なので、2次元発振アレー化も容易である。また、発振系とアンテナ系を一体集積化することにより、2次元ビームステアリング送信モジュールを構築することも容易である。発振器の構造及び数、その電界・磁界インターフェイス、リアクタンス素子の種類、直交共振器の構造の組み合わせにより、柔軟性に富む多種多様な構成を実現することができる。
【0056】
以上、RF素子としてガンダイオードによる実施の形態を用いて本発明を説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されない。上記実施の形態に、多様な変更又は改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。そのような変更又は改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。