(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
大規模太陽光発電所の運用において、安全を確保し、事業収益を向上させるためには、発電所のモニタリングによって運転状況を把握することが必要であるが、発電所の発電量は日射や外気温といった周囲環境条件、及び発電所の広さや構成といった固有の条件に大きく左右されるため、単にモニタリングを行うだけでは運転状況を適切に把握することは困難である。
【0003】
そこで、日射量や外気温といった周囲環境データ、及び発電所の設備情報から発電量を推定する手法が多数考案されているが、十分な精度が得られない。あるいは精度を得るためにできるだけ多くの計測設備を設けて細かく計測することや専門家による分析が必要、といった問題点があった。
【0004】
特許文献1の「発電量予測装置およびその方法」では、太陽光発電システムのそれぞれについて、システム係数と発電実験データから前記太陽光発電システムの設置されたサイトにおける気象状況を推定することにより、推定気象状況値を得る気象状況推定部と、前記推定気象状況値を、各前記太陽光発電システムの設置位置に応じて補正処理することにより補正気象状況値を得る気象状況空間補正部と、前記太陽光発電システム毎に、前記補正気象状況値と前記発電実績データに基づいて、前記システム係数を更新するパラメータ学習部と、前記太陽光発電システム毎に、前記参照気象データと前記システム係数に基づき、発電量予測を行う発電予測部とを備えるものである。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1のものでは、推定を行おうとする発電所の過去の実績データ(日射・外気温・発電量等)から所定の発電量推定モデルのパラメータを学習し、そのパラメータを用いて以降の発電量を推定することにより自律的に推定精度の向上を図るものである。しかし、これを実際に運用するには、種々の問題点がある。
【0007】
第1に、
図13に示すように、太陽光発電所では、積雪・電力系統事故・点検作業等による部分停止、あるいは発電所周辺の構造物・隣接する太陽電池アレイにより影の影響などによって、一定の日射強度があるにもかかわらずそれに見合った発電量が出力されない状況が発生することがある。
【0008】
発電量推定モデルのパラメータを用いる手法においては、そのような状況下のデータは学習に不適当として除外する必要があるが、除外条件の設定次第では、不適当なデータを除外しきれない、あるいは過剰にデータを除外してしまい学習精度が落ちるおそれがある。そのため、どのデータが学習に不適当であるかについて正しく判定を行い、過不足なく除外する必要がある。
【0009】
第2に、パラメータの学習を行うためには、過去(例:発電所開始から一定期間)計測データを用い、前記の不適当データを除外した上で、重回帰分析を行って発電量推定モデルのパラメータを算出する必要がある。
【0010】
そのため、ある程度時間が経過した後、学習対象期間の変更を行おうとした場合、
図14に示すように、過去の必要な計測データを全て保持した上で一から除外及び学習処理を行わなければならず、データ保持及び処理の負担が大きくなる。その負担を軽減するために、何らかの形で必要なデータを抽出・集約しておく必要がある。
【0011】
第3に、不適当データの除外及びパラメータ学習を行い、高精度で発電量の推定ができたとしても、天候が急激に変化した際の日射計と発電所の太陽電池全体への日射のかかり方の違いや、太陽高度が低い早朝や夕方における発電所周辺の障害物や多数並んでいる前方の太陽電池アレイなどの影の影響、あるいは作業による運転停止など、瞬時又は一定期間にわたって推定発電量と実測発電量との間に誤差が発生するケースがある。
【0012】
これらの対策としては、(1)発電設備に不具合があるか否かの良否判定の閾値を広くとる。(2)瞬時判定ではなく、一定期間(例:1日)の総発電量で比較する。といった方法が考えられるが、(1)は判定条件の緩和により、(2)は作業停止など比較的長時間にわたる停止と発電設備の故障等の不具合による発電量低下の区別がつかないことにより、それぞれ判定精度が落ちるため、判定精度を高く(判定閾値を狭く)保ちながら、瞬時のずれや作業停止などを除外した上で適切に良否判定を行える方法が必要である。
【0013】
そこで、この発明は、太陽光発電において、発電に関係する天候条件値、例えば、日射強度や外気温、及び発電量を一定時間ごとに一定期間にわたり計測してこれらをデータとして蓄積し、当該蓄積データから推定パラメータを学習し、発電量を推定するが、前記パラメータ学習における多数の分析対象データを集約されたデータとして保持でき、当該集約データから容易に新たなモデル係数を算出可能な支援システムを提供することを目的としたものである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
請求項1の発明は、太陽光発電の発電量の推定に係る重回帰分析のモデル式に用いる推定パラメータを算出する方法において、
発電に係る発電量、日射強度、外気温、風速を一定時間ごとに一定期間にわたり計測し、これらを各測定データとして蓄積し、前記重回帰分析において、前記各測定データを夫々発電量:y、日射強度:x1、外気温:x2、風速:x3としてy=a1・x1+a2・x2+a3・x3のモデル式とし、前記各測定データを所定の単位毎に前記モデル式に合わせて3行×(3+1)列の中間行列として集約して保持しておき、対象期間について推定パラメータを算出する際、前記所定の単位毎に集約して保持した前記中間行列を前記対象期間について加算し、さらに逆行列計算を行って前記モデル式の推定パラメータを算出する、太陽光発電における発電量推定学習の支援システムとした。
【0016】
請求項
2の発明は、前記所定の単位とは、時間軸、所定の日射強度、所定の発電量、所定の外気温、所定の風速、所定の日射強度の範囲、所定の外気温の範囲、所定の風速の範囲のいずれか、あるいは複数であることを特徴とする、請求項
1に記載の太陽光発電における発電量推定学習の支援システムとした。
【発明の効果】
【0017】
請求項1
、2の発明によれば、
中間行列を用いて集約したデータは任意の単位で設定することが可能であり、時間単位、日単位、月単位等の時間軸で設定したり、外気温の10°C以下、10°〜20°C、20°C以上というようなデータ値の範囲や特定値を基にして設定したりと、種々の単位で設定することができる。そして、前記集約したデータに、新たなデータが加えられた時、上記新たな集約したデータを加算
等することにより、容易に新たなモデル式の係数の推定値を算出することができる。
【0018】
この様に、当該発明を用いれば、前記モデル式の係数を容易にかつきめ細かく分析できる(学習支援できる)。太陽光発電による地域内融通、電力市場におけるリアルタイム市場では、時間帯別の供給量の精度が重要であるが、当該発明によれば、精度の高い発電量推定に大きく寄与できるものである。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】この発明の実施の形態例1の発電状況診断方法の概略構成図である。
【
図2】この発明の実施の形態例1の発電状況診断装置に用いるコンピュータシステムを示す構成図である。
【
図3】この発明の実施の形態例1の発電状況診断方法における時刻による不適当データの除外範囲を示すグラフ図である。
【
図4】この発明の実施の形態例1の発電状況診断方法における日射強度による不適当データの除外範囲を示すグラフ図である。
【
図5】この発明の実施の形態例1の発電状況診断方法における当日学習による不適当データの除外範囲を示すグラフ図である。
【
図6】この発明の実施の形態例1の発電状況診断方法における他発電所パラメータによる不適当データの除外例を示すグラフ図である。
【
図8】この発明の実施の形態例1における重回帰分析処理を示す図である。
【
図9】この発明の実施の形態例1における推定パラメータの季節変動の分析に方法を示す図である。
【
図10】この発明の実施の形態例1における推定パラメータの季節変動の分析結果を示すグラフ図である。
【
図11】この発明の実施の形態例1における天候ごとの推定パラメータの算出方法を示す図である。
【
図12】この発明の実施の形態例1における学習期間変更への対応を示す図である。
【
図13】太陽光発電システムの発電量のパラメータ作成の学習に不適当なデータを示すグラフ図である。
【
図14】太陽光発電システムの発電量のパラメータ作成のための過去データへの遡及を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
(実施の形態例1)
以下、この発明の実施の形態例1の太陽光発電システムの発電状況診断装置及び方法を
図1に基づいて説明する。
【0021】
まず、太陽光発電所の運転開始後、最初の1ヶ月間、当該発電所に設けた日射計や温度計、電流電圧計等により、日射強度、外気温等の発電に関係する天候条件値及び発電量を1分間ごとに一定時間にわたり計測する(ステップS−1)。そしてこれらの計測値をデータとしてコンピュータの記憶部に蓄積する。また、その際、設備情報として当該発電所の太陽光電池のアレイ容量やPCS容量も記憶部に入力する。
【0022】
次に、これらの蓄積データの内の発電量データのうち、後述のパラメータ学習に不適当なデータを除外する(ステップS−2)。これは予め定めた時刻や閾値等と比較して選別する。この処理により残ったデータを基にパラメータの学習を行う(ステップS−3)。これは上記の計測、当該計測によるデータ蓄積、データ除外等を例えば1年間行い、その間にデータ等の更新を逐次行ってパラメータ学習を行う。
【0023】
その後パラメータ学習に基づいて推定パラメータを決定し(ステップS−4)、当該推定パラメータと前記の日射強度や外気温等の発電に関係する天候条件値のデータを勘案して推定発電量を算定する(ステップS−5)。そして、実測の発電量と推定発電量を比較する(ステップS−6)。当該比較の結果、良否判定を行う(ステップS−7)。そして否の場合は警報を出力する。
【0024】
上記の各ステップは計測手段、当該各計測値をデータとして記憶する記憶手段、不適当なデータを除外するデータ除外手段、パラメータ学習手段、推定パラメータ決定手段、推定発電量算出手段、比較手段、良否判定手段及び警報手段とから成るコンピュータシステムを使用して実現できる。そして、これらの各構成手段による上記ステップ作用は、たとえばコンピュータプログラムモジュールとして実現することができ、各プログラムモジュールを含むプログラムをコンピュータシステムにおいて各機能を実現することができる。
【0025】
このコンピュータシステムには、
図2に示すように、プログラム命令を実行するCPU11、メモリ等の主記憶装置12、ハードディスク、磁気ディスク装置又は光磁気ディスク装置等の外部記憶装置13、データ入力装置14、表示装置15及びこれらを相互に接続するバス16を具備している。プログラムは外部記憶装置13に保存されており、CPU11がこのプログラムを主記憶装置12に展開し、展開したプログラムを逐次読み出し実行する。
【0026】
次に、前記不適当なデータを過不足なく除外するために、以下の処理を行う。これを
図3〜
図6に基づいて説明する。
【0027】
(1)太陽高度又は時刻による除外
太陽高度が低く、周辺構造物や隣接する太陽電池アレイが作る影によって発電量の低下が起こっている時刻の発電量データはパラメータ学習には不適当であるため、太陽高度が一定以下の時間帯のデータを除外する。太陽高度は日時情報から算出することも可能であるが、ここでは簡易的は方法として、太陽高度が低い早朝や夕方の時間帯の発電量データを除外することとした。
【0028】
時刻による除外の例を
図3に示す。
図3のグラフの左の縦軸は日射強度(kW/m
2)を、右縦軸が発電量(kW)を表し、横軸は1日の時刻を示す。ここでは、0時から9時未満、15時以降から24までのデータを除外し、9時〜15時のデータのみを残し、パラメータ学習に使用する。
【0029】
(2)日射強度閾値による除外
上記(1)の場合に当てはまらない場合であっても、極端に日射強度が低いと、PCS(パワーコンディショナ)の変換効率が大きく下がる。PCSの空調システム負荷が軽くなるといった理由により、一定以上の日射強度がある場合と異なる条件下での運転となり、パラメータ学習には不適当である。そこで、日射強度閾値(例:0.2kW/m
2)を設け、計測した日射強度が閾値以下の時刻の発電量データを除外することとした。
【0030】
日射強度による除外の例を
図4に示す。
図4のグラフの左の縦軸は日射強度(kW/m
2)を、右縦軸が発電量(kW)を表し、横軸は1日の時刻を示す。ここでは日射強度0.2kW/m
2以上の時のデータのみを残し、パラメータ学習に使用する。この日射強度閾値は、0.2kW/m
2に限らず、0.1kW/m
2又は0.05kW/m
2等任意の閾値で良い。
【0031】
(3)該当日のみを対象とした学習後推定量との比較による除外
上記(1)、(2)の条件に当てはまらない場合であっても、電力系統事故や作業停止によって発電が停止することがあり、その時刻のデータはパラメータ学習には不適当である。
【0032】
そこで、ある一定期間(例:1日)の計測データを対象として、(1)、(2)の条件によって不適当データを除外した上で重回帰分析を行い、算出した発電量推定パラメータを用いて該当期間の発電量を推定し、推定した発電量と実測データとの誤差が一定値(例:推定値の10%)以上乖離していた場合、発電所の運転状態に異常があったものとして該当時刻のデータを除外することとした。
【0033】
当日学習による除外の例を
図5に示す。
図5のグラフの左の縦軸は日射強度(kW/m
2)を、右縦軸が発電量(kW)を表し、横軸は1日の時刻を示す(ただし、右のグラフでは発電量の目盛は省略)。ここでは、右のグラフ図に示すように、推定した発電量と実測した発電量との差が一定値以上乖離しているため、発電所の運転状況に異常があったものとして、14時から16時のデータを除外した。
【0034】
(4)類似の発電所の実績に基づく学習後の推定量との比較による除外
上記(3)の条件によって、一定の期間内において、一時的に発電所の運転に異常があった場合はその時間帯のデータを除外することが可能であるが、太陽電池パネルの初期不良や直流回路の投入忘れ、PCS停止等により、該当期間全体にわたって一様に発電量が低下している場合は、(3)の方法では適不適を判定することができない。
【0035】
そこで、構成的に類似している他の発電所の実績データから算出した推定モデル・パラメータを用いて発電量を推定し、推定した発電量と実測データの誤差が一定値(例:推定値の10%)以上乖離していた場合、発電所の初期状態あるいは運転状態に異常があるものとして、該当データを除外することとした。
【0036】
他の発電所のパラメータ使用による除外の例を
図6に示す。
図6の左のグラフは当該発電所の発電実績であり、PCS停止により、一日中発電量が低下した。
右縦軸が日射強度(kW/m
2)を、右縦軸が発電量(kW)を表し、横軸は1日の時刻を示す。日射量は実線で表し、矢印の上の箇所に頂点を置いた曲線が、日射量に相応して本来発電すべき発電量を示し、矢印の下の箇所に頂点を置いた曲線は実測の発電量を示す。また、
図6の右のグラフは、一番大きい山の曲線が、他の発電所のパラメータを使用した推定発電量、下の重なった山の曲線が当該発電所の実測発電量及び当日学習の推定発電量を示す。
【0037】
以上の対策により、発電所が本来の性能を発揮している時の計測データのみを用い、パラメータ学習を行うことが可能となった。上記(3)及び(4)の除外条件は、良否判定の閾値を調整することによって、予備的な発電状況診断を行い、異常があった場合に警報を出力する機能として使用することも可能である。
【0038】
また、ある発電所(又はその一部)において、「どの時刻のデータがどの条件によって不適当として除外されたか」、「除外条件を変更した時の発電量推定精度の変化」等に関してシステム上で分析を行うことにより、該当箇所におけるデータ除外方法それ自体を自律的に最適化することができる。
【0039】
これは、例えば、「どの時刻のデータが上記(3)又は(4)の条件によって除外されたか」を集計し、その結果に基づいて該当箇所における上記(1)の条件(除外対象となる時刻)を決定する。
【0040】
また、上記(2)の条件(日射強度閾値)を変更した時の発電量推定精度を比較し、もっとも精度の高い結果が出た条件を採用する、等の最適化調整ができる。
【0041】
次に、
図1のパラメータ学習のための過去データへの遡及について説明する。
学習対象期間の変更等に必要な過去データへの遡及に伴う負担を軽減するために、一定期間(例:1日)ごとに前記の不適当データ除外を行った上で、後から遡ってのパラメータ学習が可能な形でデータを集約する。
【0042】
具体的には、通常、データ入力から学習後推定パラメータ出力まで一工程で行われる重回帰分析処理を分割し、処理の途中で生成される行列(これを中間行列と呼ぶ)を保持する。この中間行列は、前記の条件によって不適当データを除外した上で重回帰分析に必要な前処理を施した集約データであり、後から学習期間の変更を行う際には、対象期間内の中間行列を加算した上で行列の割り算を1回行うだけで新規に推定パラメータを出力することが可能である。
【0043】
これにより保持すべきデータ量を大幅に圧縮し(例:1440×3データ→5×6データ)、学習処理の負担を軽減することが可能となった。
【0044】
これをより具体的に示すと、たとえば、
図7に示すように、1年分のデータを用いてパラメータ学習を行う場合、y:発電量、x1:日射強度、 x2:外気温、 x3:風速とした場合、
モデル式:y=a1・x1+a2・x2+a3・x3 となる。
通常の重回帰分析処理では、対象期間の全データ(例:1440分×365日×4データ=約200万データ)を入力し、重回帰分析処理を行い、推定パラメータa1〜a3を出力する。
【0045】
しかしながら、これでは約200万データの中から不適当データを除外したり、また、日射計の故障による発電量の異常低下データを除いたりの学習作業は煩雑となる。そこで、この発明では、
図8に示すように、1日ごとに、処理工程の途中で生成される行列(これを「中間行列」と呼ぶ)を出力して、この形で保持しておく。これにより保持データ量:3行×(3+1)列×365日=4380データとなる。
【0046】
そして、対象期間の中間行列を加算しておき、逆行列計算で、推定パラメータa1〜a3を出力する。出力された推定パラメータa1〜a3は前記の推定パラメータと同じ値になる。
【0047】
この応用例として、
図9に示すように、推定パラメータの季節変動の分析に使用することができる。これは例えば、1月の中間行列のみを加算して、1月の推定パラメータを算出し、これを2月〜12月について同様な処理を行う。
【0048】
これらの算出された推定パラメータを用い、
図10の(a)図は1月〜12月までの日射強度の推定パラメータの変動推移、(b)図は1月〜12月までの外気温の推定パラメータの変動推移を表示する。これにより季節による推定パラメータの変動推移等の特徴分析を容易に行うことができる。
【0049】
また、
図11に示すように、上記データを天候(1日ごとの発電量)毎に分けて推定パタメータを算出することができる。
図11では、好天日(1日の総発電量が一定以上の日)の中間行列の実を加算して、推定パラメータを算出し、また、曇天・雨天日(1日の総発電量が一定未満の日)の中間行列のみを加算して推定パラメータを算出する。これにより、日射強度の影響度は好天時の方が大きく、温度や風速は好天時と曇天・雨天時とで影響の与え方が反対になる傾向があることが分かった。
【0050】
さらに、
図12に示すように、1月〜6月までのデータを用いて推定パラメータを学習する。その後、2月〜7月までのデータを用いて推定パラメータを学習したい場合、2月〜7月までの中間行列のみを加算して推定パラメータを算出する。また、対象期間中の何日かのデータを除外した形でパラメータを学習したい場合、除外したい日の中間行列を除いて、対象期間中の各日のデータを中間行列で加算し、推定パラメータを算出する。この様に、学習期間の変更、対象日の選択除外等を容易に行うことができる。
【0051】
最後に、前記
図1の良否判定について説明する。
天候急変時や早朝・夕方において不可避的に発生する推定発電量と実測発電量の誤差、及び作業停止等による発電量の低下の影響を除去し、高い精度で発電所の運転状況の良否判定を行うために、以下の処理を行う。
【0052】
(1)ある時刻の周囲環境データから、学習した推定パラメータを用いて発電量を推定する。(2)事前に定めた時間帯の範囲内であり、かつ事前に定めた日射強度閾値以上の日射強度があれば「推定外れ判定対象サンプル数」に1を加算する。
【0053】
(3)実測発電量が推定発電量よりも判定閾値(例:推定値の−3%)以上乖離しているかどうかをチェックし、乖離していれば、「判定外れカウント」に1を追加する。(4)一定期間(例:1日)にわたって前記(1)〜(3)の処理を行い、
・「推定外れ判定対象サンプル数」が事前に定めた閾値以上であること。
・「推定外れカウント」÷「推定外れ判定対象サンプル数」が事前に定めた値以上である。
【0054】
これらの両方が成立した場合、該当期間において不具合による発電量低下が発生したと判定し、警報を出力する。
【0055】
前者の閾値を100とした場合、例えば、1分ごとのデータを6時間とり、各発電量データを1サンプルとした時、最高で360サンプルあるが、実際は100サンプル未満であった。その場合は、前者に該当せず、不具合があったとは判定されない。また、後者の値を5割とした場合、「推定外れカウント」が100、「推定外れ判定対象サンプル数」が300の場合、後者に該当せず、不具合があったとは判定されない。
【0056】
これにより、早朝・夕方における推定誤差や作業停止等による一時的な発電量の低下の影響を除去し、不具合による継続的な発電量低下のみを検出できるようになった。