特許第6548983号(P6548983)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6548983ライセンスプレートブラケットの取付構造
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6548983
(24)【登録日】2019年7月5日
(45)【発行日】2019年7月24日
(54)【発明の名称】ライセンスプレートブラケットの取付構造
(51)【国際特許分類】
   B60R 13/10 20060101AFI20190711BHJP
【FI】
   B60R13/10
【請求項の数】6
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2015-147872(P2015-147872)
(22)【出願日】2015年7月27日
(65)【公開番号】特開2017-24656(P2017-24656A)
(43)【公開日】2017年2月2日
【審査請求日】2018年6月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005463
【氏名又は名称】日野自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】石原 裕一郎
(72)【発明者】
【氏名】野口 泰史
(72)【発明者】
【氏名】濱野 耕平
【審査官】 上谷 公治
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−155899(JP,A)
【文献】 特開平03−248940(JP,A)
【文献】 国際公開第2014/109743(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 13/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
クロスメンバに対する車体の内側に位置するセッティングプレートと、
前記クロスメンバに対する前記車体の外側に位置するスペーサと、
前記クロスメンバを挟んだ状態で前記セッティングプレートと前記スペーサとを締結する締結部材と、
前記スペーサに取り付けられるライセンスプレートブラケットとを備え、
前記締結部材は、前記セッティングプレートに一体的に固定されたボルトと前記ボルトに対して前記スペーサ側から締結されるナットとを含み、
前記スペーサは、前記ボルトが挿通する挿通孔を有するベース板と、前記ベース板に対して離れた位置で対向し前記ライセンスプレートブラケットが取り付けられる取付板と、前記ベース板と前記取付板とを連結する連結片とを有し、
前記取付板は、前記挿通孔に挿通された前記ボルトを前記車体の外側に露出する締結用開口部を有し、
前記ライセンスプレートブラケットは、前記スペーサに取り付けられた状態において前記締結用開口部を覆う被覆部を有する
ライセンスプレートブラケットの取付構造。
【請求項2】
前記締結部材が第1締結部材であり、
前記ボルトが第1ボルトであり、
前記ナットが第1ナットであり、
前記挿通孔が第1挿通孔であり、
前記スペーサに一体的に固定された第2ボルトと前記第2ボルトに対して前記セッティングプレート側から締結される第2ナットとで構成されて前記クロスメンバを挟んだ状態で前記セッティングプレートと前記スペーサとを締結する第2締結部材をさらに備え、
前記セッティングプレートは、前記第2ボルトが挿通する第2挿通孔を有する
請求項1に記載のライセンスプレートブラケットの取付構造。
【請求項3】
前記スペーサは、前記ベース板と前記取付板との間の空間を囲む囲繞部を有し、
前記囲繞部は、前記連結片を含むとともに、前記第1締結部材および前記第2締結部材を囲んでいる
請求項2に記載のライセンスプレートブラケットの取付構造。
【請求項4】
前記取付板は、前記取付板に対して前記ライセンスプレートブラケットをリベット接合するリベットが挿入される複数のリベット穴を有し、
前記複数のリベット穴は、前記取付板のうちで前記囲繞部の内側に位置する部位に形成されている
請求項3に記載のライセンスプレートブラケットの取付構造。
【請求項5】
前記複数のリベット穴は、前記クロスメンバに前記スペーサが取り付けられた状態において、前記ライセンスプレートブラケットを取付可能に前記クロスメンバに形成された複数のリベット穴を平行移動した位置に位置する
請求項4に記載のライセンスプレートブラケットの取付構造。
【請求項6】
前記スペーサは、前記ベース板と前記ベース板の延在方向に沿って延びる一対の第1対向片とを有する溝型のベース部材と、前記一対の第1対向片に架け渡された前記取付板を有する取付部材とを備え、
前記取付部材は、前記取付板に前記一対の第1対向片の外側へ突出する鍔部を有して前記第1対向片と前記鍔部とがなす角部で前記ベース部材に接合されているとともに、前記一対の第1対向片の間を通じて対向する一対の第2対向片を有し、
前記一対の第1対向片の各々が前記連結片であり、
前記一対の第1対向片と前記一対の第2対向片とによって前記囲繞部が構成される
請求項3〜5のいずれか一項に記載のライセンスプレートブラケットの取付構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ライセンスプレートブラケットの取付構造に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車においては、その識別番号を示すライセンスプレートが車体の前部および後部に取り付けられている。後部に取り付けられるライセンスプレートについては、ライセンスプレートをライセンスプレートブラケットに取り付けるボルトの一方が封印されることにより不正を防止している。また、ライセンスプレートブラケットの付け替えによるライセンスプレートの不正を防止する必要もある。そのため、例えば特許文献1には、車体に締結される内側ブラケットと、内側ブラケットに締結されるとともにライセンスプレートが取り付けられるライセンスプレートブラケットである外側ブラケットとで構成された支持具が開示されている。
【0003】
特許文献1の支持具において、内側ブラケットは、内側ブラケットを挿通するボルトと車体に溶接されたナットとで構成される締結部材によって車体に締結されており、このボルトの頭部が外側ブラケットで覆い隠される。また、外側ブラケットは、外側ブラケットを挿通するボルトと内側ブラケットに溶接されたナットとで構成される締結部材によって内側ブラケットに締結されており、このボルトの頭部がライセンスプレートによって覆い隠される。こうした構成によれば、ライセンスプレートを取り外さなければ各ボルトを緩めることができないため、車体から支持具を取り外しにくくすることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実公平6−30570号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、トラックといった架装物が搭載される貨物自動車においては、車体フレームを構成するクロスメンバのうちで最後方に位置するエンドクロスメンバにライセンスプレートブラケットが取り付けられる場合がある。しかし、制動灯、尾灯、後尾灯等の位置が架装物によって異なることが少なくないため、例えば後尾灯でライセンスプレートの一部が覆い隠されてしまう場合がある。こうした場合、ライセンスプレートの表示位置を変更する必要があるが、上述した支持具の取付位置を変更する場合にはエンドクロスメンバに対して新たなナットの溶接が必要であり、溶接機の準備等によって移設作業が煩雑なものとなっていた。
【0006】
本発明は、ライセンスプレートの移設時に溶接作業の不要なライセンスプレートブラケットの取付構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するライセンスプレートブラケットの取付構造は、クロスメンバに対する車体の内側に位置するセッティングプレートと、前記クロスメンバに対する前記車体の外側に位置するスペーサと、前記クロスメンバを挟んだ状態で前記セッティングプレートと前記スペーサとを締結する締結部材と、前記スペーサに取り付けられるライセンスプレートブラケットとを備え、前記締結部材は、前記セッティングプレートに一体的に固定されたボルトと前記ボルトに対して前記スペーサ側から締結されるナットとを含み、前記スペーサは、前記ボルトが挿通する挿通孔を有するベース板と、前記ベース板に対して離れた位置で対向し前記ライセンスプレートブラケットが取り付けられる取付板と、前記ベース板と前記取付板とを連結する連結片とを有し、前記取付板は、前記挿通孔に挿通された前記ボルトを前記車体の外側に露出する締結用開口部を有し、前記ライセンスプレートブラケットは、前記スペーサに取り付けられた状態において前記締結用開口部を覆う被覆部を有する。
【0008】
上記構成によれば、セッティングプレートとスペーサとがクロスメンバに締結されると、締結部材のナットに対してベース板と取付板との間を通じて工具をアクセスしようとしても該工具のアクセスが連結片によって阻害されるとともに、たとえ締結部材のナットに工具がアクセスされたとしても工具の操作範囲が連結片によって制限される。また、スペーサにライセンスプレートブラケットが取り付けられると、ナットに対する締結用開口部を通じた工具のアクセスが被覆部によって困難となる。すなわち、ナットの円滑な弛緩作業を行うことができないことから、ライセンスプレートブラケットを容易に取り外すことができない。また、ライセンスプレートブラケットは、セッティングプレートに一体的に固定されたボルトと、スペーサに形成された締結用開口部を通じてボルトに締結されるナットとによってクロスメンバに締結されるスペーサに取り付けられる。すなわち、クロスメンバに対するライセンスプレートブラケットの取付時に溶接作業が不要である。
【0009】
上記ライセンスプレートブラケットの取付構造において、前記締結部材が第1締結部材であり、前記ボルトが第1ボルトであり、前記ナットが第1ナットであり、前記挿通孔が第1挿通孔であり、前記スペーサに一体的に固定された第2ボルトと前記第2ボルトに対して前記セッティングプレート側から締結される第2ナットとで構成されて前記クロスメンバを挟んだ状態で前記セッティングプレートと前記スペーサとを締結する第2締結部材をさらに備え、前記セッティングプレートは、前記第2ボルトが挿通する第2挿通孔を有していてもよい。
【0010】
上記構成によれば、セッティングプレートとスペーサとを締結する2つの締結部材のうちの一方は、セッティングプレート側からナットが締結される。そのため、第2ナットを第2ボルトに締結するための締結用開口部を取付板に形成する必要がないことから、締結用開口部の大きさを小さくすることができる。これにより、取付板に対するライセンスプレートブラケットの取付位置の自由度を向上させることができる。
【0011】
上記ライセンスプレートブラケットの取付構造において、前記スペーサは、前記ベース板と前記取付板との間の空間を囲む囲繞部を有し、前記囲繞部は、前記連結片を含むとともに、前記第1締結部材および前記第2締結部材を囲んでいることが好ましい。
上記構成によれば、第1締結部材および第2締結部材の双方についてベース板と取付板との間に位置する部位を囲繞部で囲むことができる。
【0012】
上記ライセンスプレートブラケットの取付構造において、前記取付板は、前記取付板に対して前記ライセンスプレートブラケットをリベット接合するリベットが挿入される複数のリベット穴を有し、前記複数のリベット穴は、前記取付板のうちで前記囲繞部の内側に位置する部位に形成されていることが好ましい。
【0013】
上記構成によれば、スペーサにライセンスプレートブラケットが取り付けられると、スペーサに対するリベットの係合部分が囲繞部の内側に位置する。そのため、当該係合部分を破壊してスペーサからライセンスプレートブラケットを取り外すことが困難となる。
【0014】
上記ライセンスプレートブラケットの取付構造において、前記複数のリベット穴は、前記クロスメンバに前記スペーサが取り付けられた状態において、前記ライセンスプレートブラケットを取付可能に前記クロスメンバに形成された複数のリベット穴を平行移動した位置に位置することが好ましい。
【0015】
上記構成によれば、例えばライセンスプレートブラケットがクロスメンバにリベット接合されるとライセンスプレートの一部が覆い隠される場合に、セッティングプレートやスペーサ等を追加することでライセンスプレートの表示位置を変更することができる。
【0016】
上記ライセンスプレートの取付構造において、前記スペーサは、前記ベース板と前記ベース板の延在方向に沿って延びる一対の第1対向片とを有する溝型のベース部材と、前記一対の第1対向片に架け渡された前記取付板を有する取付部材とを備え、前記取付部材は、前記取付板に前記一対の第1対向片の外側へ突出する鍔部を有して前記第1対向片と前記鍔部とがなす角部で前記ベース部材に接合されているとともに、前記一対の第1対向片の間を通じて対向する一対の第2対向片を有し、前記一対の第1対向片の各々が前記連結片であり、前記一対の第1対向片と前記一対の第2対向片とによって前記囲繞部が構成されていてもよい。
【0017】
上記構成によれば、取付板が鍔部を有することでベース部材と取付部材との接合を容易に行うことができるとともに、囲繞部を一対の第1対向片および一対の第2対向片によって構成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】一実施形態のライセンスプレートブラケットの取付構造を車体フレームの一部とともに示す分解斜視図である。
図2】セッティングプレートの斜視構造を第1ボルトとともに示す斜視図である。
図3】スペーサの分解構造を第2ボルトとともに示す分解斜視図である。
図4】セッティングプレートとスペーサとがエンドクロスメンバに締結された状態を車体の後方側から見た平面図である。
図5】ライセンスプレートブラケットの斜視構造を示す斜視図である。
図6】スペーサのリベット穴とライセンスプレートブラケットのリベット穴との位置を合わせた状態を車体の後方側から見た平面図である。
図7】支持具を用いてライセンスプレートを取り付けた場合の表示位置の変化を示す平面図である。
図8】変形例におけるスペーサを車体の後方側から見た平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図1図7を参照してライセンスプレートブラケットの取付構造の一実施形態について説明する。
図1に示すように、トラック等の貨物自動車の車体フレーム10は、車体の前後方向に延びる左右一対のサイドフレーム11と左右一対のサイドフレーム11に架け渡されて車体の左右方向に延びる複数のクロスメンバとで構成される。クロスメンバの1つであるエンドクロスメンバ12には支持具20を介して車体の後部に位置するライセンスプレートが取り付けられる。
【0020】
エンドクロスメンバ12は、プレス加工した鋼板で構成され、車体の左右方向に延びるウェブ13と、ウェブ13の上端縁から車体の前方に向かって延びる上側フランジ14と、ウェブ13の下端縁から車体の前方に向かって延びる下側フランジ15とを備える。なお、ウェブ13を基準にすると、ウェブ13の前側が車体の内側であり、ウェブ13の後側が車体の外側である。
【0021】
また、エンドクロスメンバ12のウェブ13には、プレス加工時に形成される貫通孔として、複数の肉抜き穴16、複数のリベット穴17、ならびに、支持具20が取り付けられる第1取付孔18および第2取付孔19が形成されている。
【0022】
なお、複数の肉抜き穴16は、車体フレーム10の軽量化を目的の1つとして設けられる孔である。第1取付孔18および第2取付孔19は、同径の円形孔であり、支持具20とは異なる既存の支持具を介してライセンスプレートがエンドクロスメンバ12に取り付けられる場合に使用される孔である。複数のリベット穴17は、同径の円形孔で構成され、後述するライセンスプレートブラケット23をエンドクロスメンバ12にリベット接合する場合に使用される孔である。
【0023】
支持具20は、ウェブ13の前側に位置するセッティングプレート21と、ウェブ13の後側に位置するスペーサ22と、スペーサ22に対してエンドクロスメンバ12の反対側で固定されるライセンスプレートブラケット23とを備える。
【0024】
セッティングプレート21とスペーサ22とは、第1締結部材26と第2締結部材27とによってウェブ13を挟んだ状態でエンドクロスメンバ12に締結される。第1締結部材26は、セッティングプレート21に一体的に固定されて第1取付孔18を挿通する第1ボルト28と、スペーサ22側から第1ボルト28に締結される第1ナット29とで構成される。また、第2締結部材27は、スペーサ22に一体的に固定されて第2取付孔19を挿通する第2ボルト30と、セッティングプレート21側から第2ボルト30に締結される第2ナット31とで構成される。
【0025】
図2に示すように、セッティングプレート21は、車体の左右方向に延びる平板状の形状を有する。セッティングプレート21の一端部には、例えばプロジェクション溶接によって、第1ボルト28の頭部28Hが接合される。第1ボルト28の軸部28Sは、ウェブ13の第1取付孔18よりも小径である第1軸孔36を通じて車体の後方へ延びている。セッティングプレート21の他端部には、ウェブ13の第2取付孔19と同径の第2挿通孔37が形成されている。第1軸孔36と第2挿通孔37との中心間距離は、ウェブ13における第1取付孔18と第2取付孔19との中心間距離と同じである。すなわち、第1軸孔36と第2挿通孔37は、第1軸孔36の方が小径であり、かつ、第1ボルト28の軸部28Sが第1取付孔18に挿通する状態で第2挿通孔37の中心軸線が第2取付孔19の中心軸線と重なり合うように構成されている。
【0026】
図3に示すように、スペーサ22は、車体の左右方向に延びるベース部材40とベース部材40に接合される取付部材41とによって箱体状の形状に形成される。ベース部材40は、溝型の形状を有し、ウェブ13に後側から面接触するベース板42と、ベース板42の上端縁から車体の後方へ立設された上側対向片43と、ベース板42の下端縁から車体の後方へ立設された下側対向片44とを有する。上側対向片43と下側対向片44とは一対の第1対向片を構成するとともに連結片として機能する。
【0027】
ベース板42には、中央上部のやや右側に、ウェブ13の第1取付孔18と同径の第1挿通孔45が形成されている。ベース板42の左上隅部には、例えばプロダクション溶接によって、第2ボルト30の頭部30Hが接合されている。第2ボルト30の軸部30Sは、ウェブ13の第2取付孔19よりも小径である第2軸孔46を通じて車体の前方へ延びる。第1挿通孔45と第2軸孔46との中心間距離は、第1取付孔18と第2取付孔19との中心間距離と同じである。すなわち、第1挿通孔45と第2軸孔46は、第2軸孔46の方が小径であり、かつ、第2ボルト30が第2取付孔19に挿通する状態で第1挿通孔45の中心軸線が第1取付孔18の中心軸線と重なり合うように構成されている。
【0028】
取付部材41は、ベース板42に対し離れた位置で対向し上側対向片43と下側対向片44とに架け渡される取付板48と、取付板48の右端縁から車体の前方へ延びる右側対向片49と、取付板48の左端縁から車体の前方へ延びる左側対向片50とを有する。右側対向片49と左側対向片50は、一対の第2対向片を構成する。
【0029】
取付板48は、ベース部材40の上側対向片43よりも上方に突出する上側鍔部48aとベース部材40の下側対向片44よりも下方に突出する下側鍔部48bとを有する。取付部材41は、上側鍔部48aと上側対向片43とがなす角部、および、下側鍔部48bと下側対向片44とがなす角部におけるすみ肉溶接によってベース部材40に接合される。ベース部材40に取付部材41が接合されることにより、取付板48は、ベース部材40のベース板42に対して、上側対向片43および下側対向片44の分だけ離れた位置で対向する。また、右側対向片49と左側対向片50は、上側対向片43と下側対向片44との間を通じて対向する。そして、ベース板42と取付板48との間には、第2ボルト30の頭部30H、ならびに、ベース板42から突出する第1ボルト28の軸部28Sおよび第1ボルト28に締結される第1ナット29を収容可能な空間が形成される。
【0030】
取付板48には、中央部よりもやや右寄りの位置に締結用開口部51が形成されている。この締結用開口部51は、第1挿通孔45に挿通された第1ボルト28を車体の後方へ露出する開口である。締結用開口部51は、第1ボルト28に第1ナット29を締結する際に第1ナット29が通されるとともに第1ナット29を締結する際に工具が通される開口であり、例えばトルクレンチのヘッドに取り付けられるソケットが差し入れ可能な大きさに形成される。
【0031】
取付板48には、ライセンスプレートブラケット23をリベット接合するための複数のリベット穴53が形成されている。複数のリベット穴53は、エンドクロスメンバ12における複数のリベット穴17と同じ位置関係を有し、車体の左右方向における締結用開口部51の両側に形成されている。複数のリベット穴53は、スペーサ22がエンドクロスメンバ12に締結されると複数のリベット穴17が下方へ平行移動した位置に位置する。
【0032】
右側対向片49は、取付板48の右端縁のうちで上側対向片43と下側対向片44との間に位置する部位に形成されている。右側対向片49は、取付板48の右端縁から取付板48の面方向に沿って右方へ延びたのち、ベース部材40の右側方を車体の前方に向かって延びる屈曲形状を有する。右側対向片49は、ベース板42寄りの位置に先端部が位置し、取付板48とベース部材40とによって形成される筒状体の右側開口部55のうちで上側対向片43から下側対向片44寄りの位置までの領域を覆う(図4参照)。
【0033】
左側対向片50は、取付板48の左端縁のうちで上側対向片43と下側対向片44との間に位置する部位に形成されている。左側対向片50は、取付板48の左端縁から取付板48の面方向に沿って左方へ延びたのち、ベース部材40の左側方を車体の前方に向かって延びる屈曲形状を有する。左側対向片50は、ベース板42寄りの位置に先端部が位置し、取付板48とベース部材40とによって形成される筒状体の左側開口部56のうちで上側対向片43から下側対向片44寄りの位置までの領域を覆う(図4参照)。
【0034】
図4に示すように、セッティングプレート21とスペーサ22とをエンドクロスメンバ12に締結する際には、まず、セッティングプレート21に接合された第1ボルト28が第1取付孔18を通じてスペーサ22の第1挿通孔45に挿通される。また、スペーサ22に接合された第2ボルト30が第2取付孔19を通じてセッティングプレート21の第2挿通孔37に挿通される。その後、第1ボルト28に対してスペーサ22側から第1ナット29が仮止めされ、第2ボルト30に対してセッティングプレート21側から第2ナット31が仮止めされる。そして、第1ボルト28に対して第1ナット29が所定の締め付けトルクで締結され、また、第2ボルト30に対して第2ナット31が所定の締め付けトルクで締結される。これにより、セッティングプレート21とスペーサ22はウェブ13を挟持した状態でエンドクロスメンバ12に締結される。この際、第1ナット29はスペーサ22の締結用開口部51を通じて第1ボルト28に仮止めされ、また、第1ナット29を締め付ける工具も締結用開口部51を通じてスペーサ22内に差し入れられる。第1ナット29は、スペーサ22の上側対向片43、下側対向片44、右側対向片49、および、左側対向片50によって構成される囲繞部52(図1参照)で囲まれる。また、複数のリベット穴53は、複数のリベット穴17を下方へ平行移動した位置に位置する。
【0035】
図5に示すように、ライセンスプレートブラケット23は、ライセンスプレートが取り付けられる取付面60aを有する枠部60と、スペーサ22に対してリベット接合される底壁部61を有し枠部60の内側縁に一体的に連結された凹部62とを有する。またライセンスプレートブラケット23は、ライセンスプレートを照明する番号灯63が取り付けられる部位として、枠部60の中央上部に一体的に連結された照明取付部64を有する。
【0036】
枠部60には、ライセンスプレートの下部を支持する左右一対の支持部65とライセンスプレートの上部を枠部60に締結するための図示されないボルトが挿通される左右一対の挿通孔66とが凹部62を挟む位置に形成されている。また、枠部60には、取付面60aの裏側の面に、挿通孔66を挿通するボルトが締結される図示されない溶接ナットが設けられている。枠部60は、取付面60aが車体の斜め上方を向くように、下方に位置する部位ほど車体の後方側に位置するように底壁部61に対して傾斜している。
【0037】
凹部62の底壁部61は、平板状の形状を有し、スペーサ22の取付板48に面接触する。底壁部61には、加工時の基準である一対のパイロット穴67と、一対のパイロット穴67を囲むように複数のリベット穴68とが形成されている。複数のリベット穴68は、エンドクロスメンバ12における複数のリベット穴17と同じ位置関係を有する。底壁部61のうちで複数のリベット穴68によって囲まれている部位の一部は、ライセンスプレートブラケット23がスペーサ22に対してブラインドリベット69によってリベット接合されたときにスペーサ22の締結用開口部51を覆う被覆部70である。
【0038】
図6に示すように、上述したライセンスプレートブラケット23は、エンドクロスメンバ12に固定されたスペーサ22に対してリベット接合される。まず、スペーサ22の取付板48に対してライセンスプレートブラケット23の底壁部61を重ね合わせた状態で互いのリベット穴53,68の位置合わせを行う。そして、重なり合ったリベット穴53,68に対して底壁部61側からブラインドリベット69を挿入し、リベッター等を用いてスペーサ22とライセンスプレートブラケット23とをリベット接合する。これによりエンドクロスメンバ12に支持具20が設置される。このとき、スペーサ22の締結用開口部51は、ライセンスプレートブラケット23の被覆部70によって覆われる。
【0039】
図7を参照して上述したライセンスプレートブラケットの取付構造の作用を説明する。
図7において二点鎖線で示すように、エンドクロスメンバ12のリベット穴17に対してライセンスプレートブラケット23がリベット接合された場合に後尾灯71によってライセンスプレート72の一部が覆われてしまうことがある。こうした場合、ライセンスプレートブラケット23がセッティングプレート21およびスペーサ22を介してエンドクロスメンバ12に固定されることにより、後尾灯71に重ならない位置へとライセンスプレート72の表示位置を変更することができる。
【0040】
支持具20では、セッティングプレート21とスペーサ22とが第1および第2締結部材26,27によってエンドクロスメンバ12に締結され、そのスペーサ22に対してライセンスプレートブラケット23がリベット接合される。すなわち、エンドクロスメンバ12に支持具20を設置する際に溶接作業が不要であることから、ライセンスプレート72の移設作業が煩雑になることが抑えられる。
【0041】
また、支持具20では、取付板48の締結用開口部51がライセンスプレートブラケット23の被覆部70によって覆われる。そのため、スペーサ22にライセンスプレートブラケット23がリベット接合されると、締結用開口部51を通じた第1ナット29への工具のアクセスが被覆部70によって阻害される。また、上側対向片43、下側対向片44、右側対向片49、および、左側対向片50で構成される囲繞部52が第1ナット29を四方から囲んでいる。そのため、ベース板42と取付板48との間を通じた第1ナット29への工具のアクセスが阻害される。すなわち、第1締結部材26の弛緩作業が困難であることから、支持具20をエンドクロスメンバ12から容易に取り外すこともできない。
【0042】
上記実施形態のライセンスプレートブラケットの取付構造によれば以下の作用効果が得られる。
(1)ライセンスプレート72の移設時に溶接作業が不要であることから、ライセンスプレートの移設作業が煩雑になることが抑えられる。また、ライセンスプレート72の取付後の支持具20をエンドクロスメンバ12から容易に取り外すこともできない。
【0043】
(2)支持具20は、第1および第2締結部材26,27によってエンドクロスメンバ12に締結されている。そして、第2締結部材27は、スペーサ22に接合された第2ボルト30とセッティングプレート21側から第2ボルト30に締結される第2ナット31とで構成されている。
【0044】
そのため、第2締結部材27については、第1締結部材26のような締結用開口部51をスペーサ22に形成する必要がなく、取付板48に形成される締結用開口部51の大きさを小さくできる。これにより、取付板48にライセンスプレートブラケット23が取り付けられる位置、すなわちライセンスプレート72の表示位置の自由度が向上する。
【0045】
(3)囲繞部52は、第1締結部材26だけでなく第2締結部材27についてもベース板42と取付板48との間に位置する部位を囲んでいる。そのため、例えば飛び石といった飛散物から第1締結部材26だけでなく第2締結部材27も保護することができる。
【0046】
(4)スペーサ22のリベット穴53は、取付板48の部位のうち、上側対向片43、下側対向片44、右側対向片49、および、左側対向片50によって構成される囲繞部52の内側に位置する部位に形成されている。すなわち、スペーサ22に対するブラインドリベット69の係合部分が囲繞部52の内側に位置する。そのため、当該係合部分を破壊してスペーサ22からライセンスプレートブラケット23を取り外すことが困難となる。
【0047】
(5)スペーサ22において、取付部材41の取付板48は、ベース部材40の上側対向片43よりも上方に突出する上側鍔部48aとベース部材40の下側対向片44よりも下方に突出する下側鍔部48bとを有する。これにより、ベース部材40と取付部材41との接合を容易に行うことができる。
【0048】
(6)囲繞部52によって第1ナット29が四方から囲まれることから、ベース板42と取付板48との間を通じたあらゆる方向からの第1ナット29への工具のアクセスが阻害されやすくなる。これにより、第1挿通孔45の形成位置の自由度が向上し、ひいてはライセンスプレート72の表示位置に関する自由度も向上する。
【0049】
(7)ベース部材40のベース板42において、第1挿通孔45は、ベース部材40の延在方向における中央寄りの位置に形成されている。そのため、例えば右側開口部55を通じて第1ナット29に工具がアクセスされたとしても、その工具の操作範囲を効果的に制限することができる。
【0050】
(8)ここで、エンドクロスメンバ12はプレス加工した鋼板によって構成されている。そのため、例えばエンドクロスメンバ12のリベット穴17の位置を変更することによってライセンスプレート72の表示位置を変更することも可能である。しかしながら、リベット穴17の位置を変更するためにプレス加工の金型を新たに製作するとなれば多大なコストが発生する。また、エンドクロスメンバ12に新たなリベット穴を形成することも可能であるが、エンドクロスメンバ12には肉抜き穴16が形成されており、新たなリベット穴を形成したい位置に既に肉抜き穴16が形成されている場合もある。
【0051】
この点、支持具20は、ライセンスプレートブラケット23に加えて、セッティングプレート21とスペーサ22とで構成されている。そして、ライセンスプレートブラケット23がスペーサ22に接合されるため、スペーサ22に形成されるリベット穴53の位置によってライセンスプレート72の表示位置を変更することができる。そのため、既存のエンドクロスメンバ12を追加工することなく利用可能であることから、コストを抑えつつ、かつ、より確実にライセンスプレート72の表示位置を変更することができる。
【0052】
(9)第1軸孔36が第2挿通孔37よりも小径であることにより、セッティングプレート21に第1ボルト28を接合する際の寸法誤差を小さくすることができる。また、第1ボルト28の寸法誤差が小さくなることにより、第2取付孔19に対する第2挿通孔37の位置ずれも小さくすることができる。
【0053】
(10)第2軸孔46が第1挿通孔45よりも小径であることにより、ベース板42に第2ボルト30を接合する際の寸法誤差を小さくすることができる。また、第2ボルト30の寸法誤差が小さくなることにより、第1取付孔18に対する第1挿通孔45の位置ずれも小さくすることができる。
【0054】
なお、上記実施形態は、以下のように適宜変更して実施することもできる。
・囲繞部は、第1締結部材26のうちでベース板42と取付板48との間に位置する部位を囲むものであればよく、例えば、当該部位の周囲に位置する複数の柱状体で構成されてもよい。また、例えば、ベース部材40の上側対向片43および下側対向片44、すなわち連結片のみで構成されてもよい。この場合、第1挿通孔45がベース部材40の延在方向における中央寄りの位置に形成されていることにより、ベース板42と取付板48との間を通る工具の操作範囲を効果的に制限することができる。また、第1ナット29が六角ナットであるとき、第1挿通孔45の中心点に対して上側対向片43の右端と下側対向片44の右端とがなす角度が60°未満となることが好ましい。こうした構成によれば、右側開口部55から差し入れられた工具による弛緩作業を困難にすることができる。
【0055】
・スペーサは、ベース板と、取付板と、ベース板と取付板とを連結する連結片とを有するものであればよく、上記スペーサ22のように、ベース部材40と取付部材41とによって構成されたものに限られない。
【0056】
例えば、図8に示すように、スペーサ80は、ベース板81、取付板82、および、例えば溶接等によってベース板81と取付板82とに接合された筒状の囲繞部83を備えていてもよい。ベース板81および取付板82の各々は囲繞部83よりも外側に突出した鍔部を有しており、囲繞部83はその鍔部となす角部においてベース板81および取付板82に接合される。また、スペーサは、スペーサ80のように、囲繞部83が第1締結部材26のみを囲んでいてもよいし、また、取付板82のうちで囲繞部83よりも外側に位置する部位に複数のリベット穴84を有していてもよい。
【0057】
また図8に示すように、スペーサは、第1締結部材26と同様の構成の締結部材、すなわちセッティングプレートに一体的に固定されたボルトに対してスペーサ側からナットが締結される締結部材のみによって締結されていてもよい。この場合、囲繞部は、少なくとも1つの締結部材を囲んでいればよい。
【0058】
・支持具20は、車体の前部に位置するライセンスプレートを車体に取り付ける支持具に適用されてもよい。
・スペーサ22はライセンスプレートブラケット23によって締結用開口部51が被覆されればよく、リベット穴53の位置は締結用開口部51の周囲ではなく締結用開口部51に対する一側のみに形成されていてもよい。
【0059】
・取付板48に対するライセンスプレートブラケット23の取付は、リベット接合に限らず、例えば、ボルトと取付板48に一体的に固定されたナットとによる締結でもよい。
【符号の説明】
【0060】
10…車体フレーム、11…サイドフレーム、12…エンドクロスメンバ、13…ウェブ、14…上側フランジ、15…下側フランジ、16…肉抜き穴、17…リベット穴、18…第1取付孔、19…第2取付孔、20…支持具、21…セッティングプレート、22…スペーサ、23…ライセンスプレートブラケット、26…第1締結部材、27…第2締結部材、28…第1ボルト、28H…頭部、28S…軸部、29…第1ナット、30…第2ボルト、30H…頭部、30S…軸部、31…第2ナット、36…第1軸孔、37…第2挿通孔、40…ベース部材、41…取付部材、42…ベース板、43…上側対向片、44…下側対向片、45…第1挿通孔、46…第2軸孔、48…取付板、48a…上側鍔部、48b…下側鍔部、49…右側対向片、50…左側対向片、51…締結用開口部、52…囲繞部、53…リベット穴、55…右側開口部、56…左側開口部、60…枠部、60a…取付面、61…底壁部、62…凹部、63…番号灯、64…照明取付部、65…支持部、66…挿通孔、67…パイロット穴、68…リベット穴、69…ブラインドリベット、70…被覆部、71…後尾灯、72…ライセンスプレート、80…スペーサ、81…ベース板、82…取付板、83…囲繞部、84…リベット穴。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8