(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第1モータの回転軸の回転に同期して所定回転角毎にパルス信号を出力するエンコーダと、前記エンコーダからの前記パルス信号をカウントするエンコーダカウンタと、をさらに備え、
前記負荷検出部は、前記エンコーダカウンタによりカウントされた前記パルス信号から、前記切断対象物に対する前記キャリッジの相対的な現在カット速度を算出し、前記キャリッジの目標カット速度と前記キャリッジの現在カット速度との差分である速度偏差量を前記第1モータの前記負荷として算出するように構成されている、請求項1〜6のいずれか1項に記載のカッティング装置。
前記第1モータの回転軸の回転に同期して所定回転角毎にパルス信号を出力するエンコーダと、前記エンコーダからの前記パルス信号をカウントするエンコーダカウンタと、をさらに備え、
前記負荷検出部は、前記エンコーダカウンタによりカウントされた前記パルス信号から、前記切断対象物に対する前記キャリッジの相対的な現在位置を算出し、前記キャリッジの目標位置と前記キャリッジの現在位置との差分である位置偏差量を前記第1モータの前記負荷として算出するように構成されている、請求項1〜6のいずれか1項に記載のカッティング装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、従来のカッティング装置によれば、カット圧やカット速度を自由に設定することができるものの、切断対象物の厚さや硬さに応じて適切なカット圧を設定することが難しかった。例えば、厚い切断対象物を切断する際には、作業者の感覚や経験に基づいてカット圧を高めに設定したり、カット速度を遅くしたりしていた。または、逆にカット圧を一定以上高くすることなく、1回目の処理で切断対象物の厚み方向の半分の部分を切断し、2回目または2回目以降の処理で当該厚み方向の残りの部分を切断するという、いわゆる二度切り等を行っていた。その結果、非常に手間がかかり、作業効率が低下していた。
【0005】
本発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、その目的は、作業効率を向上することが可能なカッティング装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係るカッティング装置は、切断対象物を切断するカッターと、前記カッターを前記切断対象物に対して接近および離反が可能なように支持するホルダと、前記ホルダを支持し、前記切断対象物に対して相対移動可能なキャリッジと、前記キャリッジに連結され、前記キャリッジを前記切断対象物に対して相対移動させる第1モータと、前記ホルダに連結され、前記ホルダに対して少なくとも前記切断対象物に対して接近する方向の力を与える第2モータと、前記第1モータおよび前記第2モータを制御する制御装置と、を備え、前記第2モータは、前記第2モータに供給される供給信号により前記ホルダに与える前記力の大きさが変更可能に構成され、前記制御装置は、前記第1モータの負荷を検出する負荷検出部と、予め定められた前記第1モータの負荷と前記第2モータへの供給信号との関係である第1関係を記憶した記憶部と、前記負荷検出部により検出された前記第1モータの負荷と前記記憶部に記憶された前記第1関係とに基づいて前記第2モータに前記供給信号を供給することにより、前記切断対象物が前記カッターから受けるカット圧を制御するカット圧制御部と、を備えている。
【0007】
本発明に係るカッティング装置によれば、負荷検出部によって検出された第1モータの負荷と第1関係とに基づいて、カット圧制御部により第2モータに適切な供給信号が供給される。これにより、カッターのカット圧を適切に調整することができる。これによって、切断対象物を一度で切断することができる。これにより、二度切りや三度切り等を行う必要がなくなる。したがって、作業者の手間を減らすことができ、作業効率を向上することができる。
【0008】
本発明の好ましい一態様によれば、前記記憶部に記憶された前記第1関係
の前記供給信号は、前記第1モータの負荷が第1の負荷のときには、前記切断対象物が前記カッターから第1のカット圧を受けるように設定され、前記第1モータの負荷が前記第1の負荷よりも大きな第2の負荷のときには、前記切断対象物が前記カッターから前記第1のカット圧よりも大きな第2のカット圧を受けるように
設定されている。
【0009】
上記態様によれば、第1モータの負荷が大きくなるにつれ、カット圧を大きくすることができる。これにより、カット圧が不適切な状態となることを防ぐことができ、切断対象物を一度で切断することができる。
【0010】
本発明の好ましい一態様によれば、
前記記憶部に記憶された前記第1関係の前記供給信号は、前記第1モータの負荷が第1閾値以下であるときには、
前記切断対象物が前記カッターから受けるカット圧が一定に設定され、
前記第1モータの前記負荷が前記第1閾値よりも大きいときには、当該負荷が大きくなるにつれ前記カット圧を大きくするよう
に設定されている。
【0011】
上記態様によれば、負荷検出部により検出された前記負荷が第1閾値以下であるときには、カット圧が適切であると判断することができる。また、負荷検出部により検出された前記負荷が第1閾値よりも大きいときには、前記負荷に応じてカット圧を適正な状態にすることが可能となる。
【0012】
本発明に係るカッティング装置は、切断対象物を切断するカッターと、前記カッターを前記切断対象物に対して接近および離反が可能なように支持するホルダと、前記ホルダを支持し、前記切断対象物に対して相対移動可能なキャリッジと、前記キャリッジに連結され、前記キャリッジを前記切断対象物に対して相対移動させる第1モータと、前記ホルダに連結され、前記ホルダに対して少なくとも前記切断対象物に対して接近する方向の力を与える第2モータと、前記第1モータおよび前記第2モータを制御する制御装置と、を備え、前記第2モータは、前記第2モータに供給される供給信号により前記ホルダに与える前記力の大きさが変更可能に構成され、前記制御装置は、前記第1モータの負荷を検出する負荷検出部と、予め定められた前記第1モータの負荷と前記第1モータへの供給信号との関係である第2関係を記憶した記憶部と、前記負荷検出部により検出された前記第1モータの負荷と前記記憶部に記憶された前記第2関係とに基づいて前記第1モータに前記供給信号を供給することにより、前記切断対象物に対するカット速度を制御するカット速度制御部と、を備えている。
【0013】
本発明に係るカッティング装置によれば、負荷検出部によって検出された第1モータの負荷と第2関係とに基づいて、カット速度制御部により第1モータに適切な供給信号が供給される。これにより、切断対象物に対するカット速度を適切に調整することができる。これによって、切断対象物を一度で確実に切断することができる。そのため、二度切りや三度切り等を行う必要がなくなる。したがって、作業者の手間を減らすことができ、作業効率を向上することができる。
【0014】
本発明の好ましい他の一態様によれば、前記記憶部に記憶された前記第2関係
の前記供給信号は、前記第1モータの負荷が第1の負荷のときには、前記切断対象物に対する前記カット速度が第1の速度となるように設定され、前記第1モータの負荷が前記第1の負荷よりも大きな第2の負荷のときには、前記切断対象物に対する前記カット速度が前記第1の速度よりも小さな第2の速度となるように
設定されている。
【0015】
上記態様によれば、第1モータの負荷が大きくなるにつれ、切断対象物に対するカット速度を小さくすることができる。これにより、切断対象物に対してキャリッジを低速で移動させ、切断対象物を一度で確実に切断することができる。
【0016】
本発明の好ましい一態様によれば、
前記記憶部に記憶された前記第2関係の前記供給信号は、前記第1モータの負荷が第2閾値以下であるときには、
前記切断対象物に対する前記カット速度が一定に設定され、
前記第1モータの前記負荷が前記第2閾値よりも大きいときには、当該負荷が大きくなるにつれ前記カット速度を小さくするよう
に設定されている。
【0017】
上記態様によれば、負荷検出部により検出された前記負荷が第2閾値以下であるときには、切断対象物に対するカット速度が適切であると判断することができる。また、負荷検出部により検出された前記負荷が第2閾値よりも大きいときには、切断対象物に対するカット速度を低下させるように第1モータへの供給信号を制御することができる。これにより、切断対象物を一度で切断することができる。
【0018】
本発明の好ましい他の一態様によれば、前記第1モータの前記回転軸の回転に同期して所定回転角毎にパルス信号を出力するエンコーダと、前記エンコーダからの前記パルス信号をカウントするエンコーダカウンタと、をさらに備え、前記負荷検出部は、前記エンコーダカウンタによりカウントされた前記パルス信号から、前記切断対象物に対する前記キャリッジの相対的な現在カット速度を算出し、前記キャリッジの目標カット速度と前記キャリッジの現在カット速度との差分である速度偏差量を前記第1モータの前記負荷として算出するように構成されている。
【0019】
上記態様によれば、キャリッジの目標カット速度に対する現在カット速度のずれ量である速度偏差量を複雑な計算を行うことなく算出することができる。このような速度偏差量を第1モータの負荷情報として用いることができる。
【0020】
本発明の好ましい他の一態様によれば、前記第1モータの前記回転軸の回転に同期して所定回転角毎にパルス信号を出力するエンコーダと、前記エンコーダからの前記パルス信号をカウントするエンコーダカウンタと、をさらに備え、前記負荷検出部は、前記エンコーダカウンタによりカウントされた前記パルス信号から、前記切断対象物に対する前記キャリッジの相対的な現在位置を算出し、前記キャリッジの目標位置と前記キャリッジの現在位置との差分である位置偏差量を前記第1モータの前記負荷として算出するように構成されている。
【0021】
上記態様によれば、キャリッジの目標位置に対する現在位置のずれ量である位置偏差量を複雑な計算を行うことなく算出することができる。このような位置偏差量を第1モータの負荷情報として用いることができる。
【0022】
本発明の好ましい他の一態様によれば、前記制御装置は、切断初期に前記切断対象物に対して前記キャリッジを加速させて相対移動させ、前記負荷検出部は、前記加速時における前記速度偏差量または前記位置偏差量を前記第1モータの前記負荷として算出するように構成されている。
【0023】
上記態様によれば、加速時における速度偏差量および位置偏差量はそれぞれ変化が大きくなる傾向がある。このため、加速時の速度偏差量または位置偏差量を用いることにより、誤検知を防ぎ、上記カット圧や切断対象物に対するカット速度を高精度で調整することができる。
【0024】
本発明の好ましい他の一態様によれば、前記切断対象物を搬送するグリッドローラを備え、前記第1モータは、前記キャリッジを第1方向に移動させるキャリッジモータと、前記グリッドローラを回転させることにより前記切断対象物を前記第1方向に垂直な第2方向に移動させるフィードモータと
の少なくとも一方を含む。
【0025】
上記態様によれば、キャリッジモータの回転動作およびフィードモータの回転動作を制御することによって、切断対象物に対するキャリッジの相対移動を調整することができる。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、作業効率を向上することが可能なカッティング装置を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、図面を参照しながら、本発明の一実施形態について説明する。
図1に示すように、本実施形態に係るカッティング装置10は、紙やシート等の切断対象物50を任意の形状に切断する装置である。なお、切断対象物50はシート状の媒体に限らず、ガラス板等の板状体であってもよい。
【0029】
本明細書においては、後述するカッティングヘッド30が移動する方向を「主走査方向」と適宜に称することとする。ここでは、主走査方向は切断対象物50の幅方向に対応する。また、主走査方向と垂直な方向を「副走査方向」と適宜に称することとする。以下の説明では、左、右、上、下とは、カッティング装置10の正面にいる作業者から見た左、右、上、下をそれぞれ意味することとする。また、カッティング装置10から上記作業者に近づく方を前方、遠ざかる方を後方とする。図面中の符号F、Re、L、R、U、Dは、それぞれ前、後、左、右、上、下を表す。図面中の符号Yは主走査方向を表す。本実施形態では、主走査方向Yは左右方向である。図面中の符号Xは副走査方向を表す。副走査方向Xは主走査方向Yに対し垂直な方向である。本実施形態では、副走査方向Xは前後方向である。ただし、上記方向は便宜的に定めたものに過ぎず、限定的に解釈すべきものではない。
【0030】
図1に示すように、カッティング装置10は、本体部12と、左サイドカバー16Lおよび右サイドカバー16Rと、中央壁18と、プラテン20と、グリッドローラ22と、ピンチローラ24と、ガイドレール26と、ベルト28と、カッティングヘッド30と、を備えている。
【0031】
本体部12は、スタンド14に支持されている。本体部12は、主走査方向Yに延びている。左サイドカバー16Lは、本体部12の左端に設けられている。右サイドカバー16Rは、本体部12の右端に設けられている。本体部12には上下方向に延びる中央壁18が設けられている。中央壁18は、主走査方向Yに延びている。中央壁18は、左サイドカバー16Lと右サイドカバー16Rとを連結する。右サイドカバー16Rには、操作パネル17が設けられている。操作パネル17には、カッティング装置10の状態等が表示される。なお、操作パネル17は左サイドカバー16Lに設けられていてもよい。
【0032】
本体部12には、切断対象物50を支持するプラテン20が配置されている。プラテン20には、円筒状のグリッドローラ22が設けられている。グリッドローラ22は、その上面部を露出させた状態でプラテン20に埋設されている。グリッドローラ22は、フィードモータ69(
図5参照)によって駆動される。グリッドローラ22は、切断対象物50を副走査方向Xに移動させる送り機構である。グリッドローラ22の上方には、複数のピンチローラ24が配置されている。ピンチローラ24は、グリッドローラ22に対向して配置されている。ピンチローラ24は、切断対象物50の厚さに応じて上下方向の位置を設定可能に構成されている。ピンチローラ24とグリッドローラ22との間に切断対象物50が挟み込まれるようになっている。グリッドローラ22およびピンチローラ24は、切断対象物50を狭持しながら切断対象物50を副走査方向Xに搬送する。
【0033】
ガイドレール26は中央壁18に設けられている。ガイドレール26は、プラテン20の上方に配置されている。ガイドレール26は、プラテン20と平行に配置されている。ガイドレール26は、主走査方向Yに延びている。ガイドレール26は、前方に突出した係合部27を有している。
【0034】
ベルト28は、中央壁18の壁面に平行して配置されている。ベルト28は、主走査方向Yに延びている。ベルト28は無端ベルトである。ベルト28の右端および左端には、図示しないプーリが巻き掛けられている。一方のプーリは、当該プーリを駆動するキャリッジモータ66(
図5参照)に接続されている。キャリッジモータ66が回転すると上記プーリが回転し、ベルト28が主走査方向Yに走行する。キャリッジモータ66の回転により、キャリッジ32を切断対象物50に対して相対移動させることができる。ベルト28はガイドレール26と共に移動機構52を構成する。
【0035】
カッティングヘッド30は、ガイドレール26に沿って主走査方向Yに移動可能である。カッティングヘッド30は、切断対象物50を切断する。
図2に示すように、カッティングヘッド30は、キャリッジ32と、カッター38と、円筒型のボイスコイルモータ40と、カバー44(
図3参照)と、を備えている。
【0036】
キャリッジ32は、後述のホルダ35を支持し、切断対象物50に対して相対移動可能となっている。キャリッジ32は、ガイドレール26(
図1参照)に摺動自在に装着されている。キャリッジ32は、ベルト28に固定されている。ベルト28が駆動すると、キャリッジ32はガイドレール26に沿って主走査方向Yに移動する。キャリッジ32は、カッター38およびボイスコイルモータ40を主走査方向Yに移動させる。キャリッジ32は、カッター38とボイスコイルモータ40とを支持するキャリッジベース33を備えている。キャリッジ32は、ガイド34(
図1参照)と、固定プレート37とを備えている。
図1に示すように、ガイド34はガイドレール26の係合部27に係合する。ガイド34は、ガイドレール26に対して摺動可能である。
図2に示すように、固定プレート37はベルト28に固定される。ガイド34とキャリッジベース33とは互いにボルト等によって固定されている。キャリッジ32はガイドレール26に支持されている。
【0037】
図2に示すように、ボイスコイルモータ40は、キャリッジ32に搭載されている。ボイスコイルモータ40は、キャリッジベース33に支持されている。ボイスコイルモータ40は、ホルダ35に連結され、当該ホルダ35に対して少なくとも切断対象物50(
図1参照)に対して接近する方向の力を与える。本実施形態では、ボイスコイルモータ40は、ホルダ35に対し上向きまたは下向きの力を与える。ボイスコイルモータ40は、当該ボイスコイルモータ40に供給される供給信号(すなわち、電流信号)によりホルダ35に与える力の大きさが変更可能に構成されている。なお、ボイスコイルモータ40には周知のものを利用することができる。ボイスコイルモータ40の構成は周知であるので、その詳細な説明は省略する。
【0038】
カッター38はキャリッジ32に搭載されている。カッター38は、上下方向に移動可能なホルダ35に保持されている。ホルダ35は、カッター38を切断対象物50(
図1参照)に対して接近および離反が可能なように支持する。カッター38は、ホルダ35の左方に配置されている。ホルダ35とキャリッジベース33との間には、ばね46が設けられている。ホルダ35は、ばね46によって上向きの付勢力を受けている。ホルダ35は、ボイスコイルモータ40と連結している。ホルダ35は、ボイスコイルモータ40から上向きの力を受けると上方に移動する。ホルダ35は、ボイスコイルモータ40から下向きの力を受けると下方に移動する。これにより、ホルダ35に保持されたカッター38は、ボイスコイルモータ40の駆動力を受けて上下方向に移動するようになっている。
【0039】
図1に示すように、カバー44はキャリッジ32に取り付けられている。
図3に示すように、カバー44は、カッティングヘッド30、キャリッジ32、キャリッジベース33、ボイスコイルモータ40、およびばね46を覆っている。カバー44は、ホルダ35の一部を覆っている。カッター38は、カバー44により覆われていない。このようなカバー44を設けることにより、切断時に生じる切粉がカバー44の内方に進入することを防ぐことができる。
【0040】
図4に示すように、カッター38は、棒状に延び、ホルダ35(
図3参照)に保持された本体部38aと、本体部38aの下端に固定された刃38bと、本体部38aに設けられたフランジ部38cとを備えている。切断対象物50(
図1参照)は、カッター38の刃38bにより切断される。上述したように、カッター38は、キャリッジ32により主走査方向Yに移動する。したがって、カッター38の刃38bは、主走査方向Yに移動するようになっている。
【0041】
図1に示すように、カッティング装置10において、切断対象物50を切断する際には、ボイスコイルモータ40(
図2参照)によりカッター38の刃38b(
図4参照)の上下方向の位置を調整する。そして、刃38bの上下方向の位置が調整し終われば、キャリッジモータ66(
図5参照)により刃38bを主走査方向Yに移動させつつ、上述のグリッドローラ22により切断対象物50を副走査方向Xに移動させる。これにより、切断対象物50が所定の形状に切断される。
【0042】
次に、カッティング装置10の制御系統について説明する。
図5に示すように、カッティング装置10は調整部60を備えている。この調整部60は、カット圧CP(
図11(a),(b)参照)が適切でないときに、カット圧CPの調整や、切断対象物50に対するカット速度CV(カッター38(
図1参照)の相対速度)の調整を行う。カット圧CPとは、カッター38により切断対象物50に対してどれだけの圧力をかけてカッティングを行うかを示す値をいう。調整部60は、右サイドカバー16R(
図1参照)内に配置されている。調整部60は、左サイドカバー16L(
図1参照)内に配置されてもよい。調整部60は、指令値バッファ61と、位置偏差量算出部62と、速度偏差量算出部63と、電流制御部64と、PWMアンプ65と、エンコーダカウンタ68と、エンコーダカウンタ71と、記憶部81と、を備えている。
【0043】
指令値バッファ61は、図示しない制御装置から、キャリッジ32の目標カット速度の情報および目標位置の情報を受け取る。キャリッジ32の目標カット速度とは、カッティング装置10において予め設定された速度であって、切断対象物50に対するキャリッジ32の相対速度である。また、キャリッジ32の目標位置とは、予め設定された上記設定速度から算出される位置であって、切断対象物50に対するキャリッジ32の相対位置である。
【0044】
キャリッジ32の目標カット速度は、例えば切断初期の目標カット速度、初期経過後の目標カット速度、および切断終期の目標カット速度に分類される。詳細は後述するが、本実施形態では、切断初期の目標カット速度は増加するように設定され、初期経過後の目標カット速度は一定値に設定され、切断終期の目標カット速度は減少するように設定される。作業者は、カッティング装置10の操作パネル17(
図1参照)により、キャリッジ32の目標カット速度を設定することができる。なお、上記目標位置は、設定された目標カット速度から算出される。指令値バッファ61は、位置偏差量算出部62に対してキャリッジ32の目標カット速度の情報および目標位置の情報を与える。
【0045】
図5に示すように、キャリッジモータ66にはエンコーダ67が内蔵されている。すなわち、キャリッジモータ66はサーボモータである。エンコーダ67は、キャリッジモータ66の回転軸の回転に同期して所定回転角毎にパルス信号を発生する。エンコーダ67は、前記パルス信号をエンコーダカウンタ68に与える。同様に、フィードモータ69にはエンコーダ70が内蔵されている。すなわち、フィードモータ69はサーボモータである。エンコーダ70は、フィードモータ69の回転軸の回転に同期して所定回転角毎にパルス信号を発生する。エンコーダ70は、前記パルス信号をエンコーダカウンタ71に与える。なお、エンコーダ67,70においてパルス信号を発生させる方法は従来より公知であるため、説明を省略する。
【0046】
エンコーダカウンタ68は、エンコーダ67から与えられたパルス信号をカウントする。エンコーダカウンタ68は、カウントした前記パルス信号の情報を位置偏差量算出部62および速度偏差量算出部63に与える。同様に、エンコーダカウンタ71は、エンコーダ70から与えられたパルス信号をカウントする。エンコーダカウンタ71は、カウントした前記パルス信号の情報を位置偏差量算出部62および速度偏差量算出部63に与える。
【0047】
位置偏差量算出部62は、エンコーダカウンタ68からの上記パルス信号およびエンコーダカウンタ71からの上記パルス信号から、カッター38(
図1参照)の現在位置を算出する。カッター38の現在位置は、当該カッター38の初期位置を0として取得する。位置偏差量算出部62は、指令値バッファ61より与えられたキャリッジ32の目標位置と現在位置との差分である位置偏差量IH(
図8(a),(b)参照)を算出する。位置偏差量算出部62は、前記目標位置から現在位置を減算することにより位置偏差量IHを算出する。位置偏差量IHは正の値または負の値をとる。このように、位置偏差量算出部62は、キャリッジ32の目標位置に対する現在位置のずれ量を算出するものである。例えば、位置偏差量IHが正の値(目標位置よりも現在位置が小)でかつその値が比較的大きいときには、切断対象物50に対するカット圧CPが不足していることになる。ここで、カット圧CPが足りている状態だと、カッター38の刃38bは、切断時に切断対象物50から反発力を受けても、
図7(a)に示すように、切断対象物50の厚み方向の全ての部分を切断することができる。これに対して、カット圧CPが不足した状態だと、カッター38の刃38bは、切断時に切断対象物50からの反発力に十分対抗することができず、
図7(b)に示すように、切断対象物50の厚み方向の一部分のみしか切断することができない。また、カット圧CPが不足した状態だと、設定された目標位置まで到達すべきカッター38が、本来切断すべき量を切断しきれずに、上記目標位置の手前で留まる状態が生じていることがある。位置偏差量IHが0に近いときには、カット圧CPがほぼ適切な値ということになる。位置偏差量IHが0となるときには、カット圧CPが適切な値ということになる。位置偏差量算出部62は、指令値バッファ61から取得したキャリッジ32の目標カット速度の情報を速度偏差量算出部63に与える。なお、指令値バッファ61がキャリッジ32の目標カット速度の情報を速度偏差量算出部63に直接与えるようにしてもよい。
【0048】
速度偏差量算出部63は、エンコーダカウンタ68からの上記パルス信号およびエンコーダカウンタ71からの上記パルス信号から、カッター38の現在位置を算出し、単位時間当たりの位置情報を算出することによりカッター38の現在カット速度を算出する。速度偏差量算出部63は、キャリッジ32の目標カット速度と現在カット速度との差分である速度偏差量SH(
図8(a),(b)参照)を算出する。速度偏差量算出部63は、前記目標カット速度から現在カット速度を減算することにより速度偏差量SHを算出する。速度偏差量SHは正の値または負の値をとる。このように、速度偏差量算出部63は、キャリッジ32の目標カット速度に対する現在カット速度のずれ量を算出するものである。例えば、速度偏差量SHが正の値(目標カット速度よりも現在カット速度が小)でかつその値が比較的大きいときには、切断対象物50に対するカット圧CPが不足していることになる。上述のように、カット圧CPが不足した状態だと、設定された目標位置まで到達すべきカッター38が、本来切断すべき量を切断しきれずに、上記目標位置の手前で留まる状態が生じていることがある。速度偏差量SHが0に近いときには、カット圧CPがほぼ適切な値ということになる。速度偏差量SHが0となるときには、カット圧CPが適切な値ということになる。ただし、例えばカット圧CPが異常に強過ぎる場合、カッター38の刃先が切断対象物50を切断してなお、当該切断対象物50を置いた金属等の台に押し当てられ、カッター38の移動を妨げている状態になっていることが考えられる。これは、正常なカット動作を逸脱した状態であるので、ここでは除外することとする。速度偏差量算出部63は、算出した速度偏差量SHの情報を電流制御部64に与える。なお、上述した位置偏差量算出部62および速度偏差量算出部63は、それぞれ、ソフトウェアによって構成されていてもよいし、ハードウェアによって構成されていてもよい。上記各部をソフトウェアにより構成する場合には、上記各部は、コンピュータプログラムがコンピュータに読み込まれることにより、当該コンピュータによって機能的に実現されるようになっている。
【0049】
次に、電流制御部64は、速度偏差量算出部63から取得した速度偏差量SHに応じて、PWMアンプ65を介してボイスコイルモータ40に供給する電流の値を調整する。ボイスコイルモータ40に対する供給電流を大きくすれば、当該ボイスコイルモータ40に発生する駆動力が大きくなるため、カッター38のカット圧CPは増加する。ボイスコイルモータ40に対する供給電流を小さくすれば、当該ボイスコイルモータ40に発生する駆動力が小さくなるため、上記カット圧CPは減少する。詳細は後述する。電流制御部64は、公知の例えばカレントループ等のインタフェース回路で構成される。PWMアンプ65は、電流制御部64にフィードバックした信号と目標電流値との差分に基づいて信号を変調する。
【0050】
記憶部81は、キャリッジモータ66の負荷とボイスコイルモータ40への供給信号との関係、すなわち、後で詳述する
図11(a)に示す速度偏差量SHとカット圧CPとの関係(第1関係に対応)を予め記憶する。また、記憶部81は、キャリッジモータ66の負荷とキャリッジモータ66への供給信号との関係、すなわち、後で詳述する
図11(b)に示す速度偏差量SHと切断対象物50に対するカット速度との関係(第2関係に対応)を予め記憶する。
【0051】
本実施形態では、切断対象物50の本カットを行う前に、まずテストカットを実施し、上述の第1関係や第2関係を取得し記憶する。そして、本カット時に取得した速度偏差量SHと上記第1関係とに基づいて適切なカット圧が自動で設定され、また本カット時に取得した速度偏差量SHと上記第2関係とに基づいて切断対象物50に対するカット速度が自動で適切に設定されるようになっている。以下、詳しく説明する。
【0052】
図6に示すように、切断対象物50を往路R1に沿って切断し、その後、当該切断対象物50を復路R2に沿って切断した際の速度偏差量SHおよび位置偏差量IHを取得した。往路R1に沿って切断する際には、グリッドローラ22(
図1参照)による切断対象物50の搬送を停止した状態で、キャリッジ32(
図1参照)によりカッター38(
図1参照)を左方に移動させた。また、復路R2に沿って切断する際には、グリッドローラ22による切断対象物50の搬送を停止した状態で、キャリッジ32によりカッター38を右方に移動させた。テストカット用の切断対象物50として、厚みの薄い塩化ビニル製のシートと厚みの厚いサンドブラストゴム製のシートとを用いた。なお、上記の往路R1および復路R2の距離は、それぞれ50cmである。
【0053】
図8(a)は、塩化ビニル製のシートをカッティング装置10により切断した際の速度偏差量SHおよび位置偏差量IHの各経時変化を示すグラフである。
図8(b)は、サンドブラストゴム製のシートをカッティング装置10により切断した際の速度偏差量SHおよび位置偏差量IHの各経時変化を示すグラフである。
図8(a),(b)のグラフの横軸は時間(msec)を示し、縦軸は位置偏差量IH(1/20.5μm)および速度偏差量SH(3200μm/250μsec)を示している。なお、
図8(a)のデータは、
図6の往路R1のように塩化ビニル製シートを切断した際に得られるデータと、
図6の復路R2のように当該シートを切断した際に得られるデータとの集合データである。また、
図8(b)のデータは、
図6の往路R1のようにサンドブラストゴム製シートを切断した際に得られるデータと、
図6の復路R2のように当該シートを切断した際に得られるデータとの集合データである。
図8(a),(b)において、
図6の往路R1に沿って切断した時間帯をMT1で示し、切断を停止した時間帯をMT2で示し、
図6の復路R2に沿って切断した時間帯をMT3で示している。
【0054】
図8(a)に示すように、厚みの薄い切断対象物50では、切断開始時から切断終了時に至るまで、速度偏差量SHおよび位置偏差量IHの著しい変化はそれぞれ現れなかった。これに対して、厚みの厚い切断対象物50では、
図8(b)に示すように、速度偏差量SHにおいて閾値T1よりも大きなピークP1,P2が出現し、位置偏差量IHにおいて閾値T3よりも大きなピークP3,P4が出現した。これによって、厚みの厚い切断対象物50に対するカット圧CPが適切でないことを推測することができる。
図8(a),(b)において、速度偏差量SHは、カッター38(
図1参照)の現在カット速度が目標カット速度に達していないときには正の値となり、現在カット速度が目標カット速度を超えているときには負の値となる。また、位置偏差量IHは、カッター38の現在位置が目標位置に達していないときには正の値となり、上記現在位置が目標位置を超えているときには負の値となる。なお、
図8(a),(b)において、速度偏差量SHが負の値であるときの閾値を閾値T2で示し、位置偏差量IHが負の値であるときの閾値を閾値T4で示している。なお、閾値T1、閾値T2、閾値T3および閾値T4は、作業者により予め設定され、記憶部81(
図5参照)に記憶される。
【0055】
ここで、位置偏差量IHの傾向について説明する。
図9(a)は厚みの薄い塩化ビニル製シートを
図6の往路R1に沿って切断した際の位置偏差量IHの経時変化を示すグラフである。
図9(b)は厚みの厚いサンドブラストゴム製シートを
図6の往路R1に沿って切断した際の位置偏差量IHの経時変化を示すグラフである。
図9(a),(b)において、目標カット速度の経時変化をSSで示している。
図9(a)に示すように、厚みの薄い塩化ビニル製シートでは、切断開始時から切断終了時に至るまで、位置偏差量IHの著しい変化は現れなかった。これに対して、厚みの厚いサンドブラストゴム製シートでは、
図9(b)に示すように、位置偏差量IHにおいて閾値T3よりも大きなピークP5,P6が出現し、閾値T4よりも大きなピークP7,P8,P9が出現した。特に、カット速度が加速される加速期間ATにおいて、複数の大きなピークが出現した。加速期間ATを過ぎれば、位置偏差量IHの振幅は減衰した。
【0056】
図10(a)は厚みの薄い塩化ビニル製シートを
図6の復路R2に沿って切断した際の位置偏差量IHの経時変化を示すグラフである。
図10(b)は厚みの厚いサンドブラストゴム製シートを
図6の復路R2に沿って切断した際の位置偏差量IHの経時変化を示すグラフである。
図10(a),(b)において、キャリッジ32の目標カット速度の経時変化をSSで示している。
図10(a)に示すように、厚みの薄い塩化ビニル製シートでは、切断開始時から切断終了時に至るまで、位置偏差量IHの著しい変化は現れなかった。これに対して、厚みの厚いサンドブラストゴム製シートでは、
図10(b)に示すように、位置偏差量IHにおいて閾値T3よりも大きなピークP10,P11,P12が出現し、閾値T4よりも大きなピークP13,P14,P15,P16が出現した。
図9(b)の場合と同様に、特にキャリッジ32の加速期間ATにおいて、複数の大きなピークが出現した。加速期間ATを過ぎれば、位置偏差量IHの振幅は減衰した。
【0057】
図11(a)は速度偏差量SHに応じたカット圧CPの大きさを示すグラフであり、
図11(b)は速度偏差量SHに応じたカット速度CVの大きさを示すグラフである。
図11(a)に示すように、速度偏差量SHが閾値T1以下であるとき、カット圧CPは、切断対象物50に対して適切なカット圧CP1に設定されているとみなされる。速度偏差量SHが正の値であって閾値T1よりも大きいときには、カット圧CPは直線的に増加するようになっている。電流制御部64(
図5参照)は、速度偏差量SHが正の値であって閾値T1よりも大きいときに、その速度偏差量SHの値に応じて、
図11(a)のデータからカット圧CPを決定する。このとき、例えば加速期間AT(
図8(b)参照)における速度偏差量SHの最大ピーク値を
図11(a)のデータに当てはめれば、適切なカット圧CPを取得することができる。この適切なカット圧CPを切断対象物50の本カット時に適用すればよい。これにより、プリセット機能を実現することができる。電流制御部64は、適切なカット圧CPとなるようボイスコイルモータ40に供給する電流の値を調整する。
図11(a)のデータは、切断対象物50のテストカット後に速度偏差量算出部63により作成され、記憶部81に記憶される。この速度偏差量SHとカット圧CPとの関係を示す
図11(a)のデータが第1関係に対応する。なお、速度偏差量SHが負の値となるときのカット圧CPの調整についても同様に行うことができる。
【0058】
また、電流制御部64(
図5参照)は、速度偏差量SHが正の値であって閾値T1よりも大きいときに、その速度偏差量SHの値に応じて、上記のようにカット圧CPを調整する処理と併せて、またはカット圧CPの調整を行わずに、カット速度CVを低下させるようにしてもよい。なお、カットCPの調整を行わずにカット速度CVのみを調整する場合には、上述の第1関係は取得せずに第2関係のみ取得して記憶するようにすればよい。
図11(b)に示すように、速度偏差量SHが閾値T1以下であるとき、カット速度CVは適切なカット速度CV1に設定されているとみなされる。速度偏差量SHが閾値T1よりも大きいときには、カット速度CVは直線的に減少するようになっている。電流制御部64は、速度偏差量SHが閾値T1よりも大きいときに、その速度偏差量SHの値に応じて、
図11(b)のデータからカット速度CVを決定する。このとき、例えば加速期間AT(
図8(b)参照)における速度偏差量SHの最大ピーク値を
図11(b)のデータに当てはめれば、適切なカット速度CVを取得することができる。この適切なカット速度CVを切断対象物50の本カット時に適用すればよい。これにより、プリセット機能を実現することができる。電流制御部64は、カット速度CVが適切な速度となるようにキャリッジモータ66の回転動作を制御する。
図11(b)のデータは、切断対象物50のテストカット後に速度偏差量算出部63により作成され、記憶部81に記憶される。この速度偏差量SHとカット速度CVとの関係を示す
図11(b)のデータが第2関係に対応する。なお、速度偏差量SHが負の値となるときのカット速度CVの調整についても同様に行うことができる。なお、速度偏差量SHとカット速度CVとの関係を示す
図11(b)のデータと同様に、速度偏差量SHとグリッドローラ22の回転速度との関係を示すデータがテストカット後に作成され、記憶される。
【0059】
以上のように、本実施形態に係るカッティング装置10によれば、速度偏差量検出部63によって検出されたキャリッジモータ66の速度偏差量SHと上述した第1関係とに基づいてボイスコイルモータ40に適切な供給信号が供給される。これにより、カッター38のカット圧CPを適切に調整することができる。これによって、切断対象物50を一度で切断することができる。そのため、二度切りや三度切り等を行う必要がなくなる。したがって、作業者の手間を減らすことができ、作業効率を向上することができる。
【0060】
また、本実施形態によれば、速度偏差量SHが大きくなるにつれ、カット圧CPを大きくすることができる。これにより、カット圧CPが不適切な状態となることを防ぐことができ、切断対象物50を一度で切断することができる。
【0061】
また、本実施形態によれば、速度偏差量SHが閾値T1以下であるときには、カット圧CPが適切であると判断することができる。また、速度偏差量SHが閾値T1よりも大きいときには、カット圧CPを上げて切断により生じる負荷を小さくすることで前記負荷を適正な状態にすることが可能となる。
【0062】
本実施形態に係るカッティング装置10によれば、速度偏差量検出部63によって検出されたキャリッジモータ66の速度偏差量SHと上述した第2関係とに基づいてキャリッジモータ66に適切な供給信号が供給される。これにより、切断対象物50に対するカット速度を適切に調整することができる。これによって、切断対象物50を一度で確実に切断することができる。そのため、二度切りや三度切り等を行う必要がなくなる。したがって、作業者の手間を減らすことができ、作業効率を向上することができる。
【0063】
また、本実施形態によれば、速度偏差量SHが大きくなるにつれ、切断対象物50に対するカット速度を小さくすることができる。これにより、切断対象物50に対してキャリッジ32を低速で移動させ、切断対象物50を一度で確実に切断することができる。
【0064】
また、本実施形態によれば、速度偏差量SHが閾値T1以下であるときには、切断対象物50に対するカット速度が適切であると判断することができる。また、速度偏差量SHが閾値T1よりも大きいときには、キャリッジモータ66への供給信号の値を小さくすることで切断対象物50に対するカット速度を低下させることができる。これにより、切断対象物50を一度で切断することができる。
【0065】
また、本実施形態によれば、目標カット速度に対する現在カット速度のずれ量である速度偏差量SHを複雑な計算を行うことなく算出することができる。このような速度偏差量SHをキャリッジモータ66の負荷情報として用いることができる。
【0066】
また、本実施形態によれば、加速時の速度偏差量SHを用いることにより、誤検知を防ぐことができ、カット圧CPや切断対象物50に対するカット速度を高精度で調整することができる。
【0067】
また、本実施形態によれば、キャリッジモータ66の回転動作およびフィードモータ69の回転動作を制御することによって、切断対象物50に対するキャリッジ32の相対移動を調整することができる。
【0068】
以上、本発明の実施形態について説明した。しかし、上述の実施形態は例示に過ぎず、本発明は、以下のように他の形態で実施することが可能である。
【0069】
上記実施形態では、速度偏差量SHに応じて、カット圧CPや切断対象物50に対するカット速度を調整するようにした。しかし、これに限定されるものではない。以下で説明するように、位置偏差量算出部62により算出される位置偏差量IHに応じて、カット圧CPやカット速度CVを調整するようにしてもよい。この場合、位置偏差量算出部62が位置偏差量IHの情報を電流制御部64に与え、電流制御部64は、位置偏差量IHに応じて各モータの回転動作を制御するようにしてもよい。このように、キャリッジ32の目標位置に対する現在位置のずれ量として容易に算出し得る位置偏差量IHをキャリッジモータ66の負荷情報として用いることができる。
【0070】
図12(a)は位置偏差量IHに応じたカット圧CPの大きさを示すグラフであり、
図12(b)は位置偏差量IHに応じたカット速度CVの大きさを示すグラフである。
図12(a)に示すように、位置偏差量IHが閾値T3以下であるとき、カット圧CPは、切断対象物50に対して適切なカット圧CP1に設定されているとみなされる。位置偏差量IHが正の値であって閾値T3よりも大きいときには、カット圧CPは直線的に増加するようになっている。電流制御部64(
図5参照)は、位置偏差量IHが正の値であって閾値T3よりも大きいときに、その位置偏差量IHの値に応じて、
図12(a)のデータからカット圧CPを決定する。このとき、加速期間ATにおける位置偏差量IHの最大ピーク値を
図12(a)のデータに当てはめれば、適切なカット圧CPを取得することができる。この適切なカット圧CPを切断対象物50の本カット時に適用すればよい。電流制御部64は、適切なカット圧CPとなるようボイスコイルモータ40に供給する電流の値を調整する。なお、
図12(a)のデータは、切断対象物50のテストカット後に位置偏差量算出部62により作成され、記憶部81に記憶される。
【0071】
電流制御部64(
図5参照)は、位置偏差量IHが正の値であって閾値T3よりも大きいときに、その位置偏差量IHの値に応じて、上記のようにカット圧CPを調整する処理と併せて、またはカット圧CPの調整を行わずに、カット速度CVを低下させるようにしてもよい。
図12(b)に示すように、位置偏差量IHが閾値T3以下であるとき、カット速度CVは適切なカット速度CV1に設定されているとみなされる。位置偏差量IHが閾値T3よりも大きいときには、カット速度CVは直線的に減少するようになっている。電流制御部64は、位置偏差量IHが閾値T3よりも大きいときに、その位置偏差量IHの値に応じて、
図12(b)のデータからカット速度CVを決定する。このとき、加速期間ATにおける位置偏差量IHの最大ピーク値を
図12(b)のデータに当てはめれば、適切なカット速度CVを取得することができる。この適切なカット速度CVを切断対象物50の本カット時に適用すればよい。電流制御部64は、カット速度が適切な速度となるようにキャリッジモータ66の回転動作を制御する。
図12(b)のデータは、切断対象物50のテストカット後に位置偏差量算出部62により作成され、記憶部81に記憶される。
【0072】
以上、本実施形態および他の実施形態について説明したが、さらに以下のような変形例を適用することができる。
【0073】
上記実施形態では、位置偏差量IHが大きいときには、カット圧CPが不足していると判断し、当該カット圧CPを高めるようにしたが、これに限定されるものではない。位置偏差量IHが大きいときに、カット圧CPを低くするように制御してもよい。例えば切断対象物50を一度の切断によりカットすることが不可能であるほどの一定の厚み(例えば、5mm程度の肉厚)を有する硬度の高い切断対象物50を切断する際などにおいては、カッター38の刃先が切断対象物50に十分に食い込むことが出来ない状態が生じ得るため、このようなときに上記制御は有効である。
【0074】
また、上記実施形態では、速度偏差量SHや位置偏差量IHに応じて、カット圧CPを調整したり、カット速度CVを調整するようにした。しかし、これに限定されるものではない。二度切り等を行うようにしてもよい。すなわち、一回目の処理により切断対象物50の厚み方向の半分をカットし、二回目の処理により切断対象物50の厚み方向の残り半分をカットするようにしてもよい。
【0075】
上記実施形態では、速度偏差量SHが閾値T1よりも大きいときに、カット圧CPを調整したり、カット速度CVを調整するようにした。しかし、これに限定されるものではない。切断対象物50のうち切断始点から切断終点までの部分を切断するとした場合に、速度偏差量SHが閾値T1よりも大きいときに、当該速度偏差量SHと上記第2関係に基づいて前記切断終点を超えた部分まで切断させるようにしてもよい。これにより、切り残しの発生を防ぐことができる。
【0076】
また、上記実施形態では、速度偏差量SHが閾値T1よりも大きいときに、その速度偏差量SHの値に応じて、カット速度CVを低下させるようにした。しかし、これに限定されるものではない。速度偏差量SHが閾値T1よりも大きいときに、カット速度CVを目標カット速度に近付けるために上昇させるようにしてもよい。カット速度CVを上昇させることで、例えばカッター38がカット方向に切断対象物50をカットする推進力を増大させることができる。切断対象物50の材質や硬さ、厚みによっては、カット速度CVを上昇させることで、良好な切断結果を得ることができる。
【0077】
また、上記実施形態では、厚みの厚い切断対象物50と厚みの薄い切断対象物50とを用意して、速度偏差量SHや位置偏差量IHを取得するようにした。しかし、これに限定されるものではない。切断対象物50の硬さに基づいて速度偏差量SHや位置偏差量IHを取得するようにしてもよい。
【0078】
また、上記実施形態では、電流制御部64は、ボイスコイルモータ40に対して電流信号を供給信号として供給するようにした。しかし、これに限定されるものではない。電流制御部64は、電圧信号を供給信号として供給するようにしてもよい。
【0079】
また、上記実施形態では、グリッドローラ22が切断対象物50を前後方向に移動させ、キャリッジ32がカッター38を左右方向に移動させることによって、カッター38を切断対象物50に対して相対移動させる構成を実現するようにした。しかし、これに限定されるものではない。キャリッジ32によりカッター38を前後方向に移動させ、グリッドローラ22により切断対象物50を左右方向に移動させるような構成を採用してもよい。
【0080】
また、上記実施形態では、カッティング装置10は、切断対象物50の切断のみを行う装置であった。しかし、本発明に係るカッティング装置10は、切断対象物50の切断だけでなく、他の機能を備えていてもよい。例えば、カッティング装置10は、カッティングヘッド30の他にインクヘッドを備え、用紙等に対して印刷と切断とを行ういわゆるカッティングプリンタ等であってもよい。
【0081】
本発明には、コンピュータを上述した位置偏差量算出部62および速度偏差量算出部63として機能させるためのコンピュータプログラムが含まれる。また、本発明には、当該コンピュータプログラムが記録されたコンピュータ読み取り可能な記録媒体(例えば、CD(Compact Disc)やDVD(Digital Versatile Disc)等)が含まれる。