(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6549043
(24)【登録日】2019年7月5日
(45)【発行日】2019年7月24日
(54)【発明の名称】底面反射器を用いたカプセル化のためのLEDレンズ
(51)【国際特許分類】
H01L 33/58 20100101AFI20190711BHJP
【FI】
H01L33/58
【請求項の数】12
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2015-562454(P2015-562454)
(86)(22)【出願日】2014年3月6日
(65)【公表番号】特表2016-513881(P2016-513881A)
(43)【公表日】2016年5月16日
(86)【国際出願番号】IB2014059478
(87)【国際公開番号】WO2014141011
(87)【国際公開日】20140918
【審査請求日】2016年2月23日
【審判番号】不服2017-12199(P2017-12199/J1)
【審判請求日】2017年8月16日
(31)【優先権主張番号】61/779,023
(32)【優先日】2013年3月13日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】517152128
【氏名又は名称】ルミレッズ ホールディング ベーフェー
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100091214
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 進介
(72)【発明者】
【氏名】デシュナー,ウォルター
(72)【発明者】
【氏名】ダイアナ,フレデリック ステファーヌ
(72)【発明者】
【氏名】マラ,モヒウッディーン
(72)【発明者】
【氏名】ハク,アシム シャティル
(72)【発明者】
【氏名】バターワース,マーク メルヴィン
【合議体】
【審判長】
森 竜介
【審判官】
恩田 春香
【審判官】
星野 浩一
(56)【参考文献】
【文献】
特開2007−317952(JP,A)
【文献】
特開2010−129202(JP,A)
【文献】
特表2006−525682(JP,A)
【文献】
特表2002−528861(JP,A)
【文献】
実公平6−28725(JP,Y2)
【文献】
特開昭63−33879(JP,A)
【文献】
国際公開第2006/109113(WO,A2)
【文献】
特開平5−251747(JP,A)
【文献】
特開2001−250986(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L33/00-33/64
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
発光デバイスであって、
サブストレートの上にマウントされた発光ダイオード(LED)ダイと、
前記LEDダイの上に置かれ、かつ、前記LEDダイをカプセル化するレンズと、
を含み、
前記レンズの底面は、前記LEDダイを取り囲む少なくとも外側と内側に係る複数のファセットにおいて角度の付いた表面を有し、前記角度の付いた表面は、前記LEDダイからの光を前記レンズの上面を通じて上方に向けて反射するように構成されており、
前記レンズは、前記LEDダイが配置されるキャビティを有し、
外側のファセットの高さは、内側のファセットより大きい、
デバイス。
【請求項2】
前記レンズの前記上面は、ドーム状である、
請求項1に記載のデバイス。
【請求項3】
前記レンズの前記上面は、さらに、光を向け直すように形成されている、
請求項1に記載のデバイス。
【請求項4】
前記複数のファセットは、光衝突面を含み、
前記光衝突面は、パラボラ形状にカーブしている、
請求項1に記載のデバイス。
【請求項5】
前記複数のファセットは、第1ファセットリングを取り囲んでいる少なくとも一つの第2ファセットリングを含む、
請求項1に記載のデバイス。
【請求項6】
前記複数のファセットは、個々のファセットのアレイを含む、
請求項1記載のデバイス。
【請求項7】
前記デバイスは、さらに、前記LEDダイをカプセル化するために変形可能な物質を含む、
請求項1に記載のデバイス。
【請求項8】
前記サブストレートは、反射性表面を有する、
請求項1に記載のデバイス。
【請求項9】
前記レンズは、前記底面の少なくとも一部分が前記サブストレートに取り付けられている、
請求項1に記載のデバイス。
【請求項10】
発光デバイスを動作させる方法であって、
発光ダイオード(LED)ダイにエネルギを与えるステップであり、前記LEDダイが、上面と同様に側面からも光を発している、ステップと、
前記LEDダイの前記側面から発せられた光を、前記LEDダイをカプセル化しているレンズの底面に形成された反射性パターンによって上方に向け直すステップと、
を含み、
前記レンズは、前記LEDダイが配置されるキャビティを有し、
前記反射性パターンは、前記LEDダイを取り囲み、前記レンズの前記底面の中に形成され、前記LEDダイからの光を上方に向けて反射するための角度の付いた表面を含む、少なくとも外側と内側に係る複数のファセットを含み、
外側のファセットの高さは、内側のファセットの高さより大きい、
方法。
【請求項11】
前記ファセットは、前記レンズの上面に向かって光を反射する角度の付いた表面を有している、
請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記複数のファセットは、第1ファセットリングを取り囲んでいる少なくとも一つの第2ファセットリングを含む、
請求項11に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光ダイオード(LED)のカプセル化に関する。より特定的には、底面に反射性機能を有するレンズを用いたLEDダイ(die)のカプセル化に関する。
【背景技術】
【0002】
サブマウント(サブストレート)上にLEDダイをマウントし、カプセル化するためにLEDダイの上に事前に形成されたドームレンズを配置することは一般的である。ドームレンズは、LEDダイのためのキャビティを有しており、透明または半透明の弾力性のあるシリコンを含んでいる。レンズの底面は、そうではなく、平坦である。ドームレンズがLEDダイの上に押し付けられると、シリコンがLEDダイの周りのボイド(void)を満たす。
【0003】
そうした構造を使用した、発光は一般的に完全拡散(lambertian)である。LEDダイの側面から又は浅い角度で発せられた光は、しばしば無駄な光である。有効な発光は、一般的に、前方(forward direction)に発せられる光だからである。そうしたカプセル化されたLEDダイは、小さい反射性の円錐状キャップの中にマウントされ、全ての光を前方に方向付けする。しかし、そうしたキャップはLEDモジュールに対するコストとサイズを追加してしまう。
【0004】
加えて、下方(downward direction)に発せられた光は、サブマウント表面によっていくらか吸収され、浅い角度で反射され得る。従って、この光も、また、無駄である。
【0005】
必要とされるのは、上記の欠点に煩わされることのないカプセル化技術である。
【発明の概要】
【0006】
一つの実施例においては、LEDダイのアレイがサブマウントウエハ(wafer)の上にマウントされ、LEDダイの電極がサブマウントウエハ上の金属パッドに電気的に接続される。フリップチップLEDまたはワイヤーボンドされた(wire−bonded)LEDが使用され得る。本発明は、また、一時に一つのLEDを処理することにも適用される。
【0007】
レンズは、モールド(molding)プロセスといったものによって、事前に形成される。レンズは、硬化されたシリコンまたは他の好適な透明材料で形成されてよい。レンズは、典型的には、円形であり、ドーム状または所望の光パターンを達成するための他の形状として形成された上面を有し得る。レンズは、LEDダイに対するキャビティを有している。反射器パターンが、レンズの底面において形成される。角度の付いた表面を伴うファセット(facet)リングといったものである。一つの実施例において、ファセットは、レンズの底面において形成された角度の付いたギザギザである。角度は、平坦または丸みを帯びてよい。
【0008】
レンズの底面とファセットは、任意的に反射フィルムを用いて被膜されてよい。反射性金属フィルムといったものである。
【0009】
軟化されたシリコンが、キャビティの中に注入される。
【0010】
レンズがLEDダイの上に押し付けられると、キャビティの中のシリコンがLEDダイをカプセルで包み込み、LEDダイはファセットリングによって周りを囲まれる。ファセットリングの角度の付いた表面は、LEDダイからの下方または浅い発光を上方に反射する。反射フィルムがファセットを被膜していない場合には、上方への反射は、全内部反射(total internal reflection、TIR)によるものであってよい。
【0011】
発光を拡散するために、異なる半径と高さの複数の同心円状のファセットリングが、レンズの底面に形成されてよい。異なるファセットリングの角度は、異なっても同一であってもよい。別の実施例において、ファセットリングは円形である必要はなく、しかし、所望の発光パターンに応じて、正方形、長方形、楕円形、または他の形状であってよい。同様に、レンズは、あらゆる形状を有してよい。
【0012】
ファセットリングは、LEDモジュールが、狭ビームまたは他の発光パターンを発するようにさせるために形成され得る。レンズの上面は、あらゆる発光パターンを達成するように形成されてよい。
【0013】
別の実施例において、レンズの底面は、LED光を上方に反射するように丸みを帯びて形成される。
【0014】
サブマウントウエハの上面は、反射フィルムで被膜され得る。
【0015】
カプセル化プロセスは、ハンドリングを簡素化し、かつ、コストを低減するために、ウエハスケールで実行され得る。カプセル化プロセスの後、個々のLEDモジュールを形成するためにサブマウントウエハが単体化(singulate)される。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】
図1は、LEDダイのアレイが取り込まれているサブマウントウエハを上から見下ろした図である。
【
図2】
図2は、本発明の一つの実施例に従って、LEDダイキャビティとレンズの底面において形成された反射性ファセットを説明する、レンズを二分している断面図である。
【
図3】
図3は、円形のファセットの頂点およびLEDダイキャビティを示している、
図2のレンズを下から見上げた図である。
【
図4】
図4は、LEDダイが取り込まれたサブマウントウエハの断面図であり、カプセルで包み込むために、LEDダイの上に
図2のレンズが置かれている。
【
図5】
図5は、本発明の別の一つの実施例に従った、レンズを二分している断面図である。 同一または類似のエレメントは、同一の数字を用いてラベル付けされている。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図1は、LEDダイ12のアレイが取り込まれたサブマウントウエハ10を示している。別の実施例においては、一つのLEDダイ12だけが一時にプロセスされる。LEDダイ12は、あらゆるタイプのものであってよく、フリップチップ、バーティカル、ワイヤーボンド、等を含んでいる。簡素化された実施例では、たった12個のLEDダイ12しか示されていないが、実際の実施例においては、典型的に、数百個のLEDダイ12が一つのサブマウントウエハ10の上にマウントされるであろう。LEDダイ12は、典型的には、側面ごとに約1mmである。サブマウントウエハ10は、伝導性トレースを用いたセラミックウエハといった、従来のものであってよく、または、別の材料で形成されてよい。ウエハ10は、また、正方形、六角形、または、あらゆる他の好適な形状であってよい。
【0019】
図2は、本発明の一つの実施例に従って、事前に形成されたレンズ14の断面図である。
図3は、ファセットの頂点18と22、およびLEDダイキャビティ16外形を示している、レンズ14を下から見上げた図である。
図4は、LEDダイ12の上にマウントされたレンズ14を示している。レンズ14は、モールドされたシリコンであってよい。典型的なLEDダイに対して、レンズ14は、約3−5mmの直径を有してよい。
【0020】
レンズ14は、中央キャビティ16を有している。LEDダイ12よりわずかに大きいものである。キャビティ16を取り囲んで反射性機能が存在し、LEDダイの側面光を上方に向け直す(redirect)。
図2の実施例において、円形の第1ファセット18は、あらゆる側面光を反射する角度の付いた表面を有している。
図4において光線20によって示されるようにである。円形の第2ファセット22は、レンズ14の中により長い距離で延び、当たっている光を上方に反射する角度の付いた表面を、また有している。
図4において光線24によって示されるようにである。他のあらゆるタイプの反射性機能が、光を上方に反射するために、レンズ14の底面に形成されてよい。
【0021】
別の実施例において、ファセット18と22の光衝突面(light−impinging surface)は平坦でなく、より狭いビームを作成するようにカーブしている(パラボラ形状といったもの)。異なる高さのファセットの同心円リングをより多く追加することは、レンズ14の上面にわたり発光を拡散させるために役に立ち得る。
【0022】
別の実施例において、ファセット18と22は、所望の発光パターンに応じて、正方形、長方形、楕円形、または他の形状である。レンズ14も、また、所望の発光パターンに応じて、正方形、長方形、楕円形、または他の形状であってよい。
【0023】
一つの実施例において、ファセット18と22、および、レンズ14の底面の残りと同様に、反射フィルムを用いて被膜される。反射性金属フィルムといったものである。別の実施例においては、ファセット18と22を被膜する反射フィルムは存在せず、ファセット18と22はエアーギャップ(air gap)を定めている。レンズ/空気のインターフェイスにおける屈折率の違いは、ある角度の範囲内で光が衝突している場合に、TIRを結果として生じる。
【0024】
サブマウントウエハ10は、白色塗料または反射性金属リングといった、反射性レイヤを有してよい。
図4は、サブマウント10の表面に反射する光線26を示している。
【0025】
ファセットリングの形成の他に、ファセットは、より均一に光を拡散するために個々のファセットのアレイであってよい。そうした場合に、
図2は、4つの別個のファセットを示すであろう。それぞれが長方形の反射性光衝突表面を有するものである。
【0026】
粘着性シリコン28(
図4)、典型的にはLEDダイ12とレンズ14の間の屈折率を伴うものが、キャビティ16の中でレンズ14の底面上に投与される。キャビティ16の中のシリコン28は変形可能である。レンズ14は、次に、
図4に示されるように、LEDダイの上に押し付けられて、LEDダイ12をカプセル化するように、シリコン28をキャビティ16の中でLEDダイ12の周りで変形させる。カプセル化は、エアーを取除くために真空において実行されてよい。粘着性シリコンは、次に、キュアされて硬化する。別の実施例において、LEDダイ12をカプセル化するためにキャビティ16の中で使用されるシリコン28は、レンズ14の底面上の粘着剤とは異なる。両方の材料を最適化できるようにするためである。キャビティ16の中のシリコン28は、粘着剤である必要はなく、LEDダイ12とレンズ14の熱膨張係数の違いに適応するように弾力性を維持し得る。
【0027】
図4は、サブマウントウエハ10の対応する金属パッドに接合されたLEDダイ電極30を示している。サブマウントウエハ10の金属パッドは、サブマウントウエハ10を通じて延長し、かつ、底面パッド34において終了するビア(via)32に接続されている。パッド34は、単体化の後でプリント回路基板に半田付けされ得る。単体化ライン36が示されている。単体化は、ソーイング(sawing)または他の技術によるものであってよい。単体化は、ウエハ10を、個々のデバイスまたはデバイスのアレイへと分割し得る。
【0028】
サブマウントウエハ10と単体化されたサブマウント部分は、また、サブストレートとしても参照される。サブストレートは、パッド34の代わりに、電源に対するあらゆるタイプの電気的コネクタを使用し得る。
【0029】
図5は、レンズ42の底面の別の形状を示しており、LEDダイ12の光線44を上方に反射するように動作する。形状は、一般的には、上部の半球形状に接続されたパラボラ型のボウル形状である。低い角度のLED光を反射するために多くの他の反射性表面が使用されてよい。発光されたビームが比較的に狭くなるようにである。事実上あらゆるビーム形状が達成可能である。反射は、TIPによるものであってよく、または、レンズ42の底面は反射性材料を用いて被膜されている。
【0030】
レンズ14の上面は、さらなる発光パターンを形成するために、あらゆる形状であってよい。いくつかの形状は、粗面、ディンプル付表面、フレネル(Fresnel)レンズ表面、コリメーティング(collimating)レンズ表面、等を含んでいる。LEDダイ発光の大部分は、上面からのものであり、レンズ上面の形状は、光を方向付けるための主要な手段である。レンズ形状と反射器形状の組合せが、明るい光の非常に狭いビームを作成するために使用され得る。
【0031】
事前に形成されているレンズ14の他に、レンズ14は、圧縮成形プロセスにおいてLEDダイ12の上に直接的にモールドされ、かつ、キュアされてよい。そうした場合には、粘着剤またはキャビティ充填剤は使用されない。
【0032】
LEDダイ12は、白色光を含む、あらゆる発光色を作成するために蛍光体を含んでよい。複数のLEDダイが相互に接続され、一つのLEDモジュールに対するアレイにおいて配置され得る。そして、全てのLEDダイは、適切な大きさのキャビティを用いて一つのレンズによってカプセル化される。
【0033】
レンズ14は、LED14によって発せられた光を、白色光または他の好適な光へと転換するために蛍光体を含んでよい。典型的に、LED12は、青色光を発し、レンズ14はYAG蛍光体を含むであろう。
【0034】
本発明を使用することにより、反射性キャップの中にLEDダイをマウントする必要はない。
【0035】
本発明の所定の実施例が示され、説明されてきたが、当業者にとっては、変更および変形が、本発明の範囲から逸脱することなく、より広い態様においてなされ得ること、かつ、従って、添付の特許請求の範囲は、全てのそうした変更および変形を本発明の真の主旨および範囲内にあるものとして包含するものであることが、明らかであろう。