(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
原動機によって駆動される可変容量型の第1及び第2の油圧ポンプと、前記第1の油圧ポンプからの圧油によって駆動される左走行モータと、前記第2の油圧ポンプからの圧油によって駆動される右走行モータと、前記第1の油圧ポンプから前記左走行モータへの圧油の流れを制御するオープンセンタ型の左走行用流量制御弁と、前記第2の油圧ポンプから前記右走行モータへの圧油の流れを制御するオープンセンタ型の右走行用流量制御弁と、前記左走行用流量制御弁を操作する左走行用操作装置と、前記右走行用流量制御弁を操作する右走行用操作装置と、前記第1の油圧ポンプの容量を制御する第1の容量制御アクチュエータと、前記第2の油圧ポンプの容量を制御する第2の容量制御アクチュエータと、前記第1及び第2の容量制御アクチュエータを制御する制御装置とを備えた建設機械の油圧駆動装置において、
前記左走行用操作装置の操作量を検出する第1の操作量検出器と、
前記右走行用操作装置の操作量を検出する第2の操作量検出器と、
前記第1の油圧ポンプの吐出圧を検出する第1の吐出圧検出器と、
前記第2の油圧ポンプの吐出圧を検出する第2の吐出圧検出器とを備え、
前記制御装置は、
前記第1の操作量検出器で検出された前記左走行用操作装置の操作量が増加するのにしたがって前記左走行モータへの目標供給流量を増加するよう演算し、前記第2の操作量検出器で検出された前記右走行用操作装置の操作量が増加するのにしたがって前記右走行モータへの目標供給流量を増加するよう演算する走行モータ目標供給流量演算部と、
前記第1の操作量検出器で検出された前記左走行用操作装置の操作量と前記第1の吐出圧検出器で検出された前記第1の油圧ポンプの吐出圧に基づいて前記左走行用流量制御弁のブリードオフ流量を演算し、前記第2の操作量検出器で検出された前記右走行用操作装置の操作量と前記第2の吐出圧検出器で検出された前記第2の油圧ポンプの吐出圧に基づいて前記右走行用流量制御弁のブリードオフ流量を演算するブリードオフ流量演算部と、
前記左走行モータへの目標供給流量と前記左走行用流量制御弁のブリードオフ流量を加算して前記第1の油圧ポンプの目標吐出流量を演算し、前記右走行モータへの目標供給流量と前記右走行用流量制御弁のブリードオフ流量を加算することで前記第2の油圧ポンプの目標吐出流量を演算するポンプ目標吐出流量演算部と、
前記第1の油圧ポンプの目標吐出流量となるように前記第1の容量制御アクチュエータを制御し、前記第2の油圧ポンプの目標吐出流量となるように前記第2の容量制御アクチュエータを制御するポンプ容量制御部とを有することを特徴とする建設機械の油圧駆動装置。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の第1の実施形態を、図面を参照しつつ説明する。
【0014】
図1は、本実施形態における油圧ショベルの構造を表す側面図である。なお、油圧ショベルが
図1に示す状態にて、運転席に着座した運転者の前側(
図1中左側)、後側(
図1中右側)、左側(
図1中紙面に向かって手前側)、右側(
図1中紙面に向かって奥側)を、単に前側、後側、左側、右側と称する。
【0015】
油圧ショベルは、走行体1と、走行体1の上側に旋回可能に設けられた旋回体2と、旋回体2の前部に連結された作業装置3とを備えている。旋回体2は、旋回モータ4(後述の
図2参照)の回転駆動によって旋回するようになっている。
【0016】
走行体1は、上方から見てH字形状のトラックフレーム5を備えている。トラックフレーム5の左側後端には駆動輪6が回転可能に支持され、トラックフレーム5の左側前端には従動輪7が回転可能に支持され、これら駆動輪6と従動輪7とで履帯8が掛けまわされている。そして、左走行モータ9A(後述の
図2参照)の回転駆動によって左側の駆動輪6が回転し、ひいては左側の履帯8が回転するようになっている。
【0017】
同様に、トラックフレーム5の右側後端には駆動輪6(図示せず)が回転可能に支持され、トラックフレーム5の右側前端には従動輪7(図示せず)が回転可能に支持され、これら駆動輪6と従動輪7とで履帯8(図示せず)が掛けまわされている。そして、右走行モータ9B(後述の
図2参照)の回転駆動によって右側の駆動輪6が回転し、ひいては右側の履帯8が回転するようになっている。
【0018】
作業装置3は、旋回体2の前部に回動可能に連結されたブーム10と、ブーム10に回動可能に連結されたアーム11と、アーム11に回動可能に連結されたアタッチメント12(
図1では、標準装備のバケット)とを備えている。ブーム10は、左右一対のブームシリンダ13の伸縮駆動によって回動し、アーム11は、アームシリンダ14の伸縮駆動によって回動し、アタッチメント12は、アタッチメントシリンダ15の伸縮駆動によって回動するようになっている。なお、バケットは、オプションアクチュエータ16(後述の
図2参照)が組み込まれた他のアタッチメントと交換可能にしている。
【0019】
旋回体2の運転室17には、運転者が着座する運転席(図示せず)が設けられている。運転席の前側には、左走行モータ9Aの動作を指示する左走行用操作装置18A(後述の
図2参照)と、右走行モータ9Bの動作を指示する右走行用操作装置18B(後述の
図2参照)が設けられている。走行用操作装置の外側には、オプションアクチュエータ16の動作を指示するオプション用操作装置(図示せず)が設けられている。
【0020】
運転席の左側には、旋回モータ4の動作及びアームシリンダ14の動作を指示する作業用操作装置(図示せず)が設けられている。運転席の右側には、ブームシリンダ13の動作及びアタッチメントシリンダ15の動作を指示する作業用操作装置(図示せず)が設けられている。旋回体2の運転室17以外の部分には、エンジン19(後述の
図2参照)等の機器が搭載されている。
【0021】
図2は、本実施形態における油圧ショベルの油圧駆動装置の構成を表す図である。なお、この
図2において、走行用操作装置18A,18B以外の他の操作装置の図示を省略するとともに、それらの説明を省略する。
【0022】
油圧ショベルの油圧駆動装置は、エンジン19によって駆動される油圧ポンプ20A,20Bと、複数の油圧アクチュエータ(詳細には、上述した旋回モータ4、左走行モータ9A、右走行モータ9B、ブームシリンダ13、アームシリンダ14、アタッチメントシリンダ15、及びオプションアクチュエータ16)と、複数の流量制御弁(詳細には、旋回用流量制御弁21、左走行用流量制御弁22A、右走行用流量制御弁22B、ブーム用流量制御弁23A,23B、アーム用流量制御弁24A,24B、アタッチメント用流量制御弁25、及びオプション用流量制御弁26)と、コントローラ27(制御装置)とを備えている。
【0023】
全ての流量制御弁は、オープンセンタ型であって、油圧ポンプ20Aの吐出側に接続された第1の弁グループと、油圧ポンプ20Bの吐出側に接続された第2の弁グループに分類される。
【0024】
第1の弁グループは、左走行用流量制御弁22A、オプション用流量制御弁26、ブーム用流量制御弁23A、アーム用流量制御弁24A、及び旋回用流量制御弁21を有している。走行用流量制御弁22A、オプション用流量制御弁26、ブーム用流量制御弁23A、アーム用流量制御弁24A、及び旋回用流量制御弁21は、互いにパラレルに接続されている。
【0025】
第2の弁グループは、右走行用流量制御弁22B、アタッチメント用流量制御弁25、ブーム用流量制御弁23B、及びアーム用流量制御弁24Bを有している。右走行用流量制御弁22Bは、アタッチメント用流量制御弁25、ブーム用流量制御弁23B、及びアーム用流量制御弁24Bに対してタンデムに、かつ、油圧ポンプ20Bから供給される圧油の流れに対し上流側に接続されている。アタッチメント用流量制御弁25、ブーム用流量制御弁23B、及びアーム用流量制御弁24Bは、互いにパラレルに接続されている。これにより、油圧ポンプ20Bからの圧油がアタッチメント用流量制御弁25、ブーム用流量制御弁23B、及びアーム用流量制御弁24Bよりも優先的に右走行用流量制御弁22Bに供給される。
【0026】
左走行用操作装置18Aは、前後方向に手でも足でも操作可能な操作レバーと、この操作レバーの中立位置から前側の操作量に対応する前側パイロット圧を生成して出力するパイロット弁と、操作レバーの中立位置から後側の操作量に対応する後側パイロット圧を生成して出力するパイロット弁とを有している。なお、2つのパイロット弁の出力ラインにはパイロット圧センサ28A,28B(操作量検出器)がそれぞれ設けられており、パイロット圧センサ28A,28Bで検出されたパイロット圧(すなわち、左走行用操作装置18Aの操作量)がコントローラ27へ出力されるようになっている。
【0027】
同様に、右走行用操作装置18Bは、前後方向に手でも足でも操作可能な操作レバーと、この操作レバーの中立位置から前側の操作量に対応する前側パイロット圧を生成して出力するパイロット弁と、操作レバーの中立位置から後側の操作量に対応する後側パイロット圧を生成して出力するパイロット弁とを有している。なお、2つのパイロット弁の出力ラインにはパイロット圧センサ28C,28D(操作量検出器)がそれぞれ設けられており、パイロット圧センサ28C,28Dで検出されたパイロット圧(すなわち、右走行用操作装置18Bの操作量)がコントローラ27へ出力されるようになっている。
【0028】
左走行用流量制御弁22Aは、左走行用操作装置18Aによって操作され、油圧ポンプ20Aから左走行モータ9Aへの圧油の流れ(方向及び流量)を制御するようになっている。詳細には、例えば左走行用操作装置18Aの操作レバーが中立位置にある場合、左走行用流量制御弁22Aのスプール(弁体)がノーマル位置にある。このとき、油圧ポンプ20Aからの圧油をタンクに戻すためのセンタバイパス通路が全開となる。
【0029】
そして、左走行用操作装置18Aの操作レバーが前側に操作されて、左走行用操作装置18Aからの前側パイロット圧が左走行用流量制御弁22Aの受圧部LFに入力されると、左走行用流量制御弁22Aのスプールが
図2中右側に移動する。このとき、
図3で示すように、スプールのストローク量の増加にしたがってセンタバイパス通路の開口面積が減少するとともに、油圧ポンプ20Aからの圧油を左走行モータ9Aの一方側ポートへ送るためのメータイン通路の開口面積が増加し、左走行モータ9Aの他方側ポートからの圧油をタンクに送るためのメータアウト通路の開口面積が増加する。その結果、左走行モータ9Aが前方向に回転する。
【0030】
一方、例えば左走行用操作装置18Aの操作レバーが後側に操作されて、左走行用操作装置18Aからの後側パイロット圧が左走行用流量制御弁22Aの受圧部LRに入力されると、左走行用流量制御弁22Aのスプールが
図2中左側に移動する。これにより、
図3で示すように、スプールのストローク量の増加にしたがってセンタバイパス通路の開口面積が減少するとともに、油圧ポンプ20Aからの圧油を左走行モータ9Aの他方側ポートへ送るためのメータイン通路の開口面積が増加し、左走行モータ9Aの一方側ポートからの圧油をタンクに送るためのメータアウト通路の開口面積が増加する。その結果、左走行モータ9Aが後方向に回転する。
【0031】
右走行用流量制御弁22Bは、右走行用操作装置18Bによって操作され、油圧ポンプ20Bから右走行モータ9Bへの圧油の流れを制御するようになっている。その詳細は、左走行用流量制御弁22Aと同様であるため、説明を省略する。
【0032】
油圧ポンプ20A,20Bは、可変容量型であって、それらの容量をそれぞれ制御する容量制御アクチュエータ29A,29Bが設けられている。各容量制御アクチュエータは、詳細を図示しないものの、コントローラ27からの制御信号によって駆動され、制御圧を生成する電磁弁と、この電磁弁で生成された制御圧によって駆動され、油圧ポンプの斜板(押しのけ容積可変部材)の傾斜角を制御するレギュレータとで構成されている。
【0033】
油圧ポンプ20A,20Bの吐出側には吐出圧センサ30A,30B(吐出圧検出器)がそれぞれ設けられており、吐出圧センサ30A,30Bでそれぞれ検出された油圧ポンプ20Aの吐出圧及び油圧ポンプ20Bの吐出圧がコントローラ27へ出力されるようになっている。エンジン19には回転数センサ31(回転数検出器)が設けられており、回転数センサ31で検出されたエンジン19の回転数がコントローラ27へ出力されるようになっている。
【0034】
本実施形態の要部であるコントローラ27は、パイロット圧センサ28A〜28D、吐出圧センサ30A,30B、及び回転数センサ31の検出結果を入力し、それらに基づいて容量制御アクチュエータ29A,29Bを制御するようになっている。なお、コントローラ27は、プログラムに基づいて演算処理や制御処理を実行する演算制御部(例えばCPU)と、プログラムや演算処理の結果を記憶する記憶部(例えばROM、RAM)等を有するものである。
【0035】
図4は、本実施形態におけるコントローラの処理機能を表すブロック図である。
【0036】
本実施形態のコントローラ27は、機能的構成として、走行モータ目標供給流量演算部32、ブリードオフ流量演算部33、ポンプ目標吐出流量演算部34、及びポンプ容量制御部35を有している。また、全走行モータ目標供給動力演算部36、ブリードオフ損失演算部37、全走行モータ供給可能動力演算部38、判定部39、及び走行モータ目標供給流量補正部40を有している。
【0037】
走行モータ目標供給流量演算部32は、走行用操作装置のパイロット圧(言い換えれば、走行用操作装置の操作量)と走行モータへの目標供給電流との関係が予め設定された演算テーブル(
図5参照)を有している。この演算テーブルは、例えば走行モータの負荷が比較的小さい場合を想定して設定されている。
【0038】
そして、前述した演算テーブルを用いることにより、パイロット圧センサ28A又は28Bで検出された左走行用操作装置18Aのパイロット圧(言い換えれば、操作量)が増加するのにしたがって、左走行モータ9Aへの目標供給流量Q
LTgtを増加するよう演算する。同様に、前述した演算テーブルを用いることにより、パイロット圧センサ28C又は28Dで検出された右走行用操作装置18Bのパイロット圧(言い換えれば、操作量)が増加するのにしたがって、右走行モータ9Bへの目標供給流量Q
RTgtを増加するよう演算する。
【0039】
ブリードオフ流量演算部33は、走行用操作装置のパイロット圧と走行用流量制御弁のセンタバイパス通路の開口面積との関係が予め設定された演算テーブル(
図6参照)を有している。そして、前述した演算テーブルを用いることにより、パイロット圧センサ28A又は28Bで検出された左走行用操作装置18Aのパイロット圧から、左走行用流量制御弁22Aのセンタバイパス通路の開口面積A
CbLを演算する。同様に、前述した演算テーブルを用いることにより、パイロット圧センサ28C又は28Dで検出された右走行用操作装置18Bのパイロット圧から、右走行用流量制御弁22Bのセンタバイパス通路の開口面積A
CbRを演算する。
【0040】
そして、下記の式(1)を用いて、吐出圧センサ30Aで検出された油圧ポンプ20Aの吐出圧P
1と、演算された左走行用流量制御弁22Aのセンタバイパス通路の開口面積A
CbLにより、左走行用流量制御弁22Aのセンタバイパス通路の流量(ブリードオフ流量)Q
BoLを演算する。同様に、下記の式(2)を用いて、吐出圧センサ30Bで検出された油圧ポンプ20Bの吐出圧P
2と、演算された右走行用流量制御弁22Bのセンタバイパス通路の開口面積A
CbRにより、右走行用流量制御弁22Bのセンタバイパス通路の流量(ブリードオフ流量)Q
BoRを演算する。なお、式中のC
dはセンタバイパス通路の流量係数、ρは圧油の密度である。
【0043】
全走行モータ目標供給動力演算部36は、下記の式(3)で示すように、吐出圧センサ30A,30Bで検出された油圧ポンプ20Aの吐出圧P
1及び油圧ポンプ20Bの吐出圧P
2と、走行モータ目標流量演算部32で演算された左走行モータ9Aへの目標供給流量Q
LTgt及び右走行モータ9Bへの目標供給流量Q
RTgtにより、全走行モータ目標供給動力W
Tgtを演算する。すなわち、油圧ポンプ20Aの吐出圧P
1と左走行モータ9Aへの目標供給流量Q
LTgtを乗算することで左走行モータ9Aへの目標供給動力を演算し、油圧ポンプ20Bの吐出圧P
2と右走行モータ9Bへの目標供給流量Q
RTgtを乗算することで右走行モータ9Bへの目標供給動力を演算し、それらを加算することで全走行モータ目標供給動力W
Tgtを演算する。
【0045】
ブリードオフ損失演算部37は、下記の式(4)で示すように、吐出圧センサ30A,30Bで検出された油圧ポンプ20Aの吐出圧P
1及び油圧ポンプ20Bの吐出圧P
2と、ブリードオフ流量演算部33で演算された左走行用流量制御弁22Aのブリードオフ流量Q
BoL及び右走行用流量制御弁22Bのブリードオフ流量Q
BoRにより、全ブリードオフ損失L
Boを演算する。すなわち、油圧ポンプ20Aの吐出圧P
1と左走行用流量制御弁22Aのブリードオフ流量Q
BoLを乗算することで左走行用流量制御弁22Aのブリードオフ損失を演算し、油圧ポンプ20Bの吐出圧P
2と右走行用流量制御弁22Bのブリードオフ流量Q
BoRを乗算することで右走行用流量制御弁22Bのブリードオフ損失を演算し、それらを加算することで全ブリードオフ損失L
Boを演算する。
【0047】
全走行モータ供給可能動力演算部38は、下記の式(5)で示すように、全ポンプ出力上限値W
Limから全ブリードオフ損失L
Boを減算して、全走行モータ供給可能動力W
Trvを演算する。なお、全ポンプ出力上限値W
Limは、エンジン19の出力からパイロットポンプ等の補機(図示せず)の動力と油圧ポンプ20A,20Bの駆動に伴う損失を減算することで求められる。
【0049】
判定部39は、全走行モータ目標供給動力W
Tgtがその上限値である全走行モータ供給可能動力W
Trvを超えるか否かを判定する。そして、全走行モータ目標供給動力W
Tgtが全走行モータ供給可能動力W
Trvを超えないと判定した場合に、走行モータ目標供給流量補正部40に補正なしの指令を出力する。これにより、走行モータ目標流量演算部32で演算された左走行モータ9Aへの目標供給流量Q
LTgt及び右走行モータ9Bへの目標供給流量Q
RTgtは、走行モータ目標供給流量補正部40で補正されることなく、ポンプ目標吐出流量演算部34に出力される。
【0050】
このように補正が行われない場合、ポンプ目標吐出流量演算部34は、下記の式(6)で示すように、走行モータ目標流量演算部32で演算された左走行モータ9Aへの目標供給流量Q
LTgtとブリードオフ流量演算部33で演算された左走行用流量制御弁22Aのブリードオフ流量Q
BoLを加算して、油圧ポンプ20Aの目標吐出流量Q
1Tgtを演算する。同様に、下記の式(7)で示すように、走行モータ目標流量演算部32で演算された右走行モータ9Bへの目標供給流量Q
RTgtとブリードオフ流量演算部33で演算された右走行用流量制御弁22Bのブリードオフ流量Q
BoRを加算して、油圧ポンプ20Bの目標吐出流量Q
2Tgtを演算する。
【0053】
判定部39は、全走行モータ目標供給動力W
Tgtが全走行モータ供給可能動力W
Trvを超えると判定した場合に、走行モータ目標供給流量補正部40に補正ありの指令を出力する。走行モータ目標供給流量補正部40は、補正ありの指令に従い、下記の式(8)で示すように、全走行モータ目標供給動力に対する全走行モータ供給可能動力の比率(W
Trv/W
Tgt)を左走行モータ9Aへの目標供給流量Q
LTgtに乗算して、左走行モータ9Aへの目標供給流量の補正値Q
LAvlを演算する。同様に、下記の式(9)で示すように、全走行モータ目標供給動力に対する全走行モータ供給可能動力の比率(W
Trv/W
Tgt)を右走行モータ9Bへの目標供給流量Q
RTgtに乗算して、右走行モータ9Bへの目標供給流量の補正値Q
RAvlを演算する。
【0056】
なお、式(8)及び(9)で示すように、左走行モータ9Aへの目標供給流量Q
LTgt、右走行モータ9Bへの目標供給流量Q
RTgt、油圧ポンプ20Aの吐出圧P
1、油圧ポンプ20Bの吐出圧P
2、及び全走行モータ供給可能動力W
Trvにより、左走行モータ9Aへの目標供給流量の補正値Q
LAvl及び右走行モータ9Bへの目標供給流量の補正値Q
RAvlを演算してもよい。
【0057】
このように補正が行われた場合、ポンプ目標吐出流量演算部34は、下記の式(10)で示すように、走行モータ目標流量補正部40で演算された左走行モータ9Aへの目標供給流量の補正値Q
LAvlとブリードオフ流量演算部33で演算された左走行用流量制御弁22Aのブリードオフ流量Q
BoLを加算して、油圧ポンプ20Aの目標吐出流量Q
1Tgtを演算する。同様に、下記の式(11)で示すように、走行モータ目標流量補正部40で演算された右走行モータ9Bへの目標供給流量の補正値Q
RAvlとブリードオフ流量演算部33で演算された右走行用流量制御弁22Bのブリードオフ流量Q
BoRを加算して、油圧ポンプ20Bの目標吐出流量Q
2Tgtを演算する。
【0060】
ポンプ容量制御部35は、ポンプ目標吐出流量演算部34で演算された油圧ポンプ20Aの目標吐出流量Q
1Tgtを回転数センサ31で検出されたエンジン19の回転数で除算することで油圧ポンプ20Aの目標容量を演算し、これに対応する制御信号を生成して容量制御アクチュエータ29Aに出力する。これにより、ポンプ目標吐出流量演算部34で演算された油圧ポンプ20Aの目標吐出流量Q
1Tgtとなるように容量制御アクチュエータ29Aを制御する。同様に、ポンプ目標吐出流量演算部34で演算された油圧ポンプ20Bの目標吐出流量Q
2Tgtを回転数センサ31で検出されたエンジン19の回転数で除算することで油圧ポンプ20Bの目標容量を演算し、これに対応する制御信号を生成して容量制御アクチュエータ29Bに出力する。これにより、ポンプ目標吐出流量演算部34で演算された油圧ポンプ20Bの目標吐出流量Q
2Tgtとなるように容量制御アクチュエータ29Bを制御する。
【0061】
次に、本実施形態の作用効果を、従来技術(詳細には、例えば、走行用操作装置の操作量が増加するのにしたがって油圧ポンプの吐出流量を増加するように制御する、一般的なポジティブ制御を行う場合)と比較しながら説明する。
図7は、従来技術における油圧ショベルの走行軌跡を表す上面図である。
【0062】
従来技術にて、右走行用操作装置18Bの操作量が最大値、左走行用操作装置18Aの操作量が中間値である場合、すなわち、右走行用流量制御弁22Bのブリードオフ流量がゼロ、左走行用流量制御弁22Aのブリードオフ流量がゼロより大きい場合を想定する。この場合、右走行モータ9Bの負荷に応じて油圧ポンプ20Bの吐出圧が上昇しても、右走行用流量制御弁22Bのブリードオフ流量がゼロのままであるから、右走行モータ9Bへの供給流量がほぼ変化しない。一方、左走行モータ9Aの負荷に応じて油圧ポンプ20Aの吐出圧が上昇すると、油圧ポンプ20Aの吐出流量のうちの左走行用流量制御弁22Aのブリードオフ流量の割合が増加し、左走行モータ9Aへの供給流量が減少する。
【0063】
したがって、従来技術では、走行モータの負荷が比較的小さいときに、
図7中一点鎖線Aで示すような走行軌跡となるものの、走行モータの負荷が比較的大きいときに、
図7中二点鎖線Bで示すような走行軌跡に変化する。
【0064】
これに対し、本実施形態では、走行モータの負荷に応じて変化する走行用流量制御弁のブリードオフ流量を演算し、これを加味して油圧ポンプの吐出流量を制御する。これにより、走行モータの負荷の変化に伴う走行用流量制御弁のブリードオフ流量の変化に対応することができ、走行モータへの供給流量を安定させることができる。したがって、走行モータの負荷の影響を受けずに走行軌跡を安定させることができる。
【0065】
本発明の第2の実施形態を、
図8及び
図9を用いて説明する。なお、本実施形態において、第1の実施形態と同等の部分は同一の符号を付し、適宜、説明を省略する。
【0066】
図8は、本実施形態におけるコントローラの処理機能を表すブロック図である。
【0067】
本実施形態のコントローラ27Aの判定部39Aは、全走行モータ目標供給動力W
Tgtが全走行モータ供給可能動力W
Trvを超えると判定した場合に、全走行モータ目標供給動力に対する全走行モータ供給可能動力の比率(W
Trv/W
Tgt)が予め設定された所定値(但し、0を超えて1未満の値)以下であるか否かを更に判定する。そして、比率(W
Trv/W
Tgt)が所定値を超えると判定した場合に、第1の実施形態と同様、走行モータ目標供給流量補正部40Aに補正ありの指令を出力する。走行モータ目標供給流量補正部40Aは、第1の実施形態と同様、補正ありの指令に従い、左走行モータ9Aへの目標供給流量の補正値Q
LAvl及び右走行モータ9Bへの目標供給流量の補正値Q
RAvlを演算する。
【0068】
判定部39Aは、比率(W
Trv/W
Tgt)が所定値以下であると判定した場合に、走行モータ目標供給流量補正部40Aに一次・二次補正ありの指令を出力する。
【0069】
走行モータ目標供給流量補正部40Aは、一次・二次補正ありの指令に従い、まず、左走行モータ9Aへの目標供給流量と右走行モータ9Bへの目標供給流量との差分|Q
LTgt−Q
RTgt|を演算し、
図9で示す演算テーブルを用いて一次補正量Q
Adjを演算する。すなわち、差分|Q
LTgt−Q
RTgt|が増加するのにしたがって一次補正量Q
Adjを増加するよう演算する。そして、下記の式(12)で示すように、左走行モータ9Aへの目標供給流量Q
LTgtと右走行モータ9Bへの目標供給流量Q
RTgtのうちの小さいほうから一次補正量Q
Adjを減算する(但し、ゼロ未満となる場合はゼロに繰り上げる)とともに、左走行モータ9Aへの目標供給流量Q
LTgtと右走行モータ9Bへの目標供給流量Q
RTgtのうちの大きいほうに一次補正量Q
Adjを加算して、左走行モータ9Aへの目標供給流量の一次補正値Q
LTgt’と右走行モータ9Bへの目標供給流量の一次補正値Q
RTgt’を演算する。
【0071】
そして、下記の式(13)で示すように、左走行モータ9Aへの目標供給流量の一次補正値Q
LTgt’と右走行モータ9Bへの目標供給流量の一次補正値Q
RTgt’に対応するように全走行モータ目標供給動力の補正値W
Tgt’を演算する。そして、下記の式(14)で示すように、全走行モータ目標供給動力の補正値に対する全走行モータ供給可能動力の比率(W
Trv/W
Tgt’)を左走行モータ9Aへの目標供給流量の一次補正値Q
LTgt’に乗算して、左走行モータ9Aへの目標供給流量の二次補正値Q
LAvl’を演算する。同様に、下記の式(15)で示すように、全走行モータ目標供給動力の補正値に対する全走行モータ供給可能動力の比率(W
Trv/W
Tgt’)を右走行モータ9Bへの目標供給流量の一次補正値Q
RTgt’に乗算して、右走行モータ9Bへの目標供給流量の二次補正値Q
RAvl’を演算する。
【0075】
なお、全走行モータ目標供給動力の補正値W
Tgt’を演算しなくとも、左走行モータ9Aへの目標供給流量の一次補正値Q
LTgt’、右走行モータ9Bへの目標供給流量の一次補正値Q
RTgt’、油圧ポンプ20Aの吐出圧P
1、油圧ポンプ20Bの吐出圧P
2、及び全走行モータ供給可能動力W
Trvにより、左走行モータ9Aへの目標供給流量の二次補正値Q
LAvl’及び右走行モータ9Bへの目標供給流量の二次補正値Q
RAvl’を演算してもよい。
【0076】
このように一次・二次補正が行われた場合、ポンプ目標吐出流量演算部34は、下記の式(16)で示すように、走行モータ目標流量補正部40で演算された左走行モータ9Aへの目標供給流量の二次補正値Q
LAvl’とブリードオフ流量演算部33で演算された左走行用流量制御弁22Aのブリードオフ流量Q
BoLを加算して、油圧ポンプ20Aの目標吐出流量Q
1Tgtを演算する。同様に、下記の式(17)で示すように、走行モータ目標流量補正部40で演算された右走行モータ9Bへの目標供給流量の二次補正値Q
RAvl’とブリードオフ流量演算部33で演算された右走行用流量制御弁22Bのブリードオフ流量Q
BoRを加算して、油圧ポンプ20Bの目標吐出流量Q
2Tgtを演算する。
【0079】
以上のように構成された本実施形態においても、第1の実施形態と同様、走行モータの負荷の影響を受けずに走行軌跡を安定させることができる。
【0080】
また、第1の実施形態では、全走行モータ目標供給動力に対する全走行モータ供給可能動力の比率(W
Trv/W
Tgt)が所定値以下である場合、左走行用操作装置18Aの操作量と右走行用操作装置18Bの操作量との差分に対し、左走行モータ9Aへの目標供給流量の補正値Q
LAvlと右走行モータ9Bへの目標供給流量の補正値Q
RAvlとの差分(ひいては、左走行モータ9Aの回転速度と右走行モータ9Bの回転速度との差分)が小さくなる。そのため、操作性が悪化する。一方、本実施形態では、左走行モータ9Aへの目標供給流量と右走行モータ9Bへの目標供給流量との差分が大きくなるように一次補正するので、操作性の悪化を防ぐことができる。
【0081】
なお、第1及び第2の実施形態においては、走行用操作装置18A,18Bの操作時を想定してコントローラ27又は27Aの処理機能を説明したが、走行用操作装置18A,18Bと他の操作装置の複合操作時にも適用可能である。すなわち、コントローラ27又は27Aの全走行モータ供給可能動力演算部38は、複合操作時に、ポンプ出力上限値W
Limから全ブリードオフ損失L
Boだけでなく他の油圧アクチュエータの動力を減算することで、全走行モータ供給可能動力W
Trvを演算すればよい。
【0082】
また、第1及び第2の実施形態においては、コントローラ27又は27Aは、全ブリードオフ損失L
Boを演算するブリードオフ損失演算部37と、全ポンプ出力上限値W
Limから全ブリードオフ損失L
Boを減算することで全走行モータ供給可能動力W
Trvを演算する全走行モータ供給可能動力演算部38とを有する場合を例にとって説明したが、これに限られず、本発明の趣旨及び技術思想を逸脱しない範囲内で変形が可能である。すなわち、コントローラは、ブリードオフ損失演算部37と全走行モータ供給可能動力演算部38を有せず、全走行モータ供給可能動力を設定値としてもよい。
【0083】
また、第1及び第2の実施形態においては、例えばエンジン19の出力が比較的小さい等の理由から、全走行モータ目標供給動力W
Tgtがその上限値である全走行モータ供給可能動力W
Trvを上回る場合を想定する必要がある。そのため、コントローラ27又は27Aは、全走行モータ目標供給動力演算部36、ブリードオフ損失演算部37、全走行モータ供給可能動力演算部38、判定部39、及び走行モータ目標供給流量補正部40を有する場合を例にとって説明したが、これに限られず、本発明の趣旨及び技術思想を逸脱しない範囲内で変形が可能である。すなわち、例えばエンジン19の出力が比較的大きい等の理由から、全走行モータ目標供給動力W
Tgtがその上限値である全走行モータ供給可能動力W
Trvを上回ることがなければ、コントローラは、全走行モータ目標供給動力演算部36、ブリードオフ損失演算部37、全走行モータ供給可能動力演算部38、判定部39、及び走行モータ目標供給流量補正部40を有しなくてよい。
【0084】
また、第1及び第2の実施形態においては、操作量検出器として、走行用操作装置18A,18Bのパイロット弁から出力されたパイロット圧を検出するパイロット圧センサ28A〜28Dを設けた場合を例にとって説明したが、これに限られず、本発明の趣旨及び技術思想を逸脱しない範囲内で変形が可能である。すなわち、例えば、操作レバー装置18A,18Bの操作レバーの操作量を検出するストロークセンサを設けてもよい。
【0085】
なお、以上においては、本発明の適用対象として、油圧ショベルを例にとって説明したが、これに限られず、ホイールローダ等の他の建設機械に適用してもよい。