特許第6549118号(P6549118)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6549118浮遊エラストマースリーブを伴う人工呼吸器
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6549118
(24)【登録日】2019年7月5日
(45)【発行日】2019年7月24日
(54)【発明の名称】浮遊エラストマースリーブを伴う人工呼吸器
(51)【国際特許分類】
   A62B 18/08 20060101AFI20190711BHJP
【FI】
   A62B18/08 Z
【請求項の数】6
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2016-530867(P2016-530867)
(86)(22)【出願日】2014年11月11日
(65)【公表番号】特表2016-538047(P2016-538047A)
(43)【公表日】2016年12月8日
(86)【国際出願番号】US2014064970
(87)【国際公開番号】WO2015073414
(87)【国際公開日】20150521
【審査請求日】2017年11月8日
(31)【優先権主張番号】14/081,396
(32)【優先日】2013年11月15日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】505005049
【氏名又は名称】スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100110803
【弁理士】
【氏名又は名称】赤澤 太朗
(74)【代理人】
【識別番号】100135909
【弁理士】
【氏名又は名称】野村 和歌子
(74)【代理人】
【識別番号】100133042
【弁理士】
【氏名又は名称】佃 誠玄
(74)【代理人】
【識別番号】100157185
【弁理士】
【氏名又は名称】吉野 亮平
(72)【発明者】
【氏名】ブロムバーグ, デイヴィッド エム.
【審査官】 二之湯 正俊
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許第06298849(US,B1)
【文献】 米国特許第05505197(US,A)
【文献】 特表2010−537721(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A62B 7/00−33/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エラストマースリーブと剛性外側部分とを有する受取部を含む本体と、
外面を有する剛性ノズル要素と、を含み、
前記受取部は前記本体の開口を画定し、前記剛性外側部分は前記開口に最も近接しており、前記剛性外側部分が前記開口と前記エラストマースリーブとの間に位置するように、前記エラストマースリーブは前記剛性外側部分に近接しており、
前記エラストマースリーブの内面と前記剛性外側部分の内面とはそれぞれ前記開口から延びる経路を画定し、前記エラストマースリーブは、前記ノズル要素が前記経路内に挿入されると前記ノズル要素の前記外面の周りで変形するように構成されている、人工呼吸器装置。
【請求項2】
前記エラストマースリーブは第1の端部部分及び第2の端部部分を有し、前記本体は、
前記本体の内部空間の第1のチャンバと第2のチャンバとを分ける内壁を含み、前記エラ
ストマースリーブの前記第1の端部部分は前記内壁と接触する、請求項1に記載の人工呼
吸器装置。
【請求項3】
前記エラストマースリーブは熱硬化性材料で作製されている、請求項1に記載の人工呼
吸器装置。
【請求項4】
前記剛性ノズル要素の外面は、剛性ノズル要素が前記経路に挿入された際に前記剛性ノズル要素と前記剛性外側部分との間での回転を防止する非円形状である、請求項1〜3の何れか一項記載の人口呼吸装置。
【請求項5】
剛性外側部分を有するフィルタカートリッジ受取部と、経路を画定する内面及び外面を有するエラストマースリーブと、を含む本体と、
外面を有する剛性ノズル要素を含むフィルタカートリッジと、を含み、
前記フィルタカートリッジ受取部は前記本体の開口を画定し、前記剛性外側部分は前記開口に最も近接しており、前記剛性外側部分が前記開口と前記エラストマースリーブとの間に位置するように、前記エラストマースリーブは前記剛性外側部分に近接しており、
前記エラストマースリーブの内面と前記剛性外側部分の内面とはそれぞれ前記開口から延びる経路を画定し、
前記エラストマースリーブの前記外面の少なくとも一部は剛性部品と接触せず、前記エ
ラストマースリーブは、前記ノズル要素が前記経路内に挿入されると前記ノズル要素の前
記外面の周りで広がるように構成されている、人工呼吸器装置。
【請求項6】
前記剛性ノズル要素の外面は、剛性ノズル要素が前記経路に挿入された際に前記剛性ノズル要素と前記剛性外側部分との間での回転を防止する非円形状である、請求項5に記載の人口呼吸装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、人工呼吸器装置に関し、詳細には、ノズル要素の周りで変形するように構成されたエラストマースリーブを有する受取部を含む人工呼吸器装置に関する。
【背景技術】
【0002】
呼吸保護装置は通常、マスク本体と、マスク本体に取り付けられた1つ又は複数のフィルタカートリッジと、を含む。マスク本体は人の顔面の鼻及び口を覆って装着され、頭部、頸部、又は場合によっては他の身体部分を覆う部分を含み得る。清浄な空気が、フィルタカートリッジ内に配置された濾材を通過した後に、装着者に利用可能になる。負圧呼吸保護装置では、吸入中に装着者が生成する負圧によって、空気がフィルタカートリッジを通して引き出される。動力付き空気装置では、ファン又は他の動力装置が、ユーザへの空気送達を助ける場合がある。外部環境からの空気が濾材を通ってマスク本体の内部空間に入り、そこで装着者によって吸入されることができる。
【0003】
フィルタカートリッジ又は要素を人工呼吸器に取り付けるために様々な技術が用いられている。フィルタカートリッジは通常、例えばネジ付き嵌合、バイオネット嵌合、又は他の嵌合を介して、マスク本体の吸気ポートに接続されている。デュアルカートリッジ呼吸保護装置(2つのカートリッジが設けられて装着者に対する空気を濾過する)の場合、フィルタカートリッジは、マスクの各頬部分に近接して位置する空気吸入口(マスクの中央部分から離れている)に接続されていることが多く、カートリッジが装着者の頭部の側面で外側に延在するようになっている。吸入用逆止め弁が通常、各空気吸入口に対して設けられており、空気がフィルタカートリッジから呼吸ゾーン内に、例えば、中央部分から離れている空気吸入口(マスク本体の各頬部分に近接している)を通って送出され得るようになっている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
本開示によって、エラストマースリーブを含む受取部を有する本体と、外面を有する剛性ノズル要素と、を含む装置が提供される。エラストマースリーブは経路を画定し、エラストマースリーブはノズル要素が経路内に挿入されるとノズル要素の外面の周りで変形するように構成されている。
【0005】
本開示によって、本体とフィルタカートリッジとを含む人工呼吸器装置が更に提供される。本体は、フィルタカートリッジ受取部と、外面及び経路を画定する内面を有するエラストマースリーブと、を含む。フィルタカートリッジは、外面を有する剛性ノズル要素を含む。エラストマースリーブの外面の少なくとも一部は剛性部品と接触せず、エラストマースリーブは、ノズル要素が経路内に挿入されるとノズル要素の外面の周りで広がるように構成されている。
【0006】
上記概要は、開示された各実施形態又はすべての具体化を説明することは意図されていない。以下の図面及び発明を実施するための形態によって、例示的な実施形態をより具体的に例証する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
添付の図を参照して開示内容を更に説明することができ、添付図では複数の図の全体を通して同様の構造を同様の数字によって参照している。
図1】本開示による典型的な人工呼吸器装置の斜視図である。
図2】本開示による典型的な人工呼吸器カートリッジの斜視図である。
図3】本開示による典型的な受取部の部分図である。
図4】本開示による典型的な受取部の部分図である。
図5】本開示による典型的なノズル及び受取部の部分断面図である。
図6】本開示による典型的なノズル及び受取部の部分断面図である。
【0008】
前述した図では、開示した主題の種々の実施形態について記載しているが、他の実施形態も考えられる。すべての場合において、本開示では、開示した主題を、限定としてではなく代表として示している。当然のことながら、当業者であれば、本開示の原理の範囲及び趣旨に入る他の多くの変更及び実施形態を考案することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本開示によって、受取部を含む本体と剛性ノズル要素とを含む人工呼吸器装置が提供される。受取部は、経路を画定するエラストマースリーブを含む。ノズル要素がエラストマースリーブの経路内に挿入されると、エラストマースリーブは、ノズル要素の外面の周りで変形してノズルの周りにシールを形成する。こうして、例えばフィルタカートリッジが本体に容易に結合される一方で、不要な汚染物質及び破片の侵入を防止する堅固なシールを提供することができる。
【0010】
図1は、嵌合解除されたフィルタカートリッジ120を含む典型的な人工呼吸器装置100の斜視図である。典型的な人工呼吸器装置100はハーフマスク人工呼吸器であり得、これはユーザによって装着されて、鼻及び口を覆い内部空隙を画定し得る。人工呼吸器装置100は、本体110(例えばマスク本体)を含み、1つ又は複数のフィルタカートリッジ120が本体110の対向する面上に配置されている。本体110は、例えば本体110の対向する面上に1つ又は複数の受取部140を含んでおり、これらはフィルタカートリッジ120の一部を受け取るように構成されている。本体110とフィルタカートリッジ120とは流体的に結合されて、受取部140がフィルタカートリッジ120と協同してフィルタカートリッジ120と本体110との間に空気流経路を形成するようになっていてもよい。他の典型的な実施形態では、本体110は動力付き空気人工呼吸器装置(例えば、動力付き空気浄化人工呼吸器、又は頭部装着型人工呼吸器装置本体)のハウジング若しくは部品であり得、及び/又は受取部はホース若しくは他の空気送出部品に流体的に結合されていてもよい。
【0011】
本体110は、1つ又は複数の剛体部分111とエラストマー顔面接触部分112とを含むことができる。呼気弁113を本体110上に配置して、呼気を内部空隙からパージできるようにしてもよい。人工呼吸器装置100はまた、ユーザの頭部上で本体110を支持することができるハーネスアセンブリ(図示せず)を含んでもよい。
【0012】
1つ又は複数のラッチ、ネジ山、コネクタ、又は当該技術分野で知られる他の好適な相補的特徴部によって、フィルタカートリッジ120を本体110及び/又は受取部140に固定することができる。典型的な実施形態では、人工呼吸器装置100は、フィルタカートリッジ120及び/又はノズル要素130を受取部140に固定するカンチレバーラッチ150を含む。図1〜5の実施形態では、カンチレバーラッチ150は、フィルタカートリッジ120と一体であり、ノズル要素130と実質的に平行か同一に広がっている。受取部140又は本体110は、開口部114及び/又は合わせ面115を含み、これらはカンチレバーラッチ150と協同して、本体110とフィルタカートリッジ120との間の確実な機械的接続を実現する。
【0013】
カンチレバーラッチ150は、本体110との嵌合を容易にする1つ又は複数の特徴部を含む。典型的な実施形態では、カンチレバーラッチ150は、カンチレバーラッチ150の長さ(又はいくつかの実施形態では遠位端)に沿って位置する固定用突出物151及びプッシュボタン152を含む。固定用突出物151は、合わせ面115と協同してフィルタカートリッジ120を本体110に固定するのを助けるように構成してもよい。プッシュボタン152は、フィルタカートリッジ120を本体110から取り外すように構成されている。ユーザは、力又は圧力をプッシュボタン152に加えて、カンチレバーラッチ150を偏向させ、固定用突出物151を合わせ面115から取り外すことができる。次いで、フィルタカートリッジ120を受取部140から嵌合解除又は取り外すことができる。
【0014】
図2に示すのは、典型的なフィルタカートリッジ120である。フィルタカートリッジ120は、例えば、周囲空気が本体110とユーザの顔面との間の内部空隙内に進む前に、周囲空気を濾過する。典型的な実施形態では、フィルタカートリッジ120は、第1及び第2の主表面121、122と、第1及び第2の主表面121、122間を少なくとも部分的に延びる側壁123と、を有する本体部分124を含む。第1及び第2の主表面121、122並びに/又は側壁123のうちの1つ又は複数は、流体透過性で、空気がフィルタカートリッジ120に入ることができる。いくつかの典型的な実施形態では、フィルタカートリッジ120は、外部ハウジングなしに、又はハウジングによって部分的に囲まれて、主に濾材を含み得る。
【0015】
ノズル要素130は、フィルタカートリッジ120の本体部分124から延びている。典型的な実施形態では、ノズル要素130は本体部分124と一体であり、側壁123から延びている。いくつかの典型的な実施形態では、ノズル要素130は、本体部分124に取り外し可能に又は取り外し不可能に結合し得る別個の部品である。種々の典型的な実施形態では、ノズル要素130は第1又は第2の主表面121、122から延び得る。
【0016】
典型的な実施形態では、ノズル要素130は、先端131、ベース端132、外面133、及び外面133と反対側の内面134を含む。内面134によって空気流経路135が画定されている。ベース端132と先端131との間の任意の特定の場所において、外面133は、周縁部(P)に囲まれた断面積(A)を有する。いくつかの典型的な実施形態では、ノズル要素130の形状はベース端132と先端131との間で変化せず、周縁部(P)及び断面積(A)がノズル要素130の長さにわたって実質的に均一となっている。代替的に、ノズル要素130の形状は、例えば、先端131が示す周縁部(P)及び/又は断面積(A)が、ベース端132により近い場所と比べて小さくなるように変化してもよい。ノズル要素130の先端131がわずかに小さいと、ノズル要素を受取部140内に挿入することが容易になり得る。これについては本明細書で説明する。
【0017】
図3及び4に示すのは、剛性外側部分141とエラストマースリーブ170とを含む典型的な受取部140である。受取部140はフィルタカートリッジ120と嵌合するように構成されており、ノズル要素130が、剛性外側部分141とエラストマースリーブ170とによって画定される経路147内に滑動できるようになっている。典型的な実施形態では、剛性外側部分141によって、本体110とフィルタカートリッジ120との間に一次構造支持及び安定性を得ることができ、エラストマースリーブ170によってノズル要素130の周りにシールがもたらされて、外部環境から不要な汚染物質又は破片が侵入することが防止される。
【0018】
エラストマースリーブ170は、第1の端部部分171、第2の端部部分172、外面173、及び部分的に経路147を画定する内面174、並びに第1の端部部分171と第2の端部部分172との間の経路147の方向に長手方向長さ(l)(図5)を含む。長さ(l)に沿った任意の特定の場所において、内面174によって経路147の断面積(a)が画定され、外面173によって外周縁部(p)が画定される。いくつかの典型的な実施形態では、エラストマースリーブ170の形状は長さ(l)にわたって変化せず、周縁部(p)及び/又は断面積(a)が任意の特定の場所において実質的に均一となっている。代替的に、エラストマースリーブ170の形状は長さ(l)にわたって変化して、例えば、第1の端部部分が示す周縁部(p)及び/又は断面積(a)が、第2の端部部分172により近い場所と比べて小さくなっていてもよい。典型的な実施形態では、ノズル要素130はエラストマースリーブ170よりも相対的に大きく、ノズル要素130がエラストマースリーブ170内に挿入されると妨害が生じるようになっている。エラストマースリーブ170の先端131がわずかに小さいと、例えば、内面174とノズル要素130との間のシールを容易にすることができる。これについては本明細書で更に説明する。
【0019】
エラストマースリーブ170の少なくとも一部は浮遊しているか、そうでなければ外向きの弾性変形又は広がりを抑制する剛性部品と直接接触していない。例えば、外面173の少なくとも一部は、外向きの弾性変形又は広がりを抑制する剛性部品と直接接触していない。典型的な実施形態では、第1の端部部分171は浮遊端部であり、本体110の剛性部品と嵌合していない。エラストマースリーブ170は、外向きの弾性変形又は広がりを抑制し得る性部品によって裏打ちされていない中間部分177を更に含む。エラストマースリーブの少なくとも一部が剛性部品によって裏打ちされていないことで、エラストマースリーブは湾曲及び/又は関節運動することができる。そのため、エラストマースリーブ170はノズル要素130の動きを追跡又は追従することができ、本体110とフィルタカートリッジ120との間で相対運動が可能であるにもかかわらず、堅固なシールが維持され得る。
【0020】
典型的な実施形態では、エラストマースリーブ170は、壁厚が変化する部分を含み、及び/又はエラストマースリーブ170が1つ又は複数のリブ175を含むような輪郭形状を有する部分を含む。リブ175を、ノズル要素130の外面133と接触するように構成された内面174の位置に配置してもよい。リブ175によって外面133との連続接触が容易になって、望ましいシールを得ることができる。典型的な実施形態では、ノズル要素130とエラストマースリーブ170との間の最大の妨害はリブ175の場所に集中し得る。妨害領域を限定することによって、一貫したシールを確実にしながらフィルタカートリッジ120を本体110と嵌合するためにユーザが出さなければならない力を低減することができる。
【0021】
図5に示すのは典型的なノズル要素130であり、受取部140と嵌合して、ノズル要素130が、受取部140によって画定される経路内に配置されるようになっている。エラストマースリーブ170は、フィルタカートリッジ120が受取部140内に挿入されたときに、ノズル要素130の外面133に合致することができる。典型的な実施形態では、相対的に大きいノズル要素130を相対的に小さいエラストマースリーブ170内に挿入すると、例えばノズル要素130の外面133の周りで広がることなどにより、エラストマースリーブ170が変形する。典型的な実施形態では、エラストマースリーブが広がって、外面173の周縁部(p)(図4)及び/又は内面174によって画定される断面積(a)が、ノズル要素130がエラストマースリーブ170内に配置されたときに、ノズル要素130がエラストマースリーブ170内に配置されていないときと比べて大きくなる。
【0022】
エラストマースリーブ170の弾性変形又は広がりがノズル要素130の周りで生じると、エラストマースリーブをその中立状態に復元するように作用する復元力が発生する。このような力によって、エラストマースリーブ170はノズル要素130の外面133の周りで固定され、エラストマースリーブ170と外面133との間の連続接触が促進される。
【0023】
典型的な実施形態では、エラストマースリーブ170の弾性変形又は広がりが、エラストマースリーブ170の少なくとも一部が本体110の剛性部品と接触していない構成で生じると、エラストマースリーブ170の周りに応力が発生するが、これは圧縮が、例えば、エラストマースリーブがノズル要素130と本体110の剛性部品との間で圧縮された場合に生じ得るのとは対照的である。典型的な実施形態では、エラストマースリーブ170は、ノズル要素130が受取部140と嵌合したときにフープ応力を示す。いくつかの典型的な実施形態では、エラストマースリーブ170の一部が、空気流軸(x)及びエラストマースリーブ170の径方向の厚さ(y)の両方に垂直な方向(z)に応力を受けると説明することができる。
【0024】
エラストマースリーブ170は、フィルタカートリッジ120が本体110と嵌合されると、受取部140の特徴部と直接又は間接的にシール状態で嵌合される。典型的な実施形態では、エラストマースリーブは、受取部140の内面又はフランジ144と接触するシール面176を含む。その代わりに又はそれに加えて、1つ又は複数のコネクタ145によって受取部140とエラストマースリーブとがシール状態で結合され得る。典型的な実施形態では、シール面176及びコネクタ145がフランジ144に隣接して配置されて、ノズル要素130を経路147内に挿入することによってシール嵌合が促進される。典型的な実施形態では、エラストマースリーブ170及び/又はコネクタ145は本体110に取り外し不可能に結合している。他の典型的な実施形態では、エラストマースリーブ170及び/又はコネクタ145は、取り外して交換することができる。
【0025】
エラストマースリーブ170は、フィルタカートリッジの周りで繰り返し弾力的に変形し得る任意の好適な材料で作製されてもよい。典型的な実施形態では、エラストマースリーブ170は、熱硬化性シリコーン材料、例えばELASTOSIL 3003/60A(Wacker Chemical Corp.,Adrian,MIから入手可能)で作製されている。他の好適な材料としては、熱可塑性硬質ゴム(TPV)、熱可塑性エラストマー(TPE)、成形可能なゴム、ウレタン、成形可能なエラストマー、それらの組み合わせ、及び当該技術分野で知られるその他の好適な材料が挙げられる。
【0026】
エラストマースリーブの長さは、一貫したシールをノズル要素130の周りに可能にする一方で、適切な寸法許容差及びフィルタカートリッジ120と本体110との間の相対運動を可能にするのに十分である。典型的な実施形態では、エラストマースリーブ170の、経路147の長手方向における長さ(l)は、エラストマースリーブ170の壁厚(t)よりも著しく大きい。種々の典型的な実施形態では、エラストマースリーブ170の長さ(l)は6mm〜14mm、8mm〜12mm、又は約10mmであり、壁厚(t)は0.5mm〜2mm、0.75mm〜1.5mm、又は約1.0mmである。いくつかの典型的な実施形態では、壁厚(t)は長さ(l)にわたって実質的に均一であり、他の典型的な実施形態では、壁厚(t)は長さ(l)にわたって変化する。
【0027】
ノズル要素130及び受取部140の形状、位置決め、及び構成は、フィルタカートリッジ120が装着者の顔面又は頭部の近くにあること及び本体110に対して動きをほとんど又は全く示さないことが可能となるように選択することができる。典型的な実施形態では、ノズル要素130の外面133及び受取部140の剛性外側部分は、部品間の回転を防止する非円形状を示してもよい。種々の実施形態では、ノズル要素130は、細長い長円形、楕円形、不規則な形、円形、又はその他の好適な形状を示す。細長い長円形は、例えば回転を防止し、ノズル要素130の周りでエラストマースリーブ170が広がることを容易にして、連続シールがもたらされる。ノズル要素130は、受取部140内に十分な距離だけ延びる。ノズル要素130及び受取部140の相補的形状によって、安定した接続が得られ、不注意な嵌合解除が防止される。ノズル要素130と受取部140との間の嵌合が十分であれば、相対運動が最小になり、フィルタカートリッジ120と本体110との間の堅固な接続が認められる。
【0028】
フィルタカートリッジ120及び受取部140は、嵌合したときにフィルタカートリッジ120と受取部140との間の相対運動を最小にする更なる特徴部を提供してもよい。フィルタカートリッジ120及び受取部140は、協同してノズル要素130及び受取部140を位置合わせする1つ又は複数の位置合わせ特徴部、例えば突出部、経路、又は当該技術分野で知られるその他の好適な位置合わせ特徴部を含んでもよい。典型的な実施形態では、例えば、突出物の形態の第1の位置合わせ特徴部138及び経路の形態の第2の位置合わせ特徴部148、スロット、又は溝が、ノズル要素130と受取部140との嵌合中に協同する。第1及び第2の位置合わせ特徴部138、139は、挿入中にノズル要素130と受取部140とを位置合わせすること、及び嵌合したときの相対運動を防止するために部品を固定することを助けることができる。
【0029】
ノズル要素130は、外面133から外側に延びる1つ又は複数のリブ137を含んでもよい。典型的な実施形態では、リブ137の寸法は、受取部140の剛性外側部分141と協同してノズル要素と受取部140との間をぴったり合わせるように設定し得る。リブ137は、拡張領域上に締まり嵌めを設けることなく、ノズル要素130と受取部140との間の確実な機械的嵌合が容易にすることができ、その結果、ノズル要素130を本体110に嵌合するときにユーザがかける力を制限することができる。
【0030】
図6に示すのは、別の典型的な呼吸装置600の部分断面図である。典型的な呼吸装置600は、前述した人工呼吸器装置100の特徴部と同様の特徴部を含み、本体610の部品と嵌合する第1の端部671を含むエラストマースリーブ670を有する。
【0031】
典型的な実施形態では、エラストマースリーブ670は、第1の端部部分671、第2の端部部分672、外面673、及び部分的に経路647を画定する内面674を含む。第1の端部部分671は本体110の部品と嵌合する。典型的な実施形態では、外面673は、例えば、本体610によって画定された内部空間内で第1のチャンバ616を第2のチャンバ617から分ける1つ又は複数の内壁に直接又は間接的に接触する。
【0032】
エラストマースリーブ670の少なくとも一部は、浮遊しているかそうでなければ外向きの弾性変形又は広がりを抑制する剛性部品と直接接触していない。典型的な実施形態では、エラストマースリーブ670は、外向きの弾性変形又は広がりを抑制し得る剛性部品によって裏打ちされていない中間部分677を含む。スペース678は、中間部分677と近接する外面673に隣接して存在する。エラストマースリーブ670の少なくとも一部が剛性部品によって裏打ちされていないことで、エラストマースリーブは湾曲及び/又は関節運動することができる。そのため、エラストマースリーブ670はノズル要素630の動きを追跡又は追従することができ、本体610とフィルタカートリッジ620との間で相対運動が可能であるにもかかわらず、堅固なシールが維持され得る。
【0033】
エラストマースリーブ670は、フィルタカートリッジ620が受取部640内に挿入されたときに、ノズル要素630の外面633と合致することができる。典型的な実施形態では、相対的に大きいノズル要素630を相対的に小さいエラストマースリーブ670内に挿入すると、エラストマースリーブ670はノズル要素630の外面633の周りで弾力的に変形又は広がる。典型的な実施形態では、エラストマースリーブが広がって、中間部分670における外面673の周縁部(p)及び/又は内面674によって画定される断面積(a)が、ノズル要素130がエラストマースリーブ670内に配置されたときに、ノズル要素630がエラストマースリーブ670内に配置されていないときと比べて大きくなる。
【0034】
エラストマースリーブ670の弾性変形又は広がりがノズル要素630の周りで生じると、エラストマースリーブをその中立状態に復元するように作用する復元力が発生する。このような力によって、エラストマースリーブ670はノズル要素630の外面633の周りで固定され、エラストマースリーブ670と外面633との間の連続接触が促進される。
【0035】
典型的な実施形態では、エラストマースリーブ670の広がりが、エラストマースリーブ670の少なくとも一部が本体610の剛性部品と接触していない状態で生じると、エラストマースリーブ670の周りに応力が発生するが、これは圧縮が、例えば、エラストマースリーブがノズル要素630と本体610の剛性部品との間で圧縮された場合に生じ得るのとは対照的である。典型的な実施形態では、エラストマースリーブ670は、ノズル要素630が受取部640と嵌合したときにフープ応力を示す。いくつかの典型的な実施形態では、エラストマースリーブ670の一部が、空気流軸(x)及びエラストマースリーブ670の径方向の厚さ(y)の両方に垂直な方向(z)に応力を受けると説明することができる。
【0036】
本明細書で開示するエラストマースリーブを有する人工呼吸器装置によって、いくつかの特徴及び利益が得られる。エラストマースリーブの少なくとも一部が浮遊しているかそうでなければ外向きの広がりを抑制する剛性部品と直接接触していないことで、呼吸保護装置のノズル要素と本体との間にシールを形成するときに著しい利益が得られる。エラストマースリーブは湾曲及び関節運動することができ、その結果、たとえノズル要素が受取部に対して動くか又は関節運動しても、ノズル要素とのシール接触が維持され得る。更に、本明細書で開示するエラストマースリーブによって、ユーザにより必要とされる挿入力を最小にしながら十分なシールがもたらされる。フィルタカートリッジを受取部内に容易に挿入して、回転なしに確実な接続を作り出すことができる。エラストマースリーブをノズル要素の周りで広がらせるために挿入中にユーザがもたらす力は、例えば、シーリング要素を剛性裏打ち部品に対して圧縮することによってシールを形成した場合に必要な力と比べて最小にすることができる。
【0037】
本発明をその複数の実施形態を参照して説明してきた。前述の発明を実施するための形態及び実施例は、単に理解を明瞭にするために示している。そこから不必要な限定が何らなされることはない。本発明の範囲から逸脱することなく、記載された実施形態において多くの変更を行うことができることが、当業者には明白であろう。したがって、本発明の範囲は、本明細書で説明した厳密な詳細及び構造に限定すべきではなく、むしろ請求項の言葉で説明されている構造及びこれらの構造の均等物によって限定すべきである。上記の実施形態のいずれかに関して記載されたいずれかの特徴又は特性は、個々に、又は他のいずれかの特徴又は特性と組み合わせて組み込むことができ、単に明確性のために上記の順番及び組み合わせで提示される。
以下、本発明の好ましい態様について説明する。
〔態様1〕
エラストマースリーブを有する受取部を含む本体と、
外面を有する剛性ノズル要素と、を含み、
前記エラストマースリーブは経路を画定し、前記エラストマースリーブは、前記ノズル要素が前記経路内に挿入されると前記ノズル要素の前記外面の周りで変形するように構成されている、人工呼吸器装置。
〔態様2〕
フィルタカートリッジを更に含み、前記剛性ノズル要素は前記フィルタカートリッジに結合している、態様1に記載の人工呼吸器装置。
〔態様3〕
エラストマースリーブは内面及び前記内面と反対側の外面を含み、前記内面は前記経路を画定し、前記外面の少なくとも一部は剛性部品と接触していない、態様1に記載の人工呼吸器装置。
〔態様4〕
前記ノズル要素が前記経路内に挿入されると前記エラストマースリーブはフープ応力を受ける、態様1に記載の人工呼吸器装置。
〔態様5〕
前記エラストマースリーブは、空気流軸及び前記エラストマースリーブの径方向の厚さに垂直な方向に応力を受ける、態様1に記載の人工呼吸器装置。
〔態様6〕
前記エラストマースリーブは第1の端部部分及び第2の端部部分を有し、前記第1の端部部分は浮遊端部である、態様1に記載の人工呼吸器装置。
〔態様7〕
前記エラストマースリーブは第1の端部部分及び第2の端部部分を有し、前記本体は、前記本体の内部空間の第1のチャンバと第2のチャンバとを分ける内壁を含み、前記エラストマースリーブの前記第1の端部部分は前記内壁と接触する、態様1に記載の人工呼吸器装置。
〔態様8〕
前記エラストマースリーブは第1の端部部分及び第2の端部部分を有し、前記第2の端部部分は前記本体とシール状態で嵌合する、態様1に記載の人工呼吸器装置。
〔態様9〕
前記エラストマースリーブは、周縁部(p)を有する外面を含み、前記ノズル要素が前記経路に挿入されると周縁部(p)は大きくなる、態様1に記載の人工呼吸器装置。
〔態様10〕
前記エラストマースリーブは、第1の端部と、第2の端部と、周縁部(p)を有する外面と、を含み、前記周縁部(p)は、前記第1と第2の端部との間で変化する、態様1に記載の人工呼吸器装置。
〔態様11〕
前記エラストマースリーブによって画定された前記経路は、内面の周縁部の周りにリブを含む、態様1に記載の人工呼吸器装置。
〔態様12〕
前記エラストマースリーブは熱硬化性材料で作製されている、態様1に記載の人工呼吸器装置。
〔態様13〕
前記エラストマースリーブはシリコーンで作製されている、態様1に記載の人工呼吸器装置。
〔態様14〕
前記エラストマースリーブは、射出成形性(高圧又は低圧)エラストマーからなる群から選択される材料で作製されている、態様1に記載の人工呼吸器装置。
〔態様15〕
前記エラストマースリーブの長手方向の長さ(l)は6mm〜12mmである、態様1に記載の人工呼吸器装置。
〔態様16〕
前記エラストマースリーブの壁厚(t)は0.5mm〜2mmである、態様1に記載の人工呼吸器装置。
〔態様17〕
前記本体はハーフマスク本体である、態様1に記載の人工呼吸器装置。
〔態様18〕
前記本体はフルマスク本体である、態様1に記載の人工呼吸器装置。
〔態様19〕
前記本体は頭部装着型人工呼吸器装置本体である、態様1に記載の人工呼吸器装置。
〔態様20〕
前記本体は動力付き空気人工呼吸器装置のハウジングである、態様1に記載の人工呼吸器装置。
〔態様21〕
フィルタカートリッジ受取部と、経路を画定する内面及び外面を有するエラストマースリーブと、を含む本体と、
外面を有する剛性ノズル要素を含むフィルタカートリッジと、を含み、
前記エラストマースリーブの前記外面の少なくとも一部は剛性部品と接触せず、前記エラストマースリーブは、前記ノズル要素が前記経路内に挿入されると前記ノズル要素の前記外面の周りで広がるように構成されている、人工呼吸器装置。
図1
図2
図3
図4
図5
図6