(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6549251
(24)【登録日】2019年7月5日
(45)【発行日】2019年7月24日
(54)【発明の名称】緩急針アセンブリによる微調整を有する共振器
(51)【国際特許分類】
G04B 17/06 20060101AFI20190711BHJP
G04B 18/02 20060101ALI20190711BHJP
【FI】
G04B17/06 Z
G04B18/02 Z
【請求項の数】12
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2017-559353(P2017-559353)
(86)(22)【出願日】2016年5月13日
(65)【公表番号】特表2018-514786(P2018-514786A)
(43)【公表日】2018年6月7日
(86)【国際出願番号】EP2016060814
(87)【国際公開番号】WO2016192957
(87)【国際公開日】20161208
【審査請求日】2017年11月13日
(31)【優先権主張番号】15170557.1
(32)【優先日】2015年6月3日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】591048416
【氏名又は名称】ウーテーアー・エス・アー・マニファクチュール・オロロジェール・スイス
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 茂樹
(74)【代理人】
【識別番号】100064621
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 政樹
(72)【発明者】
【氏名】エルフェ,ジャン−リュック
(72)【発明者】
【氏名】ストランツル,マルク
(72)【発明者】
【氏名】ジャンヌレ,ローラン
(72)【発明者】
【氏名】ベルダ,グザヴィエ
【審査官】
菅藤 政明
(56)【参考文献】
【文献】
特表2006−525504(JP,A)
【文献】
欧州特許出願公開第2233989(EP,A1)
【文献】
特開2012−145578(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G04B 17/00−17/34
G04B 18/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
慣性/弾性タイプの共振器(11)であって、
前記共振器(11)は、慣性はずみ車(13)に連結されたヒゲゼンマイ(21、41)、及び前記共振器の周波数を調整するためのシステムを備え、前記システムは緩急針アセンブリ(31)を含み、前記緩急針アセンブリ(31)は、前記ヒゲゼンマイ(21、41)の1つのコイル(26、261、262、263、46)と協働して前記ヒゲゼンマイ(21、41)の有効長を選択的に選択するよう配設された、2つの停止部材(33、331、332、333、35、351、352、353)を備える、共振器(11)において、
前記共振器(11)は、前記緩急針アセンブリ(31)と協働する前記ヒゲゼンマイ(21、41)の前記コイル(26、261、262、263、46)の一部分が、前記ヒゲゼンマイの他のコイルより断面が大きい少なくとも1つの領域(24、241、242、243、42、44、48)を含み、これにより、前記緩急針アセンブリ(31)による前記ヒゲゼンマイの有効長の調節の際には、前記コイルの断面が大きい部分と前記緩急針アセンブリ(31)とが協働することで、前記コイルの断面が小さい部分と前記緩急針アセンブリ(31)とが協働する場合に比べて、前記共振器(11)の周波数に対する影響が小さいことを特徴とする、共振器(11)。
【請求項2】
前記緩急針アセンブリ(31)と協働する前記ヒゲゼンマイ(21、41)の前記コイル(26、261、262、263、46)の前記一部分が、前記共振器(11)の前記周波数を少なくとも2つの別個の比でより微細に調整するために、前記ヒゲゼンマイの前記他のコイルより断面が大きい少なくとも2つの領域(24、241、242、243、42、44、48)を含むことを特徴とする、請求項1に記載の共振器(11)。
【請求項3】
少なくとも1つの前記領域(24、241、242、243、42、44、48)は、前記ヒゲゼンマイ(21、41)の前記他のコイルより1.5〜5倍大きい断面を有することを特徴とする、請求項1又は2に記載の共振器(11)。
【請求項4】
前記2つの停止部材(33、331、332、333、35、351、352、353)は、前記ヒゲゼンマイ(21、41)の前記コイル(26、261、262、263、46)の前記一部分の厚さ(E2、E3、E4、E5)の両側に選択的に位置決めされ、また、前記緩急針アセンブリ(31)と協働する前記ヒゲゼンマイ(21、41)の前記コイル(26、261、262、263、46)の前記一部分の長さ方向(A、A1、A2、A3)に移動できることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載の共振器(11)。
【請求項5】
前記2つの停止部材(33、331、332、333、35、351、352、353)は、軸に対して回転移動できることを特徴とする、請求項4に記載の共振器(11)。
【請求項6】
前記2つの停止部材(33、331、332、333、35、351、352、353)の回転の前記軸は、前記ヒゲゼンマイ(21、41)のヒゲ玉(23、43)の開口(25)に内接する円の中心(C)にセンタリングされることを特徴とする、請求項5に記載の共振器(11)。
【請求項7】
前記2つの停止部材(33、331、332、333、35、351、352、353)は、ある直線に対して並進移動できることを特徴とする、請求項4に記載の共振器(11)。
【請求項8】
前記2つの停止部材(33、331、332、333、35、351、352、353)の並進運動の前記直線は、前記ヒゲゼンマイ(21、41)の前記ヒゲ玉(23、43)の前記開口(25)に内接する前記円の前記中心(C)を通過することを特徴とする、請求項7に記載の共振器(11)。
【請求項9】
前記2つの停止部材(33、331、332、333、35、351、352、353)は、ヒゲ受け(34)によって形成されることを特徴とする、請求項1〜8のいずれか1項に記載の共振器(11)。
【請求項10】
前記2つの停止部材(33、331、332、333、35、351、352、353)は、2つのヒゲ棒によって形成されることを特徴とする、請求項1〜8のいずれか1項に記載の共振器(11)。
【請求項11】
前記緩急針アセンブリ(31)、及び前記緩急針アセンブリ(31)と協働する前記ヒゲゼンマイ(21、41)の前記コイル(26、261、262、263、46)の前記一部分は、前記緩急針アセンブリ(31)の、前記緩急針アセンブリ(31)と協働する前記ヒゲゼンマイ(21、41)の前記コイル(26、261、262、263、46)の前記一部分に沿った10〜50マイクロメートルの偏移に対して、1日あたり1秒の調整を前記共振器に提供するよう配設されることを特徴とする、請求項1〜10のいずれか1項に記載の共振器(11)。
【請求項12】
テンプ受け(14)及び地板(16)を備える時計であって、
前記時計は、前記時計が更に、請求項1〜11のいずれか1項に記載の共振器(11)を含み、緩急針アセンブリ(31)が前記テンプ受け(14)上に設置され、前記共振器(11)が、前記テンプ受け(14)と前記地板(16)との間で枢動するよう、真(15)を用いて設置されることを特徴とする、時計。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、緩急針アセンブリによる微調整を有する共振器に関し、より詳細には、上記緩急針アセンブリのある一定の偏移に対して、より小さな変動で周波数を調整できる、共振器に関する。
【背景技術】
【0002】
テンプ/ヒゲゼンマイ共振器の周波数の調整は、テンプの慣性又はヒゲゼンマイの弾性トルクの修正によって達成できる。
【0003】
緩急針アセンブリを使用して、ヒゲゼンマイの弾性トルクを修正することが公知である。緩急針アセンブリは一般に2つの停止部材を含み、上記2つの停止部材は、カウントポイントを形成するよう、即ち伸縮動作することにより共振器の弾性トルクを提供する、ヒゲゼンマイのストリップの有効長と呼ばれる長さを定義するよう、構成される。
【0004】
しかしながら、緩急針アセンブリによる調整は極めて繊細である。即ち停止部材の僅かな偏移は周波数の大きな変動をもたらし、調整をより正確なものとするために設計される、マイクロメートルスケールのねじシステムの開発を必要とする。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、製造中及び販売後の設定中の最終的な時間調整作業を容易にする緩急針アセンブリを用いて、より微細な周波数調整を可能とする周波数調整システムを有する共振器を提案することにより、上述の欠点の全て又は一部を克服することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この目的のために、本発明は、慣性/弾性タイプの共振器に関し、上記共振器は、慣性はずみ車に連結されたヒゲゼンマイ、及び上記共振器の周波数を調整するためのシステムを備え、上記システムは緩急針アセンブリを備え、上記緩急針アセンブリは、上記ヒゲゼンマイの1つのコイルと協働して上記ヒゲゼンマイの有効長を選択的に選択するよう配設された、2つの停止部材を含む。上記共振器は、上記緩急針アセンブリと協働する上記ヒゲゼンマイのコイルの一部分が、上記ヒゲゼンマイの他のコイルより断面が大きい少なくとも1つの領域を含み、これにより、上記緩急針アセンブリが与える影響は、上記ヒゲゼンマイの残りの部分の非増厚断面に対してよりも、共振器周波数に対して小さいことを特徴とする。
【0007】
従って有利なことに、本発明によると、上記緩急針アセンブリと協働する上記ヒゲゼンマイのコイル上の材料の余分の厚みは、上記共振器の速度のより微細な調整を達成するのに十分であることが理解される。実際、より大きな断面の領域は剛性をもたらし、これは、緩急針アセンブリと組み合わせることにより、上記非増厚ヒゲゼンマイの残りの部分に対する影響に比べて、上記ヒゲゼンマイの弾性トルクに対するこの領域の影響を低減できることが分かった。従って、増厚セクションに沿った上記緩急針アセンブリの偏移が与える影響は、上記ヒゲゼンマイの残りの部分の非増厚断面に対してよりも、共振器周波数に対して小さく、これにより有利なことに、速度のある一定の変動を、上記緩急針アセンブリのより大きな偏移を用いて得ることができることが明らかである。
【0008】
本発明の他の有利な変形例によると:
‐上記緩急針アセンブリと協働する上記ヒゲゼンマイのコイルの上記一部分は、上記共振器周波数を少なくとも2つの別個の比でより微細に調整するために、上記ヒゲゼンマイの他のコイルとは異なり、かつより大きな断面の、少なくとも2つの領域を含み;
‐少なくとも1つの上記領域は、上記ヒゲゼンマイの他のコイルより1.5〜5倍大きい断面を有し;
‐上記2つの停止部材は、上記ヒゲゼンマイの厚さの両側に選択的に位置決めされ、また、上記緩急針アセンブリと協働する上記ヒゲゼンマイのコイルの上記一部分と同一の方向に移動でき;
‐ある代替例によると、上記2つの停止部材は軸に対して回転移動でき;
‐上記停止部材の回転の上記軸は、ヒゲ玉の開口に内接する円の中心にセンタリングされ;
‐別の代替例によると、上記2つの停止部材は、ある直線に対して並進移動でき;
‐上記停止部材の並進運動の上記直線は、ヒゲ玉の開口に内接する円の中心を通過し;
‐上記2つの停止部材は、ヒゲ受けによって、又は2つのヒゲ棒によって形成され;
‐上記緩急針アセンブリ、及び上記緩急針アセンブリと協働する上記ヒゲゼンマイのコイルの上記一部分は、上記緩急針アセンブリの、上記緩急針アセンブリと協働する上記ヒゲゼンマイのコイルの上記一部分に沿った10〜50マイクロメートルの偏移に対して、1日あたり1秒の調整を上記共振器に提供するよう配設される。
【0009】
更に、本発明は、テンプ受け及び地板を備える時計に関し、上記時計は、上記時計が更に、上述の変形例のうちのいずれによる共振器を含み、緩急針アセンブリが上記テンプ受け上に設置され、上記共振器が、上記テンプ受けと上記地板との間で枢動するよう、真を用いて設置されることを特徴とする。
【0010】
他の特徴及び利点は、添付の図面を参照して以下の詳細な説明を読むことにより明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は、本発明による例示的なヒゲゼンマイの一部の図である。
【
図2】
図2は、本発明による例示的な緩急針アセンブリの一部の図である。
【
図3】
図3は、本発明の第1の実施形態によるヒゲゼンマイの上面図である。
【
図4】
図4は、本発明の第2の実施形態によるヒゲゼンマイの上面図である.
【
図5】
図5は、本発明による代替的な共振器の部分上面図である。
【
図6】
図6は、本発明による代替的な共振器の部分上面図である。
【
図7】
図7は、本発明による代替的な共振器の部分上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
緩急針アセンブリによる調整は極めて繊細である。即ち停止部材の僅かな偏移は周波数の大きな変動をもたらし、調整をより正確なものとするために設計された、マイクロメートルスケールのねじシステムの開発を必要とする。情報として、1日あたり1秒の変動は一般に、外側コイルに沿った緩急針アセンブリの停止部材のおよそ2〜3マイクロメートルの偏移によって得られ、これは約0.05°の緩急針の回転に相当する。
【0013】
本発明は、緩急針アセンブリと協働するヒゲゼンマイのコイルの部分に沿った、緩急針アセンブリの比較的大きな、例えば10〜50マイクロメートルの偏移に対して、共振器に関する1日あたり1秒の調整を提案することにより、緩急針アセンブリによる調整への関心を取り戻すことを提案する。
【0014】
本発明によると有利には、同一の工業グループ又は同一の腕時計ブランドの複数のキャリバーに関する汎用的な調整を想定できることさえ明らかであり、これは、各キャリバーに関して、共振器の1日あたり1秒の変動を可能とする緩急針の同一の偏移を開発することからなる。実際、このような汎用的な調整は、製造中及び販売後の設定中の最終的な時間調整作業を簡略化する。
【0015】
よって本発明は、慣性はずみ車に連結されたヒゲゼンマイを備える、慣性/弾性タイプの共振器、例えばテンプ/ヒゲゼンマイ共振器に関する。
図1に部分的に示したように、ヒゲゼンマイ1は、天真を受承するよう構成された開口5を形成する、ヒゲ玉3を含む。ヒゲ玉3は、それ自体が複数のコイル状に巻かれた、ストリップ7と一体である。
図1の例では、ストリップ7は、厚さE、高さH、長さLを有することが確認できる。
【0016】
更に、上記共振器は、周波数調整システムを含み、上記周波数調整システムは、上記ヒゲゼンマイの1つのコイルと協働して上記ヒゲゼンマイの有効長を選択的に選択するよう配設された、緩急針アセンブリを備える。アクセシビリティを明らかな理由として、上記コイルは好ましくは、上記ヒゲゼンマイの外側コイルである。しかしながら、同等の代替物として、最後から2番目のコイル、即ち上記外側コイルの1つ前のコイルを使用することもできる。
【0017】
本発明によると有利には、上記緩急針アセンブリと協働する上記ヒゲゼンマイのコイルの上記一部分は、共振器周波数のより微細な調整のために、上記ヒゲゼンマイの他のコイルより断面が大きい少なくとも1つの領域を含む。従って、上で説明したように、上記ヒゲゼンマイの他のコイルより断面が大きい各領域は、その断面を修正するための、厚さEの変動及び/又は高さHの変動を有してよい。
【0018】
実際、より大きな断面の領域は剛性をもたらし、これは緩急針アセンブリと組み合わせることにより、上記非増厚ヒゲゼンマイの残りの部分に対する影響に比べて、上記ヒゲゼンマイの弾性トルクに対するこの領域の影響を低減できることが分かった。従って、増厚セクションに沿った上記緩急針アセンブリの偏移が与える影響は、上記ヒゲゼンマイの残りの部分の非増厚断面に対してよりも、共振器周波数に対して小さく、これにより有利なことに、速度のある一定の変動を、上記緩急針アセンブリのより大きな偏移を用いて得ることができることが明らかである。
【0019】
本発明の第1の実施形態を
図2、3に示す。
図2では、真15上の慣性ホイール13に連結されたヒゲゼンマイ21を備える、慣性/弾性タイプの共振器11が示されている。従って共振器11は、例えば軸受12を介して、テンプ受け14と地板16との間で枢動するよう、真15を用いて設置される。従って、通常の様式で、ヒゲゼンマイ21は、一端がヒゲ玉23を介して天真15に設置され、他端が、外側コイル26の端部に留められたヒゲ持ち29を介してテンプ受け14に設置される。
【0020】
緩急針アセンブリ31はまた、テンプ受け14上に設置され、2つの停止部材33、35を含む。緩急針アセンブリ31は好ましくは、共振器11の周波数のより微細な調整のために、ヒゲゼンマイの他のコイルより断面が大きい少なくとも1つの領域を含む、ヒゲゼンマイ21の外側コイル26の一部分24と協働するよう配設される。しかしながら、同等の代替物として、最後から2番目のコイル、即ち外側コイル26の1つ前のコイル上の増厚部分を使用することもできる。
【0021】
図2の例では、停止部材33、35が緩急針32上に設置されたヒゲ受け34で形成されることが示されている。あるいはヒゲ受け34を、停止部材33、35を形成するための2つのピンによって置換してよい。
【0022】
好ましくは、断面の増厚は単に、
図2、3に示すように、領域24の増厚によって達成される。よって、ヒゲゼンマイ21のストリップ27の大部分は、20〜50マイクロメートルの厚さE
1を有し、その外側コイル26上の領域24は、厚さE
1より大きい厚さE
2を有することが明らかである。よって、停止部材33、35の間隔及び緩急針アセンブリによる調整の所望のスケールに応じて、領域24の余分な厚さE
2は、上記ヒゲゼンマイの残りの部分の厚さE
1に対して50%〜200%であり、即ち厚さE
1の1.5〜3倍である。
図3に示す例では、厚さE
2はヒゲゼンマイ21の残りの部分の厚さより2倍大きい。
【0023】
本発明によると有利には、このタイプのヒゲゼンマイ21は、付加的又は破壊的製造方法によって得てよい。よって、付加的又は破壊的製造方法の非限定的な例としては、以下が挙げられる:LIGAプロセス;三次元印刷;マスクフォトリソグラフィと上記マスクのパターンに従った乾式又は湿式エッチングプロセスとを組み合わせた方法;合金鋳造と、少なくとも2つの別個の連続したセクションにおける線材圧延又はレーザエッチングとを組み合わせた方法。
【0024】
これに関して、ヒゲゼンマイは多数の材料から製造できることが明らかである。よって非限定的な例として、ヒゲゼンマイは、ケイ素、セラミック又は金属のベースから製造してよい。ヒゲゼンマイがケイ素ベースのものである場合、これは例えば:単結晶ケイ素、ドープされた単結晶ケイ素、多結晶ケイ素、ドープされた多結晶ケイ素、多孔質ケイ素、酸化ケイ素、石英、シリカ、窒化ケイ素または炭化ケイ素を含んでよい。
【0025】
更に、ヒゲゼンマイがセラミックベースのものである場合、これは例えば:光構造化性ガラス(photostructurable glass)、ホウケイ酸塩、アルミノケイ酸塩、石英ガラス、ゼロデュア、単結晶コランダム、多結晶コランダム、アルミナ、酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、単結晶ルビー、多結晶ルビー、酸化ジルコニウム、酸化チタン、窒化チタン、炭化チタン、窒化タングステン、炭化タングステン、窒化ホウ素または炭化ホウ素を含んでよい。
【0026】
最後に、ヒゲゼンマイが金属ベースのものである場合、これは例えば:15P、20AP若しくは316L鋼若しくはNIVAROX CTのような鉄合金;真ちゅう等の銅合金;ニッケル銀若しくはNIVAFLEX等のニッケル合金;チタン若しくはその合金;金若しくはその合金;銀若しくはその合金;白金若しくはその合金;ルテニウム若しくはその合金;ロジウム若しくはその合金;又はパラジウム若しくはその合金を含んでよい。
【0027】
従って例えば、厚さE
2及び緩急針アセンブリ31は、緩急針アセンブリ31の、ヒゲゼンマイ21の外側コイル26の増厚領域24に沿った10〜50マイクロメートル、例えば20マイクロメートル等の偏移に対して、共振器11の1日あたり1秒の調整を提供するよう配設される。
【0028】
よって、領域24の厚さの差異に加えて、緩急針アセンブリ31の2つの停止部材33、35は、ヒゲゼンマイ21の領域24の厚さE
2の両側に選択的に位置決めされ、外側コイル26の領域24の長さと同一の方向Aに移動できることが明らかである。
【0029】
図3の例では、方向Aは、ヒゲゼンマイ21のヒゲ玉23の開口25に内接する円の中心Cの円弧を形成する。
図2、3の例において、2つの停止部材33、35が真15の軸と一致する軸に対して回転移動するため、この構成が得られる。換言すると、
図3で見ることができるヒゲゼンマイ21のヒゲ玉23の開口25に内接する円は、真15とヒゲ玉23との接点における真15の外側セクションを表す。
【0030】
図4で見ることができる第2の実施形態によると、緩急針アセンブリ31と協働するヒゲゼンマイ41のコイルの部分もまた外側コイル46であり、共振器周波数を少なくとも2つの別個の比でより微細に調整するために、ヒゲゼンマイ41の他のコイルとは異なり、かつより大きな断面の、少なくとも2つの領域42、44、48を含む。
【0031】
結果として、
図4の例では、3つの厚さE
3、E
4、E
5及び緩急針アセンブリ31は、緩急針アセンブリ31の、ヒゲゼンマイ41の外側コイル46の増厚領域E
5、E
4、E
3にそれぞれ沿った10〜50マイクロメートルの、例えばそれぞれ10、20及び10マイクロメートル等の偏移に対して、共振器の1日あたり1秒の3つの調整を提供するよう配設される。
図4に示した例では、厚さE
5、E
4、E
3はそれぞれ、ヒゲゼンマイ41の残りの部分の厚さE
1よりも50%、100%及び50%大きい。
【0032】
よって、本発明の上記2つの実施形態によると有利には、本発明による共振器を備える時計は、より微細な又は汎用的でさえある調整を選択する可能性によって進歩させることができ、これにより、製造中及び販売後の設定中の最終的な時間調整作業のための緩急針アセンブリの調整の使用が、より魅力的なものとなる。
【0033】
更に、ある代替例(図示せず)によると、領域間の厚さE
5、E
4、E
3、E
2、E
1の変動は、上記領域間で漸進的なものであってよく、これにより、厚さE
5、E
4、E
3、E
2、E
1の領域間の緩急針アセンブリ31の偏移に対する、共振器の連続的可変調整が提供される。
【0034】
当然のことながら、本発明は、図示した例に限定されるものではなく、当業者には明らかな様々な変形及び修正が可能である。特に、緩急針アセンブリ31の領域24、42、44、48の配置は、例えば実装の容易さを理由として、修正してよい。
【0035】
図5に示した第1の代替例によると、緩急針アセンブリの回転軸C
1は、ヒゲ玉の開口に内接する円の中心Cと一致していなくてもよい。
図5で見ることができるように、上記構成は、緩急針アセンブリの2つの停止部材33
1、35
1が、ヒゲゼンマイの領域24
1の厚さの両側に選択的に位置決めされ、また、外側コイル26
1の領域24
1の長さと同一の方向A
1に移動できるように、適合されることになる。
【0036】
図6に示した第2の代替例によると、緩急針アセンブリの回転軸C
2は、外側コイル26
2の増厚領域24
2の略中心でさえあってよい。
図6で見ることができるように、上記構成は、緩急針アセンブリの2つの停止部材33
2、35
2が、ヒゲゼンマイの領域24
2の厚さの両側に選択的に位置決めされ、また、外側コイル26
2の領域24
2の長さと同一の方向A
2に移動できるように、適合されることになる。
【0037】
図7に示した第3の代替例によると、緩急針アセンブリの停止部材33
3、35
3は、ある直線に対して並進移動可能でさえあってよい。
図7で見ることができるように、上記配置は、緩急針アセンブリの2つの停止部材33
3、35
3が、ヒゲゼンマイの領域24
3の厚さの両側に選択的に位置決めされ、また、外側コイル26
3の領域24
3の長さと同一の方向A
3に移動できるように、適合されることになる。更に、並進運動の上記直線が、ヒゲ玉の開口に内接する円の中心Cを通過する場合、緩急針アセンブリによる速度の調整は、ヒゲ玉におけるヒゲゼンマイの出口とカウントポイントとの間に形成された角度を修正しない。従って、これは計時的利点を提供することが明らかである。