特許第6549260号(P6549260)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6549260
(24)【登録日】2019年7月5日
(45)【発行日】2019年7月24日
(54)【発明の名称】汚染されたポリプロピレンの精製方法
(51)【国際特許分類】
   C08J 11/20 20060101AFI20190711BHJP
   C08J 11/16 20060101ALI20190711BHJP
   C08J 3/11 20060101ALI20190711BHJP
   C08J 3/14 20060101ALI20190711BHJP
   B29B 17/00 20060101ALI20190711BHJP
【FI】
   C08J11/20
   C08J11/16ZAB
   C08J3/11
   C08J3/14
   B29B17/00
【請求項の数】13
【全頁数】32
(21)【出願番号】特願2017-567343(P2017-567343)
(86)(22)【出願日】2016年6月23日
(65)【公表番号】特表2018-518587(P2018-518587A)
(43)【公表日】2018年7月12日
(86)【国際出願番号】US2016038864
(87)【国際公開番号】WO2017003796
(87)【国際公開日】20170105
【審査請求日】2017年12月26日
(31)【優先権主張番号】62/186,483
(32)【優先日】2015年6月30日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】590005058
【氏名又は名称】ザ プロクター アンド ギャンブル カンパニー
【氏名又は名称原語表記】THE PROCTER & GAMBLE COMPANY
(74)【代理人】
【識別番号】110001243
【氏名又は名称】特許業務法人 谷・阿部特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ジョン モンクリーフ レイマン
(72)【発明者】
【氏名】マギー グンナーソン
(72)【発明者】
【氏名】ハンス シェーネマン
(72)【発明者】
【氏名】カーラ ウィリアムズ
【審査官】 小久保 敦規
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許第05233021(US,A)
【文献】 欧州特許出願公開第00849312(EP,A1)
【文献】 特表2018−519400(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08J 11/00− 11/28
B29B 17/00− 17/04
B01D 11/00− 12/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回収されたポリプロピレンを精製する方法であって、
a.前記回収されたポリプロピレンを取得する工程であって、前記回収されたポリプロピレンは、消費者使用後ポリマー、産業使用後ポリマー、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される、取得する工程と、
b.前記回収されたポリプロピレンを、80℃〜220℃の温度及び1.03MPa(150psig)〜103.42MPa(15,000psig)の圧力で、70℃未満の標準沸点を有する第1流体溶媒と接触させて、抽出された回収されたポリプロピレンを生成する工程と、
c.前記抽出された回収されたポリプロピレンを、90℃〜220℃の温度、及び2.41MPa(350psig)〜137.90MPa(20,000psig)の圧力で、前記第1流体溶媒、第2流体溶媒、及びこれらの混合物からなる群から選択される溶媒に溶解して、ポリプロピレン溶液を生成する工程と、
d.前記ポリプロピレン溶液を固体媒体に接触させることにより、90℃〜220℃の温度、及び2.41MPa(350psig)〜137.90MPa(20,000psig)の圧力で前記ポリプロピレン溶液を精製して、より高純度のポリプロピレン溶液を生成する工程と、
e.前記より高純度のポリプロピレン溶液から、より高純度のポリプロピレンを分離する工程と、を含み、
前記第2流体溶媒は、前記第1流体溶媒と同じ化学組成又は異なる化学組成である、方法。
【請求項2】
前記より高純度のポリプロピレンが、0℃〜220℃の温度、及び0psig〜13.79MPa(2,000psig)の圧力で、前記より高純度のポリプロピレン溶液から分離される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記回収されたポリプロピレンが、消費者による使用後のリサイクルに由来するポリプロピレンである、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記流体溶媒が、オレフィン性炭化水素、脂肪族炭化水素、及びこれらの混合物からなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記脂肪族炭化水素が、C1〜C6脂肪族炭化水素及びこれらの混合物からなる群から選択される、請求項に記載の方法。
【請求項6】
前記流体溶媒が、n−ブタン、ブタン異性体、又はこれらの混合物である、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
工程a、b、c、及びdにおける前記温度が、110℃〜170℃である、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
工程bにおける前記圧力が、7.58MPa(1,100psig)〜14.8MPa(2,100psig)である、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
工程bにおける前記圧力が、90℃の温度で7.58MPa(1,100psig)未満であり、170℃の温度で14.48MPa(2100psig)未満である、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
工程cにおける前記圧力が、90℃の温度で7.58MPa(1,100psig)超であり、170℃の温度で14.48MPa(2100psig)超である、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記固体媒体が、無機物質、炭素系物質、及びこれらの混合物からなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記無機物質が、シリカ酸化物、アルミナ酸化物、鉄酸化物、ケイ酸アルミニウム、非晶質火山ガラス、及びこれらの混合物からなる群から選択される、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記無機物質が、シリカ、シリカゲル、珪藻土、砂、石英、アルミナ、パーライト、フラ−土、ベントナイト、及びこれらの混合物からなる群から選択される、請求項11に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は概して、加圧溶媒及び固体媒体を使用することにより、汚染されたポリマーを精製するための方法に関する。より具体的には、本発明はリサイクルされたポリマー(消費者使用後及び産業使用後のリサイクルプラスチックなど)を精製し、無色又は透明で無臭の、バージンの様なポリマーを生成するための方法に関する。これは特にポリプロピレンの精製に有用である。
【背景技術】
【0002】
ポリマー、特に合成プラスチックは、比較的低生産コストと良好な材料特性バランスにより、日常生活に遍在する。合成プラスチックは、包装、自動車部品、医療機器、及び消費財などの幅広い用途に使用されている。これらの用途の高い需要に対応するため、何百億ポンドもの合成プラスチックが毎年世界中で製造されている。合成プラスチックの圧倒的多数は、ますます希少となる化石資源(例えば石油及び天然ガス)から生成されている。加えて、化石資源からの合成プラスチックの製造では、副生成物としてCOが生成される。
【0003】
合成プラスチックを至るところで使用している結果、毎年何百万トンものプラスチック廃棄物が生み出されている。プラスチック廃棄物の大半は自治体の固形廃棄物プログラムにより埋め立てられるが、プラスチック廃棄物のうちかなりの部分が環境中にゴミとして見出され、これは美観を損ね、環境系に危害をもたらす可能性がある。プラスチック廃棄物はしばしば、河川系へと流出し、最終的に海に至る。
【0004】
プラスチックの広範な使用に伴う問題を軽減するため、プラスチックリサイクルが、1つの解決策として登場している。プラスチックを回収し再使用することで、廃棄物が埋め立て地へ投入されるのが回避され、化石系資源から製造されるバージンプラスチックの需要が低減し、この結果、温室効果ガス排出が削減される。米国及び欧州連合などの先進国では、消費者、企業、及び製造業の意識の高まりにより、プラスチックリサイクルが上昇している。プラスチックを含むリサイクルされた材料の大半は、混合されて単一の流れにされ、この流れは集められ、材料回収施設(MRF)で処理される。MRFでは、材料が分類され、洗浄され、再販用に包装される。プラスチックは、例えば高密度ポリエチレン(HDPE)又はポリ(エチレンテレフタレート)(PET)などの個別の材料に分類することができ、あるいは、他の一般的なプラスチック(例えばポリプロピレン(PP)、低密度ポリエチレン(LDPE)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリスチレン(PS)、ポリカーボネート(PC)、及びポリアミド(PA))との混合した流れとなり得る。次いで、この単一の流れ又は混合した流れは、更に分類され、洗浄され、再処理されてペレットとすることができ、これは例えば吹込成形及び射出成形などのプラスチック加工における再使用に好適である。
【0005】
リサクルされたプラスチックは分類されて主に均一な流れになり、水溶液及び/又は苛性溶液で洗浄されるが、最終的な再処理ペレットはしばしば、例えば腐敗した食品残留物や残留香料成分などの望ましくない廃棄不純物で高度に汚染されたままである。加えて、リサイクルされたプラスチックペレットは、リサイクルされた飲料容器から得られたプラスチックペレットを除き、プラスチック物品を着色するのに一般に使用される染料及び顔料の混合物により、濃く着色されている。色及び汚染をあまり問わない用途も一部存在するが(例えばペンキ用の黒色プラスチック容器、隠れた部分の自動車部品)、大半の用途は無色ペレットを必要とする。高品質の「バージン状態の様な」リサイクル樹脂に対するニーズは、特に、食品の包装などの食品及び医薬品に接触する用途において重要である。不純物及び混合着色剤による汚染に加えて、多くのリサイクル樹脂製品はしばしば異種成分からなる化学組成を有し、かなりの量のポリマー混入(例えばリサイクルPP中のポリエチレン(PE)混入、又はその逆)を含むことがある。
【0006】
機械的リサイクル(二次的リサイクルとも呼ばれる)は、リサイクルプラスチック廃棄物を、後続の製造過程に再使用可能な形態に転換するプロセスである。機械的リサイクル及び他のプラスチック回収プロセスに関するより詳細なレビューは、S.M.Al−Salem,P.Lettieri,J.Baeyens,「Recycling and recovery routes of plastic solid waste(PSW):A review」,Waste Management,Volume 29,Issue 10,October 2009,pp.2625〜2643,ISSN 0956−053Xに記述されている。機械的リサイクル技術の進歩により、リサイクルポリマーの品質はある程度改善されたが、機械的除染アプローチには、例えばポリマーマトリックス内に顔料が物理的に閉じ込められるなどの、根本的な限界が存在する。ゆえに、機械的リサイクル技術の向上をもってしても、現在利用可能なリサイクルプラスチック廃棄物における濃い着色と高レベルの化学的汚染が、プラスチック産業によるリサイクル樹脂の幅広い使用を阻んでいる。
【0007】
機械的リサイクルの根本的限界を克服するために、汚染されたポリマーを精製する、化学的アプローチ(化学的リサイクル)による数多くの方法が開発されている。これらの方法の多くは、溶媒を使用してポリマーの除染及び精製を行う。溶媒の使用により不純物の抽出とポリマーの溶解が可能になり、これにより更に、別の分離技術が可能になる。
【0008】
例えば、米国特許第7,935,736号は、クリーニングの前にポリエステルを溶解するための溶媒を用いた、ポリエステル含有廃棄物からポリエステルをリサイクルする方法について記述している。米国特許第7,935,736号特許は更に、沈殿を用いて溶媒からポリエステルを回収するニーズについて記述している。
【0009】
別の一例において、米国特許第6,555,588号は、他のポリマーを含むプラスチック混合物からポリプロピレンブレンドを生成する方法について記述している。米国特許第6,555,588号特許は、選択された溶媒(例えばヘキサン)で、所定の滞在時間にわたり、ポリマーの溶解温度より低い温度で、ポリマーから汚染物質を抽出することについて記述している。米国特許第6,555,588号特許は更に、溶媒(又は第2溶媒)の温度を高めて、濾過前にポリマーを溶解させることについて記述している。米国特許第6,555,588号特許はまた更に、剪断又は流れを使用して、溶液からポリプロピレンを沈殿させることについて記述している。米国特許第6,555,588号特許に記述されているポリプロピレンブレンドは、最大5.6重量%のポリエチレンを含んだ。
【0010】
別の一例において、欧州特許出願第849,312号(ドイツ語から英語に翻訳)は、ポリオレフィン含有プラスチック混合物又はポリオレフィン含有廃棄物から、精製されたポリオレフィンを得るプロセスについて記述している。欧州特許出願第849,312号特許出願は、ガソリン又はディーゼル燃料の沸点90℃超での炭化水素留分を用いた、90℃とその炭化水素溶媒の沸点との間の温度での、ポリオレフィン混合物又は廃棄物の抽出について記述している。欧州特許出願第849,312号特許出願は更に、高温のポリオレフィン溶液を、漂白粘土及び/又は活性炭に接触させることにより、溶液から異物成分を除去することについて記述している。欧州特許出願第849,312号特許は更に、この溶液を70℃未満の温度に冷却してポリオレフィンを結晶化させてから、次いでポリオレフィンの融点を超える温度までポリオレフィンを加熱するか、付着溶媒を減圧下で蒸発させるか、若しくはポリオレフィン沈殿にガス流を通すか、及び/又は、ポリオレフィンの融点より低い温度で沸騰するアルコール又はケトンで、この溶媒を抽出することによって、付着溶媒を除去することについて記述している。
【0011】
別の一例において、米国特許第5,198,471号は、複数のポリマーを含む物理的に混ざり合った固体混合物(例えば廃棄プラスチック)からポリマーを分離する方法について記述しており、この方法は、第1のより低い温度で、溶媒を用いて、第1の単層溶液と残りの固体成分とを形成する。米国特許第5,198,471号特許は更に、この溶媒をより高い温度まで加熱して、第1のより低い温度で可溶化されなかった追加のポリマーを溶解させることについて記述している。米国特許第5,198,471号特許は、不溶性のポリマー成分を濾過することについて記述している。
【0012】
別の一例において、米国特許第5,233,021号は、超臨界流体中で適切な温度及び圧力で各成分を溶解させ、次に温度及び/又は圧力を変えて、特定の成分を順に抽出することによって、多成分構造(例えばカーペット廃棄物)から純粋なポリマー成分を抽出する方法について記述している。しかしながら、米国特許第5,198,471号特許と同様、米国特許第5,233,021号特許は、不溶性成分の濾過についてのみ記述している。
【0013】
別の一例において、米国特許第5,739,270号は、共溶媒及び作動流体を用いて、汚染物質及び他のプラスチック成分から、あるプラスチックのポリマー成分を連続的に分離するための方法及び装置について記述している。この共溶媒は少なくとも部分的にポリマーを溶解させ、第2の流体(これは液体で臨界又は超臨界状態である)がポリマーの成分を可溶化し、溶解しているポリマーの一部を共溶媒から沈殿させる。米国特許第5,739,270号特許は更に、熱可塑性共溶媒(作動流体あり又はなしで)を濾過することにより、ガラス粒子などの粒子状汚染物質を除去する工程について記述している。
【0014】
上述の、汚染されたポリマーを精製するための既知の溶媒による方法は、「バージンの様な」ポリマーを生成することはない。前記の方法において、共溶解、よってすなわち他のポリマーの交差汚染が、しばしば起こる。吸着剤を使用した場合、使用済み吸着剤を溶液から除去するために、濾過及び/又は遠心分離工程がしばしば使用される。加えて、加熱、減圧蒸発、及び/又は沈殿剤を用いた沈殿などによる溶媒除去のための分離プロセスを使用して、残留溶媒を含まないポリマーが生成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】米国特許第7,935,736号
【特許文献2】米国特許第6,555,588号
【特許文献3】欧州特許出願第849,312号
【特許文献4】米国特許第5,198,471号
【特許文献5】米国特許第5,233,021号
【特許文献6】米国特許第5,739,270号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
したがって、容易かつ経済的にポリマーから除去可能な溶媒を使用し、装置操作数の点で比較的単純であり、顕著な量のポリマー交差汚染のないポリマーを生成し、本質的に無色のポリマーを生成し、かつ本質的に無臭のポリマーを生成する、汚染されたポリマーを精製するための改善された溶媒式方法に対するニーズが依然として存在する。
【課題を解決するための手段】
【0017】
回収されたポリプロピレンを精製するための方法が開示される。この方法は、回収されたポリプロピレンを取得することを含み、この回収されたポリプロピレンは、消費者使用後ポリマー、産業使用後ポリマー、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される。この回収されたポリプロピレンを、約80℃〜約220℃の温度及び約1.03MPa(150psig)〜約103.42MPa(15,000psig)の圧力で、標準沸点が約70℃未満の第1流体溶媒と接触させ、抽出された回収されたポリプロピレンを生成する。この抽出された回収されたポリプロピレンを、約90℃〜約220℃の温度、約2.42MPa(350psig)〜約137.90MPa(20,000psig)の圧力で、第1流体溶媒、第2流体溶媒、及びこれらの混合物からなる群から選択される溶媒に溶解し、ポリプロピレン溶液を生成する。このポリプロピレン溶液を、約90℃〜約220℃の温度、約2.42MPa(350psig)〜約137.90MPa(20,000psig)の圧力で、固体媒体に接触させることにより精製し、より高純度のポリプロピレン溶液を生成する。次に、より高純度のポリプロピレンを、このより高純度のポリプロピレン溶液から分離する。一実施形態において、第2流体溶媒は、第1流体溶媒と同じ化学組成又は異なる化学組成のいずれかを有する。
【0018】
一実施形態において、より高純度のポリプロピレンが、約0℃〜約220℃の温度、約0MPa(0psig)〜約13.79MPa(2,000psig)の圧力で、このより高純度のポリプロピレンから分離される。
【0019】
一実施形態において、この回収されたポリプロピレンは、消費者による使用後のリサイクル由来ポリプロピレンである。別の一実施形態において、この回収されたポリプロピレンは、ポリプロピレンホモポリマー又は主にポリプロピレンのコポリマーである。
【0020】
一実施形態において、この流体溶媒は、約0℃未満約−45℃超の標準沸点を有し、かつ約+25kJ/mol未満の標準蒸発エンタルピー変化を有する。別の一実施形態において、この流体溶媒は、オレフィン性炭化水素、脂肪族炭化水素、及びこれらの混合物からなる群から選択される。
【0021】
一実施形態において、この脂肪族炭化水素は、C〜C脂肪族炭化水素及びこれらの混合物からなる群から選択される。別の一実施形態において、この脂肪族炭化水素及びこれらの混合物は、主にC脂肪族炭化水素からなる。
【0022】
一実施形態において、この流体溶媒は本質的にC液化石油ガスからなる。別の一実施形態において、この流体溶媒は、n−ブタン、ブタン異性体、又はこれらの混合物である。
【0023】
一実施形態において、抽出、溶解、及び精製工程の温度は、約110℃〜約170℃である。
【0024】
一実施形態において、この接触工程における圧力は、約7.58MPa(1,100psig)〜約14.48MPa(2,100psig)である。別の一実施形態において、この接触工程における圧力は、約7.58MPa(1,100psig)未満である。
【0025】
一実施形態において、この溶解工程における圧力は、約7.58MPa(1,100psig)超である。別の一実施形態において、この溶解工程における圧力は、約14.48MPa(2,100psig)超である。
【0026】
一実施形態において、この固体媒体は、無機物質、炭素系物質、及びこれらの混合物からなる群から選択される。別の一実施形態において、この無機物質は、ケイ素酸化物、アルミニウム酸化物、鉄酸化物、ケイ酸アルミニウム、非晶質火山ガラス、及びこれらの混合物からなる群から選択される。別の一実施形態において、この無機物質は、シリカ、シリカゲル、珪藻土、砂、石英、アルミナ、パーライト、フラ−土、ベントナイト、及びこれらの混合物からなる群から選択される。別の一実施形態において、この無機物質は回収ガラスである。
【0027】
一実施形態において、この炭素系物質は、無煙炭、カーボンブラック、コークス、活性炭、セルロース、及びこれらの混合物からなる群から選択される。別の一実施形態において、ポリプロピレン溶液を固体媒体と接触させることは、固体媒体の充填層内で行われる。一実施形態において、この充填層は長さ20cm超である。
【0028】
本発明の追加的な特徴は、実施例と共に以下の詳細な説明の検討によって当業者には明らかとなり得る。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】本発明の一実施形態の主な工程を示すブロックフロー図である。
図2】DSC測定によるエンタルピー値を用いた、ポリプロピレン中のポリエチレン成分の計算のための較正曲線である。
図3】実施例に使用される実験装置の概略図である。
図4】実施例検体の写真である。
図5】いくつかの実施例の不透明度及びにおい強度の棒グラフである。
【発明を実施するための形態】
【0030】
I.定義
本明細書で使用される用語「回収された(reclaimed)ポリマー」は、以前にある目的のために使用されてから、次いで更なる処理のために回収された(recovered)ポリマーを指す。
【0031】
本明細書で使用される用語「回収された(reclaimed)ポリプロピレン」(rPP)は、以前にある目的のために使用されてから、次いで更なる処理のために回収された(recovered)ポリプロピレンポリマーを指す。
【0032】
本明細書で使用される用語「消費者使用後」は、末端消費者が消費財又は製品においてその材料を使用した後に生じる材料資源を指す。
【0033】
本明細書で使用される用語「消費者による使用後のリサイクル」(PCR)は、末端消費者が材料を廃棄物流に廃棄した後に生成される材料を指す。
【0034】
本明細書で使用される用語「産業使用後」は、商品又は製品の製造中に生じる材料資源を指す。
【0035】
本明細書で使用される用語「流体溶媒」は、特定の温度及び圧力条件下で、液体状態で存在し得る物質を指す。いくつかの実施形態において、この流体溶媒は、1種類の分子又は異性体の主に均質な化学組成であってよく、また他の実施形態において、この流体溶媒は、いくつかの異なる分子組成又は異性体の混合物であってよい。更に、本発明のいくつかの実施形態において、用語「流体溶媒」は更に、その物質の臨界温度及び臨界圧力(臨界点)、その近く、又はそれを上回る状態にある物質にも適用される。ある物質がその物質の臨界点を超えたものは、「超臨界流体」として知られ、これは液体の典型的な物理的特性(すなわち密度)を有さないことが、当業者にはよく知られている。
【0036】
本明細書で使用される用語「溶解」とは、分子レベルで、溶媒中に溶質(ポリマー又は非ポリマー)が少なくとも部分的に組み込まれていることを意味する。更に、溶質/溶媒溶液の熱力学的安定性は、下記の式1によって記述することができる:
ΔGmix=ΔH−TΔSmix (I)
式中、ΔGmixは溶質と溶媒との混合のギブズ自由エネルギー変化、ΔHmixは混合のエンタルピー変化、Tは絶対温度、ΔSmixは混合のエントロピーである。溶媒中における溶質の安定した溶液を維持するには、ギブズ自由エネルギーが負でかつ最小でなければならない。よって、適切な温度及び圧力で負のギブズ自由エネルギーを最小化する様な、溶質と溶媒の任意の組み合わせを、本発明に使用することができる。
【0037】
本明細書で使用される用語「標準沸点」は、国際純正・応用化学連合(IUPAC)により確立されている、厳密に100kPa(1bar、14.5psia、0.9869atm)の絶対圧力での沸点を指す。
【0038】
本明細書で使用される用語「標準蒸発エンタルピー変化」は、その物質の標準沸点で、所定量の物質が液体から蒸気に変化するのに必要なエンタルピー変化を指す。
【0039】
本明細書で使用される用語「ポリプロピレン溶液」は、溶媒に溶解しているポリプロピレンの溶液を指す。このポリプロピレン溶液は、溶解していない物質を含んでいることがあるため、このポリプロピレン溶液は、溶媒中に溶解しているポリプロピレンの溶液中に懸濁している非溶解物質の「スラリー」でもあり得る。
【0040】
本明細書で使用される用語「固体媒体」は、使用条件下において固体状態で存在する物質を指す。この固体媒体は結晶質、準結晶質、又は非晶質であり得る。この固体媒体は粒状であってよく、かつ異なる形状(すなわち球形、円筒形、ペレットなど)で供給され得る。この固体媒体が粒状の場合、その粒径及び固体媒体の粒径分布は、その粒状媒体に使用されるメッシュサイズにより画定され得る。標準メッシュサイズ表記の例は、米国材料試験協会(ASTM)標準ASTM E11「Standard Specification for Woven Wire Test Sieve Cloth and Test Sieves」に見出すことができる。この固体媒体はまた、不織繊維マット又は織布であってもよい。
【0041】
本明細書で使用される用語「より高純度のポリプロピレン溶液」は、精製工程の前の同じポリプロピレン溶液に比べて、より少ない汚染物質を有するポリプロピレン溶液を指す。
【0042】
本明細書で使用される用語「バージンの様な」とは、本質的に汚染物質を含まず、顔料を含まず、無臭、均質で、特性がバージンポリマーと同様であることを意味する。
【0043】
本明細書で使用される用語「主にポリプロピレンのコポリマー」は、ポリプロピレン反復単位が70mol%超のコポリマーを指す。
【0044】
II.汚染されたポリプロピレンの精製方法
驚くべきことに、好ましい実施形態において、温度及び圧力依存性のポリマー溶解度を呈する特定の流体溶媒は、比較的単純なプロセスにおいて使用したときに、汚染されたポリマー(特に回収又はリサイクルポリマー)を、ほぼバージンの様な品質まで精製するのに使用できることが見出された。このプロセスは、図1に例示するように、1)回収されたポリプロピレンを取得すること(図1の工程a)と、2)次に抽出温度(T)及び抽出圧力(P)で、ポリプロピレンを流体溶媒で抽出すること(図1の工程b)と、3)次に溶解温度(T)及び溶解圧力(P)で、ポリプロピレンを流体溶媒に溶解させること(図1の工程c)と、4)次に溶解温度(T)及び溶解圧力(P)で、この溶解したポリプロピレン溶液を固体媒体に接触させること(図1の工程d)と、次に、ポリプロピレンを流体溶媒から分離すること(図1の工程e)と、を含む。本発明の一実施形態において、この精製したポリプロピレンは、消費者使用後廃棄物流を資源とすることができ、本質的に汚染物質を含まず、顔料を含まず、無臭、均質で、特性がバージンポリプロピレンと同様である。更に、好ましい一実施形態において、本発明の流体溶媒の物理的特性は、この精製されたポリプロピレンから流体溶媒を分離するのに、よりエネルギー効率の良い方法を可能にし得る。
【0045】
回収されたポリプロピレン
本発明の一実施形態において、回収されたポリプロピレンを精製するための方法は、回収されたポリプロピレンを取得することを含む。本発明の目的として、回収されたポリプロピレンは、消費者使用後、産業使用後、市販後、及び/又はその他の特殊廃棄物流を資源とする。例えば、消費者使用後廃棄ポリプロピレンは、路傍リサイクルの流れに由来するものであってよく、これは、末端消費者が、パッケージ及び製品に由来する使用済みのポリマーを、指定容器に入れ、これを清掃業者又はリサイクル業者が回収する。消費者使用後廃棄ポリマーはまた、店舗内の「返却」プログラムに由来するものであってよく、これは、消費者が廃棄ポリマーを店舗に持って来て、廃棄ポリマーを指定の回収容器に入れる。産業使用後廃棄ポリマーの一例は、メーカーにより使用不能な材料として集められた、商品又は製品の製造又は輸送中に生じた廃棄ポリマーであり得る(すなわち、裁ちくず、仕様外の材料、初期作動時の廃棄)。特殊廃棄物流に由来する廃棄ポリマーの一例は、電子機器ごみ(E−wasteとも呼ばれる)のリサイクルに由来する廃棄ポリマーであり得る。特殊廃棄物流に由来する廃棄ポリマーの別の一例は、自動車のリサイクルに由来する廃棄ポリマーであり得る。特殊廃棄物流に由来する廃棄ポリマーの別の一例は、使用済みカーペット及び布地のリサイクルに由来する廃棄ポリマーであり得る。
【0046】
本発明の目的として、回収されたポリプロピレンは、個々のポリマーの均質な組成物、あるいは複数の異なるポリプロピレン組成物の混合物である。ポリプロピレン組成物の非限定的な例は、プロピレンのホモポリマー、プロピレンとエチレンのコポリマー(「インパクト」及び「ランダムクラリファイ」コポリマーを含む)、プロピレンとα−オレフィンのコポリマー、ポリプロピレンゴム、並びに当業者に明らかであり得る様なその他の可溶性ポリプロピレン組成物である。
【0047】
この回収されたポリプロピレンは更に、様々な顔料、染料、加工助剤、安定剤、充填剤、及び、元のポリマーを物品の最終形態に重合又は転換する際にポリマーに添加されたその他の性能向上添加剤を含み得る。顔料の非限定的な例は、有機顔料(例えば銅フタロシアニン)、無機顔料(例えば二酸化チタン)、及び、当業者に明らかであり得る様なその他の顔料である。有機顔料の非限定的な一例は、ベーシックイエロー51である。加工助剤の非限定的な例は、帯電防止剤(例えばグリセロールモノステアレート)及び潤滑促進剤(例えばエルカ酸アミド)である。安定剤の非限定的な一例は、オクタデシル−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)−プロピオネートである。充填剤の非限定的な例は、炭酸カルシウム、タルク、及びガラス繊維である。
【0048】
溶媒
本発明の流体溶媒は、約70℃未満の標準沸点を有する。加圧により、本発明の動作温度範囲未満の標準沸点を有する溶媒が、溶媒蒸気をほとんど又は全く生じない状態に維持される。一実施形態において、約70℃未満の標準沸点を有する流体溶媒は、二酸化炭素、ケトン類、アルコール類、エーテル類、アルケン類、アルカン類、及びこれらの混合物からなる群から選択される。約70℃未満の標準沸点を有する流体溶媒の非限定的な例は、二酸化炭素、アセトン、メタノール、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、エチルメチルエーテル、テトラヒドロフラン、酢酸メチル、エチレン、プロピレン、1−ブテン、2−ブテン、イソブチレン、1−ペンテン、2−ペンテン、ペンテンの分枝状異性体、1−ヘキセン、2−ヘキセン、メタン、エタン、プロパン、n−ブタン、イソブタン、n−ペンタン、イソペンタン、ネオペンタン、n−ヘキサン、イソヘキサンの異性体、及び、当業者に明らかであり得る様なその他の物質である。
【0049】
使用する流体溶媒の選択は、本発明の工程を実施するのに使用される温度及び圧力範囲を規定する。本発明に記述される種類の溶媒におけるポリマー相の性質についてのレビューは、参照文献:McHughら(1999)Chem.Rev.99:565〜602に提供されている。
【0050】
抽出
本発明の一実施形態において、ポリプロピレンの精製方法は、そのポリマーが本質的に流体溶媒に不溶性である温度及び圧力で、その流体溶媒にその回収されたポリプロピレンを接触させることを含む。理論に束縛されるものではないが、出願者らは、その流体溶媒がポリマーを完全に可溶化するのを防ぎながら、一方で、流体溶媒がポリマー内に拡散し、抽出可能な汚染物質を抽出できる様な方法で、温度及び圧力依存性の溶解度を制御することができると考える。この抽出可能な汚染物質は、ポリマーに添加された残留加工助剤、ポリマーに接触した残留製品製剤(例えば香料及び着香料、染料、並びにその他の、意図的に添加された又は非意図的にポリマーに組み込まれた(例えば廃棄物回収中及びその後のその他の廃棄材料と共に蓄積された際の)抽出可能な材料であり得る。
【0051】
一実施形態において、この制御された抽出は、ポリマー/流体溶媒系の温度を固定し、次に圧力を、そのポリマーがその流体溶媒に溶解する圧力又は圧力範囲よりも低い圧力に制御することによって、達成される。別の一実施形態において、この制御された抽出は、ポリマー/溶媒系の圧力を固定し、次に温度を、そのポリマーがその流体溶媒に溶解する温度又は温度範囲よりも低い温度に制御することによって、達成される。流体溶媒によるポリマーの温度及び圧力制御された抽出を行うには、好適な圧力容器を使用し、流体溶媒での連続的なポリマー抽出が可能になる様な方法で構成することができる。本発明の一実施形態において、この圧力容器は、連続的液体−液体抽出カラムであってよく、溶融したポリマーがこの抽出カラムの一方の端にポンプで送り込まれ、流体溶媒が抽出カラムの同じ端又は反対側の端にポンプで送り込まれる。別の一実施形態において、この抽出した汚染物質を含む流体が、このプロセスから除去される。別の一実施形態において、この抽出した汚染物質を含む流体を、精製し、回収し、リサイクルして、その抽出工程に、又はプロセスの別の工程に使用する。本発明の一実施形態において、この抽出はバッチ手法で実施することができ、この場合、回収されたポリプロピレンは圧力容器内に固定され、流体溶媒が連続的にポンプで送り込まれてこの固定されたポリマー相を通過する。使用する流体溶媒の抽出時間又は量は、最終的なより高純度のポリマーの望ましい純度と、出発物質の回収されたポリプロピレン中にある抽出可能な汚染物質の量とに依存する。別の一実施形態において、後述の「精製」セクションに記述されるように、この抽出した汚染物質を含む流体を、別の工程で固体媒体に接触させる。別の一実施形態において、回収されたポリプロピレンの精製方法は、ポリマーが溶融し液体状態である温度及び圧力で、流体溶媒にその回収されたポリプロピレンを接触させることを含む。別の一実施形態において、この回収されたポリプロピレンは、ポリマーが固体状態である温度及び圧力で、流体溶媒と接触させる。
【0052】
一実施形態において、回収されたポリプロピレンの精製方法は、ポリプロピレンが実質的に溶解しないままである温度及び圧力で、流体溶媒にポリプロピレンを接触させることを含む。別の一実施形態において、回収されたポリプロピレンの精製方法は、約80℃〜約220℃の温度で、ポリプロピレンをn−ブタンに接触させることを含む。別の一実施形態において、回収されたポリプロピレンの精製方法は、約100℃〜約200℃の温度で、ポリプロピレンをn−ブタンに接触させることを含む。別の一実施形態において、回収されたポリプロピレンの精製方法は、約130℃〜約180℃の温度で、ポリプロピレンをn−ブタンに接触させることを含む。別の一実施形態において、回収されたポリプロピレンの精製方法は、約1.03MPa(150psig)〜約20.68MPa(3,000psig)の圧力で、ポリプロピレンをn−ブタンに接触させることを含む。別の一実施形態において、回収されたポリプロピレンの精製方法は、約6.89MPa(1,000psig)〜約18.96MPa(2,750psig)の圧力で、ポリプロピレンをn−ブタンに接触させることを含む。別の一実施形態において、回収されたポリプロピレンの精製方法は、約10.34MPa(1,500psig)〜約17.24MPa(2,500psig)の圧力で、ポリプロピレンをn−ブタンに接触させることを含む。
【0053】
別の一実施形態において、回収されたポリプロピレンの精製方法は、約80℃〜約220℃の温度で、ポリプロピレンをプロパンに接触させることを含む。別の一実施形態において、回収されたポリプロピレンの精製方法は、約100℃〜約200℃の温度で、ポリプロピレンをプロパンに接触させることを含む。別の一実施形態において、回収されたポリプロピレンの精製方法は、約130℃〜約180℃の温度で、ポリプロピレンをプロパンに接触させることを含む。別の一実施形態において、回収されたポリプロピレンの精製方法は、約1.38MPa(200psig)〜約55.16MPa(8,000psig)の圧力で、ポリプロピレンをプロパンに接触させることを含む。別の一実施形態において、回収されたポリプロピレンの精製方法は、約6.89MPa(1,000psig)〜約41.37MPa(6,000psig)の圧力で、ポリプロピレンをプロパンに接触させることを含む。別の一実施形態において、回収されたポリプロピレンの精製方法は、約13.79MPa(2,000psig)〜約27.58MPa(4,000psig)の圧力で、ポリプロピレンをプロパンに接触させることを含む。
【0054】
溶解
本発明の一実施形態において、回収されたポリプロピレンの精製方法は、そのポリマーが流体溶媒に溶解している温度及び圧力で、その流体溶媒にその回収されたポリプロピレンを溶解させることを含む。理論に束縛されるものではないが、出願者らは、流体溶媒中での回収されたポリマーの熱力学的に好ましい溶解を実現する様な方法で、温度及び圧力を制御することができると考える。更に、温度及び圧力は、特定のポリマー又はポリマー混合物を溶解することができ、同時に他のポリマー又はポリマー混合物を溶解しない様な方法で、温度及び圧力を制御することができる。この制御可能な溶解により、ポリマー混合物からのポリマー分離が可能になる。
【0055】
本発明の一実施形態において、ポリマーの精製方法は、同じ温度及び圧力条件下で、汚染物質を溶解しない溶媒に、汚染された回収されたポリプロピレンを溶解させることを含む。この汚染物質には、顔料、充填剤、泥、及び他のポリマーが含まれ得る。これらの汚染物質は、溶解時に回収されたポリプロピレンから放出され、次に、後続の固体−液体分離工程によりポリマー溶液から除去される。
【0056】
一実施形態において、回収されたポリプロピレンの精製方法は、ポリプロピレンが流体溶媒に溶解している温度及び圧力で、その流体溶媒にそのポリプロピレンを溶解させることを含む。別の一実施形態において、回収されたポリプロピレンの精製方法は、約90℃〜約220℃の温度で、ポリプロピレンをn−ブタンに溶解させることを含む。別の一実施形態において、回収されたポリプロピレンの精製方法は、約100℃〜約200℃の温度で、ポリプロピレンをn−ブタンに溶解させることを含む。別の一実施形態において、回収されたポリプロピレンの精製方法は、約130℃〜約180℃の温度で、ポリプロピレンをn−ブタンに溶解させることを含む。別の一実施形態において、回収されたポリプロピレンの精製方法は、約2.41MPa(350psig)〜約27.57MPa(4,000psig)の圧力で、ポリプロピレンをn−ブタンに溶解させることを含む。別の一実施形態において、回収されたポリプロピレンの精製方法は、約6.89MPa(1,000psig)〜約24.13MPa(3,500psig)の圧力で、ポリプロピレンをn−ブタンに溶解させることを含む。別の一実施形態において、回収されたポリプロピレンの精製方法は、約13.79MPa(2,000psig)〜約20.68MPa(3,000psig)の圧力で、ポリプロピレンをn−ブタンに溶解させることを含む。
【0057】
別の一実施形態において、回収されたポリプロピレンの精製方法は、約90℃〜約220℃の温度で、ポリプロピレンをプロパンに溶解させることを含む。別の一実施形態において、回収されたポリプロピレンの精製方法は、約100℃〜約200℃の温度で、ポリプロピレンをプロパンに溶解させることを含む。別の一実施形態において、回収されたポリプロピレンの精製方法は、約130℃〜約180℃の温度で、ポリプロピレンをプロパンに溶解させることを含む。別の一実施形態において、回収されたポリプロピレンの精製方法は、約13.79MPa(2,000psig)〜約55.16MPa(8,000psig)の圧力で、ポリプロピレンをプロパンに溶解させることを含む。別の一実施形態において、回収されたポリプロピレンの精製方法は、約20.68MPa(3,000psig)〜約41.37MPa(6,000psig)の圧力で、ポリプロピレンをプロパンに溶解させることを含む。別の一実施形態において、回収されたポリプロピレンの精製方法は、約24.13MPa(3,500psig)〜約34.47MPa(5,000psig)の圧力で、ポリプロピレンをプロパンに溶解させることを含む。
【0058】
精製
本発明の一実施形態において、ポリプロピレンの精製方法は、そのポリマーが流体溶媒に溶解したままである温度及び圧力で、汚染されたポリマーを固体媒体に接触させることを含む。本発明の固体媒体は、本発明の流体溶媒に溶解している回収されたポリプロピレンの溶液から、少なくとも一部の汚染を除去する、任意の固体材料である。理論に束縛されるものではないが、出願者らは、この固体媒体が、様々なメカニズムで汚染を除去すると考える。可能なメカニズムの非限定的な例としては、吸着、吸収、サイズ排除、イオン排除、イオン交換、及び、当業者に明らかであり得るその他のメカニズムが挙げられる。更に、回収されたポリプロピレン中に一般的に見出される顔料及びその他の汚染物質は極性化合物であり得、これは、少なくともわずかに極性であり得る固体媒体と、優先的に相互作用し得る。この極性−極性相互作用は、非極性溶媒(例えばアルカン類)が流体溶媒として使用されている場合、特に好ましい。
【0059】
本発明の一実施形態において、この固体媒体は、無機物質、炭素系物質、又はこれらの混合物からなる群から選択される。無機物質の有用な例としては、ケイ素酸化物、アルミニウム酸化物、鉄酸化物、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウム、非晶質火山ガラス、シリカ、シリカゲル、珪藻土、砂、石英、回収ガラス、アルミナ、パーライト、フラ−土、ベントナイト、及びこれらの混合物が挙げられる。炭素系物質の有用な例としては、無煙炭、カーボンブラック、コークス、活性炭、セルロース、及びこれらの混合物が挙げられる。本発明の別の一実施形態において、この固体媒体は回収ガラスである。
【0060】
本発明の一実施形態において、この固体媒体を、攪拌しながら所定の時間にわたって、ポリマーに接触させる。別の一実施形態において、この固体媒体は、固体−液体分離工程を介して、より高純度のポリマー溶液から除去される。固体−液体分離工程の非限定的な例としては、濾過、デカンテーション、遠心分離、及び沈降が挙げられる。本発明の別の一実施形態において、この汚染されたポリマー溶液を、固体媒体の静止層に通過させる。本発明の別の一実施形態において、固体媒体の静止層の高さ又は長さは5cm超である。本発明の別の一実施形態において、固体媒体の静止層の高さ又は長さは10cm超である。本発明の別の一実施形態において、固体媒体の静止層の高さ又は長さは20cm超である。本発明の別の一実施形態において、この固体媒体は、望ましいポリマー純度を維持するために、必要に応じて交換される。更に別の実施形態において、この固体媒体はリサイクルされ、精製工程で再使用される。別の一実施形態において、この固体媒体は、再洗工程中に固体媒体を流動化することによってリサイクルされる。
【0061】
一実施形態において、回収されたポリプロピレンの精製方法は、ポリプロピレンが流体溶媒に溶解したままである温度及び圧力で、ポリプロピレン/流体溶媒溶液を固体媒体に接触させることを含む。別の一実施形態において、回収されたポリプロピレンの精製方法は、約90℃〜約220℃の温度で、ポリプロピレン/n−ブタン溶液を固体媒体に接触させることを含む。別の一実施形態において、回収されたポリプロピレンの精製方法は、約100℃〜約200℃の温度で、ポリプロピレン/n−ブタン溶液を固体媒体に接触させることを含む。別の一実施形態において、回収されたポリプロピレンの精製方法は、約130℃〜約180℃の温度で、ポリプロピレン/n−ブタン溶液を固体媒体に接触させることを含む。別の一実施形態において、回収されたポリプロピレンの精製方法は、約2.41MPa(350psig)〜約27.57MPa(4,000psig)の圧力で、ポリプロピレン/n−ブタン溶液を固体媒体に接触させることを含む。別の一実施形態において、回収されたポリプロピレンの精製方法は、約6.89MPa(1,000psig)〜約24.13MPa(3,500psig)の圧力で、ポリプロピレン/n−ブタン溶液を固体媒体に接触させることを含む。別の一実施形態において、回収されたポリプロピレンの精製方法は、約13.79MPa(2,000psig)〜約20.68MPa(3,000psig)の圧力で、ポリプロピレン/n−ブタン溶液を固体媒体に接触させることを含む。
【0062】
別の一実施形態において、回収されたポリプロピレンの精製方法は、約90℃〜約220℃の温度で、ポリプロピレン/プロパン溶液を固体媒体に接触させることを含む。別の一実施形態において、回収されたポリプロピレンの精製方法は、約100℃〜約200℃の温度で、ポリプロピレン/プロパン溶液を固体媒体に接触させることを含む。別の一実施形態において、回収されたポリプロピレンの精製方法は、約130℃〜約180℃の温度で、ポリプロピレン/プロパン溶液を固体媒体に接触させることを含む。別の一実施形態において、回収されたポリプロピレンの精製方法は、約13.79MPa(2,000psig)〜約55.16MPa(8,000psig)の圧力で、ポリプロピレン/プロパン溶液を固体媒体に接触させることを含む。別の一実施形態において、回収されたポリプロピレンの精製方法は、約20.68MPa(3,000psig)〜約41.37MPa(6,000psig)の圧力で、ポリプロピレン/プロパン溶液を固体媒体に接触させることを含む。別の一実施形態において、回収されたポリプロピレンの精製方法は、約24.13MPa(3,500psig)〜約34.47MPa(5,000psig)の圧力で、ポリプロピレン/プロパン溶液を固体媒体に接触させることを含む。
【0063】
分離
本発明の一実施形態において、回収されたポリプロピレンの精製方法は、ポリマーが溶液から沈殿し、かつ流体溶媒にもはや溶解しない温度及び圧力で、より高純度のポリマーをその流体溶媒から分離することを含む。別の一実施形態において、流体溶媒からのより高純度のポリマーの沈殿は、固定温度で圧力を下げることにより達成される。別の一実施形態において、流体溶媒からのより高純度のポリマーの沈殿は、固定圧力で温度を下げることにより達成される。別の一実施形態において、流体溶媒からのより高純度のポリマーの沈殿は、固定圧力で温度を上げることにより達成される。別の一実施形態において、流体溶媒からのより高純度のポリマーの沈殿は、温度と圧力の両方を下げることにより達成される。溶媒は、温度及び圧力を制御することにより、液体から蒸気相へと部分的又は完全に変換され得る。別の一実施形態において、分離工程中に溶媒の温度及び圧力を制御することにより、流体溶媒を100%蒸気相に完全に変換することなく、沈殿したポリマーが流体溶媒から分離される。沈殿した、より高純度のポリマーの分離は、液体−液体分離又は液体−固体分離の任意の方法によって達成される。液体−液体分離又は液体−固体分離の非限定的な例としては、濾過、デカンテーション、遠心分離、及び沈降が挙げられる。
【0064】
一実施形態において、回収されたポリプロピレンの精製方法は、ポリプロピレンが溶液から沈殿する温度及び圧力で、ポリプロピレン/流体溶媒溶液からポリプロピレンを分離することを含む。別の一実施形態において、回収されたポリプロピレンの精製方法は、約0℃〜約220℃の温度で、ポリプロピレン/n−ブタン溶液からポリプロピレンを分離することを含む。別の一実施形態において、回収されたポリプロピレンの精製方法は、約100℃〜約200℃の温度で、ポリプロピレン/n−ブタン溶液からポリプロピレンを分離することを含む。別の一実施形態において、回収されたポリプロピレンの精製方法は、約130℃〜約180℃の温度で、ポリプロピレン/n−ブタン溶液からポリプロピレンを分離することを含む。別の一実施形態において、回収されたポリプロピレンの精製方法は、約0MPa(0psig)〜約13.79MPa(2,000psig)の圧力で、ポリプロピレン/n−ブタン溶液からポリプロピレンを分離することを含む。別の一実施形態において、回収されたポリプロピレンの精製方法は、約0.34MPa(50psig)〜約10.34MPa(1,500psig)の圧力で、ポリプロピレン/n−ブタン溶液からポリプロピレンを分離することを含む。別の一実施形態において、回収されたポリプロピレンの精製方法は、約0.52MPa(75psig)〜約6.89MPa(1,000psig)の圧力で、ポリプロピレン/n−ブタン溶液からポリプロピレンを分離することを含む。
【0065】
別の一実施形態において、回収されたポリプロピレンの精製方法は、約−42℃〜約220℃の温度で、ポリプロピレン/プロパン溶液からポリプロピレンを分離することを含む。別の一実施形態において、回収されたポリプロピレンの精製方法は、約0℃〜約150℃の温度で、ポリプロピレン/プロパン溶液からポリプロピレンを分離することを含む。別の一実施形態において、回収されたポリプロピレンの精製方法は、約50℃〜約130℃の温度で、ポリプロピレン/プロパン溶液からポリプロピレンを分離することを含む。別の一実施形態において、回収されたポリプロピレンの精製方法は、約0MPa(0psig)〜約41.37MPa(6,000psig)の圧力で、ポリプロピレン/プロパン溶液からポリプロピレンを分離することを含む。別の一実施形態において、回収されたポリプロピレンの精製方法は、約0.34MPa(50psig)〜約20.68MPa(3,000psig)の圧力で、ポリプロピレン/プロパン溶液からポリプロピレンを分離することを含む。別の一実施形態において、回収されたポリプロピレンの精製方法は、約0.52MPa(75psig)〜約6.89MPa(1,000psig)の圧力で、ポリプロピレン/プロパン溶液からポリプロピレンを分離することを含む。
【0066】
III試験方法
本明細書に記述される試験方法は、ポリマーを精製するための様々な方法の有効性を測定するのに使用される。具体的には、この記述される方法は、色と透光性/明澄度の改善(すなわち、回収されたポリプロピレンの色及び不透明度を、無色のバージンポリマーの色及び不透明度に近づけること)、元素汚染の低減又は除去(すなわち、重金属の除去)、非可燃性汚染物質(すなわち、無機充填剤)の低減又は除去、揮発性化合物(特に、回収されたポリプロピレンの悪臭に寄与する揮発性化合物)の低減又は除去、並びに、ポリマー汚染物質(すなわち、ポリプロピレン中のポリエチレン混入)の低減又は除去、について、所与の精製方法の有効性を示す。
【0067】
色と不透明度の測定:
ポリマーの色と不透明度/透光性は、そのポリマーから製造される物品の望ましい視覚的美観を達成できるかどうかを判定する、重要なパラメーターである。回収されたポリプロピレン、特に消費者使用後に由来する回収されたポリプロピレンは、残留する顔料、充填剤、及びその他の汚染物質により、典型的に色が濃く不透明である。よって、色と不透明度の測定は、ポリマーの精製方法の有効性を判定する重要なパラメーターである。
【0068】
色の測定の前に、ポリマー粉末又はペレットのいずれかの試料を、型に圧縮して、幅30mm×長さ30mm×厚さ1mmの正方形試験検体とした(角は丸くなっている)。粉末試料は最初に、ステンレススチール製プラテンの間で、清潔な未使用のアルミホイルを接触剥離層として用いて、粉末を冷間圧縮してシート状にすることにより、室温(約20〜23℃)で密度を高めた。次に、冷間圧縮した約0.85gの粉末又はペレットのいずれかを、200℃に予熱したCarver Press Model C(Carver,Inc.、Wabash,IN 46992−0554 USA)で、アルミニウム製プラテン、未使用アルミホイル剥離層、及び上述の正方形の試験検体の寸法に対応する空洞を備えたステンレススチール製シムを用いて圧縮し、試験検体とした。試料は、圧力を印加する前に5分間加熱した。次に、5分後に、プレス機で、少なくとも2トン(1.81メトリックトン)の水圧で少なくとも5秒間圧縮してから解放した。次に成形型の積層物を取り出し、2枚の厚く平らな金属製ヒートシンクの間に挟んで冷却した。次にアルミホイル接触剥離層を試料から剥がし、捨てた。少なくとも片側の試料周囲の鋳ばりを、型の縁部まで剥がしてから、次いで試料を型から押し出した。各試験検体を、空隙/気泡の欠陥がないか肉眼で検査し、色測定領域(最小でh17.78mm(0.7”)直径)に欠陥がない試料のみを、色測定に使用した。
【0069】
各試料の色は、国際照明委員会(CIE)L、a、bの3次元色空間を用いて特徴付けた。次元L*は試料の明度の測定値であり、L=0は最も暗い黒色試料、L=100は最も明るい白色試料に対応する。次元aは試料の赤色又は緑色の測定値で、aが正の値のときは赤色、aが負の値のときは緑色に対応する。次元bは試料の青色又は黄色の測定値で、bが正の値のときは青色、bが負の値のときは黄色に対応する。幅30mm×長さ30mm×厚さ1mmの正方形の試験検体試料それぞれのL値を、HunterLabモデルLabScan XE分光光度計(Hunter Associates Laboratory,Inc.、Reston,VA 20190−5280,USA)で測定した。この分光光度計は、標準光源としてD65を備え、観測角度10°、視野面積直径44.45mm(1.75”)、ポート直径17.78mm(0.7”)で構成された。
【0070】
各試料の不透明度は、試料をどれだけの光が通過するかを測定したものであり(すなわち、試料の透光性の測定値)、これは上述のHunterLab分光光度計で、コントラスト比不透明度モードを用いて決定された。各試料の不透明度を決定するために、2つの測定を行った。1つは、白色背景での試料の明度YWhiteBackingを測定し、もう1つは、黒色背景での試料の明度YBlackBackingを測定するものである。次に、下記の式2を使用して、これらの明度値から不透明度を計算した:
【0071】
【数1】
【0072】
元素分析:
回収されたポリプロピレンの資源の多くが、許容できないほど高濃度の重金属汚染を有している。重金属(例えば鉛、水銀、カドミウム、及びクロム)の存在により、特定の用途(例えば食品若しくは薬剤接触用途、又は医療機器用途)における回収されたポリプロピレンの使用が阻まれ得る。よって、重金属の濃度の測定は、ポリマーの精製方法の有効性を判定する際に重要である。
【0073】
元素分析は、誘導結合プラズマ質量分析(ICP−MS)を使用して実施した。試料の有効性に応じて、n=2〜n=6で、約0.25gの試料と、4mLの濃硝酸及び1mLの濃フッ化水素酸(HF)とを混合し、試験溶液を調製した。このサンプルを、UltraWAVEマイクロ波試料分解プロトコル(20分間で125℃まで上昇、10分間で250℃まで上昇、20分間250℃を維持)を用いて分解した。分解した試料を室温まで冷ました。この分解した試料に、100ppmのGe及びRh 0.25mLを内部標準として加えた後、50mLまで希釈した。測定の正確さを評価するため、バージンポリマーにスパイクを行うことにより、分解前スパイクを調製した。バージンポリマースパイク試料は、上述と同じ手順を用いて計り取り、関心のある各単元素標準(Na、Al、Ca、Ti、Cr、Fe、Ni、Cu、Zn、Cd、及びPbを含む)の適切な量でスパイクを行った。スパイクは、「低濃度スパイク」及び「高濃度スパイク」の2つの異なるレベルで調製した。各スパイクは、3重複製で調製した。バージンポリマーのスパイクに加えて、ピペット作業中にエラーが生じていないことを確認し、かつプロセス全体で回収を追跡するために、ブランクにもスパイクを行った。ブランクにスパイクを行った試料も、2つの異なる濃度で3重複製で調製し、スパイクされたバージンポリマー及び試験試料と同じ方法で処理した。Na、Al、Ca、Ti、Cr、Fe、Ni、Cu、Zn、Cd、及びPbを含む、0.05、0.1、0.5、1、5、10、50、100、及び500ppb溶液を調製して、9点較正曲線を作成した。較正標準はすべて、未希釈の標準参照溶液と、内部標準として100ppmのGe及びRh 0.25mLに4mLの濃硝酸及び1mLの濃HFを加えたものとを、希釈することによって調製された。調製した標準液、試験試料、及びスパイクした試験試料は、Agilentの8800 ICP−QQQMSを使用し、メーカーの推奨に従って最適化して、分析した。各検体について観測されたm/z、及び分析に使用したコリジョンセルガスは、次の通りであった:Na、23m/z、H;Al、27m/z、H;Ca、40m/z、H;Ti、48m/z、H;Cr、52m/z、He;Fe、56m/z、H;Ni、60m/z;ガスなし;Cu、65m/z、ガスなし;Zn、64m/z、He;Cd、112m/z;H;Pb、206≧206、207≧207、208≧208m/zの合計、ガスなし;Ge、72m/z、全モード;Rh、103m/z、全モード。Geは<103m/zの全元素に対する内部標準として使用され、またRhは>103m/zの全元素に対する内部標準として使用された。
【0074】
残留灰分:
回収されたポリプロピレンの資源の多くが、例えば炭酸カルシウム、タルカム、及びガラス繊維などの様々な充填剤を含んでいる。これらの充填剤は、回収されたポリプロピレンの元の用途では有用であったものだが、これらは、この回収されたポリプロピレンの次の用途にとっては望ましくない可能性がある様な形で、ポリマーの物理的特性を変化させる。よって、充填剤の量の測定は、ポリマーの精製方法の有効性を判定する際に重要である。
【0075】
試料中の非可燃性材料(時に、灰分とも呼ばれる)の量を定量するために、熱重量分析(TGA)が実施された。約5〜15mgの試料をプラチナ製試料皿に載せ、空気環境下、TA InstrumentsモデルQ500 TGA内で、20℃/分の速度で700℃まで加熱した。試料は、700℃で10分間、等温に保持した。等温保持後、700℃で、残留質量パーセンテージを測定した。
【0076】
におい分析:
におい感覚分析は、各試料約3gを20mLガラス製バイアルに入れ、少なくとも30分間室温で試料を平衡化して、行われた。平衡化の後、各バイアルを開け、訓練を受けた評価者がこのヘッドスペースのにおいを嗅ぎ(ウサギのように嗅ぐ)、においの強度及び記述式特性を判定した。においの強度は、下記の尺度に従って評価された:
5=非常に強い
4=強い
3=中程度
2=弱い〜中程度
1=弱い
0=無臭
【0077】
ポリマー混入分析:
回収されたポリプロピレンの資源の多くが(特に混合物流の資源に由来する回収されたポリプロピレンが)、望ましくないポリマー混入を含んでいる可能性がある。理論に束縛されるものではないが、ポリマー混入(例えば、ポリプロピレン中のポリエチレン混入)は、異種相の存在とそれによる弱い相互作用によって、ポリマーの物理的特性に影響を与える可能性がある。更に、ポリマー混入はポリマーの不透明度を高めることがあり、色にも影響することがある。よって、ポリマー混入の量の測定は、ポリマーの精製方法の有効性を判定する際に重要である。
【0078】
示差走査熱量測定法(DSC)を用いて、準結晶質ポリマー混入が評価された。ポリプロピレン中のポリエチレン混入の量を測定するために、5種類のポリプロピレン/ポリエチレンブレンドのセットを調製した。これは、Pro−fax 6331ポリプロピレン(LyondellBasell Industries Holdings,B.V.)中に、2、4、6、8、及び10重量%のFormolene(登録商標)HB5502F HDPE(Formosa Plastics Corporation,USA)を加えて調製した。各試料約5〜15mgを、アルミニウム製DSC皿に密封し、下記の方法を用い、TA InstrumentsモデルQ2000 DSCで分析した:
1.30.00℃で平衡化する
2.20.00℃/分の速度で200.00℃まで加熱する
3.サイクル0の印を付ける
4.20.00℃/分の速度で30.00℃にする
5.サイクル1の印を付ける
6.20.00℃/分の速度で200.00℃まで加熱する
7.サイクル2の印を付ける
8.20.00℃/分の速度で30.00℃にする
9.サイクル3の印を付ける
10.5.00℃/分の速度で200.00℃まで加熱する
11.サイクル4の印を付ける
【0079】
5.00℃/分DSCサーモグラムを使って、既知のHDPE含有量の各試料について、128℃近辺でのHDPEピークの融解エンタルピーが計算された。融解エンタルピーと既知のHDPE濃度(重量%)とをプロットすることにより、図2に示す線形の較正曲線が得られた。
【0080】
未知のPE含有量を有する試料が、同じ上述のDSC装置及び方法を使用して分析された。上述の較正曲線を使って、PE含有量が計算された。較正曲線を生成するのに使用した具体的なHDPEは、回収されたポリプロピレン試料中に存在し得るポリエチレン(又はポリエチレンブレンド)混入に比べて、異なる度合の結晶化度を有する可能性が非常に高い。結晶化度は、測定されたポリエチレンの融解エンタルピーに独立に影響を及ぼす可能性があり、よって、結果として得られるポリエチレン含有量の計算にも影響を及ぼす可能性がある。しかしながら、本明細書に記述されるDSC試験は、ポリマーを精製する様々な方法の有効性を比較するための相対的な指標として用いるためのものであり、ポリマーブレンド中のポリエチレン含有量の厳密な定量を意図するものではない。上述の方法は、ポリプロピレン中のポリエチレン混入の測定について記述しているが、この方法は、DSCサーモグラムにおいて異なる温度範囲及びピークを使用した他の準結晶質ポリマーの測定にも適用することができる。更に、核磁気共鳴(NMR)分光法などの別の方法を使用して、試料中の準結晶質ポリマーと非晶質ポリマー両方の混入の量を測定することもできる。
【実施例】
【0081】
以下の実施例は、本発明の範囲内にある実施形態を更に説明及び実証する。これらの実施例は、例示目的のためにのみ提供され、本発明の趣旨及び範囲から逸脱することなくそれらの多くの変更が可能であることから、本発明を限定するものとして解釈されるべきではない。
【0082】
(実施例1)
消費者使用後由来リサイクルポリプロピレン混合カラーフレークの試料が、リサイクル樹脂サプライヤーから入手された。この消費者による使用後のリサイクルポリプロピレンは、米国及びカナダに由来するものであった。受け取ったままの混合カラーフレークを、Century/W&P ZSK30二軸押出機で、それぞれ標準混合及び搬送エレメントを備えた2つの30mm一般用スクリューを装備して、混ぜ合わせて均質化した。スクリュー回転速度は約50rpm、フィーダースループットは約9.07kg/時(20lbs/時)、バレル温度は約210℃(ダイの温度)〜約150℃(供給口の温度)の範囲であった。押出機から出る灰色のストランドを室温の水浴で冷却し、空気中で乾燥させ、切断してペレットにした。
【0083】
この試料を、本明細書に開示されている試験方法を用いて特徴付けを行った。その結果として得られたデータが表1にまとめられている。この実施例の目的は、精製前の代表的な消費者使用後由来リサイクル樹脂の特性を示すことである。
【0084】
このペレット及び対応する正方形の試験検体は、正方形の試験検体のL値に示されているように、濃灰色であった。試料の不透明度は平均で約100%不透明の不透明度であった(すなわち透光性がなかった)。この正方形の試験検体の写真を、図4に実施例1として示す。図4に示すように、この検体は、色が濃く、透光性を欠いていた。
【0085】
この実施例は、消費者使用後由来リサイクルポリプロピレンに見られる重金属汚染の代表的なベースラインの役割を果たす。他の実施例と比べたときに、受け取ったままの消費者使用後由来リサイクルポリプロピレンにおいて、重金属汚染がはるかに大きいことが見出された。
【0086】
実施例1の試料は灰分含有量が平均約1.2117重量%であり、これも、消費者使用後由来リサイクルポリプロピレン中にしばしば存在する非可燃性物質の量のベースラインの役割を果たす。
【0087】
この実施例は、消費者使用後由来リサイクルポリプロピレンに見られるにおい化合物汚染の代表的なベースラインの役割を果たす。実施例1の試料は、5ポイント尺度(5が最も強い)で3.75のにおい強度を有することが見出され、「ごみ」、「ほこりっぽい」、「酸っぱい」においを有すると描写された。
【0088】
この実施例は、消費者使用後由来リサイクルポリプロピレンに見られるポリエチレン混入の代表的なベースラインの役割を果たす。実施例1の試料は、ポリエチレン含有量が平均約5.5重量%であった。
【0089】
(実施例2)
実施例1に記述される、消費者使用後由来リサイクルポリプロピレン混合カラーフレークの試料を、図3に示す実験装置及び下記の手順を使用して処理した:
1.237gの混合カラーフレークを、内径(ID)4.45cm(1.75”)、長さ71.12cm(28”)の1.1Lの抽出カラム圧力容器に入れ、175℃の外部表面温度まで加熱した。
2.容積移送式ポンプを使用して、液体n−ブタン溶媒を約14.82MPa(2,150psig)まで加圧し、2つの熱交換器を使って約110℃の温度まで予熱してから、抽出カラムの下側に導入した。
3.抽出カラムの上側から出る流体流を、IDが5.08cm(2”)、長さ約21.59cm(8.5”)の0.5L第2圧力容器の上側に導入し、175℃の外部表面温度まで加熱した。この第2圧力容器には、150mLのシリカゲル(Silicycle Ultra Pure Silica Gels、SiliaFlash GE60、Parc−Technologies、USA)が入っており、これはあらかじめビーカー内で150mLの酸化アルミニウム(活性アルミナ、Selexsorb CDX、7×14、BASF、USA)と混合されたものである。
4.第2圧力容器の下側から出る流体流を、膨張弁を通して減圧し、枝付き三角フラスコに移した。流体流を減圧して三角フラスコに移した後、溶媒蒸気をフラスコの枝を通して脱気し、フラスコ内のすべての液体/固体を集めた。14.82MPa(2,150psig)で、n−ブタン溶媒を用いて、フラスコ内に何も残存する材料が見られなくなるまで、システム全体を溶出させた。19.93gの白色固体を集め、「分画1」とラベル付けした。
5.三角フラスコを、空の清潔なフラスコに交換し、次いでシステム圧力を16.55MPa(2,400psig)まで上げた。
6.システムから溶出される更なる固体材料が観察されなくなるまで、システム圧力を16.55MPa(2,400psig)に維持した。89.35gの白色固体を集め、「分画2」とラベル付けした。
7.三角フラスコを、空の清潔なフラスコに交換し、次いでシステム圧力を17.24MPa(2,500psig)まで上げた。
8.システムから溶出される更なる固体材料が観察されなくなるまで、システム圧力を17.24MPa(2,500psig)に維持した。58.18gの白色固体を集め、「分画3」とラベル付けした。
9.三角フラスコを、空の清潔なフラスコに交換し、次いでシステム圧力を17.93MPa(2,600psig)まで上げた。
10.システムから溶出される更なる固体材料が観察されなくなるまで、システム圧力を17.93MPa(2,600psig)に維持した。7.29gの白色固体を集め、「分画4」とラベル付けした。
11.三角フラスコを、空の清潔なフラスコに交換し、次いでシステム圧力を20.68MPa(3,000psig)まで上げた。
12.システムから溶出される更なる固体材料が観察されなくなるまで、システム圧力を20.68MPa(3,000psig)に維持した。5.58gの白色固体を集め、「分画5」とラベル付けした。
13.各フラスコに集めた試料を室温及び大気圧で少なくとも2日間脱気してから、本明細書に開示されている試験方法を用いて特性付けを行った。
【0090】
分画2として16.55MPa(2,400psig)で集めた白色固体材料のデータは、表1にまとめられている。
【0091】
【表1】
【0092】
【表2】
【0093】
この実施例の分画1〜5で分離された固体は、白色であった。分画2の白色固体を型に圧縮して正方形の試験検体にしたとき、検体は無色透明であり、バージンポリプロピレンの外観と同様であった。この正方形の試験検体の写真を、図4に実施例2として示す。図4に示すように、この検体は透明であり、色と透光性がバージンポリプロピレンに匹敵していた。L値は、この正方形の試験検体が本質的に無色であることを示しており、実施例1の正方形の試験検体(すなわち、受け取ったままの消費者使用後由来ポリプロピレン)に比べて色が劇的に改善されていることを示した。実施例2の分画2の正方形の試験検体のL値は平均85.29であり、これは、実施例1の正方形の試験検体のL値の平均39.76に比べて、はるかに改善されていた。実施例2の分画2の正方形の試験検体の不透明度は平均7.90%不透明(すなわち、透光性が約92%)であり、これも、実施例1の正方形の試験検体不透明度の平均約100%不透明に比べて、はるかに改善されていた。
【0094】
実施例2の分画2の試料について、重金属汚染の濃度も、実施例1の試料に比べて、はるかに改善されていた。例えば、実施例2の分画2の試料におけるナトリウムの濃度は、平均わずか2,630ppbであるが、実施例1の試料のナトリウム濃度は平均136,000ppbであった(約98%の低減)。アルミニウム、鉄、カドミウム、及び鉛の濃度はすべて、実施例2の分画2の試料において、定量化の限界を下回っていたが、実施例1の試料においてこれらの同じ元素の濃度はそれぞれ平均192,000、108,000、1,620、及び12,166ppbであった。測定した他の元素(カルシウム、チタン、クロム、ニッケル、銅、及び亜鉛)の濃度はすべて、実施例1の試料に比べて、実施例2の分画2の試料において、99%を超える減少であった。
【0095】
実施例2の分画2の試料の灰分値は平均約0.2897重量%であり、これは実施例1の試料の灰分値(平均約1.2117重量%)よりも顕著に低かった。
【0096】
実施例2の分画2の試料は、5ポイント尺度(5が最も強い)で0.5のにおい強度を有することが見出され、これは、実施例1の試料(におい強度3.75)のにおい強度に比べて、はるかに改善されていた。におい強度は低かったが、実施例2の分画2の試料は、バージンポリプロピレンと同様の「プラスチック」又は「ガソリン」の様なにおいを有すると記述された。
【0097】
実施例2の分画2の試料におけるポリエチレン含有量はどれも定量限界を下回っており、これは、実施例1の試料のポリエチレン含有量(平均約5.5重量%)に比べてはるかに改善されていた。
【0098】
図5は、実施例2の精製されたリサイクルポリプロピレンの不透明度及びにおい強度を、無処理のリサイクルポリプロピレン(実施例1)、欧州特許第EP0849312 A1号に開示の方法に従って処理されたリサイクルポリプロピレン(実施例8)、及びバージンポリプロピレン比較試料と比較した棒グラフである。図5に示すように、実施例2の精製されたリサイクルポリプロピレンは、不透明度とにおい強度が両方とも低く、バージンポリプロピレン比較試料と同様であった。
【0099】
(実施例3)
実施例1に記述される、消費者使用後由来リサイクルポリプロピレン混合カラーフレークの試料を、図3に示す実験装置及び下記の手順を使用して処理した:
1.225gの混合カラーフレークを、内径(ID)44.45mm(1.75”)、長さ71.12cm(28”)の1.1Lの抽出カラム圧力容器に入れ、175℃の外部表面温度まで加熱した。
2.容積移送式ポンプを使用して、液体n−ブタン溶媒を約6.89MPa(1,000psig)まで加圧し、2つの熱交換器を使って約90℃の温度まで予熱してから、抽出カラムの下側に導入した。
3.抽出カラムの上側から出る流体流を、IDが5.08cm(2”)、長さ約21.59cm(8.5”)の0.5L第2圧力容器の上側に導入し、135℃の外部表面温度まで加熱した。この第2圧力容器には、150mLのシリカゲル(Silicycle Ultra Pure Silica Gels、SiliaFlash GE60、Parc−Technologies、USA)が入っており、これはあらかじめビーカー内で150mLの酸化アルミニウム(活性アルミナ、Selexsorb CDX、7×14、BASF、USA)と混合されたものである。
4.第2圧力容器の下側から出る流体流を、膨張弁を通して減圧し、枝付き三角フラスコに移した。流体流を減圧して三角フラスコに移した後、溶媒蒸気をフラスコの枝を通して脱気し、フラスコ内のすべての液体/固体を集めた。6.89MPa(1,000psig)で、n−ブタン溶媒を用いて、フラスコ内に何も残存する材料が見られなくなるまで、システム全体を溶出させた。27.52gの白色固体を集め、「分画1」とラベル付けした。
5.三角フラスコを、空の清潔なフラスコに交換し、次いでシステム圧力を10.34MPa(1,500psig)まで上げた。
6.システムから溶出される更なる固体材料が観察されなくなるまで、システム圧力を10.34MPa(1,500psig)に維持した。59.25gの白色固体を集め、「分画2」とラベル付けした。
7.次いで10.34MPa(1,500psig)で集めた分画2の試料を、室温及び大気圧で少なくとも2日間脱気してから、本明細書に開示されている試験方法を用いて特性付けを行った。
【0100】
10.34MPa(1,500psig)で集めた分画2の試料のデータは、表1にまとめられている。
【0101】
この実施例の分画2で分離された固体は、オフホワイト色であった。これらの固体を型に圧縮して正方形の試験検体にしたとき、分画22の検体はほぼ無色透明であり、バージンポリプロピレンの外観とほとんど同様であった。この正方形の試験検体の写真を、図4に実施例3として示す。図4に示すように、この検体は透明であり、色と透光性がバージンポリプロピレンに匹敵していた。L値も、分画2の正方形の試験検体が本質的に無色であることを示しており、実施例1の正方形の試験検体(すなわち、受け取ったままの消費者使用後由来ポリプロピレン)に比べて色が劇的に改善されていることを示した。実施例3の分画2の正方形の試験検体のL値は平均84.57であり、これは、実施例1の正方形の試験検体のL値の平均39.76に比べて、はるかに改善されていた。実施例3の分画2の正方形の試験検体の不透明度は平均9.58%不透明(すなわち、透光性が約90%)であり、これも、実施例1の正方形の試験検体不透明度の平均約100%不透明に比べて、はるかに改善されていた。
【0102】
実施例3の分画2の試料について、重金属汚染の濃度は、これも、実施例1の試料に比べて、はるかに改善されていた。例えば、実施例3の分画2の試料におけるナトリウムの濃度は、平均36,100ppbであるが、実施例1の試料のナトリウム濃度は平均136,000ppbであった(約74%の低減)。鉄、カドミウム、及び鉛の濃度はすべて、実施例3の分画2の試料において、定量限界を下回っていたが、実施例1の試料においてこれらの同じ元素の濃度はそれぞれ平均108,000、1,620、及び12,166ppbであった。カルシウム、チタン、クロム、ニッケル、銅、及び亜鉛の濃度はすべて、実施例1の試料に比べて、実施例3の分画2の試料において、95%を超える減少であった。アルミニウムの濃度は、同じ比較において約74%減少した。
【0103】
実施例3の分画2の試料の灰分値は平均約0.1614重量%であり、これは実施例1の試料の灰分値(平均約1.2117重量%)よりも顕著に低かった。
【0104】
実施例3の分画2の試料は、5ポイント尺度(5が最も強い)で3のにおい強度を有することが見出され、これは、実施例1の試料(におい強度3.75)のにおい強度に比べて、わずかに改善されていた。実施例3の分画2の試料は、「プラスチック」又は「溶媒」のようだと記述されるにおいを有していた。
【0105】
実施例3の分画2の試料におけるポリエチレン含有量はどれも定量限界を下回っており、これは、実施例1の試料のポリエチレン含有量(平均約5.5重量%)に比べてはるかに改善されていた。
【0106】
(実施例4)
実施例1に記述される、消費者使用後由来リサイクルポリプロピレン混合カラーフレークの試料を、図3に示す実験装置及び下記の手順を使用して処理した:
1.236gの混合カラーフレークを、内径(ID)44.45cm(1.75”)、長さ71.12cm(28”)の1.1Lの抽出カラム圧力容器に入れ、175℃の外部表面温度まで加熱した。
2.容積移送式ポンプを使用して、液体ヘキサン(混合異性体)溶媒を約1.38MPa(200psig)まで加圧し、2つの熱交換器を使って約110℃の温度まで予熱してから、抽出カラムの下側に導入した。
3.抽出カラムの上側から出る流体流を、IDが50.8mm(2”)、長さ約21.59cm(8.5”)の0.5L第2圧力容器の上側に導入し、175℃の外部表面温度まで加熱した。この第2圧力容器には、150mLのシリカゲル(Silicycle Ultra Pure Silica Gels、SiliaFlash GE60、Parc−Technologies、USA)が入っており、これはあらかじめビーカー内で150mLの酸化アルミニウム(活性アルミナ、Selexsorb CDX、7×14、BASF、USA)と混合されたものである。
4.第2圧力容器の下側から出る流体流を、膨張弁を通して減圧し、枝付き三角フラスコに移した。流体流を減圧して三角フラスコに移した後、この液体/固体溶液をフラスコに集めた。1.38MPa(200psig)で、ヘキサン溶媒を用いて、フラスコ内に何も残存する材料が見られなくなるまで、システム全体を溶出させた。102.11gの白色固体を集め(溶媒蒸発の後)、「分画1」とラベル付けした。
5.三角フラスコを、空の清潔なフラスコに交換し、次いでシステム圧力を2.07MPa(300psig)まで上げた。
6.システムから溶出される更なる固体材料が観察されなくなるまで、システム圧力を2.07MPa(300psig)に維持した。71.08gの白色固体を集め(溶媒蒸発の後)、「分画2」とラベル付けした。
7.蒸発により、すべての試料からヘキサン溶媒を除去し、次にこの試料を、室温及び大気圧で少なくとも2日間脱気してから、本明細書に開示されている試験方法を用いて特性付けを行った。
【0107】
1.38MPa(200psig)で集めた分画1の試料のデータは、表1にまとめられている。
【0108】
この実施例の分画1で分離された固体は、オフホワイト色であった。これらの分画1の固体を型に圧縮して正方形の試験検体にしたとき、この検体はほぼ無色だが、若干曇った外観を有していた。この正方形の試験検体の写真を、図4に実施例4として示す。図4に示すように、この検体は実施例1に比べて色及び不透明度が改善されているが、バージンPPに比べて曇った外観を有していた。L値は、分画1の正方形の試験検体が本質的に無色であることを示しており、実施例1の正方形の試験検体(すなわち、受け取ったままの消費者使用後由来ポリプロピレン)に比べて色が劇的に改善されていることを示した。実施例4の分画1の正方形の試験検体のL値は平均82.18であり、これは、実施例1の正方形の試験検体のL値の平均39.76に比べて、はるかに改善されていた。実施例4の分画1の正方形の試験検体の不透明度は平均22.18%であり、これも、実施例1の正方形の試験検体不透明度の平均約100%不透明に比べて、改善されていた。しかしながら、実施例4の分画1の正方形の試験検体の不透明度は、実施例2及び3の分画2の正方形の試験検体の不透明度ほどには改善されていなかった。
【0109】
実施例4の分画1の試料について、重金属汚染の濃度は、これも、実施例1の試料に比べて、はるかに改善されていた。例えば、実施例4の分画1の試料におけるナトリウムの濃度は、平均2,790ppbであるが、実施例1の試料のナトリウム濃度は平均136,000ppbであった(約97%の低減)。アルミニウム、カルシウム、チタン、クロム、鉄、ニッケル、銅、亜鉛、カドミウム、及び鉛の濃度はすべて、実施例1の試料に比べて、実施例4の分画1の試料において、96%を超える減少であった。
【0110】
実施例4の分画1の試料の灰分値は平均約0.2812重量%であり、これは実施例1の試料の灰分値(平均約1.2117重量%)よりも顕著に低かった。
【0111】
実施例4の分画1の試料は、5ポイント尺度(5が最も強い)で2.25のにおい強度を有することが見出され、これは、実施例1の試料(におい強度3.75)のにおい強度に比べて、改善されていた。実施例4の分画1の試料は、強さは低いものの、「ミント」、「酸っぱい」、「プラスチック」、及び「焦げ」と記述されるにおいを有していた。
【0112】
実施例4の分画1の試料は、平均ポリエチレン含有量値が約1.9重量%であり、これは、実施例1の試料のポリエチレン含有量(平均約5.5重量%)に比べて改善されていた。
【0113】
(実施例5)
実施例1に記述される、消費者使用後由来リサイクルポリプロピレン混合カラーフレークの試料を、図3に示す実験装置及び下記の手順を使用して処理した:
1.233gの混合カラーフレークを、内径(ID)44.45mm(1.75”)、長さ71.12cm(28”)の1.1Lの抽出カラム圧力容器に入れ、175℃の外部表面温度まで加熱した。
2.容積移送式ポンプを使用して、液体n−ブタン溶媒を約14.13MPa(2,050psig)まで加圧し、2つの熱交換器を使って約110℃の温度まで予熱してから、抽出カラムの下側に導入した。
3.抽出カラムの上側から出る流体流を、IDが50.8mm(2”)、長さ約21.59cm(8.5”)の0.5L第2圧力容器の上側に導入し、175℃の外部表面温度まで加熱した。この第2圧力容器には、180mLのシリカゲル(Silicycle Ultra Pure Silica Gels、SiliaFlash GE60、Parc−Technologies、USA)を入れた。
4.第2圧力容器の下側から出る流体流を、膨張弁を通して減圧し、枝付き三角フラスコに移した。流体流を減圧して三角フラスコに移した後、溶媒蒸気をフラスコの枝を通して脱気し、フラスコ内のすべての液体/固体を集めた。14.13MPa(2,050psig)で、n−ブタン溶媒を用いて、フラスコ内に何も残存する材料が見られなくなるまで、システム全体を溶出させた。12.87gの白色固体を集め、「分画1」とラベル付けした。
5.三角フラスコを、空の清潔なフラスコに交換し、次いでシステム圧力を17.24MPa(2,500psig)まで上げた。
6.システムから溶出される更なる固体材料が観察されなくなるまで、システム圧力を17.24MPa(2,500psig)に維持した。162.43gの白色固体を集め、「分画2」とラベル付けした。
7.次いで、17.24MPa(2,500psig)で集めた試料を、室温及び大気圧で少なくとも2日間脱気してから、本明細書に開示されている試験方法を用いて特性付けを行った。
【0114】
17.24MPa(2,500psig)で集めた分画2の試料のデータは、表2にまとめられている。
【0115】
この実施例の分画2で分離された固体は、白色〜ややオフホワイト色であった。これらの分画2の固体を型に圧縮して正方形の試験検体にしたとき、この検体はほぼ無色だが、若干曇った外観を有していた。この正方形の試験検体の写真を、図4に実施例5として示す。図4に示すようにこの検体は実施例1に比べて改善された外観を有しているが、バージンPPに比べて若干曇った外観を有していた。L値は、この正方形の試験検体が本質的に無色であることを示しており、実施例1の正方形の試験検体(すなわち、受け取ったままの消費者使用後由来ポリプロピレン)に比べて色が劇的に改善されていることを示した。実施例5の分画2の正方形の試験検体のL値は平均82.00であり、これは、実施例1の正方形の試験検体のL値の平均39.76に比べて、はるかに改善されていた。実施例5の分画2の正方形の試験検体の不透明度は平均18.63%であり、これも、実施例1の正方形の試験検体不透明度の平均約100%不透明に比べて、改善されていた。しかしながら、実施例5の分画2の正方形の試験検体の不透明度は、実施例2及び3の分画2の正方形の試験検体の不透明度ほどには改善されていなかった。理論に束縛されるものではないが、出願者らは、この改善されながらも依然として曇った外観は、より少ないシリカゲル搭載量(すなわち、より短い充填層長さ)によるものであり、これにより、より多くの汚染物質が、集められたポリマー中に残存したと考える。
【0116】
実施例5の分画2の試料について、重金属汚染の濃度は、これも、実施例1の試料に比べて、はるかに改善されていた。例えば、実施例5の分画2の試料におけるナトリウムの濃度は、平均2,960ppbであるが、実施例1の試料のナトリウム濃度は平均136,000ppbであった(約98%の低減)。実施例5の分画2の試料における鉄の濃度は、定量限界を下回っていたが、実施例1の試料における鉄の濃度は平均108,000であった。アルミニウム、カルシウム、チタン、クロム、ニッケル、銅、亜鉛、カドミウム、及び鉛の濃度はすべて、実施例1の試料に比べて、実施例5の分画2の試料において、97%を超える減少であった。
【0117】
実施例5の分画2の試料の灰分値は平均約0.5723重量%であり、これは実施例1の試料の灰分値(平均約1.2117重量%)よりも低かった。
【0118】
実施例5の分画2の試料は、5ポイント尺度(5が最も強い)で4のにおい強度を有することが見出され、これは、実施例1の試料(におい強度3.75)のにおい強度に比べて、わずかに高かった。実施例5の分画2の試料は、「汚い」、「油っぽい」、及び「ミント」と記述されたにおいを有していた。理論に束縛されるものではないが、出願者らは、実施例5の試料での高いにおい強度は、第1抽出工程(すなわち分画1の回収)中に、着臭剤分子がシリカゲルに吸収されたことによるものであると考える。実施例5で使用されたシリカゲルの量が少ないため(よって充填層の長さが短いため)、吸収された着臭剤分子が、分画2として集めた固体と共に溶出されやすくなる。
【0119】
実施例5の分画2の試料は、ポリエチレン含有量値が平均約1.7重量%であり、これは、実施例1の試料のポリエチレン含有量(平均約5.5重量%)に比べて改善されていた。
【0120】
(実施例6)
実施例6の試料は、実施例3において6.89MPa(1,000psig)で生成された分画1の白色固体と、実施例3において10.34MPa(1,500psig)で生成された分画2の白色固体とを合わせることによって調製された。分画1と分画2を合わせた試料は、抽出可能な汚染物質を抽出する工程なしでポリプロピレンを精製する方法の性能を示すために調製された。実施例3の分画1及び2を合わせたもののデータは、表2にまとめられている。
【0121】
この実施例の固体を型に圧縮して正方形の試験検体にしたとき、この検体は、実施例3の分画2の正方形の試験検体に類似の外観を有していた。この正方形の試験検体の写真を、図4に実施例6として示す。図4に示すように、この検体は透明であり、色と透光性がバージンポリプロピレンに匹敵していた。L値は、この正方形の試験検体が本質的に無色であることを示しており、実施例1の正方形の試験検体(すなわち、受け取ったままの消費者使用後由来ポリプロピレン)に比べて色が劇的に改善されていることを示した。実施例6の正方形の試験検体のL値は平均84.51であり、これは、実施例1の正方形の試験検体のL値の平均39.76に比べて、はるかに改善されていた。実施例6の正方形の試験検体の不透明度は平均9.14%不透明(すなわち、透光性がほぼ91%)であり、これも、比較実施例1の正方形の試験検体不透明度の平均約100%不透明に比べて、はるかに改善されていた。実施例6の正方形の試験検体のL値及び不透明度も、実施例3の分画2の正方形の試験検体のL値及び不透明度と同様であった。
【0122】
実施例3の分画2と同様に、実施例6の試料における重金属汚染物質の濃度も、実施例1の試料に比べてはるかに改善されていた。例えば、実施例6の試料におけるナトリウムの濃度は、平均19,700ppbであるが、実施例1の試料のナトリウム濃度は平均136,000ppbであった(約86%の低減)。アルミニウム、カルシウム、チタン、クロム、鉄、ニッケル、銅、亜鉛、カドミウム、及び鉛の濃度はすべて、実施例1の試料に比べて、実施例6の試料において、82%を超える減少であった。
【0123】
実施例6の試料の平均灰分値は、約0.4951重量%であり、これは、実施例1の試料の灰分値(平均約1.2117重量%)よりも低かった。実施例3の分画2の試料の灰分値に比べて、実施例6の試料の灰分値はわずかに高かった。
【0124】
実施例6の試料は、5ポイント尺度(5が最も強い)で3.75のにおい強度を有することが見出され、これは、実施例1の試料(これもにおい強度3.75)のにおい強度と同様であった。実施例6の試料は、「塩素」、「プラスチック」、「油っぽい」、及び「脂っこい」と記述されるにおいを有していた。実施例3の分画2の試料に比べて、実施例6の試料は、より強いにおいを有していた。
【0125】
実施例3の分画2と同様に、実施例6の試料におけるポリエチレン含有量はどれも定量限界を下回っており、これは、実施例1の試料のポリエチレン含有量(平均約5.5重量%)に比べてはるかに改善されていた。
【0126】
(実施例7)
この実施例の目的は、ポリマー溶液を固体媒体と接触させる工程なしでポリプロピレンを精製する方法の性能が劣っていることを示すことである。実施例1に記述される、消費者使用後由来リサイクルポリプロピレン混合カラーフレークの試料を、図3に示す実験装置及び下記の手順を使用して処理した:
1.231gの混合カラーフレークを、内径(ID)44.45mm(1.75”)、長さ71.12cm(28”)の1.1Lの抽出カラム圧力容器に入れ、175℃の外部表面温度まで加熱した。
2.容積移送式ポンプを使用して、液体n−ブタン溶媒を約13.79MPa(2,000psig)まで加圧し、2つの熱交換器を使って約110℃の温度まで予熱してから、抽出カラムの下側に導入した。
3.抽出カラムの上側から出る流体流を、IDが50.8mm(2”)、長さ約21.59cm(8.5”)の0.5L第2圧力容器の上側に導入し、175℃の外部表面温度まで加熱した。この実施例では、第2圧力容器には固体媒体は含まれなかった。
4.第2圧力容器の下側から出る流体流を、膨張弁を通して減圧し、枝付き三角フラスコに移した。流体流を減圧して三角フラスコに移した後、溶媒蒸気をフラスコの枝を通して脱気し、すべての液体/固体をフラスコ内に集めた。13.79MPa(2,000psig)で、n−ブタン溶媒を用いて、フラスコ内に何も残存する材料が見られなくなるまで、システム全体を溶出させた。20.82gの褐色固体を集め、「分画1」とラベル付けした。
5.三角フラスコを、空の清潔なフラスコに交換し、次いでシステム圧力を17.24MPa(2,500psig)まで上げた。
6.システムから溶出される更なる固体材料が観察されなくなるまで、システム圧力を17.24MPa(2,500psig)に維持した。173.39gの灰白色固体を集め、「分画2」とラベル付けした。
7.次いで17.24MPa(2,500psig)で集めた分画2の試料を、室温及び大気圧で少なくとも2日間脱気してから、本明細書に開示されている試験方法を用いて特性付けを行った。
【0127】
17.24MPa(2,500psig)で集めた分画2の試料のデータは、表2にまとめられている。
【0128】
この実施例の分画2で分離された固体は、灰色〜オフホワイト色であった。これらの分画2の固体を型に圧縮して正方形の試験検体にしたとき、この検体は褐色/薄灰色の外観を有していた。この正方形の試験検体の写真を、図4に実施例7として示す。図4に示すように、この検体は、実施例1に比べてわずかに改善されていた。固体媒体との接触工程なしであっても、L値は、実施例7の分画2の正方形の試験検体が、実施例1の試料(すなわち、受け取ったままの消費者使用後由来ポリプロピレン)に比べて、色がわずかに改善されたことを示している。実施例7の分画2の正方形の試験検体のL値は平均50.51であり、これは、実施例1の正方形の試験検体のL値の平均39.76に比べて、わずかに改善されていた。実施例7の分画2の正方形の試験検体の不透明度は平均87.20%であり、これも、実施例1の正方形の試験検体不透明度の平均約100%不透明に比べて、わずかに改善されていた。理論に束縛されるものではないが、実施例7の正方形の試験検体の色値及び不透明度におけるわずかな改善は、着色剤及びその他の外観に影響する材料から、ポリマーが抽出されたことによるものであり得る。更に、出願者らは、この着色剤及びその他の材料が、ポリマーが抽出された後の残留物として残されている可能性があると考える。
【0129】
実施例7の分画2の試料について、重金属汚染の濃度は、実施例1の試料に比べて、改善されていた。例えば、実施例7の分画2の試料におけるナトリウムの濃度は、平均33,300ppbであるが、実施例1の試料のナトリウム濃度は平均136,000ppbであった(約76%の低減)。アルミニウム、カルシウム、チタン、クロム、鉄、ニッケル、銅、亜鉛、カドミウム、及び鉛の濃度はすべて、実施例1の試料に比べて、実施例7の分画2の試料において、69%を超える減少であった。理論に束縛されるものではないが、出願者らは、この重金属汚染の減少は、汚染物からポリマーが抽出されたことによるものであり、汚染物は、ポリマーが抽出された後の残留物として残されていると考える。
【0130】
実施例7の分画2の試料の灰分値は平均約0.3154重量%であり、これは実施例1の試料の灰分値(平均約1.2117重量%)よりも低かった。
【0131】
実施例7の分画2の試料は、5ポイント尺度(5が最も強い)で1のにおい強度を有することが見出され、これは、実施例1の試料(におい強度3.75)のにおい強度に比べて、はるかに改善されていた。実施例7の分画2の試料は、「プラスチック」又は「石油」のようだと記述されるにおいを有していた。
【0132】
実施例7の分画2の試料は、ポリエチレン含有量値が平均約1.2重量%であり、これは、実施例1の試料のポリエチレン含有量(平均約5.5重量%)に比べて改善されていた。
【0133】
(実施例8)
実施例1に記述される、消費者使用後由来リサイクルポリプロピレン混合カラーフレークの試料を、欧州特許第EP0849312 A1号に記述される手順に基づいた手順で精製した。
【0134】
1L丸底フラスコ中で、20.00gの消費者使用後由来リサイクルポリプロピレン混合カラーフレークを、400.04gのホワイトスピリット(Sigma−Aldrich,USA)と混合した。この混合物を、時々攪拌しながら、室温で22時間保持した。次にホワイトスピリットをポリマーからデカンテーションした。402.60gの新しいホワイトスピリットを、ポリマーの入ったフラスコに加えた。次にこの混合物を加熱し、140℃で90分間、還流下で保持した。結果として得られた高温の溶液を、70mm IDのブフナー漏斗で、グラスウールの層を濾過媒体として減圧濾過した。約300mLの濾液を集め、室温まで冷ました。結果として得られた灰色の沈殿を、シャークスキン濾紙を備えた70mm IDのブフナー漏斗での減圧濾過により分離した。この灰色の沈殿を、1L丸底フラスコの中で、2.01gのフラ−土(Sigma−Aldrich,USA)及び195.21gの新しいホワイトスピリットと合わせ、次に加熱して、140℃で30分間、還流下で保持した。結果として得られた高温溶液を、シャークスキン濾紙を備えた5.5cm IDのブフナー漏斗で減圧濾過した。この濾液を室温まで冷ました。結果として得られた薄灰色の沈殿を、シャークスキン濾紙を備えた5.5mm IDのブフナー漏斗での減圧濾過により分離した。この分離した沈殿を、25℃の減圧炉で約18時間乾燥させた。約4.82gの乾燥沈殿が分離された。次に、分離された沈殿を、セルロース抽出シンブルを備えたSoxhlet抽出装置を使用して、アセトンで30分間抽出した。この抽出した材料を、25℃の減圧炉で約19時間乾燥させた。3.4654gの材料が回収された。この試料を、本明細書に開示されている試験方法を用いて特徴付けを行った。その結果として得られたデータが表2にまとめられている。
【0135】
この実施例で分離された固体は、薄灰色〜オフホワイト色であった。これらの固体を型に圧縮して正方形の試験検体にしたとき、この検体は曇った薄い灰色の外観を有していた。この正方形の試験検体の写真を、図4に実施例8として示す。図4に示すように、この検体は改善されてはいるが、色は濃いままであり、バージンPPほどの透明さと透光性はなかった。L値は、この試料の色が、実施例1(すなわち、受け取ったままの消費者使用後由来ポリプロピレン)の試料に比べて改善されていることを示している。実施例8の試料のL値は63.15であり、これは、実施例1の試料のL値の平均39.76に比べて、改善されていた。しかしながら、実施例8の試料のL値は、欧州特許第EP0849312 A1号に記述されている方法が、本発明のいくつかの実施形態による試料ほど、明るく無色の試料を生成していないことを示している。実施例8の試料の不透明度は24.96%不透明であり、これは、実施例1の試料の不透明度の平均約100%不透明に比べて、改善されていた。この不透明度値は更に、実施例8の試料が、本発明のいくつかの実施形態ほど透光性でなかったことを示している。
【0136】
実施例8の試料の重金属について、重金属汚染の濃度は、実施例1の試料に比べて、改善されていた。例えば、実施例8の試料におけるナトリウムの濃度は5,120ppbであるが、実施例1の試料のナトリウム濃度は平均136,000ppbであった(約96%の低減)。アルミニウム、カルシウム、チタン、クロム、鉄、ニッケル、銅、亜鉛、カドミウム、及び鉛の濃度はすべて、実施例1の試料に比べて、実施例8の試料において、43%を超える減少であった。
【0137】
実施例8の試料の灰分値は、約0.3294重量%であり、これは、実施例1の試料の灰分値(平均約1.2117重量%)よりも低かった。
【0138】
実施例8の試料は、におい強度が5ポイント尺度(5が最も強い)で5であり、これは、実施例1の試料(におい強度3.75)のにおい強度に比べて、はるかに強かった。実施例3の試料は、「ガソリン」のようだと記述されるにおいを有していた。この試料の強いにおいは、使用した残留ホワイトスピリットによるものであった。
【0139】
実施例8の試料の平均ポリエチレン含有量値は約5.5重量%であり、これは、実施例1の試料の平均ポリエチレン含有量(約5.5.重量%)と同じであった。
【0140】
バージンポリプロピレン比較試料
すべての「バージンPP」比較試料として、Pro−fax 6331ポリプロピレン(LyondellBasell Industries Holdings,B.V.)が使用された。バージンPPは、本明細書に記述される方法に従って、正方形の試験検体に加工された。バージンPPから生成された検体のL値はそれぞれ、平均で85.13±0.18、−0.71±0.01、及び2.27±0.02であった。この正方形の試験検体は、7.56±0.21%不透明の平均不透明度を有した。バージンPPのペレットは、におい強度が5ポイント尺度(5が最も強い)で0.5であり、「プラスチック」のようだと記述されるにおいを有していた。
【0141】
相互参照されるか若しくは関連する任意の特許又は特許出願を含めた、本明細書で引用されるすべての文書は、明示的に除外又は別途限定されない限り、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。いかなる文献の引用も、それが本明細書において開示され請求されるいずれかの発明に関する先行技術であること、又はそれが単独でも若しくは他のいかなる参照とのいかなる組み合わせにおいても、この様な発明を教示、示唆、若しくは開示することを認めるものではない。更に、本文書における用語の任意の意味又は定義が、参照することによって組み込まれた文書内の同じ用語の意味又は定義と矛盾する場合、本文書におけるその用語に与えられた意味又は定義が適用されるものとする。
【0142】
本発明の特定の実施形態を例示及び説明してきたが、本発明の趣旨及び範囲から逸脱することなく他の様々な変更及び修正を行うことができる点は当業者には明白であろう。したがって、本特許の範囲内にある、その様な変更及び修正のすべてを添付の特許請求の範囲で扱うものとする。
図1
図2
図3
図4
図5