特許第6549265号(P6549265)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 橋本 昌尚の特許一覧

<>
  • 特許6549265-地盤改良装置 図000002
  • 特許6549265-地盤改良装置 図000003
  • 特許6549265-地盤改良装置 図000004
  • 特許6549265-地盤改良装置 図000005
  • 特許6549265-地盤改良装置 図000006
  • 特許6549265-地盤改良装置 図000007
  • 特許6549265-地盤改良装置 図000008
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6549265
(24)【登録日】2019年7月5日
(45)【発行日】2019年7月24日
(54)【発明の名称】地盤改良装置
(51)【国際特許分類】
   E02D 3/12 20060101AFI20190711BHJP
【FI】
   E02D3/12 102
【請求項の数】5
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2018-15065(P2018-15065)
(22)【出願日】2018年1月31日
【審査請求日】2018年11月30日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】507080514
【氏名又は名称】橋本 昌尚
(74)【代理人】
【識別番号】100097434
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 和久
(72)【発明者】
【氏名】橋本 昌尚
【審査官】 西田 光宏
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−095942(JP,A)
【文献】 特開2001−248147(JP,A)
【文献】 特開平08−120665(JP,A)
【文献】 特開平11−229369(JP,A)
【文献】 特開2009−270326(JP,A)
【文献】 特開2004−250864(JP,A)
【文献】 特開2013−147789(JP,A)
【文献】 特開2009−203711(JP,A)
【文献】 特開2008−150872(JP,A)
【文献】 特開平11−217820(JP,A)
【文献】 特許第3016341(JP,B2)
【文献】 米国特許第05006016(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02D 3/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転する掘削軸と、その先端部近傍に設けられた掘削翼と、該掘削翼の上方であって前記掘削軸に、該掘削軸の横方に突出する形で設けられた横軸体と、該横軸体に対しその横軸線回りに相対的な回転が自在にして外嵌されている横筒状体と、該横筒状体の外周面に該横軸体の横軸線回りに角度間隔をおき、基端部の軸部を介して固定された3以上の突出片と、前記掘削軸が回転するときに、前記突出片に間欠的に当たって該突出片と共に前記横筒状体を前記横軸体の横軸線回りに回転させる打撃部と、を備えてなる地盤改良装置であって、
前記横筒状体の外周面に、前記突出片の基端部をなす軸部を収容可能の凹部を備えて該軸部の外径より基端が大径をなす突出片取付け体が、該突出片取付け体の基端面が突き合せ状態とされて該基端面の外周縁において溶接されてなると共に、前記突出片の基端部をなす軸部が、該突出片取付け体の凹部内に収容され、該突出片が溶接によることなく該凹部に対して抜け止め構造で、着脱可能に取り付けられている地盤改良装置において、
前記突出片取付け体は、筒状又は環状をなし、前記凹部が、該筒状又は環状の内周面の内側であり、該筒状又は環状の外周面が、横断面で略正方形をなし、前記横筒状体の前記横軸体の横軸線回りの回転において、該突出片取付け体が該正方形の対角方向に回転するように溶接されていることを特徴とする地盤改良装置。
【請求項2】
前記横筒状体は多角形筒状をなし、前記突出片取付け体は、その基端面が平面をなして前記横筒状体の外周面をなす平面に突き合されて溶接されていることを特徴とする請求項1に記載の地盤改良装置。
【請求項3】
前記突出片の基端部には、その軸部における軸方向と交差する方向に軸貫通孔が設けられており、前記突出片取付け体の前記凹部の対向する内壁面のうち、該凹部に前記突出片の基端部をなす軸部が収容された時の前記軸貫通孔に一致する位置には、該凹部の壁を貫通する壁貫通孔が設けられており、
前記抜け止め構造が、前記突出片の基端部をなす軸部が前記凹部に収容されている状態で、前記壁貫通孔と前記軸貫通孔を貫通してボルトが通されるボルト締めによるものである請求項1又は2のいずれか1項に記載の地盤改良装置。
【請求項4】
前記突出片の基端部には、その軸部における軸方向と交差する方向に軸貫通孔が設けられており、前記突出片取付け体の前記凹部の対向する内壁面のうち、該凹部に前記突出片の基端部をなす軸部が収容された時の前記軸貫通孔に一致する位置には、該凹部の壁を貫通する壁貫通孔が設けられており、
前記抜け止め構造が、前記突出片の基端部をなす軸部が前記凹部に収容されている状態で、前記壁貫通孔と前記軸貫通孔を貫通する割ピンの挿入によるものである請求項1又は2のいずれか1項に記載の地盤改良装置。
【請求項5】
前記突出片の基端部をなす軸部の外周面にオネジが設けられ、前記凹部の内周面にメネジが設けられて、前記抜け止め構造が、該オネジの該メネジへのネジ締め構造とされている請求項1又は2のいずれか1項に記載の地盤改良装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地盤改良装置に関し、詳しくは、土木、建築の基礎工事などにおいて、軟弱な地盤を柱状等に掘削しながら石灰系やセメント系のスラリー状の固化剤(以下、単に固化剤ともいう)を吐出して、この固化剤と掘削土(土砂)とを混合、攪拌して固結させることにより、軟弱な地盤を柱状等に固結、成形して、高強度のものに改良するための地盤改良装置に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の地盤改良装置は、従来、回転する掘削軸の先端部近傍に設けられた掘削翼と、該掘削翼の上方に設けられた1又は複数の攪拌翼を有するものが基本である。このものでは、回転する掘削軸の先端を地盤中に押し込み、掘削翼で地盤を掘削すると共に、攪拌翼で掘削した土砂の攪拌を行いながら、上方の攪拌翼とで、掘削軸の先端近傍から吐出される固化剤と、掘削土とを混合、攪拌するというものである。このものでは、掘削土は、掘削軸の回りに、いわば水平方向(横回り)に混合、攪拌されるだけのため、混合、攪拌性に課題があることから、近時は、このような横回りの混合、攪拌に加え、掘削土を、掘削軸から横方に突出するよう設けられた横軸体の回りに、すなわち、縦回りにも混合攪拌することのできる地盤改良装置が提案されている(例えば、特許文献1、特許文献2参照)。
【0003】
特許文献1に記載の地盤改良装置は次のような構成を有している。すなわち、回転する掘削軸と、その先端部近傍に設けられた掘削翼と、該掘削翼の上方であって前記掘削軸に対しその軸線回りに相対的な回転が自在にして外嵌されている支持体(環体)と、該支持体に横方に突出する形で固定されている横軸体と、該横軸体に対しその横軸線回りに相対的な回転が自在にして外嵌されている横筒状体と、該横筒状体の外周面に、該横軸体の横軸線回りに角度間隔をおき、基端部の軸部を介して固定された3以上の突出片と、前記掘削軸が回転し、前記支持体及び前記横軸体が掘削軸回りに回転しないときに、前記突出片に間欠的に当たって該突出片と共に前記横筒状体を前記横軸体の横軸線回りに回転(縦回り)させる打撃部(回転用駆動部)と、を備えている。なお、この地盤改良装置では、横軸体は、前記掘削軸の軸線方向から見て、その先端部が前記掘削翼が回転して該掘削翼の先端が描く円周の外方に位置する長さを有し、横筒状体は、その円周の内方において、該横軸体の軸線(横軸線)回りに回転自在とされている。
【0004】
特許文献1に記載の地盤改良装置では、地面(地盤面)を掘削開始面として該掘削軸を回転させながらその先端(下端)を地盤中に押し込み、下降させ、掘削翼によって掘削がすすむと、横軸体の先端部が地表における掘削径(掘削翼が回転してその先端が描く円周)の周縁の外周(外側)に当たり、そして、横軸体が掘削土中に入り込んでいくと、横軸体は、その先端部が掘削されていない硬めの土によって拘束されるようになり、掘削軸の軸線回りに回転しないようになる。これにより、掘削翼によってその回転方向に回転する土砂(土塊)は、横軸体にて掘削軸の軸線回りの共回りが阻止されると共に、掘削軸の回りに横回りして混合、攪拌される上に、掘削軸と共に回転する例えば掘削軸に設けられた打撃部(回転用駆動部)が横軸体に設けられている筒状体(横筒状体)の突出片に間欠的に当たり、この突出片と筒状体(横筒状体)を横軸体の軸線の回りに回転させる。これにより、横筒状体に設けられた突出片(混合攪拌手段)によって掘削土は、その横軸体の軸線の回り(縦回り)にも混合、攪拌され、いわば三次元的に混合攪拌されるため、その後、固結する改良体は、固結強度も全体としてムラなく安定したものとなる。
【0005】
上記地盤改良装置においては、横軸体を、掘削翼が回転して該掘削翼の先端が描く円周の外方に位置する長さを有するものとして、その先端部が掘削されていない硬めの土によって拘束されることで、横軸体の掘削軸の軸線回りの回転の停止を確保するものとしているが、横軸体の回転を止める手段は、これに限られるものではない。例えば、横軸体をその先端が、掘削翼の先端が描く円周の内方に位置する長さを有するものとしても具体化できる。すなわち、横軸体が設けられている、掘削軸に外嵌されている環体を上方に延ばして筒状体(上下に延びる外管)とし、例えば、この筒状体をその上方において、掘削軸に回転を付与するためにその上端に連結されるモータが取り付けられる重機のマウント(オーガのヘッド)に固定して、この筒状体を回転させないようにしてもよい(特許文献2の図1図5参照)。また、横軸体を掘削軸と共に回転するものとする一方、打撃部(突設部)を掘削軸に対して相対回転が自在に設け、この打撃部を掘削軸の回転時に停止させ、掘削軸と共に回転するその横軸体に外嵌されている横筒状体に設けられた突出片(攪拌体)を、停止しているその打撃部(共回り防止翼)に当てることで、横軸体を掘削軸まわりに回転(横回り)させながら突出片を縦回りをさせることもできる(特許文献2の図6図8参照)。
【0006】
ところで、前記したような従来の三次元の混合攪拌が得られる地盤改良装置(特許文献2では掘削攪拌装置)において、突出片は、横軸体の軸線回り(横軸線回り)に回転するように設けられている鋼製の筒状体(横筒状体)の外周面において、横軸線方向から見て例えば等角度間隔(放射状配置)で外方に延びる形で設けられているが、この突出片の横筒状体の外周面に対する固定は、通常、その突出片も鋼製で、丸棒等の棒材であり、製造やメンテナンス等の容易さから、突出片の基端部である軸部の端面を横筒状体の外周面に突き合せ、その突き合せ面の外周縁(隅角)において、その外周縁に沿って溶接する溶接構造とされていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平8−120665号公報
【特許文献2】特開2001−3352号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
一方、上記したような三次元的な掘削土の混合攪拌を伴う地盤改良装置(掘削攪拌装置)においては、そのいずれにおいても、施工(混合攪拌)過程で、横筒状体に設けられている突出片に間欠的な打撃が与えられ、それが繰り返されることで、横筒状体とともに、この突出片が横軸体の横軸線の回りに断続的に回転して、その縦回りが得られる構造となっている。このため、その突出片の横筒状体の外周面への固定部(溶接箇所)には、その打撃の度に、大きな外力と共に大きなモーメントが作用することから、その溶接の破断が生じたり、その破断に起因して突出片が脱落してしまうということがあった。また、このように突出片を横筒状体の外周面に直接溶接していた固定構造では、突出片が、丸棒のように比較的細長いものとなるため、その回転のための打撃を受けることで曲げ変形を生じ易く、したがって、突出片の寿命が短くなりがちであった。
【0009】
このように、突出片における溶接の破断や、その未然防止のため、或いは、大きな曲げ変形の発生に対しては、その補修、交換のための溶接を伴う作業が余儀なくされる。しかし、このような作業が、特に、地盤改良の施工現場での作業となるような場合には、その補修、交換作業に多大の困難さがあり、工事遅延の原因ともなっていた。というのは、溶接機の施工現場への常設は容易でない等の事情があるためである。
【0010】
本発明は、三次元的な掘削土の混合攪拌を行うための構造を有する上記したような地盤改良装置におけるところの、突出片の横筒状体に対する溶接による取付構造に起因する前記課題に鑑みてなされたもので、その溶接の破断や、突出片の曲がり変形の発生の防止や、その交換作業の簡易迅速化を可能とする突出片の横筒状体に対する取付構造を提供することをその目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
請求項1に記載の本発明は、回転する掘削軸と、その先端部近傍に設けられた掘削翼と、該掘削翼の上方であって前記掘削軸に、該掘削軸の横方に突出する形で設けられた横軸体と、該横軸体に対しその横軸線回りに相対的な回転が自在にして外嵌されている横筒状体と、該横筒状体の外周面に該横軸体の横軸線回りに角度間隔をおき、基端部の軸部を介して固定された3以上の突出片と、前記掘削軸が回転するときに、前記突出片に間欠的に当たって該突出片と共に前記横筒状体を前記横軸体の横軸線回りに回転させる打撃部と、を備えてなる地盤改良装置であって、
前記横筒状体の外周面に、前記突出片の基端部をなす軸部を収容可能の凹部を備えて該軸部の外径より基端が大径をなす突出片取付け体が、該突出片取付け体の基端面が突き合せ状態とされて該基端面の外周縁において溶接されてなると共に、前記突出片の基端部をなす軸部が、該突出片取付け体の凹部内に収容され、該突出片が溶接によることなく該凹部に対して抜け止め構造で、着脱可能に取り付けられている地盤改良装置において、
前記突出片取付け体は、筒状又は環状をなし、前記凹部が、該筒状又は環状の内周面の内側であり、該筒状又は環状の外周面が、横断面で略正方形をなし、前記横筒状体の前記横軸体の横軸線回りの回転において、該突出片取付け体が該正方形の対角方向に回転するように溶接されていることを特徴とする。
【0012】
請求項2に記載の本発明は、前記横筒状体は多角形筒状をなし、前記突出片取付け体は、その基端面が平面をなして前記横筒状体の外周面をなす平面に突き合されて溶接されていることを特徴とする請求項1に記載の地盤改良装置である。
【0013】
請求項3に記載の本発明は、前記突出片の基端部には、その軸部における軸方向と交差する方向に軸貫通孔が設けられており、前記突出片取付け体の前記凹部の対向する内壁面のうち、該凹部に前記突出片の基端部をなす軸部が収容された時の前記軸貫通孔に一致する位置には、該凹部の壁を貫通する壁貫通孔が設けられており、
前記抜け止め構造が、前記突出片の基端部をなす軸部が前記凹部に収容されている状態で、前記壁貫通孔と前記軸貫通孔を貫通してボルトが通されるボルト締めによるものである請求項1又は2のいずれか1項に記載の地盤改良装置である。
【0014】
請求項4に記載の本発明は、前記突出片の基端部には、その軸部における軸方向と交差する方向に軸貫通孔が設けられており、前記突出片取付け体の前記凹部の対向する内壁面のうち、該凹部に前記突出片の基端部をなす軸部が収容された時の前記軸貫通孔に一致する位置には、該凹部の壁を貫通する壁貫通孔が設けられており、
前記抜け止め構造が、前記突出片の基端部をなす軸部が前記凹部に収容されている状態で、前記壁貫通孔と前記軸貫通孔を貫通する割ピンの挿入によるものである請求項1又は2のいずれか1項に記載の地盤改良装置である。
【0015】
請求項5に記載の本発明は、前記突出片の基端部をなす軸部の外周面にオネジが設けられ、前記凹部の内周面にメネジが設けられて、前記抜け止め構造が、該オネジの該メネジへのネジ締め構造とされている請求項1又は2のいずれか1項に記載の地盤改良装置である。
【0016】
【発明の効果】
【0017】
上記従来の地盤改良装置は、その使用過程で、突出片には、間欠的又は断続的に大きな打撃が加わるため、それ自体に曲りや摩耗といった変形や損傷に加え、それが横筒状体に直接溶接で固定されていることから、溶接破断やそれによる突出片の脱落が生じていたのは上記したとおりである。一方、本発明に係る地盤改良装置では、横筒状体に対する突出片の固定が上記構成の取り付け構造を有しているため、次のような特有の効果が得られる。
【0018】
本発明に係る地盤改良装置では、横筒状体に対する突出片の固定が、横筒状体の外周面に基端面を突き合せて溶接された突出片取付け体を介在させての固定であり、この突出片取付け体の横筒状体の外周面への溶接箇所であるその基端部は、その外径が、突出片の軸部の外径より大きい。したがって、従来の地盤改良装置のように、突出片の基端面を横筒状体の外周面に直接、突き合せて溶接していた固定構造に比べると、溶接長(溶接範囲)を長く確保できるから、溶接強度のアップを図ることができる。このため、その溶接の破断の防止に有効であり、その破断に起因する突出片の脱落防止に有効である。
【0019】
その上、本発明に係る地盤改良装置では、突出片は、横筒状体の外周面に溶接されている突出片取付け体内に、基端部をなす軸部が収容されている分、突出片自体の突出長を、突出片を横筒状体の外周面に直接、突き合せ溶接していた従来のそれに比べ、小さくできる。このため、突出片が、その回転(縦回り)のための打撃を受けても曲げ変形を生じ難い。したがって、突出片の寿命の延長が図られる。
【0020】
しかも、本発明に係る地盤改良装置では、突出片が変形して交換する必要があるとしても、突出片取付け体内に収容される突出片の固定は、溶接に因らないため、現場での交換の簡易迅速化、作業の効率化が図られる。その上、本発明に係る地盤改良装置においては、前記突出片取付け体は、筒状又は環状をなし、前記凹部が、該筒状又は環状の内周面の内側であり、該筒状又は環状の外周面が、横断面で略正方形をなし、前記横筒状体の前記横軸体の横軸線回りの回転において、該突出片取付け体が該正方形の対角方向に回転するように溶接されているから、次のような特有の効果が得られる。すなわち、このような溶接構造としてあるため、前記突出片取付け体が正方形のその対角方向に回転することになるから、その対辺方向に回転する場合に比べ、土砂の切れがよく、しかも、その縦回りにおける抵抗も小さく出来る。
【0021】
請求項2に記載のように、平面同士の突き合せによる溶接とすることで、溶接構造の単純化と共に、その強度アップが図られる。前記抜け止め構造は、請求項3に記載のようにボルト締めを用いたり、請求項4に記載のように割ピンを用いたり、請求項5に記載のようなネジ締めを用いたりして、着脱可能に取り付ければよい。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1「突出片取付け体」が相違する点において本発明の地盤改良装置とは相違する「参考例」としての地盤改良装置概略構成を示す正面図(立面図)。
図2図1の地盤改良装置おいて矢印A1方向から見た図(右側面図)であって、掘削軸回りの回転が止められている横筒状体の突出片に、掘削軸の回転により打撃部が当たり、突出片と共に横筒状体が横軸線回りに回転する状態の説明図。
図3図1のP1部分の拡大図。
図4図3のS1−S1線において突出片の取付状態を説明する一部破断面図。
図5図4のP2部分の拡大図。
図6図3において、突出片取付け体を正方形筒状のものに変更した、本発明の実施形態例を説明する図。
図7図4において、突出片の別の取付状態を説明する一部破断面図。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明に係る地盤改良装置(地盤改良用の掘削攪拌装置)の実施形態例について説明する前に、「突出片取付け体」が相違する点において本発明の地盤改良装置とは相違する「参考例」としての地盤改良装置について図1ないし図5を参照して詳細に説明する。図中、101は地盤改良装置であり、1は略円筒状(若しくは中空円柱状)をなす掘削軸(回転駆動軸)であって、上方に設けられる図示しない回転駆動手段によって回転する構成とされており、その下端部(掘削軸の先端部)近傍には地盤を掘削する所定の径(掘削径D)をもつ掘削翼2が、溶接によりその掘削軸1に対してほぼ直角方向で突出するように設けられている。なお、掘削軸1の下端部近傍には、スラリー状の固化剤の吐き出し口1aが設けられており、図示しない固化剤が圧送源から掘削軸1の内側を通って掘削土K中に吐出されるように構成されている。
【0024】
掘削軸1の外周には次記する横軸体7の支持体として筒状体(円管)5が外嵌、装着されて、二重管構造を呈している。筒状体5の下端部は、掘削翼2より所定高さ上方に位置するように保持されている。筒状体5の上端部は、筒状体5を掘削軸1の軸線回りに回転させないように、掘削軸を回転させる図示しない回転駆動手段(モータ)を固定しているマウントに固定されるか、別の回転駆動手段(モータ)に連結されて掘削軸1と同方向にそれと異なる回転数で、又は逆方向に適宜の回転数で掘削軸1の軸線G1回りに回転するように構成されている。
【0025】
一方、筒状体1の下端部寄り部位の両外側には、筒状体5に対して略直角で、横に略直線状に延びる断面円形の棒状をなす横軸体7が、図1の左右において、掘削翼2の外径と同じか、それより短めの突出長で突出するように設けられている。そして、この左右の横軸体7にはそれぞれ横軸(横軸線)G2回りに回転自在に筒状の横筒状体12、12が外嵌(遊嵌)されている。ただし、横筒状体12は、横軸体7の端部に設けられた大径の拡径部10にて、横軸体7から抜け出ない構造とされている。
【0026】
横筒状体12は、円管(外周面も円である円筒状のもの)でもよいが、本参考例(以下、「本例」又は「上記例」ともいう)では多角形筒状(内周面が横断面、円形で、外周面が横断面で正方形)をなしている(図2図4図5参照)。そして、その横筒状体12の外側(外周面)の掘削軸1寄り部位には、詳細は後述するが、横軸体7の横軸線G2方向から見て(横軸線回りに)略等角度間隔(90度間隔)で、詳細は後述するが、突出片13をなす丸棒が突出状に、放射状配置で設けられており(図2図4図5参照)、横筒状体12と共に横軸線G2回りに回転自在とされている。なお、掘削軸1のうち、横軸体7と掘削翼2との上下間には、突出片13を横軸線G2回りに回転させるため、丸棒状の打撃部(回転駆動手段)11が、掘削軸1に直角となるようにして固定されており、例えば、横軸体7の掘削軸1回りの回転が止められているとき、掘削軸1とともに回転するその打撃部11が、横筒状体12に設けられている突出片13に間欠的(断続的)に当たり、突出片13が横筒状体12と共に横軸線G2回りに間欠的に回転(縦回り)できるよう、突出片13と打撃部11との長さ、及び配置で設けられている。なお、地盤を掘削し、突出片13が縦回りすることで、掘削土を横軸線G2回りに混合攪拌するため、突出片13は攪拌体の役割をも担うのであるが、本例では、横筒状体12の外周面のうち、突出片13より外方(掘削軸と反対側)に、それとは別に、それより短めの丸棒からなる攪拌体15が、突出片13と同様の等角度間隔で、溶接により設けられており、掘削土の横軸線G2回りの混合攪拌性を高めている。なお、独立の打撃部11を設けることなく、掘削翼2の上縁部位2aが、突出片13、13に当たって、突出片13と共に横筒状体12を回転させるようにしてもよい。
【0027】
次に、横筒状体12の外周面への突出片13の取付構造について説明する(図4図5参照)。本例では、この横筒状体12の外周面(平面)に、突出片取付け体21が次のようにして溶接されている。すなわち、横筒状体12の外周面である平面に、突出片13の基端部(横筒状体12側の端部)をなす軸部を収容可能の内径で貫通する凹部22を有し、該軸部の外径より基端23が大径をなす短円筒形状を呈する突出片取付け体21が、該突出片取付け体21の基端面(平面)を突き合せ状態とし、基端面の外周縁(円)に沿って溶接ビード(図中のダブルハッチング参照)Bが存するように(図3図5参照)、すなわち、横筒状体12の外周面(平面)と、突出片取付け体21の外周面との隅角に沿って溶接ビードBが存するように溶接されている。そして、突出片13の基端部をなす軸部が、突出片取付け体21の凹部(短円筒)22内に収容され、突出片13は、次記するように溶接によることなくボルト締めで、この凹部22に、抜け止め構造で着脱可能に取り付けられている。なお、突出片取付け体21は、本例では貫通する筒状のものとしたが、有底の筒体としてもよい。
【0028】
突出片13の取付構造は、それが凹部22に対して抜け止め構造で着脱可能であればよいが、本例では、凹部(短円筒)22内に収容されている突出片13の基端部(軸部)において、その軸と直角方向にボルト31を通した抜け止め構造をなし、ボルト31の先端においてナット35を締め付けてなる着脱可能のものとしている。すなわち、本例では、突出片13の基端部には、その軸部における軸方向と交差する方向に軸貫通孔14が設けられており、突出片取付け体21の凹部22の対向する内壁面であって、凹部22に突出片13の基端部をなす軸部が収容された時において軸貫通孔14に一致する位置には、凹部22の壁を貫通する壁貫通孔25が設けられており、その収容状態で、壁貫通孔25と前記軸貫通孔14を貫通してボルト31が通され、そのボルト31の先端をナット35で締めるボルト締めによっている。
【0029】
このような本例では、外管である筒状体5を回転させることなく掘削軸1を回転させると、図2の左図及び右図に示したように、打撃部11が回転し、左右の横軸体7に外嵌されている横筒状体12に設けられている突出片(丸棒)13、13に、間欠的に当たり、突出片13は横軸線G2回りに横筒状体12と共に回転する(縦回転する)。なお、本例では、構造上、左右の横軸体7における突出片13はその軸線G2方向から見たとき、互いに反対側に回転する。
【0030】
このような本例の地盤改良装置101は、その構造に基づき、掘削軸1が回転しながら地盤中(土中)に入り込むと掘削翼2により掘削が始まり、土砂Kは掘削翼2にて掘削軸1の回りに混合攪拌され、地盤は掘削翼2の径とほぼ同径の掘削径Dでもって円柱状に掘削されていく。この際、筒状体5は停止しているか、逆転しているか、掘削軸1と同方向に異なる回転数で回転するように制御されるが、その掘削工程では、上記したように、掘削軸1に設けられた打撃部11が横筒状体12に設けられた突出片13、13に間欠的に当たって、突出片13および攪拌片15を横軸体7の軸線G2回りに回転させ、その状態の下で掘削がすすむことから、掘削土(土砂)Kは三次元的に混合攪拌される。
【0031】
一方、この混合攪拌過程で、打撃部11による打撃を受ける突出片13は、横筒状体12の外周面に基端面を突き合せて溶接された突出片取付け体21を介し、その凹部22内に基端部を挿入させることによる取付構造を有している。そして、この突出片取付け体21のうちの、横筒状体12の外周面への溶接箇所である基端23は、その外径が、突出片13の軸部の外径より大きい。すなわち、従来の地盤改良装置のように、突出片の基端面を横筒状体の外周面に直接、突き合せて溶接していた固定構造に比べると、溶接長(ビードの軸部回りの周長)を長く確保できるから、溶接強度のアップを図ることができる。このため、突出片取付け体21の横筒状体12への溶接箇所の破断の防止に有効であり、その破断に起因する突出片13の脱落防止に有効である。とくに、本例では、突出片取付け体21の横筒状体12の外周面への溶接を、互いの平面同士による突き合せでの溶接としているため、溶接構造の単純化も図られる。ただし、図示はしないが、横筒状体12は、その横断面(外周)が、本例におけるような正方形ではなく、円形をなす円管(円筒)状のものとしてもよいなど、その形状は適宜のものとすることができる。なお、突出片取付け体は、その端面の外周縁の全体が、横筒状体12の外周面に突き合せ状となる構造で溶接するのがよい。
【0032】
また、本例では、突出片13は、横筒状体12の外周面に溶接されている突出片取付け体21内に、基端部をなす軸部が収容されている分、突出片13自体の突出長を、従来のように突出片を横筒状体の外周面に直接、突き合せ溶接していたものに比べ、小さくできる。このため、突出片13が、その回転(縦回り)のための打撃を受けても曲げ変形を生じ難く、したがって、突出片13の寿命の延長が図られる。しかも、その突出片13が変形して交換する必要があるとしても、突出片取付け体21内に収容される突出片の固定は、溶接によらないボルト締め構造のため、現場での交換の簡易迅速化、作業の効率化が図られる。
【0033】
なお、突出片取付け体21は、前記した参考例におけるような円筒状のものとは異なり、横断面(外周)が正方形のもので、図6に示した突出片取付け体21のように、突出片13の縦回り(横筒状体12の回転)において、突出片取付け体21がその正方形の対角方向に回転するように、これを横筒状体12の外周面へ溶接するのがよい。というのは、このような溶接構造とすると、突出片取付け体21が正方形のその対角方向に回転することになるから、その対辺方向に回転する場合に比べ、土砂の切れがよく、しかも、その縦回りにおける抵抗も小さく出来るためである。図1図5に基いて説明した上記参考例の地盤改良装置において、その突出片取付け体を、図6に示した突出片取付け体21としたものが、本発明に係る地盤改良装置の実施形態例である。
【0034】
前記例では、突出片13の凹部22に対する抜け止め構造を、上記したボルト締め構造としたが、これは、ボルトに代えて、自身の抜け止め防止が確保できるピン(例えば、割ピン)を通し、その両脚端を抜け止め状に折り返すよう曲げることにしてもよい。抜け止め構造は、突出片の凹部からの抜け止めが得られ、かつ、着脱可能であればよいためである。また、別例としては、図7に示したように、突出片13の基端部をなす軸部の外周面にオネジ17を設ける一方、凹部22の内周面にメネジ27を設けてネジ穴とし、オネジ17をメネジ(ネジ穴)27にねじ込んで、ネジ締めするものとしてもよい。
【0035】
なお、本発明は、上記例の地盤改良装置への適用に限られるものではなく、回転する掘削軸と、その先端部近傍に設けられた掘削翼と、該掘削翼の上方であって前記掘削軸に、該掘削軸の横方に突出する形で設けられた横軸体と、該横軸体に対しその横軸線回りに相対的な回転が自在にして外嵌されている横筒状体と、該横筒状体の外周面に該横軸体の横軸線回りに角度間隔をおき、基端部の軸部を介して固定される3以上の突出片と、前記掘削軸が回転するときに、前記突出片に間欠的に当たって該突出片と共に前記横筒状体を前記横軸体の横軸線回りに回転させる打撃部と、を備えてなる地盤改良装置に広く適用できる。
【0036】
すなわち、上記例の地盤改良装置101では、掘削軸1に対し相対回転する横軸体7を、掘削軸に外嵌されている筒状の筒状体(外管)5の回転を止めるか、その回転を制御するものにおいて具体化したが、例えば、筒状体(外管)5を上まで延ばさず短いものとして、掘削軸の所定高さ位置でその軸まわりに自在に回転するものとし、これに設けられる横軸体の突出長を掘削翼の外径より大きくしておき、掘削過程で、その横軸体の先端を掘削翼で掘削される地盤の外側に入り込ませるようにして、その横軸体の掘削軸回りの回転を規制するものとしてもよい。また、掘削軸の回転において、打撃部でなく、横軸体も掘削軸と一体となって回転する一方、打撃部が回転することなく停止して、横軸体と共に回転する突出片がこの打撃部に当たって横軸体の横軸線回りに回転するものとしてもよい。すなわち、この場合には、横軸体を掘削軸と共に回転するように設け、打撃部を上記例における横軸体のように掘削軸まわりに自在に回転可能に設け、掘削軸の回転において、打撃部を、上記したような構成にすることで、掘削軸回りの回転を止めるか、その回転を制御することとすればよい。
【0037】
すなわち、本発明は、掘削軸回りの回転が停止、又は制御されるよう横軸体にその横軸線回りに回転可能に外嵌されている横筒状体に設けられている突出片に、掘削軸と共に回転する打撃部が当たるか、掘削軸と共に回転する横軸体にその横軸線回りに回転可能に外嵌されている横筒状体に設けられている突出片に、掘削軸回りの回転が停止、又は制御される設けられている打撃部が当たることで、横軸体に外嵌されている横筒状体の突出片を縦回転させる構成を有する従来公知の地盤改良装置におけるその突出片の横筒状体への取付構造として、広く適用できる。
【符号の説明】
【0038】
1 掘削軸
2 掘削翼
2a 掘削翼の上縁
5 筒状体(支持体)
7 横軸体
11 打撃部
12 横筒状体
13 攪拌体
14 軸貫通孔
15 攪拌片
17 オネジ
21 突出片取付け体
22 凹部
23 突出片取付け体の基端
25 壁貫通孔
27 メネジ
31 ボルト
101 地盤改良装置
G1 掘削軸の軸線
G2 横軸体の横軸線
B 溶接のビード
K 掘削土(土砂)
【要約】
【課題】地盤改良装置で、掘削軸に設けられた横軸体に回転自在に外嵌された横筒状体に設けられ、掘削土の三次元攪拌の縦回転をするよう設けられる突出片の破断や、その突出片の曲がり変形の発生の防止や、その交換作業の簡易迅速化を可能とする突出片の取付構造を提供する。
【解決手段】横筒状体12の外周面に、突出片13の基端部をなす軸部を収容可能の凹部22を備えて該軸部の外径より基端23が大径をなす突出片取付け体21を、該突出片取付け体21の基端面が突き合せ状態として該基端面の外周縁に沿い溶接しておく。突出片13を、その基端部のなす軸部が、該突出片取付け体21の凹部22内に収容されるものとし、かつ、該突出片13が溶接によることなく、例えば、ボルト締め等により該凹部22からの抜け止め構造で、着脱可能に取り付ける構造とした。
【選択図】図4
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7