特許第6549267号(P6549267)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6549267
(24)【登録日】2019年7月5日
(45)【発行日】2019年7月24日
(54)【発明の名称】化粧料塗布具
(51)【国際特許分類】
   A45D 34/04 20060101AFI20190711BHJP
   A46B 3/18 20060101ALI20190711BHJP
   B65D 51/32 20060101ALI20190711BHJP
   B65D 83/00 20060101ALI20190711BHJP
【FI】
   A45D34/04 510C
   A46B3/18
   A45D34/04 515B
   B65D51/32 100
   B65D83/00 J
【請求項の数】8
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2018-37022(P2018-37022)
(22)【出願日】2018年3月2日
(62)【分割の表示】特願2013-250370(P2013-250370)の分割
【原出願日】2013年12月3日
(65)【公開番号】特開2018-134422(P2018-134422A)
(43)【公開日】2018年8月30日
【審査請求日】2018年3月30日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000918
【氏名又は名称】花王株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002170
【氏名又は名称】特許業務法人翔和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】宇野 倫子
(72)【発明者】
【氏名】上原 一之
【審査官】 青木 正博
(56)【参考文献】
【文献】 特開2000−033548(JP,A)
【文献】 特開2002−172019(JP,A)
【文献】 特開2005−087635(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2010/0192320(US,A1)
【文献】 特開2010−110369(JP,A)
【文献】 国際公開第2011/142029(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A45D 34/04
A46B 3/18
B65D 51/32
B65D 83/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
把持部と塗布部とを備える化粧料塗布具であって、
前記塗布部は、把持部から延びる軸部、該軸部から放射状に延びるブラシ毛によるブラシ部、及び該軸部における把持部とは反対側の先端に植毛部とを備えており、
前記ブラシ部は、2本の金属製ワイヤの間に前記ブラシ毛を差し込んだ状態で螺旋状に巻き付けられて形成されており、
前記植毛部は、前記ブラシ部を構成する前記金属製ワイヤに連なる金属製の先端ワイヤからなる先端ワイヤ部と、該先端ワイヤ部の表面に前記ブラシ毛よりも細かい繊維を備えた構成になっており、
前記先端ワイヤ部は、前記先端ワイヤを複数回捲回してなる捲回部を有しており、
前記先端ワイヤ部は、前記先端ワイヤの一捲回によって画定されるループ面が前記ブラシ部の延びる方向と略直交するように、該先端ワイヤが捲回されて形成されている前記捲回部を有しているか、又は前記先端ワイヤの一捲回によって画定されるループ面が前記ブラシ部の延びる方向と略平行になるように、該先端ワイヤが捲回されて形成されている前記捲回部を有している化粧料塗布具。
【請求項2】
前記植毛部の外形が、略塊状である請求項1に記載の化粧料塗布具。
【請求項3】
前記植毛部の前記繊維は、その存在密度が、前記ブラシ部の前記ブラシ毛の存在密度よりも高い請求項1又は2に記載の化粧料塗布具。
【請求項4】
前記ブラシ部の前記ブラシ毛の先端を繋いだ該ブラシ部の外形と、前記植毛部の外形との間に空隙部を有する請求項1〜のいずれか1項に記載の化粧料塗布具。
【請求項5】
前記塗布部は前記軸部における前記ブラシ部から前記植毛部までの全領域が湾曲した形状である請求項1〜のいずれか1項に記載の化粧料塗布具。
【請求項6】
前記塗布部が最も湾曲する状態を側面視して、前記植毛部の前記軸部を通る最大径と、前記ブラシ部の前記ブラシ毛の先端を繋いだ該ブラシ部の外形による湾曲した形状の仮想三次元の立体円柱構造における最大径との割合(前記植毛部の最大径/前記ブラシ部最大径)が0.5以上、1.5以下である請求項1〜のいずれか1項に記載の化粧料塗布具。
【請求項7】
前記塗布部が最も湾曲する状態を側面視して、前記植毛部の前記軸部を通る最大径と、前記ブラシ部の前記ブラシ毛の先端を繋いだ該ブラシ部の外形による湾曲した形状の仮想三次元の立体円柱構造における前記把持部とは反対側の先端径との割合(前記植毛部の最大径/前記ブラシ部先端径)が0.5以上、3以下である請求項1〜のいずれか1項に記載の化粧料塗布具。
【請求項8】
請求項1〜のいずれか1項に記載の化粧料塗布具と、化粧料を収容するための容器とを備える化粧料塗布装置であって、前記化粧料塗布具は、前記容器の口部から該容器内に出入自在になっており、前記容器には、その口部又はその近傍に、しごき孔を有する可撓性のしごき弁が設けられている化粧料塗布装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化粧料を睫毛や眉毛に塗布するために用いられる化粧料塗布具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、1本の金属製ワイヤを折り曲げ二つ折りしてなる一対のワイヤの間にブラシ毛を差し込み、この状態で捩ることによりブラシ毛が放射状に植え込まれてなるブラシ部を有する液塗布具が検討されている。例えば、特許文献1には、ブラシ毛の外表面に、縦方向に延長する塗布液保持溝を形成した多量塗布ブラシ部と、先端に塗布液保持溝をもたない少量塗布ブラシ部とを有する液塗布具が記載されている。同文献には、この液塗布具を用いることで、1回の塗布操作で十分に濃い塗布液を塗布でき、かつ細部についても塗布液を塗布することができると記載されている。
【0003】
また特許文献2には、瞼のカーブに沿わせるために円弧状に形成したマスカラブラシにおいて、円弧を平面視で半径13mm〜25mmに設定したことが記載されている。同文献には、このマスカラブラシによれば、手間をかけないで睫毛にマスカラを簡単に塗布できると記載されている。
【0004】
更に、特許文献3には、ブラシ毛を芯部材に放射状に取り付けたブラシ部を軸部とするマスカラ塗布具において、芯部材を弧状にし、更にブラシ部の先端にブラシ毛より細い繊維パイルで植毛したことが記載されている。同文献には、このマスカラ塗布具によれば、目立つ睫毛の中央部のマスカラ処理を効率よく行い、カールアップも容易であると記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−283145号公報
【特許文献2】特開2001−286340号公報
【特許文献3】特開2005−87635号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1及び2に記載されたマスカラ塗布具を、マスカラ塗布液を収容した容器から引き抜き、容器の開口部又は口部付近において、余分なマスカラを取り除く上下に動かすしごき操作を行った場合、しごいた後のマスカラ塗布具の把持部に近いブラシ部への液の付着が良好でなく、液の濃い部分と薄い部分が見られ、マスカラ塗布液がむらになりやすい。また、ブラシ部の先端においても、余分なマスカラ塗布液を取り除くために上下に動かすしごき操作を行っても、先端に大きな液ダマが塊状に付きやすい。これはしごき操作時のブラシ部への液の行きわたりが不十分であることが原因と考えられる。
【0007】
このようにマスカラ塗布液がむらになって付着したマスカラ塗布具を用いて、睫毛に液を塗布すると、先端に多量の液が付いた状態なので、睫毛にむらに付着し、更に毛束をつくる原因となる。本発明者らは、睫毛の目頭、目尻、下睫毛部分は塗布液を塗りにくい部位であり、しかも、目頭は睫毛が短く、一度に多量の塗布液が付着すると、睫毛に毛束ができ、美的外観を損なうという課題を見出した。更に、生じた毛束を修正しようとしても、先端に多量の液が付いているので、部分修正も容易にできず、非常に使い勝手を損なう。
【0008】
特許文献3に記載されたマスカラ塗布具においても、睫毛の目頭から目尻まで一度に液を塗布すると、睫毛の目頭、目尻部分に液がむらに付着しやすい。この理由は、ブラシの先端の芯部材がブラシ部の針金と異なる材料であることに起因している。その結果、ブラシは追随性に劣り、ブラシの先端が睫毛に届かないので、液の塗りむらが発生し、中央部にしか液を塗ることができず、美観を損なう。
【0009】
以上のように特許文献3に記載のマスカラ塗布具では、目頭側から目尻側にわたる睫毛の大部分にマスカラ用の化粧料を一度で塗布することが難しかった。また、特許文献3には、睫毛にマスカラ用の化粧料を一度で塗布するための、ブラシ部と植毛ブラシ部との配置関係に関して、何ら記載されていない。
【0010】
したがって本発明は、前述した従来技術が有する欠点を解消し得る化粧料塗布具に関する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、把持部と塗布部とを備える化粧料塗布具であって、
前記塗布部は、把持部から延びる軸部、該軸部から放射状に延びるブラシ毛によるブラシ部、及び該軸部における把持部とは反対側の先端に植毛部とを備えており、
前記ブラシ部は、2本の金属製ワイヤの間に前記ブラシ毛を差し込んだ状態で螺旋状に巻き付けられて形成されており、
前記植毛部は、前記ブラシ部を構成する前記金属製ワイヤに連なる金属製の先端ワイヤからなる先端ワイヤ部と、該先端ワイヤ部の表面に前記ブラシ毛よりも細かい繊維を備えた構成になっており、
前記先端ワイヤ部は、前記先端ワイヤを複数回捲回してなる捲回部を有している化粧料塗布具を提供するものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、例えばマスカラ用の化粧料の塗布具として用いると、容器から引き抜いた際に、塗布具のブラシ部全体に均一に化粧料が付着し、更にブラシ部の先端に化粧料が塊状に付き難く、例えば短い睫毛の多い目頭側の睫毛、目尻側の睫毛、下睫毛にも、適量のマスカラ用の化粧料を塗ることができる。その結果、睫毛にダマや毛束の発生が抑制され、また塗り残しが防止される。更に、ブラシ部を構成するワイヤが植毛部に連なっているため、塗布時においてブラシ部と植毛部との追随性に優れる。しかもワイヤが先端で捲回しているので、植毛部の表面に凹凸ができ、植毛を密に付着させることができ、化粧料の保持性に優れるので、睫毛にむらなく塗ることができる。その上、ワイヤは加工が容易であるので、目的に応じて自由な形状に形成することができ、長期間にわたって連用しても、植毛部の形が崩れることがなく、いつまでも新品と同じ外観及び質感で使用することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1は、本発明の1実施形態である化粧料塗布具を備えた化粧料塗布装置の一部破断正面図である。
図2図2は、図1に示す化粧料塗布具の斜視図である。
図3図3は、図2に示す化粧料塗布具における、ブラシ部が最も湾曲する状態から見た側面図である。
図4図4は、植毛部を構成する先端ワイヤ部及びその要部を拡大して示す一部破断斜視図である。
図5図5は、植毛部を構成する先端ワイヤ部及びその要部の別の実施形態を拡大して示す一部破断斜視図(図4相当図)である。
図6図6は、植毛部の形状が異なる他の化粧料塗布具における、ブラシ部が最も湾曲する状態から見た側面図である(図3相当図)。
図7図7は、植毛部の形状が更に異なる他の化粧料塗布具における、ブラシ部が最も湾曲する状態から見た側面図である(図3相当図)。
図8図8は、図3に示す植毛部の形状を説明するための図である。
図9図9は、図7に示す植毛部の形状を説明するための図である。
図10図10は、図3に示すブラシ部と植毛部との境界の空隙部を説明するための図である。
図11図11(a)及び図11(b)は、図1に示す化粧料塗布具の使用状態の例を示す説明図である。
図12図12は、本発明の化粧料塗布具の別の実施形態を示す斜視図(図2相当図)である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明を、その好ましい実施形態に基づき図面を参照しながら説明する。
以下の説明においては、図1図3に示すように、後述する化粧料塗布具1の軸部12の把持部11側の軸の延びる軸方向をY方向、軸方向(Y方向)に直交する周に向かう方向(径方向)をX方向として説明する。また、図1図3に示すように、軸方向(Y方向)については、後述する化粧料塗布具1の把持部11側を上側として説明し、後述する植毛部14側を下側として説明する。
【0015】
図1には、本発明の化粧料塗布具1を備えた化粧料塗布装置100の一実施形態の正面図が、一部破断した状態で示されている。化粧料塗布装置100は、化粧料3を塗布するための化粧料塗布具1(以下、単に「塗布具1」とも言う。)と、化粧料3を収容するための容器2とを備えている。以下、塗布具1及び容器2についてそれぞれ説明する。
【0016】
まず、容器2について説明する。容器2は、その内部に化粧料3を収容できる有底の形状であれば任意の形状でよく、本実施形態では、図1に示すように、有底の軸方向(Y方向)に細長い円筒形状に形成されている。容器2は、その内部に化粧料3を収容できるようになっている。容器2は、その底部と対向して口部23を有する。口部23は軸方向(Y方向)上方に向けて開口している。口部23の外周面にはネジ部22が設けられている。このネジ部22は、後述する塗布具1の把持部11の内周面に設けられたネジ部(図示せず)と螺合可能になっている。
【0017】
容器2には、その口部23又は口部23の近傍に、しごき孔211を有する可撓性のしごき弁21が設けられている。具体的には、図1に示すように、容器2における口部23は、その近傍にしごき弁21を有している。しごき弁21は、容器2の口部23から底部に向けて縮径した漏斗状の形状を含んでおり、その軸方向(Y方向)下端の位置にしごき孔211を有している。しごき孔211は、後述する塗布具1における連結部121、ブラシ部13及び植毛部14の通過が自在になっている。しごき孔211は、容器2の横断面視において、しごき弁21の径方向(X方向)略中央部に形成されている。また、しごき孔211は円孔となっている。この円孔の周りには、スリットが放射状に1つ又は2つ以上入ってもよい。しかし、しごき孔211の形状はこれに限られない。しごき孔211は、塗布具1の下端側に位置するブラシ部13及び植毛部14を容器2内に挿入し、また容器2内から抜き出すことが可能な大きさを有している。しごき弁21は、塗布具1の連結部121、ブラシ部13及び植毛部14に付着した過剰量の化粧料3を適度にしごき取るために用いられる。この目的のために、しごき弁21はゴムや樹脂等の弾性変形可能な材料から構成されている。なお図1においては、しごき弁21は、口部23の近傍、即ち口部23から若干離れた軸方向(Y方向)下方寄りに位置しているが、これに代えて、口部23の位置に、しごき弁21を配置してもよい。容器本体3の口部23の近傍部分には、口部23から若干離れた箇所から口部23までの部分が含まれる。
【0018】
塗布具1は、図1に示すように、上述した構成の容器2の口部23から容器2内に出入自在になっている。塗布具1は、把持部11と塗布部10とを備えている。塗布部10は、把持部11から延びる軸部12、軸部12から放射状に延びるブラシ毛によるブラシ部13、及び軸部12における把持部11とは反対側の先端に位置する植毛部14を備えている。把持部11とブラシ部13との間には、細長い柱状の連結部121が介在している。このように、塗布具1は、把持部11に固定された連結部121の先端にブラシ部13及び植毛部14を有している。把持部11は、使用時に指で把持する部分であり、本実施形態においては、容器2の口部23を覆う蓋体の役割も担う部分である。把持部11は、一直線状に軸方向(Y方向)に平行に延びる棒状の連結部121の上端部と連結している。そして、連結部121の軸方向(Y方向)下端部に、ブラシ部13及び植毛部14が設けられている。以下、ブラシ部13及び植毛部14について詳述する。図2は、図1の塗布具1の側面図であり、図3は、図2の塗布具1の要部拡大側面図である。
【0019】
ブラシ部13は、図2及び図3に示すように、湾曲した形状を有し、2本の金属製ワイヤ131の間にブラシ毛132を差し込んだ状態で螺旋状に巻き付け、該ブラシ毛132が放射状に植え込まれて形成されている。具体的には、1本の金属製ワイヤ131を折り返して2本とした後、これら2本の金属製ワイヤ131の間にブラシ毛132を差し込む。その後、ブラシ毛132を差し込んだ2本の金属製ワイヤ131を螺旋状に捩ることによって、軸方向(Y方向)に細長い芯体133が形成されるとともに、ひねりの間にブラシ毛132が保持され、細長い芯体133の全長に沿って放射状にブラシ毛132が規則的に植え込まれる。このようにしてブラシ部13が形成される。なお本実施形態においては、1本の金属製ワイヤ131を折り返して2本としたが、独立した2本の金属製ワイヤ131を用いてもよい。このように形成されたブラシ部13の芯体133の軸方向(Y方向)上端側を、連結部121の軸方向(Y方向)下端に差し込んで連結している。ブラシ部13の芯体133と連結部121との連結部の固定は、芯体133を連結部121に埋め込んで連結することで行われる。
【0020】
ブラシ部13の芯体133を形成する金属製ワイヤ131としては、ステンレス製等の針金を用いることができる。ステンレス製の針金は、その直径が0.1mm以上2mm以下であることが好ましく、0.4mm以上1mm以下であることがより好ましい。
【0021】
ブラシ毛132の材質としては、ナイロン、テトロン、ポリプロピレン、ポリエステル等の合成樹脂からなる合成樹脂繊維、レーヨン等の半合成繊維、あるいは動物の毛などの天然繊維を用いることができる。また、ブラシ毛132としては、中実繊維毛でも中空繊維毛であってもよい。また、ブラシ毛132は、その断面が円形、楕円形、多角形等の形状であってもよい。ブラシ毛132に使用する際には、材質、形状及び断面が同じ1種類の毛を単独で、又は、材質、形状及び断面の少なくとも1つが異なる種類の毛をブレンドして用いることができる。ブラシ毛132の材質、形状及び断面は、塗布対象部位、あるいは使用する化粧料3の種類に応じて、適切なものが選択される。なかでもナイロン等の合成樹脂からなる合成樹脂繊維が好ましい。
【0022】
ブラシ毛132は、芯体133を形成する金属製ワイヤ131の一巻き毎に、3本以上85本以下植え込まれていることが好ましく、5本以上60本以下植え込まれていることがより好ましい。
ブラシ毛132は、その太さが、30μm以上250μm以下であることが好ましく、50μm以上200μm以下であることが更に好ましい。
また、ブラシ毛132の長さは、1mm以上15mm以下であることが好ましく、2mm以上8mm以下であることがより好ましい。ブラシ毛132の長さの測定は、金属製ワイヤ131に巻き付けたときのブラシ毛132の先端から末端までの長さを示している。
なお本実施形態においては、ブラシ毛132の芯体133表面からの長さが一定であるが、長さが異なっていてもよい。ブラシ毛132の長さが異なる例としては、例えば、芯体133における軸方向(Y方向)の上端側から後端側に向かって、ブラシ毛132の芯体133表面からの長さが漸次短くなっていたり、漸次長くなっていたりする形態や、芯体133における軸方向(Y方向)の上側から下側に向かって、ブラシ毛132の芯体133表面からの長さが漸次長くなり、続いて漸次短くなるような形態、あるいは不規則的にブラシ毛132の芯体133表面からの長さが異なる形態等が挙げられる。
【0023】
塗布部10は、軸部12におけるブラシ部13から植毛部14までの全領域が湾曲した形状で形成されている。具体的には、ブラシ部13から植毛部14までの全領域の外面が前記芯体133に沿って湾曲し、ブラシ毛132の先端を繋いだブラシの外形が、円筒状になっている。そのブラシ部13が最も湾曲する状態を側面視して、ブラシ部13のブラシ部の最大径が、ブラシ部の中央領域で最大となる凸面形状(中央が膨出した円柱形状)でも、ブラシ部の中央領域で最小となる凹面形状(両端が膨出した円柱形状)でも、平坦な形状(全体が概ね同径の湾曲した円柱形状)、先端に向けて径が小さくなる先細円柱形状が挙げられるが、ブラシ部13が最も湾曲する状態を側面視して、ブラシ部13のブラシ部の最大径が、ブラシ部13の中央領域で最大となる形状が好ましい。
ブラシ部13が最も湾曲する状態を側面視して、ブラシ部13のブラシ部の最大径は、1mm以上15mm以下であることが好ましく、2mm以上8mm以下であることがより好ましい。
ブラシ部13の最も湾曲する状態を側面視して、把持部とは反対側の先端径は、1mm以上15mm以下であることが好ましく、2mm以上8mm以下であることがより好ましく、2mm以上6mm以下が更に好ましい。
ブラシ部13の把持部とは反対側の先端径は、ブラシ部13の円筒の最大径との差が、9mm以下が好ましく、7mm以下がより好ましく、2mm以下が更に好ましい。ブラシ部13の把持部とは反対側の先端径は、ブラシ部13の円筒の最大径と同等の長さでもよい。
【0024】
以上のように構成されたブラシ部13は、図2及び図3に示すように、湾曲した形成を有する。即ち、ブラシ部13は、全長にわたって湾曲している。ブラシ部13は、例えば目の瞼のカーブに沿わせる観点から、湾曲した形状が円弧状であることが好ましく、その曲率半径が、10mm以上300mm以下であることがより好ましく、13mm以上200mm以下であることが更に好ましく、30mm以上100mm以下であることがより更に好ましい。
【0025】
ブラシ部13の軸方向(Y方向)下端(先端)に設けられる植毛部14は、図4に示すとおり、ブラシ部13を構成する金属製ワイヤ131に連なる金属製の先端ワイヤ161からなる先端ワイヤ部16を有している。先端ワイヤ部16の表面には、図2に示すとおり、静電植毛によって複数本の繊維141が固定されている。また先端ワイヤ部16は、図4に示すとおり、先端ワイヤ161をコイル状に複数回捲回してなる捲回部162を有している。捲回部162は中空構造になっていてもよい。
【0026】
図4に示すとおり、先端ワイヤ161は、ブラシ部13を構成する金属製ワイヤ131が、該ブラシ部13の先端から延出した延出部分からなる。したがって、先端ワイヤ161は金属製ワイヤ131と同一の1本又は2本以上のワイヤから構成されている。この1本のワイヤを二つ折りし、折り返された部位を含むように先端ワイヤ161をコイル状に捲回することで、前記の先端ワイヤ部16が形成されている。このように、ブラシ部を構成するワイヤが植毛部に連なっていることで、塗布時のブラシ部と植毛部の追随性に優れ、しかも、ワイヤが先端で捲回しているので、植毛を密に付着させることができ、化粧料の保持性に優れるので、睫毛にむらなく塗ることができる。しかもワイヤは加工が容易であるので、目的に応じて自由な形状を創作することができ、長期間にわたり連用しても、植毛部の形が崩れにくく、いつまでも新品と同じ外観及び質感で使用することが可能である。
【0027】
図4に示すとおり、先端ワイヤ部16は、先端ワイヤ161の一捲回によって画定されるループ面が、ブラシ部13の延びる方向と略直交するように、該先端ワイヤ161が捲回されて形成された捲回部162を有している。そして先端ワイヤ部16は、その捲回部162を構成する先端ワイヤ161が、隣り合う該先端ワイヤ161との間に隙間が生じないように捲回されて形成されている。先端ワイヤ部16がこのような構造になっていることで、先端ワイヤ部16に、繊維141を密に静電植毛することができる。それによって植毛部14によって奏される有利な効果を一層顕著なものとすることができる。略直交とは、前記ループ面とブラシ部13の延びる方向とが90度±10度の範囲で交差していることを言う。
【0028】
図5には、先端ワイヤ部16の別の実施形態が示されている。同図に示す先端ワイヤ部16は、先端ワイヤ161の一捲回によって画定されるループ面の方向が図4に示す実施形態と異なっている。具体的には、図5に示す先端ワイヤ部16は、先端ワイヤ161の一捲回によって画定されるループ面がブラシ部13の延びる方向と略平行になるように、該先端ワイヤ161が捲回されて形成された捲回部162を有している。略平行とは、前記ループ面とブラシ部13の延びる方向とが完全に平行な場合及び、±10度の範囲で交差していることを言う。
【0029】
図4及び図5に示す先端ワイヤ部16に静電植毛を行って植毛部14を形成するには、該先端ワイヤ部16に接着剤を塗布した後に、公知の方法で繊維141を静電植毛すればよい。
【0030】
植毛部14を構成する繊維141の材質としては、ナイロン、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリブチレンテレフタレート等の合成樹脂からなる合成樹脂繊維、レーヨン等の半合成繊維、あるいは動物の毛などの天然繊維を用いることができる。繊維141の材質は、塗布対象部位、あるいは使用する化粧料3の種類に応じて、適切なものが選択される。なかでもナイロン等の合成樹脂繊維及びレーヨン等の半合成繊維が好ましい。
【0031】
植毛部14の繊維141は、化粧料3を適量含ませたり、睫毛の目頭、目尻、下睫毛におけるダマや毛束の発生を抑制したり、均一に塗布したりする観点から、その存在密度(即ち単位面積当たりの存在本数)が、ブラシ部13のブラシ毛132の存在密度よりも高いことが好ましく、ブラシ部13のブラシ毛132の存在密度の1倍超20000倍以下であることが好ましく、ブラシ部13のブラシ毛132の存在密度の2倍以上2000倍以下であることが更に好ましい。具体的には、植毛部14の繊維141の存在密度は、好ましくは1本/mm2以上10000本/mm2以下、より好ましくは30本/mm2以上5000本/mm2以下である。また、ブラシ部13のブラシ毛132の存在密度は、好ましくは0.1本/mm2以上100本/mm2以下、より好ましくは1本/mm2以上30本/mm2以下、更に好ましくは3本/mm2以上25本/mm2以下が好ましい。
【0032】
ブラシ部13のブラシ毛132の存在密度は、針金部の単位面積あたりのブラシ毛の本数のようにして測定することができる。一方、植毛部14の繊維141の存在密度は、単位面積あたりの植毛繊維の本数のようにして測定することができる。
【0033】
また、植毛部14の繊維141は、その太さが、1μm以上29μm以下であることが好ましく、7μm以上24μm以下であることがより好ましい。
また、植毛部14の繊維141は、先端ワイヤ部16の先端ワイヤ161の表面からの長さが、0.1mm以上7mm以下であることが好ましく、0.3mm以上5mm以下であることがより好ましい。0.5mm以上4mm以下であることが更に好ましい。なお本実施形態においては、繊維141の植毛用基部の表面からの長さが一定であるが、長さが異なっていてもよい。
植毛部の繊維は、前記繊維長さになるよう静電植毛して製造してもよいが、長めの繊維を静電植毛した後、トリミングを施して繊維の長さを調整し、製造してもよい。
【0034】
以上のように構成された化粧料塗布具1は、図3に示すように、ブラシ部13が最も湾曲する状態を側面視して、内側部分に位置する放射状のブラシ毛132の先端どうしを繋いで形成される内側仮想曲線IL1の延長線上に沿って、先端に植毛部14の軸部12を通る最大径の外形(外周縁)が配置されている。このことにより、化粧料3を収容した容器2から化粧料塗布具1を引き抜き、余分な化粧料3を取り除く上下に動かすしごき操作を行った場合に、把持部11に近いブラシ部13から植毛部14まで適量を貯留させることができる。更に睫毛に塗布した際に睫毛の目頭から目尻まで一度に均一に塗ることができ、睫毛に化粧料3のダマや毛束の発生を抑制することができる。なお延長線上に沿ってとは、植毛部14の最大径の外形(外周縁)が、延長線上の外側1mmから内側1mmの範囲内にある程度を言う。
【0035】
また、ブラシ毛132の先端どうしを繋いで形成される内側仮想曲線IL1を描く際、本実施形態のように、ブラシ毛132の芯体133表面からの長さが一定である場合、あるいは、芯体133における軸方向(Y方向)の上端側から下端側に向かって、ブラシ毛132の芯体133表面からの長さが漸次短くなっていたり、漸次長くなっていたりする形態の場合は、実際のブラシ毛132の先端どうしを繋ぐことにより内側仮想曲線IL1を描くことができる。ブラシ毛132の芯体133表面からの長さが不規則的に異なる形態の場合は、ランダムに20本のブラシ毛132を抽出し、それから平均長さを求め、求められた平均長さのブラシ毛132を基準に、仮想のブラシ毛132の先端どうしを繋ぐことにより内側仮想曲線IL1を描くことができる。
【0036】
前記塗布部10が最も湾曲する状態を側面視して、植毛部14の軸部12を通る最大径と、ブラシ部13のブラシ毛132の先端を繋いだブラシの外形による湾曲した形状(円柱形状)の仮想三次元の立体円柱構造における、把持部11とは反対側の先端径との割合(植毛部14の最大径/ブラシ部13の先端径)は、0.5以上3以下が好ましく、0.6以上1.4以下がより好ましく、0.7以上1.2以下が更に好ましく、0.8以上1.1以下がより更に好ましい。このことにより、化粧料3を収容した容器2から化粧料塗布具1を引き抜き、余分な化粧料3を取り除く上下に動かすしごき操作を行った場合に、把持部11に近いブラシ部13から植毛部14まで、適量の化粧料3を概ね均一に貯留させることができ、更に化粧料3を睫毛に塗布した際に睫毛の目頭から目尻まで一度に均一に塗ることができ、睫毛に化粧料3のダマや毛束の発生を抑制し、塗り残しを防止することができる。
【0037】
前記塗布部10が最も湾曲する状態を側面視して、植毛部14の軸部12を通る最大径と、ブラシ部13のブラシ毛132の先端を繋いだブラシの外形による湾曲した形状(円柱形状)の仮想三次元の立体円柱構造における最大径との割合(植毛部14の最大径/ブラシ部13の最大径)が、0.5以上1.5以下が好ましく、0.5以上1.3以下がより好ましく、0.6以上1.2以下が更に好ましく、0.8以上1.1以下がより更に好ましい。このことにより、化粧料3を収容した容器2から化粧料塗布具1を引き抜き、余分な化粧料3を取り除く上下に動かすしごき操作を行った場合に、把持部11に近いブラシ部13から植毛部14まで、適量の化粧料3を概ね均一に留保させることができ、更に化粧料3を睫毛に塗布した際に睫毛の目頭から目尻まで一度に均一に塗ることができ、睫毛に化粧料3のダマや毛束の発生を抑制し、塗り残しを防止することができる。
【0038】
植毛部14の形状としては、内側仮想曲線IL1の延長線上に沿って、軸方向(Y方向)下側(先端)に配置されている形状が挙げられる。例えば、図3に示すような軸方向(Y方向)下方寄りに最大幅を有する卵形状や雫形状、図6に示すような軸方向(Y方向)中心に最大幅を有する球形状、図7に示すような軸方向(Y方向)上方寄りに最大幅を有する逆卵形状や逆雫形状の他、多角形状であってもよく、デザイン柄形状等であってもよい。
なお図3に示す雫形状の植毛部14及び図7に示す逆雫形状の植毛部14は、形状が軸方向(Y方向)に細長くなっているため、内側仮想曲線IL1の延長線に線で接しており、化粧料塗布具1のブラシ部13から植毛部14までが、睫毛の目尻から目頭まで、ぴったりとフィットした状態で一度に塗布できる。更に、図3に示す雫形状の場合、下睫毛への塗布が容易になる。また、図7に示す逆雫形状の場合、植毛部が細くなっているので、塗布時に視界を遮らず、塗りにくい目頭・目尻部分にもきめ細かく塗布することができる。
【0039】
具体的に、図3に示す軸方向(Y方向)下方寄りに最大幅を有する卵形状(雫形状)について、図8を用いて詳述する。「軸方向(Y方向)下方寄りに最大幅を有する卵形状(雫形状)」とは、図8に示すように、植毛部14の複数本の繊維141それぞれの先端どうしを結んだ軸方向(Y方向)に長い球形状と、該長い球形状における最も長い部位を通って該長い球形状を囲む仮想真球状ISとを描いた際に、該仮想真球状ISの重心の位置の方が該長い球形状の重心の位置よりも把持部11側にある球形状のことを意味する。また、図7に示す軸方向(Y方向)上方寄りに最大幅を有する逆卵形状(逆雫形状)について、図9を用いて詳述する。「軸方向(Y方向)上方寄りに最大幅を有する逆卵形状(逆雫形状)」とは、図9に示すように、植毛部14の複数本の繊維141それぞれの先端どうしを結んだ軸方向(Y方向)に長い球形状と、該長い球形状における最も長い部位を通って該長い球形状を囲む仮想真球状ISとを描いた際に、該長い球形状の重心の位置の方が該仮想真球状ISの重心の位置よりも把持部11側にある球形状のことを意味する。なお図6に示す軸方向(Y方向)中心に最大幅を有する球形状とは、該球形状の重心の位置と仮想真球状ISの重心の位置とが一致する球形状のことを意味する。
【0040】
植毛部14の形状は、先に述べた先端ワイヤ部の形状に応じて任意にコントロールすることができる。具体的には、先端ワイヤをコイル状に複数回捲回して捲回部を形成するときに、1回毎のループの形状やループの大きさを調整することで、所望の立体形状を有する先端ワイヤ部を形成することができる。ループの形状に関しては、例えば、円形、楕円形、長円形、雫形、三角形、四角形などが挙げられる。これらの形状の大小様々なループを組み合わせることで、上述した各図に示す形状の植毛部14のもととなる捲回部を形成することができる。
更に、植毛部14の形状は、塊状であることが好ましく、回転体や非回転体であってもよい。非回転体としては、三角錐、四角錐、六面体、八面体等の多面体、特定の形を持たない不定形が挙げられる。なかでも、睫毛の目尻から目頭まで、ぴったりとフィットした状態で一度に塗布の点から回転体形状であることが好ましい。ここで言う回転体形状は、線対称な仮想平面形状の線対称面中心線を仮想軸とし、仮想軸を中心に回転させて得られる形状である。線対称な仮想平面としては、円形、楕円、釣鐘形状、雫形、角がR形状の三角形、四角形やトラック形状等が挙げられ、回転体は、曲面で構成されていることが好ましい。
【0041】
先端ワイヤ部に捲回部を形成するには、公知の方法を適宜に採用すればよい。そのような方法としては、例えば、コンピューター数値制御を搭載した、ワイヤ曲げ加工機やワイヤフォーミングマシンなど、線材を三次元的に加工できる機械を用いることが挙げられる。
【0042】
図3に示すように、ブラシ部13が最も湾曲する状態を側面視して、植毛部14の全幅(n)に対する植毛部14の全長(m)の割合(m/n)は、化粧料3を収容した容器2から化粧料塗布具1を引き抜き、余分な化粧料3を取り除く上下に動かすしごき操作を行った場合に、把持部11に近いブラシ部13から植毛部14まで適量の化粧料3を貯留させることができる。更に睫毛への塗布しやすさの観点から、0.5以上10以下であることが好ましく、1以上3.5以下であることがより好ましい。具体的には、植毛部14の最大径(全幅)(n)は、1mm以上15mm以下が好ましく、2mm以上8mm以下がより好ましく、2mm以上6mm以下が更に好ましい。また、植毛部14の全長(m)は、好ましくは1mm以上15mm以下、更に好ましくは2mm以上10mm以下である。なお植毛部14の最大径(全幅)(n)は、本実施形態においては、周方向に一定であるが、一定でなくてもよい。具体的には、ブラシ部13が最も湾曲する状態を側面視した際の植毛部14の最大径(全幅)と、例えば、ブラシ部13が軸方向(Y方向)に平行に一直線状に延びる状態を側面視した際の植毛部14の最大径(全幅)とが異なっていてもよい。
【0043】
また、図3に示すように、ブラシ部13が最も湾曲する状態を側面視して、植毛部14の全長(m)に対するブラシ部13の全長(p)の割合(p/m)は、化粧料の塗りやすさの観点から、1以上10以下であることが好ましく、2以上7以下であることが更に好ましい。具体的には、ブラシ部13の全長(p)は、好ましくは3mm以上35mm以下、更に好ましくは15mm以上30mm以下である。ここで、ブラシ部13の全長(p)は、軸方向(Y方向)の上下端の最短距離ではなく、実際の細長い曲線状の芯体133の長さを意味する。
【0044】
更にまた、図3に示すように、ブラシ部13が最も湾曲する状態を側面視して、植毛部14の全長(m)とブラシ部13の全長(p)との合計値(p+m)は、睫毛に化粧料3を一度に塗布できる観点から、5mm以上40mm以下であることが好ましく、20mm以上35mm以下であることがより好ましい。
【0045】
本実施形態の化粧料塗布具1は、図2及び図3に示すように、ブラシ部13のブラシ毛132の先端を繋いだブラシの外形と、植毛部14の外形との間に空隙部15を有する。即ち、化粧料塗布具1は、ブラシ部13と植毛部14との境界に、ブラシ部13の軸心方向に切り欠かれた空隙部15を有している。具体的には、空隙部15は、ブラシ部13の軸方向(Y方向)の最下端のブラシ毛132と、植毛部14の軸方向(Y方向)の上端側の植毛用基部の表面からブラシ部13側に向かって立設する複数の繊維141の先端との間に、ブラシ部13の芯体133方向に全周方向にわたって切り欠かれた状態で形成されている(図10参照)。空隙部15は、化粧料3を収容した容器2から化粧料塗布具1を引き抜き、余分な化粧料3を取り除く上下に動かすしごき操作を行った場合に、植毛部14の液ダマの発生を抑制すべく、適量の化粧料3を貯留させる観点から、その体積が、植毛部14の体積の0.1%以上100%以下であることが好ましく、植毛部14の体積の1%以上80%以下であることがより好ましく、植毛部14の体積の2%以上50%以下が更に好ましい。具体的には空隙部15の体積は、0.1mm3以上1500mm3以下が好ましく、0.5mm3以上600mm3以下がより好ましく、1mm3以上50mm3以下が更に好ましい。
ここで、植毛部14の体積は、図10に示すように、植毛部14の最も広い外周縁でできる仮想立体形状から得られる値である。また、空隙部15の体積は、図10に示すように、ブラシ部13の軸方向(Y方向)の最下側のブラシ毛132の先端と、植毛部14の最も広い幅に位置する部分とを結んだ線を、ブラシ部13の軸心を中心に全周にわたらせることにより想定される仮想3次元の立体円柱構造の部分から得られる値である。
【0046】
また、化粧料塗布具1は、図3に示すように、ブラシ部13が最も湾曲する状態を側面視して、外側部分に位置する放射状のブラシ毛132の先端どうしを繋いで形成される外側仮想曲線IL2の延長線上に沿って、植毛部14の軸部12を通る最大径の外形(外周縁)が配置されている。このことにより、目頭側から目尻側までにわたる睫毛の大部分にマスカラを塗布できる。なお延長線上に沿ってとは、植毛部14の最外径の外形(外周)が、延長線上の外側1mmから内側1mmの範囲内にある程度を言う。
【0047】
上述した本発明の実施形態の化粧料塗布具1を備える化粧料塗布装置100を使用した際の作用効果について説明する。
図1に示すように、以上の構成を有する化粧料塗布具1が、化粧料塗布装置100を構成する容器2内から引き抜かれると、しごき弁21のしごき孔211により、化粧料塗布具1の軸部12、ブラシ部13及び植毛部14に付着した過剰の化粧料3がしごき落とされる。その際、化粧料塗布具1の塗布部10は、軸部12におけるブラシ部13から植毛部14までの全領域が湾曲した形状に形成されており、化粧料塗布具1には、ブラシ部13の軸方向(Y方向)の下端(先端)に植毛部14を有し、内側仮想曲線IL1の延長線上に沿って植毛部14が配置されているので、ブラシ部13の軸方向(Y方向)の下端(先端)に化粧料3が塊状に付き難く、適量の化粧料3がブラシ部13及び植毛部14に保持されるようになる。特に、本実施形態の化粧料塗布具1は、図2及び図3に示すように、ブラシ部13と植毛部14との境界に空隙部15を有しているので、しごき弁21のしごき孔211によって過剰の化粧料3がしごき落とされる際に、余分な化粧料3を保持でき、化粧料塗布具1を上下に動かすしごき操作を行うことで、適量の化粧料3がブラシ部13及び植毛部14に保持されるようになる。
【0048】
図11(a)及び図11(b)には、本実施形態の化粧料塗布具1の使用状態の例が示されている。図11(a)及び図11(b)は、塗布対象部位として、睫毛にマスカラ用の化粧料3を塗布する状態を示している。上述したように、化粧料塗布具1は、化粧料塗布装置100を構成する容器2内から引き抜かれると、ブラシ部13及び植毛部14に適量の化粧料3が保持されるようになる。そのため、化粧料塗布具1の使用者は、適量の化粧料3が保持された植毛部14を用いて、図11(a)に示すように、睫毛の中央部だけでなく、短い睫毛の多い目頭側の睫毛にも、適量のマスカラ用の化粧料3を塗ることができる。また、適量の化粧料3が保持された植毛部14を用いて、図11(b)に示すように、目尻側の睫毛にも、適量のマスカラ用の化粧料3を塗ることができる。
【0049】
また、本実施形態の化粧料塗布具1は、図3に示すように、塗布部10が前記軸部12におけるブラシ部13から植毛部14までの全領域が湾曲した形状になっている。そのため、化粧料塗布具1の使用者は、図11(a)に示すように、カーブしている瞼の目頭側から目尻側にわたる複数本の睫毛の大部分の根元に、ブラシ部13及び植毛部14を隙間なく密着させ、当てることができるので、睫毛にむらなく、一度に均一に塗布できる。更に、睫毛にマスカラのダマや毛束の発生を抑制し、美観に優れた仕上りが得られる。また、植毛部14が使用者の鼻に当たり難く、視界も遮り難く、操作性が向上する。更に、使用を止め、容器2に化粧料塗布具1を収納する場合においても、ブラシ部から植毛部までの全領域が湾曲した形状になっているので、容器2の口部23に塗布部10が引っ掛かりにくく、把持部11を持つだけで、やり直すことなく、スムーズに収納することができる。
【0050】
また、化粧料塗布具1の使用者は、図11(a)に示す状態から、化粧料塗布具1を睫毛に沿って睫毛の先端側に移動させることにより、瞼の目頭側から目尻側にわたる複数本の睫毛の大部分にマスカラ用の化粧料3を一度で塗布することができる。特に、本実施形態の化粧料塗布具1は、図2及び図3に示すように、ブラシ部13と植毛部14との境界に空隙部15を有している。ここで、空隙部15における、ブラシ部13の軸方向(Y方向)の最下端のブラシ毛132の延出方向と、植毛部14の軸方向(Y方向)の上端側の植毛用基部の表面からブラシ部13側に向かって立設する繊維141の延出方向とは、異なっている。そのため、化粧料塗布具1を睫毛に沿って睫毛の先端側に移動させる際に、睫毛が引っ掛かりやすく、すくい上げやすくなっており、操作性が向上する。
【0051】
図12には、本発明の化粧料塗布具の別の実施形態が示されている。同図に示す形態の化粧料塗布具1は、これまでに説明してきた化粧料塗布具と異なり、ブラシ部13が、湾曲した形状ではなく、連結部121の延びる方向と同方向に直線状に延びている。これ以外の点については、これまで説明してきた実施形態と同様の構成になっている。
【0052】
本発明の化粧料塗布具は、上述した本実施形態の化粧料塗布具1に何ら制限されるものではなく、適宜変更可能である。
例えば、上述した化粧料塗布具1は、化粧料3としてマスカラ用の化粧料を用いた、図11(a)及び図11(b)に示すようなマスカラ用の化粧料塗布具であったが、化粧料3としてアイブロー用の化粧料を用い、塗布対象部位を眉毛としたアイブロー用の化粧料塗布具であってもよい。更に、化粧料3として睫毛・眉毛用の美容液を用い、塗布対象部位を睫毛・眉毛とした睫毛・眉毛用の化粧料塗布具であってもよい。
【0053】
また、本実施形態の化粧料塗布具1は、図2及び図3に示すように、ブラシ部13と植毛部14との境界に、ブラシ部13の軸心方向に切り欠かれた空隙部15を有しているが、空隙部15を有していなくてもよい。
【0054】
更に、本実施形態においては、先端ワイヤ部16を構成する先端ワイヤ161が、ブラシ部13を構成する金属製ワイヤ131と一体になって両者が連なっていたが、これに代えて、先端ワイヤ部16を構成する先端ワイヤ161、及びブラシ部13を構成する金属製ワイヤ131として別体のものを用い、両ワイヤを所定の結合手段によって結合させることで、両者を連ねるようにしてもよい。こうすることで、金属製ワイヤ131よりも細い先端ワイヤ161を用いることができ、該先端ワイヤ161から構成される先端ワイヤ部16の形状や大きさの設計に一層の自由度が増す。
【0055】
上述した実施形態に関し、更に以下の化粧料塗布具を開示する。
<1>
把持部と塗布部とを備える化粧料塗布具であって、
前記塗布部は、把持部から延びる軸部、該軸部から放射状に延びるブラシ毛によるブラシ部、及び該軸部における把持部とは反対側の先端に植毛部とを備えており、
前記ブラシ部は、2本の金属製ワイヤの間に前記ブラシ毛を差し込んだ状態で螺旋状に巻き付けられて形成されており、
前記植毛部は、前記ブラシ部を構成する前記金属製ワイヤに連なる金属製の先端ワイヤからなる先端ワイヤ部と、該先端ワイヤ部の表面に前記ブラシ毛よりも細かい繊維を備えた構成になっており、
前記先端ワイヤ部は、前記先端ワイヤを複数回捲回してなる捲回部を有している化粧料塗布具。
【0056】
<2>
前記植毛部の外形が、略塊状である前記<1>に記載の化粧料塗布具。
<3>
前記先端ワイヤ部は、前記先端ワイヤの一捲回によって画定されるループ面が前記ブラシ部の延びる方向と略直交するように、該先端ワイヤが捲回されて形成されている捲回部を有している前記<2>に記載の化粧料塗布具。
<4>
前記先端ワイヤ部は、前記先端ワイヤの一捲回によって画定されるループ面が前記ブラシ部の延びる方向と略平行になるように、該先端ワイヤが捲回されて形成されている捲回部を有している前記<2>に記載の化粧料塗布具。
<5>
前記植毛部の前記繊維は、その存在密度が、前記ブラシ部の前記ブラシ毛の存在密度よりも高い前記<1>〜<4>のいずれか1に記載の化粧料塗布具。
<6>
前記ブラシ部の前記ブラシ毛の先端を繋いだ該ブラシ部の外形と、前記植毛部の外形との間に空隙部を有する前記<1>〜<5>のいずれか1に記載の化粧料塗布具。
【0057】
<7>
前記塗布部は前記軸部における前記ブラシ部から前記植毛部までの全領域が湾曲した形状である前記<1>〜<6>のいずれか1に記載の化粧料塗布具。
<8>
前記塗布部が最も湾曲する状態を側面視して、前記植毛部の前記軸部を通る最大径と、前記ブラシ部の前記ブラシ毛の先端を繋いだ該ブラシ部の外形による湾曲した形状の仮想三次元の立体円柱構造における最大径との割合(前記植毛部の最大径/前記ブラシ部最大径)が0.5以上、1.5以下である前記<1>〜<7>のいずれか1に記載の化粧料塗布具。
<9>
前記塗布部が最も湾曲する状態を側面視して、前記植毛部の前記軸部を通る最大径と、前記ブラシ部の前記ブラシ毛の先端を繋いだ該ブラシ部の外形による湾曲した形状の仮想三次元の立体円柱構造における前記把持部とは反対側の先端径との割合(前記植毛部の最大径/前記ブラシ部先端径)が0.5以上、3以下である前記<1>〜<8>のいずれか1に記載の化粧料塗布具。
<10>
前記<1>〜<9>のいずれか1に記載の化粧料塗布具と、化粧料を収容するための容器とを備える化粧料塗布装置であって、前記化粧料塗布具は、前記容器の口部から該容器内に出入自在になっており、前記容器には、その口部又はその近傍に、しごき孔を有する可撓性のしごき弁が設けられている化粧料塗布装置。
【符号の説明】
【0058】
1 化粧料塗布具
10 塗布部
11 把持部
12 軸部
121 連結部
13 ブラシ部
131 金属製ワイヤ
132 ブラシ毛
133 芯体
14 植毛部
141 繊維
15 空隙部
16 先端ワイヤ部
161 先端ワイヤ
162 捲回部
2 容器
21 しごき弁
211 しごき孔
22 ネジ部
23 口部
3 化粧料
100 化粧料塗布装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12