特許第6549295号(P6549295)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

6549295診療支援装置、診療支援方法及び診療支援プログラム
<>
  • 6549295-診療支援装置、診療支援方法及び診療支援プログラム 図000002
  • 6549295-診療支援装置、診療支援方法及び診療支援プログラム 図000003
  • 6549295-診療支援装置、診療支援方法及び診療支援プログラム 図000004
  • 6549295-診療支援装置、診療支援方法及び診療支援プログラム 図000005
  • 6549295-診療支援装置、診療支援方法及び診療支援プログラム 図000006
  • 6549295-診療支援装置、診療支援方法及び診療支援プログラム 図000007
  • 6549295-診療支援装置、診療支援方法及び診療支援プログラム 図000008
  • 6549295-診療支援装置、診療支援方法及び診療支援プログラム 図000009
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6549295
(24)【登録日】2019年7月5日
(45)【発行日】2019年7月24日
(54)【発明の名称】診療支援装置、診療支援方法及び診療支援プログラム
(51)【国際特許分類】
   G16H 10/20 20180101AFI20190711BHJP
   G16H 80/00 20180101ALI20190711BHJP
   G06F 16/33 20190101ALI20190711BHJP
   G06F 16/903 20190101ALI20190711BHJP
【FI】
   G16H10/20
   G16H80/00
   G06F16/33
   G06F16/903
【請求項の数】7
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2018-154128(P2018-154128)
(22)【出願日】2018年8月20日
【審査請求日】2018年9月12日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】517019991
【氏名又は名称】株式会社プレシジョン
(74)【代理人】
【識別番号】100166006
【弁理士】
【氏名又は名称】泉 通博
(74)【代理人】
【識別番号】100154070
【弁理士】
【氏名又は名称】久恒 京範
(74)【代理人】
【識別番号】100153280
【弁理士】
【氏名又は名称】寺川 賢祐
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 寿彦
【審査官】 梅岡 信幸
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−362370(JP,A)
【文献】 特開2013−073253(JP,A)
【文献】 特開2018−092285(JP,A)
【文献】 特開2017−111755(JP,A)
【文献】 特開2017−111756(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G16H 10/00−80/00
G06F 16/00−16/958
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
問診票に記入された患者の回答を医学用語に変換する際に使用される、回答内容と医学用語とが関連付けられた第1情報と、前記第1情報を使用して複数の前記回答を変換することにより得られた複数の変換後医学用語を結合する際に使用されるテンプレートである第2情報とを記憶している記憶部と、
前記問診票を読み取ることによって得られた画像と、前記問診票を表示している端末から受信した情報との少なくとも一方に基づいて、前記回答を取得する取得部と、
前記第1情報を用いて、前記取得部が取得した複数の前記回答を前記複数の変換後医学用語に変換した後、前記第2情報を用いて前記複数の変換後医学用語を結合することによって1つの結合後医学用語を生成する生成部と、
前記生成部が生成した前記結合後医学用語を表示部に表示させる表示制御部と、
を有する診療支援装置。
【請求項2】
前記生成部は、複数の前記回答が示す時間情報に基づいて、前記複数の変換後医学用語の結合の優先順位又は順序を決定し、前記第2情報を用いて前記優先順位又は順序で前記複数の変換後医学用語を結合する、請求項1に記載の診療支援装置。
【請求項3】
前記生成部は、複数の前記回答が示す時間情報に基づいて、前記複数の変換後医学用語を結合するか否かを決定し、前記複数の変換後医学用語を結合すると決定した場合に前記第2情報を用いて前記複数の変換後医学用語を結合し、前記複数の変換後医学用語を結合しないと決定した場合に前記複数の変換後医学用語を結合しない、請求項1又は2に記載の診療支援装置。
【請求項4】
前記表示制御部は、前記生成部が生成した前記結合後医学用語に関連付けられたテンプレートに基づいて、前記生成部が生成した前記結合後医学用語を配置して前記表示部に表示させる、請求項1からのいずれか一項に記載の診療支援装置。
【請求項5】
前記記憶部は、診療内容と、検査名及び確認事項の少なくとも一方とを関連付けてさらに記憶しており、
前記表示部を有する端末から、前記患者に対する前記診療内容の入力を受け付ける受付部と、
前記記憶部において前記受付部が受け付けた前記診療内容に関連付けられている前記検査名及び確認事項の少なくとも一方を示す情報を出力する出力部と、をさらに有する、請求項1からのいずれか一項に記載の診療支援装置。
【請求項6】
プロセッサが、
問診票を読み取ることによって得られた画像と、前記問診票を表示している端末から受信した情報との少なくとも一方に基づいて、前記問診票に記入された患者の回答を取得するステップと、
前記問診票に記入された前記回答を医学用語に変換する際に使用される、回答内容と医学用語とが関連付けられた第1情報と、前記第1情報を使用して複数の前記回答を変換することにより得られた複数の変換後医学用語を結合する際に使用されるテンプレートである第2情報とを記憶している記憶部から、前記第1情報及び前記第2情報を取得するステップと、
前記第1情報を用いて、前記回答を取得するステップが取得した複数の前記回答を前記複数の変換後医学用語に変換するステップと、
前記第2情報を用いて前記複数の変換後医学用語を結合することによって1つの結合後医学用語を生成するステップと、
前記結合後医学用語を表示部に表示させるステップと、
を実行する診療支援方法。
【請求項7】
コンピュータに、
問診票を読み取ることによって得られた画像と、前記問診票を表示している端末から受信した情報との少なくとも一方に基づいて、前記問診票に記入された患者の回答を取得するステップと、
前記問診票に記入された前記回答を医学用語に変換する際に使用される、回答内容と医学用語とが関連付けられた第1情報と、前記第1情報を使用して複数の前記回答を変換することにより得られた複数の変換後医学用語を結合する際に使用されるテンプレートである第2情報とを記憶している記憶部から、前記第1情報及び前記第2情報を取得するステップと、
前記第1情報を用いて、前記回答を取得するステップが取得した複数の前記回答を前記複数の変換後医学用語に変換するステップと、
前記第2情報を用いて前記複数の変換後医学用語を結合することによって1つの結合後医学用語を生成するステップと、
前記結合後医学用語を表示部に表示させるステップと、
を実行させる診療支援プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、患者の診療を支援する診療支援装置、診療支援方法及び診療支援プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
画面に文字や記号を入力させたり、スキャナを用いて紙を読み込んだりすることによって、人間が記入した内容を示す画像データや入力シグナルを取得するシステムが知られている(例えば、特許文献1参照)。このようなシステムは、画面や紙に記入された内容を、記憶装置に記憶したり、表示装置へ表示したりすることによって、その後の処理を円滑にすることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2012−9000号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、患者(受診者)が病院で診療を受ける際には、紙の問診票(質問票ともいう)又は画面上に表示された問診票に自身の症状等の回答を記入する。患者が用いる言葉と医者や看護師等の医療従事者が用いる医学用語との間には乖離があることが多い。そのため、紙又は画面上の問診票に記入された患者の回答を取得したとしても、医療従事者には、患者の回答を医学的に理解するための負担が掛かる。
【0005】
本発明は上述の点に鑑みてなされたものであり、医療従事者が問診票に記入された患者の回答を医学的に理解するための負担を軽減できる診療支援装置、診療支援方法及び診療支援プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の態様の診療支援装置は、問診票に記入された患者の回答を医学用語に変換するための規則を記憶している記憶部と、前記問診票を読み取ることによって得られた画像と、前記問診票を表示している端末から受信した情報との少なくとも一方に基づいて、前記回答を取得する取得部と、前記規則に従って前記取得部が取得した複数の前記回答を組み合わせて前記医学用語に変換することによって1つの前記医学用語を生成する生成部と、前記生成部が生成した前記医学用語を表示部に表示させる表示制御部と、を有する。
【0007】
前記生成部は、前記取得部が取得した複数の前記回答それぞれを前記医学用語に変換すること、及び変換によって得られた複数の前記医学用語を結合することによって、1つの前記医学用語を生成してもよい。
【0008】
前記生成部は、複数の前記回答が示す時間情報に基づいて、複数の前記医学用語の結合の有無、優先順位又は順序を決定してもよい。
【0009】
前記生成部は、複数の前記回答が示す時間情報に基づいて複数の前記回答を組み合わせるか否かを決定し、複数の前記回答を組み合わせると決定した場合に複数の前記回答を組み合わせて1つの前記医学用語を生成してもよい。
【0010】
前記生成部は、前記医学用語に加えて、前記医学用語に関連付けられた診療内容の候補を生成してもよい。
【0011】
前記表示制御部は、前記生成部が生成した前記医学用語に関連付けられたテンプレートに基づいて、前記生成部が生成した前記医学用語を配置して前記表示部に表示させてもよい。
【0012】
前記診療支援装置は、前記表示部を有する端末から、前記患者に対する診療内容の入力を受け付ける受付部と、前記受付部が受け付けた前記診療内容に基づいて、前記患者が次回診療を受ける際に用いられる情報を出力する出力部と、をさらに有してもよい。
【0013】
前記出力部は、前記受付部が受け付けた診療内容に関連付けられた、検査名及び確認事項の少なくとも一方を示す前記情報を出力してもよい。
【0014】
本発明の第2の態様の診療支援方法は、プロセッサが、問診票を読み取ることによって得られた画像と、前記問診票を表示している端末から受信した情報との少なくとも一方に基づいて、前記問診票に記入された患者の回答を取得するステップと、前記回答を医学用語に変換するための規則を記憶している記憶部から取得した規則に従って前記取得するステップが取得した複数の前記回答を組み合わせて前記医学用語に変換することによって1つの前記医学用語を生成するステップと、前記生成するステップが生成した前記医学用語を表示部に表示させるステップと、を実行する。
【0015】
本発明の第3の態様の診療支援プログラムは、コンピュータに、問診票を読み取ることによって得られた画像と、前記問診票を表示している端末から受信した情報との少なくとも一方に基づいて、前記問診票に記入された患者の回答を取得するステップと、前記回答を医学用語に変換するための規則を記憶している記憶部から取得した規則に従って前記取得するステップが取得した複数の前記回答を組み合わせて前記医学用語に変換することによって1つの前記医学用語を生成するステップと、前記生成するステップが生成した前記医学用語を表示部に表示させるステップと、を実行させる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、医療従事者が問診票に記入された患者の回答を医学的に理解するための負担を軽減できるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】実施形態に係る診療支援システムの模式図である。
図2】実施形態に係る診療支援システムが実行する診療支援方法の模式図である。
図3】実施形態に係る診療支援システムのブロック図である。
図4】例示的な問診票の正面図である。
図5】医学情報生成部が医学情報を生成する方法を示す模式図である。
図6】医学情報を表示している診療用端末の表示部の正面図である。
図7】例示的な次回診療用の問診票、及び問診票を表示している表示部の正面図である。
図8】実施形態に係る診療支援方法のフローチャートを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
[診療支援システムSの概要]
図1は、本実施形態に係る診療支援システムSの模式図である。診療支援システムSは、診療支援装置1と、診療用端末2と、読取装置3と、患者用端末4と、印刷装置5とを含む。診療支援システムSは、その他のサーバ、端末等の機器を含んでもよい。
【0019】
診療支援装置1は、患者の診療時に問診票31(質問票)への患者の回答を取得し、該回答に基づいた情報を診療用端末2へ提供するコンピュータである。さらに診療支援装置1は、患者に対する診療内容を記憶し、該診療内容に基づいた次回診療用の情報を出力する。問診票31は、患者への質問と、患者が質問に対する回答を記入するための回答欄とを含む。問診票31は、印刷された紙であってもよく、患者用端末4に電子的に表示されてもよい。
【0020】
診療用端末2は、医師、看護師等の医療従事者に対して情報を表示するとともに、医療従事者による入力を受け付けるコンピュータである。診療用端末2は、例えば表示部21及び操作部22を有するパーソナルコンピュータである。表示部21は、液晶ディスプレイ等の表示装置を含む。操作部22は、キーボード、マウス等の操作装置を含む。診療用端末2は、インターネット、ローカルエリアネットワーク等のネットワークNを介して、診療支援装置1から表示のための情報を受信するとともに、診療支援装置1へ医療従事者による入力を送信する。
【0021】
読取装置3は、紙の問診票31の表面を画像として読み取るスキャナである。読取装置3は、紙の表面を読み取って画像データを出力可能なCCD(Charge Coupled Device)、CMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)等の撮像素子を含む。読取装置3は、ネットワークNを介して、診療支援装置1へ問診票31の画像を送信する。
【0022】
患者用端末4は、患者による入力を受け付けるコンピュータである。患者用端末4は、例えば表示部41を有するタブレット端末又はパーソナルコンピュータである。表示部41は、液晶ディスプレイ等の表示装置を含む。表示部41は、患者による接触の位置を検出可能なタッチスクリーンを用いて構成されており、操作部としても機能する。患者用端末4は、問診票31の内容を表示するとともに、問診票31への回答の記入を受け付ける。患者用端末4は、ネットワークNを介して、診療支援装置1から表示のための情報を受信するとともに、患者が記入した回答を診療支援装置1へ送信する。
【0023】
診療支援システムSは、読取装置3及び患者用端末4の少なくとも一方を有する。診療支援システムSが読取装置3を有する場合には、診療支援システムSは紙の問診票31によって患者の回答を受け付ける。診療支援システムSが患者用端末4を有する場合には、診療支援システムSは問診票31の内容を表示している患者用端末4によって患者の回答を受け付ける。
【0024】
印刷装置5は、診療支援装置1から受け取った情報を紙に印刷するプリンタである。印刷装置5は、ネットワークNを介して、診療支援装置1から印刷のための情報を受信する。
【0025】
図2は、本実施形態に係る診療支援システムSが実行する診療支援方法の模式図である。まず患者は、紙の問診票31に、又は問診票31の内容を表示している患者用端末4に、問診票31の質問への回答を記入する(a)。
【0026】
紙の問診票31によって患者の回答を受け付けた場合に、医療従事者又は患者は、読取装置3に問診票31を読み取らせる。読取装置3は、問診票31の画像を診療支援装置1へ送信する。診療支援装置1は、読取装置3から受信した画像に基づいて、患者の回答を取得する。
【0027】
患者用端末4によって患者の回答を受け付けた場合に、患者用端末4は、患者の回答を示す情報を診療支援装置1へ送信する。診療支援装置1は、患者用端末4から受信した情報に基づいて患者の回答を取得する。
【0028】
診療支援装置1は、患者の回答を医学用語へ変換することによって、医学情報を生成する(b)。医学情報は、患者による1つ又は複数の回答を所定の規則に従って変換することによって得られた医学用語と、該医学用語をタイトルとして関連付けられた1つ又は複数の診療内容候補(例えば薬の処方又は検査の実施)とを含む。医学用語は、1つの単語又は複数の単語を結合した句によって表される。
【0029】
例えば患者の回答が「3日前から熱があること」及び「3日前から頭が痛いこと」を示す場合に、診療支援装置1は、「発熱を伴う頭痛 X 3日間」という医学用語を特定する。そして、診療支援装置1は、特定した医学用語に基づいて診療内容候補を決定する。
【0030】
患者が用いる言葉と医学用語との間には乖離があることが多いが、患者に正確な医学用語を問診票に記入させるのは現実的でない。そのため、医療従事者は、問診票に記入された患者の回答を医学的に理解するために時間が掛かる。本実施形態に係る診療支援システムSは、患者の回答を医学用語に変換してから医療従事者に提示することによって、医療従事者が患者の回答を医学的に理解する負担を軽減し、診療の迅速化をはかれる。
【0031】
診療支援装置1は、生成した医学情報を、診療用端末2へ送信する。そして診療用端末2は、診療支援装置1から受信した医学情報を表示する(c)。
【0032】
診療用端末2は、患者に対して行った診療内容(例えば何の薬を処方したか又は何の検査を行ったか)の入力を、医療従事者から受け付ける。医療従事者は、患者に対して行った診療内容を診療用端末2へ入力する(d)。診療用端末2は、入力された診療内容を診療支援装置1へ送信する。診療支援装置1は、診療用端末2から受信した診療内容を記憶する。
【0033】
診療支援装置1は、診療用端末2から受信した診療内容に基づいて、患者が次回診療を受ける際に用いられる情報を示す次回診療情報を生成する(e)。次回診療情報は、例えば今回の診療の内容で次回結果を説明する必要がある検査や、本来行ってよい検査だが今回は見送った検査の検査名と、今回の診療で処方された薬によって発生し得る副作用等を示す確認事項とを含む。また、その確認事項は医学用語と患者の理解できる言葉のペアでデータベースに格納されており、診療支援装置1は、医療従事者には医学用語でその確認事項を表し、患者には患者の理解できる言葉でその確認事項を表してもよい。
【0034】
そして診療支援装置1は、生成した次回診療情報を、印刷装置5又は診療用端末2へ出力する(f)。印刷装置5は、診療支援装置1から受信した次回診療情報を紙に印刷する。診療用端末2は、診療支援装置1から受信した次回診療情報を表示する。
【0035】
医療従事者は、患者が次回来院した際に、紙に印刷された又は診療用端末2に表示された次回診療情報を参照して患者の診療を行う。また、診療支援装置1は、患者が次回来院した際に、紙に印刷された又は診療用端末2に表示された次回診療情報に対する入力を患者に促してもよい。これにより、診療支援システムSは、医療従事者に次回診療を速やかに開始させることができ、また検査実施状況や薬の副作用等の確認漏れを発生しづらくできる。
【0036】
[診療支援システムSの構成]
図3は、本実施形態に係る診療支援システムSのブロック図である。図3において、矢印は主なデータの流れを示しており、図3に示したもの以外のデータの流れがあってよい。図3において、各ブロックはハードウェア(装置)単位の構成ではなく、機能単位の構成を示している。そのため、図3に示すブロックは単一の装置内に実装されてよく、あるいは複数の装置内に分かれて実装されてよい。ブロック間のデータの授受は、データバス、ネットワーク、可搬記憶媒体等、任意の手段を介して行われてよい。
【0037】
診療支援装置1は、制御部11と、記憶部12とを有する。制御部11は、回答取得部111と、医学情報生成部112と、表示制御部113と、入力受付部114と、次回診療情報出力部115を有する。記憶部12は、医学データ記憶部121と、診療内容記憶部122とを有する。
【0038】
記憶部12は、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、ハードディスクドライブ等を含む記憶媒体である。記憶部12は、制御部11が実行するプログラムを予め記憶する。医学データ記憶部121及び診療内容記憶部122は、それぞれ記憶部12上の記憶領域であってもよく、あるいは記憶部12上で構成されたデータベースであってもよい。
【0039】
医学データ記憶部121は、患者の回答を医学用語に変換するための規則を示す情報と、症例、教科書及び学術書等の診療内容候補及び次回診療情報を決定するための情報とを含む医学データを予め記憶している。診療内容記憶部122は、患者に対して行われた診療内容を患者の識別情報(例えば患者ID)に関連付けて記憶する。
【0040】
制御部11は、例えばCPU(Central Processing Unit)等のプロセッサであり、記憶部12に記憶されたプログラムを実行することにより、回答取得部111、医学情報生成部112、表示制御部113、入力受付部114及び次回診療情報出力部115として機能する。制御部11の機能の少なくとも一部は、電気回路によって実行されてもよい。また、制御部11の機能の少なくとも一部は、ネットワーク経由で実行されるプログラムによって実行されてもよい。
【0041】
本実施形態に係る診療支援システムSは、図3に示す具体的な構成に限定されない。例えば診療支援装置1及び診療用端末2は、一体化されて1つの装置として構成されてもよい。
【0042】
[診療支援方法の説明]
診療支援システムSが実行する診療支援方法を以下に説明する。まず患者は、紙の問診票31に、又は問診票31の内容を表示している患者用端末4に、問診票31の質問への回答を記入する。
【0043】
図4は、例示的な問診票31の正面図である。問診票31は、回答領域311を表している。問診票31は、それぞれ異なる回答領域311を表している複数の紙を含んでもよい。回答領域311は、1つ以上の質問312と、患者が回答を記入するための1つ以上の回答欄313とを含む。回答領域311は、1つの質問312に対して1つの回答欄313を含んでもよく、複数の回答欄313を含んでもよい。回答領域311は、患者に限らず、医療従事者が情報を記入するための欄を含んでもよい。
【0044】
質問312は、患者に対する質問を表す文字列である。回答欄313は、患者が質問312に対する回答を記入するための欄である。回答欄313は、患者が回答内容を選択するチェックボックス等の選択欄であってもよく、あるいは患者が回答内容を表す文字を記入する自由記入欄であってもよい。図4に示した問診票31は一例であり、その他のレイアウトであってもよく、その他の情報を含んでもよい。また、問診票31は、質問312及び回答欄313の近傍に、質問312及び回答欄313に対応する医師の解釈する医学用語を記載してもよい。
【0045】
読取装置3は、患者が回答した問診票31を読み取り、問診票31の画像を診療支援装置1へ送信する。診療支援装置1において、回答取得部111は、読取装置3から受信した問診票31の画像に基づいて、回答欄313に記入された患者の回答を取得する。回答取得部111は、問診票の31の画像から回答を取得するために、例えば既知のOCR技術を用いる。
【0046】
患者用端末4が患者の回答の記入を受け付ける場合には、患者用端末4は、表示部41上に図4に示す問診票31の内容を表示するとともに、患者の操作に応じて回答の記入を受け付ける。患者用端末4は、表示部41上に表示された問診票31に対して患者が記入した回答を示す情報を、診療支援装置1へ送信する。診療支援装置1において、回答取得部111は、患者用端末4から受信した情報に基づいて、患者の回答を取得する。
【0047】
次に医学情報生成部112は、回答取得部111が取得した患者の回答を医学用語へ変換することによって、医学情報を生成する。図5は、医学情報生成部112が医学情報を生成する方法を示す模式図である。
【0048】
まず医学情報生成部112は、医学データ記憶部121から、患者の回答を医学用語に変換するための規則を取得する。また、医学情報生成部112は、回答欄313に記入された患者の回答を取得する。図5の例では、回答欄313において、患者が自覚している複数の症状(主訴)が選択されているとともに、各症状の開始時期が記入されている。
【0049】
そして医学情報生成部112は、医学データ記憶部121から取得した規則に従って、患者の回答を、医学用語に変換する。ここで医学情報生成部112は、回答(例えば選択欄の選択内容及び自由記入欄の記入内容)をそれぞれ医学用語に変換する第1変換と、回答を変換することによって得られた複数の医学用語を結合する第2変換とを行う。すなわち、医学データ記憶部121から取得した規則は、例えば回答を医学用語に変換する第1変換の規則と、回答を変換することによって得られた複数の医学用語を結合する第2変換の規則とを含む。回答を医学用語に変換する第1変換の規則は、例えば回答内容と医学用語とを関連付けた情報である。複数の医学用語を結合する第2変換の規則は、例えば複数の医学用語を当てはめるテンプレートの情報である(例えば「○を伴う○」)。
【0050】
図5の例では、医学情報生成部112は、「ねつ」という症状及び「頭が痛い」という症状、第1変換の規則に従って「発熱」及び「頭痛」という医学用語に変換する。さらに医学情報生成部112は、それらを第2変換の規則に従って結合して「発熱を伴う頭痛」という医学用語に変換している。患者の回答が異なる場合には、医学情報生成部112は、「頭痛を伴う発熱」や「感冒症状」のような別の医学用語に変換することもあり得る。これにより、医学情報生成部112は、医療従事者が患者の回答を読み解く負担を軽減し、診療の迅速化をはかれる。
【0051】
医学情報生成部112は、回答が示す症状に加えて、回答が示す時間情報に基づいて、患者の回答を医学用語に変換してもよい。時間情報は、例えば患者が記入した症状の開始時期又は継続時間である。具体的には、複数の症状の開始時期の差が所定時間(例えば1週間)以内である場合には、医学情報生成部112は、該複数の症状を組み合わせて、1つの医学用語に変換する。この場合に、医学データ記憶部121は、複数の症状を組み合わせる条件とする所定時間の情報を予め記憶しておく。図5の例では、「ねつ」という症状が「3日前」から開始しており、「頭が痛い」という症状が「3日前」から開始しているため、医学情報生成部112は、それらを組み合わせて「発熱を伴う頭痛 X 3日間」の医学用語に変換する。
【0052】
一方、「ねつ」という症状が「4日前」から開始しており、「頭が痛い」という症状が「2日前」から開始していた場合は、医学情報生成部112は、それらを組み合わせて「頭痛を伴う亜急性の発熱」の医学用語に変換する。この場合、医学の世界では「頭痛を伴う発熱」と「発熱を伴う頭痛」とは臨床的に意味が異なり、臨床的対応方法が異なる。例えば前者は発熱を主体とし、その結果として頭痛をきたしたことを意味し通常風邪等の疾患を意図するが、後者は髄膜炎のような頭痛と発熱を同時に起こす疾患を想起し、緊急対応が必要となる。そのため、医学情報生成部112は、回答が示す症状の開始時期(時間)に基づいて異なる医学用語に変換する。すなわち、医学情報生成部112は、回答が示す時間情報に基づいて、複数の前記医学用語の結合の有無、優先順位又は順序を決定する。
【0053】
なお、医学の世界以外でも、順序が異なることで意味が異なる場合が存在する。例えば「おいしい野菜の入ったカレー」と、「野菜の入ったおいしいカレー」は係り受け先が異なる可能性が生まれることにより意味が異なっている。一方、医学の世界では、頭痛と発熱という状態を併記する際にどちらを先に書くのかによって意味が異なり、暗にそのどちらが最初に発症したのかを意図する。従来の方法では、時系列情報を患者に入力を促し、またその入力された言葉の重要度と時間情報の両方を考慮した上で結合の有無を判断したり、結合順序を考慮したりすることはできなかった。
【0054】
このように医学情報生成部112は、回答が示す時間情報に基づいて、回答を異なる医学用語に変換する。そのため、医学情報生成部112は、医療従事者に対して、症状の開始時期が反映されており、患者の状況に合った医学用語を提示できる。
【0055】
また、複数の症状の開始時期の差が所定時間を超えている場合には、医学情報生成部112は、該複数の症状を組み合わせずに(すなわち第2変換を行わずに)、別々の医学用語に変換してもよい。また、医学情報生成部112は、複数の医学用語を結合するための複数の規則がある場合に、より優先度が高い規則に従って複数の医学用語を結合してもよい。この場合に、医学データ記憶部121は、過去の問診票の回答について行われた医療用語変換の優先度を示す情報や複数症状の情報の結合を許可する上での必要条件となる時間情報を判断する基準を予め記憶しておく。
【0056】
また、患者が頭痛(頭が痛い)等の症状(主訴)を認めることは確認されているものの、患者がその症状をいつから認めるのかが確認されていないときもある。そのようなときは、問診票は、「経過中に頭痛があると聞いておりますが、いつから頭痛を認めていますか?」のような、症状の時間情報を確認する質問を含んでもよい。例えば、時間情報は、「〇日前から」又は「○年前から」という表記であってもよく、あるいは「最近」または「経過中」という表記であってもよい。また、問診票は「最近、眠れないですか?」(頭痛を認める患者ではうつ病を示唆する問診)や「経過中、風邪をひいていないですか?」(頭痛を認める患者では副鼻腔炎を示唆する問診)のような、認められた症状に関連する疾患についての質問を含んでもよい。
【0057】
また、医学情報生成部112は、上記の医学用語の変換の際に、「3日」のような具体的な時間情報を、抽象的な時間情報に変換してもよい。例えば、医学情報生成部112は、「頭痛 X 3日間」に代えて、回答を「頭痛(最近)」や「頭痛(経過中)」という医学用語に変換してよい。このとき、医学情報生成部112は、具体的な時間情報を「最近」のような抽象的な時間情報に変換するために、症状ごとに異なる規則を用いてもよい。
【0058】
例えば、医学情報生成部112は、「数か月前」から継続する「しびれ」の症状は、「しびれ(最近)」と変換する。一方、医学情報生成部112は、「数か月前」から継続する「下痢」の症状は、通常下痢が1週間程度で改善することを考慮すると、「下痢(最近)」とは変換しない。他、1日継続する喉の痛み及び咳は感冒症状と変換できるが、3ヶ月以上続く喉の痛み及び咳を感冒症状と変換することはできない。このように「最近」のような抽象的な時間表現がそれぞれの症状によって異なることを考慮することは機械学習等では非常に困難なタスクとされており、医学情報生成部112がこのように事前に定義された変換の規則に基づいて時間情報を変換することの有用性は極めて高い。
【0059】
また、医学情報生成部112は、回答が示す時間情報に対応する「○○から」という時間経過だけではなく、回答が示す「悪化傾向」、「改善傾向」、「ぶり返す」等、症状が時間経過とともにどのように重症度が変化したのかの情報を、生成した医学用語に記載してもよい。
【0060】
また、医学情報生成部112は、過去の問診票の回答(あるいは過去の症例データ)について行われた医療用語変換に対する医療従事者による評価(例えば違和感が多いか少ないか)に基づいて、複数の医学用語を結合してもよい。この場合に、医学データ記憶部121は、医療従事者が過去の医学用語変換について違和感が多いか少ないかを評価した結果を予め記憶しておく。また、医学情報生成部112は、例えば1日以内と1週間以内の時間差で共に妥当と判断された結合式を3日以内の時間差に適用することなど、2つ存在する結合ルールに基づく結合ルールをその中間の時間に適用してもよい。また、医学情報生成部112は、回答を組み合わせる際に、医学的な解釈において、より大事な単語を後方に配置し、大事でない単語を形容詞として前方に配置して、複数の医学用語を結合してもよい。この場合に、医学データ記憶部121は、単語ごとの大事さ(重要度)を示す情報を予め記憶しておき、文脈によりその重要度をさらに変更させて用いてもよい。
【0061】
例えば、「嘔吐」という症状は患者にとっては非常に重症感があるため最も困った重要な症状として訴えられるが、医療従事者が患者を診断するプロセスでは「嘔吐」よりも「頭痛」という症状の方が重要である。そのようなことを表現するために、医学データ記憶部121は、単語の重要度をあらかじめデータベースとして記憶しておく。また、重要度の値は同時に発症する症状の有無によって異なってもよい。例えば最近始まった「胸痛」症状を訴える患者での同時期の「嘔吐」症状は心筋梗塞を示唆するため診断に非常に寄与する情報であるが、最近始まった「下痢」症状がある患者では同時期に「嘔吐」症状があることはあまりにも当たり前のことであり診断には寄与しないことが多い。
【0062】
具体的には、最近始まった「下痢」を認める患者では、経過中の「血便」、「発熱」、「尿量の減少」等の症状が診断においてこの順で有用になる。そのため医学データ記憶部121に、これらの症状に対して、それぞれ1、2、3の重要度を予め記憶しておき、また「嘔吐」症状に対して10の重要度を予め記憶しておく。これにより、医学情報生成部112は、これらの症状を示す医学用語を重要度が低い順に結合することによって、「血便、発熱を同時期に認める急性の下痢」のような1つの医学用語を生成できる。
【0063】
また、「最近の血便を伴わない下痢」の患者に対する診療では、「感染性腸炎」を鑑別疾患とし、通常は検査も必要なく、水分の摂取を促し、整腸剤を処方し、数日後に次回の来院を予約してその時に悪化傾向でないことを確認することが推奨される。一方、「血便、発熱を同時期に認める最近の下痢」の患者に対する診療では、「キャンピロバクタ―腸炎」、「旅行者下痢症」、「赤痢菌」等が鑑別疾患として挙げられ、入院を検討しつつ、便培養、便潜血検査、便検査、抗菌薬の処方等を行うことが推奨される。
【0064】
本実施形態に係る診療支援装置1は、この患者を、発熱、血便及び下痢の別々の3つのプロブレムを有する患者として判断するのではなく、それらを同時に認めた1つのプロブレムを有する患者として判断し、鑑別疾患、検査及び処方例を提案する。そして診療支援装置1は、その1つのプロブレムに対して検査方法、フォローアップ方法、次の診療での確認事項を出力することができるため、医療従事者が納得して解釈しやすい臨床意思決定支援のための情報を従来の方法より精度よく出力可能になる。
【0065】
また、頭痛の評価、血便の評価、下痢の評価の3つのそれぞれのテンプレートに沿ってそれぞれ臨床情報を記載すると非常に長く冗長になるが、診療支援装置1は、「血便、発熱を同時期に認める最近の下痢」の患者としての1つのテンプレートで臨床情報を表示することによって、この患者にとって大事な情報を適切にまとめて表示できるため、医師がその患者の状況を理解するのにかかる時間が数分の1に激減する。例えば、診療支援装置1は、「血便、発熱を同時期に認める最近の下痢」の患者では、「海外旅行の有無」、「性感染症のリスク」、「鶏肉の接種歴」、「意識障害の有無」、「時間経過」等の確認事項の情報を表記するのみで、医療従事者は大体の臨床方針を決めることができる。一方、従来の方法では、「下痢」の患者では「感染歴」、「最近の食事」等の多くの確認事項があり、「発熱」の患者では「海外旅行の有無」、「性感染症のリスク」、「のど」、「咳」、「痰」、「鼻水」、「胸の痛み」、「腹部の痛み」、「皮疹の有無」、「時間経過」等の確認事項があり、それらを合わせると上記の表示例の3倍程度以上の情報を表示する必要が生じる。結果として、医療従事者にとってそれを読み理解する負担が非常に大きくなる。
【0066】
さらに、これらの組み合わせのルールの式と、それに対して生成される医学用語を事前に用意することによりテンプレートを用意する手間を劇的に減らすこともできる。例えば診療支援装置1は、それぞれ急性に始まった「咳」、「痰」、「鼻水」、「のどの痛み」のような症状は「感冒症状」とまとめるという変換をすることができる。仮に、この症状を変換せずにそれぞれの症状の4つの組み合わせ(すなわち各症状が有るか無いかの組み合わせ)の全てのテンプレートを用意しようとすると、2の4乗−1の15種類のテンプレートを用意する必要がある。しかし、これらの4つのうちの2つ以上が同時期に発症した場合に「感冒症状」という医学用語に変換するというルールを決めておけば、テンプレートの方で「咳」、「痰」、「鼻水」、「のどの痛み」のそれぞれが、経過中または、現在認めるのかを表示する形で1つのテンプレートの作成で済む。このように、診療支援装置1は、それぞれの症状の時間情報と、症状の重要度と、一番重要と判断とされた症状の中での症状の時系列を用いた結合ルールの3つを持つことと、その結合ルールによって生成された医学用語をタイトルとした臨床的に必要なテンプレートを持つことで、劇的にテンプレートの作成の工数を減らすことができる。また、テンプレートには検査処方例が記載されているため医療従事者はその処方を選択することが可能になり、診療支援装置1は、その処方情報をストーリーの中できちんと用語統一された形で記録することができるため、次回診療での問診内容を決定することができ、結果として次の診療での患者情報の入力が容易になる。
【0067】
医学情報生成部112が回答を変換する規則は、ここに示したものに限られず、医療従事者又は診療支援システムSの管理者によって予め医学データ記憶部121に記憶される。
【0068】
次に医学情報生成部112は、医学データ記憶部121から、患者の回答を変換することによって得られた医学用語に関連付けられた1つ又は複数の診療内容候補を取得して決定する。医学情報生成部112は、患者の回答に基づいて複数の医学用語を得た場合に、各医学用語について診療内容候補を決定する。
【0069】
医学情報生成部112は、医学データ記憶部121において予め手作業で医学用語に関連付けられた薬剤名又は検査名を、診療内容候補として決定してもよい。あるいは医学情報生成部112は、医学データ記憶部121に予め記憶された症例のデータのうち、医学用語を含む症例のデータが示す薬剤名又は検査名を、診療内容候補として決定してもよい。あるいは医学情報生成部112は、医学データ記憶部121に予め記憶された教科書や学術書のデータのうち、医学用語を含む教科書や学術書のデータが示す薬剤名又は検査名を、診療内容候補として決定してもよい。
【0070】
図5の例では、医学情報生成部112は、「発熱を伴う頭痛」という医学用語に対して、「薬α処方」、「薬β処方」及び「検査γ実施」の診療内容候補を決定する。これにより、医学情報生成部112は、患者の回答に関連する診療内容の候補を医療従事者に提示でき、診療を円滑化できる。
【0071】
さらに医学情報生成部112は、医学用語に関連付けられた診療内容候補を、患者の回答に基づいて変更してもよい。例えば医学情報生成部112は、回答が示す症状の開始時期が所定日以前である場合に「薬α処方」の診療内容候補を決定し、回答が示す症状の開始時期が所定日より後である場合に「薬β処方」の診療内容候補を決定する。具体的には、インフルエンザ感染症は発症後2日経つと治療薬が効果ないことが知られているため、医学情報生成部112は、回答が示すインフルエンザ感染症の開始時期に基づいて治療薬を処方する表示方法を制御する。また、例えば医学情報生成部112は、患者が薬αに対するアレルギーを有することを患者の回答が示す場合に、「薬α処方」の記載のところにグレーアウトをして選択できないようにして、「薬β処方」の診療内容候補を示唆する。
【0072】
また、例えば医学情報生成部112は、患者の回答が所定の言葉を含む場合(例えば自由記入欄に医学用語に変換されなかった症状が記入されていた場合)に、「薬α処方」及び「薬β処方」に加えて「薬δ処方」の診療内容候補を決定する。このように、医学情報生成部112は、医学用語に関連付けられた診療内容候補を、患者の回答に基づいて絞り込む又は増やすことによって、医療従事者に対してより適切な診療内容候補を提示できる。
【0073】
そして医学情報生成部112は、患者の回答を変換することによって得られた医学用語と、該医学用語に関連付けられた診療内容候補とを示す医学情報を生成し、表示制御部113へ渡す。また、医学情報は、患者の回答を変換することによって得られた医学用語に関連する疾患名や問診事項等の関連情報を含んでもよい。この場合に、医学データ記憶部121は、医学用語に関連付けられた疾患名や問診事項等の関連情報を予め記憶しておく。
【0074】
表示制御部113は、医学情報生成部112が生成した医学情報を表示するための情報を診療用端末2へ送信する。このとき、表示制御部113は、生成された医学用語に関連付けられたテンプレートに基づいて、医学用語を配置してもよい。この場合に、医学データ記憶部121は、画面上の配置を示すテンプレートを医学用語ごとに予め記憶しておく。これにより、生成された医学用語ごとに適切な配置を用いて、各種情報を表示することができる。診療用端末2は、診療支援装置1から受信した情報に基づいて、医学情報を表示部21上に表示する。
【0075】
図6は、医学情報を表示している診療用端末2の表示部21の正面図である。表示部21は、診療支援装置1から受信した医学情報に基づいて、問診票における患者の回答それぞれを変換した医学用語211と、複数の回答を組み合わせて生成した医学用語を示すプロブレム212を表示する。また、表示部21は、複数のプロブレム212が存在する場合に、いずれかの1つのプロブレム212について、又は全てのプロブレム212について、関連情報213及びプラン214を表示する。
【0076】
関連情報213は、診療支援装置1から受信した医学情報が示す、医学用語に関連付けられた疾患名(鑑別疾患)や確認事項等を表す。プラン214は、診療支援装置1から受信した医学情報が示す、医学用語に関連付けられた診療内容候補(薬剤名又は検査名)を表す。医療従事者が操作部22を用いて1つ又は複数のプラン214を選択すると、表示部21は、選択されたプラン214に付された番号の色を変化させる。
【0077】
診療用端末2は、選択された1つ又は複数のプラン214を、患者に対して行われた診療内容として受け付け、診療支援装置1へ送信する。表示部21は、プラン214に加えて、医療従事者が診療内容を記入可能な自由記入欄を表示してもよい。この場合に、診療用端末2は、選択された1つ又は複数のプラン214に加えて、自由記入欄に記入された内容を、患者に対して行われた診療内容として受け付け、診療支援装置1へ送信する。
【0078】
診療支援装置1において、入力受付部114は、患者に対して行われた診療内容を、診療用端末2から受信して受け付ける。入力受付部114は、受け付けた診療内容を、患者の識別情報(例えば患者ID)と関連付けて診療内容記憶部122に記憶させる。次回診療情報出力部115は、診療内容記憶部122に記憶された診療内容に基づいて、患者が次回診療を受ける際に医療従事者によって用いられる情報を示す次回診療情報を生成する。
【0079】
次回診療情報は、例えば今回の診療の内容で次回結果を説明する必要がある検査や、本来行ってよい検査だが今回は見送った検査の検査名と、今回の診療で処方された薬によって発生し得る副作用等を示す確認事項とを含む。次回診療情報出力部115は、医学データ記憶部121から、診療内容に関連付けられた検査名及び確認事項を取得し、取得した検査名及び確認事項を示す次回診療情報を生成する。
【0080】
医学情報生成部112は、医学データ記憶部121において予め手作業で診療内容に関連付けられた検査名又は確認事項を、次回診療情報として決定してもよい。あるいは医学情報生成部112は、医学データ記憶部121に予め記憶された症例のデータのうち、診療内容を含む症例のデータが示す検査名又は確認事項を、次回診療情報として決定してもよい。あるいは医学情報生成部112は、医学データ記憶部121に予め記憶された教科書や学術書のデータのうち、診療内容を含む教科書や学術書のデータが示す検査名又は確認事項を、次回診療情報として決定してもよい。
【0081】
そして次回診療情報出力部115は、生成した次回診療情報を、印刷装置5、診療用端末2又は患者用端末4へ出力する。印刷装置5は、診療支援装置1から次回診療情報を受信した場合に、受信した次回診療情報を次回診療用の問診票31として紙に印刷する。診療用端末2又は患者用端末4は、診療支援装置1から次回診療情報を受信した場合に、受信した次回診療情報を表示部21又は表示部41上に表示する。
【0082】
図7(a)は、例示的な医療従事者向けの次回診療用の問診票31の正面図である。医療従事者向けの次回診療用の問診票31は、検査実施状況314と、確認事項315とを含む。検査実施状況314は、診療支援装置1が生成した次回診療情報が示す検査名と、検査名ごとのチェックボックスとを含む。検査名ごとのチェックボックスは、例えば他の病院で検査を実施済であるか、当病院で検査を実施済であるか、あるいは検査が未実施かを示す。他の病院で検査を実施済であるか否かは、例えば問診票の回答によって特定される。
【0083】
医療従事者は、手作業で検査名ごとのチェックボックスを記入してもよい。あるいは診療支援装置1は、診療内容記憶部122に記憶された検査の実施状況を取得し、実施状況に従って検査名ごとのチェックボックスを記入した状態で次回診療情報を出力してもよい。この場合には、医療従事者は、診療用端末2又は前回作成した次回診療用の問診票31を用いて、患者ごとの検査の実施状況を入力しておく。このように次回診療用の問診票31が患者の診療内容に対応する検査名及び実施状況を表すことによって、医療従事者は診療内容に対応する検査が行われたか否かを容易に把握できる。
【0084】
確認事項315は、診療支援装置1が生成した次回診療情報が示す確認事項と、確認事項ごとに確認済か否かを示すチェックボックスとを含む。医療従事者は、患者の次回診療時に確認事項ごとにチェックボックスを記入することによって、確認漏れが発生しづらくなる。
【0085】
診療用端末2が次回診療用の問診票31を表示する場合には、診療用端末2の表示部21は、図7(a)に示した次回診療用の問診票31に対応する情報を表示する。図7(a)に示した次回診療用の問診票31は一例であり、その他のレイアウトであってもよく、その他の情報を含んでもよい。
【0086】
次回診療情報出力部115は、例えば今回の診療が行われた日の夜に、夜間バッチ処理として次回診療情報を印刷装置5へ出力する。印刷装置5は、次回診療用の問診票31を印刷する。そして医療従事者は、印刷された次回診療用の問診票31を患者のカルテに挟んでおく。これにより、医療従事者は、次回診療において患者のカルテを取り出す際に、自然と次回診療用の問診票31を取得できる。
【0087】
また、次回診療情報出力部115は、例えば患者が次回診療を受けている際に、自動的に次回診療情報を診療用端末2へ出力する。診療用端末2は、次回診療用の問診票31を表示部21上に表示する。これにより、医療従事者は、次回診療において患者に関する情報を診療用端末2で参照する際に、自然と次回診療用の問診票31を見ることができる。
【0088】
図7(b)は、例示的な患者向けの次回診療用の問診票を表示している表示部41の正面図である。表示部41は、患者向けの次回診療用の問診票として、患者に対する質問411と、患者が回答を記入するための回答欄412とを表示している。質問411及び回答欄412は、問診票31の質問312及び回答欄313と同様である。図7(b)の例では回答欄412は選択欄であるが、自由記入欄でもよい。回答欄412は、時間情報を記入する欄を含んでもよい。
【0089】
次回診療情報出力部115は、例えば患者が次回診療を受けに来た際に、自動的に次回診療情報を患者用端末4へ出力する。患者用端末4は、次回診療用の問診票を表示部41上に表示する。これにより、患者は、前回診療時の情報に基づいた問診票を見て回答することができる。
【0090】
[診療支援方法のフローチャート]
図8は、本実施形態に係る診療支援方法のフローチャートを示す図である。まず患者は、紙の問診票に、又は問診票の内容を表示している患者用端末4に、問診票の質問への回答を記入する。診療支援装置1において、回答取得部111は、紙の問診票を読み取った読取装置3から受信した画像、又は患者用端末4から受信した情報に基づいて、患者の回答を取得する(S11)。
【0091】
医学情報生成部112は、医学データ記憶部121から取得した規則に従って、ステップS11で回答取得部111が取得した患者の回答を、医学用語に変換する(S12)。ここで医学情報生成部112は、回答をそれぞれ医学用語に変換する第1変換と、回答を変換することによって得られた複数の医学用語を結合する第2変換とを行う。医学情報生成部112は、医学データ記憶部121から、ステップS12で患者の回答を変換することによって得られた医学用語に関連付けられた1つ又は複数の診療内容候補を取得して決定する(S13)。
【0092】
医学情報生成部112は、ステップS12で得た医学用語と、ステップS13で決定した診療内容候補とを示す医学情報を生成する。表示制御部113は、医学情報生成部112が生成した医学情報を表示するための情報を診療用端末2へ送信することによって、診療用端末2に医学情報を表示させる(S14)。
【0093】
医療従事者は、患者に対する診療を行った際に、医学情報を表示している診療用端末2上で診療内容を入力する。診療支援装置1において、入力受付部114は、患者に対して行われた診療内容を、診療用端末2から受信して受け付ける(S15)。入力受付部114は、受け付けた診療内容を、患者の識別情報と関連付けて診療内容記憶部122に記憶させる。
【0094】
次回診療情報出力部115は、ステップS15で入力受付部114が受け付けた診療内容に基づいて、患者が次回診療を受ける際に医療従事者によって用いられる情報を示す次回診療情報を生成する(S16)。次回診療情報は、例えば今回の診療の内容に対応する検査の検査名と、今回の診療で処方された薬によって発生し得る副作用等を示す確認事項とを含む。
【0095】
そして次回診療情報出力部115は、ステップS16で生成した次回診療情報を、印刷装置5又は診療用端末2へ出力する(S17)。印刷装置5は、診療支援装置1から次回診療情報を受信した場合に、受信した次回診療情報を次回診療用の問診票として紙に印刷する。診療用端末2は、診療支援装置1から次回診療情報を受信した場合に、受信した次回診療情報を表示部21上に表示する。
【0096】
[本実施形態の効果]
本実施形態に係る診療支援システムSは、問診票に記入された患者の回答を、所定の規則に従って医学用語に変換し、医療従事者に提示する。そのため、診療支援システムSは、医療従事者が患者の回答を医学的に理解する負担を軽減し、診療の迅速化をはかれる。
【0097】
また、診療支援システムSは、今回の診療内容に基づいて、患者が次回診療を受ける際に医療従事者によって用いられる情報を示す次回診療情報を出力する。これにより、診療支援システムSは、医療従事者に次回診療を速やかに開始させることができ、また検査実施状況や薬の副作用等の確認漏れを発生しづらくできる。
【0098】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されず、その要旨の範囲内で種々の変形及び変更が可能である。例えば、装置の分散・統合の具体的な実施の形態は、以上の実施の形態に限られず、その全部又は一部について、任意の単位で機能的又は物理的に分散・統合して構成することができる。また、複数の実施の形態の任意の組み合わせによって生じる新たな実施の形態も、本発明の実施の形態に含まれる。組み合わせによって生じる新たな実施の形態の効果は、もとの実施の形態の効果を合わせ持つ。
【0099】
診療支援装置1のプロセッサは、図8に示す方法に含まれる各ステップ(工程)の主体となる。すなわち、診療支援装置1のプロセッサは、図8に示す方法を実行するためのプログラムを記憶部から読み出し、該プログラムを実行して診療支援システムSの各部を制御することによって、図8に示す方法を実行する。図8に示す方法に含まれるステップは一部省略されてもよく、ステップ間の順番が変更されてもよく、複数のステップが並行して行われてもよい。
【符号の説明】
【0100】
S 診療支援システム
1 診療支援装置
11 制御部
111 回答取得部
112 医学情報生成部
113 表示制御部
114 入力受付部
115 次回診療情報出力部
12 記憶部
121 医学データ記憶部
2 診療用端末
21 表示部
【要約】
【課題】医療従事者が問診票に記入された患者の回答を医学的に理解するための負担を軽減できるようにする。
【解決手段】本発明の一実施形態に係る診療支援システムSは、診療支援装置1と、診療用端末2と、読取装置3と、患者用端末4と、印刷装置5とを含む。診療支援装置1は、問診票に記入された患者の回答を医学用語に変換するための規則を記憶している医学データ記憶部121と、問診票を読み取ることによって得られた画像と、問診票を表示している端末から受信した情報との少なくとも一方に基づいて、回答を取得する回答取得部111と、規則に従って回答取得部111が取得した複数の回答を組み合わせて前記医学用語に変換することによって1つの医学用語を生成する医学情報生成部112と、医学情報生成部112が生成した医学用語を表示部に表示させる表示制御部113と、を有する。
【選択図】図3
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8