(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記無機物質が、酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化鉄、ケイ酸アルミニウム、非晶質火山ガラス、及びこれらの混合物からなる群から選択される、請求項11に記載の方法。
【背景技術】
【0002】
ポリマー、特に合成プラスチックは、比較的製造原価が低く、かつ材料特性のバランスがよいことから、日常生活の至るところで使用されている。合成プラスチックは、梱包、自動車部品、医療用デバイス、及び消費財などの様々な用途で使用される。これらの用途のための高需要を満たすべく、世界的に年ベースで数百億ポンドの合成プラスチックが製造されている。合成プラスチックのほとんどは、減少の一途を辿っている石油及び天然ガスなどの化石源から製造される。更に、化石源から合成プラスチックを製造すると、副産物としてCO
2が生成される。
【0003】
合成プラスチックの普及により、結果として、毎年数百トンのプラスチック廃棄物が生じている。都市固形廃棄物のプログラムによりプラスチック廃棄物の大部分は埋め立てられているものの、それでもかなりのプラスチック廃棄物が、生態系に対し有害である可能性がありかつ目障りであるゴミとして環境中に見られる。プラスチック廃棄物は、多くの場合、河系に流され最終的には海に流れ着く。
【0004】
プラスチックの再生は、プラスチック類の多岐にわたる使用に伴う課題をある程度解消する解決法の1つとして登場した。プラスチック類の回収及び再使用することにより、埋立地からの廃棄物を流用し、化石系資源から製造されたバージンプラスチックの需要を低下させ、結果、温室効果ガスの放出も減少する。米国及び欧州連合などの先進地域では、消費者、企業、及び産業の製造業務における意識の高まりによりプラスチック類の再生率は上昇している。プラスチック類を含むリサイクル材料の大部分は、材料回収施設(MRF)により一緒くたにしてシングルストリームにまとめられ、回収及び加工される。MRFでは、材料は選別され、洗浄され、次なる販売のため梱包される。プラスチック類は、高密度ポリエチレン(HDPE)又はポリエチレンテレフタレート(PET)などの各材料に選別可能であり、あるいはその他の一般的なプラスチック類、例えば、ポリプロピレン(PP)、低密度ポリエチレン(LDPE)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリスチレン(PS)、ポリカーボネート(PC)、及びポリアミド(PA)などのミクストストリーム(mixed streams)であってもよい。次に、シングルストリーム又はミクストストリームは更に分別され、洗浄され、プラスチック類の加工、例えば、ブロー成形及び射出成形などにおける再使用に適したペレットへと再加工することができる。
【0005】
リサイクルプラスチックは、概ね均一なストリームに選別され、水性溶液及び/又は腐食性溶液により洗浄されるものの、最終的な再加工ペレットは、多くの場合、腐った食物残渣及び残留香料成分などといった望ましくない廃棄不純物が多く混入したままである。更に、リサイクルした飲料容器に由来するものを除き、リサイクルプラスチックペレットは、プラスチック物品を着色するために一般的に使用される染料及び顔料が混じり合うことによって、暗色を帯びてしまう。色及び混入が特に問題とならないような用途もあるにはあるものの(例えば、黒色プラスチック製の塗料容器及び隠れてしまう自動車部品)、ほとんどの用途では無着色のペレットが必要とされる。高品質で「バージン様」のリサイクル樹脂に対するニーズは、食品の梱包などといった、食品及び薬品に接触する用途で特に重要である。多くのリサイクル樹脂製品には、不純物及び混ざりあった着色剤が混入していることに加え、多くの場合、化学的組成が不均一であり、かつ例えば、ポリエチレンをリサイクル使用する場合のポリプロピレンの混入及びその逆などのように顕著な量でポリマーが混入している場合がある。
【0006】
二次リサイクルとしても知られるメカニカルリサイクルは、リサイクルしたプラスチック廃棄物を、以降の製造に再利用可能な形態に変換するプロセスである。メカニカルリサイクルプロセス及びその他のプラスチック回収プロセスのより詳細なレビューは、S.M.Al−Salem,P.Lettieri,J.Baeyens,「Recycling and recovery routes of plastic solid waste(PSW):A review」,Waste Management,Volume 29,Issue 10,October 2009,Pages 2625〜2643,ISSN 0956−053X.に記載されている。メカニカルリサイクル技術の進歩により、リサイクルポリマーの品質はある程度まで向上しているものの、機械的な混入除去によるアプローチには、例えば、ポリマーマトリックス内へ物理的に顔料を閉じ込めるなどの根本的な限界がある。したがって、メカニカルリサイクル技術の進歩をもってさえ、現在利用可能なリサイクルプラスチック廃棄物における暗色及び高レベルの化学汚染が原因となり、プラスチック工業におけるリサイクル樹脂の使用範囲が制限されている。
【0007】
物理的再生に関する根本的な限界を克服するため、混入物を含むポリマーを化学的アプローチ又は化学的リサイクルにより精製するための数多くの方法が開発されてきた。これらの方法のほとんどは、ポリマーから混入物を除いて精製する目的で溶媒を使用する。溶媒を使用することで不純物の抽出及びポリマーの溶解が可能となり、これにより、更に別の分離技術が使用可能になる。
【0008】
例えば、米国特許第7,935,736号は、溶媒を使用してポリエステルを溶解させてから洗浄を行い、ポリエステルを含有する廃棄物からポリエステルを再生利用する方法を記載する。当該736特許は、溶媒からポリエステルを回収するためには沈殿剤を使用する必要があることも記載している。
【0009】
別の例では、米国特許第6,555,588号は、その他のポリマーからなるプラスチック混合物に由来するポリプロピレンブレンドの製造方法を記載する。当該588特許は、例えばヘキサンなどの選択された溶媒中、ポリマーの溶解温度未満の温度、特定の滞留時間でのポリマーからの混入物の抽出を記載する。当該588特許は、濾過前にポリマーを溶解させる溶媒(又は第2の溶媒)の温度を上昇させることを更に記載する。当該588特許は、溶液からポリプロピレンを沈殿させるためのせん断又はフローの使用を更に記載する。当該588特許に記載のポリプロピレンブレンドは、最大で5.6重量%の混入ポリエチレンを含有していた。
【0010】
別の実施例では、欧州特許出願第849,312号(ドイツ語から英語に翻訳されている)は、ポリオレフィン含有プラスチック混合物又はポリオレフィン含有廃棄物から精製ポリオレフィンを得るためのプロセスを記載している。当該312特許出願では、90℃超の沸点を有するガソリン又はディーゼル燃料の炭化水素画分による、90℃〜炭化水素溶媒の沸点の温度での、ポリオレフィン混合物又は廃棄物の抽出を記載する。当該312特許出願は、熱ポリオレフィン溶液を漂白クレイ(bleaching clay)及び/又は活性炭と接触させて、溶液から異物成分を除去することを更に記載する。当該312特許は、溶液を70℃未満の温度に冷却してポリオレフィンを結晶化し、次にポリオレフィンをポリオレフィンの融点以上に加熱して、付着した(adhering)溶媒を除去する工程、あるいは付着した溶媒を真空中で蒸発させること、あるいはポリオレフィン沈殿へのガス流の通過、及び/又はポリオレフィンの融点未満で沸騰するアルコール又はケトンによる溶媒抽出を更に記載している。
【0011】
別の実施例では、米国特許第5,198,471号は、第1のより低い温度で溶媒を使用して、複数のポリマーを含有する物理的に混じり合った固体混合物(例えば、廃プラスチック)からポリマーを分離して、第1の単相溶液と、残部として固体成分とを形成する方法を記載する。当該471特許は、第1のより低い温度では溶解しなかった追加のポリマーを溶解するため、溶媒をより高い温度に加熱することを更に記載する。当該471特許は、不溶性のポリマー成分の濾過を記載している。
【0012】
別の実施例では、米国特許第5,233,021号は、それぞれの成分を適切な温度及び圧力にて超臨界流体に溶解し、次に、温度及び/又は圧力を変化させて順番に(in sequence)特定の成分を抽出することにより、多成分の構造物(例えば、廃棄カーペット)から純粋なポリマー成分を抽出する方法を記載する。しかしながら、当該021特許は、当該471特許同様、未溶解の成分の濾過のみを記載している。
【0013】
別の実施例では、米国特許第5,739,270号は、共溶媒及び作動流体を使用して、混入物及びその他のプラスチック成分からプラスチックのポリマー成分を連続的に分離するための方法及び装置を記載している。共溶媒は少なくとも部分的にポリマーを溶解し、第2の流体(液体状態、臨界状態、又は超臨界状態である)はポリマーから成分を可溶化し、溶解させたポリマーのうち一部を共溶媒から沈殿させる。当該270特許は、熱可塑性共溶媒(作動流体あり又は作動流体なしで)を濾過して、ガラス粒子などの粒子状混入物を濾過する工程を更に記載する。
【0014】
上記のとおり、混入物を含むポリマーを精製するための既知の溶媒ベースの方法では、「バージン様」ポリマーは製造されない。以前の方法では、共溶解、ひいては多くの場合他のポリマーの二次混入が生じる。吸着剤が使用される場合、濾過工程及び/又は遠心分離工程は、多くの場合、使用した吸着剤を溶液から除去するために使用される。更に、溶媒を除去するための、例えば、加熱、真空蒸発、及び/又は沈殿する化学物質を用いた沈殿などの分離プロセスを使用して、残留溶媒を含まないポリマーを生成する。
【発明を実施するための形態】
【0031】
I.定義
本明細書で使用するとき、用語「回収ポリマー」は、前述の目的で使用された後、更なる加工のため回収されたポリマーを指す。
【0032】
本明細書で使用するとき、用語「回収ポリエチレン」は、前述の目的で使用された後、更なる加工のため回収されたポリエチレンポリマーを指す。
【0033】
本明細書で使用するとき、用語「消費者による使用後」は、最終消費者が消費財又は製品において材料を使用した後に生じる材料の供給源を指す。
【0034】
本明細書で使用するとき、用語「消費者による使用後の再生」(PCR)は、最終消費者により使用された後に生成され、廃棄物ストリームにおいて処分された材料を指す。
【0035】
本明細書で使用するとき、用語「産業使用後」は、グッズ又は製品の製造中に生じる材料の供給源を指す。
【0036】
本明細書で使用するとき、用語「流体溶媒」は、特定の温度及び圧力条件下にて液体状態で存在し得る物質を指す。いくつかの実施形態では、流体溶媒は1種の分子又は異性体のほとんど均一な化学組成物であってよく、一方で、他の実施形態では、流体溶媒はいくつかの異なる分子組成物又は異性体の混合物であってもよい。更に、本発明のいくつかの実施形態では、用語「流体溶媒」は、その物質の臨界温度及び臨界圧力(臨界点)にあるか、それに近いか、又はそれを上回る物質にも適用され得る。その物質の臨界点を超える物質は、液体の典型的な物理特性(すなわち密度)を有しない「超臨界流体」として知られていることは、当業者には周知である。
【0037】
本明細書で使用するとき、用語「溶解した」は、分子レベルでの、溶質(ポリマー又は非ポリマー)の溶媒中への少なくとも部分的な組み込みを意味する。更に、溶質/溶媒溶液の熱力学的安定性は、以下の式1により記載され得る:
ΔG
mix=ΔH
m−TΔS
mix (I)
式中、は溶質と溶媒との混合のギブス自由エネルギーの変化、ΔH
mixは混合のエンタルピー変化、Tは絶対温度、ΔS
mixは混合エントロピーである。溶媒中に溶質がある安定した溶液を維持するため、ギブス自由エネルギーは、最低でも負である必要がある。したがって、適切な温度及び圧力下で負のギブス自由エネルギーを最小にする溶質及び溶媒の任意の組み合わせを本発明に用いることができる。
【0038】
本明細書で使用するとき、用語「標準沸点」は、国際純正応用化学連合(IUPAC)により制定されたとおり、正確に100kPa(1bar、14.5psia、0.9869atm)の絶対圧下での沸騰温度を指す。
【0039】
本明細書で使用するとき、用語「標準蒸発エンタルピーの変化」は、物質の標準沸点下での、所定量の物質の液体から蒸気への変換に必要とされるエンタルピー変化を指す。
【0040】
本明細書で使用するとき、用語「ポリエチレン溶液」は、溶媒に溶解したポリマーの溶液を指す。ポリエチレン溶液は未溶解の物質を含有してよく、したがって、ポリエチレン溶液は、溶媒に溶解したポリエチレンの溶液中に懸濁した未溶解物の「スラリー」であってもよい。
【0041】
本明細書で使用するとき、用語「固体媒体」は、使用条件下で固体状態で存在する物質を指す。固体媒体は、結晶質、半結晶質、又は非結晶質であってよい。固体媒体は粒状であってよく、及び様々な形状(すなわち、球体、円筒形、ペレット形など)で供給されてもよい。固体媒体が粒状である場合、固体媒体の粒径及び粒径分布は、粒状媒体の分級に使用されるメッシュサイズにより定義され得る。標準的なメッシュサイズ表記の一例は、米国材料試験協会(ASTM)標準ASTM E11「Standard Specification for Woven Wire Test Sieve Cloth and Test Sieves」で確認することができる。固体媒体は、不織の繊維マット又は織布であってもよい。
【0042】
本明細書で使用するとき、用語「より高純度のポリエチレン溶液」は、精製工程前の同じポリエチレン溶液と比較して混入物がより少ないポリエチレン溶液を指す。
【0043】
本明細書で使用するとき、用語「バージン様」は、本質的に混入物を含まず、顔料を含まず、臭気がなく、均質であり、かつ特性がバージンポリマーと同様であるポリマーを意味する。
【0044】
本明細書で使用するとき、用語「主にポリエチレンコポリマー」は、70mol%超がエチレン繰り返し単位を有するコポリマーを指す。
【0045】
II.混入物を含むポリエチレンの精製方法
驚くべきことに、好ましい実施形態において、比較的単純なプロセスで使用したときに、温度及び圧力依存性のポリマー溶解度を示す、ある種の流体溶媒を使用して、混入物を含むポリエチレン、特に回収又はリサイクルされたポリエチレンを精製し、ほとんどバージン様の品質にすることができることが判明した。
図1に例示するこのプロセスは、1)回収ポリエチレンを入手する工程(
図1中工程a)、次に2)抽出温度(T
E)及び抽出圧力(P
E)にてポリエチレンを流体溶媒で抽出する工程(
図1中工程b)、次に3)溶解温度(T
D)及び溶解圧力(P
D)にて流体溶媒にポリエチレンを溶解させる工程(
図1中工程c)、次に4)溶解温度(T
D)及び溶解圧力(P
D)にて溶解させたポリエチレン溶液を固体媒体と接触させる工程後(
図1中工程d)、流体溶媒からポリエチレンを分離する工程(
図1中工程e)、を含む。本発明の一実施形態では、消費者による使用後の廃棄物ストリームから供給され得る精製ポリエチレンは、本質的に混入物を含まず、顔料を含まず、臭気がなく、均質で、かつバージンポリマーと特性が同様である。更に、好ましい実施形態では、本発明の流体溶媒の物理特性により、精製したポリエチレンから流体溶媒を分離するために、よりエネルギー効率の高い方法が可能になり得る。
【0046】
回収ポリエチレン
本発明の一実施形態では、回収ポリエチレンを精製する方法は、回収ポリエチレンを入手する工程を含む。本発明の目的に関し、回収ポリエチレンは、消費者による使用後の廃棄物ストリーム、産業使用後の廃棄物ストリーム、商業的使用後の廃棄物ストリーム、及び/又はその他の特別な廃棄物ストリームから供給される。例えば、消費者による使用後の廃棄ポリエチレンは、ごみ運搬業者又はリサイクル業者による回収のため、末端消費者が、包装及び製品由来の使用済みポリマーを指定の回収箱に入れるという、歩道脇でのリサイクル・ストリームに由来したものであってよい。消費者による使用後の廃棄ポリマーは、消費者が店に廃棄ポリマーを持ち込んで、かかる廃棄ポリマーを指定の回収箱に入れるという、店内の「回収(take-back)」プログラムに由来するものであってもよい。産業使用後の廃棄ポリマーの例は、使用不能な材料(すなわち、トリミング屑、規格外材料、スタートアップ・スクラップ(start up scrap))として収集されたグッズ又は製品の製造又は運搬中に生じた廃棄ポリマーであり得る。特定の廃棄物ストリーム由来の廃棄ポリマーの例は、電子廃棄物としても知られる電気・電子機器廃棄物の再生利用に由来する廃棄ポリマーであってよい。特定の廃棄物ストリームに由来する廃棄ポリマーの別の例は、自動車のリサイクルに由来する廃棄ポリマーであり得る。特定の廃棄物ストリームの廃棄ポリマーの別の例は、使用済みの敷物類及び繊維製品のリサイクルに由来する廃棄ポリマーであり得る。
【0047】
本発明の目的に関し、回収ポリエチレンは、各ポリマーの均質な組成物、又はいくつかの異なるポリエチレン組成物の混合物である。ポリエチレン組成物の非限定例としては、高密度ポリエチレン(HDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、線状低密度ポリエチレン(LLDPE)などのエチレンのホモポリマー及びコポリマー、エチレン及びα−オレフィンのコポリマー、並びに当業者には明らかであり得るその他の溶解性ポリエチレンポリマーが挙げられる。
【0048】
回収ポリエチレンは、重合中又はオリジナルのポリマーを最終的な物品形態に変換させている間にポリマーに添加された様々な顔料、染料、加工助剤、安定化添加物、充填剤、及びその他の性能の添加剤も含有し得る。顔料の非限定例は、当業者には明白なものであり得る、銅フタロシアニンなどの有機顔料、二酸化チタンなどの無機顔料、及びその他の顔料である。有機染料の非限定例はベーシックイエロー51である。加工助剤の非限定例は、例えばグリセロールモノステアラートなどの帯電防止剤、及び例えばエルカミドなどのスリップ促進剤(slip-promoting agents)である。安定化添加物の非限定例は、オクタデシル−3−(3,5−ジ−tert.ブチル−4−ヒドロキシフェニル)−プロピオネートである。充填剤の非限定例には、炭酸カルシウム、タルク、及びガラス繊維がある。
【0049】
溶媒
本発明の流体溶媒は約70℃未満の標準沸点を有する。加圧により、標準沸点が本発明の操作温度範囲未満である溶媒は、溶媒の蒸発がほとんどあるいは全くない状態に維持される。一実施形態では、約70℃未満の標準沸点を有する流体溶媒は、二酸化炭素、ケトン、アルコール、エーテル、エステル、アルケン、アルカン、及びこれらの混合物からなる群から選択される。約70℃未満の標準沸点を有する流体溶媒の非限定例は、二酸化炭素、アセトン、メタノール、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、エチルメチルエーテル、テトラヒドロフラン、酢酸メチル、エチレン、プロピレン、1−ブテン、2−ブテン、イソブチレン、1−ペンテン、2−ペンテン、ペンテンの分岐状異性体、1−ヘキセン、2−ヘキセン、メタン、エタン、プロパン、n−ブタン、イソブタン、n−ペンタン、イソペンタン、ネオペンタン、n−ヘキサン、イソヘキサンの異性体、及び当業者には明白であり得るその他の物質である。
【0050】
使用する流体溶媒の選択により、本発明の工程を実施するのに使用される温度範囲及び圧力範囲が決定されることになる。本発明に記載の種類の溶媒中でのポリマーの相挙動の概説は、以下の参照文献に提供されている:McHugh et al.(1999)Chem.Rev.99:565〜602。
【0051】
抽出
本発明の一実施形態では、ポリエチレンを精製する方法は、かかるポリマーが流体溶媒に本質的に不溶性である温度及び圧力にて回収ポリエチレンを流体溶媒と接触させる工程を含む。理論に束縛されることを望むものではないが、出願人らは、流体溶媒がポリマーを完全に可溶化するのを妨げるような方法で、温度及び圧力依存性の溶解度を制御できると考えているが、流体溶媒はポリマー中に拡散し、抽出可能な混入物を抽出することができる。抽出可能な混入物は、ポリマーに添加された残留加工助剤、香水及び香料などのポリマーに接触した残留製品組成物、染料、並びに、例えば廃棄物の回収及びそれ以降のその他の廃棄物との集積中に、意図的にポリマーに添加された又は意図せずポリマーに組み込まれることになった抽出可能なその他の何らかの材料であり得る。
【0052】
一実施形態では、制御された抽出は、ポリマー/流体溶媒系の温度を一定にし、次いでポリマーが流体溶媒に溶解する圧力又は圧力範囲よりも低い圧力を制御することにより達成することができる。別の実施形態では、制御された抽出は、ポリマー/溶媒系の圧力を一定にし、次にポリマーが流体溶媒中に溶解する温度又は温度範囲よりも低い温度を制御することにより達成することができる。流体溶媒を用いる温度及び圧力制御されたポリマー抽出は、好適な圧力容器を使用し、流体溶媒によるポリマーの連続抽出を可能にする方法で構成され得る。本発明の一実施形態では、加圧容器は、溶融ポリマーが抽出カラムの一端に送液され、流体溶媒が抽出カラムの同じ端部又は反対側の端部に送液される、連続的な液−液抽出カラムであり得る。別の実施形態では、抽出された混入物を含有する流体は、プロセスから除去される。別の実施形態では、抽出された混入物を含有する流体は、プロセスにおける抽出工程又は異なる工程における使用のために精製され、回収され、及びリサイクルされる。本発明の一実施形態では、抽出は、バッチ式の方法として実施することができ、回収ポリエチレンは圧力容器内に固定され、流体溶媒は、固定されたポリマー相を通して連続的に送液される。抽出時間又は使用する流体溶媒の量は、最終的なより高純度のポリマーに所望される純度及び回収ポリエチレンに当初含まれている抽出可能な混入物量によって異なり得る。別の実施形態では、抽出された混入物を含有する流体は、以下「精製」の項に記載するとおりの分離工程において固体媒体と接触させられる。別の実施形態では、回収ポリエチレンを精製する方法は、かかるポリマーが溶融されておりかつ液体状態である温度及び圧力にて、回収ポリエチレンを流体溶媒と接触させる工程を含む。別の実施形態では、ポリマーが固体状態である温度及び圧力にて回収ポリエチレンを流体溶媒と接触させる。
【0053】
一実施形態では、回収ポリエチレンを精製する方法は、ポリエチレンが本質的に未溶解の状態を維持する温度及び圧力にて、ポリエチレンを流体溶媒と接触させる工程を含む。別の実施形態では、回収ポリエチレンを精製する方法は、約80℃〜約220℃の温度でポリエチレンをn−ブタンと接触させる工程を含む。別の実施形態では、回収ポリエチレンを精製する方法は、約100℃〜約200℃の温度でポリエチレンをn−ブタンと接触させる工程を含む。別の実施形態では、回収ポリエチレンを精製する方法は、約130℃〜約180℃の温度でポリエチレンをn−ブタンと接触させる工程を含む。別の実施形態では、回収ポリエチレンを精製する方法は、約1.03MPa(150psig)〜約44.82MPa(6,500psig)の圧力でポリエチレンをn−ブタンと接触させる工程を含む。別の実施形態では、回収ポリエチレンを精製する方法は、約20.68MPa(3,000psig)〜約41.37MPa(6,000psig)の圧力でポリエチレンをn−ブタンと接触させる工程を含む。別の実施形態では、回収ポリエチレンを精製する方法は、約31.03MPa(4,500psig)〜約37.92MPa(5,500psig)の圧力でポリエチレンをn−ブタンと接触させる工程を含む。
【0054】
別の実施形態では、回収ポリエチレンを精製する方法は、約80℃〜約220℃の温度でポリエチレンをプロパンと接触させる工程を含む。別の実施形態では、回収ポリエチレンを精製する方法は、約100℃〜約200℃の温度でポリエチレンをプロパンと接触させる工程を含む。別の実施形態では、回収ポリエチレンを精製する方法は、約130℃〜約180℃の温度でポリエチレンをプロパンと接触させる工程を含む。別の実施形態では、回収ポリエチレンを精製する方法は、約6.89MPa(1,000psig)〜約103.42MPa(15,000psig)の圧力でポリエチレンをプロパンと接触させる工程を含む。別の実施形態では、回収ポリエチレンを精製する方法は、約13.79MPa(2,000psig)〜約68.95MPa(10,000psig)の圧力でポリエチレンをプロパンと接触させる工程を含む。別の実施形態では、回収ポリエチレンを精製する方法は、約34.47MPa(5,000psig)〜約62.05MPa(9,000psig)の圧力でポリエチレンをプロパンと接触させる工程を含む。
【0055】
溶解
本発明の一実施形態では、回収ポリエチレンを精製する方法は、かかるポリマーが流体溶媒に溶解する温度及び圧力にて回収ポリエチレンを流体溶媒に溶解させる工程を含む。理論に束縛されることを望むものではないが、出願人らは、回収ポリマーを熱力学的に望ましく流体溶媒に溶解させることを可能にするような方法で、温度及び圧力を制御可能であるものと考えている。更に、特定のポリマー又はポリマー混合物の溶解を可能にする一方で、他のポリマー又はポリマー混合物は溶解させないような方法で、温度及び圧力を制御することができる。この制御可能な溶解により、ポリマー混合物からのポリマーの分離が可能になる。
【0056】
本発明の一実施形態では、ポリマーを精製する方法は、混入物を含む回収ポリエチレンを、同じ温度及び圧力条件下では混入物を溶解しない溶媒に溶解させる工程を含む。混入物は、顔料、充填剤、汚泥(dirt)、及び他のポリマーを含み得る。これらの混入物は、溶解時に回収ポリエチレンから放出され、次に、固液分離工程によりポリマー溶液から除去される。
【0057】
本発明の一実施形態では、回収ポリエチレンを精製する方法は、ポリエチレンが流体溶媒に溶解する温度及び圧力にてポリエチレンを流体溶媒に溶解させる工程を含む。別の実施形態では、回収ポリエチレンを精製する方法は、約90℃〜約220℃の温度でポリエチレンをn−ブタンに溶解させる工程を含む。別の実施形態では、回収ポリエチレンを精製する方法は、約100℃〜約200℃の温度でポリエチレンをn−ブタンに溶解させる工程を含む。別の実施形態では、回収ポリエチレンを精製する方法は、約130℃〜約180℃の温度でポリエチレンをn−ブタンに溶解させる工程を含む。別の実施形態では、回収ポリエチレンを精製する方法は、約6.89MPa(1,000psig)(6.89MPa)〜約82.74MPa(12,000psig)の圧力でポリエチレンをn−ブタンに溶解させる工程を含む。 別の実施形態では、回収ポリエチレンを精製する方法は、約13.79MPa(2,000psig)〜約68.95MPa(10,000psig)の圧力でポリエチレンをn−ブタンに溶解させる工程を含む。別の実施形態では、回収ポリエチレンを精製する方法は、約27.58MPa(4,000psig)〜約41.37MPa(6,000psig)の圧力でポリエチレンをn−ブタンに溶解させる工程を含む。
【0058】
別の実施形態では、回収ポリエチレンを精製する方法は、約90℃〜約220℃の温度でポリエチレンをプロパンに溶解させる工程を含む。別の実施形態では、回収ポリエチレンを精製する方法は、約100℃〜約200℃の温度でポリエチレンをプロパンに溶解させる工程を含む。別の実施形態では、回収ポリエチレンを精製する方法は、約130℃〜約180℃の温度でポリエチレンをプロパンに溶解させる工程を含む。別の実施形態では、回収ポリエチレンを精製する方法は、約20.68MPa(3,000psig)〜約137.90MPa(20,000psig)の圧力でポリエチレンをプロパンに溶解させる工程を含む。別の実施形態では、回収ポリエチレンを精製する方法は、約34.47MPa(5,000psig)〜約103.42MPa(15,000psig)の圧力でポリエチレンをプロパンに溶解させる工程を含む。別の実施形態では、回収ポリエチレンを精製する方法は、約55.16MPa(8,000psig)〜約75.84MPa(11,000psig)の圧力でポリエチレンをプロパンに溶解させる工程を含む。
【0059】
精製
本発明の一実施形態では、ポリエチレンを精製する方法は、かかるポリマーが流体溶媒に溶解した状態を維持する温度及び圧力にて、混入物を含むポリマー溶液を固体媒体と接触させる工程を含む。本発明の固体媒体は、回収ポリエチレンを本発明の流体溶媒に溶解させた溶液から混入物を少なくともある程度除去する、任意の固体材料である。理論に束縛されることを望むものではないが、本出願人らは、固体媒体が様々な機序で混入物を除去するものと考える。可能性のある機序の非限定例としては、吸着、吸収、サイズ排除、イオン排除、イオン交換、及び当業者には明白なその他の機序が挙げられる。更に、回収ポリエチレンに一般的に見られる顔料及びその他の混入物は、極性化合物である場合があり、同様にして少なくともわずかに極性であり得る前述の固体媒体と優先的に相互作用し得る。極性−極性相互作用は、アルカンなどの無極性溶媒が流体溶媒として使用される場合に特に望ましい。
【0060】
本発明の一実施形態では、固体媒体は、無機物質、炭素系物質、又はこれらの混合物からなる群から選択される。有用な無機物質の例としては、酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化鉄、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウム、非晶質火山ガラス、シリカ、シリカゲル、珪藻岩、砂、石英、再生ガラス、アルミナ、真珠岩、フラー土、ベントナイト、及びこれらの混合物が挙げられる。有用な炭素系物質の例としては、無煙炭、カーボンブラック、コークス、活性炭、セルロース、及びこれらの混合物が挙げられる。本発明の別の実施形態では、固体媒体はリサイクルガラスである。
【0061】
本発明の一実施形態では、固体媒体を撹拌しつつ、特定の時間にわたり、容器内で固体媒体をポリマーと接触させる。別の実施形態では、固体媒体は、固液分離工程を介しより高純度のポリマー溶液から除去される。固液分離工程の非限定例としては、濾過、傾斜、遠心分離、及び沈降が挙げられる。本発明の別の実施形態では、混入物を含むポリマー溶液は、固体媒体の静止層を通過する。本発明の別の実施形態では、固体媒体の静止層の高さ又は長さは5cm超である。本発明の別の実施形態では、固体媒体の静止層の高さ又は長さは10cmである。本発明の別の実施形態では、固体媒体の静止層の高さ又は長さは20cm超である。本発明の別の実施形態では、固体媒体は、ポリマーを所望の純度に維持するため必要に応じて置き換えられる。更に別の実施形態では、固体媒体は、精製工程で再生及び再使用される。別の実施形態では、逆洗工程中、固体媒体を流動化させることで固体媒体が再生される。
【0062】
一実施形態では、再生されたポリエチレンの精製方法は、ポリエチレンが流体溶媒に溶解した状態を維持する温度及び圧力にて、ポリエチレン/流体溶媒溶液を固体媒体と接触させる工程を含む。別の実施形態では、回収ポリエチレンを精製する方法は、約90℃〜約220℃の温度にてポリエチレン/n−ブタン溶液を固体媒体と接触させる工程を含む。別の実施形態では、回収ポリエチレンを精製する方法は、約100℃〜約200℃の温度にてポリエチレン/n−ブタン溶液を固体媒体と接触させる工程を含む。別の実施形態では、回収ポリエチレンを精製する方法は、約130℃〜約180℃の温度にてポリエチレン/n−ブタン溶液を固体媒体と接触させる工程を含む。別の実施形態では、回収ポリエチレンを精製する方法は、約6.89MPa(1,000psig)〜約82.74MPa(12,000psig)の圧力にてポリエチレン/n−ブタン溶液を固体媒体と接触させる工程を含む。別の実施形態では、回収ポリエチレンを精製する方法は、約13.79MPa(2,000psig)〜約68.95MPa(10,000psig)の圧力でポリエチレン/n−ブタン溶液を固体媒体と接触させる工程を含む。別の実施形態では、回収ポリエチレンを精製する方法は、約27.58MPa(4,000psig)〜約41.37MPa(6,000psig)の圧力でポリエチレン/n−ブタン溶液を固体媒体と接触させる工程を含む。
【0063】
別の実施形態では、回収ポリエチレンを精製する方法は、約90℃〜約220℃の温度にてポリエチレン/プロパン溶液を固体媒体と接触させる工程を含む。別の実施形態では、回収ポリエチレンを精製する方法は、約100℃〜約200℃の温度にてポリエチレン/プロパン溶液を固体媒体と接触させる工程を含む。別の実施形態では、回収ポリエチレンを精製する方法は、約130℃〜約180℃の温度にてポリエチレン/プロパン溶液を固体媒体と接触させる工程を含む。別の実施形態では、回収ポリエチレンを精製する方法は、約20.68MPa(3,000psig)〜約137.90MPa(20,000psig)の圧力にてポリエチレン/プロパン溶液を固体媒体と接触させる工程を含む。別の実施形態では、回収ポリエチレンを精製する方法は、約34.47MPa(5,000psig)〜約103.42MPa(15,000psig)の圧力にてポリエチレン/プロパン溶液を固体媒体と接触させる工程を含む。別の実施形態では、回収ポリエチレンを精製する方法は、約55.16MPa(8,000psig)〜約75.84MPa(11,000psig)の圧力にてポリエチレン/プロパン溶液を固体媒体と接触させる工程を含む。
【0064】
分離
本発明の一実施形態では、回収ポリエチレンを精製する方法は、ポリマーが溶液から沈殿し、もはや流体溶媒に溶解しなくなる温度及び圧力にて、より高純度のポリマーを流体溶媒から分離する工程を含む。別の実施形態では、流体溶媒からのより高純度のポリマーの沈殿は、一定温度にて圧力を減少させることにより達成される。別の実施形態では、流体溶媒からのより高純度のポリマーの沈殿は、一定圧力にて温度を低下させることにより達成される。別の実施形態では、流体溶媒からのより高純度のポリマーの沈殿は、一定圧力にて温度を上昇させることにより達成される。別の実施形態では、流体溶媒からのより高純度のポリマーの沈殿は、温度及び圧力の両方を低下させることにより達成される。溶媒は、温度及び圧力の制御により液体から蒸気相へと一部又は完全に転換され得る。別の実施形態では、沈殿させたポリマーは、分離工程中の溶媒の温度及び圧力の制御により、流体溶媒を100%蒸気相に完全に転換することなく流体溶媒から分離される。沈殿させたより高純度のポリマーの分離は、液−液分離又は液−固分離の何らかの方法により達成される。液−液又は液−固分離の非限定例としては、濾過、傾斜、遠心分離、及び沈降が挙げられる。
【0065】
一実施形態では、回収ポリエチレンを精製する方法は、溶液からポリエチレンを沈殿させる温度及び圧力にて、ポリエチレン/流体溶媒溶液からポリエチレンを分離する工程を含む。別の実施形態では、回収ポリエチレンを精製する方法は、約0℃〜約220℃の温度でポリエチレン/n−ブタン溶液からポリエチレンを分離する工程を含む。別の実施形態では、回収ポリエチレンを精製する方法は、約50℃〜約175℃の温度でポリエチレン/n−ブタン溶液からポリエチレンを分離する工程を含む。別の実施形態では、回収ポリエチレンを精製する方法は、約100℃〜約160℃の温度でポリエチレン/n−ブタン溶液からポリエチレンを分離する工程を含む。別の実施形態では、回収ポリエチレンを精製する方法は、約0MPa(0psig)〜約24.58MPa(4,000psig)の圧力でポリエチレン/n−ブタン溶液からポリエチレンを分離する工程を含む。別の実施形態では、回収ポリエチレンを精製する方法は、約0.34MPa(50psig)〜約13.79MPa(2,000psig)の圧力でポリエチレン/n−ブタン溶液からポリエチレンを分離する工程を含む。別の実施形態では、回収ポリエチレンを精製する方法は、約0.52MPa(75psig)〜約6.89MPa(1,000psig)の圧力でポリエチレン/n−ブタン溶液からポリエチレンを分離する工程を含む。
【0066】
別の実施形態では、回収ポリエチレンを精製する方法は、約−42℃〜約220℃の温度でポリエチレン/プロパン溶液からポリエチレンを分離する工程を含む。別の実施形態では、回収ポリエチレンを精製する方法は、約0℃〜約150℃の温度でポリエチレン/プロパン溶液からポリエチレンを分離する工程を含む。別の実施形態では、回収ポリエチレンを精製する方法は、約50℃〜約130℃の温度でポリエチレン/プロパン溶液からポリエチレンを分離する工程を含む。別の実施形態では、回収ポリエチレンを精製する方法は、約0MPa(0psig)〜約103.42MPa(15,000psig)の圧力でポリエチレン/プロパン溶液からポリエチレンを分離する工程を含む。別の実施形態では、回収ポリエチレンを精製する方法は、約0.34MPa(50psig)〜約34.48MPa(5,000psig)の圧力でポリエチレン/プロパン溶液からポリエチレンを分離する工程を含む。別の実施形態では、回収ポリエチレンを精製する方法は、約0.52MPa(75psig)〜約6.89MPa(1,000psig)の圧力でポリエチレン/プロパン溶液からポリエチレンを分離する工程を含む。
【0067】
III 試験方法
本明細書に記載の試験方法は、ポリマーを精製する様々な方法の有効性を評価するために使用される。具体的には、記載された方法は、色及び透光性/清澄性の向上(すなわち、回収ポリエチレンの色及び不透明度を未着色のバージンポリマーに近づける)、元素混入の低減又は排除(すなわち、重金属を除去する)、非可燃性の混入物の低減又は排除(すなわち、無機フィラー)、及び揮発性化合物の低減又は排除(特に、回収ポリエチレンの悪臭に関与する揮発性化合物)における所定の精製法の有効性を示す。
【0068】
色測定及び不透明度測定:
ポリマーの色及び不透明度/透光性は、ポリマーがポリマーから製造された物品に所望される視覚的な美しさを達成可能であるか否かを判定する重要なパラメーターである。回収ポリエチレン、特に消費者による使用後に回収されたポリエチレンは、典型的には、残留する顔料、充填剤、及びその他の混入物に起因して暗色でありかつ不透明である。したがって、色及び不透明度の測定値は、ポリマーを精製する方法の有効性を判定するにあたり重要なパラメーターである。
【0069】
色測定の前に、ポリマーの粉末又はペレットのいずれかのサンプルを、幅30mm×長さ30mm×厚み1mmの正方形の試験片(角丸)に圧縮成形した。ステンレス製プラテンの間の接触−剥離層として清浄で未使用のアルミニウム箔を使用して、粉末サンプルをシートへと冷温圧縮することにより、かかる粉末サンプルを室温(約20〜23℃)にて最初に高密度化した。次に、この低温圧縮した粉末又はペレットのいずれか約0.85gを、200℃に予熱したCarver Press Model C(Carver,Inc.,Wabash,IN 46992−0554 USA)で、アルミニウムプラテンと、未使用のアルミニウム箔剥離層と、前述の四角形の試験片の寸法に一致するキャビティを有するステンレス鋼製シムとを使用し試験片へと圧縮した。加圧する前にサンプルを5分間加熱した。5分後、次に少なくとも1.81メートルトン(2トン)の水圧でプレス機に少なくとも5秒間圧をかけた後、解放した。金型スタックを取り外し、冷却のため、厚みのある2枚の平らな金属製ヒートシンク間に配置した。次に、アルミ箔の接触剥離層をサンプルから剥ぎ取り廃棄した。少なくとも片面上で、サンプル周囲のバリを型の縁に沿って剥ぎ取った後、フォーム(form)を通してサンプルを押し出した。ボイド/バブル欠陥について各試験片を視覚的に評価し、色測定領域(最小直径17.78mm(0.7”))において欠陥のないサンプルのみを色測定に使用した。
【0070】
国際照明委員会(CIE)によるL
*、a
*、b
*三次元色空間を用い、各サンプルの色を評価した。次元L
*はサンプルの明るさの尺度であり、L
*=0は最も暗い黒色のサンプルに相当し、L
*=100は最も明るい白色のサンプルに相当する。次元a
*はサンプルの赤色又は緑色の尺度であり、a
*が正の値であると赤色に相当し、a
*が負の値であると緑色に相当する。次元b
*はサンプルの青色又は黄色の尺度であり、b
*が正の値であると青色に相当し、b
*が負の値であると黄色に相当する。それぞれ幅30mm×長さ30mm×厚さ1mmの四角形の試験片のL
*a
*b
*値を、HunterLab model LabScan XE分光光度計(Hunter Associates Laboratory,Inc.,Reston,VA 20190−5280,USA)で測定した。D65を標準光源とし、視野を10°とし、測定径(area diameter view)を44.45mm(1.75”)とし、内径を17.78mm(0.7”)として分光光度計を設定した。
【0071】
前述のHunterLab分光光度計をコントラスト比不透明度モードで用い、どの程度の量の光がサンプルを透過するかの尺度(すなわち、サンプルの透光性の尺度)となる不透明度を各サンプルについて求めた。測定を2回行い、各サンプルの不透明度を求めた。1回はホワイトバッキングをバックにしたサンプルの輝度値、Y
ホワイトバッキングを測定し、もう1回はブラックバッキングをバックにしたサンプルの輝度値、Y
ブラックバッキングを測定した。次に、下式2を用い輝度値をもとに不透明度を計算した:
【0073】
元素分析:
回収ポリエチレンの供給源の多くは、受容不能なほど高濃度で重金属が混入している。重金属、例えば、鉛、水銀、カドミウム、及びクロムが存在すると、食品若しくは薬品が接触する用途又は医療用デバイス用途などといったある種の用途では、回収ポリエチレンの使用が妨げられ得る。したがって、ポリマーを精製する方法の有効性を判定する際、重金属の濃度測定は重要である。
【0074】
誘導結合プラズマ質量分析法(ICP−MS)を使用して元素分析を実施した。約0.25gのサンプルを4mLの濃硝酸及び1mLの濃フッ化水素酸(HF)と組み合わせて、サンプルの入手しやすさをもとにn=2〜n=6で試料溶液を調製した。20分かけて125℃に温度を上昇させること、10分かけて250℃に温度を上昇させること、250℃で20分間保持することからなるマイクロ波試料分解(Ultrawave Microwave Digestion)プロトコルを使用して、サンプルを分解した。分解したサンプルを室温に冷却した。内部標準として100ppmのGe及びRhを0.25mL加えた後、分解したサンプルを50mLに希釈した。測定の正確性を評価するため、バージンポリマーをスパイクすることにより分解前スパイクを調製した。バージンポリマーをスパイクしたサンプルを上記と同じ手順を用いて計量し、Na、Al、Ca、Ti、Cr、Fe、Ni、Cu、Zn、Cd、及びPbを含む対象とするそれぞれ単元素標準を適量でスパイクした。「低レベルスパイク」及び「高レベルスパイク」の異なる2とおりのレベルでスパイクを調製した。各スパイクは3つずつ調製した。バージンポリマーをスパイクした他、ピペット操作中に誤差が生じていないことを検証し、プロセスの再現性について追跡するため、ブランクにもスパイクを行った。2とおりの異なるレベルでスパイクしたブランク試料も3つずつ調製し、スパイクしたバージンポリマー及び試験サンプルと同じ方法で処理した。Na、Al、Ca、Ti、Cr、Fe、Ni、Cu、Zn、Cd、及びPbを含有する0.05、0.1、0.5、1、5、10、50、100、及び500ppbの溶液により、9点較正曲線を作製した。未希釈の標準参照溶液と、内部標準として100ppmのGe及びRhを0.25mLと、4mLの濃硝酸及び1mLの濃HFと、を希釈することにより全ての較正曲線を作製した。製造元の推奨に従い最適化し、Agilentの8800 ICP−QQQMSを使用して、調製した標準、試験サンプル、及びスパイクした試験サンプルを分析した。各分析対象物についてモニターしたm/z、及び分析に使用した衝突セルガスは以下のとおりとした:Na、23m/z、H
2;Al、27m/z、H
2;Ca、40m/z、H
2;Ti、48m/z、H
2;Cr、52m/z、He;Fe、56m/z、H
2;Ni、60m/z;ガスなし;Cu、65m/z、ガスなし;Zn、64m/z、He;Cd、112m/z;H
2;Pb、206≧206、207≧207、208≧208 m/zの合計、ガスなし;Ge、72m/z、全モード;Rh、103m/z、全モード。<103m/zでは全ての元素についてGeを内部標準として使用し、>103m/zでは全ての元素についてRhを使用した。
【0075】
残留灰含量:
回収ポリエチレンの供給源の多くは、例えば、炭酸カルシウム、滑石、及びガラス繊維などの様々な充填剤を含有する。回収ポリエチレンのもとの用途では有用である一方、これらの充填剤は、回収ポリエチレンの新たな用途には望ましくない恐れのある方法でポリマーの物理特性を変化させる。したがって、ポリマー精製法の有効性を評価するときには充填剤の量を測定することが重要である。
【0076】
サンプル中の非可燃性材料(灰分含量と呼ばれることもある)を定量するため、熱重量分析(TGA)を実施した。白金製サンプルパンに約5〜15mgのサンプルを載せ、TA InstrumentsのQ500 TGAモデルの装置において、空気雰囲気下、20℃/分の速度で700℃に加熱した。サンプルを700℃の定温で10分間保持した。等温保持後、700℃にて残渣塊の割合を測定した。
【0077】
臭気分析:
それぞれのサンプル約3gを20mLのガラスバイアルに入れ、室温にて少なくとも30分間サンプルを平衡化して、臭気感覚の分析を行った。平衡化後、各バイアルを開けて、ヘッドスペースの匂いをかぎ(ウサギが匂いをかぐときのように)、訓練を受けた評価者により臭気強度及び記述子プロファイルを求める。以下のスケールをもとに臭気強度を評価した:
5=非常に強い
4=強い
3=中等度
2=弱〜中等度
1=弱い
0=無臭
【実施例】
【0078】
以下の実施例は、本発明の範囲内にある実施形態を更に説明及び実証する。これらの実施例は、例示目的のためにのみ提供され、本発明の趣旨及び範囲から逸脱することなくそれらの多くの変更が可能であることから、本発明を限定するものとして解釈されるべきではない。
【0079】
(実施例1)
消費者による使用後に得られるリサイクル高密度ポリエチレンのサンプルは、リサイクル樹脂のサプライヤーより供給を受けた。消費者による使用後にリサイクルされたポリエチレンは、「ナチュラルカラー」として分類される英国製のものとした。本明細書に開示する試験方法を用い、提供されたままの状態のペレットを特性評価した。得られたデータを表1に要約する。この例は、消費者による使用後、精製前にリサイクルされた、代表的なポリエチレン樹脂の特性を示すことを目的とする。
【0080】
ペレット及び相当する四角形の試験片は、四角形の試験片のL
*a
*b
*値において示されるとおりオフホワイト色であった。実施例1のサンプルの不透明度は約81.61%であった。四角形の試験片の画像を実施例1として
図3に示す。
【0081】
この例は、消費者による使用後に得られるリサイクルポリエチレンで見られる重金属混入についての代表的なベースラインとして提供される。その他の例と比較したとき、消費者による使用後に得られるリサイクルポリエチレンは、提供されたままの状態で最も高い重金属混入が見られる。
【0082】
実施例1のサンプルの灰分含量の値は平均して約0.8513重量%であった。この値は、消費者による使用後に得られるリサイクルポリエチレンにおいて多くの場合存在する非可燃性の物質量についてのベースラインとしても提供される。
【0083】
この例は、消費者による使用後に得られるリサイクルポリエチレンで見られる臭気化合物混入についての代表的なベースラインとしても提供される。実施例9のサンプルの臭気強度は、5点スケールで2.5であることも判明した(5が最も強い)。
【0084】
(実施例2)
実施例1に記載の、消費者による使用後に得られるリサイクルポリエチレンを、
図2に示す実験装置及び以下の手順を用い加工した。
1.237gのポリエチレンペレットを、外表面温度が175℃になるまで加熱した内径(ID)44.45mm(1.75”)及び長さ71.12cm(28”)の1.1Lの抽出カラム圧力容器に充填した。
2.容積式ポンプを使用して液体n−ブタン溶媒を約31.03MPa(4,500psig)に加圧し、2台の熱交換器を使用して約110℃の温度に予熱した後、抽出カラムの底部に導入した。
3.抽出カラムの頂部から出た流体ストリームを、IDが50.8mm(2”)でありかつ長さが約21.59cm(8.5”)の2つめの0.5Lの圧力容器に導入し、外面温度175℃にまで加熱した。第2の圧力容器には、予めビーカー内で150mLの酸化アルミニウム(Activated Alumina,Selexsorb CDX,7x14,BASF,USA)と混合しておいた150mLのシリカゲル(Silicycle Ultra Pure Silica Gels,SiliaFlash GE60,Parc−Technologies,USA)を入れた。
4.第2の圧力容器の底部から出た流体ストリームは、膨張弁から枝付き三角フラスコにかけて減圧される。減圧した流体ストリームが三角フラスコ内に入った後で、サイドアーム口を通して溶媒蒸気をベントし、フラスコ内に液体/固体を回収した。フラスコ内の材料集積が観察されなくなるまで、31.03MPa(4,500psig)でn−ブタン溶媒をシステムに通し溶出した。3.93gの白色固体を回収し、「画分1」とラベルした。
5.三角フラスコを空の清浄なフラスコに換え、次にシステムの圧力を34.47MPa(5,000psig)に上昇させた。
6.システムからの固体材料の溶出が観察されなくなるまで、システムの圧力を34.47MPa(5,000psig)に維持した。33.19gの白色固体を回収し、「画分2」とラベルした。
【0085】
34.47MPa(5,000psig)で回収した画分2のサンプルについてのデータを表1に要約する。
【0086】
この実施例で分離した画分2の固体は白色〜オフホワイトであった。これらの画分2の固体を四角形の試験片に圧縮成形した。この試験片の外見はオフホワイトであった。四角形の試験片の画像を実施例2として
図3に示す。
図3に示すとおり、試験片は未処理のPEよりも透明であり、不透明度はバージンポリエチレンと同様であった。L
*a
*b
*値も、実施例2の画分2由来の四角形の試験片が実施例1の試験片(すなわち、消費者による使用後に得られ、提供されたままの状態のポリエチレン)と比較して色が改善していることを示した。実施例2の画分2の四角形の試験片のL
*値は平均して85.20であり、平均して80.28であった実施例1の四角形の試験片のL
*値と比較してわずかに改善されていた。不透明度が平均して53.20%であった実施例2の画分2の四角形の試験片の不透明度も、不透明度が平均して約81.61%であった実施例1の四角形の試験片の不透明度値と比較して改善されていた。
【0087】
実施例2の画分2に由来するサンプルにおける重金属混入濃度も、実施例1のサンプルと比較して改善されていた。例えば、実施例2の画分2由来のサンプル中のナトリウム濃度は平均して6,620ppbであったのに対し、実施例1のサンプル中のナトリウム濃度は平均して19,800ppbであった(約67%の低減)。測定した他の全ての元素の濃度は、実施例2の画分2では、実施例1のサンプルと比較して、全て66%超低減された。
【0088】
実施例2の画分2のサンプルの灰分含量値は、灰分含量値が平均約0.8513重量%であった実施例1のサンプルと比較して低く、平均して約0.5032重量%であった。
【0089】
実施例2の画分2のサンプルの臭気強度は、5点スケールで0.5であり、臭気強度が2.5であった実施例1のサンプルの臭気強度と比較して改善されていたことが判明した(5が最も強い)。
【0090】
図4は、実施例2の精製したリサイクルポリエチレンの不透明度及び臭気強度を、未処理のリサイクルポリエチレン(実施例1)及びバージンポリエチレンの比較サンプルと比較する棒グラフである。
図4に示すとおり、実施例2の精製したリサイクルポリエチレンは、不透明度及び臭気強度が改善されていた。
【0091】
【表1】
【0092】
バージンポリエチレン比較サンプル
全ての「バージンPE」比較サンプルにはDow 6850Aポリエチレン(The Dow Chemical Company,USA)を使用した。バージンPEのペレットを、本明細書に記載の方法により四角形の試験片に加工した。バージンPEから作製した試験片の平均Lab値は、それぞれ84.51±0.97、−1.03±0.04、及び−0.63±0.12であった。四角形の試験片の平均不透明度は、34.68±0.69%であった。バージンPEのペレットの臭気強度は、5点スケールで0.5であり(5が最も強い)、「プラスチック」様と記載される臭気を有した。
【0093】
相互参照されるか若しくは関連する任意の特許又は特許公開を含めた、本明細書で引用される全ての文書は、明示的に除外又は別途限定されない限り、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。いかなる文献の引用も、それが本明細書において開示され請求されるいずれかの発明に関する先行技術であること、又はそれが単独でも若しくは他のいかなる参照とのいかなる組み合わせにおいても、このような発明を教示、示唆、若しくは開示することを認めるものではない。更に、本文書における用語の任意の意味又は定義が、参照することによって組み込まれた文書内の同じ用語の意味又は定義と矛盾する場合、本文書におけるその用語に与えられた意味又は定義が適用されるものとする。
【0094】
本発明の特定の実施形態を例示及び説明してきたが、本発明の趣旨及び範囲から逸脱せずに、他の様々な変更及び修正を行うことができることは当業者には明白であろう。したがって、本開示の範囲内にある、そのような変更及び修正の全てを添付の特許請求の範囲で扱うものとする。