(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6549306
(24)【登録日】2019年7月5日
(45)【発行日】2019年7月24日
(54)【発明の名称】車両
(51)【国際特許分類】
H01M 10/48 20060101AFI20190711BHJP
H02J 7/04 20060101ALI20190711BHJP
H02J 7/10 20060101ALI20190711BHJP
H02J 7/00 20060101ALI20190711BHJP
B60L 3/00 20190101ALI20190711BHJP
B60L 3/04 20060101ALI20190711BHJP
【FI】
H01M10/48 301
H02J7/04 L
H02J7/10 L
H02J7/00 Y
B60L3/00 N
B60L3/00 S
B60L3/04 D
【請求項の数】2
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2018-505119(P2018-505119)
(86)(22)【出願日】2016年3月15日
(86)【国際出願番号】JP2016058208
(87)【国際公開番号】WO2017158741
(87)【国際公開日】20170921
【審査請求日】2018年3月5日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(73)【特許権者】
【識別番号】598076591
【氏名又は名称】東芝インフラシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【弁理士】
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100103034
【弁理士】
【氏名又は名称】野河 信久
(74)【代理人】
【識別番号】100075672
【弁理士】
【氏名又は名称】峰 隆司
(74)【代理人】
【識別番号】100153051
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100189913
【弁理士】
【氏名又は名称】鵜飼 健
(72)【発明者】
【氏名】近藤 敦美
(72)【発明者】
【氏名】萩原 敬三
(72)【発明者】
【氏名】山本 雅秋
(72)【発明者】
【氏名】黒田 和人
(72)【発明者】
【氏名】関野 正宏
【審査官】
猪瀬 隆広
(56)【参考文献】
【文献】
特開2012−050258(JP,A)
【文献】
特開2012−079547(JP,A)
【文献】
特開2009−168720(JP,A)
【文献】
特開2011−222409(JP,A)
【文献】
特開平05−328630(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/42−10/48
B60L 1/00− 3/12
H02J 7/00− 7/12
H02J 7/34− 7/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力端子と出力端子とを備えた蓄電池装置と、
前記蓄電池装置から供給された直流電力を交流電力に変換して出力可能なインバータと、
前記インバータから出力された交流電力により駆動されるモータと、
前記蓄電池装置の前記入力端子及び前記出力端子を介して前記蓄電池装置内においてループ状に延び、前記蓄電池装置にて過温度状態であると検知された際には、蓄電装置管理ユニットおよび安全監視ユニットからの制御信号により、火災検知ラインの一端と他端とが非導通状態となる前記火災検知ラインと、
前記火災検知ラインの前記一端と前記他端とに電気的に接続され、前記火災検知ラインに電圧を印加する主回路と、を備え、
前記主回路は、前記火災検知ラインの電圧と所定の閾値とを比較する比較器を備え、前記火災検知ラインの電圧と所定の閾値との差が所定の大きさ以上となったことを検知したときに、火災検知表示灯に火災検知信号を供給する、車両。
【請求項2】
前記火災検知ラインは、前記蓄電地装置と前記インバータと前記モータとを介して、前記主回路からループ状に延びていることを特徴とする請求項1に記載の車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、蓄電池装置及び車両に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、省エネルギーを図るため、電力を蓄えて利用することにより、利用効率を向上させるべく、様々な分野において、蓄電池装置が適用されてきている。
特に、鉄道等の大量輸送車両においては、省エネルギーの効果も大きいため、より一層、高電圧、高電力容量の大型蓄電池装置の適用が望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2013−187159号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
蓄電池装置は、車両に搭載される場合には床下や車体内に配置される。蓄電池装置は高エネルギー体であって、万が一、火災が発生した場合に非常に危険な状態となり、安全性の観点からより一層のフェイルセーフ機構を装備した信頼性の高い蓄電池装置の構築が望まれている。
【0005】
本発明の実施形態は、上記に鑑みてなされたものであって、火災の兆候を検知して、より確実に安全を確保することが可能な蓄電池装置及び車両を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本実施形態による車両は、入力端子と出力端子とを備えた蓄電池装置と、前記蓄電池装置から供給された直流電力を交流電力に変換して出力可能なインバータと、前記インバータから出力された交流電力により駆動されるモータと、前記蓄電池装置の前記入力端子及び前記出力端子を介して前記蓄電池装置内においてループ状に延び、前記蓄電池装置にて過温度状態であると検知された際には
、蓄電装置管理ユニットおよび安全監視ユニットからの制御信号により、火災検知ラインの一端と他端とが非導通状態となる
前記火災検知ラインと、前記火災検知ラインの前記一端と前記他端とに電気的に接続され、前記火災検知ラインに電圧を印加する主回路と、を備え、前記主回路は、前記火災検知ラインの電圧と所定の閾値とを比較する比較器を備え、前記火災検知ラインの電圧と所定の閾値との差が所定の大きさ以上となったことを検知したときに、火災検知表示灯に火災検知信号を供給する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】
図1は、第1実施形態の蓄電池装置および車両の構成例を概略的に示すブロック図である。
【
図2】
図2は、第2実施形態の蓄電池装置および車両の構成例を概略的に示すブロック図である。
【0008】
次に図面を参照して本願の実施形態について詳細に説明する。
図1は、第1実施形態の蓄電池装置及び車両の概要構成ブロック図である。
本実施形態の車両は、インバータINVと、モータMと、運転台100と、蓄電池装置200と、火災検知ライン(信号線)L1と、を備えている。なお、本実施形態の車両は少なくとも1つの蓄電池装置200を備えるものであって、複数の蓄電池装置200を備えていてもよい。複数の蓄電池装置200は同様の構成であるので、以下の説明では1つの蓄電池装置200のみについて図面を参照して説明し、他の蓄電池装置200についての説明を省略する。
【0009】
運転台100は、火災検知表示灯(表示灯)40を備えている。火災検知表示灯40は、電源供給ライン(火災検知ラインL1)の一端と電気的に接続している。火災検知ラインL1の他端は、運転台100の電源電圧である24Vの電圧供給源と電気的に接続している。
【0010】
火災検知ラインL1は、蓄電池装置200、インバータINV、モータMなどの搭載装置を経由して運転台100からループ状に延びた信号線である。正常時には、火災検知ラインL1の両端は導通した状態である。蓄電池装置200、インバータINV、モータMなどの搭載装置において火災が検知された際には、火災検知ラインL1の一端と他端とは非導通状態となり、火災検知ラインL1の火災検知表示灯40側の電圧が変化する。火災検知表示灯40は、火災検知ラインL1の出力状態(例えば電圧)が変化することにより点灯する。
【0011】
インバータINVは、例えば、蓄電池装置200から供給される直流電流を交流電流に変換可能であり、モータMからの回生電流を直流電流に変換可能な双方向の3相交流インバータである。インバータINVは、交流電流をモータMへ出力し、直流電流を蓄電池装置200へ出力する。インバータINVは火災検知部(図示せず)を備え、火災検知部において火災が検知された際に、経由する電源供給ラインの電気的接続を切断する。
【0012】
モータMは、インバータINVから供給された交流電流により回転駆動する。モータMの回転による動力は、車軸を介して車輪(図示せず)へ伝達される。モータMは火災検知部(図示せず)を備え、火災検知部において火災が検知された際に、経由する電源供給ラインの電気的接続を切断する。
【0013】
蓄電池装置200は、複数の電池モジュールMDLと、蓄電池装置管理ユニット(BMU:Battery Management Unit)16と、安全監視ユニット(SSU:Safety Supervisor Unit)18と、電流センサ14と、コンタクタ12p、12nと、コンタクタ駆動装置10p、10nと、リレー回路(切替器)20と、入力端子TIと、出力端子TOと、を備えている。電池モジュールMDLはそれぞれ、組電池BTと、電池監視ユニット(CMU:Cell Monitoring Unit)11と、を備えている。
【0014】
電流センサ14は、低電位側の電流ラインに設けられ、蓄電池装置200の出力電流を検出し、蓄電池装置管理ユニット16と安全監視ユニット18へ検出した情報を出力する。
コンタクタ12pは、最も高電位側の電池モジュールMDLの正極端子と高電位側外部出力端子(p)との間に延びた高電位側の電流ラインに設けられている。コンタクタ12nは、最も低電位側の電池モジュールMDLの負極端子と低電位側外部出力端子(n)との間に延びた低電位側の電流ラインに設けられている。コンタクタ12p、12nは、常開接点(Normally open)を備え、電池モジュールMDLを充電する際および放電する際に閉じた状態となる。
【0015】
コンタクタ駆動装置10pは、蓄電池装置管理ユニット16および安全監視ユニット18からの信号に応じてコンタクタ12pを駆動する。コンタクタ駆動装置10nは、蓄電池装置管理ユニット16および安全監視ユニット18からの信号に応じてコンタクタ12nを駆動する。
【0016】
蓄電池装置管理ユニット16は、図示しない上位制御装置および電池監視ユニット11との間で通信可能に構成され、上位制御装置、電流センサ14および電池監視ユニット11からの信号に応じて、コンタクタ駆動装置10p、10nおよびリレー回路20の制御を行う。蓄電池装置管理ユニット16は、電池監視ユニット11から受信した電圧および温度の情報と、電流センサ14から受信した電流の情報に基づく値とを用いて、組電池BT(あるいは電池セル)それぞれのSOC(state of charge)やSOH(stage of health)の演算等を行う。蓄電池装置管理ユニット16は、電池監視ユニット11から受信した電圧および温度の情報と、電流センサ14から受信した電流の情報とにより、電池セルの安全監視を行う。蓄電池装置管理ユニット16は、例えば、MPU(Micro Processing Unit)等のプロセッサとメモリとを備えている。
【0017】
安全監視ユニット18は、電池モジュールMDLと通信可能に構成され、コンタクタ駆動装置10p、10nおよびリレー回路20の動作を制御する。安全監視ユニット18は、電池監視ユニット11から受信した電圧および温度の情報により、電池セルの安全監視を行う。安全監視ユニット18は、蓄電池装置管理ユニット16とは別に設けられ、蓄電池装置管理ユニット16が正常に動作しないときでも、電池セルの安全監視を行うことが可能に構成されている。安全監視ユニット18は、例えば、MPU等のプロセッサとメモリとを備えている。
【0018】
リレー回路20は、外部から信号が入力される入力端子TIと外部へ信号を出力する出力端子TOとの間に延びた電圧供給ライン(火災検知ラインL1の一部)の電気的接続を切替えて、電池監視ユニット11における温度検出状態により出力端子TOの出力状態を切替える。
【0019】
すなわち、リレー回路20は、運転台100からリレー回路20を経由して延びる電源供給ライン(火災検知ラインL1の一部)の電気的接続を切替える。すなわち、リレー回路20により、出力端子TOの出力状態が切替えられる。リレー回路20は、蓄電池装置200内の12Vの電源で駆動される信号により動作を制御され、電池監視ユニット11における温度検出状態に基づいて、運転台100から電源供給ラインに供給される24Vの電源信号の接続を切替える。
【0020】
リレー回路20は通常は接点を閉じた状態であり、蓄電池装置管理ユニット16および安全監視ユニット18から過温度状態に基づく制御信号を受信したときに接点を開いて電源供給ラインを非導通状態とする。
【0021】
組電池BTは、直列或いは並列に接続された複数の電池セルを備えている。電池セルは、例えば、リチウムイオン電池やニッケル水素電池等の2次電池である。
電池監視ユニット11は、蓄電池装置管理ユニット16により制御され、複数の電池セルの電圧と、組電池BT近傍の温度と、を監視する。電池監視ユニット11は、安全監視ユニット18との間で通信可能に構成され、例えば、隣接した電池モジュールMDLの電池監視ユニット11間で通信可能に構成されている。
【0022】
電池監視ユニット11は、蓄電池装置管理ユニット16により動作を制御され、組電池BTの監視を行い、監視結果を蓄電池装置管理ユニット16および安全監視ユニット18へ通知する。電池監視ユニット11は、温度検出回路11Aと電圧検出回路11Bと、図示しないMPUと、メモリと、を含む。
【0023】
温度検出回路11Aは、複数の電池セル近傍の温度を検出する温度センサを含み、複数の電池セルの温度を蓄電池装置管理ユニット16および安全監視ユニット18へ通知する。なお、温度検出回路11Aは、複数の電池セル近傍の少なくとも1ヶ所の温度を検出すればよく、全ての電池セルの近傍の温度を検出する必要はない。温度検出回路11Aから出力された温度情報に基づく値は、それぞれの温度検出回路11Aから蓄電池装置管理ユニット16および安全監視ユニット18へ供給される。
【0024】
電圧検出回路11Bは、複数の電池セルの正極端子電圧と負極端子電圧とを検出する電圧センサを含み、複数の電池セルそれぞれの電圧(正極端子電圧と負極端子電圧との差)を蓄電池装置管理ユニット16および安全監視ユニット18へ通知する。なお、電圧検出回路11Bは、電圧検出手段で検出した正極端子電圧と負極端子電圧とを蓄電池装置管理ユニット16および安全監視ユニット18へ通知してもよい。電圧検出回路11Bから出力された電圧値は、それぞれの電圧検出回路11Bから安全監視ユニット18へ供給される。
【0025】
蓄電池装置管理ユニット16は、複数の温度検出回路11Aから通知された温度情報に基づく値のそれぞれと所定の閾値(第1過温度閾値)とを比較して、それぞれの電池モジュールMDLの組電池BT(若しくは個々の電池セル)が過温度状態であるか否かを判断する。
【0026】
蓄電池装置管理ユニット16は、温度検出回路11Aから通知された温度情報に基づく温度が所定の閾値(第1過温度閾値)以上であるときに、組電池BT(若しくは個々の電池セル)が過温度状態であるとして、コンタクタ駆動装置10p、10nによりコンタクタ12p、12nを開いて、複数の電池モジュールMDLを主回路から電気的に切り離すとともに、リレー回路20により運転台100からの電源供給ラインの接点を開いて、電源供給ラインを非導通状態とし、出力端子TOの出力状態を切り替える。
【0027】
蓄電池装置管理ユニット16は、複数の電圧検出回路11Bから通知された電圧情報に基づく値のそれぞれと、所定の閾値(第1過充電閾値)とを比較して、それぞれの電池モジュールMDLの組電池BT(若しくは個々の電池セル)が過充電状態であるか否かを判断する。
【0028】
蓄電池装置管理ユニット16は、電圧検出回路11Bから通知された電圧が所定の閾値(第1過充電閾値)以上であるときに、組電池BT(若しくは個々の電池セル)が過充電状態であるとして、コンタクタ駆動装置10p、10nによりコンタクタ12p、12nを開いて、複数の電池モジュールMDLを主回路から電気的に切り離すとともに、リレー回路20により運転台100からの電源供給ラインの接点を開いて、電源供給ラインを非導通状態とし、出力端子TOの出力状態を切り替える。
【0029】
蓄電池装置管理ユニット16は、複数の電圧検出回路11Bから通知された電圧情報に基づく値のそれぞれと、所定の閾値(第1過放電閾値)とを比較して、それぞれの電池モジュールMDLの組電池BT(若しくは個々の電池セル)が過放電状態であるか否かを判断する。
【0030】
蓄電池装置管理ユニット16は、電圧検出回路11Bから通知された電圧情報に基づく電圧が所定の閾値(第1過放電閾値)未満であるときに、組電池BT(若しくは個々の電池セル)が過放電状態であるとして、コンタクタ駆動装置10p、10nによりコンタクタ12p、12nを開いて、複数の電池モジュールMDLを主回路から電気的に切り離すとともに、リレー回路20により運転台100からの電源供給ラインの接点を開いて、電源供給ラインを非導通状態とし、出力端子TOの出力状態を切り替える。
【0031】
安全監視ユニット18は、複数の温度検出回路11Aから通知された温度情報に基づく値のそれぞれと、所定の閾値(第2過温度閾値)とを比較して、それぞれの電池モジュールMDLの組電池BT(若しくは個々の電池セル)が火災初期状態であるか否かを判断する。
【0032】
安全監視ユニット18は、温度検出回路11Aから通知された温度情報に基づく温度が所定の閾値(第2過温度閾値)以上であるときに、組電池BT(若しくは個々の電池セル)が火災初期状態であるとして、コンタクタ駆動装置10p、10nによりコンタクタ12p、12nを開いて、複数の電池モジュールMDLを主回路から電気的に切り離すとともに、リレー回路20により運転台100からの電源供給ラインの接点を開いて、電源供給ラインを非導通状態とし、出力端子TOの出力状態を切り替える。
【0033】
安全監視ユニット18は、複数の電圧検出回路11Bから通知された電圧情報に基づく値のそれぞれと、所定の閾値(第2過充電閾値)とを比較して、それぞれの電池モジュールMDLの組電池BT(若しくは個々の電池セル)が過充電状態であるか否かを判断する。
【0034】
安全監視ユニット18は、電圧検出回路11Bから通知された電圧が所定の閾値(第2過充電閾値)以上であるときに、組電池BT(若しくは個々の電池セル)が過充電状態であるとして、コンタクタ駆動装置10p、10nによりコンタクタ12p、12nを開いて、複数の電池モジュールMDLを主回路から電気的に切り離すとともに、リレー回路20により運転台100からの電源供給ラインの接点を開いて、電源供給ラインを非導通状態とし、出力端子TOの出力状態を切り替える。
【0035】
安全監視ユニット18は、複数の電圧検出回路11Bから通知された電圧情報に基づく値のそれぞれと、所定の閾値(第2過放電閾値)とを比較して、それぞれの電池モジュールMDLの組電池BT(若しくは個々の電池セル)が過放電状態であるか否かを判断する。
【0036】
安全監視ユニット18は、電圧検出回路11Bから通知された電圧が所定の閾値(第2過放電閾値)未満であるときに、組電池BT(若しくは個々の電池セル)が過放電状態であるとして、コンタクタ駆動装置10p、10nによりコンタクタ12p、12nを開いて、複数の電池モジュールMDLを主回路から電気的に切り離すとともに、リレー回路20により運転台100からの電源供給ラインの接点を開いて、電源供給ラインを非導通状態とし、出力端子TOの出力状態を切り替える。
【0037】
ここで、第1過温度閾値は通常使用時の電池セルの動作温度上限であり、第2過温度閾値は、安全上の電池セルの動作温度上限であり火災初期段階における電池セルの温度である。したがって、第1過温度閾値は第2過温度閾値よりも低い値である。
【0038】
また、第1過充電閾値は通常使用時の電池セルの動作電圧上限であり、第2過充電閾値は安全上の電池セルの動作電圧上限である。第1過放電閾値は通常使用時の電池セルの動作電圧下限であり、第2過放電閾値は安全上の電池セルの動作電圧下限である。したがって、第1過充電閾値は第2過充電閾値よりも小さい値であり、第1過放電閾値は第2過放電閾値よりも大きい値である。
【0039】
なお、本実施形態では、第2過温度閾値は電池モジュールMDLの動作温度上限であって、第1過温度閾値と、電池セルの熱暴走状態であるときの下限温度との間の温度としている。これにより、電池セルが発熱を開始した火災の初期段階を検知することが可能となり、電池セルの熱暴走による火災を未然に防ぐことが可能となる。
【0040】
電池モジュールMDLの動作温度上限は、搭載される電池セルの電気化学特性により決定され、例えば100℃以下に設定されることが望ましい。実際に電池セルが発火に至るとされるのは例えば200℃以上であり、第2過温度閾値は電池セルが発火する温度よりもはるかに低い温度に設定されている。このことにより、蓄電池装置200の火災を未然に防ぐことが可能となる。また、電池セルの温度変化特性は時定数が非常に長いため、電池セルの内部発熱の事象をごく初期段階で検出することは、電池セル起因の火災を未然に防止する観点からも効果的である。なお、第2過温度閾値は100℃に限定されるものではなく、電池モジュールMDLに搭載される電池セルの特性に応じて適切な値に設定されることが望ましい。
【0041】
通常、蓄電池装置管理ユニット16は、組電池BT(或いは電池セル)が通常使用上の動作温度上限(第1過電圧閾値)以上の温度となった際に、コンタクタ12p、12nを開いて複数の電池モジュールMDLを主回路から切り離す。そのため、蓄電池装置管理ユニット16により制御されている状態において、電池モジュールMDLに火災が発生することはない。
【0042】
しかしながら、蓄電池装置管理ユニット16や他の何らかの異常により、組電池BTを構成する電池セルの温度が100℃近傍に到達するような場合には、蓄電池装置200が正常に機能していない可能性があった。すなわち、電池セルの温度が100℃近傍に達する状態を検出することにより、蓄電池装置200が正常に機能していない状態を検知することができる。
本実施形態の蓄電池装置および車両では、蓄電池装置管理ユニット16とは別に設けられた安全監視ユニット18により蓄電池装置200の異常を検知し、電池セルが発火する200℃よりも十分低い温度において、火災検知表示灯40により運転台100へ火災の兆候を通知することにより、より確実に安全を確保することを実現している。
【0043】
すなわち、本実施形態の蓄電池装置および車両では、安全監視ユニット18は、電池モジュールMDLから供給された温度が第2温度閾値以上であるときに、リレー回路20により電源供給ラインの電気的接続を切り離す。火災検知表示灯40は、出力端子TOの出力状態に応じて点灯する。すなわち、火災検知表示灯40は、電源供給ラインの電圧が変化したことにより点灯する。これと同時に、安全監視ユニット18は、コンタクタ12p、12nを開いて、複数の電池モジュールMDLを主回路から切り離す。したがって、車両の運転手は、火災検知表示灯40の点灯により車両が初期火災段階であることを知ることが可能となり、早期に火災に対する対応を取ることが可能となり、安全性を確保することができる。
すなわち、本実施形態によれば、火災の兆候を検知して、より確実に安全を確保することが可能な蓄電池装置及び車両を提供することができる。
【0044】
次に、第2実施形態の蓄電池装置および車両について図面を参照して詳細に説明する。
図2は、第2実施形態の蓄電池装置および車両の構成例を概略的に示すブロック図である。本実施形態の蓄電池装置200は上述の第1実施形態の蓄電池装置200と同様の構成であるので、以下では説明を省略する。本実施形態では、蓄電池装置200から火災検知表示灯40へ火災を通知する経路が上述の第1実施形態と異なっている。
【0045】
本実施形態の車両は、インバータINVと、モータMと、運転台100と、蓄電池装置200と、車両駆動用主回路300と、火災検知ラインL2と、を備えている。なお、本実施形態の車両は少なくとも1つの蓄電池装置200を備えるものであって、複数の蓄電池装置200を備えていてもよい。
【0046】
車両駆動用主回路300は、例えば110Vの電源電圧により駆動される。車両駆動用主回路300から、蓄電池装置200の入力端子TIおよび出力端子TOを介してループ状に火災検知ライン(信号線)L2が延びている。車両駆動用主回路300は火災検知ラインL2を介して110Vの電源電圧を蓄電池装置200のリレー回路20へ供給する。
【0047】
車両駆動用主回路300は、電源供給ラインの電圧と所定の閾値(例えば110V)とを比較する比較器を備え、電源供給ラインの電圧と所定の閾値との差が所定の大きさ以上となったときに、火災検知表示灯40へ火災検知信号を供給する。
【0048】
リレー回路20は、車両駆動用主回路300から延びた電圧供給ライン(火災検知ラインL2の一部)の接続を切替える。リレー回路20は通常は接点を閉じた状態であり、蓄電池装置管理ユニット16および安全監視ユニット18から過温度状態に基づく制御信号を受信したときに接点を開いて電源供給ライン(火災検知ラインL2の一部)を非導通状態とする。
【0049】
なお、車両駆動用主回路300とインバータINVとの間、および車両駆動用主回路300とモータMとの間には、同様に、火災検知ラインL2がループ状に延びている。車両駆動用主回路300は、火災検知ラインL2の電圧によりインバータINVおよびモータMの火災の判定を行うことができる。車両駆動用主回路300は、インバータINVから延びた火災検知ラインL2およびモータMから延びた火災検知ラインL2の電圧を所定の閾値(例えば110V)と比較し、差が所定の大きさ以上となったときに、火災検知表示灯40へ火災検知信号を供給する。
火災検知表示灯40は、車両駆動用主回路300から火災検知信号を受信したときに点灯する。
【0050】
上記のように、本実施形態の蓄電池装置200および車両によれば、蓄電池装置200の火災の兆候を検知することができ、上述の第1実施形態と同様の効果を得ることができる。すなわち、本実施形態によれば、火災の兆候を検知して、より確実に安全を確保することが可能な蓄電池装置及び車両を提供することができる。
【0051】
なお、上述の第2実施形態では、車両駆動用主回路300は、蓄電池装置200、インバータINVおよびモータMとは独立して設けられていたが、車両に搭載されている機器の制御基板と一体に設けられても構わない。例えば、車両駆動用主回路300は、インバータINVの制御基板と一体に設けられ、インバータINVの内部に形成されてもよい。その場合であっても、上述の第2実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0052】
また、上述の第1実施形態および第2実施形態では、コンタクタ12p、12nは複数の電池モジュールMDLの正極側と負極側とのそれぞれに配置されていたが、正極側と負極側との両側にコンタクタを設ける必要はない。コンタクタは、複数の電池モジュールMDLの正極側と負極側との少なくとも一方側と主回路との接続を切替えるものであれば構わない。
【0053】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0054】
10n…コンタクタ駆動装置、10p…コンタクタ駆動装置、11…電池監視ユニット(CMU)、11A…温度検出回路、11B…電圧検出回路、12n…コンタクタ、12p…コンタクタ、14…電流センサ、16…蓄電池装置管理ユニット(BMU)、18…安全監視ユニット(SSU)、20…リレー回路(切替器)、40…火災検知表示灯(表示灯)、100…運転台、200…蓄電池装置、300…車両駆動用主回路、TI…入力端子、TO…出力端子、L1、L2…火災検知ライン。