特許第6549315号(P6549315)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6549315
(24)【登録日】2019年7月5日
(45)【発行日】2019年7月24日
(54)【発明の名称】血糖値の非侵襲的測定のための装置
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/1455 20060101AFI20190711BHJP
【FI】
   A61B5/1455ZDM
【請求項の数】12
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2018-512210(P2018-512210)
(86)(22)【出願日】2015年10月5日
(65)【公表番号】特表2018-530373(P2018-530373A)
(43)【公表日】2018年10月18日
(86)【国際出願番号】IB2015001788
(87)【国際公開番号】WO2017060746
(87)【国際公開日】20170413
【審査請求日】2018年3月12日
(73)【特許権者】
【識別番号】518070180
【氏名又は名称】ディア−ビット リミテッド
【氏名又は名称原語表記】DIA−VIT LTD.
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100142907
【弁理士】
【氏名又は名称】本田 淳
(72)【発明者】
【氏名】アルコ、ゾラン
(72)【発明者】
【氏名】トファント、タデイ
【審査官】 ▲高▼ 芳徳
(56)【参考文献】
【文献】 特開2014−147404(JP,A)
【文献】 特表平09−510884(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/145 − 5/1495
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
皮膚および/または組織で反射された電磁放射線を測定することによって哺乳類、好ましくは人の血糖値を非侵襲的に測定するための装置であって、
430nm〜480nmの波長を有する青色光源と、
700nm〜3000nmの波長を有する赤外線(IR)放射源と、
前記皮膚および/または組織で反射された青色光およびIR放射を測定し、前記青色光およびIR放射を、電流または電圧の変化に変換するセンサユニットと、
1つ以上のアナログおよび/またはデジタル周波数フィルタからなり、信号をフィルタリングするための周波数フィルタリングセットであって、青色光を測定する際には青色光の振動周波数Fとその周辺とを含む決定された周波数帯域を除いて前記信号のすべての周波数をフィルタし、IR放射を測定する際にはIR放射の振動周波数FIRとその周辺とを含む決定された周波数帯域を除いて前記信号のすべての周波数をフィルタする周波数フィルタリングセットと、
プログラム用のメモリと測定結果の記憶および処理用のメモリとを有する処理ユニットと、を備え、前記処理ユニットは、
a)100kHz〜300kHzの範囲から選択される前記振動周波数Fと、1秒〜10秒の範囲から選択される励起期間Tとによって前記青色光源の励起を制御し、
b)1kHz〜50kHzの範囲から選択される前記振動周波数FIRと、1秒〜10秒の範囲から選択される励起期間TIRとによって前記IR放射源の励起を制御し、
c)前記周波数フィルタリングセットの周波数を制御し、
d)前記青色光の個々の測定間隔、および前記青色光とは別途測定される前記IR放射の個々の測定間隔に基づいて、前記フィルタされた信号から探索信号値を取得し、
e)前記探索信号値に基づいて、予め設定された数学アルゴリズムを用いて前記血糖値を計算し、
前記フィルタされた信号における前記探索信号値は、青色光反射を測定する場合には各測定間隔における絶対最大電圧値UBmaxと絶対最小電圧値UBminであり、IR放射の反射を測定する場合には各測定間隔における絶対最大電圧値UIRmaxと絶対最小電圧値UIRminであり、
前記血糖値は、次式、
【数1】
によって計算され、ここで、
【数2】
であり、
【数3】
であることを特徴とする装置。
【請求項2】
前記青色光源は、460nmの波長を有し、7秒の前記励起期間Tにおいて200kHzの前記振動周波数Fにて振動する青色LEDであり、前記IR放射源は、940nmの波長を有し、7秒の前記励起期間TIRにおいて10kHzの前記振動周波数FIRにて振動するIR−LEDであり、前記センサユニットは、300nm〜1100nmまでの検出波長範囲を有するフォトダイオードであり、前記青色LEDおよびIR−LEDは、前記フォトダイオードに可能な限り接近して前記装置に搭載されることを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記周波数フィルタリングセットは、「ハイパス」周波数フィルタと、「バンドパス」周波数フィルタと、ADCコンバータとを含み、前記ADCコンバータは、青色光に対して少なくとも20ビット分解能を有し、IR放射に対して少なくとも10ビット分解能を有することを特徴とする請求項1または2に記載の装置。
【請求項4】
前記周波数フィルタリングセットはさらに、青色光反射を測定する場合に1:1000の増幅率を有するトランスインピーダンス増幅器と、IR放射の反射を測定する場合に1:1の増幅率を有するトランスインピーダンス増幅器とを含むことを特徴とする請求項1〜3の何れか一項に記載の装置。
【請求項5】
前記血糖値を表示するためのディスプレイと、前記装置をプログラムおよび制御可能であり、かつ/または前記血糖値を測定し演算した値をコンピュータまたは他の装置に送信可能な通信回路と、前記装置をオン/オフして表示設定を制御するための少なくとも1つのボタンとをさらに備えることを特徴とする請求項1〜4の何れか一項に記載の装置。
【請求項6】
前記装置を身体、好ましくは手首上の測定箇所に固定するためのストラップと、バッテリまたは他の電源とを備えることを特徴とする請求項1〜5の何れか一項に記載の装置。
【請求項7】
血糖値を測定するための方法であって、
青色光源とIR放射源とセンサユニットが身体の測定位置の皮膚および/または組織に密着するように前記身体の測定位置に装置を取り付けること、
前記青色光源を用いて測定することであって、
a)前記青色光源を期間Tにおいて周波数Fにて振動させるように励起すること、
b)前記センサユニットにより反射光を検出し、検出された光を電気信号に変換すること、
c)青色光の振動周波数Fとその周辺とを含む特定の周波数帯域を除くすべての周波数信号をフィルタする周波数フィルタリングセットによって、前記センサユニットからの信号をフィルタリングすること、
d)青色光反射の測定時において、前記フィルタされた信号から探索信号値を取得すること、を含む前記青色光源を用いて測定すること、
前記IR放射源を用いて測定することであって、
a)前記IR放射源を期間TIRにおいて周波数FIRにて振動させるように励起すること、
b)前記センサユニットによりIR放射の反射を検出し、検出されたIR放射を電気信号に変換すること、
c)IR放射の振動周波数FIRとその周辺とを含む特定の周波数帯域を除くすべての周波数信号をフィルタする前記周波数フィルタリングセットによって、前記センサユニットからの信号をフィルタリングすること、
d)前記IR放射の反射の測定時において、前記フィルタされた信号から探索信号値を取得すること、を含む前記IR放射源を用いて測定すること、
前記青色光反射の測定による前記探索信号値と前記IR放射の反射の測定による前記探索信号値とを用いて、所定の数学アルゴリズムにより前記血糖値を計算すること、を備え、前記青色光源を用いた測定と前記IR放射源を用いた測定とは、互いに独立して任意の順序で行われ
前記フィルタされた信号における前記探索信号値は、青色光反射を測定する場合には各測定間隔における絶対最大電圧値UBmaxと絶対最小電圧値UBminであり、IR放射の反射を測定する場合には各測定間隔における絶対最大電圧値UIRmaxと絶対最小電圧値UIRminであり、
前記血糖値は、次式、
【数4】
によって計算され、ここで、
【数5】
であり、
【数6】
であることを特徴とする、方法。
【請求項8】
前記青色光源を用いた測定時における信号フィルタリングは、
a)増幅率1000を有するトランスインピーダンス増幅器を用いた信号増幅と同時に、電流である電気信号を電圧に変換すること、
b)200kHzの周波数成分Fとその周辺の帯域±10%とを除くすべての周波数成分を信号からフィルタする「バンドパス」フィルタによる信号フィルタリングを行うこと、
c)少なくとも20ビット解像度を有するADCコンバータによってデジタル形式への信号の変換を行うこと、を含むことを特徴とする請求項に記載の方法。
【請求項9】
前記IR放射源を用いた測定時における信号フィルタリングは、
a)1:1の増幅率を有するトランスインピーダンス増幅器に前記センサユニットからの信号を送り、電流である電気信号を電圧に変換すること、
)「ハイパス」周波数フィルタを用いて信号フィルタリングを行うこと、
c)前記フィルタされた信号から周囲成分を差し引くこと、
d)少なくとも10ビット解像度を有するADCコンバータによってデジタル形式への信号の変換を行うこと、
e)10kHzの周波数成分FIRとその周辺の帯域±10%とを除くすべての周波数成分を信号からフィルタする「バンドパス」フィルタによる信号フィルタリングを行うこと、を含むことを特徴とする請求項7または8に記載の方法。
【請求項10】
前記周囲成分の測定はIR信号の測定前またはIR信号の測定後に行われ、光源または放射源の最後の励起と前記周囲成分の測定との間は少なくとも0.5秒経過している必要があり、前記周囲成分の測定中に前記IR放射源および前記青色光源は励起されてはならず、それにより得られた信号が前記トランスインピーダンス増幅器により増幅され、測定された前記IR信号と同じ比率で電流から電圧に変換されることを特徴とする請求項に記載の方法。
【請求項11】
前記装置が前記身体の測定位置に適切に装着されていることを確認する検査処理が前記測定の開始前に実行され、前記検査処理において、前記振動周波数Fにより前記青色光源が励起されるかまたは前記振動周波数FIRにより前記IR放射源が励起され、前記センサユニットは、前記皮膚および/または組織で反射された青色光またはIR放射を検出して、その青色光またはIR放射を前記周波数フィルタリングセットによりフィルタされる信号に変換し、プロセッサユニットは、前記フィルタされた信号を予め設定された値と比較し、得られた前記信号が前記予め設定された値よりも大きい場合、前記反射が十分に強く、前記装置が前記身体の部分に適切に取り付けられていることを示すことを特徴とする請求項10の何れか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記測定の方法は連続的に複数回繰り返され、それによって得られた良好な測定結果が統計的に処理され、すべての測定値の平均値または±誤差の値としてユーザに提供されることを特徴とする請求項11の何れか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の対象は、皮膚および/または体組織での電磁放射の反射を測定することによって、皮膚を突き抜いたり皮膚に穴を開けたりするなどの侵襲的サンプリングを行うことを必要とせず、哺乳類、主に、人の血糖値を測定可能とする装置である。この装置は、可視スペクトルの青色部分と近赤外線(IR)放射とを電磁放射源として使用する。この装置は、医療診断分野で機能し、本質的にはユーザが例えば手首に装着できるように携帯可能に設計される。
【背景技術】
【0002】
血糖値に関する情報は、特に糖尿病患者にとって重要である。糖尿病(I型およびII型)は潜在的に生命を脅かす疾患であるが、糖尿病の人が完全に正常で活発な生活を送ることができるように血糖値を適切に管理することによって糖尿病を上手く制御することができる。糖尿病を上手くコントロールするには、血糖値を定期的に管理することが重要であり、BSL(血糖値)を毎日監視したり1日に数回監視したりする必要がある。糖尿病の複雑な形態を有する患者は、測定されたBSLに基づいて、また、それら患者に対して計画された栄養療法に依存して、インスリンの適切な投与量を決定する。現在、大部分の糖尿病患者は、通常、穿刺によって血液サンプルを取得し、その血液サンプルを試験紙に適用し、その試験紙を測定装置に挿入することを含む侵襲性の標準的なBSL制御手段を用いる。患者によってはBSLを1日に数回監視する必要があるため、このような侵襲的な手段は不快で苦痛である。このため、血糖値の非侵襲的測定を可能にする種々の手段が開発されている。
【0003】
特許文献1は、BSL測定の選択肢として100Hz〜1500Hzの周波数の超音波と7000Hz〜10000Hzの周波数の超音波とを使用する装置および手段を記載している。この装置は可視光のスペクトルを使用せず、携帯可能ではない。
【0004】
特許文献2は、いくつかの波長のマイクロ波を使用する装置を記載している。この装置は共鳴室を有し、この共鳴室はマイクロ波を受信して必要な信号を発振する。適切な量の組織が共振室内に入り込むように、その共振室の開口部に指を押し付ける。これにより、組織内の血糖値を示す発振周波数が変化する。特定の周波数に応じて必要な信号が発振されることでBSLの計算に使用される。この装置は、指の先端でのみBSLの測定を行うことが可能である。また、可視スペクトルの光を使用しない。
【0005】
特許文献3は、光ファイバを介して測定点に伝送される種々のレーザ光源を用いて複数の血液パラメータを測定する装置を記載している。この装置は、機能を実現するために、多数の光および電気フィルタ、光増幅器、処理ユニットを必要とする。従って、大きすぎるために日常的使用のために持ち運びができず、移動性の問題が解決されない。この装置は、1400nm〜2500nmおよびそれ以上の波長の非可視光スペクトルを用いる。
【0006】
手首における血糖値の非侵襲的測定を可能にする解決策は、特許文献4に記載されている。この装置は、中赤外線レーザを使用して血糖値を検出する。レーザによって照射された光は光ファイバを介して装置に伝送され、装置が受信する反射に基づいて血糖値が計算される。この装置は、1400nm波長以上の非可視光スペクトルを使用する。
【0007】
特許文献5は、非可視光スペクトルの光源を使用して非侵襲的な血液測定を行う装置を記載している。この装置は、光ビームを増幅するレンズシステムによって相互接続されるいくつかの光源を特徴とする。光ビームはサンプルに集束され、その下に位置する検出器がサンプルを透過した光の量を検出し、血液中の種々の物質の濃度を計算する。この装置は、反射光ではなく透過光を測定する。また、この装置は携帯性がなく、病院での使用が意図されている。
【0008】
また、血糖値を測定するために青色光源が使用されることが知られている。この場合、血液中の糖濃度は、尿サンプルを透過した光に基づいて決定される。サンプル中のグルコースは青色光を吸収するので、測定された透過光の量はグルコースの量に直接依存する。サンプル中のグルコースが多いほど、測定結果が低くなる(非特許文献1参照)。
【0009】
他の既知の方法は、糖化ヘモグロビンに基づいて経時的に平均血糖値を決定することであり、この場合、IR光の吸収を測定することによって糖化ヘモグロビンの量が非侵襲的に測定される。血液中のグルコースの量は、測定された糖化ヘモグロビンの量に正比例する。この方法は、現在の血糖値を決定することを可能としない(非特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】露国特許第2506893号明細書
【特許文献2】米国特許第9078606号明細書
【特許文献3】国際公開第2014/105520
【特許文献4】米国特許出願公開第2015/0112170号
【特許文献5】国際公開第95/019562
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】Abidin M.S., Rajak A., Salam R.A., Munir M.M., Khairurrijal K. (2015), “Measurement of Glucose in Blood Using a Simple Non-Invasive Method”, Science Forum Materials, Vol.827, pp.105-109
【非特許文献2】Nathan D.M., Kuenen J., Borg R., Zheng H., Schoenfeld D., Heine R.J. (2008), “Translating the A1C Assay into Estimated Average Glucose Values”, Diabetes Care 31 (8): 1473-8
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
これまで、皮膚または体組織で反射される電磁放射が測定される場合において、2つの波長の電磁放射の組み合わせ、すなわち、可視スペクトル光とIR放射との組み合わせを用いて、哺乳類、主に、人の非侵襲的な血糖値測定に利用可能とした解決策はない。
【0013】
本発明が解決する技術的課題は、(1)反射光を用いた血糖値測定のための非侵襲的方法を確定することであって、この方法は、患者が血糖値自体を測定するために使用する市場に存在する標準的な血液サンプリング方法を置き換えるのに十分に正確である必要があること、および(2)この方法を用いた血糖値測定用の装置の構築であって、この装置は、好ましくは携帯用であり、測定された反射光の信号を適切なフィルタおよび数学的処理を使用して現在の血糖値を計算するために使用することにある。
【0014】
本発明は、以下でさらに説明され、本発明による装置および測定処理を示す実施形態および図面によって提示される。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明による装置は、
430nm〜480nm、好ましくは、460nmの波長を有する青色光源であって、提示される実施形態では青色LEDである青色光源と、
700nm〜3000nm、好ましくは、940nmの波長を有する赤外線(IR)照射源であって、提示される実施形態ではIR−LEDであるIR照射源と、
皮膚および/または組織で反射された青色光およびIR放射を測定し、青色光およびIR放射を、抵抗、電流、または電圧の変化に変換するセンサユニットと、を含む。センサユニットは、青色光およびIR放射を変換するのに十分に大きな波長範囲を有する必要がある。ただし、狭い範囲を有する2つのセンサユニット、つまり、青色光用とIR放射用との別々のセンサユニットを使用することも可能である。好ましい実施形態では、1つのセンサニット、すなわち300nm〜1100nmの検出波長範囲を有するフォトダイオードが使用され、その出力において、光/放射の強度に大部分が正比例する電流を生成する。
【0016】
また、装置は、センサユニットからの信号をフィルタリングする周波数フィルタリングセットを含む。フィルタリングは、検出された反射青色光または反射IR放射がフィルタリングされるかどうかに依存する。周波数フィルタリングセットは、1つ以上のアナログおよび/またはデジタル周波数フィルタからなり、青色光を測定する場合には、青色光の振動周波数Fとその周辺とを含む周波数帯域を除いて信号のすべての周波数をフィルタし、IR放射を測定する場合には、IR放射の振動周波数FIRとその周辺とを含む周波数帯域を除いて信号のすべての周波数をフィルタする。既知の周波数(FおよびFIR)により有用な信号が生じ、測定されたその信号からノイズを除去するためにフィルタリングが使用されるとき、周波数フィルタリングが必要となる。提示される実施形態では、「ハイパス」周波数フィルタと、「バンドパス」フィルタと、青色光に対して少なくとも20ビット分解能を有し、IR放射に対して少なくとも10ビット分解能を有する少なくとも1つのADC変換器とが使用される。周波数フィルタリングセットは、フィルタリング前、フィルタリング中、および/またはフィルタリング後に、信号を適切に増幅し、および/または信号を電流値から電圧値にまたはその逆に変換する増幅器を任意で含み得る。提示される実施形態では、電流値を適切な電圧値に変換し、青色光反射を測定する場合には1:1000の増幅率、IR光反射を測定する場合には1:1の増幅率で信号を増幅するトランスインピーダンス増幅器が使用される。
【0017】
また、装置は、プログラム用のメモリと測定結果の記憶および処理用のメモリとを有する処理ユニットを含む。この処理ユニットは、
a)種々の実施形態において100kHz〜300kHzの範囲から選択され、好ましくは200kHzである振動周波数Fと、種々の実施形態において1秒〜10秒の範囲から選択され、好ましくは7秒である励起期間Tとによって青色光源の励起を制御し、
b)種々の実施形態において1kHz〜50kHzの範囲から選択され、好ましくは10kHzである振動周波数FIRと、種々の実施形態において1秒〜10秒の範囲から選択され、好ましくは7秒である励起期間TIRとによってIR放射源の励起を制御し、
c)周波数フィルタリングセットの周波数を制御し、
d)青色光の個々の測定間隔、および青色光とは別途測定されるIR放射の個々の測定間隔に基づいて、フィルタ信号から探索信号値を取得することであって、この測定間隔は通常は、提示される実施形態の場合のように励起間隔に等しいが、より短い間隔としてもよく、例えば、遷移現象が測定値から除去されるように、測定間隔の開始を最大0.5秒遅延させることができ、実施形態の一つでは、探索信号値は、青色光反射を測定する場合には各測定間隔における絶対最大電圧値UBmaxと絶対最小電圧値UBminであり、IR放射の反射を測定する場合には各測定間隔における絶対最大電圧値UIRmaxと絶対最小電圧値UIRminである、前記探索信号値を取得し、
e)探索信号値に基づいて、予め設定された数学アルゴリズムを用いて血糖値を計算する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明による装置の実施形態の一つを表す図。
図2】実施形態の一つに従った測定処理を表す図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明による装置は、
430nm〜480nm、好ましくは、460nmの波長を有する青色光源であって、提示される実施形態では青色LEDである青色光源と、
700nm〜3000nm、好ましくは、940nmの波長を有する赤外線(IR)照射源であって、提示される実施形態ではIR−LEDであるIR照射源と、
皮膚および/または組織で反射された青色光およびIR放射を測定し、青色光およびIR放射を、抵抗、電流、または電圧の変化に変換するセンサユニットと、を含む。センサユニットは、青色光およびIR放射を変換するのに十分に大きな波長範囲を有する必要がある。ただし、狭い範囲を有する2つのセンサユニット、つまり、青色光用とIR放射用との別々のセンサユニットを使用することも可能である。好ましい実施形態では、1つのセンサニット、すなわち300nm〜1100nmの検出波長範囲を有するフォトダイオードが使用され、その出力において、光/放射の強度に大部分が正比例する電流を生成する。
【0020】
また、装置は、センサユニットからの信号をフィルタリングする周波数フィルタリングセットを含む。フィルタリングは、検出された反射青色光または反射IR放射がフィルタリングされるかどうかに依存する。周波数フィルタリングセットは、1つ以上のアナログおよび/またはデジタル周波数フィルタからなり、青色光を測定する場合には、青色光の振動周波数Fとその周辺とを含む周波数帯域を除いて信号のすべての周波数をフィルタし、IR放射を測定する場合には、IR放射の振動周波数FIRとその周辺とを含む周波数帯域を除いて信号のすべての周波数をフィルタする。既知の周波数(FおよびFIR)により有用な信号が生じ、測定されたその信号からノイズを除去するためにフィルタリングが使用されるとき、周波数フィルタリングが必要となる。提示される実施形態では、「ハイパス」周波数フィルタと、「バンドパス」フィルタと、青色光に対して少なくとも20ビット分解能を有し、IR放射に対して少なくとも10ビット分解能を有する少なくとも1つのADC変換器とが使用される。周波数フィルタリングセットは、フィルタリング前、フィルタリング中、および/またはフィルタリング後に、信号を適切に増幅し、および/または信号を電流値から電圧値にまたはその逆に変換する増幅器を任意で含み得る。提示される実施形態では、電流値を適切な電圧値に変換し、青色光反射を測定する場合には1:1000の増幅率、IR光反射を測定する場合には1:1の増幅率で信号を増幅するトランスインピーダンス増幅器が使用される。
【0021】
また、装置は、プログラム用のメモリと測定結果の記憶および処理用のメモリとを有する処理ユニットを含む。この処理ユニットは、
a)種々の実施形態において100kHz〜300kHzの範囲から選択され、好ましくは200kHzである振動周波数Fと、種々の実施形態において1秒〜10秒の範囲から選択され、好ましくは7秒である励起期間Tとによって青色光源の励起を制御し、
b)種々の実施形態において1kHz〜50kHzの範囲から選択され、好ましくは10kHzである振動周波数FIRと、種々の実施形態において1秒〜10秒の範囲から選択され、好ましくは7秒である励起期間TIRとによってIR放射源の励起を制御し、
c)周波数フィルタリングセットの周波数を制御し、
d)青色光の個々の測定間隔、および青色光とは別途測定されるIR放射の個々の測定間隔に基づいて、フィルタ信号から探索信号値を取得することであって、この測定間隔は通常は、提示される実施形態の場合のように励起間隔に等しいが、より短い間隔としてもよく、例えば、遷移現象が測定値から除去されるように、測定間隔の開始を最大0.5秒遅延させることができ、実施形態の一つでは、探索信号値は、青色光反射を測定する場合には各測定間隔における絶対最大電圧値UBmaxと絶対最小電圧値UBminであり、IR放射の反射を測定する場合には各測定間隔における絶対最大電圧値UIRmaxと絶対最小電圧値UIRminである、前記探索信号値を取得し、
e)探索信号値に基づいて、予め設定された数学アルゴリズムを用いて血糖値を計算する。
【0022】
装置の電源は、電池または他の電力源により供給される。好ましくは、装置は、ディスプレイの背後に位置する電力バッテリによって電力が供給される。
青色光源とIR放射源とセンサユニットは測定中に皮膚および/または組織に対向し、皮膚および/または組織に密着される。好ましくは、光源/放射源およびセンサユニットは互いに隣接し、光源と放射源の双方はセンサユニットに可能な限り接近している。光/放射は皮膚や組織を透過し、その光/放射の一部は皮膚や組織で吸収される一方、その光/放射の他の部分は皮膚や組織で反射されてセンサユニットに到達する。脂肪組織の量が最も少ない身体部分、例えば手首上に光源および放射源やセンサユニットが配置されている場合に最も良い測定結果が得られる。
【0023】
任意で、装置は、BSL値を表示し、測定処理を案内し、エラー等について通知するディスプレイを含み得る。このディスプレイは、装置の上側、すなわち皮膚に接触していない側に配置される。提示される実施形態では、ディスプレイはOLED画面である。
【0024】
さらに、装置は任意で、装置をプログラムおよび制御可能であり、かつ/または測定値および計算されたBSLをPCまたは他の装置へ送信可能な通信回路、例えばブルートゥース(登録商標)を含み得る。
【0025】
装置はケースによって保護され、このケースは、提示される実施形態ではプラスチック材料からなる。光源や放射源およびセンサユニットは、可視光と赤外線を透過可能とする透明シリコーンで被膜されている。装置は、測定の実行時に日光などの外部からの影響を避けるために測定位置において皮膚に密着されている。
【0026】
装置は任意で、測定点、好ましくは手首上に装着するためのストラップを含み得る。このストラップは、好ましくは、ブレスレットまたはベルトとして実施される。
装置は任意で、装置をオン/オフして表示設定を制御するための1つ以上のボタンを含み得る。そのようなボタンは、タッチスクリーン上に実装することができる。
【0027】
本発明による装置による血糖値測定の方法は、以下のステップを含む。
装置は、光源/放射源およびセンサユニットが測定位置の皮膚/組織に密接に密接するように測定位置に装着される。
【0028】
任意で、装置が身体の測定位置、好ましくは手首上に適切に装着されていることを確認する検査処理が測定の開始前に実行され得る。この検査処理の第1ステップでは、選択された振動周波数を有する光源またはIR放射源が励起される。センサユニットは、皮膚/組織で反射された光または放射を検出して信号を出力する。この信号は、周波数フィルタリングセットによりフィルタリングされ、選択された周波数近傍の狭周波数帯域を除くすべての周波数がフィルタリングされる。プロセッサユニットは、得られた信号と予め設定された値とを比較する。得られた信号が予め設定された値より大きい場合は、反射が十分に強く、装置が測定位置にしっかり装着されていることが示される。このため、測定処理が継続される。得られた信号が予め設定された値よりも低い場合、実施形態では、ディスプレイは適切な警告を示し、これによりユーザは身体上における装置の位置を直すことができる。
【0029】
青色光源を用いた測定は、以下のように行われる。青色光源は、振動周波数Fによって測定間隔Tにおいて励起される。センサユニットは、反射光を検出し、その反射光を電気信号に、提示される実施形態では、電流に変換する。提示された実施形態において、この電気信号は、処理ユニットのメモリに格納される。
【0030】
その後、電気信号は周波数フィルタリングセットに送られる。周波数フィルタリングセットは、青色光の振動周波数Fとその周辺とを含む特定の周波数帯域を除いて、すべての周波数をフィルタし、任意で、そのフィルタリング前または後に信号を増幅する。
【0031】
提示される実施形態において、振動周波数Fは200kHzであり、測定間隔は青色光源の励起間隔Tである7秒に等しい。提示される実施形態では、適切なフィルタリングが実行され、センサユニットからの信号は、まず増幅率1000のトランスインピーダンス増幅器によって増幅され、同時に、電気信号である電流が電圧に変換された後、フィルタリングが行われる。提示される実施形態では、測定される電流値がピコアンペア(pA)の範囲にあるので信号を増幅する必要があり、増幅されていない信号を処理することは、フィルタリング選択性がなくなるため、事実上不可能である。従って、増幅は、測定された信号のフィルタリング選択性を向上させる。提示される実施形態では、周波数成分Fとその周辺の帯域±10%とを除くすべての周波数成分を信号からフィルタする「バンドパス」フィルタによる信号のフィルタリングが行われる。提示される実施形態では、Fは200kHzである。その後、ADCコンバータによってデジタル信号への信号の変換が行われる。このADCコンバータは、変換後の信号がさらなる処理および測定のために十分に正確なものとするために、少なくとも20ビットの分解能を有する必要がある。
【0032】
反射青色光を測定する場合、このようにフィルタリングされた信号から、信号の探索値が取得され、この探索値が以下のステップで使用されることにより血糖値が計算される。提示される実施形態では、青色光の反射を測定する際の探索値は、絶対最大電圧UBmaxと絶対最小電圧UBminであり、後者はゼロよりも大きな最小電圧値である。
【0033】
赤外線放射源を用いた測定は、以下のように行われる。IR放射源は、振動周波数FIRによって測定間隔TIRにおいて励起される。センサユニットは、反射放射線を検出し、その反射放射線を電気信号に、提示される実施形態では、電流に変換する。提示される実施形態において、この電気信号は、処理ユニットのメモリに格納される。
【0034】
その後、電気信号は周波数フィルタリングセットに送られる。周波数フィルタリングセットは、IR放射の振動周波数FIRとその周辺とを含む特定の周波数帯域を除いて、すべての周波数をフィルタし、任意で、そのフィルタリング前または後に信号を増幅する。
【0035】
提示される実施形態において、振動周波数FIRは10kHzであり、測定間隔はIR放射源の励起間隔TIRである7秒に等しい。提示される実施形態では、適切なフィルタリングが実行され、センサユニットからの信号は、フィルタリング前に増幅率1のトランスインピーダンス増幅器に送られ、電気信号である電流が電圧に変換される。提示される実施形態の場合には、信号内における電流値がすでにナノアンペア(nA)の範囲にあるので信号増幅は必要ではない。提示される実施形態では、20kHz未満のすべての周波数を信号からフィルタリングする「ハイパス」周波数フィルタによる信号のフィルタリングが行われる。このようにフィルタリングされた信号から信号の周囲成分が減算される。信号の周囲成分は、センサユニットによって検出されるがIR放射源によっては伝送されない電磁放射を表し、例えば、室内の光や熱、体の熱、日射などである。このため、この成分は、信号から除去する必要があるノイズを表す。この信号の周囲成分の測定について説明すると、信号の周囲成分が、有効信号(装置のIR放射源によるもの)とノイズ(信号の周囲成分を含むもの)との合計である全測定信号よりも大きい場合には、信号対雑音比が高すぎるため、反射されたIR放射の測定が繰り返される。
【0036】
信号の周囲成分の測定は、IR信号を測定する前またはIR信号を測定した後に以下の方法で行うことができる。装置が手に適切に装着される。直前の測定からの衝撃/熱放射を最小限に抑えるために、光源/放射源の最後の励起と周囲成分の測定との間は少なくとも0.5秒経過している必要がある。周囲成分の測定間隔中において、IR放射源または青色光源は励起されてはならない。このようにして、ノイズを表す周囲または身体の電磁放射のみが実際に測定される。周囲成分の測定間隔は、好ましくは、0.5秒〜0.7秒の範囲であるが、1秒を超える必要はない。このようにして得られた信号は処理ユニットのメモリに格納され得る。この場合、その信号はトランスインピーダンス増幅器によって増幅され、測定されたIR信号と同じ比率で電流から電圧に変換される。
【0037】
提示される実施形態では、信号のデジタル形式への変換がADCコンバータによって行われる。このADCコンバータは、少なくとも10ビット分解能、好ましくは16ビットを有している必要がある。このデジタル信号に対して、10kHzの主周波数成分FIRとその周辺の帯域±10%とについて「バンドパス」周波数フィルタリングが実行される。
【0038】
反射IR放射を測定する場合、このようにフィルタリングされた信号から信号の探索値が取得され、この探索値が以下のステップで使用されることにより血糖値が計算される。提示される実施形態では、IR放射の反射を測定する際の探索値は、絶対最大電圧UIRmaxと絶対最小電圧UIRminであり、後者はゼロよりも大きな最小電圧値である。
【0039】
青色光の反射とIR放射の反射について測定を実行する順序は、それらの測定は独立しているので重要ではない。IR放射の反射を最初に測定し、次いで青色光の反射を測定することができ、その逆も可能である。
【0040】
次のステップでは、両方の測定値の探索値を使用して、所定の数学的アルゴリズムにより血糖値が計算される。フィルタリングされた信号から得られる探索値は電流または電圧として測定可能であり、最大値および最小値に加えて各測定間隔の平均値などの他の値も含む。もちろん、提示される実施形態で設定される値以外の他の値を選択する場合には、血糖値を計算する数学アルゴリズムを適応させる必要がある。
【0041】
提示される実施形態では、UBmax、UBmin、UIRmax、およびUIRminから、XおよびXの係数が計算される。
を計算するための式は、提示される実施形態では、赤色光や赤外線の量を測定することによって酸素および間接的にヘモグロビンを計算するための既知の式を用いて適応化される(「パルス・オキシメトリ」、Oximetry.org. 2002-09-10)。このため、提示される実施形態では、青色光の反射およびIR放射の反射を測定することによって血糖値を測定するように適応化される。
【0042】
【数1】
を計算するための式は、提示される実施形態では実験的に得られ、Xは、UBmaxとUBminとの比の自然対数に正比例し、UIRmaxとUIRminとの比の自然対数に反比例する値となる。
【0043】
【数2】
提示される実施形態において、AG血糖値の値は、以下の実験式に従って計算される。
【0044】
【数3】
およびKの定数は、装置の構成において使用された特定の電子要素、ならびに特定の皮膚タイプの吸収率を反映する。KおよびKは、特定の電子要素の特性および特定の皮膚タイプの吸収率に基づいて、経験的に決定され得るかまたは計算され得る。提示される実施形態では、KおよびKの定数は、以下の方法で経験的に決定されている。提示される実施形態による装置を使用して血糖値を測定するたびに、標準的な血液サンプリング方法を用いた測定も実施した。そして、2つの測定値を比較して、測定値間の偏りが最小になるように定数KおよびKを決定した。欧州人の(明るい)皮膚タイプについて経験的に決定された定数は、
=4.61
=1.13
である。
【0045】
任意で、特定の皮膚タイプに対して装置を較正することができる。この較正手順では、IR放射の反射および/または青色光の反射の追加測定に基づいて、特定の皮膚タイプの吸収率を決定する。別の選択肢は、KおよびKについて予め設定された値から皮膚タイプを測定前に選択することであり、この場合、特定の皮膚タイプの双方の定数は、血糖値を計算するプロセッサユニット上のプログラムに予め記憶される。
【0046】
提示される実施形態では、得られる血糖値が画面上に表示される。他の実施形態では、得られた値がさらに処理されてもよく、またはその結果により、ユーザに表示すべき特定のメッセージ、例えば、正常範囲内であることや、正常範囲を下回っていることや、正常範囲を超えていることなどが予め設定されたロジックにより有効にされ得る。
【0047】
プロセッサユニットは、任意で、得られた結果を予め設定された期待値の範囲と比較し得る。得られた結果が予め設定された範囲内にある場合には、測定は成功として受け入れられ、提示される実施形態では画面上に表示される。得られた結果が予め設定された範囲内にない場合は、測定結果は破棄され、必要に応じて測定が繰り返される。
【0048】
測定は繰り返し実行され得る。得られた良好な測定結果は統計的に処理され、例えば、すべての良好な測定値の平均値、または±誤差の値として送信される。
提示される実施形態の方法によれば、測定値の20%まで誤差を許容して、4mmol/L〜13mmol/Lの範囲の血糖値の測定を行うことができる。誤差には複数の要因があり、例えば、装置が皮膚にゆるく固定されている場合や、吸収率を変化させる皮膚や体毛が損傷している場合や、血管が狭窄している場合などの要因がある。
【0049】
[実施例]
図1に示す実施形態の一つでは、本発明による装置は、ケーシング1と、手首にしっかりと装着するための装着ストラップ2とから構成されている。ケーシングにおいて手首の皮膚と接触している側には、青色光の光源として青色LED3が、IR放射源としてIR−LED4が、センサユニットとして受光用フォトダイオード5が設けられている。青色LEDは波長460nmの光を放出し、IR−LEDは波長940nmの放射線を放出し、受光用フォトダイオードは、300nm〜1100nmの検出波長範囲を有し、最大感度920nmを有している。このケーシング1における反対側には、図示されていないが、ディスプレイとしてのOLED画面が配置されている。ケーシングの側面には、この装置をオン/オフし、表示設定を制御するための多機能ボタン6が設けられている。この装置のケーシングはプラスチック材料からなる。双方のLEDやフォトダイオードは、可視光およびIR放射を透過可能な透明性を有するシリコーンで被覆されている。
【0050】
ケーシング1は、装置の動作を担う全ての電子素子を含む。プロセッサユニットおよび周波数フィルタリングセットは、サイプレス(Cypress)社のPSOC5チップで実装されている。反射された青色光をフィルタリングするために使用される周波数フィルタリングセットの一部は、増幅率1000のトランスインピーダンス増幅器と、「バンドパス」フィルタと、24ビットADCコンバータとからなる。フォトダイオードにおいて測定される電流の値はピコアンペア(pA)の範囲にあるため、信号を増幅する必要がある。増幅されていない信号をさらに処理することは、フィルタリング選択性が適切に得られなくなるため、事実上不可能である。信号増幅は、測定信号のフィルタリング選択性を向上させる。
【0051】
反射されたIR放射をフィルタリングするための周波数フィルタリングセットは、増幅率1を有するトランスインピーダンス増幅器と、「ハイパス」フィルタと、16ビットADCコンバータとからなる。
【0052】
外部機器との通信のために、ケーシングには、第4世代のブルートゥース(登録商標)回路が内蔵されている。また、ケーシングはリチウムポリマーベースのバッテリを含む。バッテリは、2つのドックコネクタを介して充電され、装置に直接電源を供給することも可能である。
【0053】
図2は、実施形態の1つによる方法を示す。この方法は、装置を手首に固定すること、検査処理を実行して装置が手首に適切に装着されていることを確認することを含む。次いで青色光源が励起されて、測定間隔Tで周波数Fにより振動する。センサユニットは、反射光を検出して、その反射光を電流に変換する。次いで、信号フィルタリングが行われる。この信号フィルタリングでは、センサユニットからの信号が最初にトランスインピーダンス増幅器によって増幅され、次いで、「バンドパス」フィルタによる信号フィルタリングと、ADCコンバータによるデジタル形式への信号変換とが行われる。青色光の反射の測定時には、このようにフィルタリングされた信号から探索値が取得される。この探索値は、絶対最大電圧UBmaxと絶対最小電圧UBminであり、絶対最小電圧UBminはゼロよりも大きな最小電圧値である。次いで、周囲成分が測定された後、IR放射源が励起されて、測定間隔TIRで周波数FIRにより振動する。センサユニットは、反射された放射線を検出し、それを電流に変換する。次いで、信号フィルタリングが行われる。この信号フィルタリングでは、センサユニットからの信号がトランスインピーダンス増幅器に送られ、その後に「ハイパス」フィルタによる信号フィルタリングが行われる。このようにフィルタリングされた信号から、信号の周囲成分が減算される。次いで、ADCコンバータによってデジタル形式への信号の変換が行われ、「バンドパス」フィルタによりデジタル信号のフィルタリングが行われる。IR放射の反射の測定時には、このようにフィルタリングされた信号から探索値が取得される。この探索値は、絶対最大電圧UIRmaxと絶対最小電圧UIRminであり、絶対最小電圧UIRminはゼロよりも大きな最小電圧値である。そして、双方の測定による探索値を使用した予め定義された数学アルゴリズムを用いて、血糖値の計算が行われる。
図1
図2