(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6549350
(24)【登録日】2019年7月5日
(45)【発行日】2019年7月24日
(54)【発明の名称】過給機付き内燃機関
(51)【国際特許分類】
F02B 29/04 20060101AFI20190711BHJP
F02B 37/00 20060101ALI20190711BHJP
F02M 26/02 20160101ALI20190711BHJP
F02M 35/10 20060101ALI20190711BHJP
【FI】
F02B29/04 P
F02B37/00 302D
F02B37/00 302F
F02M26/02
F02M35/10 301W
【請求項の数】6
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2013-268491(P2013-268491)
(22)【出願日】2013年12月26日
(65)【公開番号】特開2015-124652(P2015-124652A)
(43)【公開日】2015年7月6日
【審査請求日】2016年11月7日
【審判番号】不服2018-5902(P2018-5902/J1)
【審判請求日】2018年4月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】000177612
【氏名又は名称】株式会社ミクニ
(74)【代理人】
【識別番号】110000121
【氏名又は名称】アイアット国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】小池 佑一
(72)【発明者】
【氏名】三澤 透
(72)【発明者】
【氏名】田畑 信悟
【合議体】
【審判長】
金澤 俊郎
【審判官】
鈴木 充
【審判官】
水野 治彦
(56)【参考文献】
【文献】
特開2013−164006(JP,A)
【文献】
特開2013−234629(JP,A)
【文献】
実開昭59−177735(JP,U)
【文献】
特開昭61−4831(JP,A)
【文献】
特開2010−90717(JP,A)
【文献】
特開2011−140922(JP,A)
【文献】
特開2003−201927(JP,A)
【文献】
特開2008−180113(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02B 29/04
F02B 37/00
F02M 26/06
F02M 35/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関と、
吸気ガス流れ方向の下流側端部が前記内燃機関に接続された吸気通路と、
過給機の一部を構成すると共に、前記吸気通路に配置されたコンプレッサと、
凝縮水排出口を備えると共に、前記コンプレッサよりも前記吸気ガス流れ方向の下流側で前記吸気通路に配置されたインタークーラーと、
前記インタークーラーよりも前記吸気ガス流れ方向の下流側で前記吸気通路に配置されたスロットルバルブと、
駆動ガスを供給する駆動ガス供給口、液体を吸入する液体吸入口および前記駆動ガスと霧化した前記液体との混合ガスを排出する混合ガス排出口を備え、
前記駆動ガス供給口が前記コンプレッサおよび前記スロットルバルブの間で前記吸気通路に接続され、前記液体吸入口が前記凝縮水排出口に接続され、前記混合ガス排出口が前記スロットルバルブおよび前記内燃機関の間で前記吸気通路に接続されたエゼクターと、
前記吸気通路と前記駆動ガス供給口とを接続する駆動ガス供給路に設けられた第1のバルブと、
を備え、
前記第1のバルブは、前記吸気通路の過給圧が、バルブ開閉閾過給圧を超えた場合に開かれ、前記バルブ開閉閾過給圧より小さくなった場合に閉じられる
ことを特徴とする過給機付き内燃機関。
【請求項2】
請求項1に記載の過給機付き内燃機関において、
排気ガス流れ方向の上流側端部が前記内燃機関に接続された排気通路と、
前記過給機の一部を構成すると共に、前記排気通路に配置されたタービンと、
前記コンプレッサよりも前記吸気ガス流れ方向の上流側で前記吸気通路および前記タービンよりも前記排気ガス流れ方向の下流側で前記排気通路を接続するEGR通路と、
をさらに備えることを特徴とする過給機付き内燃機関。
【請求項3】
請求項1または2に記載の過給機付内燃機関において、
前記第1のバルブは、当該第1のバルブを開けた時点からの積算時間が、バルブ開閉閾時間を超えた場合に閉じられる
ことを特徴とする過給機付き内燃機関。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1項に記載の過給機付き内燃機関において、
前記凝縮水排出口と前記液体吸入口とを接続する凝縮水排出通路に設けられた第2のバルブをさらに備え、
前記第2のバルブは、前記吸気通路の過給圧が、前記バルブ開閉閾過給圧を超えた場合に開かれ、前記バルブ開閉閾過給圧よりも小さくなった場合に閉じられる
ことを特徴とする過給機付き内燃機関。
【請求項5】
請求項3に記載の過給機付き内燃機関において、
前記凝縮水排出口と前記液体吸入口とを接続する凝縮水排出通路に設けられた第2のバルブをさらに備え、
前記第2のバルブは、前記吸気通路の過給圧が、前記バルブ開閉閾過給圧を超えた場合に開かれ、前記バルブ開閉閾過給圧よりも小さくなった場合に閉じられるとともに、当該第2のバルブを開けた時点からの積算時間が、前記バルブ開閉閾時間を超えた場合に閉じられる
ことを特徴とする過給機付き内燃機関。
【請求項6】
請求項4または5に記載の過給機付き内燃機関において、
前記凝縮水が貯留される凝縮水貯留タンクをさらに備え、
前記凝縮水排出通路は、前記凝縮水排出口側から前記液体吸入側へと向かう方向に沿って、前記凝縮水貯留タンクおよび前記第2のバルブが順に設けられている
ことを特徴とする過給機付き内燃機関。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、過給機付き内燃機関および過給機付き内燃機関用エゼクターに関するものである。
【背景技術】
【0002】
過給機付きの内燃機関では、排気通路にタービンを配置し、吸気通路にコンプレッサを配置した過給機を備えており、また、吸気通路には、コンプレッサにより圧縮され、高温になった吸気ガスを冷却するために、コンプレッサの下流側にインタークーラーが設けられている。また、近年では、環境対応等の観点から、タービンよりも下流側の排気通路とコンプレッサよりも上流側の吸気通路とを接続し内燃機関からの排気ガスの一部を吸気通路に還流させるEGR通路をさらに備えた過給機付きの内燃機関も利用されている。
【0003】
このような過給機付き内燃機関では、インタークーラーにおいて吸気ガスが冷却されることにより凝縮水が発生する。そして、EGR通路をさらに備えた過給機付きの内燃機関では、EGR通路から吸気通路へと流れ込んだEGRガス中に硫黄成分等が含まれる。したがって、凝縮水中にもこれらの成分が含まれることとなるため、これらの成分によりインタークーラーが腐食される。
【0004】
このような問題に鑑みて、特許文献1では、インタークーラーにおいて発生した凝縮水をより確実に排出できる技術が提案されている。そして、この技術では、たとえば、インタークーラーと内燃機関およびスロットルバルブの間に位置する吸気通路とを接続する排出路を設けることで、インタークーラーにおいて発生した凝縮水を内燃機関の気筒内に流入させて蒸発させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−108761号公報(段落0004、0007、
図3等)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、インタークーラーにおいて発生した凝縮水を、排出路を利用して内燃機関へとそのまま還流させる方法では、ウォーターハンマー現象などが発生し、内燃機関に悪影響を及ぼす可能性がある。
【0007】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、インタークーラーにおいて発生した凝縮水を内燃機関に還流させる場合においても、ウォーターハンマー現象などの発生を抑制して内燃機関への悪影響を抑制する過給機付き内燃機関および過給機付き内燃機関用エゼクターを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題は以下の本発明により達成される。すなわち、
本発明の過給機付き内燃機関は、内燃機関と、吸気ガス流れ方向の下流側端部が前記内燃機関に接続された吸気通路と、過給機の一部を構成すると共に、吸気通路に配置されたコンプレッサと、凝縮水排出口を備えると共に、コンプレッサよりも吸気ガス流れ方向の下流側で吸気通路に配置されたインタークーラーと、インタークーラーよりも吸気ガス流れ方向の下流側で吸気通路に配置されたスロットルバルブと、駆動ガスを供給する駆動ガス供給口、液体を吸入する液体吸入口および駆動ガスと霧化した液体との混合ガスを排出する混合ガス排出口を備え、駆動ガス供給口がコンプレッサおよびスロットルバルブの間で吸気通路に接続され、液体吸入口が凝縮水排出口に接続され、混合ガス排出口がスロットルバルブおよび内燃機関の間で吸気通路に接続されたエゼクターと、吸気通路と駆動ガス
供給口とを接続する駆動ガス供給路に設けられた第1のバルブと、を備え、第1のバルブは、吸気通路の過給圧が、バルブ開閉閾過給圧を超えた場合に開かれ、前記バルブ開閉閾過給圧より小さくなった場合に閉じられることを特徴とする。
【0009】
本発明の過給機付き内燃機関の一実施形態は、排気ガス流れ方向の上流側端部が内燃機関に接続された排気通路と、過給機の一部を構成すると共に、排気通路に配置されたタービンと、コンプレッサよりも吸気ガス流れ方向の上流側で吸気通路およびタービンよりも排気ガス流れ方向の下流側で排気通路を接続するEGR通路と、をさらに備えることが好ましい。
【0010】
本発明の過給機付き内燃機関
の一実施形態は、
第1のバルブは、当該第1のバルブを開けた時点からの積算時間が、バルブ開閉閾時間を超えた場合に閉じられることが好ましい。
また、前記凝縮水排出口と前記液体吸入口とを接続する凝縮水排出通路に設けられた第2のバルブをさらに備え、前記第2のバルブは、前記吸気通路の過給圧が、前記バルブ開閉閾過給圧を超えた場合に開かれ、前記バルブ開閉閾過給圧よりも小さくなった場合に閉じられることが好ましく、前記第2のバルブは、当該第2のバルブを開けた時点からの積算時間が、前記バルブ開閉閾時間を超えた場合に閉じられることが好ましい。
【0011】
本発明の過給機付き内燃機関
の一実施形態は、
凝縮水が貯留される凝縮水貯留タンクをさらに備え、凝縮水排出通路は、凝縮水排出口側から液体吸入側へと向かう方向に沿って、凝縮水貯留タンクおよび前記第2のバルブが順に設けられていることが好ましい。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、インタークーラーにおいて発生した凝縮水を内燃機関に還流させる場合においても、ウォーターハンマー現象などの発生を抑制して内燃機関への悪影響を抑制する過給機付き内燃機関および過給機付き内燃機関用エゼクターを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本実施形態の過給機付き内燃機関の一例を示す概略構成図である。
【
図2】
図1に示すエゼクターの作動状況を制御するための制御フローチャートの一例を示すフローチャートである。
【
図3】
図2に示す制御フローチャートに従ってエゼクターを作動させた場合のエゼクターの作動パターンを示すグラフである。ここで、
図3(A)は、過給圧Pのみによってエゼクターの作動が制御される場合について示すグラフであり、
図3(B)は、過給圧Pおよび積算時間T
intによってエゼクターの作動が制御される場合について示すグラフである。
【
図4】
図1に示すエゼクターの断面構造の一例を示す模式断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1は、本実施形態の過給機付き内燃機関の一例を示す概略構成図である。
図1に示す過給機付き内燃機関10は、内燃機関20と、吸気ガス流れ方向Dinの下流側端部が内燃機関10に接続された吸気通路30と、排気ガス流れ方向Dexの上流側端部が内燃機関20に接続された排気通路40とを有している。そして、吸気通路30には、過給機50の一部を構成するコンプレッサ50Cが配置され、排気通路40には、過給機50の一部を構成するタービン50Tが配置されている。また、コンプレッサ50Cよりも吸気ガス流れ方向Dinの下流側に位置する吸気通路30には、コンプレッサ50Cによる圧縮によって、高温となった吸気ガスを冷却するためにインタークーラー60が配置されている。このインタークーラー60には、インタークーラー60内を吸気ガスが通過する際に冷却された吸気ガス中の水分が凝縮して発生した凝縮水を外部に排出するための凝縮水排出口62が設けられている。さらに、インタークーラー60よりも吸気ガス流れ方向Dinの下流側に位置する吸気通路30にはスロットルバルブ70が配置されている。そして吸気通路30のスロットルバルブ70の下流側には内燃機関20が配置されている。
【0017】
さらに、EGR通路80が、コンプレッサ50Cよりも吸気ガス流れ方向Dinの上流側に位置する吸気通路30と、タービン50Tよりも排気ガス流れ方向Dexの下流側に位置する排気通路40とを接続するように配置されている。また、EGR通路80にはバルブ90が設けられており、吸気通路30のEGR通路80との接続部分80CNよりも上流側には、バルブ100が設けられており、これらのバルブ90、100の開度を調整することで、吸気通路30の入口から取り入れられた外気(空気)と、排気通路40からEGR通路80を経て吸気通路30へと再び循環する排気ガスとの混合度合いが決定される。また、吸気通路30のバルブ100が配置された位置よりも上流側にはフィルタ110が設けられる。
【0018】
ここで、排気ガス中には、硫黄酸化物や窒素酸化物等の酸性成分が含まれる。また、吸気通路30を流れる吸気ガス中には、外気(空気)以外にEGR通路80を経由して吸気通路30へと循環した排気ガスも含まれる。このため、インタークーラー60において発生した凝縮水は、水と排気ガス中に含まれる酸性成分とを含む酸性水溶液となる。また、本実施形態の過給機付き内燃機関10はEGR通路80を有していなくてもよいが、このような場合でも交通渋滞の多い都市部(特に精製度が低く硫黄成分等を多く含む燃料の使用が許容されていたり、排気ガス対策が不十分な自動車が多く走っている発展途上国の都市部)では、吸気通路30の入口から取り入れられた外気(空気)中に高濃度の酸性成分が含まれ易くなる。したがって、EGR通路80が無い場合でも、インタークーラー60において発生した凝縮水は酸性水溶液となる可能性がある。
【0019】
このような酸性を示す凝縮水が、インタークーラー60内に滞留し続けると、インタークーラー60が腐食するため、凝縮水をインタークーラー60の外部へと排出する必要がある。このため、凝縮水は、インタークーラー60の凝縮水排出口62から外部へと排出される。この際、特許文献1にも開示されているように、凝縮水排出口62とスロットルバルブ70および内燃機関20の間に位置する吸気通路30とを接続する通路を設ければ、インタークーラー60内で発生した凝縮水を、内燃機関20中に流入させることができる。しかし、凝縮水をそのまま内燃機関20中に流入させただけではウォーターハンマー現象等が発生し、内燃機関20に悪影響を与える可能性がある。しかしながら、本実施形態の過給機付き内燃機関20では、エゼクター120を用いることにより凝縮水を霧化させた状態で内燃機関20内へと導入するため、上述したような問題の発生を抑制することができる。
【0020】
ここで、エゼクター120は、駆動ガスを供給する駆動ガス供給口120D、液体を吸入する液体吸入口120Lおよび駆動ガスと霧化した液体との混合ガスを排出する混合ガス排出口120Mを備えている。そして、駆動ガス供給路130により、駆動ガス供給口120Dが、インタークーラー60およびコンプレッサ50Cの間に位置する吸気通路30に接続され、凝縮水排出通路140により、液体吸入口120Lが凝縮水排出口62に接続され、混合ガス排出通路150により、混合ガス排出口120Mがスロットルバルブ70および内燃機関20の間に位置する吸気通路30に接続される。このため、凝縮水排出通路140からエゼクター120に流入した凝縮水を、エゼクター120内で霧化した後、混合ガス排出通路150および吸気通路30を経て内燃機関20内へと流入させることができる。
【0021】
なお、内燃機関20の稼働中において、凝縮水は、常時、大量に発生し続けるわけではない。このため、実用上は、インタークーラー60内で発生した凝縮水をタンクに一旦溜めておいた上で、適宜、エゼクター120を作動させてタンク内に溜まった凝縮水を内燃機関20内に導入することが好ましい。よって、このような処理を行うために、たとえば、駆動ガス供給路130にバルブ160を設け、凝縮水排出通路140には、凝縮水排出口62側から液体吸入口120L側へと向う方向に沿って、凝縮水貯留タンク170およびバルブ180をこの順に設けることができる。この場合、コンプレッサ50Cよりも下流側の吸気通路30を流れる吸気ガスの過給圧に応じて、バルブ160、180の開閉のタイミングや開度を適宜制御することで、凝縮水貯留タンク170内に貯留された凝縮水を霧化した上で内燃機関20へと導入できる。
【0022】
ここで、
図1に示す過給機付き内燃機関10において用いられるエゼクター120の作動条件は、適宜設定することができるが、たとえば、
図2に示す制御フローチャートに従って制御することができる。
【0023】
まず、コンプレッサ50Cとインタークーラー60との間における吸気通路30の過給圧Pと、バルブ160、180の開閉を決定するためのバルブ開閉閾過給圧P0とを比較し、過給圧Pがバルブ開閉閾過給圧P0を超えている場合は、バルブ160、180を開けることでエゼクター120が作動し始める。一方、過給圧Pがバルブ開閉閾過給圧P0を超えていない場合は、バルブ160、180は閉められたままの状態を維持するため、エゼクター120は作動しない。なお、過給圧Pは、過給機付き内燃機関10やその稼働状況に応じて変動するが、通常、0kPa〜90kPaの範囲内である。また、バルブ開閉閾過給圧P0は、0kPaを超え過給圧Pの最大値よりも小さい範囲内において適宜設定される。
【0024】
バルブ160、180を開けた場合、吸気通路30を流れる吸気ガスが、駆動ガス供給路130を経て駆動ガス供給口120D側からエゼクター120内に供給され、凝縮水貯留タンク170に貯留されていた凝縮水が、凝縮水排出通路140を経て液体吸入口120L側からエゼクター120内へと吸い込まれる。そして、エゼクター120内にて霧化された凝縮水は、混合ガス排出通路150およびスロットルバルブ70と内燃機関20との間に位置する吸気通路30を経て内燃機関20内へと導入される。
【0025】
ここで、バルブ160、180を開けた状態を継続するか否かは、まず過給圧Pがバルブ開閉閾過給圧P0よりも小さくなっているか否かにより1次判断し、過給圧Pがバルブ開閉閾過給圧P0よりも小さくなっている場合は、バルブ160、180を再び閉じて、エゼクター120の作動を停止させる。一方、過給圧Pがバルブ開閉閾過給圧P0よりも小さくなっていない場合は、バルブ160、180を開いた状態を継続する。
【0026】
また、1次判断の結果、過給圧Pがバルブ開閉閾過給圧P0よりも大きい状態を維持し続けている場合は、バルブ160、180を開けた時点からの積算時間T
intが、バルブ開閉閾時間T0を超えているか否かについて2次判断する。その結果、積算時間T
intが、バルブ開閉閾時間T0を超えた場合は、バルブ160、180を再び閉じて、エゼクター120の作動を停止させる。一方、積算時間T
intが、バルブ開閉閾時間T0を超えていない場合は、バルブ160、180を開いた状態を継続する。
【0027】
したがって、エゼクター120の作動パターンは、
図3(A)に示すように過給圧Pがバルブ開閉閾過給圧P0を超えることによりエゼクター120が作動を開始し、過給圧Pがバルブ開閉閾過給圧P0を下回ることより作動を停止する場合と、
図3(B)に示すように過給圧Pがバルブ開閉閾過給圧P0を超えることによりエゼクター120が作動を開始し、積算時間T
intがバルブ開閉閾時間T0を超えることによりエゼクター120が作動を停止する場合の2つのパターンがある。
【0028】
なお、
図1に示す例では、駆動ガス供給口120Dは、コンプレッサ50Cおよびインタークーラー60の間に位置する吸気通路30に接続されているが、駆動ガス供給口120Dは、コンプレッサ50Cおよびスロットルバルブ70の間に位置する吸気通路30の任意の位置に接続できる。この場合、駆動ガス供給口120Dは、コンプレッサ50Cおよびインタークーラー60の間に位置する吸気通路30(インタークーラー上流側通路)、ならびに/または、インタークーラー60およびスロットルバルブ70の間に位置する吸気通路30(インタークーラー下流側通路)に接続できるが、
図1に例示したようにインタークーラー上流側通路に接続することがより好ましい。駆動ガス供給口120Dをインタークーラー下流側通路に接続した場合、吸気ガスがインタークーラー60を通過した際に圧力損失が発生するため、エゼクター120を作動させるために必要な駆動ガスの供給圧力が低下するためである。
【0029】
なお、エゼクター120としては、公知のエゼクターを適宜利用できる。すなわち、エゼクター120は、駆動ガス供給口120D、液体吸入口120Lおよび混合ガス排出口120Mを少なくとも備え、その内部において駆動ガス供給口120Dから供給された駆動ガスを噴射することで、液体を液体吸入口120Lから吸込むとともに霧化して駆動ガスと霧化した液体とを混合した混合ガスとし、この混合ガスを混合ガス排出口120Mから排出する機能を有するものであれば、その内部構造は如何様であってもよい。
【0030】
図4は、本実施形態の過給機付き内燃機関10に用いられるエゼクター120の内部構造の一例を示す模式断面図である。このエゼクター120の内部には、液体吸入口120Lと連通する吸入室122と、駆動ガス供給口120Dと連通すると共に、吸入室122内にノズル先端部124Tが突出するように設けられたノズル124と、一端が吸入室122と連通し、他端が混合ガス排出口120Mと連通する管状のディフューザー部126とが設けられている。そして、エゼクター120は筒状を成しており、エゼクター120の一端側に駆動ガス供給口120Dが設けられ、エゼクター120の他端側に混合ガス排出口120Mが設けられ、エゼクター120の外周面側に液体吸入口120Lが設けられている。また、駆動ガス供給口120Dの中心点、ノズル124の中心軸、ディフューザー部126の中心軸および混合ガス排出口120Mの中心点は、エゼクター120の中心軸Cと略一致している。ここで、エゼクター120の各部の寸法形状は、駆動ガス供給口120Dから供給される駆動ガスの流量・圧力および液体吸入口120Lから吸い込まれる液体の流量・圧力等に応じて適宜選択される。
【0031】
図4に示すエゼクター120を作動させた場合、ノズル124のノズル先端部124Tから吸入室122内へと駆動ガスを噴出させることで負圧が生じるため、液体吸入口120L側から吸入室122内へと液体が吸入される。そして吸入室122内へと吸入された液体は、図中の点線D内に示されるようにノズル先端部124Tから噴出される高速の駆動ガス流によって霧化されると同時に、駆動ガスと混合される。そして駆動ガスと霧化された液体とを含む混合ガスが、吸入室122内のノズル先端部124T部近傍からディフューザー部126を経て、混合ガス排出口120M側から排出される。
【0032】
なお、エゼクター120の作動時における圧力は以下のように設定される。まず、駆動ガスの供給圧力(駆動ガス供給口120Dにおける圧力)の最大値は、一般的には90kPaあるいはそれ以下であり、最小値は、たとえば、
図3に例示するような制御を行う場合はバルブ160のバルブ開閉閾過給圧P0に設定される。また、液体吸入口120Lにおける圧力も、駆動ガスの供給圧力よりも低くなるように設定される。また、コンプレッサ50C側により近い駆動ガス供給口120Dにおける圧力は、混合ガス排出口120Mにおける圧力よりも大きくなる。
【0033】
エゼクター120は、回転運動やピストン運動などの運動部分を有していない上に構造も極めて簡単である。このため長期に渡ってエゼクター120を作動させても故障の可能性が極めて小さく、調整が不要であり、保守も極めて簡単であり、省スペースであり、また、コスト負担も極めて小さいというメリットがある。
【0034】
エゼクター120を構成する材料としては、炭素鋼、ステンレス鋼、鋳鉄、カーボン、樹脂等の公知の機械構造用材料が適宜利用できる。なお、エゼクター120を作動させた場合、駆動ガス供給口120D側から空気を含む駆動ガス(吸気ガス)が供給され、液体吸入口120L側から水を含む液体(凝縮水)が吸入される。この際、駆動ガス中には、(特に、都市部において)車外から取り入れられた排気ガス、および/または、内燃機関20から排出されEGR通路80を経由してきた排気ガスが含まれる。そして、この排気ガス中には硫黄酸化物などの酸性成分が含まれるため、液体は、水と酸性成分とを含む酸性水溶液となる。したがって、エゼクター120を構成する材料が、酸性水溶液によって腐食する材料からなる場合は、長期に渡ってエゼクター120を使用すると腐食により穴が開いたり破損したりすることで、エゼクター120としての機能を発揮できなくなる可能性がある。
【0035】
したがって、このような問題の発生を防ぐ観点からは、エゼクター120の少なくとも一部分、すなわち、液体吸入口120Lから混合ガス排出口120Mまで連続する流路の内壁面が、耐酸性材料から構成されていることが好ましく、エゼクター120全体が耐酸性材料から構成されていてもよい。このような耐酸性材料としては、公知の耐酸性材料を用いることができるが、たとえば、ステンレス鋼、樹脂、セラミックス、カーボンなどが利用できる。なお、同様の観点からは、凝縮水排出通路140および混合ガス排出通路150を構成する配管、凝縮水貯留タンク170、バルブ180も耐酸性材料から構成されることが好ましい。
【0036】
インタークーラー60としては、インタークーラー60内で発生した凝縮水を集めて外部に排出する凝縮水排出口62を備えたものであれば公知のインタークーラー60が適宜利用できる。この凝縮水排出口62は、インタークーラー60内で凝縮する凝縮水が流れる箇所もしくはこの凝縮水が溜まる箇所に配置される。また、凝縮水排出口62を開閉するためのバルブが設けられることが好ましい。
【0037】
このバルブの構造・作動機構等は特に限定されるものではないが、たとえば、内燃機関20の停止時にインタークーラー60内に溜まった凝縮水の水位に応じて浮き沈みするフロートの動きに連動して開閉するフロート弁であってもよい。また、バルブは、特許文献1に開示された技術のように、インタークーラー60内の温度に応じて膨張または収縮し、かつ、インタークーラー60の温度が所定温度よりも高いときにバルブを閉塞し、インタークーラー60の温度が所定温度よりも低いときにバルブを開口させる駆動手段に接続されていてもよい。このようなバルブおよび駆動手段としては、たとえば、サーモスタットと同じ構造のものを用いることができる。なお、駆動手段は、温度に応じて体積、長さまたは形状が変化し、かつ、バルブを駆動させ得る部材であればどのような部材でも用いることができ、たとえば、金属、ワックス、あるいは、バイメタルなどが利用できる。
【符号の説明】
【0038】
10 :過給機付き内燃機関
20 :内燃機関
30 :吸気通路
40 :排気通路
50 :過給機
50C :コンプレッサ
50T :タービン
60 :インタークーラー
62 :凝縮水排出口
70 :スロットルバルブ
80 :EGR通路
80CN :接続部分
90、100 :バルブ
110 :フィルタ
120 :エゼクター
120D :駆動ガス供給口
120L :液体吸入口
120M :混合ガス排出口
122 :吸入室
124 :ノズル
124T :ノズル先端部
126 :ディフューザー部
130 :駆動ガス供給路
140 :凝縮水排出通路
150 :混合ガス排出通路
160 :バルブ
170 :凝縮水貯留タンク
180 :バルブ