(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、適宜図面を参照しつつ、本発明の実施の形態を詳説する。
【0015】
[第一実施形態]
<布帛>
図1の布帛1は、複数の導電帯2及び複数の非導電帯3a、3bが幅方向に交互に配設されている。布帛1は、
図2に示すように、導電性糸4と非導電性糸5とを用いて編成されている。布帛1は、緯編により編成されており、詳細には平編みによって編成されている。布帛1は、導電性糸4によって導電帯2が形成され、非導電性糸5によって非導電帯3a、3bが形成されている。また、布帛1は、導電帯2を挟まず隣接される一対の非導電帯3a、3b間に水溶性帯6を有する。水溶性帯6は、
図2に示すように、導電性糸4及び非導電性糸5と共に編成される水溶性糸7によって形成される。布帛1は、典型的には導電帯2、非導電帯3a、3b及び水溶性帯7の長手方向を長手方向とする平面視矩形状に形成されている。布帛1は、導電性糸4、非導電性糸5及び水溶性糸7を用いた編成によって形成されることで、長手方向に伸縮可能に構成されている。
【0016】
(導電帯)
導電帯2を形成する導電性糸4は、線状の導体によって構成されている。導電性糸4としては、ステンレス等の金属製の導電糸、カーボン系の導電糸、金属又は合金のメッキ糸(メッキ層を有する絶縁繊維)、導電性樹脂繊維により形成される糸等が挙げられる。中でも、耐久性、低重量性及び滑り性に優れ、長手方向に伸縮しやすい導電帯2を形成可能なメッキ糸が好ましい。また、このようなメッキ糸に用いられる金属としては、例えば電気抵抗が低い金又は銀が用いられる。
【0017】
導電性糸4の繊度の下限としては、3dtexが好ましく、7dtexがさらに好ましい。一方、導電性糸4の繊度の上限としては、500dtexが好ましく、200dtexがさらに好ましい。導電性糸4の繊度が前記下限未満であると、強度が低下して導電帯2の伸縮時に導電性糸4が破断するおそれがある。逆に、導電性糸4の繊度が前記上限を超えると、導電帯2が伸縮し難くなるおそれがある。
【0018】
導電性糸4の10cmあたりの電気抵抗の上限としては、100Ωが好ましく、50Ωがより好ましい。導電性糸4の電気抵抗が前記上限未満であることによって、導電性糸4の電気抵抗を十分小さくすることができる。なお、導電性糸4の10cmあたりの電気抵抗は低い方が好ましいため、その下限は特に限定されるものではなく、例えば0.01Ωとすることができる。また、「10cmあたりの電気抵抗」とは、5Vの電圧をかけて計測される糸10cm間の抵抗値であり、汎用のテスターを用いて測定することができる。
【0019】
導電帯2の平均幅の下限としては、0.1mmが好ましく、0.3mmがより好ましい。一方、導電帯2の平均幅の上限としては、10mmが好ましく、5mmがより好ましい。導電帯2の平均幅が前記下限未満であると、導電帯2の強度が十分に得られず、伸縮時に導電性糸4が破断するおそれがある。逆に、導電帯2の平均幅が前記上限を超えると、導電帯2を伸縮し難くなるおそれがある。
【0020】
(非導電帯)
非導電帯3a、3bを構成する非導電性糸5としては、特に限定されないが、例えば非導電性樹脂繊維の撚糸等が挙げられる。前記非導電性樹脂繊維としては、例えばポリエチレン繊維、ポリプロピレン繊維等のポリオレフィン繊維、ポリエチレンテレフタレート繊維、ポリトリメチレンテレフタレート繊維、ポリブチレンテレフタレート繊維、ポリ乳酸繊維等のポリエステル繊維、ポリカーボネート繊維、ポリスチレン繊維、ポリフェニレンサルファイド繊維、フッ素系樹脂繊維などが挙げられる。
【0021】
非導電性糸5の繊度の下限としては、3dtexが好ましく、7dtexがより好ましい。一方、非導電性糸5の繊度の上限としては、500dtexが好ましく、200dtexがより好ましい。非導電性糸5の繊度が前記下限未満であると、強度が低下して非導電帯3a、3bの伸縮時に非導電性糸4が破断するおそれがある。逆に、非導電性糸5の繊度が前記上限を超えると、非導電帯3a、3bが伸縮し難くなるおそれがある。
【0022】
非導電帯3a、3bの平均幅の下限としては、0.1mmが好ましく、0.3mmがより好ましい。一方、非導電帯3a、3bの平均幅の上限としては、10mmが好ましく、5mmがより好ましい。非導電帯3a、3bの平均幅が前記下限未満であると、導電帯2の幅方向における絶縁が不十分となるおそれがある。逆に、非導電帯3a、3bの平均幅が前記上限を超えると、非導電帯3a、3bの幅が不必要に大きくなると共に、非導電帯3a、3bが伸縮し難くなるおそれがある。
【0023】
導電帯2の平均幅に対する各非導電帯3a、3bの平均幅の比の下限としては、1/2が好ましく、2/3がより好ましく、4/5がさらに好ましい。一方、導電帯2の平均幅に対する各非導電帯3a、3bの平均幅の比の上限としては、3/2が好ましく、4/3がより好ましく、6/5がさらに好ましい。導電帯2の平均幅に対する各非導電帯3a、3bの平均幅の比が前記下限未満であると、導電帯2の幅方向における絶縁が不十分となるおそれがある。逆に、導電帯2の平均幅に対する各非導電帯3a、3bの平均幅の比が前記上限を超えると、非導電帯3a、3bの幅が不必要に大きくなると共に、非導電帯3a、3bが伸縮し難くなるおそれがある。
【0024】
(水溶性帯)
水溶性帯6は、長手方向の一端が布帛1の長手方向の一方の端部に至る。水溶性帯6を構成する水溶性糸7としては、例えば水溶性ポリビニルアルコール系合成繊維、水溶性ポリエステル系合成繊維、水溶性ポリアミド系合成繊維、水溶性エチレン−ビニルアルコール共重合体系合成繊維等が挙げられる。中でも、水溶性糸7としては、溶解処理が容易な水溶性ポリビニルアルコール系合成繊維が好ましい。
【0025】
水溶性糸7の繊度の下限としては、3dtexが好ましく、7dtexがより好ましい。一方、水溶性糸7の繊度の上限としては、500dtexが好ましく、200dtexがより好ましい。水溶性糸7の繊度が前記下限未満であると、強度が低下して、水溶性糸7が不必要に破断するおそれがある。逆に、水溶性糸7の繊度が前記上限を超えると、溶解し難くなるおそれがある。
【0026】
水溶性帯6の平均幅の下限としては、0.05mmが好ましく、0.15mmがより好ましい。一方、水溶性帯6の平均幅の上限としては、5mmが好ましく、2.5mmがより好ましい。水溶性帯6の平均幅が前記下限未満であると、水溶性帯6の形成が困難となるおそれがある。一方、水溶性帯6の平均幅が前記上限を超えると、水溶性帯6を溶解し難くなるおそれがある。
【0027】
<伸縮配線>
次に、
図3及び
図4を参照して、布帛1を用いた伸縮配線11について説明する。伸縮配線11は、
図3に示すように、布帛1の水溶性糸7を溶解し、水溶性帯6を除去して形成される。つまり、伸縮配線11は、導電帯2及び導電帯2の両側縁に配設される一対の非導電帯3a、3bを有する。導電帯2及び一対の非導電帯3a、3bは、平行に配設されている。また、導電性糸4は線状の導体からなる。伸縮配線11は、合成樹脂13が、導電性糸4を構成する線状の導体の周囲の少なくとも一部に導電性糸4の電気的な接触を抑制するよう存在する。具体的には、伸縮配線11は、少なくとも導電帯2に合成樹脂13が被覆されており、さらに詳細には、
図4に示すように、最表面及び最裏面の導電性糸4及び非導電性糸5の周囲に合成樹脂13が被覆されている。また、伸縮配線11は、導電帯2及び一対の非導電帯3a、3bの内部における導電性糸4同士及び非導電性糸5同士の間に空隙を有する。つまり、伸縮配線11は、導電帯2及び一対の非導電帯3a、3bの内部までは合成樹脂13が完全には含浸しておらず、この合成樹脂13の非含浸領域に空隙が存在している。ただし、伸縮配線11は必ずしも両面から合成樹脂13が被覆される必要はなく、一方の面のみから合成樹脂13が被覆されてもよい。この場合、伸縮配線11は、他方の面側における導電性糸4同士及び非導電性糸5同士の間にも空隙を有する。なお、「平行」とは、中心線間のなす角度が−5°以上5°以下であることをいう。
【0028】
当該伸縮配線11は、このように導電帯2を形成する導電性糸4同士及び非導電帯3a、3bを構成する非導電性糸5の間に空隙を有することによって、伸縮性の低下を抑制することができる。なお、導電性糸4同士及び非導電性糸5同士が合成樹脂13によって固結されている場合でも、伸縮配線11を伸縮させることで導電性糸4同士及び非導電性糸5同士は少なくとも部分的に離間する。このような場合でも、上記導体の周囲の少なくとも一部に合成樹脂13が残存することで、当該伸縮配線11は、伸縮時の抵抗の変化を抑制することができる。
【0029】
導電帯2を被覆する合成樹脂13としては、特に限定されるものではなく、例えばポリウレタン、ポリエステル、ポリアミド、(メタ)アクリル樹脂、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリオレフィン、セルロースアセテート、耐候性塩化ビニル等の熱可塑性樹脂が挙げられる。中でも、柔軟性に優れ、導電帯2の伸縮の妨げとなり難いポリウレタンが好ましい。
【0030】
導電帯2を合成樹脂13で被覆する方法としては、特に限定されず、例えば布帛1の水溶性糸7を溶解した上、導電帯2及び一対の非導電帯3a、3bの表面から合成樹脂13を塗布して加熱及び硬化する方法が挙げられる。なお、導電帯2を合成樹脂13で被覆する場合、導電帯2をより的確に被覆するためには、両面から塗布するのが好ましい。一方、導電帯2の伸縮性の低下を抑制する点からは、導電性糸4同士が合成樹脂13によって固結されない方が好ましい。つまり、導電性糸4同士の間には多くの空隙が存在することが好ましい。そのため、導電帯2の伸縮性の低下を抑制する点からは、導電性糸4同士の間に空隙が形成されやすいよう、導電帯2の一方の面のみから合成樹脂13を塗布するのが好ましい。また、導電帯2を合成樹脂13で被覆する場合、必ずしも布帛1の水溶性糸7を溶解した上で行う必要はなく、水溶性糸7を溶解せずに行ってもよい。
【0031】
合成樹脂13の前記加熱温度の下限としては、70℃が好ましく、80℃がより好ましい。一方、合成樹脂13の加熱温度の上限としては、180℃が好ましく、150℃がより好ましい。合成樹脂13の加熱温度が前記下限未満であると、合成樹脂13が的確に硬化しないおそれがある。逆に合成樹脂13の加熱温度が前記上限を超える場合、前記導体が溶融するおそれがある。
【0032】
合成樹脂13は、当該伸縮配線11の延伸状態で被覆されていることが好ましい。つまり、合成樹脂13は、導電帯2及び一対の非導電帯3a、3bを延伸した状態で塗布された上、加熱及び硬化されるのが好ましい。導電帯2及び一対の非導電帯3a、3bが延伸された状態では、導電帯2を構成する導体は各々引き伸ばされた状態で存在する。また、このような状態においては、複数の導体同士が離間され、接点が少なくなっている。そのため、このような上記導体が引き伸ばされた状態で合成樹脂13を塗布することで、合成樹脂13を導体同士の接点まで入り込ませつつ的確に塗布することができる。従って、当該伸縮配線11は、上記導体が引き伸ばされた状態で合成樹脂13が被覆されていることによって、合成樹脂13が導体の周面の全面に亘って被覆されやすく、導体同士の接触をさらに的確に防止することができる。
【0033】
また、当該伸縮配線11は、上記導体が合成樹脂13に被覆された後に導電帯2及び一対の非導電帯3a、3bを延伸してもよい。これにより、合成樹脂13によって固結した上記導体同士が離間して、それ以後の伸縮配線11の伸縮性を高めることができると共に、離間した上記導体の表面の少なくとも一部に合成樹脂13が残存することで、上記導体同士の電気的な接触を抑制することができる。
【0034】
導電帯2への合成樹脂13の固形分換算での塗布量の下限としては、0.5g/m
2が好ましく、1g/m
2がより好ましく、2g/m
2がさらに好ましい。一方、導電帯2への合成樹脂13の固形分換算での塗布量の上限としては、10g/m
2が好ましく、7g/m
2がより好ましく、5g/m
2がさらに好ましい。合成樹脂13の塗布量が前記下限未満であると、導体を合成樹脂13で十分に被覆できないおそれがある。逆に、合成樹脂13の塗布量が前記上限を超えると、導電帯2が伸縮し難くなるおそれがある。
【0035】
延伸時の最大抵抗値及び収縮時の最小抵抗値の抵抗変化量の上限としては、10Ω/cmが好ましく、8Ω/cmがより好ましく、6Ω/cmがさらに好ましい。前記抵抗変化量が前記上限を超えると、伸縮時の変化量に基づく検知値等の誤差が大きくなるおそれがある。一方、前記抵抗変化量は小さい方が好ましく、その下限は特に限定されるものではなく、例えば0.01Ω/cmとすることができる。
【0036】
<利点>
当該伸縮配線11は、導電性糸4及び非導電性糸5を用いた編成によって形成される導電帯2及び非導電帯3a、3bを有することで長手方向に伸縮可能に構成される。また、当該伸縮配線11は、導電性糸4を構成する線状の導体の周囲の少なくとも一部に導電性糸4の電気的な接触を抑制するよう合成樹脂13が存在するので、導体同士が直接接触し難い。特に、当該伸縮配線11は、延伸時には導電性糸4同士の接点が少なくなり、収縮時には導電性糸4同士の接点が多くなる傾向にあるが、このような導電性糸4同士の接点数の変化にかかわらず、導体同士の電気的な接触は抑制されているので、導体同士の電気的な接点数の増減は小さい。従って、当該伸縮配線11は、伸縮可能であると共に、抵抗の変化を抑えることができる。また、当該伸縮配線11は、導体の周囲の少なくとも一部に合成樹脂13が存在するので、導電帯2の防水性及び強度を高めることができる。さらに、当該伸縮配線11は、導体の周囲の少なくとも一部に合成樹脂13が存在するので、絶縁性を高めることができる。
【0037】
当該伸縮配線11は、両面又は一方の面から合成樹脂13が被覆されつつ、導電帯2及び一対の非導電帯3a、3bの内部に合成樹脂13が含浸しない領域を形成することができる。これにより、当該伸縮配線11は、導電性糸4同士及び非導電性糸5同士の間に空隙を有し、導電性糸4の電気的な接触を抑制しつつ、伸縮性の低下を抑制することができる。
【0038】
当該伸縮配線11は、少なくとも導電帯2に合成樹脂13が被覆されているので、導電性糸4を構成する導体同士の接触を的確に防止し、抵抗の変化を容易かつ確実に防止することができる。また、当該伸縮配線11は、少なくとも導電帯2に合成樹脂13が被覆されているので、絶縁性、並びに導電帯2の防水性及び強度を容易かつ十分に高めることができる。さらに、当該伸縮配線11は、導電性糸4が合成樹脂13によって被覆されるため、導電性糸4自体に絶縁性を付与する必要がないので、製造の容易化が促進される。
【0039】
[第二実施形態]
<伸縮配線>
図5の伸縮配線21は、導電帯22及び導電帯22の両側縁に配設される一対の非導電帯3a、3bを有する。導電帯22及び一対の非導電帯3a、3bは平行に配設されている。
図5の伸縮配線21は、
図3の伸縮配線11と同様、複数の導電帯22及び複数の非導電帯3a、3bが幅方向に交互に配設される布帛を用いて形成される。なお、一対の非導電帯3a、3bは、
図3の伸縮配線11の一対の非導電帯3a、3bと同様のため、同一符号を付して説明を省略する。
【0040】
(導電帯)
導電帯22は、
図6の導電性糸23によって形成されている。また、導電性糸23は、線状の導体24と、導体24の周囲を被覆する合成樹脂層25とを有する。ただし、端子等との接続のため、導電性糸23の両端は導体24がむき出しとなっている。導電性糸23は、導体24の周囲を合成樹脂層25で被覆することにより絶縁性が高められている。また、導電性糸23同士は固結されておらず、導電性糸23同士の間には空隙を有する。これにより、導電帯22の伸縮性の低下が抑制されている。なお、導体24は、
図3の伸縮配線11の導体(導電性糸4)と同様のため、説明を省略する。
【0041】
合成樹脂層25は、導体24の周面の略全面を被覆している。合成樹脂層25を形成する合成樹脂としては、
図3の伸縮配線11の合成樹脂13と同様とすることができる。
【0042】
また、合成樹脂層25は、導体24が引き伸ばされた状態で被覆されている。具体的には、合成樹脂層25は、導体24、非導電性糸5並びに水溶性糸7を用いて丸編み機で布帛を編みながら、編み込んだ後の導体24の周面にのみ合成樹脂をノズルから塗布し、加熱及び硬化することで形成される。このように、丸編み機で布帛を編む場合、導体24は引き伸ばされながら編まれるため、編まれた直後に樹脂が塗布されることで導体24の周面前面に合成樹脂を行きわたらせることができる。そのため、このような方法によると、合成樹脂を複数の導体24同士の接点まで入り込ませることが容易となる。また、このような方法によると、合成樹脂を導体24の周面のみに塗布することができるので、例えば複数の伸縮配線21を有する布帛を製造した上、必要に応じて水溶性帯を溶解し、各伸縮配線21を分離することができる。その結果、各伸縮配線21毎に合成樹脂を被覆するよりも格段に作業効率が高められる。
【0043】
なお、導体24への合成樹脂層25の固形分換算での導電帯22全体における塗布量としては、
図3の伸縮配線11の導電帯2への合成樹脂13の塗布量と同様とすることができる。
【0044】
<利点>
当該伸縮配線21は、導電性糸23が、導体24の周囲を被覆する合成樹脂層25を有するので、導体24同士の接触を防止して抵抗の変化を抑えることができる。また、当該伸縮配線21は、導体24同士が合成樹脂を介して接着されるのを防止し、伸縮性の低下を防止することができると共に、絶縁性、並びに導電帯22の防水性及び強度を容易かつ十分に高めることができる。
【0045】
[第三実施形態]
(導電性糸)
図7の導電性糸31は、
図6の導電性糸23に代えて、
図5の伸縮配線21の導電帯22を形成する。
図7の導電性糸31は、線状の導体24と合成樹脂製の絶縁糸32とを撚り合わせた複合糸である。ただし、端子等との接続のため、導電性糸31の両端は導体24がむき出しとなっている。導電性糸31は、導体24と絶縁糸32とを撚り合わせて形成されることで絶縁性が高められている。また、導電性糸31同士は固結されておらず、導電性糸31同士の間には空隙を有する。これにより、導電帯22の伸縮性の低下が抑制されている。なお、導体24は、
図5の伸縮配線21の導体24と同様のため、同一符号を付して説明を省略する。
【0046】
絶縁糸32は、導体24の周面に螺旋状に巻回されている。絶縁糸32は、導体24の周面の全面を覆っていてもよく、また導体24の軸方向に一定のピッチで巻回されてもよい。
【0047】
絶縁糸32としては、絶縁性を有する限り特に限定されるものではなく、例えば
図1の布帛1の非導電帯3a、3bを構成する非導電性糸5と同様のものが挙げられる。また、絶縁糸32の繊度としては、
図1の非導電性糸5と同様とすることができる。
【0048】
導体24の軸方向における絶縁糸32の被覆率の下限としては、50%が好ましく、70%がより好ましく、90%がさらに好ましい。絶縁糸32の被覆率が前記下限未満であると、導体24同士が直接接触することで伸縮時の抵抗差が大きくなるおそれがある。なお、導体24の軸方向における絶縁糸32の被覆率は伸縮時の抵抗差を抑える点からは高い方が好ましい。そのため、導体24の軸方向における絶縁糸32の被覆率の上限としては、100%とすることができる。なお、「被覆率」とは、導体24の表面積に対する絶縁糸32による被覆割合をいう。
【0049】
<利点>
当該伸縮配線は、導電性糸31が、導体24と合成樹脂製の絶縁糸32とを撚り合わせた複合糸であるので、導体24同士が合成樹脂等によって接着されるおそれが低い。そのため、当該伸縮配線は、伸縮性の低下を容易かつ確実に防止することができる。
【0050】
[第四実施形態]
<伸縮部材>
図8の伸縮部材41は、複数の伸縮配線11と、伸縮基材42とを備える。
図8の伸縮部材41は、複数の伸縮配線11が伸縮基材42の表面に付設されている。詳細には、
図8の伸縮部材41は、複数の伸縮配線11が各々離間して平行に伸縮基材42の表面に付設されている。また、複数の伸縮配線11は、一端側において歪みセンサー(図示せず)に接続され、他端側において出力端子(図示せず)に接続されている。なお、伸縮配線11は、
図3の伸縮配線11と同様のため、同一符号を付して説明を省略する。
【0051】
伸縮基材42は、例えば伸縮可能な布帛である。この布帛は、例えば絶縁性を有する糸状体の編成又は織成によって形成される。伸縮基材42が編成によって形成される布帛である場合、この布帛は、例えば平編み等の緯編によって形成される。また、伸縮基材42が織成によって形成される場合、この布帛は、例えば伸縮性を有する糸状体によって形成される。
【0052】
複数の伸縮配線11の付設方法としては、伸縮性が損なわれるような態様でない限り特に限定されるものではなく、例えば弾性接着剤による貼着や、伸縮性を損なわないように縫い付ける方法等が挙げられる。また、複数の伸縮配線11の伸縮基材42に付設される側の面は、複数の伸縮配線11の両面から合成樹脂13が塗布されている場合であれば、いずれの面でも好適に用いられる。一方、複数の伸縮配線11の片面のみから合成樹脂13が塗布されている場合、複数の伸縮配線11の伸縮基材42に付設される側の面は、合成樹脂13が塗布された面と反対側の面であることが好ましい。当該伸縮部材41は、このように当該伸縮配線11が合成樹脂13の塗布面と反対側の面によって伸縮基材42に付設されることによって、導体24同士が直接接触するのを効果的に防止しつつ、防水性を高めることができる。
【0053】
<利点>
当該伸縮部材41は、伸縮基材42に付設される当該伸縮配線11を備えるので、伸縮基材42の伸縮が配線によって妨げられるおそれが低い。また、当該伸縮部材41は、当該伸縮配線11を備えるので、抵抗の変化を抑制することができる。また、当該伸縮部材41は、当該伸縮配線11を備えるので、導電帯2の防水性及び強度を高めることができる。さらに、当該伸縮部材14は、当該伸縮配線11を備えるので、絶縁性を高めることができる。
【0054】
[その他の実施形態]
なお、本発明の伸縮配線は、前記態様の他、種々の変更、改良を施した態様で実施することができる。例えば前記布帛は、一の導電帯及びこの導電帯の両側縁に配設される一対の非導電帯のみから構成されてもよい。一方、当該伸縮配線は、一の導電帯及びこの導電帯の両側縁に配設される一対の非導電帯からなる必要はなく、例えば複数の導電帯及び複数の非導電帯が幅方向に交互に配設された布帛からなってもよい。また、当該伸縮配線が複数の導電帯及び複数の非導電帯が幅方向に交互に配設された布帛からなる場合、この布帛は、長手方向の途中から導電帯及びこの導電帯の側縁に配設される一対の非導電帯が分岐したものであってもよい。また、当該伸縮配線は、導電帯及び一対の非導電帯が平行に配設される必要はなく、例えば導電帯の幅及び非導電帯の幅は、一端から他端にかけて増減していてもよい。導電帯又は非導電帯の幅が一端から他端にかけて増減している場合、最小幅に対する最大幅の比の下限としては、例えば150%である。一方、前記比の上限としては、例えば500%である。
【0055】
当該伸縮配線は、必ずしも前記水溶性帯を溶解したものである必要はない。つまり、前記水溶性帯を介して複数の伸縮配線が連結されていてもよい。また、水溶性帯の溶解によって一部のみ分離されていてもよい。さらに、当該伸縮配線は、前記水溶性帯を有する布帛を用いて形成されたものでなくてもよい。当該伸縮配線は、前記布帛が水溶性帯を有しない場合、例えば非導電帯を長手方向に切断することで形成することができる。また、前記布帛は、例えば長手方向の途中まで水溶性帯が形成されたものであってもよい。
【0056】
当該伸縮配線は、例えば前記導電帯に合成樹脂が被覆される場合、この合成樹脂は導電帯のみを被覆していてもよく、導電帯と共に一対の非導電帯を被覆していてもよい。ただし、伸縮性の低下をより確実に防止する点から、前記合成樹脂は導電帯にのみ被覆されるのが好ましい。さらに、当該伸縮配線は、例えば導電性糸が導体の周囲を被覆する合成樹脂層を有する場合、この合成樹脂層は導電性糸の対向する側からそれぞれ合成樹脂を塗布して形成されるのが好ましいが、一方側からのみ合成樹脂を塗布して形成されてもよい。このように、合成樹脂が一方側からのみ塗布される場合であっても、例えば合成樹脂が塗布されない側を前記伸縮基材との付設側とすることで、合成樹脂が塗布されない側の面を伸縮基材によって保護することができ、ひいては抵抗の変化を効果的に防止し、かつ防水性を高めることができる。
【0057】
前記布帛は、導電性糸と非導電性糸とを用いた織成によって前記導電帯及び非導電帯が形成されたものであってもよい。前記布帛が織成される場合の導電性糸51としては、例えば
図9に示すように、伸縮性を有する糸状体52の周面に導体53を巻回したものが挙げられる。また、この場合の伸縮性を有する糸状体としては、例えばポリウレタン系弾性糸、ポリアミド系エラストマー弾性糸、これらの弾性糸の周面を他の繊維で覆ったカバリング糸、天然ゴム系糸、合成ゴム系糸等が挙げられる。この場合においても、導電性糸51は、導体53と糸状体52とを撚り合わせた複合糸となると考えられる。
【0058】
当該伸縮部材は、当該伸縮配線と伸縮基材とを別個に形成して、当該伸縮配線を伸縮基材に付設する構成の他、例えば当該伸縮配線と共に伸縮基材を編成又は織成することで形成することもできる。当該伸縮部材は、このように、当該伸縮配線と共に伸縮基材を編成又は織成することで、当該伸縮配線が伸縮基材の伸縮の妨げとなるおそれを格段に低減することができる。
【実施例】
【0059】
以下、実施例によって本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0060】
[実施例1]
導電帯及びこの導電帯の両側縁に平行に配設される一対の非導電帯を有する布帛に対し、長手方向長さが10mm伸縮配線の両面からポリウレタン系エラストマーシートを重ねて120℃のホットローラーで加熱圧着して、
図3の伸縮配線11と同様の構成の伸縮配線を得た。なお、伸縮配線へ重ねたポリウレタン系エラストマーシートの平均厚みは20〜30μmであった。
【0061】
[実施例2]
伸縮配線の片面から実施例1と同様のポリウレタン系エラストマーシートを重ねて120℃のホットローラーで加熱圧着して、
図3の伸縮配線11と同様の構成の伸縮配線を得た。なお、伸縮配線へ重ねたポリウレタン系エラストマーシートの平均厚みは20〜30μmであった。
【0062】
[抵抗変化の評価]
実施例1、2において、導電帯の延伸長さを変更しつつ、この延伸長さと抵抗との関係を測定した。その結果を表1及び
図10、
図11に示す。なお、実施例1、2における抵抗は、一般的な直流定電流源と直流電圧計を用いて測定した。
【0063】
【表1】
【0064】
表1及び
図10、
図11に示すように、導電帯の両面から合成樹脂を塗布した実施例1の伸縮配線及び導電帯の片面から合成樹脂を塗布した実施例2の伸縮配線は、いずれも最大抵抗値と最小抵抗値との差が8Ω以下に抑えられることが分かった。また、導電帯の両面から合成樹脂を塗布した実施例1の伸縮配線は、導電帯の片面から合成樹脂を塗布した実施例2の伸縮配線よりも最大抵抗値と最小抵抗値との差が2.9Ω小さいことが分かった。さらに、実施例1の伸縮配線は、実施例2の伸縮配線よりも初期抵抗変化が小さいことが分かった。加えて、実施例1の伸縮配線は、実施例2の伸縮配線よりも変位に対する抵抗の変化が小さいことが分かった。