(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記亜リン酸エステル系化合物(C)が、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)フォスファイト、2,4,8,10−テトラ−t−ブチル−6−〔3−(3−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)プロポキシ〕ジベンゾ〔d,f〕〔1,3,2〕ジオキサホスフェピンおよび3,9−ビス(2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノキシ)−2,4,8,10−テトラオキサ−3,9−ジホスファスピロ[5,5]ウンデカンから選択される少なくとも1種以上である、請求項1に記載のポリカーボネート樹脂組成物。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、実施の形態を詳細に説明する。ただし、必要以上に詳細な説明は省略する場合がある。例えば、既によく知られた事項の詳細説明や実質的に同一の構成に対する重複説明を省略する場合がある。これは、以下の説明が不必要に冗長になるのを避け、当業者の理解を容易にするためである。
【0013】
なお、発明者らは、当業者が本発明を充分に理解するために以下の説明を提供するのであってこれらによって請求の範囲に記載の主題を限定することを意図するものではない。
【0014】
本発明にて使用されるポリカーボネート樹脂組成物は、ポリカーボネート樹脂(A)と、特定のポリエーテル誘導体(B)と、亜リン酸エステル系化合物(C)と、必要に応じてフェノール系酸化防止剤および硫黄系酸化防止剤から選択される酸化防止剤(D)を含有してなるものである。なお、本発明にて使用されるポリカーボネート樹脂組成物には、必要に応じてその他の成分を配合してもよい。
【0015】
本発明にて使用されるポリカーボネート樹脂(A)は、種々のジヒドロキシジアリール化合物とホスゲンとを反応させるホスゲン法、又はジヒドロキシジアリール化合物とジフェニルカーボネート等の炭酸エステルとを反応させるエステル交換法によって得られる重合体である。代表例としては、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(ビスフェノールA)から製造されたポリカーボネート樹脂が挙げられる。
【0016】
前記ジヒドロキシジアリール化合物としては、ビスフェノールAの他に、例えば、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)オクタン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)フェニルメタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル−3−メチルフェニル)プロパン、1,1−ビス(4−ヒドロキシ−3−第三ブチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−ブロモフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3、5−ジブロモフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジクロロフェニル)プロパン等のビス(ヒドロキシアリール)アルカン類;1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロペンタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン等のビス(ヒドロキシアリール)シクロアルカン類;4,4´−ジヒドロキシジフェニルエーテル、4,4´−ジヒドロキシ−3,3´−ジメチルジフェニルエーテル等のジヒドロキシジアリールエーテル類;4,4´−ジヒドロキシジフェニルスルフィド等のジヒドロキシジアリールスルフィド類;4,4´−ジヒドロキシジフェニルスルホキシド、4,4´−ジヒドロキシ−3,3´−ジメチルジフェニルスルホキシド等のジヒドロキシジアリールスルホキシド類;4,4´−ジヒドロキシジフェニルスルホン、4,4´−ジヒドロキシ−3,3´−ジメチルジフェニルスルホン等のジヒドロキシジアリールスルホン類が挙げられ、これらは単独で又は2種類以上を混合して使用される。これらの他にも、ピペラジン、ジピペリジルハイドロキノン、レゾルシン、4,4´−ジヒドロキシジフェニル等を混合して使用してもよい。
【0017】
さらに、前記ジヒドロキシジアリール化合物と、例えば以下に示す3価以上のフェノール化合物とを混合して使用してもよい。
【0018】
前記3価以上のフェノール化合物としては、例えば、フロログルシン、4,6−ジメチル−2,4,6−トリ−(4−ヒドロキシフェニル)−ヘプテン、2,4,6−ジメチル−2,4,6−トリ−(4−ヒドロキシフェニル)−ヘプタン、1,3,5−トリ−(4−ヒドロキシフェニル)−ベンゾール、1,1,1−トリ−(4−ヒドロキシフェニル)−エタン及び2,2−ビス−[4,4−(4,4´−ジヒドロキシジフェニル)−シクロヘキシル]−プロパン等が挙げられる。
【0019】
ポリカーボネート樹脂(A)の粘度平均分子量は、10000〜100000、さらには12000〜30000であることが好ましい。なお、このようなポリカーボネート樹脂(A)を製造する際には分子量調節剤、触媒等を必要に応じて使用することができる。
【0020】
本発明にて使用されるポリエーテル誘導体(B)は、下記一般式(1)で表されるポリエーテル誘導体である。
【0021】
一般式(1):
RO−(X−O)m(Y−O)n−R’ (1)
(式中、RおよびR’は、それぞれ独立して水素原子または炭素数1〜30のアルキル基を示し、Xは、炭素数2〜4のアルキレン基を、Yは、炭素数3〜5の分岐アルキレン基を、m及びnは、それぞれ独立して、3〜60の整数を示し、m+nは、8〜90の整数を示す。)
【0022】
一般式(1)において、m及びnは、それぞれ独立して、3〜60の整数であり、m+nは、8〜90の整数であるが、さらには、m及びnは、それぞれ独立して、4〜40の整数であることが好ましく、m+nは、10〜60の整数であることが好ましい。
【0023】
これまで、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールおよびポリテトラメチレングリコール等の直鎖または分岐ポリオキシアルキレングリコールの単独化合物を添加してポリカーボネート樹脂の光線透過率を向上させることが試みられてきたが、該ポリオキシアルキレングリコールは、耐熱性が不充分であるので、該ポリオキシアルキレングリコールを配合したポリカーボネート樹脂組成物を高温で成形すると、成形品の光線透過率が低下し、色相も劣る。
【0024】
これに対して、前記一般式(1)で表されるポリエーテル誘導体は、直鎖および分岐ポリオキシアルキレングリコールのランダム共重合体であり、耐熱性が高く、該一般式(1)で表される特定のポリエーテル誘導体を配合したポリカーボネート樹脂組成物を高温で成形した成形品は、光線透過率が高く色相に優れる。
【0025】
また、一般式(1)で表されるポリエーテル誘導体(B)は、直鎖および分岐ポリオキシアルキレングリコールのランダム共重合体であるため適度な親油性を有することから、ポリカーボネート樹脂(A)との相溶性にも優れるので、該ポリエーテル誘導体(B)を配合したポリカーボネート樹脂組成物から得られる成形品の透明性も向上する。
【0026】
さらに、一般式(1)で表されるポリエーテル誘導体(B)を配合することにより、ポリカーボネート樹脂組成物を成形する際に、せん断熱が必要以上に発生するのを抑制することができるほか、ポリカーボネート樹脂組成物に離型性を付与することもできるので、例えばポリオルガノシロキサン化合物といった離型剤を別途添加しなくてもよい。
【0027】
このようなポリエーテル誘導体の中でも、下記一般式(2)で表されるポリエーテル誘導体であることが好適である。
一般式(2):
HO−(CH
2CH
2CH
2CH
2O)m(CH
2CH(CH
3)O)n−H (2)
(式中、m及びnは、それぞれ独立して、3〜60の整数を示し、m+nは、8〜90の整数を示す。)
【0028】
このようなポリエーテル誘導体としては、日油製DCB−1000(平均分子量1000)、DCB−2000(平均分子量2000)およびDCB−4000(平均分子量4000)等が商業的に入手可能である。
【0029】
また、ポリエーテル誘導体としては、下記一般式(3)で表されるポリエーテル誘導体も好適である。
一般式(3):
C
4H
9O−(CH
2CH
2O)m(CH
2CH(CH
3)O)n−H (3)
(式中、m及びnは、それぞれ独立して、3〜60の整数を示し、m+nは、8〜90の整数を示す。)
【0030】
このようなポリエーテル誘導体としては、日油製ユニルーブ50MB−11(平均分子量1000)、ユニルーブ50MB−26(平均分子量2000)等(「ユニルーブ」は登録商標)が商業的に入手可能である。
【0031】
ポリエーテル誘導体の重量平均分子量は、1000〜4000、さらには2000〜3000であることが好ましい。ポリエーテル誘導体の重量平均分子量が1000未満の場合は、光線透過率の充分な向上効果が望めない恐れがあり、逆に重量平均分子量が4000を超える場合も、曇化率が上昇して光線透過率が低下する恐れがある。
【0032】
ポリエーテル誘導体の量は、ポリカーボネート樹脂(A)100重量部に対して、0.005〜3.0重量部であり、0.1〜1.5重量部、さらに0.3〜1.2重量部であることが好ましい。ポリエーテル誘導体の量が0.005重量部未満の場合は、光線透過率及び色相の向上効果が不充分である。逆にポリエーテル誘導体の量が3.0重量部を超える場合は、曇化率が上昇して光線透過率が低下してしまう。
【0033】
本発明におけるポリカーボネート樹脂組成物には、特定のポリエーテル誘導体(B)と共に、亜リン酸エステル系化合物(C)が配合されている。このように、特定のポリエーテル誘導体(B)と亜リン酸エステル系化合物(C)とを同時に配合することにより、ポリカーボネート樹脂組成物の剪断熱を極力発生させることを防止でき、ポリカーボネート樹脂(A)が本来有する耐熱性、機械的強度等の特性が損なわれることがなく、高温成形した場合であっても光線透過率が優れるポリカーボネート樹脂組成物が得られる。
【0034】
本発明にて使用される亜リン酸エステル系化合物(C)としては、例えば、下記一般式(4)で表される化合物が特に好適である。(式中、R
1は、炭素数1〜20のアルキル基を示し、aは、0〜3の整数を示す。)
一般式(4):
【0036】
前記一般式(4)において、R
1は、炭素数1〜20のアルキル基であるが、さらには、炭素数1〜10のアルキル基であることが好ましい。
【0037】
一般式(4)で表される化合物としては、例えば、トリフェニルホスファイト、トリクレジルホスファイト、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)フォスファイト、トリスノニルフェニルホスファイト等が挙げられる。これらの中でも、特にトリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)フォスファイトが好適であり、例えば、BASF社製のイルガフォス168(「イルガフォス」はビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピアの登録商標)として商業的に入手可能である。
【0038】
前記亜リン酸エステル系化合物(C)としては、前記一般式(4)で表される化合物の他にも、例えば、下記一般式(5)で表される化合物が挙げられる。
一般式(5):
【0039】
【化2】
(式中、R
2、R
3、R
5及びR
6は、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1〜8のアルキル基、炭素数5〜8のシクロアルキル基、炭素数6〜12のアルキルシクロアルキル基、炭素数7〜12のアラルキル基又はフェニル基を示す。R
4は、水素原子又は炭素数1〜8のアルキル基を示す。Xは、単結合、硫黄原子又は式:−CHR
7−(ここで、R
7は、水素原子、炭素数1〜8のアルキル基又は炭素数5〜8のシクロアルキル基を示す)で表される基を示す。Aは、炭素数1〜8のアルキレン基又は式:*−COR
8−(ここで、R
8は、単結合又は炭素数1〜8のアルキレン基を示し、*は、酸素側の結合手であることを示す)で表される基を示す。Y及びZは、いずれか一方がヒドロキシル基、炭素数1〜8のアルコキシ基又は炭素数7〜12のアラルキルオキシ基を示し、もう一方が水素原子又は炭素数1〜8のアルキル基を示す。)
【0040】
一般式(5)において、R
2、R
3、R
5及びR
6は、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1〜8のアルキル基、炭素数5〜8のシクロアルキル基、炭素数6〜12のアルキルシクロアルキル基、炭素数7〜12のアラルキル基又はフェニル基を示す。
【0041】
ここで、炭素数1〜8のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、t−ペンチル基、i−オクチル基、t−オクチル基、2−エチルヘキシル基等が挙げられる。炭素数5〜8のシクロアルキル基としては、例えば、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基等が挙げられる。炭素数6〜12のアルキルシクロアルキル基としては、例えば、1−メチルシクロペンチル基、1−メチルシクロヘキシル基、1−メチル−4−i−プロピルシクロヘキシル基等が挙げられる。炭素数7〜12のアラルキル基としては、例えば、ベンジル基、α−メチルベンジル基、α,α−ジメチルベンジル基等が挙げられる。
【0042】
前記R
2、R
3及びR
5は、それぞれ独立して、炭素数1〜8のアルキル基、炭素数5〜8のシクロアルキル基又は炭素数6〜12のアルキルシクロアルキル基であることが好ましい。特に、R
2及びR
5は、それぞれ独立して、t−ブチル基、t−ペンチル基、t−オクチル基等のt−アルキル基、シクロヘキシル基又は1−メチルシクロヘキシル基であることが好ましい。特に、R
3は、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、t−ペンチル基等の炭素数1〜5のアルキル基であることが好ましく、メチル基、t−ブチル基又はt−ペンチル基であることがさらに好ましい。
【0043】
前記R
6は、水素原子、炭素数1〜8のアルキル基又は炭素数5〜8のシクロアルキル基であることが好ましく、水素原子、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、t−ペンチル基等の炭素数1〜5のアルキル基であることがさらに好ましい。
【0044】
一般式(5)において、R
4は、水素原子又は炭素数1〜8のアルキル基を示す。炭素数1〜8のアルキル基としては、例えば、前記R
2、R
3、R
5及びR
6の説明にて例示したアルキル基が挙げられる。特に、R
4は、水素原子又は炭素数1〜5のアルキル基であることが好ましく、水素原子又はメチル基であることがさらに好ましい。
【0045】
一般式(5)において、Xは、単結合、硫黄原子又は式:−CHR
7−で表される基を示す。ここで、式:−CHR
7−中のR
7は、水素原子、炭素数1〜8のアルキル基又は炭素数5〜8のシクロアルキル基を示す。炭素数1〜8のアルキル基及び炭素数5〜8のシクロアルキル基としては、例えば、それぞれ前記R
2、R
3、R
5及びR
6の説明にて例示したアルキル基及びシクロアルキル基が挙げられる。特に、Xは、単結合、メチレン基、又はメチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、t−ブチル基等で置換されたメチレン基であることが好ましく、単結合であることがさらに好ましい。
【0046】
一般式(5)において、Aは、炭素数1〜8のアルキレン基又は式:*−COR
8−で表される基を示す。炭素数1〜8のアルキレン基としては、例えば、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基、オクタメチレン基、2,2−ジメチル−1,3−プロピレン基等が挙げられ、好ましくはプロピレン基である。また、式:*−COR
8−におけるR
8は、単結合又は炭素数1〜8のアルキレン基を示す。R
8を示す炭素数1〜8のアルキレン基としては、例えば、前記Aの説明にて例示したアルキレン基が挙げられる。R
8は、単結合又はエチレン基であることが好ましい。また、式:*−COR
8−における*は、酸素側の結合手であり、カルボニル基がフォスファイト基の酸素原子と結合していることを示す。
【0047】
一般式(5)において、Y及びZは、いずれか一方がヒドロキシル基、炭素数1〜8のアルコキシ基又は炭素数7〜12のアラルキルオキシ基を示し、もう一方が水素原子又は炭素数1〜8のアルキル基を示す。炭素数1〜8のアルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、t−ブトキシ基、ペンチルオキシ基等が挙げられる。炭素数7〜12のアラルキルオキシ基としては、例えば、ベンジルオキシ基、α−メチルベンジルオキシ基、α,α−ジメチルベンジルオキシ基等が挙げられる。炭素数1〜8のアルキル基としては、例えば、前記R
2、R
3、R
5及びR
6の説明にて例示したアルキル基が挙げられる。
【0048】
一般式(5)で表される化合物としては、例えば、2,4,8,10−テトラ−t−ブチル−6−〔3−(3−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)プロポキシ〕ジベンゾ〔d,f〕〔1,3,2〕ジオキサホスフェピン、6−[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロポキシ]−2,4,8,10−テトラ−t−ブチルジベンゾ[d,f][1,3,2]ジオキサホスフェピン、6−[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロポキシ]−4,8−ジ−t−ブチル−2,10−ジメチル−12H−ジベンゾ[d,g][1,3,2]ジオキサホスホシン、6−[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ]−4,8−ジ−t−ブチル−2,10−ジメチル−12H−ジベンゾ[d,g][1,3,2]ジオキサホスホシン等が挙げられる。これらの中でも、特に光学特性が求められる分野に、得られるポリカーボネート樹脂組成物を用いる場合には、2,4,8,10−テトラ−t−ブチル−6−〔3−(3−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)プロポキシ〕ジベンゾ〔d,f〕〔1,3,2〕ジオキサホスフェピンが好適であり、例えば、住友化学(株)製のスミライザーGP(「スミライザー」は登録商標)として商業的に入手可能である。
【0049】
前記亜リン酸エステル系化合物(C)としては、前記一般式(4)及び一般式(5)で表される化合物の他にも、例えば、一般式(6)で表される化合物が好適に使用され得る。
一般式(6):
【0050】
【化3】
(式中、R
9及びR
10は、それぞれ独立して、炭素数1〜20のアルキル基又はアルキル基で置換されていてもよいアリール基を示し、b及びcは、それぞれ独立して、0〜3の整数を示す。)
【0051】
一般式(6)で表される化合物としては、例えば、(株)ADEKA製のアデカスタブPEP−36(「アデカスタブ」は登録商標)が商業的に入手可能である。
【0052】
亜リン酸エステル系化合物(C)の量は、ポリカーボネート樹脂(A)100重量部に対して、0.005〜1.0重量部であり、0.01〜0.5重量部、さらに0.02〜0.1重量部であることが好ましい。亜リン酸エステル系化合物(C)の量が0.005重量部未満の場合は、光線透過率及び色相の向上効果が不充分である。逆に亜リン酸エステル系化合物(C)の量が1.0重量部を超える場合も、光線透過率及び色相の向上効果が不充分である。
【0053】
本発明におけるポリカーボネート樹脂組成物には、特定のポリエーテル誘導体(B)と共に、亜リン酸エステル系化合物(C)に加え、必要に応じて、特定の酸化防止剤(D)が配合され得る。このように、特定のポリエーテル誘導体(B)と亜リン酸エステル系化合物(C)と特定の酸化防止剤(D)を同時に配合することにより、上記したように、高温成形した場合であっても光線透過率が優れ、さらに、耐加水分解性にも優れるポリカーボネート樹脂組成物が得られる。
【0054】
本発明にて使用される酸化防止剤(D)としては、フェノール系酸化防止剤および硫黄系酸化防止剤から選択される少なくとも1種以上の酸化防止剤である。
【0055】
本発明にて使用されるフェノール系酸化防止剤としては、ヒンダードフェノール系、セミヒンダードフェノール系およびレスヒンダードフェノール系の酸化防止剤が好適であり、とりわけヒンダードフェノール系酸化防止剤が好適である。
【0056】
ヒンダードフェノール系酸化防止剤としては、ペンタエリスリトールテトラキス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、オクタデシル−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート等が好適であり、ADEKA製のアデカスタブAO−50、アデカスタブAO−60、等として商業的に入手可能である。
【0057】
セミヒンダードフェノール系酸化防止剤としては、3,9−ビス[2−[3−(3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ]−1,1−ジメチルエチル]−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカン等が好適であり、ADEKA製のアデカスタブAO−80等として商業的に入手可能である。
【0058】
レスヒンダードフェノール系酸化防止剤としては、6,6‘−ジ−tert−ブチル−4,4’−ブチリデンジ−m−クレゾール等が好適であり、ADEKA製のアデカスタブAO−40等として商業的に入手可能である。
【0059】
フェノール系酸化防止剤の量は、ポリカーボネート樹脂(A)100重量部に対して、0〜1.0重量部であり、好ましくは0.01〜0.4重量部である。フェノール系酸化防止剤の量が1.0重量部を超える場合は、光線透過率及び色相の向上効果が不充分であるだけでなく、耐加水分解性が低下するので好ましくない。
【0060】
本発明にて使用される硫黄系酸化防止剤とは、硫黄原子を含有する有機化合物であり、2,2−ビス[3−(ドデシルチオ)プロパノイルオキシメチル]−1,3−プロパンジオールビス[3−(ドデシルチオ)プロピオナート]等が好適である。硫黄系酸化防止剤は市販品として入手することができ、硫黄系酸化防止剤の市販品として、例えば、スミライザーMB(住友化学社製)、アデカスタブAO−412S(ADEKA社製)等が挙げられる。
【0061】
硫黄系酸化防止剤の量は、ポリカーボネート樹脂(A)100重量部に対して、0〜1.0重量部であり、好ましくは0.01〜0.4重量部である。硫黄系酸化防止剤の量が1.0重量部を超える場合は、光線透過率及び色相の向上効果が不充分であるだけでなく、耐加水分解性が低下するので好ましくない。
【0062】
以上の成分に加えて、実施の形態に係るポリカーボネート樹脂組成物へは、例えば、ポリカーボネート樹脂組成物を成形して得られる成形品の用途に応じて、得られるポリカーボネート樹脂組成物の耐候性をより向上させる成分である紫外線吸収剤を適宜用いることができる。
【0063】
紫外線吸収剤としては、例えば、ベンゾトリアゾール系化合物、トリアジン系化合物、シュウ酸アニリド系化合物、シアノアクリレート系化合物、サリシレート系化合物およびベンゾフェノン系化合物等の、ポリカーボネート樹脂に通常配合される紫外線吸収剤を、単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0064】
ベンゾトリアゾール系化合物としては、例えば、ベンゾトリアゾール系化合物としては、2−(2−ヒドロキシ−5−t−オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(3−tert−butyl−2−hydroxy−5−methylphenyl)−5−chloro−2H−benzotriazole、2−(3,5−di−tert−pentyl−2−hydroxyphenyl)−2H−benzotriazole、2−(2H−benzotriazole−2−yl)−4−methyl−6−(3,4,5,6−tetrahydrophthalimidylmethyl)phenol、2−(2−hydroxy−4−octyloxyphenyl)−2H−benzotriazole、2−(2−hydroxy−5−tert−octylphenyl)−2H−benzotriazole、2−[2’−hydroxy−3,5−di(1,1−dimethylbenzyl)phenyl]−2H−benzotriazole、2,2’−Methylenbis[6−(2H−benzotriazol−2−yl)4−(1,1,3,3−tetramethylbutyl)phenol]などが挙げられる。なかでも、特に、2−(2−ヒドロキシ−5−t−オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール等が好適であり、例えば、BASF社製のTINUVIN 329(TINUVINは登録商標)、シプロ化成(株)製のシーソーブ709(シーソーブは登録商標)、ケミプロ化成(株)製のケミソーブ79(ケミソーブは登録商標)等が商業的に入手可能である。
【0065】
トリアジン系化合物としては、例えば、2,4−ジフェニル−6−(2−ヒドロキシフェニル−4−ヘキシルオキシフェニル)1,3,5−トリアジン、2−[4,6−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジン−2−イル]−5−(オクチルオキシ)フェノール、2−(4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジン−2−イル)−5−[(ヘキシル)オキシ]フェノール等が挙げられ、例えば、BASF社製のTINUVIN 1577等が商業的に入手可能である。
【0066】
シュウ酸アニリド系化合物としては、例えば、クラリアントジャパン(株)製のSanduvor VSU(Sanduvorは登録商標)等が商業的に入手可能である。
【0067】
シアノアクリレート系化合物としては、例えば、BASF社製のUvinul3030(Uvinulは登録商標)等が商業的に入手可能である。
【0068】
サリシレート系化合物としては、例えば、シプロ化成(株)製のシーソーブ201、ケミプロ化成(株)製のケミソーブ21等が商業的に入手可能である。
【0069】
ベンゾフェノン系化合物としては、例えば、シプロ化成(株)製のシーソーブ102、ケミプロ化成(株)製のケミソーブ11、BASF社製のUvinul3049等が商業的に入手可能である。
【0070】
紫外線吸収剤の量は、ポリカーボネート樹脂(A)100重量部に対して0〜1.0重量部であり、好ましくは0.1〜0.5重量部であることが好ましい。紫外線吸収剤の量が1.0重量部を超える場合は、得られるポリカーボネート樹脂組成物の初期の色相が低下するおそれがある。また、紫外線吸収剤の量が0.1重量部以上の場合は特に、ポリカーボネート樹脂組成物の耐候性をより向上させる効果が大きく奏される。
【0071】
さらに、実施の形態に係るポリカーボネート樹脂組成物には、本発明における効果を損なわない範囲で、例えば、他の酸化防止剤、着色剤、離型剤、軟化剤、帯電防止剤、衝撃性改良剤等の各種添加剤、ポリカーボネート樹脂(A)以外のポリマー等が適宜配合されていてもよい。
【0072】
ポリカーボネート樹脂組成物の製造方法には特に限定がなく、ポリカーボネート樹脂(A)、特定構造のポリエーテル(B)、亜リン酸エステル系化合物(C)、および必要に応じて特定の酸化防止剤(D)を、さらに、それらに加えて前記各種添加剤やポリカーボネート樹脂(A)以外のポリマー等について、各成分の種類及び量を適宜調整し、これらを、例えばタンブラー、リボンブレンダー等の公知の混合機にて混合する方法や、押出機にて溶融混練する方法が挙げられる。これらの方法により、ポリカーボネート樹脂組成物のペレットを容易に得ることができる。
【0073】
前記のごとく得られるポリカーボネート樹脂組成物のペレットの形状及び大きさには特に限定がなく、一般的な樹脂ペレットが有する形状及び大きさであればよい。例えば、ペレットの形状としては、楕円柱状、円柱状等が挙げられる。ペレットの大きさとしては、長さが2〜8mm程度であることが好適であり、楕円柱状の場合、断面楕円の長径が2〜8mm程度、短径が1〜4mm程度であることが好適であり、円柱状の場合、断面円の直径が1〜6mm程度であることが好適である。なお、得られたペレット1つずつがこのような大きさであってもよく、ペレット集合体を形成する全てのペレットがこのような大きさであってもよく、ペレット集合体の平均値がこのような大きさであってもよく、特に限定はない。
【0074】
本発明のポリカーボネート樹脂組成物を成形する方法には特に限定がなく、例えば、公知の射出成形法、圧縮成形法等によりポリカーボネート樹脂組成物を成形する方法が挙げられる。
【0075】
以上のように、本発明の例示として、実施の形態を説明した。しかしながら、本発明における技術は、これに限定されず、適宜、変更、置き換え、付加、省略などを行った実施の形態にも適用可能である。
【実施例】
【0076】
以下に、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に制限されるものではない。なお、特にことわりがない限り、「部」及び「%」はそれぞれ重量基準である。
【0077】
原料として以下のものを使用した。
1.ポリカーボネート樹脂(A):
ビスフェノールAと塩化カルボニルとから合成されたポリカーボネート樹脂
カリバー200−80
(商品名、住化スタイロンポリカーボネート(株)製、「カリバー」はスタイロン ユーロップ ゲーエムベーハーの登録商標、粘度平均分子量:15000、以下「PC」という)
【0078】
2.ポリエーテル誘導体(B):
2−1. DCB−2000
(商品名、日油(株)製、重量平均分子量:2000、以下「化合物B1」という)
2−2. ユニルーブ50MB−26
(商品名、日油(株)製、重量平均分子量:2000、以下「化合物B2」という)
【0079】
3.亜リン酸エステル系化合物(C):
3−1. 以下の式で表される、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)フォスファイト
【0080】
【化4】
イルガフォス168
(商品名、BASF社製、以下「化合物C1」という)
【0081】
3−2. 以下の式で表される、2,4,8,10−テトラ−t−ブチル−6−〔3−(3−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)プロポキシ〕ジベンゾ〔d,f〕〔1,3,2〕ジオキサホスフェピン
【0082】
【化5】
スミライザーGP(商品名、住友化学製、以下「化合物C2」という)
【0083】
3−3. 以下の式で表される、3,9−ビス(2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノキシ)−2,4,8,10−テトラオキサ−3,9−ジホスファスピロ[5,5]ウンデカン
【0084】
【化6】
アデカスタブPEP−36(商品名、ADEKA製、以下「化合物C3」という)
【0085】
4.酸化防止剤(D):
4−1.フェノール系酸化防止剤
以下の式で表される、ペンタエリスリトールテトラキス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]
【0086】
【化7】
アデカスタブAO−60
(商品名、ADEKA社製、以下「化合物D」という)
【0087】
4−2.硫黄系酸化防止剤
以下の式で表される、2,2−ビス[3−(ドデシルチオ)プロパノイルオキシメチル]−1,3−プロパンジオールビス[3−(ドデシルチオ)プロピオナート]
【0088】
【化8】
アデカスタブAO−412S
(商品名、ADEKA社製、以下「化合物E」という)
【0089】
(1)第1実施態様
実施例1〜6及び比較例1〜4
前記各原料を、表1に示す割合にて一括してタンブラーに投入し、10分間乾式混合した後、二軸押出機((株)日本製鋼所製、TEX30α)を用いて、溶融温度220℃にて溶融混練し、ポリカーボネート樹脂組成物のペレットを得た。なお、実施例及び比較例で得られたペレットは、ほぼ楕円柱状であり、ペレット100個からなる集合体は、各々、長さの平均値が約5.1mm〜約5.4mm、断面楕円の長径の平均値が約4.1mm〜約4.3mm、短径の平均値が約2.2mm〜約2.3mmであった。
【0090】
得られたペレットを用い、以下の方法にしたがって、各評価用試験片を作製して評価に供した。その結果を表1に示す。
【0091】
(試験片の作製方法)
得られたペレットを120℃で4時間以上乾燥した後、射出成形機(ファナック(株)製、ROBOSHOT S2000i100A)を用い、成形温度360℃、金型温度80℃にて、JIS K 7139「プラスチック−試験片」にて規定の多目的試験片A型(全長168mm×厚さ4mm)を作製した。この試験片の端面を切削し、切削端面について、樹脂板端面鏡面機(メガロテクニカ(株)製、プラビューティーPB−500)を用いて鏡面加工した。
【0092】
(積算透過率の評価方法)
分光光度計((株)日立製作所製、UH4150)に長光路測定付属装置を設置し、光源として50Wハロゲンランプを用いて、光源前マスク5.6mm×2.8mm、試料前マスク6.0mm×2.8mmを使用した状態で、波長380〜780nmの領域で1nm毎の試験片各々の分光透過率を、試験片の全長方向について測定した。測定した分光透過率を積算し、十の位を四捨五入することにより、各々の積算透過率を求めた。なお、積算透過率が30000以上を良好(表中、○で示す)、30000未満を不良(表中、×で示す)とした。
【0093】
(黄色度の評価方法)
前記積算透過率の評価方法において測定した分光透過率に基づき、標準光源D65を用い、10度視野にて各々の黄色度を求めた。なお、黄色度が20以下を良好(表中、○で示す)、20を超えると不良(表中、×で示す)とした。
【0094】
【表1】
【0095】
実施例1〜6のポリカーボネート樹脂組成物は、ポリカーボネート樹脂(A)に、特定のポリエーテル誘導体(B)と、亜リン酸エステル系化合物(C)とが、各々特定の割合で配合されたものである。したがって、該ポリカーボネート樹脂組成物から成形された試験片は、積算透過率が高く、かつ、黄色度が小さい。
【0096】
このように、実施例1〜6のポリカーボネート樹脂組成物は、ポリカーボネート樹脂が本来有する耐熱性が損なわれることがなく、熱安定性に優れるため、高温で成形加工した場合でも光線透過率に優れている。そして、このようなポリカーボネート樹脂組成物を成形した成形品は、黄色度が小さく色相に優れ、しかも高温で成形加工した場合でも色相に優れている。
【0097】
これに対して、比較例1のポリカーボネート樹脂組成物は、特定構造のポリエーテル誘導体(B2)の量が少ないので、積算透過率が低く、かつ黄色度が大きい。このように、比較例1のポリカーボネート樹脂組成物を成形した成形品は、輝度および色相に劣る。
【0098】
比較例2のポリカーボネート樹脂組成物は、特定構造のポリエーテル誘導体(B2)の量が多いので、成形品が白濁し、評価できなかった。このように、比較例2のポリカーボネート樹脂組成物を成形した成形品は、輝度および色相に劣る。
【0099】
比較例3のポリカーボネート樹脂組成物は、亜リン酸エステル系化合物(C1)の量が少ないので、積算透過率が低い。このように、比較例3のポリカーボネート樹脂組成物を成形した成形品は、輝度に劣る。
【0100】
比較例4のポリカーボネート樹脂組成物は、亜リン酸エステル系化合物(C1)の量が多ので、積算透過率が低く、かつ黄色度が大きい。このように、比較例4のポリカーボネート樹脂組成物を成形した成形品は、輝度および色相に劣る。
【0101】
(2)第2実施態様
実施例7〜8及び比較例5〜6
前記各原料を、表2に示す割合にて一括してタンブラーに投入し、10分間乾式混合した後、二軸押出機((株)日本製鋼所製、TEX30α)を用いて、溶融温度220℃にて溶融混練し、ポリカーボネート樹脂組成物のペレットを得た。なお、実施例及び比較例で得られたペレットは、ほぼ楕円柱状であり、ペレット100個からなる集合体は、各々、長さの平均値が約5.1mm〜約5.4mm、断面楕円の長径の平均値が約4.1mm〜約4.3mm、短径の平均値が約2.2mm〜約2.3mmであった。
【0102】
得られたペレットを用い、以下の方法にしたがって、各評価用試験片を作製して評価に供した。その結果を表2に示す。
【0103】
(試験片の作製方法)
得られたペレットを120℃で4時間以上乾燥した後、射出成形機(ファナック(株)製、ROBOSHOT S2000i100A)を用い、成形温度360℃、金型温度80℃にて、JIS K 7139「プラスチック−試験片」にて規定の多目的試験片A型(全長168mm×厚さ4mm)を作製した。この試験片の端面を切削し、切削端面について、樹脂板端面鏡面機(メガロテクニカ(株)製、プラビューティーPB−500)を用いて鏡面加工した。
【0104】
(積算透過率の評価方法)
分光光度計((株)日立製作所製、UH4150)に長光路測定付属装置を設置し、光源として50Wハロゲンランプを用いて、光源前マスク5.6mm×2.8mm、試料前マスク6.0mm×2.8mmを使用した状態で、波長380〜780nmの領域で1nm毎の試験片各々の分光透過率を、試験片の全長方向について測定した。測定した分光透過率を積算し、十の位を四捨五入することにより、各々の積算透過率を求めた。なお、積算透過率が30000以上を良好(表中、○で示す)、30000未満を不良(表中、×で示す)とした。
【0105】
(黄色度の評価方法)
前記積算透過率の評価方法において測定した分光透過率に基づき、標準光源D65を用い、10度視野にて各々の黄色度を求めた。なお、黄色度が20以下を良好(表中、○で示す)、20を超えると不良(表中、×で示す)とした。
【0106】
(成形品の加水分解性の評価)
上記で得られた試験片を、アドバンテック社製AG−327 CONSTANT TEMP HUMIDITY INCUBATOT中に設置し、85℃、相対湿度90%の条件で200時間静置した。試験後の試験片の黄色度(以下、YI)を測定し、ΔYI(YIの差)を求めた。△YIとは試験前後の黄色度の変化の程度を表し、△YIが小さい程、変色は小さく耐加水分解性に優れている。△YIの評価基準としては、△YIの値が15.0未満であるものを良好(○)、15.0以上であるものを不良(×)とした。
【0107】
【表2】
【0108】
実施例7〜8のポリカーボネート樹脂組成物は、ポリカーボネート樹脂(A)に、一般式(1)で表される特定のポリエーテル誘導体(B)と、亜リン酸エステル系化合物(C)と、フェノール系酸化防止剤および硫黄系酸化防止剤から選択される酸化防止剤(D)が、各々特定の割合で配合されたものである。
【0109】
実施例7〜8のポリカーボネート樹脂組成物から成形された168mm長光路試験片は、積算透過率および色相に優れているだけでなく、耐加水分解性も良好であった。
【0110】
これに対して、比較例5〜6のポリカーボネート樹脂組成物から成形された168mm長光路試験片は、積算透過率および色相に劣っているだけでなく、耐加水分解性も劣っていた。
【0111】
以上のように、本発明における技術の例示として実施の形態を説明した。そのために、詳細な説明を提供した。
【0112】
したがって、詳細な説明に記載された構成要素の中には、課題解決のために必須な構成要素だけでなく、上記技術を例示するために、課題解決のためには必須でない構成要素も含まれ得る。そのため、それらの必須ではない構成要素が詳細な説明に記載されていることをもって、直ちに、それらの必須ではない構成要素が必須であるとの認定をするべきではない。
【0113】
また、上述の実施の形態は、本発明における技術を例示するためのものであるから、特許請求の範囲またはその均等の範囲において種々の変更、置き換え、付加、省略などを行うことができる。