(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
中心軸を有するレンズホルダと、前記レンズホルダを軸方向へ移動自在に支持する板ばねと、前記板ばねが固定された支持部材と、前記レンズホルダの外側に設けられて前記レンズホルダに軸方向への駆動力を与える軸方向駆動機構とを備えた可動ユニットと、
基台上で前記可動ユニットを前記中心軸と交差する方向へ移動自在に支持する支持ばね部材と、前記可動ユニットに前記中心軸と交差する方向の駆動力を与える軸交差駆動機構とが設けられており、
前記支持部材に磁性材料製で平面視が四角形の金属部材が固定され、前記金属部材には、前記四角形の4つの辺に設けられて互いに直交する4方向から前記レンズホルダと対向する側板部と、前記四角形の角部に位置して前記側板部を互いに分離する4つの切欠き部と、前記金属部材の内側からそれぞれの前記切欠き部に対向する4つの対向板部と、が設けられており、
前記軸方向駆動機構は、前記レンズホルダにおいて前記中心軸回りに形成された第1のコイルと、前記側板部と、前記側板部に直接に支持されて前記側板部と前記第1のコイルとの間に位置する磁石とを有し、前記磁石は、前記第1のコイルに対向する着磁面と前記側板部に対向する着磁面とが異なる磁極に着磁されて、前記対向板部の両側部は、前記第1のコイルを挟んで、前記側板部の一部に対向しており
前記軸交差駆動機構は、前記基台上に設けられて前記中心軸と交差する面内で電流が流れる第2のコイルを有しており、前記磁石と前記側板部の端部が、前記第2のコイルに対向していることを特徴とするレンズ駆動装置。
前記第2のコイルは、前記中心軸から離れた位置にある外側電磁作用部と、前記中心軸に近い側に位置して前記外側電磁作用部と逆向きに電流が流れる内側電磁作用部とを有しており、
前記磁石の端部が、前記外側電磁作用部と前記内側電磁作用部との間に対向し、前記側板部の端部が前記外側電磁作用部に対向する請求項1記載のレンズ駆動装置。
前記支持部材には、第1の支持部と、前記第1の支持部から離れる方向に延びる脚部と、前記脚部の先部に形成された第2の支持部が形成され、前記板ばねは第1の板ばねと第2の板ばねとを有し、前記第1の板ばねが前記第1の支持部に固定され、前記第2の板ばねが前記第2の支持部に固定されており、
前記脚部は前記金属部材の前記切欠き部に配設され、前記磁石は前記脚部と脚部との間に設けられている請求項1ないし3のいずれかに記載のレンズ駆動装置。
前記第1の板ばねは、前記支持部材と前記金属部材との間に挟まれて固定され、前記第1の板ばねと前記金属部材とが絶縁されており、前記支持ばね部材は前記第1の板ばねに連結されて、前記支持ばね部材から前記第1の板ばねを経由して前記第1のコイルに通電可能に構成される請求項4記載のレンズ駆動装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に記載されたマグネットホルダはその形状から合成樹脂材料で形成されていると考えられる。
【0008】
このレンズ駆動装置は、フォーカス駆動機構と手振れ補正機構とで永久磁石が共通に使用されているが、永久磁石が合成樹脂製のマグネットホルダに搭載されていると、永久磁石の磁界が分散して、フォーカスコイルと手振れ補正コイルの双方へ磁束を効果的に与えることが難しい。それぞれのコイルに十分な磁束密度で磁界を作用させるためには、大きな永久磁石を使用することが必要になり、または高保磁力を有する高価な永久磁石を使用することが必要となり、レンズ駆動装置が大型化しあるいは製造コストが高くなる。
【0009】
本発明は、上記従来の課題を解決するものであり、2つの磁気駆動機構に対して共通の磁石から高い磁束密度で磁界を作用させることができるレンズ駆動装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、中心軸を有するレンズホルダと、前記レンズホルダを軸方向へ移動自在に支持する板ばねと、前記板ばねが固定された支持部材と、前記レンズホルダの外側に設けられて前記レンズホルダに軸方向への駆動力を与える軸方向駆動機構とを備えた可動ユニットと、
基台上で前記可動ユニットを前記中心軸と交差する方向へ移動自在に支持する支持ばね部材と、前記可動ユニットに前記中心軸と交差する方向の駆動力を与える軸交差駆動機構とが設けられており、
前記支持部材に磁性材料製で平面視が四角形の金属部材が固定され、前記金属部材には、前記四角形の4つの辺に設けられて互いに直交する4方向から前記レンズホルダと対向する側板部と、前記四角形の角部に位置して前記側板部を互いに分離する4つの切欠き部と、前記金属部材の内側からそれぞれの前記切欠き部に対向する4つの対向板部と、が設けられており、
前記軸方向駆動機構は、前記レンズホルダにおいて前記中心軸回りに形成された第1のコイルと、
前記側板部と、前記側板部に
直接に支持されて前記側板部と前記第1のコイルとの間に位置する磁石とを有し、
前記磁石は、前記第1のコイルに対向する着磁面と前記側板部に対向する着磁面とが異なる磁極に着磁されて、前記対向板部の両側部は、前記第1のコイルを挟んで、前記側板部の一部に対向しており
前記軸交差駆動機構は、前記基台上に設けられて前記中心軸と交差する面内で電流が流れる第2のコイルを有しており、前記磁石と前記側板部の端部が、前記第2のコイルに対向していることを特徴とするものである。
【0011】
本発明のレンズ駆動装置は、磁性材料製のヨーク部材である側板部が、磁石を支持し、側板部の端部が第2のコイルに対向している。そのため、磁石からの磁束を、第1のコイルと第2のコイルの双方へ集中させて与えることができ、軸方向駆動機構と軸交差駆動機構の双方の駆動効率を高めることが可能になる。
また、金属部材に切欠き部が形成されてそれぞれの側板部が互いに分離されている。そのため、それぞれ磁石からの磁界を個々の側板部で個別に誘導することができ、すなわち異なる側板部の間を通る磁束を少なくできるようになり、第1のコイルと第2のコイルの双方へ磁束を効果的に誘導できるようになる。
【0012】
本発明のレンズ駆動装置は、前記第2のコイルは、前記中心軸から離れた位置にある外側電磁作用部と、前記中心軸に近い側に位置して前記外側電磁作用部と逆向きに電流が流れる内側電磁作用部とを有しており、
前記磁石の端部が、前記外側電磁作用部と前記内側電磁作用部との間に対向し、前記側板部の端部が前記外側電磁作用部に対向することが好ましい。
【0013】
上記のように、磁石の端部と側板部の端部を配置すると、磁石からの磁束を外側電磁作用部と内側電磁作用部の双方に効果的に交差させることができる。
【0014】
本発明は、前記外側電磁作用部は、電流の流れる方向の寸法が、前記側板部の下端の長さよりも長く形成されていることが好ましい。
【0015】
上記構成では、側板部の下端に集中させて誘導することができる磁束を、第2のコイルの電磁作用部に無駄なく供給することが可能になる。
【0019】
また、本発明のレンズ駆動装置は、前記支持部材には、第1の支持部と、前記第1の支持部から離れる方向に延びる脚部と、前記脚部の先部に形成された第2の支持部が形成され、前記板ばねは第1の板ばねと第2の板ばねとを有し、前記第1の板ばねが前記第1の支持部に固定され、前記第2の板ばねが前記第2の支持部に固定されており、
前記脚部は前記金属部材の前記切欠き部に配設され、前記磁石は前記脚部と脚部との間に設けられているものとして構成できる。
【0020】
上記構成では、2つの板ばねの相対位置を高精度に決めることができ、支持部材とレンズホルダとの相対位置も高精度に設定できる。しかも磁石を支持部材の脚部と脚部との間で位置決めできるので、それぞれの磁石を正確に位置決めできるようになる。
【0021】
本発明のレンズ駆動装置は、前記第1の板ばねは、前記支持部材と前記金属部材との間に挟まれて固定され、前記第1の板ばねと前記金属部材とが絶縁されており、前記支持ばね部材は前記第1の板ばねに連結されて、前記支持ばね部材から前記第1の板ばねを経由して前記第1のコイルに通電可能に構成されることが好ましい。
【発明の効果】
【0022】
本発明は、軸方向駆動機構と軸交差駆動機構とで磁石を共通に使用しているが、磁石を支持する側板部の端部が磁石の端部とともに第2のコイルに対向しているため、磁石からの磁束を、第1のコイルと第2のコイルの双方へ集中させて与えることができ、軸方向駆動機構と軸交差駆動機構の双方の駆動効率を高めることが可能になる。
【発明を実施するための形態】
【0024】
図1に示すレンズ駆動装置1は、携帯用電話機や携帯用情報端末装置などに撮像素子と共に搭載されるものである。以下の実施の形態では省略されているが、レンズ駆動装置1に前記撮像素子に対向するレンズが搭載されており、レンズが光軸方向へ駆動されて自動焦点調整が行われ、またレンズが光軸と交差する方向へ駆動されて手振れ補正が行われる。
【0025】
(全体構造)
各図では、Z1方向がレンズ駆動装置1の上方であり、Z2方向がレンズ駆動装置の下方である。Z1方向は、撮像素子で撮影すべき対象物が存在する前方でもあり、Z2方向は撮像素子が存在する後方でもある。
図4と
図5は、上下逆向きに示されており、本来の上方向であるZ1方向が図示下向きとされている。その他の各図では、Z1が図示上方へ向けられている。
【0026】
図1にはレンズ駆動装置1の全体構造が示されており、
図2にはカバーを外した状態のレンズ駆動装置1が示され、
図3には主要部別に分割されたレンズ駆動装置1が示されている。
【0027】
図3に示すように、レンズ駆動装置1は、基台構造部10を有している。基台構造部10には合成樹脂製の基台11が設けられており、この基台11に金属板製の金属ベース12が埋設されている。金属ベース12と基台11はいわゆるインサート成形法で一体化されている。金属ベース12には、支持ばね部材である4本のサスペンションワイヤ8の基端部8aが固定されており、支持ばね部材であるサスペンションワイヤ8の先端部8bによって可動ユニット20がZ軸と交差する方向(直交する方向)へ動作自在に支持されている。
【0028】
サスペンションワイヤ8は、比較的剛性が高く且つ導電性を有する金属線であり、例えば銅合金で形成されている。
【0029】
レンズ駆動装置1には、可動ユニット20を覆うカバー2が設けられている。カバー2は非磁性のステンレス鋼板などで形成されている。カバー2は立方体形状であり、4つの側板2aと上方(Z1方向に)に位置する天井板2bとが一体に形成されている。天井板2bには、光を透過させるための円形の窓2cが開口している。
【0030】
図7に示すように、それぞれの側板2aの下縁部2dは、基台構造部10に設けられた基台11の上面に突き当てられ、基台11とカバー2とが接着剤などで固定されている。
【0031】
(可動ユニット20)
図4と
図5に可動ユニット20を構造が示されている。
【0032】
可動ユニット20は、Z1方向の最上部に位置する支持部材21を有している。支持部材21は合成樹脂材料で形成されている。支持部材21は、平面視が四角形(ほぼ正方形)の枠部22と、四角形の各角部から下方(Z2方向)へ一体に延び出る4個の脚部23を有している。
【0033】
図4に示すように、枠部22には4か所に第1の支持部22aが形成されており、それぞれの第1の支持部22aに、下方(Z2方向)に突出する第1の固定突起22bが一体に形成されている。それぞれの脚部23の下方(Z2方向)に向く先部に第2の支持部23aが形成されており、それぞれの第2の支持部23aに、下方(Z2方向)に突出する第2の固定突起23bが一体に形成されている。
図4では、第1の固定突起22bと第2の固定突起23bの先端部がつぶれた形状で示されているが、可動ユニット20が組み立てられる前は第1の固定突起22bと第2の固定突起23bが円柱形状の突起であり、後のかしめ作業で第1の固定突起22bと第2の固定突起23bの先部が潰される。
【0034】
可動ユニット20では、支持部材21にレンズホルダ25が支持されている。レンズホルダ25は合成樹脂製であり、平面視は四角形と円弧形状を組み合わせたような筒状である(
図6参照)。レンズホルダ25には中央部に上下方向(Z方向)に貫通する円形の保持穴26が形成されている。撮像用のレンズは鏡筒に保持され、鏡筒が保持穴26に装着される。なお、実施の形態ではレンズと鏡筒の図示を省略している。
【0035】
レンズホルダ25の中心軸Oはレンズの光軸と一致しており、中心軸OはZ方向と平行である。
【0036】
図6および
図8には、レンズホルダ25の上面25aが現れている。前記上面25aには、ばね接合面27が2か所に形成されており、それぞれのばね接合面27に、2個ずつの位置決め突起27aが一体に形成されている。それぞれの位置決め突起27aは上方(Z1方向)に向けて突出している。
図4と
図5には、レンズホルダ25の下面25bが現れている。前記下面25bには、ばね接合面28が2か所に形成されており、それぞれのばね接合面28に、2個ずつの固定突起28aが一体に形成されている。固定突起28aは下方(Z2方向)に向けて突出している。
【0037】
図4と
図8などに示すように、レンズホルダ25の外周には、軸方向駆動機構50を構成する第1のコイル51が巻かれている。第1のコイル51は、巻き線が中心軸Oの周囲を周回する方向に巻かれており、第1のコイル51に与えられる制御電流は中心軸Oと交差する向きに流れる。
【0038】
レンズホルダ25は第1の板ばね30と第2の板ばね40を介して前記支持部材21に支持されている。
【0039】
図4と
図8に示すように、第1の板ばね30は、2つの分割ばね部31,31で構成されている。それぞれの分割ばね部31は、銅合金やリン青銅板などの導電性のばね性金属板で形成されている。
【0040】
それぞれの分割ばね部31には、外側固定部32と内側固定部33、ならびに外側固定部32と内側固定部33とを連結するばね変形部34とが一体に形成されている。それぞれの外側固定部32の2か所に固定穴32aが形成され、それぞれの内側固定部33の2か所に固定穴33aが形成されている。
【0041】
それぞれの分割ばね部31の角部には挿通穴35が形成され、挿通穴35の外側には支持穴36が形成されている。また、支持穴36が形成されている部分から連続する熱伝達部37が、前記挿通穴35の内部に向けて一体に形成されている。
【0042】
第2の板ばね40はばね性を有する金属板で一体に形成されている。
図4と
図5に示すように、第2の板ばね40は、リング形状部42と、リング形状部42よりも外周側の4か所に位置する外側固定部41と、リング形状部42とそれぞれの外側固定部41とを連結する4か所のばね変形部43とが一体に形成されている。
【0043】
外側固定部41には固定穴41aが形成されている。リング形状部42の2か所に内側固定部44,44が一体に形成されており、それぞれの内側固定部44に固定穴が2か所ずつ形成されている。
【0044】
図4と
図5などに示すように、可動ユニット20には金属部材60が設けられている。金属部材60は磁性を有する金属板で形成されており、後に説明する軸方向駆動機構50および軸交差駆動機構70の磁気回路を構成する磁性ヨークとしての機能を発揮する。
【0045】
金属部材60は、枠状の挟持板部61を有しており、挟持板部61に開口部62が形成されている。挟持板部61は平面視が四角形状(ほぼ正方形状)であり、4つの辺からヨーク部材である側板部63が下方(Z2方向)に向けてほぼ垂直に折り曲げられている。挟持板部61の4か所には固定穴61aが形成されている。
【0046】
四角形の金属部材60の各角部には切欠き部64が形成されている。各辺に設けられた側板部63は、切欠き部64において互いに分離されている。また挟持板部61には、それぞれの切欠き部64に対向する凹部64aが形成されている。また、各角部では、挟持板部61の内縁から下向きに折り曲げられた対向板部65が一体に設けられている。対向板部65は、それぞれの切欠き部64に内側から対向しており、その両側部の一部が前記側板部63に対向している。
【0047】
次に、レンズホルダ25と第1の板ばね30および第2の板ばね40ならびに金属部材60を支持部材21に組み込む組立作業について説明する。
【0048】
図4に示すように、第1の板ばね30は支持部材21にZ1方向へ組み込まれる。第1の板ばね30の分割ばね部31,31に形成された合計4か所の固定穴32aが、支持部材21の第1の固定突起22bに挿通されて、それぞれの分割ばね部31の外側固定部32が、支持部材21の第1の支持部22aに設置される。このとき、支持部材21の4か所に形成された脚部23は、分割ばね部31,31の角部に形成された挿通穴35に挿入されて、第1の板ばね30よりも下方(Z2方向)へ突出する。
【0049】
金属部材60も支持部材21にZ1方向へ組み込まれる。金属部材60の挟持板部61は、分割ばね部31の外側固定部32に重ねられ、それぞれの外側固定部32は、支持部材21の第1の支持部22aと挟持板部61との間に挟持される。このとき、金属部材60の挟持板部61に形成された4か所の固定穴61aが、第1の固定突起22bに挿通される。そして、4か所の第1の固定突起22bの先部が加熱され溶融状態で潰されて、分割ばね部31,31と挟持板部61とが一緒に支持部材21に押し付けられてかしめ固定される。
【0050】
このとき、それぞれの分割ばね部31と金属部材60は電気的に絶縁状態とされる。例えば、絶縁性フィルムが分割ばね部31と挟持板部61との間に挟み込まれて固定される。あるいは、分割ばね部31または金属部材60の表面に絶縁性樹脂がコーティングされていてもよい。
【0051】
レンズホルダ25と第2の板ばね40は予め互いに接合されてから、支持部材21に組み込まれる。
【0052】
図4に示すように、第2の板ばね40の内側固定部44に形成された固定穴が、レンズホルダ25の4か所に形成された固定突起28aのそれぞれに挿通され、固定突起28aの先部が加熱溶融されて潰される。これにより、第2の板ばね40の内側固定部44が、レンズホルダ25のばね接合面28に密着した状態で、レンズホルダ25に第2の板ばね40がかしめ固定される。
【0053】
第2の板ばね40が取り付けられたレンズホルダ25は、支持部材21に固定された金属部材60の4つの側板部63で囲まれた空間内に、Z1方向へ向けて装着される。支持部材21に形成された脚部23は、支持部材21に固定されている第1の板ばね30の挿通穴35の内部を通過してZ2方向へ突出しており、第2の板ばね40の外側固定部41に形成された固定穴41aは、それぞれの脚部23の先部に形成された第2の固定突起23bに挿通される。そして、第2の固定突起23bの先部が加熱溶融され押しつぶされて、外側固定部41は、脚部23の先端の第2の支持部23aに密着させられた状態でかしめ固定される。
【0054】
なお、第1の固定突起22b、第2の固定突起23b、および固定突起28aのかしめ固定は、その先部に加熱された金属等の部材を押し当てて変形させる熱かしめについて説明したが、これに限定されない。すなわち、固定突起の先部を加熱していない金属等の部材で押しつぶす冷間かしめによるかしめ固定であってもよい。
【0055】
レンズホルダ25が支持部材21に対してZ1方向へ組み付けられると、レンズホルダ25の上面25a側では、
図8に現れているばね接合面27が、第1の板ばね30の内側固定部33に突き当てられ、レンズホルダ25の4か所に設けられた位置決め突起27aが、内側固定部33に形成された固定穴33aに挿入される。上面25a側において、固定穴33aに接着剤が塗布されて、内側固定部33とレンズホルダ25とが接着固定される。
【0056】
上記のように、可動ユニット20の組立工程では、
図4に示すように、支持部材21に対して第1の板ばね30と金属部材60をZ1方向へ向けて組み込み、第2の板ばね40が取り付けられたレンズホルダ25を同じくZ1方向へ組み込んで、共にZ1方向に突出している第1の固定突起22bに第1の板ばね30の外側固定部32をかしめ固定し、第2の固定突起23bに第2の板ばね40の外側固定部41をかしめ固定する。そして、レンズホルダ25の上面25a側と第1の板ばね30の内側固定部33の接着固定のみをZ1側から行う。
【0057】
この可動ユニット20は、支持部材21に第1の支持部22aならびに第1の固定突起22bが形成され、脚部23の先部に第2の支持部23aと第2の固定突起23bとが形成されているため、第1の板ばね30とレンズホルダ25と第2の板ばね40を同じZ1方向へ組み込んでかしめ固定することができる。そのため、組立作業が容易である。
【0058】
第1の板ばね30と第2の板ばね40は、支持部材21の同じ側に設けられた第1の固定突起22bと第2の固定突起23bで位置決めされるため、第1の板ばね30と第2の板ばね40の相対位置を高精度に決めることができ、支持部材21とレンズホルダ25との相対位置も高精度に決めることができる。
【0059】
また、第1の板ばね30の外側固定部32が、支持部材21の第1の支持部22aと金属部材60の挟持板部61とで挟持されて固定されるため、外側固定部32を支持部材21に強固に固定することができる。また、金属部材60は、軸方向駆動機構50と軸交差駆動機構70の磁性ヨークとして機能するものであるが、この磁性ヨークが、支持部材21に対して第1の板ばね30と一緒にかしめ固定されるため、磁性ヨークである金属部材60の固定構造を別途設ける必要がなく、構造を簡素化できる。また、レンズホルダ25と金属部材60との相対位置に関して、公差の累積が少なくなり、レンズホルダ25と金属部材60の相対位置を高精度に決めることができる。
【0060】
さらに、第1の板ばね30の4つの角部に挿通穴35が形成されて、第2の支持部23aを有する脚部23が、挿通穴35の内部を通過して下方(Z2方向)へ延びている。脚部23が、第1の板ばね30の外側ではなく第1の板ばね30の範囲内を通過しているため、可動ユニット20を第1の板ばね30の大きさの範囲内で構成でき、全体を小型化しやすくなる。
【0061】
なお、可動ユニット20は、支持部材21と、レンズホルダ25と、金属部材60と、第1の板ばね30と、第2の板ばね40と、後述する軸方向駆動機構50とによって構成されている。
【0062】
(軸方向駆動機構50)
図7に示すように、軸方向駆動機構50は、レンズホルダ25の外周に巻かれた第1のコイル51と、金属部材60に保持される磁石52とから構成されている。
図4と
図6に示したように、第1のコイル51は、レンズホルダ25の外周に巻かれている。
【0063】
図5に示すように、支持部材21に第1の板ばね30と金属部材60とレンズホルダ25ならびに第2の板ばね40が装着されてかしめ固定と接着作業とが行われた後に、4個の磁石52が、金属部材60の側板部63の内側に装着される。
【0064】
磁石52は長方形の平板であり、表裏両面が第1の着磁面52aと第2の着磁面52bであり、第1の着磁面52aと第2の着磁面52bが異なる磁極に着磁されている。
図7に示す例では、第1の着磁面52aがN極で、第2の着磁面52bがS極である。また磁石52は、細長い上端部52cと下端部52dを有している。
【0065】
図5に示すように、それぞれの磁石52は、支持部材21の脚部23と脚部23との間に挿入されて位置決めされ、金属部材60の側板部63の内面に吸着されて取り付けられる。したがって、磁石53は側板部63に一面が支持されたものとなる。磁石52とその左右両側の脚部23,23との間に接着剤が供給され、それぞれの磁石52が接着されて固定される。なお、側板部63と磁石52との間に、接着剤が設けられていてもよい。
【0066】
図7に示すように、磁石52が取り付けられると、レンズホルダ25に巻かれている第1のコイル51と磁石52の第1の着磁面52aとが微小の隙間を介して対向する。金属部材60は、支持部材21に位置決めされ、レンズホルダ25も、第1の板ばね30と第2の板ばね40を介して支持部材21に位置決めされる。金属部材60とレンズホルダ25は、支持部材21の寸法精度によって相対位置が高精度に決められるため、金属部材60の側板部63に固定された磁石52と第1のコイル51との対向間隔も高精度に決めることが可能である。
【0067】
図4と
図6に示すように、レンズホルダ25は平面視で四角形(ほぼ正方形)の部分で支持されており、その周囲に巻かれている第1のコイル51は、X方向とY方向へ直線的に電流が流れるように形成されている。第1のコイル51の平面部が、磁石52の平坦面である第1の着磁面52aに対向するため、第1のコイル51と磁石52との対向面積を大きく確保でき、軸方向駆動機構50の駆動感度を高めることができる。
【0068】
図4に示すように、第1のコイル51を支持していないレンズホルダ25の4か所(円弧形状の部分)では、第1のコイル51の内側に空間部29が形成されている。金属部材60には、側板部63の内側の一部に対向する対向板部65が設けられており、対向板部65が前記空間部29に挿入されて、対向板部65が第1のコイル51の内側(中心軸Oに接近する側)に対向する。側板部63の両側部と対向板部65との間に第1のコイル51が存在することによって、磁石52から発せられた磁束のうちの第1のコイル51を横断する磁束密度を高くでき、軸方向駆動機構50の駆動効率を向上させることができる。
【0069】
軸方向駆動機構50の第1のコイル51に対しては、サスペンションワイヤ8と第1の板ばね30を通じて駆動電流が供給される。すなわち、第1のコイル51の巻き線の2つの端部(端末部51a)は、2つの分割ばね部31,31に個別に接続されている。前記サスペンションワイヤ8は、第1の板ばね30の分割ばね部31,31に個別に接続されているため、少なくとも1本のサスペンションワイヤ8から一方の分割ばね部31を介して第1のコイル51に電流が与えられ、第1のコイル51を流れた電流は、他方の分割ばね部31を介して少なくとも1本の他のサスペンションワイヤ8に流れる。
【0070】
図4と
図8などに示すように、第1の板ばね30のそれぞれの分割ばね部31では、内側固定部33と一体のリング形状部38に、外側へ向けて接続片39が形成されている。
【0071】
図4にその一部が現れているが、レンズホルダ25には側方へ突出する巻き止め突起53が一体に形成されている。巻き止め突起53は、レンズホルダ25のX方向に向く一方の側部と他方の側部に1個ずつ設けられている。
【0072】
図9に示すように、巻き止め突起53には、上方(Z1方向)に向く平坦部53aが平面状に形成されている。巻き止め突起53の軸中心Lの延びる方向は、中心軸OおよびZ方向と直交しており、前記平坦部53aはX−Y平面と平行である。また巻き止め突起53の先部には抜け止め部53bが形成されている。さらに、巻き止め突起53の根元部における平坦部53aと交差する両方の側面(Y方向側の面)には、窪み部53cが形成されている。
【0073】
第1のコイル51の巻き線の端末部51aは、巻き止め突起53に巻き掛けられる。巻き止め突起53には上方(Z1方向)に向く平坦部53aが形成されているため、巻き止め突起53に巻かれた端末部51aの周回部51bには、Z1方向に向く接続部51cが平坦部53aに沿って形成される。
【0074】
図4に示すように、第2の板ばね40が取り付けられたレンズホルダ25がZ1方向へ向けて支持部材21に組み込まれると、前記周回部51bの接続部51cが、第1の板ばね30に形成された接続片39の下向きの(Z2方向へ向く)表面である接合面39bに当接する。このときの当接圧は、分割ばね部31,31に過大な変形力が作用しないように、ほぼゼロ圧力とすることが好ましい。巻き線の端末部51aが巻き止め突起53に巻かれるときの巻き中心線がL方向であり、L方向が接続片39の平面と平行に延びているため、周回部51bと接続片39の接合面39bとの当接面積を大きくすることが可能である。さらに、周回部51bの接続部51cは、接続片39の平面に平行な平坦部53aに沿って設けられているため、周回部51bと接続片39との接触面積をさらに広げることができる。また、巻き線の端末部51aは、巻き止め突起53の根元部から先端側へ向かって巻き付けられており、巻き止め突起53の窪み部53cにも巻かれている。そして、窪み部53cは、平坦部53aと交差する巻き止め突起53の側面に形成されていることから、周回部51b(接続部51c)と接続片39との接触面積に影響を及ぼすことなく、巻き止め突起53から周回部51bが解れにくくすることができる。
【0075】
図10に示すように、周回部51bの接続部51cと接続片39とが当接したときに、接続部51cのY方向の幅寸法W0に対して、接続片39と接続部51cとの重なり部の幅寸法W1の方が小さくなり、接続部51cの一部が幅W2の範囲で接続片39の先端39aから先に露出している。よって、接続片39の表面から接続部51cにかけて接合剤である半田55を付着させることによって、接続片39と周回部51bとを確実に半田付けすることが可能になる。よって、第1のコイル51の2つの端末部51aを、2つの分割ばね部31のそれぞれに確実に導通させることが可能になる。なお、接続片39と周回部51bとを機械的および電気的に接続する接合剤は、半田に限られず、導電性溶融金属や導電性接着剤であってもよい。
【0076】
(基台構造部10とサスペンションワイヤ8)
図3に示すように、基台構造部10に設けられた合成樹脂製の基台11には金属ベース12が埋設されている。金属ベース12の4つの角部には、長穴による支持穴13が形成されており、サスペンションワイヤ8の基端部8aは支持穴13に挿通され、半田付けなどで固定されている。
【0077】
図3などに示すように、可動ユニット20では、四角形の支持部材21のそれぞれの角部から第1の板ばね30の角部が突出している。基台構造部10と可動ユニット20とを組み立てるときは、それぞれのサスペンションワイヤ8の先端部8bが、第1の板ばね30の角部の支持穴36に挿入される。このとき、サスペンションワイヤ8の先端部8bと第1の板ばね30の角部との間にペースト半田(クリーム半田)を塗布し、第1の板ばね30の熱伝達部37にレーザを照射して熱伝達部37を加熱する。この熱により半田が溶融し、サスペンションワイヤ8の先端部8bと第1の板ばね30とが半田付けされて固定される。
【0078】
組立後は、サスペンションワイヤ8の弾性変形によって、可動ユニット20は、中心軸Oと交差する方向へ移動可能となる。
【0079】
(軸交差駆動機構70)
基台11と支持部材21との間に軸交差駆動機構70が設けられている。
図6に示すように、軸交差駆動機構70は、基台11の上に設置された4個の第2のコイル71と、前記磁石52ならびに前記金属部材60とで構成されている。
【0080】
それぞれの第2のコイル71は細長い平面巻きパターンとなるように形成されており、中心軸Oから離れる位置にある外側電磁作用部71aと、中心軸Oに近い位置にある内側電磁作用部71bとを有している。外側電磁作用部71aと内側電磁作用部71bは、その上の磁石52の下端部52dおよび側板部63の下端63aと平行な方向へ電流が直線的に流れる。基台11の上面には、複数箇所に位置決め突部14が一体に形成されており、第2のコイル71の巻き中空部が位置決め突起14と嵌合して位置決めされて、第2のコイル71と基台11とが接着剤で固定されている。
【0081】
図7に示すように、基台11の上にサスペンションワイヤ8を介して可動ユニット20が取り付けられると、磁石52の下端部52dが、第2のコイル71の外側電磁作用部71aと内側電磁作用部71bとの中間に対向し、金属部材60の側板部63の下端63aが外側電磁作用部71aの真上に対向する。
【0082】
図7に示すように、磁石52の第1の着磁面52aから出た磁束Φは、第2のコイル71の内側電磁作用部71bと外側電磁作用部71aを横切って、金属部材60の側板部63の下端63aに集中する。側板部63の下端63aが、外側電磁作用部71aの真上に対向しているため、下端63aに集中する磁束を外側電磁作用部71aに与えることができ、外側電磁作用部71aを横切る磁束密度を高くでき、軸交差駆動機構70の動作効率を高めることができる。
【0083】
また、外側電磁作用部71aと内側電磁作用部71bの電流が流れる方向の長さ寸法を、前記側板部63の下端63aの長さ寸法よりも大きくしておくことが好ましい。このように構成すると、側板部63の下端63aに集中しようとする磁束を電磁作用部71a,71bに交差させやすくなり、軸交差駆動機構70の駆動効率を高めることができるようになる。
【0084】
なお、第2のコイル71は、フィルム基板などの表面に銅泊などでパターン形成されたものであってもよい。
【0085】
また、
図7に示すように、基台11には、第2のコイル71の下側に位置検知素子73が設けられている。位置検知素子73はホール素子または磁気抵抗効果素子である。位置検知素子73は、少なくとも2個設けられており、一方はX方向に延びる磁石52の下側に対向し、他方がY方向に延びる磁石52の下側に対向している。
【0086】
(動作)
上記構造のレンズ駆動装置1は、サスペンションワイヤ8から第1の板ばね30の分割ばね部31を経て軸方向駆動機構50を構成する第1のコイル51に制御電流が与えられる。可動ユニット20には、磁石52が搭載されているため、磁石52から発せられる磁界と前記制御電流とで、レンズホルダ25が中心軸Oに沿って移動させられる。基台構造部10の下方に撮像素子が設けられており、レンズホルダ25の中心軸Oに沿う動きにより、撮像素子に対する焦点合わせが行われる。
【0087】
また、軸交差駆動機構70を構成する第2のコイル71に制御電融が与えられると、
図7に示すように、磁石52の第1の着磁面52aから側板部63の下端63aに至る磁束Φと前記制御電流とで、可動ユニット20が中心軸Oと交差する方向へ駆動される。このときの可動ユニット20の移動量が位置検知素子73で検知され、この検知出力がフィードバックされて、制御電流の電流量が制御される。