特許第6549467号(P6549467)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6549467保護ケース、振動センサおよびその製造方法、ならびに脈拍測定装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6549467
(24)【登録日】2019年7月5日
(45)【発行日】2019年7月24日
(54)【発明の名称】保護ケース、振動センサおよびその製造方法、ならびに脈拍測定装置
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/022 20060101AFI20190711BHJP
   H01L 41/053 20060101ALI20190711BHJP
【FI】
   A61B5/022 100C
   H01L41/053
   A61B5/022 100Z
【請求項の数】7
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2015-208920(P2015-208920)
(22)【出願日】2015年10月23日
(65)【公開番号】特開2017-79860(P2017-79860A)
(43)【公開日】2017年5月18日
【審査請求日】2018年4月17日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004547
【氏名又は名称】日本特殊陶業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114258
【弁理士】
【氏名又は名称】福地 武雄
(74)【代理人】
【識別番号】100125391
【弁理士】
【氏名又は名称】白川 洋一
(72)【発明者】
【氏名】野村 俊勝
(72)【発明者】
【氏名】岩城 範史
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 優
【審査官】 伊藤 幸仙
(56)【参考文献】
【文献】 特開2002−237280(JP,A)
【文献】 特開2015−153476(JP,A)
【文献】 国際公開第2015/045526(WO,A1)
【文献】 実開昭60−168803(JP,U)
【文献】 特開昭61−193028(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/02 − 5/03
H01L 41/053
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属で形成された電子部品の保護ケースであって、
電子部品を収容する収容体と、
前記収容体に被せて閉じたときに、互いの側面が密着する蓋と、を備え、
前記蓋を閉じたときに接着剤導入口として隙間を形成するように、前記蓋の側面の一部が本来の密着面から出っ張っていることを特徴とする保護ケース。
【請求項2】
前記収容体および前記蓋は、各側面に前記電子部品のリード線を通す切欠き孔を備えることを特徴とする請求項1記載の保護ケース。
【請求項3】
複数の前記接着剤導入口を備えることを特徴とする請求項1または請求項2記載の保護ケース。
【請求項4】
前記接着剤導入口は、前記収容体または前記蓋の側面に各接着剤導入口間の距離が均等になるように形成されていることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載の保護ケース。
【請求項5】
金属で形成された電子部品の保護ケースであって、電子部品を収容する収容体と、前記収容体に被せて閉じたときに、互いの側面が密着する蓋と、を備え、前記蓋を閉じたときに接着剤導入口として隙間を形成するように、前記蓋の側面の一部が本来の密着面から出っ張っている、または前記収容体の側面の一部が本来の密着面から窪んでいる保護ケースと、
振動を検知する振動板と、
前記検知した振動から電圧を発生させる圧電素子と、
前記圧電素子に接続され、前記発生した電圧を出力信号として出力するリード線と、を備えることを特徴とする振動センサ。
【請求項6】
請求項5記載の振動センサと、
前記振動センサから取得した出力信号から脈拍を検出する制御部と、
前記検出した脈拍を表示する表示部と、を備えることを特徴とする脈拍測定装置。
【請求項7】
圧電素子を用いて振動を検知する振動センサの製造方法であって、
振動板、圧電素子およびリード線を有する振動センサ本体を、保護ケースの収容体に配置する工程と、
前記収容体に保護ケースの蓋を被せる工程と、
前記蓋を被せたときに接着剤導入口として形成される隙間に接着剤を注入する工程と、を含むことを特徴とする振動センサの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子部品を破損から保護する保護ケース、保護ケースで圧電素子を保護した振動センサおよびその製造方法、ならびに振動センサを用いた脈拍測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、電子部品を破損等から守るために保護ケースが用いられてきた。保護ケースは下蓋と上蓋を備えており、保護ケースの下蓋に電子部品を配置した後に上蓋で覆う構造となっている。このような構造の保護ケースでは、下蓋を上蓋で覆う際に、接着剤を用いて下蓋と上蓋を固定しているが、下蓋に塗った接着剤が上蓋を被せる前に固まってしまうことにより固定されなかったり、接着剤の一部が固まってしまうことにより上蓋の一部が下蓋と嵌合せず浮いてしまうことがあった。
【0003】
また、電子部品は繊細であるため、保護ケースによって破損等から保護する必要がある。しかし、近年では、電子部品自体が薄くなってきているため、電子部品を保護する保護ケースも必然的に薄くなる。このような状況下において、複雑な構造の保護ケースは製造が困難である。そのため、よりシンプルな構造の電子部品の保護ケースが所望されている。
【0004】
特許文献1では、圧電素子を用いる振動検出センサであって、高精度の振動検出が可能であり、温度およびノイズの影響を取り除くことができる振動検出センサに関する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平9−243447号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記の文献では、振動体および蓋部材内の圧電素子から発生される電気的信号を用いて、温度およびノイズの影響を取り除いているが、圧電素子を覆う保護ケースに関する記載はない。
【0007】
本発明は、このような事情を鑑みてなされたものであり、保護ケースに接着剤導入口を設けることにより、シンプルな構造で、低コストかつ安定した封止を可能とする電子部品の保護ケース、振動センサおよびその製造方法、ならびに振動センサを用いた脈拍測定装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(1)上記の目的を達成するため、本発明の保護ケースは、金属で形成された電子部品の保護ケースであって、電子部品を収容する収容体と、前記収容体に被せて閉じたときに、互いの側面が密着する蓋と、を備え、前記蓋を閉じたときに接着剤導入口として隙間を形成するように、前記蓋の側面の一部が本来の密着面から出っ張っている、または前記収容体の側面の一部が本来の密着面から窪んでいることを特徴としている。
【0009】
このように、電子部品を保護ケースに収容して使用できるので、電子部品の破損を防ぐ。また、収容体に蓋を被せた後に、接着剤導入口から接着剤を注入するので、容易かつ確実に接着でき、蓋を被せる前に接着剤が固まってしまい固定されない状況や、接着剤の一部が固まってしまうことにより蓋の一部が収容体と嵌合せず浮いてしまう状況をなくすことができる。
【0010】
(2)また、本発明の保護ケースは、前記収容体および前記蓋は、各側面に前記電子部品のリード線を通す切欠き孔を備えることを特徴としている。これにより、ケース内に、リード線を有する電子部品を収容したときに、リード線の接続部からの剥離を防止できる。
【0011】
(3)また、本発明の保護ケースは、複数の前記接着剤導入口を備えることを特徴としている。これにより、蓋と収容体とを確実に閉じて固定できる。
【0012】
(4)また、本発明の保護ケースは、前記接着剤導入口は、前記収容体または前記蓋の側面に各接着剤導入口間の距離が均等になるように形成されていることを特徴としている。これにより、蓋と収容体とを安定した状態で固定できる。
【0013】
(5)また、本発明の振動センサは、上記(1)から(4)のいずれかに記載の保護ケースと、振動を検知する振動板と、前記検知した振動から電圧を発生させる圧電素子と、前記圧電素子に接続され、前記発生した電圧を出力信号として出力するリード線と、を備えることを特徴としている。このように、圧電素子を保護ケースで覆うことにより、圧電素子の破損を防ぐ。そして、圧電素子に接続されているリード線の接続部からの剥離を防ぐ。
【0014】
(6)また、本発明の脈拍測定装置は、上記(5)記載の振動センサと、前記振動センサから取得した出力信号から脈拍を検出する制御部と、前記検出した脈拍を表示する表示部と、を備えることを特徴としている。このように、圧電素子が保護ケースに覆われた振動センサを用いることにより、安定した測定結果を得られ、振動センサの寿命を長くすることができる。
【0015】
(7)また、本発明の振動センサの製造方法は、圧電素子を用いて振動を検知する振動センサの製造方法であって、振動板、圧電素子およびリード線を備える振動センサ本体を、保護ケースの収容体に配置する工程と、前記収容体に保護ケースの蓋を被せる工程と、前記蓋を被せたときに接着剤導入口として形成される隙間に接着剤を注入する工程と、を含むことを特徴としている。
【0016】
これにより、電子部品を保護ケースに収容して使用できるので、電子部品の破損を防ぐ。また、収容体に蓋を被せた後に、接着剤導入口から接着剤を注入するので、容易かつ確実に接着でき、蓋を被せる前に接着剤が固まってしまい固定されない状況や、接着剤の一部が固まってしまうことにより蓋の一部が収容体と嵌合せず浮いてしまう状況をなくすことができ、作業負担が軽くなり生産性も向上する。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、保護ケースに接着剤導入口を設けることにより、シンプルな構造で、低コストかつ安定した封止を可能とする電子部品の保護ケース、振動センサおよびその製造方法、ならびに振動センサを用いた脈拍測定装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】(a)、(b)、(c)、(d)それぞれ本発明の保護ケースの蓋を示す平面図および断面図である。
図2】(a)、(b)、(c)それぞれ本発明の保護ケースの収容体を示す平面図および断面図である。
図3】本発明の振動センサ本体の構成を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
次に、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。
【0020】
(保護ケースの構成)
保護ケースは、導電性を有する金属で形成され、蓋と収容体から構成されている。図1(a)、(b)、(c)、(d)は、蓋100を示す平面図および断面図である。図1(a)は蓋100を上から見た平面図、図1(b)は図1(a)の1b−1b´における断面図、図1(c)は図1(a)の1c−1c´における断面図、図1(d)は蓋100を下から見た平面図である。
【0021】
図2(a)、(b)、(c)は、収容体200を示す平面図および断面図である。図2(a)は収容体200を上から見た平面図、図2(b)は図2(a)の2b−2b´における断面図、図2(c)は収容体200を下から見た平面図である。蓋100および収容体200の形状は、円筒状を例として説明するが、これに限らず、保護ケース内に配置する電子部品の形状によって角筒状であってもよい。
【0022】
蓋100は、閉塞面111および閉塞面と実質的に直交する側面113を有する。蓋100の側面113には、2つの切欠き孔115を備えている(図1(b))。また、蓋100の側面113の一部は、接着剤導入口121として、蓋100の中心から遠心方向に向かって出っ張っている構造となっている(図1(c))。収容体200は、閉塞面211および閉塞面と実質的に直交する側面213を有する。収容体200の側面には、2つの切欠き孔215を備えている(図2(b))。
【0023】
接着剤導入口121から、収容体200に蓋100を被せた後、接着剤を注入することにより、蓋100と収容体200を固定できる。これにより、保護ケースを確実に封止でき、保護ケース内に収容した電子部品を破損から保護できる。
【0024】
なお、接着剤導入口から接着剤を注入することによって、蓋100と収容体200が固定され確実に封止した状態を維持できればよいため、接着剤導入口の大きさや形状は、接着剤が注入できる程度の隙間であればよい。また、接着剤導入口121は、2つ備えていることが好ましいが、1つであってもよいし、複数あってもよい。さらに、2つの接着剤導入口121は、蓋100の側面113に、各接着剤導入口間の距離が均等となる位置(例えば、蓋100の中心軸に対し互いに軸対象となる位置)に設けられることが好ましいが、これに限らない。
【0025】
蓋100および収容体200の側面(113、213)は、収容体200に蓋100を被せた際に、互いの側面が密着する構造となっている。また、蓋100と収容体200との嵌合部には、ある程度のクリアランスを設けているため、接着剤導入口121から注入された接着剤が嵌合部に広がり、確実に封止された保護ケースを作製することができる。
【0026】
蓋100および収容体200に設けられている切欠き孔(115、215)は、収容体200に蓋100を被せたときに、蓋100の切欠き孔115と、収容体200の切欠き孔215が一致する位置に設けられている。各切欠き孔(115、215)の数は、1つであってもよいし、複数あってもよい。また、本実施形態では、蓋100に接着剤導入口121が設けられているが、蓋100ではなく収容体200の側面に一部に、接着剤導入口として、収容体200の中心方向に向かって窪んだ構造であってもよい。
【0027】
保護ケースは以上に述べた構造のほか、収容体および蓋の各側面に少なくとも1つ以上の対となる凹凸部を有し、収容体に蓋を被せたときに側面の凹凸部が嵌合する構造であってもよい。このような構造では、接着剤を使用しなくても嵌合する構造となるため、接着剤導入口を設ける必要はない。
【0028】
(振動センサの構成)
次に、振動センサの構成について説明する。振動センサは、振動センサ本体および保護ケースを備える。図3は、振動センサ本体300の構成を示した概略図である。振動センサ本体300は、振動板311、圧電素子315およびリード線317を備える。
【0029】
圧電素子315は、PZT等の圧電材料を用いて、円板状に形成され、電極を設けて分極することにより形成されている。圧電素子315の径は、振動板311の径以下である。圧電素子315は、振動板311の一方の主面に接着されて設置されている。圧電素子315は、振動板311の他方の主面が振動面となっている。圧電素子315の両主面には、それぞれ電極が形成されており、分極されている。
【0030】
振動板311は、圧電素子315が一方の主面に接着されている。振動板311は、例えば、真鍮、SUS304、42アロイまたはアルミニウム等の金属により円板状に形成されている。圧電素子315および振動板311は、圧電振動子を形成している。リード線317は、圧電素子315および振動板311に、半田付けによって接続されている。このように構成された振動センサ本体300を、保護ケース内に配置して使用することにより、圧電素子の破損およびリード線の接続部からの剥離を防ぎ、安定した測定結果を得られ、振動センサの寿命を長くすることができる。保護ケースは、金属製であるため振動が伝わりやすい。
【0031】
(振動センサの製造方法)
まず、振動板、圧電素子およびリード線を有する振動センサ本体を、保護ケースの収容体内に、収容ケースの側面に切欠き孔にリード線が収まるように配置する。次に、保護ケースの蓋を、蓋の側面に形成された切欠き孔にリード線が収まるように、収容体に被せて封止する。封止後、接着剤導入口として形成される隙間に接着剤を注入する。このようにして、振動センサが得られる。
【0032】
(脈拍測定装置)
以上に述べた振動センサは、脈拍測定装置(血圧計)に用いることができる。例えば、血圧計のカフの内部に、被測定部に当接するように振動センサを設置する。振動センサは振動を検知し、検知信号として出力する。出力された検知信号を用いて、血圧計は、脈拍を検出でき、脈拍数を求めることができる。
【符号の説明】
【0033】
100 蓋
200 収容体
111、211 閉塞面
113、213 側面
115、215 切欠き孔
121 接着剤導入口
300 振動センサ本体
311 振動板
315 圧電素子
317 リード線
図1
図2
図3