特許第6549481号(P6549481)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6549481
(24)【登録日】2019年7月5日
(45)【発行日】2019年7月24日
(54)【発明の名称】ブロー成形された熱可塑性組成物
(51)【国際特許分類】
   C08J 5/00 20060101AFI20190711BHJP
   C08L 81/02 20060101ALI20190711BHJP
   C08L 23/04 20060101ALI20190711BHJP
   B29B 7/38 20060101ALI20190711BHJP
   B29B 7/88 20060101ALI20190711BHJP
   B29C 49/00 20060101ALI20190711BHJP
【FI】
   C08J5/00CEZ
   C08L81/02
   C08L23/04
   B29B7/38
   B29B7/88
   B29C49/00
【請求項の数】22
【全頁数】56
(21)【出願番号】特願2015-505938(P2015-505938)
(86)(22)【出願日】2013年4月12日
(65)【公表番号】特表2015-520254(P2015-520254A)
(43)【公表日】2015年7月16日
(86)【国際出願番号】US2013036350
(87)【国際公開番号】WO2013155400
(87)【国際公開日】20131017
【審査請求日】2016年4月5日
(31)【優先権主張番号】61/623,618
(32)【優先日】2012年4月13日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】61/665,423
(32)【優先日】2012年6月28日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】61/678,370
(32)【優先日】2012年8月1日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】61/703,331
(32)【優先日】2012年9月20日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】61/707,320
(32)【優先日】2012年9月28日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】61/717,946
(32)【優先日】2012年10月24日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】13/804,372
(32)【優先日】2013年3月14日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】500100822
【氏名又は名称】ティコナ・エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100140109
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 新次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100075270
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 泰
(74)【代理人】
【識別番号】100101373
【弁理士】
【氏名又は名称】竹内 茂雄
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100112634
【弁理士】
【氏名又は名称】松山 美奈子
(74)【代理人】
【識別番号】100196597
【弁理士】
【氏名又は名称】横田 晃一
(72)【発明者】
【氏名】ルオ,ロン
(72)【発明者】
【氏名】チャオ,シンユー
(72)【発明者】
【氏名】グレンシ,ジョゼフ・ジェイ
【審査官】 中村 英司
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−057719(JP,A)
【文献】 特開平11−181283(JP,A)
【文献】 特開2011−016942(JP,A)
【文献】 特開2009−256608(JP,A)
【文献】 特開2000−103964(JP,A)
【文献】 特開2010−053350(JP,A)
【文献】 特開平08−151518(JP,A)
【文献】 特開2006−063255(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08J 5/00
C08L 81/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ブロー成形した熱可塑性組成物を含む部品であって、前記熱可塑性組成物は、
ポリアリーレンスルフィドと、
耐衝撃性改良剤と、
架橋耐衝撃性改良剤とを含み、架橋耐衝撃性改良剤は、耐衝撃性改良剤と架橋剤との反応生成物であり、
耐衝撃性改良剤は、エポキシ官能基又は無水マレイン酸官能基を有するオレフィン性コポリマー又はオレフィン性ターポリマーを含み、
当該架橋剤は、フタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸、非ポリマー性芳香族ジオール、非ポリマー性脂肪族ジオール、又はそれらの混合物を含み、
当該ポリアリーレンスルフィドの少なくとも一部は、さらに、反応性官能基を有し、そして当該反応性官能基を介して耐衝撃性改良剤及び/又は架橋耐衝撃性改良剤の少なくとも一部と結合している、
前記部品。
【請求項2】
ブロー成形した熱可塑性組成物を含む部品であって、前記熱可塑性組成物は、
ポリアリーレンスルフィドと、
架橋耐衝撃性改良剤とを含み、架橋耐衝撃性改良剤は、耐衝撃性改良剤と架橋剤との反応生成物であり、
耐衝撃性改良剤は、エポキシ官能基又は無水マレイン酸官能基を有するオレフィン性コポリマー又はオレフィン性ターポリマーを含み、
当該架橋剤は、フタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸、非ポリマー性芳香族ジオール、非ポリマー性脂肪族ジオール、又はそれらの混合物を含み、
当該ポリアリーレンスルフィドの少なくとも一部は、さらに、反応性官能基を有し、そして当該反応性官能基を介して架橋耐衝撃性改良剤の少なくとも一部と結合している、
前記部品。
【請求項3】
前記部品が自動車部品である、請求項1又は2に記載の部品。
【請求項4】
前記自動車部品が燃料系の部品、自動車の外部構造体もしくは支持構造体、自動車排気系の部品、燃料給油ネック、または燃料タンクである、請求項に記載の部品。
【請求項5】
前記部品が、単層または多層管状部品である、請求項1〜のいずれか1項に記載の部品。
【請求項6】
前記単層または多層管状部品が、フローライン、ライザー若しくはエアダクトである、請求項に記載の部品。
【請求項7】
前記熱可塑性組成物が、以下の物理的特性:
温度23℃でISO試験No.179-1に従って測定して、3kJ/m2を超えるノッチ付きシャルピ
ー衝撃強さ;
温度−30℃でISO試験No.179-1に従って測定して、8kJ/m2を超えるノッチ付きシャル
ピー衝撃強さ;
温度23℃及び試験速度5mm/分でISO試験No.527に従って測定して3000MPa未満の引張弾
性率;
温度23℃及び試験速度5mm/分で、ISO試験No.527に従って測定して、4.5%を超える降
伏点伸び;
温度23℃及び試験速度5mm/分でISO試験No.527に従って測定して10%を超える破断点
引張伸び;
温度23℃及び試験速度5mm/分でISO試験No.527に従って測定して30MPaを超える破断点
引張強さ;
温度23℃及び試験速度2mm/分でISO試験No.178に従って測定して2500MPa未満の曲げ弾
性率;
1.8MPaにおいてISO試験No.78に従って測定して80℃を超える荷重撓み温度;
温度23℃及び試験速度5mm/分でISO試験No.527に従って測定して5%を超える破断点歪
み;及び
0.2ミリメートルの厚さでV-0燃焼性規格を満たす、
の一つ以上を有する請求項1〜のいずれかに記載の部品。
【請求項8】
前記ポリアリーレンスルフィドがポリフェニレンスルフィドである、請求項1〜のいずれかに記載の部品。
【請求項9】
前記ポリアリーレンスルフィドが官能基化ポリアリーレンスルフィドである、請求項1〜のいずれかに記載の部品。
【請求項10】
一種以上の充填剤、UV安定剤、熱安定剤、滑剤及び着色剤からなる群から選択される一
種以上の添加剤をさらに含む、請求項1〜のいずれかに記載の部品。
【請求項11】
前記架橋耐衝撃性改良剤が、耐衝撃性改良剤のエポキシ官能基と架橋剤との反応生成物を含むか、または架橋耐衝撃性改良剤が、耐衝撃性改良剤の無水マレイン酸官能基と架橋剤との反応生成物を含む、請求項1〜10のいずれかに記載の部品。
【請求項12】
前記熱可塑性組成物が、1000ppm未満のハロゲン含有量をもつ、請求項1〜11のいずれかに記載の部品。
【請求項13】
前記部品の第一の区分が熱可塑性組成物を含み、前記第一の区分は、前記熱可塑性組成物を含まない成形品の第二の区分に隣接する、請求項1〜12のいずれかに記載の部品。
【請求項14】
前記熱可塑性組成物が可塑剤を含まない、請求項1〜13のいずれかに記載の部品。
【請求項15】
前記部品が、SAE試験法NO.J2665に従って測定して10-mm/m2-日未満の燃料または燃料源
に対する透過抵抗を示す、請求項1〜14のいずれかに記載の部品。
【請求項16】
部品の成形方法であって、請求項1〜15のいずれかに記載の熱可塑性組成物を製造する工程と、当該熱可塑性組成物をブロー成形する工程とを含み、
当該組成物を製造する工程が、
ポリアリーレンスルフィドを溶融加工装置に供給する工程;
前記溶融加工装置に耐衝撃性改良剤を供給する工程、ここで、前記溶融加工装置において前記ポリアリーレンスルフィドと耐衝撃性改良剤は、耐衝撃性改良剤がポリアリーレンスルフィドの中にくまなく分布されるように混合し;及び
前記溶融加工装置に架橋剤を供給する工程、ここで、前記架橋剤は、耐衝撃性改良剤をポリアリーレンスルフィドの中にくまなく分布させた後に、溶融加工装置に供給され、
を含み、そして
当該組成物を製造する工程は、さらに、
前記溶融加工装置にジスルフィド化合物を供給する工程を含み、前記ジスルフィド化合物は、ジスルフィド化合物の(一つまたは複数の)終端部に反応性官能基を含む、
前記方法。
【請求項17】
前記溶融加工装置が長さL及びブレンド長さLBをもち、L/LBの比が40〜1.1である、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
ジスルフィド化合物の反応性官能基が、カルボキシル基、ヒドロキシル基、置換又は非置換アミノ基、及びニトロ基からなる群から選択される、請求項16に記載の方法。
【請求項19】
前記ジスルフィド化合物及び架橋剤を一緒に添加する、請求項16に記載の方法。
【請求項20】
前記架橋剤がジスルフィドを含まない架橋剤である、請求項16に記載の方法。
【請求項21】
耐衝撃性改良剤がエポキシ反応性官能基を含む、請求項16に記載の方法。
【請求項22】
前記ポリアリーレンスルフィドが耐衝撃性改良剤に架橋される、請求項16に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[0001]本出願は、2012年4月13日出願の米国仮特許出願シリアル番号第61/623,618号;2012年6月28日出願の米国仮特許出願シリアル番号第61/665,423号;2012年8月1日出願の米国仮特許出願シリアル番号第61/678,370号;2012年9月20日出願の米国仮特許出願シリアル番号第61/703,331号;2012年9月28日出願の米国仮特許出願シリアル番号第61/707,320号;及び2012年10月24日出願の米国仮特許出願シリアル番号第61/717,946号の出願の利益を請求する。これらは全て、本明細書中、その全体が参照として含まれる。
【背景技術】
【0002】
[0002]ブロー(吹込)成形は、様々な中空のプラスチック部品を成形するのに長年にわたって使用されてきた。この成形法は単層並びに多層材料を成形するのに有効であると証明されており、3Dブロー成形技術など最近の進歩により、様々な複雑な形状を成形するのに使用されてきた。ブロー成形プロセスの多用途性により、消費財並びに製造及び生産装置の重量を軽くし、組み立てを単純化する多機能、ワンピース(one-piece)ブロー成形部品への道を提供している。
【0003】
[0003]ブロー成形部品の使用により恩恵を受けるかもしれない多くの用途はなかなか要求が厳しく、様々な化学的及び物理的攻撃の両方に耐えうる部品を要求する。たとえば、輸送機関及び輸送用途で使用するための部品は、使用する間に温度変動並びに運動を含む操作条件下で長期の耐用期間を提供できるべきである。従って、材料は通常、強度と柔軟性の両方を要求する。さらには、使用する間に加熱されたり冷却されたりすることもある、石油、ガス、冷却液、水、空気などの使用する間に遭遇するかもしれない流体に耐え、且つ不透過性であるべきである。
【0004】
[0004]高い強度及び耐性に加えて柔軟性を示す製品を成形(form)するためにブロー成形できるポリマー材料は、商業的関心が非常に高い。そのような材料は、従来、ポリオレフィンの連続相の内部で離散(discrete)または共連続相(co-continuous phase)としてエラストマーが完全且つ一様に分散されるように、エラストマー成分と熱可塑性ポリオレフィンとを均一に混合することによって形成(form)されてきた。複合材料(composite)の加硫により成分を架橋して、改善された耐熱性及び耐薬品性を組成物に提供する。様々なポリマー成分を混和する間に加硫を実施するとき、これを動的加硫(dynamic vulcanization)という。
【0005】
[0005]ポリアリーレンスルフィドは、高温、化学薬品及び機械的応力に耐え、広範な用途で有益に使用される高性能ポリマーである。ポリアリーレンスルフィドは、他のポリマーとブレンドされて、製品組成の特性を改善することが多かった。たとえば、エラストマー性耐衝撃性改良剤(elastomeric impact modifier)は、熱可塑性組成物の物理的特性を改善する有益性が発見された。ポリアリーレンスルフィドと耐衝撃性改良剤とのブレンドを含む組成物は、高性能、高温用途について検討されてきた。
【0006】
[0006]残念ながら、耐衝撃性を改良するのに有用であると一般的に考えられたエラストマー性ポリマーはポリアリーレンスルフィドと相溶性ではなく、これら二種類の組成物を形成する際に、相分離が問題となっていた。たとえば相溶化剤を使用することによって、組成物の形成を改善することが試みられてきた。しかしながら、そのような改善をする際であっても、耐衝撃性改良性ポリマーと組み合わせてポリアリーレンスルフィドを含む組成物は、特に高い耐熱性及び高い耐衝撃性の両方を必要とする用途において、やはり所望の製品性能を提供できなかった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
[0007]当業界で必要とされているものは、ブロー成形法に耐えることができ、且つ極端な環境にあっても高強度特性並びに耐崩壊性(resistance to degradation)も示す熱可塑性組成物である。より具体的には、必要とされているものは、過酷な作業環境での使用に耐えることができるブロー成形部品である。
【課題を解決するための手段】
【0008】
[0008]一態様において、ブロー成形された熱可塑性組成物(blow molded thermoprastic composition)を含む部品を開示する。熱可塑性組成物は、ポリアリーレンスルフィドと架橋耐衝撃性改良剤(crosslinked impact modifier)とを含む。本組成物は優れた材料特性をもつ。たとえば組成物は、温度23℃で、ISO試験No.179-1に従って測定して約3kJ/m2を超えるノッチ付きシャルピー衝撃強さと、温度23℃で、試験速度5mm/分でISO試験No.527に従って測定して約3000MPa未満の引張弾性率を示すことができる。
【0009】
[0009]また、部品を成形する方法を開示する。本方法は、ポリアリーレンスルフィドと架橋耐衝撃性改良剤を含む熱可塑性組成物をブロー成形することを含むことができる。
【0010】
[0010]部品は、過酷な環境中、たとえば輸送用途(transportation application)(たとえば自動車部品)または輸送機関用途(transport application)(たとえば石油及びガス生産地帯の部品)で使用するための部品を含むことができる。たとえば、輸送機関の部品は、石油及びガス生産地帯で使用するためのフローラインを含むことができる。自動車部品は、タンク及び燃料給油ネックなどの燃料系部品;リザーバ及び導管組織の両方を含む内装HVAC部品;歩み板、グリルガードなどの外装部品;並びに単層及び多層ホースなどのエンジン部品を含むことができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
[0011]本開示は、以下の図面を参照としてより良く理解できるだろう。
図1】[0012]図1は、熱可塑性組成物から部品を成形する際に使用し得るブロー成形プロセスのある段階を説明する。
図2】[0013]図2は、熱可塑性組成物から部品を成形する際に使用し得るブロー成形プロセスのある段階を説明する。
図3】[0014]図3は、熱可塑性組成物から部品を成形する際に使用しえるブロー成形プロセスのある段階を説明する。
図4】[0015]図4は、熱可塑性組成物から部品を成形する際に使用し得るブロー成形プロセスのある段階を説明する。
図5】[0016]図5は、熱可塑性組成物から部品を成形する際に使用し得るブロー成形プロセスのある段階を説明する。
図6】[0017]図6は、熱可塑性組成物から管状部品を製造する際に使用し得る連続ブロー成形プロセスのある段階を説明する。
図7】[0018]図7は、本明細書中に記載される組成物を含むことができる石油及びガス生産現場の略図である。
図8】[0019]図8は、熱可塑性組成物から成形した一つ以上のブロー成形層を含む多層ライザーの略図である。
図9】[0020]図9は、ブロー成形した熱可塑性組成物を使用し得る自動車部品の幾つかの代表例を示している自動車ボデーの略図である。
図10】[0021]図10は、ブロー成形した熱可塑性組成物を含みえる燃料タンク給油ネックの略図である。
図11】[0022]図11は、ブロー成形した熱可塑性組成物を含みえるガス(gas)タンクなどの燃料リザーバの略図である。
図12】[0023]図12は、ブロー成形した熱可塑性組成物を含みえるエアダクトの略図である。
図13】[0024]図13は、ブロー成形した熱可塑性組成物を含みえる別のエアダクトの略図である。
図14】[0025]図14は、ブロー成形した熱可塑性組成物を含みえる歩み板の略図である。
図15】[0026]図15は、ブロー成形した熱可塑性組成物を含みえる支持構造体の略図である。
図16】[0027]図16は、熱可塑性組成物から成形しえる単層管状部材である。
図17】[0028]図17は、その一つ以上の層が熱可塑性組成物から成形しえる多層管状部材である。
図18】[0029]図18は、熱可塑性組成物を形成するためのプロセスの略図である。
図19】[0030]図19は、本明細書に記載される熱可塑性組成物の溶融強度及び溶融伸びを測定する際に使用されるサンプルを説明する。
図20】[0031]図20は、本明細書に記載の熱可塑性組成物のノッチ付きシャルピー衝撃強さと、比較組成物のノッチ付きシャルピー衝撃強さにおける温度変化の影響を説明する。
図21A】[0032]図21は、本明細書に記載の熱可塑性組成物(図21B)及び比較の熱可塑性組成物(図21A)の走査電子顕微鏡写真である。
図21B】[0032]図21は、本明細書に記載の熱可塑性組成物(図21B)及び比較の熱可塑性組成物(図21A)の走査電子顕微鏡写真である。
図22】[0033]図22は、本明細書に記載の熱可塑性組成物及び比較組成物の強度特性における硫酸暴露の影響を比較する。
図23】[0034]図23は、剪断速度の関数として、本明細書に記載の熱可塑性組成物に関して得られた複素粘度(複素粘性率:complex viscosity)の対数を提供する。
図24】[0035]図24は、ヘンキー(Hencky)歪みの関数として、本明細書に記載の熱可塑性組成物の溶融強度を提供する。
図25】[0036]図25は、ヘンキー歪みの関数として、本明細書に記載の熱可塑性組成物の溶融伸びを提供する。
図26】[0037]図26は、熱可塑性組成物で成形したブロー成形容器を説明する。
図27A】[0038]図27A及び27Bは、図26に示された容器の断面像である。
図27B】[0038]図27A及び27Bは、図26に示された容器の断面像である。
図28】[0039]図28は、CE10燃料ブレンドに対する熱可塑性組成物の透過抵抗を測定する際の試験サンプルの日々の重量減少を説明する。
図29】[0040]図29は、CM15A燃料ブレンドに対する熱可塑性組成物の透過抵抗を測定する際の試験サンプルの日々の重量減少を説明する。
図30】[0041]図30は、メタノールに対する熱可塑性組成物の透過抵抗を測定する際の試験サンプルの日々の重量減少を説明する。
【発明を実施するための形態】
【0012】
[0042]当業者には、本考察が例示的な態様を記載しただけであり、本発明のより広い側面を限定するものではないと理解されるべきである。
【0013】
[0043]本開示は、一般に、優れた強度及び柔軟特性、並びに水、石油、ガソリン、ガス、合成または天然の化学薬品などとの接触による化学的劣化(化学崩壊:chemical degradation)に対する耐性を示すブロー成形された熱可塑性組成物に関する。有益には、熱可塑性組成物は、輸送及び輸送機関用途で遭遇するような極端な環境で使用されるときでさえも、良好な物理的特性を維持し得る。たとえば、熱可塑性組成物は、部品が推進力(motive force)に暴露される条件下で良好な物理的特性を維持することができる。
【0014】
[0044]熱可塑性組成物は、ポリアリーレンスルフィドと耐衝撃性改良剤とを混和(combine)して、混合物を形成すること、及び前記混合物を動的加硫に暴露することを含む溶融加工技術に従って形成することができる。より具体的には、ポリアリーレンスルフィドを耐衝撃性改良剤と混和し、この混合物を、耐衝撃性改良剤がポリアリーレンスルフィドの中に十分にくまなく分布(分散:distribute)されるように、剪断条件に暴露することができる。混合物を形成した後、多官能性(polyfunctional)架橋剤を添加することができる。多官能性架橋剤は、混合物の成分と反応して、組成物の内部で、たとえば耐衝撃性改良剤のポリマー鎖の内部及び間で架橋を形成することができる。
【0015】
[0045]特別な理論に拘束されないが、ポリアリーレンスルフィドの中にくまなく耐衝撃性改良剤を分布させた後、多官能性架橋剤を添加することによって、溶融加工装置内部のポリアリーレンスルフィド、耐衝撃性改良剤、及び架橋剤間の相互作用が改善されて、組成物の中でくまなく架橋耐衝撃性改良剤の分布が改善されると考えられる。組成物の中でくまなく架橋耐衝撃性改良剤の分布が改善されると、組成物の強度及び柔軟特性、たとえば、変形下で組成物が強度を維持する能力を改善する、並びに様々な条件下での劣化に対し優れた耐性を示すことができるブロー成形製品を成形するのに使用し得る良好な加工性をもつ組成物を提供することができる。
【0016】
[0046]熱可塑性組成物の高強度及び柔軟特性は、材料の引張り、曲げ、及び/または衝撃特性を調べることによって明らかにすることができる。たとえば、熱可塑性組成物は、23℃で、ISO試験No.179-1(ASTM D256、方法Bと技術的に同等)に従って測定して、約3kJ/m2を超える、約3.5kJ/m2を超える、約5kJ/m2を超える、約10kJ/m2を超える、約15kJ/m2を超える、約30kJ/m2を超える、約33kJ/m2を超える、約40kJ/m2を超える、約45kJ/m2を超える、または約50kJ/m2を超えるノッチ付きシャルピー衝撃強さをもつことができる。ノッチなしシャルピーサンプルは、23℃で、ISO試験No.180(ASTM D256と技術的に同等)の試験条件下で破壊しない。
【0017】
[0047]有益には、熱可塑性組成物は、高温及び低温の両方を含む極端な温度でさえも良好な物理的特性を維持することができる。たとえば、熱可塑性組成物は、−30℃で、ISO試験No.179-1に従って測定して、約8kJ/m2を超える、約9kJ/m2を超える、約10kJ/m2を超える、約14kJ/m2を超える、約15kJ/m2を超える、約18kJ/m2を超える、または約20kJ/m2を超えるノッチ付きシャルピー衝撃強さをもつことができ;−40℃で、ISO試験No.179-1に従って測定して、約8kJ/m2を超える、約9kJ/m2を超える、約10kJ/m2を超える、約11kJ/m2を超える、約12kJ/m2を超える、または約15kJ/m2を超えるノッチ付きシャルピー衝撃強さをもつことができる。
【0018】
[0048]さらに、熱可塑性組成物における温度変化の影響は意外にも小さくなりうる。たとえば、23℃におけるISO試験No.179-1に従って測定したノッチ付きシャルピー衝撃強さ対−30℃におけるISO試験No.179-1に従って測定したノッチ付きシャルピー衝撃強さの比は、約3.5を超え、約3.6を超え、または約3.7を超えることができる。従って、及び以下の実施例区分により詳細が記載されるように、温度が上昇するにつれて、熱可塑性組成物の衝撃強さも予想通り上昇するが、衝撃強さの増加の割合は、特に動的に架橋された耐衝撃性改良剤を含まない組成物と比較して、非常に高い。従って、本熱可塑性組成物は広い温度範囲で優秀な強度特性を示すことができる。
【0019】
[0049]熱可塑性組成物は非常に良好な引張特性を示すことができる。たとえば、熱可塑性組成物は、約4.5%を超える、約6%を超える、約7%を超える、約10%を超える、約25%を超える、約35%を超える、約50%を超える、約70%を超える、約75%を超える、約80%を超える、または約90%を超える降伏点引張伸び(tensile elongation at yield)をもつことができる。同様に、破断点引張伸び(tensile elongation at break)は非常に高く、たとえば約10%を超える、約25%を超える、約35%を超える、約50%を超える、約70%を超える、約75%を超える、約80%を超える、または約90%を超えることができる。破断点歪み(strain at break)は、約5%を超える、約15%を超える、約20%を超える、または約25%を超えることができる。たとえば、破断点歪みは約90%でありえる。降伏歪み(yield strain)は同様に高くなりえ、たとえば約5%を超える、約15%を超える、約20%を超える、または約25%を超える。降伏応力(yield stress)は、たとえば約50%を超えるか、または約53%を超えることができる。熱可塑性組成物は、約30MPaを超える、約35MPaを超える、約40MPaを超える、約45MPaを超える、または約70MPaを超える破断点引張強さ(tensile strength at break)をもつことができる。
【0020】
[0050]さらに熱可塑性組成物は、比較的低い引張弾性率をもつことができる。たとえば熱可塑性組成物は、温度23℃及び試験速度5mm/分で、ISO試験NO.527に従って測定して、約3000MPa未満、約2300MPa未満、約2000MPa未満、約1500MPa未満、または約1100MPa未満の引張弾性率をもつことができる。
【0021】
[0051]熱可塑性組成物は、その上、アニール(annealing)後に、良好な特性を示すことができる。たとえば、温度約230℃で約2時間のアニール後、組成物の引張弾性率は、約2500MPa未満、約2300MPa未満、または約2250MPa未満でありえる。温度23℃及び試験速度5mm/分で、ISO試験NO.527に従って測定したアニール後の破断点引張強さは、約50MPaを超える、または約55MPaを超えることができる。
【0022】
[0052]熱可塑性組成物は、高い温度、たとえば最高約150℃、約160℃、または約165℃の連続使用温度で、引張り強さが低下することなく、連続して使用することもできる。たとえば熱可塑性組成物は、165℃で1000時間、熱老化(熱エージング:heat aging)後に、元の引張り強さを約95%を超えて、たとえば約100%を維持することができ、且つ135℃で1000時間、熱老化後に、元の降伏点引張伸びを約95%を超えて、たとえば約100%を維持することができる。
【0023】
[0053]引張特性は、温度23℃及び試験速度5mm/分、または50mm/分でISO試験No.527(23℃におけるASTM D623と技術的に同等)に従って測定することができる。
【0024】
[0054]本組成物の曲げ特性は、温度23℃及び試験速度2mm/分でISO試験No.178(ASTM D790と技術的に同等)に従って測定することができる。たとえば、組成物の曲げ弾性率は、約2500MPa未満、約2300MPa未満、約2000MPa未満、約1800MPa未満、または約1500MPa未満でありえる。熱可塑性組成物は、約30MPaを超える、約35MPaを超える、約40MPaを超える、約45MPaを超える、または約70MPaを超える破断点曲げ強さ(flexural strength at break)をもつことができる。
【0025】
[0055]熱可塑性組成物の荷重撓み温度(deflection temperature under load)は比較的高くなりうる。たとえば熱可塑性組成物の荷重撓み温度は、1.8MPaにおいて、ISO試験No.75-2(ASTM D790と技術的に同等)に従って測定して、約80℃を超える、約90℃を超える、約100℃を超える、または約105℃を超えることができる。
【0026】
[0056]ビカット軟化点(Vicat softening point)は、加熱速度50K/時間で荷重10Nを使用するときに、ビカットA試験(Vicat A test)に従って測定して、約200℃を超える、または約250℃を超えることができ、たとえば約270℃である。加熱速度50K/時間で荷重50Nを使用するときに、ビカットB試験に関しては、ビカット軟化点は、約100℃を超える、約150℃を超える、約175℃を超える、または約190℃を超えることができ、たとえば約200℃である。ビカット軟化点は、ISO試験No.306(ASTM D1525と技術的に同等)に従って測定することができる。
【0027】
[0057]熱可塑性組成物は、過酷な環境条件に長期間暴露される間も、優れた安定性を示すことができる。たとえば、酸性環境に長期暴露下(under long term exposure)で、熱可塑性組成物は、強度特性で殆ど減少を示さない。たとえば強酸(たとえば硫酸、塩酸、硝酸、過塩素酸などの強酸約5%以上の溶液)に500時間暴露した後に、熱可塑性組成物は、温度約40℃で強酸溶液に約500時間暴露した後に、約17%未満、または約16%未満のシャルピーノッチ付き衝撃強さの減少(loss)を示すことができ、温度約80℃で強酸溶液に約500時間暴露した後に、約25%未満、または約22%未満のノッチ付きシャルピー衝撃強さ(Charpy notched impact strength)の減少を示すことができる。たとえば温度約80℃に保持した10%硫酸溶液中で1000時間のより過酷な条件下でさえも、熱可塑性組成物は、当初のノッチ付きシャルピー衝撃強さの約80%以上を維持することができる。熱可塑性組成物は、自動車用途で遭遇しうるように、潜在的に分解性の材料、たとえば塩、たとえば道路用の塩(road salt)に暴露された後でも所望の強度特性を維持することができる。
【0028】
[0058]透過抵抗(permeation resistance)は、たとえばブロー成形された貯蔵タンクなどの成形において組成物を使用する際など、熱可塑性組成物の広範な用途にとって重要である。熱可塑性組成物は、広範な種類の材料に対して優れた透過抵抗を示すことができる。たとえば、組成物で成形したブロー成形製品は、約10g-mm/m2-日未満、約5g-mm/m2-日未満、約3g-mm/m2-日未満、または約2g-mm/m2-日未満の燃料または燃料源(たとえばガソリン、ディーゼル油、ジェット燃料、未精製または精製油など)に対する透過抵抗を示すことができる。たとえば、熱可塑性組成物(または熱可塑性組成物でブロー成形した製品)は、約10g-mm/m2-日未満、約3g-mm/m2-日未満、約2.5g-mm/m2-日未満、約1g-mm/m2-日未満、または約0.1g-mm/m2-日未満の、40℃においてエタノール/イソオクタン/トルエンのエタノールブレンド(重量比10:45:45)に対する透過抵抗を示すことができる。40℃における15wt%メタノール及び85wt%含酸素燃料(oxygenated fuel)のブレンド(CM15A)に対する透過抵抗は、約5g-mm/m2-日未満、約3g-mm/m2-日未満、約2.5g-mm/m2-日未満、約1g-mm/m2-日未満、約0.5g-mm/m2-日未満、約0.3g-mm/m2-日未満、または約0.15g-mm/m2-日未満でありえる。40℃におけるメタノールに対する透過抵抗は、約1g-mm/m2-日未満、約0.5g-mm/m2-日未満、約0.25g-mm/m2-日未満、約0.1g-mm/m2-日未満、または約0.06g-mm/m2-日未満でありえる。透過抵抗は、SAE試験法No.J2665に従って測定することができる。さらに、熱可塑性組成物は、炭化水素に長期間暴露した後に、元の密度を維持することができる。たとえば、ヘプタン、シクロヘキサン、トルエンなどの炭化水素または炭化水素の組み合わせに長期間(たとえば約14日を超える)暴露した後に、元の密度の約95%を超えて、元の密度の約96%を超えて維持することができ、たとえば元の密度の約99%を維持することができる。
【0029】
[0059]熱可塑性組成物は、良好な耐熱性及び難燃性を示すことができる。たとえば、本組成物は厚さ0.2ミリメートルでV-0燃焼性規格(flammability standard)を満たすことができる。難燃効力(flame retarding efficacy)は、“Test for Flammability of Plastic Materials for Parts in Devices and Appliances”、第5版、1996年10月29日のUL94垂直燃焼試験(Vertical Burn Test)手順に従って測定することができる。UL94試験に従った評価を以下の表に列記する。
【0030】
【表1】
【0031】
[0060]残炎時間(afterflame time)とは、全残炎時間(試験したすべてのサンプルの総計)をサンプル数で割ることにより得られる平均値である。全残炎時間は、UL-94 VTM試験で記載したように、火炎を二回、別々に適用した後に、全サンプルが発火したままだった時間(秒)の合計である。時間が短ければ、より良好な耐燃性(難燃性:flame resistance)を示す。すなわち、火炎は早く消えた。V-0の評価に関しては、それぞれ火炎を二回適用する、五つ(5)のサンプルの全残炎時間は、50秒を超えてはいけない。本発明の難燃剤(flame retardant)を使用すると、物品は、厚さ0.2ミリメートルの試験片に関しては、少なくともV-1評価、典型的にはV-0評価を達成することができる。
【0032】
[0061]熱可塑性組成物は、たとえば組成物の溶融粘度により示されるように、良好な加工特性を示すこともできる。たとえば熱可塑性組成物は、一定の剪断を5分間適用した後で実施した粘度測定で、316℃及び400秒-1においてキャピラリーレオメーターで測定して、約2800ポアズ(poise)未満の溶融粘度をもつことができる。さらには熱可塑性組成物は、架橋耐衝撃性改良剤を含まない熱可塑性組成物と比較して、長期にわたって改善された溶融安定性を示すことができる。架橋耐衝撃性改良剤を含まないポリアリーレンスルフィドを含む熱可塑性組成物は、長期にわたって溶融粘度の上昇を示す傾向があるが、開示された組成物は、長期にわたって溶融粘度を維持するまたは、低下させることすらできる。
【0033】
[0062]熱可塑性組成物は、低剪断(0.1ラジアン/秒(rad/s))及び310℃で測定して、約10kPa/秒を超える、約25kPa/秒を超える、約40kPa/秒を超える、約50kPa/秒を超える、約75kPa/秒を超える、約200kPa/秒を超える、約250kPa/秒を超える、約300kPa/秒を超える、約350kPa/秒を超える、約400kPa/秒を超える、または約450kPa/秒を超える複素粘度(complex viscosity)をもつことができる。低剪断での複素粘度の値がより高いことは、組成物の架橋構造及び熱可塑性組成物のより高い溶融強度の兆候である。さらに、熱可塑性組成物は、より高い剪断感受性(shear sensitivity)を示し、このことは、ブロー成形製造プロセスで使用するのに優れた特性であることを示している。
【0034】
[0063]熱可塑性組成物は、自動車部品の成形においてブロー成形(吹込成形:blowmolding)プロセスに従って加工処理することができる。連続及び断続的(intermittent)押出ブロー成形、射出ブロー成形及び延伸(stretch)ブロー成形などのブロー成形プロセスを使用することができる。3Dブロー成形、デュアルプロセス・オーバーモールド(dual process overmolding)なども同様に本明細書に包含される。
【0035】
[0064]ブロー成形プロセスの一つを図1〜5に連続して説明する。図1を参照して、熱可塑性組成物が最初に加熱され、押出し装置に付けられたダイ22を使用してパリソン20の中へ押し出す。示されているように、パリソン20は下方向に押し出される。図1に示されているようにパリソン20が形成されると、組成物は、重力がパリソンの長くなっている部分を不必要に長く引き伸ばして、不均一な壁厚及び他の欠陥を形成しないように十分な溶融強度をもたなければならない。他方、溶融伸びは、組成物の加工性を可能にするのに十分に高くなければならない。従って、組成物は、均一な壁厚を維持しつつ組成物を加工できるように、溶融強度と溶融伸びとが釣り合っていなければならない。言い換えれば、工学応力(engineering stress)は、組成物の加工性を可能にするために高い割合の歪みで十分に高くなければならない。
【0036】
[0065]図1に示されているように、パリソン20は、通常、ロボットアームに付けられているクランプ機構24に隣接して押し出される。また、成形装置26はパリソン20を受けるように配置される。図示される態様では、成形装置26は、一緒に組み合わさって三次元モールド・キャビティ(mold cabity)32を形成する第一の区分と第二の区分とを包含する。図示された態様では、成形装置の両方の部分28と30が互いに近づいたり、離れたりする。しかしながら別の態様では、もう一方の部分だけが移動して、一方の部分は静止することができる。公知のように成形装置は、二つを超える部分も含むことができる。
【0037】
[0066]図2を参照すると、プロセスの次の段階は、パリソン20が所望の長さに到達した後、パリソン20の上部を噛み合わせるためのクランプ機構24である。図3に示されているように、パリソンが成形装置26と相互作用できるように、クランプ機構は所定の位置にパリソンを移動させる。クランプ機構24は、ロボットアームを用いて移動することができる。
【0038】
[0067]理解されるように、パリソン20の成形から、パリソン20をつかんで、成形装置26と噛み合わせるように移動させるのに、一定の時間が経過する。プロセスのこの段階の間に、ポリマー組成物の溶融強度は、パリソン20が移動の間にその形状を維持できるように十分に高くなければならない。ポリマー組成物は半流体状態を維持し、且つブロー成形が開始する前に急速に固化しない能力もあるべきである。
【0039】
[0068]図3に示されているように、またロボットアームは、パリソン20の底部と、ブロー成形の間に使用される流体供給装置34を噛み合わせる。
【0040】
[0069]図4を参照すると、一度パリソン20が所定の位置に移動したら、ブロー成形装置26の第一の部分28と第二の部分30は、パリソン20が図4に示されているようにモールド・キャビティの中を通して伸長するように、一緒に移動する。
【0041】
[0070]図4に示されているように、第一の部分28は上部区分(top section)40を含み、第二の部分30は上部区分42を含む。図示されている態様では、成形装置26の底部区分が最初に閉じて、上部区分40と42を開けたままにしておく。このようにして、パリソン20は最初に成形キャビティ32の下部部分と噛み合うことができる。次いでクランプ装置24は、成形装置の上部区分40と42を閉じる前に、パリソンの上部をロボット制御で移動させることができる。図5に示されているように、クランプ機構が正しく位置づけられたら、型の上部区分は、パリソンがモールド・キャビティの全長を通して伸長するように、閉じる。
【0042】
[0071]図4及び5に示されているように、別々に移動可能な上部区分をもつことは、複雑な形状を成形するときに、成形用途によっては必要である。時間をずらしてパリソンを型の別々の部分に取り囲ませると、ロボットアームは、得られる部品に角変位を設置するために、パリソンを操作し続けることができる。
【0043】
[0072]図5に示されているように、成形装置26の上部区分40及び42が閉じられると、不活性ガスなどのガスが、ガス供給装置34からパリソン20内部に供給される。ガスは、パリソンがモールド・キャビティ32の形状に適合するように、パリソンの内部表面に対して十分な圧力を供給する。
【0044】
[0073]ブロー成形後、完成した部品を所望通りに取り出し、使用する。一態様において、成形装置26から取り出す前に、ポリマーを固化させるために成形した部品に冷気を注入することができる。
【0045】
[0074]ブロー成形プロセスは、図1〜5に図示されているロボット3-Dブロー成形方法論に限定されないが、部品を成形する際に、他のブロー成形プロセスも使用することができる。たとえば一態様において、配管用途(piping application)に有用でありうるように、長い管状部品などのより大きなアイテムを成形するために連続ブロー成形プロセスを使用することができる。図6は、連続ブロー成形プロセスに従って長い管状部品を成形する際に使用し得るような一方法の略図を示す。連続プロセスでは、固定押出機(示されていない)は、溶融した熱可塑性組成物を可塑化して、ヘッドの中に強制的に通して、連続パリソン601を成形することができる。アキュムレーター(accumulator)605を使用してパリソンを支持して、成形前にたるまないようにすることができる。パリソンは、成形コンベヤアセンブリ(mold conveyor assembly)604上の連続パリソンと共に移動する連結区分(articulated section)602、603で形成される金型(mold)に供給することができる。加圧下で空気をパリソンに適用して、金型内で熱可塑性組成物をブロー成形する。金型と組成物が一緒に移動するにつれて組成物が成形されて金型内で十分に冷却された後、金型セグメントは互いに分離して、部品の成形された区分(formed section)(たとえばパイプ)606はコンベヤから取り出されて、巻き取りリール(示されていない)などの上に引き取られる。
【0046】
[0075]部品は、全部品の中にくまなく熱可塑性組成物を含むか、または部品の一部のみに熱可塑性組成物を含むことができる。たとえば、管状部材などの大きなアスペクト比(L/D>1)をもつ部品を考えるとき、部品は、熱可塑性組成物が部品の区分(section)に沿って伸長し、且つ隣接する区分が異なる組成物、たとえば異なる熱可塑性組成物で形成できるように、成形することができる。そのような部品は、成形プロセスの間にブロー成形装置に供給される材料を変更(alter)することによって成形することができる。部品は異なる材料で形成される第一の区分と第二の区分との間の境界領域を表す二つの材料が混合される領域を含むことができる。部品は、所望により、熱可塑性組成物で形成された単一または複数の区分を含むことができる。さらには、部品の他の区分は、多くの別の材料で成形することができる。たとえば、流体管(fluid conduit)などの管状部品を考えるとき、管状部品の両端は熱可塑性組成物で形成することができ、中心区分は柔軟性のより少ない組成物から形成することができる。従って、より柔軟性のある末端を使用して、部品を系の他の部品にしっかりと固定することができる。あるいは、部品の中心区分は熱可塑性組成物から成形できるかもしれないが、これによりその区分で部品の柔軟性を促進して、部品の取り付けをより簡単にすることができる。
【0047】
[0076]熱可塑性組成物のブロー成形を含むプロセスに従って、広範な種類の部品を成形することができる。一態様において、成形し得る部品は、たとえば石油及びガス用途での輸送機関用途で使用することができる。特別な一態様において、熱可塑性組成物は、生産施設で、または生産施設から石油及び/またはガスを輸送する際に使用するためのフローラインを形成する際に使用することができる。たとえば、熱可塑性組成物は、単層フローラインまたは、結合(bonded)若しくは非結合(unbounded)フローラインの一つ以上の層、たとえば多層ライザーまたはパイプラインまたは、フローラインセグメントを互いにつけるために使用し得るカップリング若しくはコネクターを形成するためにブロー成形することができる。
【0048】
[0077]図7は、複数の様々な種類のフローラインを組み入れることができる典型的な沖合の産出地帯(field)を図示し、その一つ以上はバリヤー層などとしてブロー成形した熱可塑性組成物から製造した少なくとも一つの層を含むことができる。理解されるように、沖合の産出地帯は、海底792からプラットフォーム795に生産流体を運搬し得る固定ライザー791を含むことができる。熱可塑性組成物は、公知のように、カテナリー係留ブイ及びヨーク(yoke)を通して海中パイプラインから浮遊船に生産流体を運搬し得る、フレキシブルライザーなどの他のタイプのライザーにも同様に使用することができる。そのようなフレキシブルライザーは、急勾配のS字状、ゆるいS字状、または急勾配の波状若しくはゆるい波状形状などの任意の形状を取ることができる。
【0049】
[0078]産出地帯は、ブロー成形された熱可塑性組成物を含み、且つ生産流体、支持流体(supporting fluid)、アンビリカルなどを産出地帯内に保持し得るインフィールド・フローライン793を含むことができる。この系は、様々なフローラインが合流して、たとえば束ねられたライザーを形成する地点及び/または、個々のフローラインが、たとえば膨張によって変更される地点に複数の連結装置(tie-in)794も含む。この系は、炭化水素生産流体が得られる複数のサテライト坑井(well)とマニホールドも含む。輸出パイプライン797は、プラットフォーム795から、海岸、貯蔵施設または輸送船へ生産流体を運搬することができる。輸出パイプライン797は、他のフローライン、たとえば別のパイプライン799を迂回するために、一つ以上の交差796も含むことができる。沖合施設として説明したが、任意の場所の石油及びガス施設は本明細書に記載のブロー成形された部品を使用することができ、この開示は沖合施設に限定されないことを理解すべきである。
【0050】
[0079]図8を参照して、ブロー成形された熱可塑性組成物から形成した一つ以上の層を組み入れられるフレキシブルライザー800の一態様が示されている。示されているように、ライザー800は幾つかの同心円層を含む。最内部層は通常、カーカス802と呼ばれ、外部圧力に対して耐性を提供するために、螺旋状に巻かれたステンレススチールストリップから形成することができる。カーカス802は通常、隣接するバリヤー層806を支持し、且つ操作の間に加わった圧力または荷重による破壊からライザーを保護する金属(たとえばステンレススチール)チューブである。フレキシブルライザー800のボア(穴:bore)は、ライザーによって運搬されるべき流体に依存して変動しえる。たとえば、ライザー800は、注入流体(たとえば水及び/またはメタノール)などの支持流体を運搬するために使用する目的では平滑なボアをもつことができ、生産流体(たとえば石油及びガス)を運搬する際には粗な(rough)ボアをもつことができる。存在する場合には、カーカス802は、一般に厚さ約5〜約10ミリメートルでありえる。一態様に従って、カーカスは互いに組み合って、強固な相互接続したカーカスを形成する螺旋状に巻きつけられたステンレススチールストリップにより形成することができる。
【0051】
[0080]バリヤー層806は、カーカス802のすぐ隣にある。バリヤー層は、熱可塑性組成物から形成され、ライザーにより運搬される流体がライザー壁を通して浸透しないようにしつつ、強度と柔軟性並びに化学的攻撃に対する耐性を提供する。バリヤー層806は、一般に、厚さ約3〜約10ミリメートルであり、カーカス2の上に溶融物から押し出すことができる。
【0052】
[0081]ライザー8は、外部スリーブ及び外部流体バリヤーを提供し、並びに摩耗などによる外部損傷からライザーを保護するか、環境物質に遭遇する外層822も含むことができる。外層822は、機械的損傷と、ライザーの内層への海水の侵入の両方に耐えうる熱可塑性組成物または高密度ポリエチレンなどのポリマー材料で製造することができる。一態様に従って、外層822は、強化材料、たとえば炭素繊維、カーボンスチール繊維またはガラス繊維と共に、ポリマー材料を含む複合材料でありえる。
【0053】
[0082]フープ強度層(hoop strength layer)804は、圧力差によってライザー壁に加わった力により生じたフープ応力に耐えるライザーの能力を高めるために、バリヤー層に対して外側に配置することができる。フープ強度層は、通常、厚さ約3ミリメートル〜約7ミリメートルの層を形成し得る、カーボンスチールのらせん状に巻きつけられたストリップなどから成形した金属層でありえる。追加の強度層818及び820は、らせん状に巻きつけられた金属(一般にカーボンスチール)ストリップから形成することができる。強度層818及び820は、ポリマー性耐摩耗層817及び819によりフープ強度層804から、並びに互いに引き離すことができる。ライザー800は二つの強度層818、820を含むが、ライザーは、全く強度層を含まない、一つ、二つ、三つ以上の強度層を含むなど、任意の好適な数の強度層を含むことができることは理解すべきである。強度層818、820は、約1ミリメートル〜約5ミリメートルの幅をもつことができる。
【0054】
[0083]途中にある(intervening)耐摩耗層817、819は、熱可塑性組成物から形成することができるか、あるいはポリアミド、高密度ポリエチレンなどの他のポリマーから製造することができる。一態様において、耐摩耗層817、819は、一方向繊維、たとえばカーボンまたはガラス繊維を含む複合材料でありえる。たとえば耐摩耗層817、819は、層を形成するストリップの動きにより生じかねない隣接する強度層の磨滅を防ぐことができる。耐摩耗層817、819は、隣接層の鳥かご型変形(birdcaging)も防ぐことができる。ライザー800の強度層818、820と同様に、耐摩耗層の数は特に限定されず、ライザーは、ライザーが使用される深さ及び局所的環境、ライザーにより運搬される流体などに依存して、全く耐摩耗層を含まないか、または一つの耐摩耗層若しくは複数の耐摩耗層を含むことができる。耐摩耗層817、819は、比較的薄く、たとえば約0.2〜約1.5ミリメートルでありえる。
【0055】
[0084]上記記載は非結合(unbounded)フレキシブルライザーに関してのものであるが、熱可塑性組成物は結合(bonded)フローラインの製造で同様に使用することができると理解すべきである。たとえば熱可塑性組成物は、沖合の石油及びガス施設で使用するための結合フローラインを製造するために、連続管状部材の隣接層上に直接ブロー成形することができる。
【0056】
[0085]別の態様では、熱可塑性組成物は、輸送分野で使用するための部品を成形するためにブロー成形することができる。たとえば、熱可塑性組成物のブロー成形部品は、自動車部品を成形するのに使用することができる。たとえば、これらに限定されないが、燃料系、HVAC系、エンジン冷却系、並びに車両ボデーの内装及び外装部品は、熱可塑性組成物をブロー成形することを含むプロセスに従って成形することができる。図9は、支柱(strut)52、支持体54(たとえばラジエーター支持体)、グリルガード56、フロアパン58、トランクフローリング59、内柱(inner pillar)53などのブロー成形した熱可塑性組成物を含みえるように、幾つかの自動車部品を含む車体50を説明する。
【0057】
[0086]一態様において、燃料給油ネックなどの燃料系の部品は、熱可塑性組成物から製造することができる。図10は、熱可塑性組成物からブロー成形することができるように燃料給油ネック60を説明する。給油管64及びガスキャップ66は、燃料給油ネック60と結合する(associate)ことができる。燃料給油ネック60は、示されているように一般に管状ボデーをもつワンピースの継ぎ目のない漏斗部材を含む。燃料給油ネック60は、ノズル受け器を受けるように適合され、これは給油する間に燃料ノズルを受けるためのインサートである。燃料給油ネックは、ガスキャップ66を受けるように適合された開口部を一端に含み、これはこの態様では、燃料給油ネック60に一体的に形成されたねじ筋67に直接ねじで締める。ねじ筋67は、ねじ、四分の一回転、八分の一回転若しくはクイックターン構造、または公知の他のねじ構造でありえる。燃料給油ネック60は、示されているように、第一の端部から出口開口部62を含む反対側の端部へすぼまっており、これはジョイント63を介して燃料管64の第一の端部61に連結している。入口開口部の周りに形成されたロールオーバー・シーリング面(rolled-over sealing surface)65に対して据え付けられうるガスキャップ66は、ガスキャップ66と燃料供給ネック60との間で燃料及びガスを失わないように、シール68を含むことができる。ワンピース、シームレス燃料供給ネック60は、ブロー成形プロセスに従って熱可塑性組成物から成形することができる。給油管64などのフローラインは、本明細書中でさらに考察するように、代わりにまたは追加として、ブロー成形プロセスにおいて熱可塑性組成物から成形することができる。
【0058】
[0087]ブロー成形された熱可塑性組成物に含まれえるように、自動車部品はリザーバ及びタンクを含むことができる。たとえば図11は、ブロー成形プロセスに従って成形し得る燃料タンク70を説明する。燃料タンク70は、比較的複雑な形状をもつことができ、燃料タンク70内部へ及び燃料タンクから、燃料ポンプ(示されていない)の入口(ingress)及び出口(regress)用のタンク内面に形成されたポンプ装置取り付け穴74などの、様々な特徴をもつことができる。さらに、図10に説明されているように、燃料供給ネック60に接続され得るように入口管(inlet pipe)から燃料が供給される燃料入口穴(inlet hole)75は、燃料タンク70の側面または上面に形成することができる。
【0059】
[0088]燃料タンク70は、燃料タンク70の全周の周りに形成される外部円周リブ(outer circumference rib)72を含むことができ、取り付け穴73は、その角などの幾つかの所定の場所で外部円周リブ72に形成することができる。取り付け穴73を使用して、燃料タンク70をボルトで車体に固定することができる。燃料タンク70は、燃料タンク70内部の蒸発した燃料を集めるための穴(示されていない)に接続可能な、燃料タンク70の上側に取り付け穴76も含むことができる。ホースは、本明細書中に詳細が記載されるように、単層または多層ホースでありえ、ホースの一つ以上の層に熱可塑性組成物を含むことができる。
【0060】
[0089]燃料タンク70は、単層または多層燃料タンクでありえる。たとえば燃料タンク70の外壁は、ブロー成形により成形することができ、これらに限定されないが、その外側からの順で、スキン層(skin layer)、外部主要層(exterior main layer)、外部接着層、バリヤー層、内部接着層、及び内部主要層(interior main layer)などの一つ以上の層を含むことができる。熱可塑性組成物は多層燃料タンク70の一つ以上の層を形成することができる。たとえば熱可塑性組成物は非常に不浸透性でありえるので、熱可塑性組成物は、多層燃料タンクの少なくともバリヤー層を形成するためにブロー成形することができる。熱可塑性組成物から成形し得る他のリザーバとしては、フロントガラス洗浄流体、膨張タンク用のタンクなどを挙げることができるが、これらに限定されない。
【0061】
[0090]熱可塑性組成物のブロー成形能力を有益に活用しえる別の自動車系は、換気系である。たとえば、図12は、ブロー成形プロセス、たとえば射出ブロー成形プロセスに従って熱可塑性組成物から成形し得る管状エアダクト80を説明する。理解されるように、エアダクト80は、それぞれ一体的に成形された、フランジ付の第一及び第二の端部84及び86をもつ、細長いボデー部分82をもつ。エアダクト80は、側方に伸長するポート88も包含する。側方に伸長するポート88は、管状ボデー上に含められて、空気を車両上の複数の装置へ、及び複数の装置から向けることができる。たとえばエアダクト80は、エンジンの排ガスを減らすために公知の実務に従って排気ガス再循環系で使用することができる。エアダクト80は、フィルターから、入口マニホールドなどの車両の複数の部品並びに客室の加熱及び換気系へ清浄な空気を運ぶために使用することができ、側方に伸長するポート88は、ダクト80内の空気の一部を補助的な部品(secondary component)に方向転換するために使用することができる。
【0062】
[0091]エアダクト80は、エアダクト80の柔軟性及び取り付けを容易にするために、ポート88と端部84または86との間に形成し得る柔軟な部分83も含むことができる。フランジ端部84及び86により、公知の方法で慣用のホース留め金を使用して、エアダクト80が空気導入系に固定できるようにする。エアダクト80はブロー成形部品であり、互いに実質的に正反対であり、且つポート88から約90度外した分離する(parting)または分割した(split)、ライン85及び87を含むことができる。
【0063】
[0092]図13は、ブロー成形した熱可塑性組成物を含むことができるようなエアダクト90の別の例を説明する。この態様では、エアダクトは、非常に長く、クロスカービーム(cross car beam)90の一部でありえる。熱可塑性組成物の強度特性は、示されているように大きなエアダクト90を製造するときに有益でありうる。クロスカービーム90は、複数の穿孔(示されていない)をもつU字型硬質支持体92と、中空内部97をもつ、熱可塑性組成物の、ブロー成形した、硬質、連続の単一(unitary)エアダクト95を含む。硬質の中空ダクト95は、複数のアタッチメントヘッド94により、硬質支持体92に取り付けられている。ダクト95は、ダクト95の内部97と気体連通(gaseous communication)をそれぞれ提供する伸長部(extension)98、91、93及び96をもつ。たとえば、伸長部91を通して導入された調整空気(conditioned air)(たとえば加熱、冷却または除湿空気)は、内部97を通って移動し、伸長部98、93及び96を通してダクト95を出る。クロスカービーム90は、車またはトラックなどの車両のドアピラーの間に伸長するクロスカービームとして使用することができる。
【0064】
[0093]車両の外装部品も、ブロー成形法を使用して熱可塑性組成物から成形することができる。たとえば図14は、ブロー成形した熱可塑性組成物を含みえるような、歩み板アセンブリ100を説明する。歩み板アセンブリ100は、歩み板102、ステップパッド(step pad)104及びトリムストリップ(trim strip)106を含む。歩み板100は、上部支持表面(upper support surface)103をもつ。ステップパッド104は、支持面103に対して接着することができる。歩み板102は、ブロー成形手順で熱可塑性組成物から成形することができる。歩み板は、公知のようにブローモールド内部で部品を動かして、パリソンの内部表面を反対部分と接触させて、複数のリブを成形することによって、ブロー成形プロセスの間に成形し得る複数の凹みを含むことができる。これらのリブは、ブロー成形した歩み板に追加の構造的強度を提供することができる。一般に、歩み板102に十分な強度を提供するために、任意のパターンのリブを成形することができる。
【0065】
[0094]ブロー成形プロセスに従って成形加工される熱可塑性組成物を含みえる別の部品は、支持構造体であり、その一例を図15に説明する。支持構造体110は、自動車のラジエーターとライトの両方を支持するために使用し得る、ブロー成形した、中空の一体成形構造体である。構造体110は、自動車ラジエーター(明確にするために示されていない)を支持構造体110に固定するために使用し得る複数の開口部114とラジエーターフレーム部分(frame portion)112を含む。支持構造体110の一対のライトを受け取る凹み116は、自動車用のヘッドライト(明確にするために示されていない)を据え付けるために構成され、据え付けられている。凹み116は、ライトの電気的接続部分を受けるために開口部118をもつ。示されているように支持構造体110は、自動車先端部113に対して入れ子的に受け取られることができる。
【0066】
[0095]上記のように、ライザーに加えて、管状部品も本発明に包含される。ガソリン、石油、着色剤などの自動車用流体を運搬する際に使用され得るように、たとえば、ホース、導管、フローラインなどの管状部品は本発明に包含される。さらに、熱可塑性組成物からブロー成形し得るように、管状部品は、自動車用途、石油若しくはガス生産地帯用途で知見されるものに限定されない。図16を参照して、熱可塑性組成物からブロー成形した単層導管120の一態様が示されている。示されているように、導管120は、多方向(multiple direction)に伸長して、比較的複雑な形状になっている。たとえば熱可塑性組成物が固化する前に、図16に示されているように部品に角変位(angular displacement)を形成することができる。導管120は、122、124及び126に角変位変化を含む。たとえば導管は、車両の排気系または車両の燃料系で使用し得る部品でありえる。たとえば、導管120は、燃料供給ネックからガソリンタンクへガソリンを運ぶための給油管を形成することができる。
【0067】
[0096]上記のように、熱可塑性組成物を組み入れられる管状部材は、多層管状部材でありえる。図17は、管状部材210の一つ以上のブロー成形層に熱可塑性組成物を組み入れられるように、多層管状部材210を説明する。たとえば内層212は、広い温度範囲で高い衝撃強さ特性を示し、且つ管状部材210内部で運ばれる材料に対して実質的に不活性であるブロー成形された熱可塑性組成物から形成することができる。
【0068】
[0097]外層214及び中間層216は、内層を形成する熱可塑性組成物と同一または異なる熱可塑性組成物を含むことができる。さらに、多層管状部材の外層は、ブロー成形することができるか、または異なる製造法に従って形成することができる。しかしながら、多層管状部材の層は、複数の異なる材料から形成することができ、部材のたった一つまたは複数の層は熱可塑性材料から形成することができると理解すべきである。たとえば、一態様において、中間層216は、圧力及び機械的作用に対して高い耐性を示すことができる。たとえば層216は、ホモポリアミド、コポリアミド、これらのブレンドまたは互い若しくは他のポリマーとの混合物の群由来のポリアミドから形成することができる。あるいは層216は、繊維強化樹脂複合材料などの繊維強化材料から形成することができる。たとえば、ポリアラミド(たとえばケブラー(登録商標))で織ったマットを使用して、機械的攻撃に対して非常に耐性である中間層216を形成することができる。そのような中間層は、あらかじめ形成したブロー成形内層の上に形成することができるか、最初に形成し、内層を、最初に形成した層の内面にブロー成形法に従って形成することができる。
【0069】
[0098]外層214は、外部攻撃からの保護を提供する、並びに管状部材に絶縁または他の所望の特徴を提供することができる。たとえば多層ホースは、高レベルの耐チッピング(chipping)性、耐候性、難燃性及び耐寒性をもつ好適な種類のゴム材料から形成した外層214を含むことができる。そのような材料の例としては、熱可塑性エラストマー、たとえばポリアミド熱可塑性エラストマー、ポリエステル熱可塑性エラストマー、ポリオレフィン熱可塑性エラストマー及びスチレン熱可塑性エラストマーが挙げられる。外層214の好適な材料としては、エチレン-プロピレン-ジエンターポリマーゴム、エチレン-プロピレンゴム、クロロスルホン化ポリエチレンゴム、アクリロニトリル-ブタジエンゴムとポリ塩化ビニルとのブレンド、アクリロニトリル-ブタジエンゴムとエチレン-プロピレン-ジエンターポリマーゴムとのブレンド、塩素化ポリエチレンゴムが挙げられるが、これらに限定されない。
【0070】
[0099]あるいは外層214は、たとえばポリオレフィン、ポリ塩化ビニル、若しくは高密度ポリエチレンなどのより固い、より柔軟性の低い材料、ガラス繊維複合材料若しくは炭素繊維複合材料などの繊維強化複合材料、またはスチールジャケットなどの金属材料から製造することができる。さらには、多層部材210の他の層と同様に、外層は、ブロー成形することができるか、別の成形技術に従って成形することができる。
【0071】
[0100]もちろん、多層管状部材は、三層に限定されず、二層、四層以上の別個(distinct)の層を含むことができる。多層管状部材はさらに、接着性材料、たとえばポリエステルポリウレタン、ポリエーテルポリウレタン、ポリエステルエラストマー、ポリエーテルエラストマー、ポリアミド、ポリエーテルポリアミド、ポリエーテルポリイミド、機能性ポリオレフィンなどから形成した一種以上の接着層を含むことができる。
【0072】
[0101]ブロー成形した熱可塑性組成物は、柔軟性と高い強度特性の両方を示すことができる。図18は、熱可塑性組成物を成形する際に使用し得るプロセスを説明する。説明されているように、熱可塑性組成物の成分は、押出機300などの溶融加工装置で溶融混練することができる。示されているように、押出機300は、これらに限定されないが、一軸、二軸、または多軸押出機(multi-screw extruder)、共回転若しくは反転押出機、噛み合い(intermeshing)若しくは非-噛み合い(non-intermeshing)押出機など当業界で公知の任意の押出機でありえる。一態様において、本組成物は、多数のゾーンまたはバレルを含む押出機300で溶融加工することができる。説明される態様では、押出機300は、示されているように押出機300の長さに沿って321〜330の番号がつけられた10個のバレルを含む。それぞれのバレル321〜330は、独立して操作することができる供給ライン(feed line)314、316、ベント312、温度調節などを含むことができる。汎用スクリューデザインを使用して、熱可塑性組成物を溶融加工することができる。たとえば熱可塑性組成物は、Coperion共回転完全噛み合い二軸押出機などの二軸押出機を使用して溶融混合することができる。
【0073】
[0102]熱可塑性組成物を製造する際、ポリアリーレンスルフィドは、主供給口314で押出機300に供給することができる。たとえばポリアリーレンスルフィドは、計量供給装置(metering feeder)により第一のバレル321で主供給口314に供給することができる。ポリアリーレンスルフィドは、押出機300の中を通って前進するにつれて、融解して、組成物の他の成分と混合することができる。耐衝撃性改良剤は、所望により主供給口314で熱可塑性組成物と共に(同時に:in conjunction with)または主供給口の下流で、組成物に添加することができる。
【0074】
[0103]主供給口314の下流地点に、且つ組成物に耐衝撃性改良剤を添加した後、架橋剤を組成物に添加することができる。たとえば例示された態様では、バレル326での第二の供給ライン316を、架橋剤の添加用に使用することができる。架橋剤の添加点は特に限定されない。しかしながら、架橋剤は、耐衝撃性改良剤がポリアリーレンスルフィドの中にくまなく分布されるように、ポリアリーレンスルフィドを剪断下で耐衝撃性改良剤と混合した後の時点で、組成物に添加することができる。
【0075】
[0104]ポリアリーレンスルフィドは、式(I):
【0076】
【化1】
【0077】
{式中、Ar1、Ar2、Ar3、及びAr4は同一または異なり、6〜18個の炭素原子のアリーレンユニットであり;W、X、Y、及びZは同一または異なり、−SO2−、−S−、−SO−、−CO−、−O−、−COO−または、1〜6個の炭素原子のアルキレン若しくはアルキリデン基から選択される二価の結合基(linking group)であり、ここで前記結合基の少なくとも一つは−S−であり;n、m、i、j、k、l、o、及びpは独立してゼロまたは1、2、3、または4であり、但し、その合計は2以上である}の繰り返しユニットを含むポリアリーレンチオエーテルでありえる。アリーレンユニットAr1、Ar2、Ar3、及びAr4は、選択的に置換されるか、または非置換でありえる。好都合なアリーレン系は、フェニレン、ビフェニレン、ナフチレン、アントラセン及びフェナントレンである。ポリアリーレンスルフィドは典型的には、約30モル%を超え、約50モル%を超え、または約70モル%を超えるアリーレンスルフィド(−S−)ユニットを含む。一態様において、ポリアリーレンスルフィドは、少なくとも85モル%の、二つの芳香環に直接結合したスルフィド結合を含む。
【0078】
[0105]一態様において、ポリアリーレンスルフィドは、その成分としてフェニレンスルフィド構造−(C6H4−S)n−(式中、nは1以上の整数である)を含むものとして、本明細書中で定義されるポリフェニレンスルフィドである。
【0079】
[0106]ポリアリーレンスルフィドは、熱可塑性組成物を形成する前に合成することができるが、これはプロセスの必要条件ではない。たとえばポリアリーレンスルフィドは公知の供給業者から購入することができる。たとえばTicona of Florence、ケンタッキー(アメリカ)から入手可能なFortron(登録商標)ポリフェニレンスルフィドは購入可能であり、ポリアリーレンスルフィドとして使用することができる。ポリアリーレンスルフィドを合成する際、通常、当業界で公知の合成技術を使用することができる。たとえば、ポリアリーレンスルフィドを製造するプロセスは、有機アミド溶媒中でアルカリ金属の硫化物(alkali metal sulfide)などの水硫化物イオン(hydrosulfide ion)を提供する材料と、ジハロ芳香族化合物(dihaloaromatic compound)とを反応させることを含みえる。
【0080】
[0107]アルカリ金属の硫化物は、たとえば硫化リチウム、硫化ナトリウム、硫化カリウム、硫化ルビジウム、硫化セシウムまたはその混合物でありえる。アルカリ金属の硫化物が水和物または水性混合物(aqueous mixture)である場合、アルカリ金属の硫化物は、重合反応に先立って脱水操作に従って処理することができる。アルカリ金属の硫化物は、現場生成することもできる。さらに少量のアルカリ金属の水酸化物を反応に含めて、アルカリ金属の硫化物と共に少量で存在するかもしれない、アルカリ金属ポリスルフィド(alkali metal polysulfide)またはチオ硫酸アルカリ金属(alkali metal thiosulfate)などの不純物を除去または反応させる(たとえば、そのような不純物を無害の物質に変える)ことができる。
【0081】
[0108]ジハロ芳香族化合物は、これらに限定されないが、o-ジハロベンゼン、m-ジハロベンゼン、p-ジハロベンゼン、ジハロトルエン、ジハロナフタレン、メトキシ-ジハロベンゼン、ジハロビフェニル、ジハロ安息香酸、ジハロジフェニルエーテル、ジハロジフェニルスルホン、ジハロジフェニルスルホキシドまたはジハロジフェニルケトンでありえる。ジハロ芳香族化合物は、単独でまたはそれらの任意の組み合わせで使用することができる。具体的な代表例のジハロ芳香族化合物としては、これらに限定されないが、p-ジクロロベンゼン;m-ジクロロベンゼン;o-ジクロロベンゼン;2,5-ジクロロトルエン;1,4-ジブロモベンゼン;1,4-ジクロロナフタレン;1-メトキシ-2,5-ジクロロベンゼン;4,4'-ジクロロビフェニル;3,5-ジクロロ安息香酸;4,4'-ジクロロジフェニルエーテル;4,4'-ジクロロジフェニルスルホン;4,4'-ジクロロジフェニルスルホキシド;及び4,4'-ジクロロジフェニルケトンを挙げることができる。
【0082】
[0109]ハロゲン原子は、フッ素、塩素、臭素またはヨウ素でありえ、同一ジハロ-芳香族化合物中の二つのハロゲン原子は同一または互いに異なっていてもよい。一態様において、o-ジクロロベンゼン、m-ジクロロベンゼン、p-ジクロロベンゼンまたはこれらの二つ以上の化合物の混合物をジハロ-芳香族化合物として使用する。
【0083】
[0110]当業界で公知のように、ポリアリーレンスルフィドの末端基(end group)を形成するか、重合反応及び/またはポリアリーレンスルフィドの分子量を調整するために、ジハロ芳香族化合物と組み合わせてモノハロ化合物(monohalo compound)(必ずしも芳香族化合物ではない)を使用することも可能である。
【0084】
[0111]ポリアリーレンスルフィドは、ホモポリマーでありえ、またはコポリマーでありえる。ジハロ芳香族化合物の好適な、選択的な組み合わせにより、ポリアリーレンスルフィドコポリマーは、二つ以上の異なるユニットを含んで形成することができる。たとえばp-ジクロロベンゼンをm-ジクロロベンゼンまたは4,4'-ジクロロジフェニルスルホンと組み合わせて使用する場合、ポリアリーレンスルフィドコポリマーは、式(II):
【0085】
【化2】
【0086】
の構造をもつセグメントと、式(III):
【0087】
【化3】
【0088】
の構造をもつセグメント、または式(IV):
【0089】
【化4】
【0090】
の構造をもつセグメントを含んで形成することができる。
【0091】
[0112]一般に、充填されたアルカリ金属の硫化物の有効量1モルあたりの(単数または複数種類の)ジハロ芳香族化合物の量は、1.0〜2.0モル、1.05〜2.0モル、または1.1〜1.7モルでありえる。従って、ポリアリーレンスルフィドは、ハロゲン化アルキル(通常、塩化アルキル)末端基を含みうる。
【0092】
[0113]ポリアリーレンスルフィドを製造するプロセスは、有機アミド溶媒中で重合反応を実施することを含みえる。重合反応で使用される代表的な有機アミド溶媒としては、これらに限定されないが、N-メチル-2-ピロリドン;N-エチル-2-ピロリドン;N,N-ジメチルホルムアミド;N,N-ジメチルアセトアミド;N-メチルカプロラクタム;テトラメチルウレア;ジメチルイミダゾリジノン;ヘキサメチルリン酸トリアミド及びこれらの混合物を挙げることができる。反応中で使用される有機アミド溶媒の量は、たとえばアルカリ金属の硫化物の有効量1モルあたり0.2〜5キログラム(kg/mol)でありえる。
【0093】
[0114]重合は、段階的重合プロセスにより実施することができる。第一の重合段階は、ジハロ芳香族化合物を反応器に導入する、及び約180℃〜約235℃、または約200℃〜約230℃の温度で水の存在下、重合反応に前記ジハロ芳香族化合物を暴露する、及びジハロ芳香族化合物の転換速度(conversion rate)が理論的必要量の約50モル%以上に到達するまで重合を継続する、各段階を含みえる。
【0094】
[0115]第二の重合段階では、重合系の水の総量が、充填したアルカリ金属の硫化物の有効量1モルあたり、約7モル、または約5モルに増加するように、水を反応スラリーに添加する。その後、重合系の反応混合物を約250℃〜約290℃、約255℃〜約280℃、または約260℃〜約270℃の温度に加熱することができ、このようにして形成したポリマーの溶融粘度がポリアリーレンスルフィドの所望の最終レベルに上昇するまで、重合を継続することができる。第二の重合段階の持続時間は、たとえば約0.5〜約20時間、または約1〜約10時間でありえる。
【0095】
[0116]ポリアリーレンスルフィドは、線状、半線状(semi-linear)、分岐または架橋でありえる。線状ポリアリーレンスルフィドは、−(Ar−S)−の繰り返しユニットを主な構成ユニットとして含む。通常、線状ポリアリーレンスルフィドは、この繰り返しユニット約80モル%以上を含むことができる。線状ポリアリーレンスルフィドは、少量の分岐ユニットまたは架橋ユニットを含むことができるが、分岐または架橋ユニットの量はポリアリーレンスルフィドの総モノマーユニットの約1モル%未満でありえる。線状ポリアリーレンスルフィドポリマーは、上記繰り返しユニットを含むランダムコポリマーまたはブロックコポリマーでありえる。
【0096】
[0117]3つ以上の反応性官能基(reactive functional group)をもつ一つ以上のモノマーを少量、ポリマーに導入することにより提供される架橋構造または分岐構造をもちうる半線状ポリアリーレンスルフィドを使用することができる。たとえば、ポリマーの約1モル%〜約10モル%は、三つ以上の反応性官能基をもつモノマーから製造することができる。半線状ポリアリーレンスルフィドを製造する際に使用できる方法は、通常、当業界で公知である。たとえば、半線状ポリアリーレンスルフィドを製造する際に使用されるモノマー成分は、分岐ポリマーを製造する際に使用することができる1分子当たり2つ以上のハロゲン置換基をもつ所定量(an amount)のポリハロ芳香族化合物(polyhaloaromatic compound)を含むことができる。そのようなモノマーは、式:R'Xn{式中、Xはそれぞれ、塩素、臭素、及びヨウ素から選択され、nは3〜6の整数であり、R'は、約4個以下のメチル置換基をもつことができる価数nの多価芳香族基であり、R'中の炭素原子の総数は、6〜約16の範囲内である}により表すことができる。半線状ポリアリーレンスルフィドを製造する際に使用できる1分子あたり2を超える置換ハロゲン(more than two halogens substituted per molecule)をもつポリハロ芳香族化合物の例としては、1,2,3-トリクロロベンゼン、1,2,4-トリクロロベンゼン、1,3-ジクロロ-5-ブロモベンゼン、1,2,4-トリヨードベンゼン、1,2,3,5-テトラブロモベンゼン、ヘキサクロロベンゼン、1,3,5-トリクロロ-2,4,6-トリメチルベンゼン、2,2',4,4'-テトラクロロビフェニル、2,2',5,5'-テトラ-ヨードビフェニル、2,2',6,6'-テトラブロモ-3,3',5,5'-テトラメチルビフェニル、1,2,3,4-テトラクロロナフタレン、1,2,4-トリブロモ-6-メチルナフタレンなど、及びこれらの混合物が挙げられる。
【0097】
[0118]重合の後、ポリアリーレンスルフィドは液体媒体で洗浄することができる。たとえば、ポリアリーレンスルフィドは、混合物を形成しながら、他の成分と混和する前に、水及び/または、これらに限定されないが、アセトン、N-メチル-2-ピロリドンなどのポリアリーレンスルフィドを分解しない有機溶媒、塩水(salt solution)、及び/または酢酸または塩酸などの酸性媒体で洗浄することができる。ポリアリーレンスルフィドは、通常、当業者に公知の逐次的方法で洗浄することができる。酸性溶液または塩水で洗浄すると、ナトリウム、リチウムまたはカルシウム金属イオン末端基濃度を約2000ppmから約100ppmに削減することができる。
【0098】
[0119]ポリアリーレンスルフィドは、温水(hot water)洗浄プロセスにかけることができる。温水洗浄液の温度は、約100℃以上でありえ、たとえば約120℃を超え、約150℃を超え、または約170℃超える。
【0099】
[0120]ポリアリーレンスルフィドを形成するための重合反応装置は特に限定されないが、典型的には、高粘度流体の形成で通常使用される装置を使用するのが望ましい。そのような反応装置の例としては、様々な形状の攪拌ブレード、たとえばアンカー型、多段型、螺旋-リボン型、スクリューシャフト型など、またはそれらの修正形をもつ攪拌装置をもつ攪拌タンク型重合反応装置を挙げることができる。そのような反応装置のさらなる例としては、混練で通常、使用される混合装置、たとえば混練機、ロールミル、バンバリーミキサーなどが挙げられる。重合後、溶融ポリアリーレンスルフィドは、典型的には所望の形状のダイがついた押出しオリフィスを通って反応器から排出され、冷却され、集めることができる。通常、ポリアリーレンスルフィドは、穿孔ダイを通って吐出されて、水浴中に引き取られるストランドを形成し、ペレット化して乾燥される。ポリアリーレンスルフィドは、ストランド、小粒または粉末の形状でもありえる。
【0100】
[0121]熱可塑性組成物は、組成物の重量の約10wt%〜約99wt%、たとえば組成物の重量の約20%wt%〜約90wt%の量のポリアリーレンスルフィド成分(ポリアリーレンスルフィドのブレンドも包含する)を含むことができる。
【0101】
[0122]ポリアリーレンスルフィドは、一般に、熱可塑性組成物の所望の最終用途に依存して、任意の好適な分子量及び溶融粘度でありえる。たとえば、ポリアリーレンスルフィドの溶融粘度は、1200s-1の剪断速度及び温度310℃で、ISO試験No.11443に従って測定して、約500ポアズ未満の溶融粘度をもつ低粘度ポリアリーレンスルフィド、約500ポアズ〜1500ポアズの溶融粘度をもつ中間粘度(medium viscosity)ポリアリーレンスルフィド、または約1,500ポアズを超える溶融粘度をもつ高溶融粘度ポリアリーレンスルフィドでありうる。
【0102】
[0123]一態様に従って、ポリアリーレンスルフィドは、官能基化(機能化:functionalize)して、ポリアリーレンスルフィドと耐衝撃性改良剤との間の結合形成をさらに促進することができ、これは組成物の中にくまなく耐衝撃性改良剤の分布をさらに改善し、且つ相分離を防ぐことができる。たとえばポリアリーレンスルフィドは、ポリアリーレンスルフィド上に末端官能基(functional terminal group)を提供するために、カルボキシル、酸無水物、アミン、イソシアネートまたは他の官能基含有改質化合物(functional group-containing modifying compound)を用いて、形成後にさらに処理することができる。たとえば、ポリアリーレンスルフィドは、メルカプト基またはジスルフィド基を含み、且つ反応性官能基も含む改質化合物(modifying compound)と反応することができる。一態様において、ポリアリーレンスルフィドは、有機溶媒中で改質化合物と反応することができる。別の態様では、ポリアリーレンスルフィドは、溶融状態で改質化合物と反応することができる。
【0103】
[0124]一態様において、所望の官能基を含むジスルフィド化合物を熱可塑性組成物形成プロセスに組み入れることができ、ポリアリーレンスルフィドは、組成物の形成と共に官能基化することができる。たとえば、所望の反応性官能基を含むジスルフィド化合物は、ポリアリーレンスルフィドと共に、または架橋剤を添加する前の任意の他の時点若しくは架橋剤の添加と共に、溶融押出機に添加することができる。
【0104】
[0125]ポリアリーレンスルフィドポリマーと反応的に官能基化された(reactively functionalized)ジスルフィド化合物との間の反応は、ポリアリーレンスルフィドの溶融粘度を下げることができるポリアリーレンスルフィドポリマーの鎖切断(chain scission)を含むことができる。一態様において、低ハロゲン含有量の高溶融粘度ポリアリーレンスルフィドを出発ポリマー(starting polymer)として使用することができる。官能性(functional)ジスルフィド化合物を使用することによってポリアリーレンスルフィドポリマーを反応的に官能基化した後、低ハロゲン含有量の比較的低溶融粘度のポリアリーレンスルフィドを形成することができる。この鎖切断の後、ポリアリーレンスルフィドの溶融粘度はさらなる処理に関して好適でありえ、低溶融粘度ポリアリーレンスルフィドの全体のハロゲン含有量もかなり低くなりうる。低ハロゲン含有量のポリマー材料が環境問題によりますます望ましくなっているため、低ハロゲン含有量に加えて優れた強度及び劣化抵抗性(degradation resistance)を示す熱可塑性組成物は好都合でありうる。一態様において、熱可塑性組成物は、Parr Bomb燃焼、続いてイオンクロマトグラフィーを使用して元素分析に従って測定して、約1000ppm未満、約900ppm未満、約600ppm未満、または約400ppm未満のハロゲン含有量を有しえる。
【0105】
[0126]ジスルフィド化合物は一般に、式:
【0106】
【化5】
【0107】
{式中、R1及びR2は同一または異なっていてもよく、1〜20個の炭素原子を独立して含む炭化水素基である}の構造をもつことができる。たとえば、R1及びR2は、アルキル、シクロアルキル、アリールまたは複素環基でありえる。R1及びR1は、ジスルフィド化合物の(単数または複数の)末端基に反応性官能基(reactive functionality)を含むことができる。たとえば、R1及びR2の少なくとも一つは、末端カルボキシル基、ヒドロキシル基、置換若しくは非置換アミノ基、ニトロ基などを含むことができる。通常、反応性官能基は、反応的に官能基化されたポリアリーレンスルフィドが耐衝撃性改良剤と反応できるように選択することができる。たとえば、エポキシ末端基化(epoxy-terminated)耐衝撃性改良剤を考えるとき、ジスルフィド化合物はカルボキシル及び/またはアミノ官能基を含むことができる。
【0108】
[0127]本明細書において包含されるように、反応性末端基を含むジスルフィド化合物の例としては、これらに限定されないが、2,2'-ジアミノジフェニルジスルフィド、3,3'-ジアミノジフェニルジスルフィド、4,4'-ジアミノジフェニルジスルフィド、ジベンジルジスルフィド、ジチオサリチル酸(dithiosalicyclic acid)、ジチオグリコール酸、α,α'-ジチオ二乳酸(dithiodilactic acid)、β,β'-ジチオ二乳酸、3,3'-ジチオジピリジン、4,4'-チオモルホリン、2,2'-ジチオビス(ベンゾチアゾール)、2,2'-ジチオビス(ベンズイミダゾール)、2,2'-ジチオビス(ベンゾオキサゾール)及び2-(4'-モルホリノジチオ)ベンゾチアゾールを含むことができる。
【0109】
[0128]ポリアリーレンスルフィドの量対ジスルフィド化合物の量の比は、約1000:1〜約10:1、約500:1〜約20:1、または約400:1〜約30:1でありえる。
【0110】
[0129]ポリアリーレンスルフィドポリマーに加えて、本組成物は耐衝撃性改良剤も含む。より具体的には、耐衝撃性改良剤は、オレフィン性コポリマーまたはターポリマーでありえる。たとえば耐衝撃性改良剤は、約4〜約10個の炭素原子をもつエチレン性不飽和モノマー単位を含むことができる。
【0111】
[0130]耐衝撃性改良剤は、架橋剤と反応させるために、官能基化を含むように改質(変性)することができる。たとえば耐衝撃性改良剤は、約0.01〜約0.5のモル分率(mole fraction)の、以下のもの:約3〜約8個の炭素原子をもつα,β不飽和ジカルボン酸またはその塩;約3〜約8個の炭素原子をもつα,β不飽和カルボン酸またはその塩;約3〜約8個の炭素原子をもつ無水物またはその塩;約3〜約8個の炭素原子をもつモノエステルまたはその塩;スルホン酸またはその塩;約4〜約11個の炭素原子をもつ不飽和エポキシ化合物の一つ以上で改質することができる。そのような改質官能基化(modification functionality)としては、無水マレイン酸、フマル酸、マレイン酸、メタクリル酸、アクリル酸及びグリシジルメタクリレートが挙げられる。メタクリル酸塩の例としては、アルカリ金属及び遷移金属塩、たとえばナトリウム、亜鉛、及びアルミニウム塩が挙げられる。
【0112】
[0131]使用しえる耐衝撃性改良剤の非限定的な例としては、エチレン-アクリル酸コポリマー、エチレン-無水マレイン酸コポリマー、エチレン-アルキル(メタ)アクリレート-無水マレイン酸ターポリマー、エチレン-アルキル(メタ)アクリレート-グリシジル(メタ)アクリレートターポリマー、エチレン-アクリル酸エステル-メタクリル酸ターポリマー、エチレン-アクリル酸エステル-無水マレイン酸ターポリマー、エチレン-メタクリル酸-メタクリル酸アルカリ金属塩(アイオノマー)ターポリマーなどが挙げられる。たとえば一態様において、耐衝撃性改良剤としては、エチレン、メチルアクリレート及びグリシジルメタクリレートのランダムターポリマーが挙げられる。ターポリマーは、約5%〜約20%、たとえば約6%〜約10%のグリシジルメタクリレート含有量を有することができる。ターポリマーは、約20%〜約30%、たとえば約24%のメチルアクリレート含有量を有することができる。
【0113】
[0132]一態様に従って、耐衝撃性改良剤は、エポキシ官能基化(epoxy functionalization)、たとえば末端エポキシ基、骨格オキシランユニット(skeletal oxirane unit)及び/またはペンダントエポキシ基を含む線状若しくは分岐、ホモポリマーまたはコポリマー(たとえばランダム、グラフト、ブロックなど)でありえる。たとえば耐衝撃性改良剤は、エポキシ官能基化を含む少なくとも一つのモノマー成分を含むコポリマーでありえる。耐衝撃性改良剤のモノマーユニットは変動し得る。一態様において、たとえば耐衝撃性改良剤は、エポキシ官能性メタクリル酸モノマーユニット(epoxy-functional methacrylic monomer unit)を含むことができる。本明細書中で使用するように、「メタクリル(メタクリル酸:methacrylic)」なる用語は一般に、アクリル及びメタクリルモノマー、並びにその塩及びエステル、たとえばアクリレート及びメタクリレートモノマーを指す。耐衝撃性改良剤に組み入れることができるようなエポキシ官能性メタクリルモノマーとしては、1,2-エポキシ基を含むもの、たとえばグリシジルアクリレート及びグリシジルメタクリレートが挙げられるが、これらに限定されない。他の好適なエポキシ官能性モノマーとしては、アリルグリシジルエーテル、グリシジルエタクリレート及びグリシジルイタコネートが挙げられる。
【0114】
[0133]他のモノマーユニットは、追加としてまたはその代わりに耐衝撃性改良剤の成分でありえる。他のモノマーの例としては、たとえばエステルモノマー、オレフィンモノマー、アミドモノマーが挙げられる。一態様において、耐衝撃性改良剤としては、少なくとも一つの線状または分岐α-オレフィンモノマー、たとえば2〜20個の炭素原子または2〜8個の炭素原子をもつようなものが挙げられる。具体的な例としては、エチレン;プロピレン;1-ブテン;3-メチル-1-ブテン;3,3-ジメチル-1-ブテン;1-ペンテン;一つ以上のメチル、エチル若しくはプロピル置換基をもつ1-ペンテン;一つ以上のメチル、エチル若しくはプロピル置換基をもつ1-ヘキセン;一つ以上のメチル、エチル若しくはプロピル置換基をもつ1-ヘプテン;一つ以上のメチル、エチル若しくはプロピル置換基をもつ1-オクテン;一つ以上のメチル、エチル若しくはプロピル置換基をもつ1-ノネン;エチル、メチル、若しくはジメチル-置換1-デセン;1-ドデセン;及びスチレンが挙げられる。
【0115】
[0134]エポキシ官能基化を含む耐衝撃性改良剤に配合されるモノマーとしては、ポリマーのモノマーユニットの少なくとも一部がエポキシ官能基化されている限りは、エポキシ官能基化を含まないモノマーを含むことができる。
【0116】
[0135]一態様において、耐衝撃性改良剤は、エポキシ官能基化を含むターポリマーでありえる。たとえば耐衝撃性改良剤は、エポキシ官能基化を含むメタクリル酸成分、α-オレフィン成分と、エポキシ官能基化を含まないメタクリル酸成分を含むことができる。たとえば耐衝撃性改良剤は、以下の構造:
【0117】
【化6】
【0118】
{式中、a、b及びcは1以上である}をもつ、ポリ(エチレン-コ-メタクリレート-コ-グリシジルメタクリレート)でありえる。
【0119】
[0136]別の態様では、耐衝撃性改良剤は、以下の構造:
【0120】
【化7】
【0121】
{式中、x、y及びzは1以上である}をもつエチレン、エチルアクリレート及び無水マレイン酸のランダムコポリマーでありえる。
【0122】
[0137]コポリマー性(copolymeric)耐衝撃性改良剤の様々なモノマー成分の相対割合は特に限定されない。たとえば一態様において、エポキシ官能性メタクリル酸モノマー成分は、コポリマー性耐衝撃性改良剤の約1wt%〜約25wt%または約2wt%〜約20wt%を構成(form)しえる。a-オレフィンモノマーは、コポリマー性耐衝撃性改良剤の約55wt%〜約95wt%、または約60wt%〜約90wt%を構成しえる。使用する際、他のモノマー成分(たとえば、非エポキシ官能性メタクリル酸モノマー)は、コポリマー性耐衝撃性改良剤の約5wt%〜約35wt%、または約8wt%〜約30wt%を構成することができる。
【0123】
[0138]一般的に当業界で公知のように、耐衝撃性改良剤は標準的な重合法に従って形成することができる。たとえば極性官能基(polar functional group)を含むモノマーをポリマー幹(backbone)にグラフトして、グラフトコポリマーを製造することができる。あるいは、公知のフリーラジカル重合法、たとえば高圧反応、チーグラー-ナッタ触媒反応系、シングルサイト触媒(たとえばメタロセン)反応系などを使用して、官能基を含むモノマーをモノマーと共重合して、ブロックまたはランダムコポリマーを製造することができる。
【0124】
[0139]あるいは、耐衝撃性改良剤は小売市場で入手することができる。たとえば、耐衝撃性改良剤として使用するのに好適な化合物は、商品名Lotader(登録商標)のもと、Arkemaから入手することができる。
【0125】
[0140]耐衝撃性改良剤の分子量は広範囲を変動しえる。たとえば、耐衝撃性改良剤は、約7,500〜約250,000グラム/モル、態様によっては約15,000〜約150,000グラム/モル、態様によっては約20,000〜100,000グラム/モルの数平均分子量をもつことができ、多分散性指数(polydispersity index)は通常、2.5〜7である。
【0126】
[0141]通常、耐衝撃性改良剤は、組成物中に、約0.05重量%〜約40重量%、約0.05重量%〜約37重量%、または約0.1重量%〜約35重量%の量で存在することができる。
【0127】
[0142]図18を参照して、耐衝撃性改良剤は、溶融加工装置の主供給口314でポリアリーレンスルフィドと共に組成物に添加することができる。これは本組成物の形成プロセスの必要条件ではないが、他の態様では、耐衝撃性改良剤は主供給口の下流で添加することができる。たとえば、耐衝撃性改良剤は、ポリアリーレンスルフィドが溶融加工装置に供給される地点より下流の位置であるが、それでもやはり溶融区分、すなわち、ポリアリーレンスルフィドが溶融状態になる溶融加工装置の長さより前で添加することができる。別の態様では、耐衝撃性改良剤は、ポリアリーレンスルフィドが溶融状態になる地点より下流の位置で添加することができる。
【0128】
[0143]所望により、一つ以上の分配混合部材(distributive mixing element)及び/または分散混合部材(dispersive mixing element)を溶融加工装置の内部で使用することができる。一軸押出機に好適な分配ミキサーとしては、サキソン(Saxon)、ダルマージ(Dulmage)、キャビティトランスファーミキサー(Cavity Transfer mixer) などが挙げられるが、これらに限定されない。同様に、好適な分散ミキサーとしては、ブリスターリング(Blister ring)、レオリー/マドック(Leroy/Maddock)、CRDミキサーが挙げられるが、これらに限定されない。当業界で公知のように、バスニーダー押出機(Buss Kneader extruder)、キャビティトランスファーミキサー及びボルテックス・インターメッシング・ピンミキサー(Vortex Intermeshing Pin mixer)で使用されるもののような、ポリマー溶融物の折り畳み及び再配向をつくりだすバレル内でピンを使用することにより、混合をさらに促進することができる。
【0129】
[0144]ポリアリーレンスルフィド及び耐衝撃性改良剤に加えて、熱可塑性組成物は、架橋剤を含むことができる。架橋剤は、耐衝撃性改良剤の官能基と反応して、耐衝撃性改良剤のポリマー鎖内部及びポリマー鎖間に架橋を形成できる多官能化合物またはそれらの組み合わせでありえる。通常、架橋剤は、非ポリマー性化合物(non-polymeric compound)、即ち、結合または非ポリマー性(繰り返しでない)結合成分によって結合された二つ以上の反応的に官能性末端部分(機能性末端部分:reactively functional terminal moiety)を含む分子化合物(molecular compound)でありえる。たとえば、架橋剤は、ジエポキシド、多官能性エポキシド、ジイソシアネート、ポリイソシアネート、多価アルコール、水溶性カルボジイミド、ジアミン、ジアミノアルカン、多官能性カルボン酸(polyfunctional carboxylic acid)、二酸ハロゲン化物(diacid halide)などが挙げられうるが、これらに限定されない。たとえば、エポキシ官能性耐衝撃性改良剤を考えるとき、非ポリマー性多官能性カルボン酸またはアミンを架橋剤として使用することができる。
【0130】
[0145]多官能性カルボン酸架橋剤の具体的な例としては、イソフタル酸、テレフタル酸、フタル酸、1,2-ジ(p-カルボキシフェニル)エタン、4,4'-ジカルボキシジフェニルエーテル、4,4'-二安息香酸、1,4-または1,5-ナフタレンジカルボン酸、デカヒドロナフタレンジカルボン酸、ノルボルネンジカルボン酸、ビシクロオクタンジカルボン酸、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸(cisとtransの両方)、1,4-ヘキシレンジカルボン酸、アジピン酸、アゼライン酸、ジカルボキシルドデカン酸、コハク酸、マレイン酸、グルタル酸、スベリン酸、アゼライン酸及びセバシン酸が挙げられるが、これらに限定されない。対応するジカルボン酸誘導体、たとえばアルコール基に1〜4個の炭素原子をもつカルボン酸ジエステル、カルボン酸無水物またはカルボン酸ハライド(carboxylic acid halide)も使用することができる。
【0131】
[0146]架橋剤として有用な典型的なジオールとしては、脂肪族ジオール、たとえばエチレングリコール、1,2-プロピレングリコール、1,3-プロピレングリコール、2,2-ジメチル-1,3-プロパンジオール、2-エチル-2-メチル-1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,4-ブト-2-エンジオール、1,3-1,5-ペンタンジオール、1,5-ペンタンジオール、ジプロピレングリコール、2-メチル-1,5-ペンタンジオールなどが挙げられえるが、これらに限定されない。芳香族ジオール類、たとえば、ヒドロキノン、カテコール、レゾルシノール、メチルヒドロキノン、クロロヒドロキノン、ビスフェノールA、テトラクロロビスフェノールA、フェノールフタレインなども使用しえるが、これらに限定されない。使用しえる典型的な脂環式ジオールは、脂環式部分を含むことができ、たとえば1,6-ヘキサンジオール、ジメタノールデカリン、ジメタノールビシクロオクタン、1,4-シクロヘキサンジメタノール(そのcis-及びtrans-異性体を含む)、トリエチレングリコール、1,10-デカンジオールなどがある。
【0132】
[0147]架橋剤として使用し得る典型的なジアミンとしては、イソホロン-ジアミン、エチレンジアミン、1,2-、1,3-プロピレン-ジアミン、N-メチル-1,3-プロピレン-ジアミン、N,N'-ジメチル-エチレン-ジアミン及び芳香族ジアミン、たとえば2,4-及び2,6-トルオイレン-ジアミン、3,5-ジエチル-2,4-及び/または-2,6-トルオイレン-ジアミン、及び第一オルト-、ジ-、トリ-及び/またはテトラ-アルキル置換4,4'-ジアミノジフェニル-メタン、(シクロ)脂肪族ジアミン、たとえばイソホロン-ジアミン、エチレンジアミン、1,2-、1,3-プロピレン-ジアミン、N-メチル-1,3-プロピレン-ジアミン、N,N'-ジメチル-エチレン-ジアミン及び芳香族ジアミン、たとえば2,4-及び2,6-トルオイレン-ジアミン、3,5-ジエチル-2,4-及び/または-2,6-トルオイレン-ジアミン及び第一オルト-、ジ-、トリ-及び/またはテトラ-アルキル置換4,4'-ジアミノジフェニルメタンが挙げられえるが、これらに限定されない。
【0133】
[0148]一態様において、組成物はジスルフィドを含まない(disulfide-free)架橋剤を含むことができる。たとえば架橋剤は、ポリアリーレンスルフィドと反応しえるジスルフィド基が全くない、カルボキシ及び/またはアミン官能基(functionality)を含むことができる。組成物を形成する間に、架橋剤によるポリアリーレンスルフィドの過剰な鎖切断を避けるために、ジスルフィドを含まない架橋剤を使用することができる。しかしながら、ジスルフィドを含まない架橋剤を使用することは、ポリアリーレンスルフィドを官能基化するために反応的に官能基化されたジスルフィド化合物を使用することをいかなる意味においても全く制限しないことを理解すべきである。たとえば一態様において、ポリアリーレンスルフィドを反応的に官能基化し得る、反応的に官能基化されたジスルフィド化合物を溶融加工装置に添加することを含むプロセスに従って組成物を形成することができる。この態様で使用される架橋剤は、耐衝撃性改良剤と、並びに反応的に官能基化されたポリアリーレンスルフィドと反応性である官能基を含むことができる、ジスルフィドを含まない架橋剤でありえる。従って、組成物は、ポリアリーレンスルフィドポリマー鎖を過剰に切断することなく、高度に架橋することができる。
【0134】
[0149]別の態様では、架橋剤及び(存在するときには)ポリアリーレンスルフィド官能基化化合物は、ポリアリーレンスルフィドの鎖切断を促進するように選択することができる。このことは、たとえば鎖の切断が、ポリアリーレンスルフィドポリマーの溶融粘度を下げるために有益であろう。
【0135】
[0150]熱可塑性組成物は、通常、熱可塑性組成物の重量の約0.05wt%〜約2wt%、熱可塑性組成物の重量の約0.07wt%〜約1.5wt%、または約0.1wt%〜約1.3wt%の量で架橋剤を含むことができる。
【0136】
[0151]架橋剤は、ポリアリーレンスルフィドと耐衝撃性改良剤とを混合した後に、溶融加工装置に添加することができる。たとえば、図18に示されているように、架橋剤は、ポリアリーレンスルフィドと耐衝撃性改良剤を(一緒にまたは個別に)溶融加工装置に添加した後に、下流の位置316で組成物に添加することができる。これによって確実に、耐衝撃性改良剤は、架橋剤を添加する前にポリアリーレンスルフィドの中にくまなく分散できるようにする。
【0137】
[0152]架橋剤を添加する前に、溶融物の中にくまなく耐衝撃性改良剤を分布させやすくするために、様々なパラメーターを選択的に制御することができる。たとえば、溶融加工装置のスクリューの長さ(L)対直径(D)の比を選択して、処理量(押出量)と耐衝撃性改良剤分布との間の最適バランスを達成することができる。たとえば、耐衝撃性改良剤が供給された地点より後の地点でL/D比を制御して、耐衝撃性改良剤の分布を促進することができる。特に、スクリューは、耐衝撃性改良剤とポリアリーレンスルフィドの両方が装置に供給される地点(即ち、これらの両方が一緒に供給される地点か、二つのうち後者が供給される地点)から、架橋剤が供給される地点までを画定するブレンド長さ(blending length)(LB)をもち、このブレンド長さは通常、スクリューの全長よりも短い。たとえば、全L/Dが40である溶融加工装置を考えるとき、スクリューのLB/D比は、約1〜約36、態様によっては約4〜約20、態様によっては約5〜約15でありえる。一態様において、L/LB比は、約40〜約1.1、約20〜約2、または約10〜約5でありえる。
【0138】
[0153]架橋剤を添加した後、組成物は混合されて、組成物の中にくまなく架橋剤を分布させて、架橋剤、耐衝撃性改良剤と、一態様においてポリアリーレンスルフィドとの間の反応を促進させることができる。
【0139】
[0154]当業界で一般的に公知のように、組成物は一種以上の添加剤も含むことができる。たとえば、一種以上の充填剤は組成物に含めることができる。一種以上の充填剤は、通常、組成物に、組成物の重量の約5wt%〜約70wt%、または約20wt%〜約65wt%の量で含めることができる。
【0140】
[0155]充填剤は、標準的技法に従って熱可塑性組成物に添加することができる。たとえば充填剤は、溶融加工装置の下流の位置で組成物に添加することができる。たとえば、充填剤は、架橋剤の添加と共に組成物に添加することができる。しかしながら、これは製造プロセスの必要条件ではなく、充填剤は、架橋剤とは個別に、且つ架橋剤の添加地点の上流または下流のいずれかで添加することができる。さらに充填剤は、単一の供給位置で添加することができるか、または分割して、溶融加工装置に沿った多くの供給位置で添加することができる。
【0141】
[0156]一態様において、繊維充填剤を熱可塑性組成物に含めることができる。繊維充填剤(fibrous filler)は、これらに限定されないが、ポリマー繊維、ガラス繊維、炭素繊維、金属繊維、玄武岩繊維など、または繊維種の組み合わせを含む一種以上の繊維種を含むことができる。一態様において、繊維はチョップト(chopped)繊維、連続繊維、または繊維ロービング(トウ)でありえる。
【0142】
[0157]繊維サイズは、当業界で公知のように変動しえる。一態様において、繊維は約3mm〜約5mmの初期長さをもつことができる。別の態様では、たとえば引き抜きプロセスを考えるとき、繊維は連続繊維でありえる。繊維径は、使用する特定の繊維に依存して変動し得る。たとえば繊維は、約100μm未満、たとえば約50μm未満の直径を有することができる。たとえば繊維は、チョップトまたは連続繊維でありえ、約5μm〜約50μm、たとえば約5μm〜約15μmの繊維径でありえる。
【0143】
[0158]繊維は、一般に公知のように、サイジング(sizing)で前処理することができる。一態様において、繊維は、高いイールド(yield)または小さなK値(K number)をもつことができる。トウは、イールドまたはK値により表される。たとえばガラス繊維トウは、50イールド以上(yield and up)、たとえば約115イールド〜約1200イールドを有しえる。
【0144】
[0159]他の充填剤を代わりに使用することができるか、繊維充填剤と共に使用することができる。たとえば、粒子状充填剤を組成物に組み入れることができる。一般に粒子状充填剤は、約750μm未満、たとえば約500μm、または約100μm未満のメジアン粒径をもつ任意の粒子状材料を包含することができる。一態様において、粒子状充填剤は、約3μm〜約20μmの範囲のメジアン粒径をもつことができる。さらに、粒子状充填剤は、公知のように中実(solid)または中空でありえる。粒子状充填剤は、当業界で公知のように表面処理も含みえる。
【0145】
[0160]粒子状充填剤は、一種以上の無機充填剤を包含しえる。たとえば熱可塑性組成物は、組成物の約1wt%〜約60wt%の量で一種以上の無機充填剤を含むことができる。無機充填剤としては、シリカ、石英粉末、ケイ酸塩、たとえばケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム、カオリン、タルク、マイカ、粘土、珪藻土、珪灰石、炭酸カルシウムなどを挙げることができるが、これらに限定されない。
【0146】
[0161]充填剤は、導電性充填剤(electrically conductive filler)、たとえばカーボンブラック、グラファイト、グラフェン、炭素繊維、カーボンナノチューブ、金属粉末などでありえるが、これらに限定されない。熱可塑性組成物が導電性充填剤を含むそれらの態様では、たとえば熱可塑性組成物が燃料ラインの形成時で使用されるとき、好適な導電性充填剤は、組成物が約109オームcm(ohm cm)以下の体積固有抵抗(volume specific resistance)をもつように含めることができる。
【0147】
[0162]多様な充填剤、たとえば粒子状充填剤と繊維充填剤とを組み入れるとき、充填剤は一緒にまたは別々に溶融加工装置に添加することができる。たとえば、粒子状充填剤は、繊維充填剤を添加する前にポリアリーレンスルフィドと一緒に主供給管(main feed)にまたは下流で添加することができ、繊維充填剤は、粒子状充填剤の添加点よりもさらに下流で添加することができる。一般に、繊維充填剤は、粒子状充填剤などの任意の他の充填剤の下流で添加することができるが、これは必要条件ではない。
【0148】
[0163]一態様において、熱可塑性組成物は添加剤としてUV(紫外線)安定剤を含むことができる。たとえば熱可塑性組成物は、約0.5wt%〜約15wt%、約1wt%〜約8wt%、または約1.5wt%〜約7wt%の量でUV安定剤を含むことができる。使用しえる特に好適なUV安定剤は、ヒンダードアミンUV安定剤である。好適なヒンダードアミンUV安定剤化合物は、置換ピペリジン、たとえばアルキル置換ピペリジル、ピペリジニル、ピペラジノン、アルコキシピペリジニル化合物などから誘導することができる。たとえばヒンダードアミンは、2,2,6,6-テトラアルキルピペリジニルから誘導することができる。ヒンダードアミンは、たとえば約1,000以上、態様によっては約1000〜約20,000、態様によっては約1500〜約15,000、及び態様によっては約2000〜約5000の数平均分子量をもつオリゴマー性またはポリマー化合物であえりえる。そのような化合物は典型的には、ポリマー繰り返しユニット当たり、少なくとも一つの2,2,6,6-テトラアルキルピペリジニル基(たとえば1〜4個)を含む。特に好適な高分子量ヒンダードアミンは、Hostavin(登録商標)N30(数平均分子量1200)のもと、Clariantより市販されている。別の好適な高分子量ヒンダードアミンは、記号ADK STAB(登録商標)LA-63及びADK STAB(登録商標)LA-68のもと、Adeka Palmarole SASより市販されている。
【0149】
[0164]高分子量ヒンダードアミンに加えて、低分子量ヒンダードアミンも使用することができる。そのようなヒンダードアミンは、一般に本質的にモノマー性であり、約1000以下、態様によっては約155〜約800、及び態様によっては約300〜約800の分子量をもつ。
【0150】
[0165]他の好適なUV安定剤は、UV吸収剤、たとえばベンゾトリアゾールまたはベンゾフェノン類を含むことができ、これらはUV照射を吸収することができる。
【0151】
[0166]熱可塑性組成物に含めることができる添加剤は、一般に、当業界で公知のように一種以上の着色料である。たとえば組成物は、約0.1wt%〜約10wt%、または約0.2wt%〜約5wt%の一種以上の着色料を含むことができる。本明細書中で使用されるように、「着色料(colorant)」なる用語は、一般に、材料に色を付与し得る任意の物質をさす。従って、「着色料」なる用語は、水溶液で水溶性を示す染料と、水溶液で殆どまたは全く溶解性を示さない顔料の両方を包含する。
【0152】
[0167]使用しえる染料の例としては、分散染料が挙げられるが、これらに限定されない。好適な分散染料は、カラーインデックス(the Color Index)、第三版、“Disperse Dyes”に記載されているものが挙げられえる。そのような染料としては、たとえばカルボン酸基を含まない(carboxylic acid group-free)及び/またはスルホン酸基を含まない(sulfonic acid group-free)ニトロ、アミノ、アミノケトン、ケトンイミン、メチン、ポリメチン、ジフェニルアミン、キノリン、ベンズイミダゾール、キサンテン、オキサジン及びクマリン染料、アントラキノン及びアゾ染料、たとえばモノ-またはジ-アゾ染料が挙げられる。分散染料は、原色の赤色分散染料(primary red color disperse dye)、原色の青色染料及び原色の黄色染料も含むことができる。
【0153】
[0168]熱可塑性組成物に組み入れることができる顔料としては、有機顔料、無機顔料、金属顔料、燐光性顔料(phosphorescent pigment)、蛍光顔料、光発色性顔料(フォトクロミック顔料:photochromic pigment)、サーモクロミック顔料(thermochromic pigment)、玉虫色顔料(iridescent pigment)及び真珠光沢顔料が挙げられえるが、これらに限定されない。顔料の具体的な量は、製品の所望の最終色に依存して変動しえる。パステルカラーは一般に、着色顔料に二酸化チタンホワイトまたは同様の白色顔料を添加することにより達成される。
【0154】
[0169]熱可塑性組成物に配合し得る他の添加剤としては、抗菌剤、滑剤、顔料若しく
は他の着色料、耐衝撃性改良剤、酸化防止剤、安定剤(有機ホスファイト(organophosphit
e)、たとえばDoverphos(登録商標)製品、Dover Chemical Corporation製など)、界面活性
剤、流動促進剤、固体溶媒並びに、特性及び加工性を促進するために添加される他の材料
が包含されるが、これらに限定されない。そのような任意選択の材料は、主供給口で熱可
塑性組成物に添加するなど、慣用の加工技術に従って、慣用量で熱可塑性組成物中に使用
することができる。有益には、熱可塑性組成物は、可塑剤を添加することなく所望の特徴
を示すことができる。たとえば、組成物は、フタル酸エステル、トリメリット酸エステル
(trimellitate)、セバシン酸エステル(sebacate)、アジピン酸エステル(adipate)、グル
タル酸エステル(gluterate)、アゼライン酸エステル(azelate)、マレイン酸エステル(mal
eate)、安息香酸エステル(benzoate)などの可塑剤を含まないようにできる。
【0155】
[0170]すべての成分を熱可塑性組成物に添加したあと、組成物を押出機の(単数または複数の)残りの区分で完全に混合して、ダイを通して押し出す。最終押出物はペレット化して、ブロー成形前に貯蔵するか、ブロー成形プロセスに直接供給することができる。
【0156】
[0171]本開示の態様は、単に態様の説明を目的とする以下の実施例により説明され、本発明の範囲または実施し得る方法を限定するものとみなすべきではない。具体的に示さない限り、部及び百分率は重量である。
【0157】
成形及び試験法
[0172]射出成形プロセス:引張試験片は、標準ISO条件に従って、ISO527-1仕様に合わせて射出成形する。
【0158】
[0173]溶融粘度:全ての材料は、試験前に真空下、150℃で1.5時間乾燥する。溶融粘度は、316℃及び400秒-1でキャピラリーレオメーターで測定し、一定の剪断で5分後に粘度測定を実施する。
【0159】
[0174]引張特性:ISO試験No.527(ASTM D638と技術的に同等)に従って、引張弾性率、降伏応力、降伏歪み、破断点強さ、降伏点伸び、破断点伸びなどを試験する。弾性率、歪み及び強度測定は、長さ80mm、厚さ10mm及び幅4mmをもつ同一試験ストリップサンプルで実施する。試験温度は23℃であり、試験速度は5または50mm/分である。
【0160】
[0175]曲げ特性:ISO試験No.178(ASTM D790と技術的に同等)に従って、曲げ強さ及び曲げ弾性率などの曲げ特性を試験する。この試験は、64mmサポートスパン上で実施する。試験は、カットしていないISO 3167マルチパーパスバーの中心部分で実施する。試験温度は23℃であり、試験速度は2mm/分である。
【0161】
[0176]荷重撓み温度(deflection temperature under load:DTUL):荷重撓み温度は、ISO試験No.75-2(ASTM D648-07と技術的に同等)に従って測定した。特に、長さ80mm、厚さ10mm及び幅4mmの試験ストリップサンプルを、エッジワイズ三点曲げ試験(edgewise three-point bending test)にかけ、ここでは規定荷重(最大外部繊維応力)は1.8メガパスカル(Megapascal)であった。試験片をシリコン油浴中に下げ、試験片が0.25mm(ISO試験No.75-2に関しては0.32mm)に撓むまで、温度を2℃/分で上昇させる。
【0162】
[0177]ノッチ付きシャルピー衝撃強さ:ノッチ付きシャルピー特性は、ISO試験No.ISO179-1(技術的にASTM D256、方法Bと同等)に従って試験する。この試験は、タイプAノッチ(0.25mmベース半径)及びタイプ1試験片サイズ(長さ80mm、幅10mm、及び厚さ4mm)を使用して実施する。試験片は、一本歯フライス盤(single tooth milling machine)を使用してマルチパーパスバーの中心から切り出す。試験温度は、以下に報告するように、23℃、−30℃、または−40℃である。
【0163】
[0178]ノッチなしシャルピー衝撃強さ:ノッチなしシャルピー特性は、ISO試験No.180(ASTM D256と技術的に同等)に従って試験する。試験は、タイプ1試験片(長さ80mm、幅10mm、及び厚さ4mm)を使用して実施する。試験片は一本歯フライス盤を使用してマルチパーパスバーの中心から切り出す。試験温度は23℃である。
【0164】
[0179]アイゾット(Izod)ノッチ付き衝撃強さ:ノッチ付きアイゾット(Izod)特性は、ISO試験No.180(ASTM D256、方法Aと技術的に同等)に従って試験する。この試験は、タイプAノッチを使用して実施する。試験片は、一本歯フライス盤を使用してマルチパーパスバーの中心から切り出す。試験温度は23℃である。
【0165】
[0180]密度及び比重:密度は、ISO試験No.1183(ASTM D792と技術的に同等)に従って測定した。試験片は空気中で秤量し、次いで必要により完全に試験片を沈んだままにするためにおもりとワイヤを使用して蒸留水中23℃に浸漬して秤量した。
【0166】
[0181]]ビカット軟化温度(Vicat softening temperature):ビカット軟化温度は、ISO試験No.306(ASTM D1525と技術的に同等)に記載されるように、方法Aに従って荷重10Nで、方法Bに従って荷重50Nで測定する。これらはいずれも加熱速度50K/時間を使用した。
【0167】
[0182]水分吸収は、ISO試験No.62に従って測定する。試験片は、水の吸収が本質的に停止するまで(23℃/sat)、蒸留水中、23℃で浸漬する。
【0168】
[0183]複素粘度(complex viscosity):複素粘度は、TRIOSソフトウエアを使用して、25mmSS平行プレートを備えたARES-G2(TA Instruments)試験機を使用して低剪断掃引(low shear sweep)(ARES)により測定する。LVEレジメと最適試験条件を見つけるために、周波数掃引の前に、ペレットサンプル上で動的歪み掃引(dynamic strain sweep)を実施した。歪み掃引は、0.1%〜100%、周波数6.28rad/秒で実施した。それぞれのサンプルに関する動的周波数掃引(dynamic frequency sweep)は、500〜0.1rad/秒で得られ、歪み振幅(strain amplitude)は3%であった。間隙距離(gap distance)は、ペレットサンプルに関して1.5mmに維持した。温度は全てのサンプルに関して310℃に設定した。
【0169】
[0184]溶融強度及び溶融伸びは、EVF設備を備えたARES-G2で実施する。火炎試験片(flame bar)サンプルは、図19に示されているように切り出した。試験サンプルの結晶化度を保持し、重複試験での変動を最小とするために、それぞれの試験に関して火炎試験片の同一領域を使用した。一時歪み(transient strain)は、それぞれのサンプルに0.2/秒の速度で適用した。代表曲線(representative curve)を得るために、それぞれのサンプルについて少なくとも3回試験を実施した。
【0170】
[0185]透過抵抗(permeation resistance):燃料透過研究は、SAE試験法No.J2665に従ってサンプルで実施した。すべてのサンプルに関して、ステンレススチールカップを使用した。直径3インチ(7.6センチメートル)の射出成形プラークを試験サンプルとして使用した。それぞれのサンプルの厚さは6つの異なる領域で測定した。O-リングViton(登録商標)フルオロエラストマーを、カップフランジとサンプルの間の下部ガスケット(lower gasket)として使用した(McMaster-Carrより購入、カタログ番号9464K57、A75)。フラットなViton(登録商標)フルオロエラストマー(McMaster-Carrより購入、カタログ番号86075K52、1/16”厚さ、A75)を3インチ(7.6cm)ODと2.5インチ(6.35cm)IDにダイカットし、サンプルと金属スクリーンとの間の上部ガスケットとして使用した。約200mlの燃料をカップに注ぎ、カップ装置を組み立て、蓋を指で締めた。蒸気圧が平衡に達し、蓋がトルク15in-lbに締められるまで、これを40℃のオーブンで1時間インキュベートした。燃料減少(fuel loss)は、最初の2週間は毎日、続いて試験期間の残りに関しては1週間に2回、重量測定法によりモニターした。対照試験(blank run)は、アルミニウムディスク(7.6cm直径、1.5mm厚さ)で同様に実施し、結果はサンプルから差し引いた。すべてのサンプルは二回測定した。正規化透過速度(normalized permeation rate)は、平衡期間の後に計算した。それぞれのサンプルに関する透過速度は、日々の重量減少(weight loss)(gm/日)に合った線形回帰の傾きから得られた。正規化透過速度は、透過速度を有効透過面積で割り、試験片の平均厚さを乗じることによって計算した。平均透過速度を報告する。
【実施例】
【0171】
実施例1
[0186]組成物を製造するのに使用した材料は以下のものを含んでいた:
ポリアリーレンスルフィド:Fortron(登録商標)0214線状ポリフェニレンスルフィド、Ticona Engineering Polymers of Florence、ケンタッキー。
【0172】
耐衝撃性改良剤:LOTADER(登録商標)AX8840−エチレンとグリシジルメタクリレートとのランダムコポリマー、Arkema, Inc製。
【0173】
架橋剤:テレフタル酸。
【0174】
ジスルフィド:2,2-ジチオジ安息香酸(dithiodibenzoic acid)。
【0175】
滑剤(lubricant):Glycolube(登録商標)P、Lonza Group Ltd製。
【0176】
[0187]材料は、ダイに一つを含む10個の温度制御ゾーンと、全L/Dが40のCoperion共回
転完全噛み合い二軸押出機を使用して、溶融混合した。添加剤を樹脂マトリックスにコン
パウンディングするために、高剪断スクリュー設計を使用した。ポリアリーレンスルフィ
ド、耐衝撃性改良剤及び滑剤を、重量測定供給機を使用して、第一のバレルの主供給口
に供給した。上記成分が融解且つ混合するとすぐに、ジスルフィドを重量測定供給機を使
用してバレル6で供給した。材料をさらに混合し、ストランドダイの中を通して押出した
。ストランドは浴中で水クエンチして固化させ、ペレタイザーで造粒した。
【0177】
[0188]サンプルの組成を以下の表1に提供する。サンプルの重量をベースとした重量百分率として量を提供する。
【0178】
【表2】
【0179】
[0189]形成後、サンプルは様々な物理的特性に関して試験した。結果を以下の表2に提供する。
【0180】
【表3】
【0181】
[0190]サンプルは230℃で2時間アニールし、物理的試験に関して再試験した。結果を以下の表3に提供する。
【0182】
【表4】
【0183】
[0191]理解されるように、サンプル2は、アニール前後でより良い引張り伸び及びより低い弾性率を示した。しかしながら、衝撃強度では改善は見られなかった。これは、ジスルフィドとポリプロピレンスルフィドとの間の鎖切断反応によると考えられる。
【0184】
実施例2
[0192]実施例1の材料を、ダイに一つを含む10個の温度制御ゾーンと、全L/Dが40のCop
erion共回転完全噛み合い二軸押出機を使用して、溶融混合した。添加剤を樹脂マトリッ
クスにコンパウンディングするために、高剪断スクリュー設計を使用した。ポリアリーレ
ンスルフィド、耐衝撃性改良剤及び滑剤を、重量測定供給機を使用して、第一のバレル
の主供給口に供給した。ジスルフィドは、重量測定供給機を使用して押出機の様々な位置
:主供給口、バレル4及びバレル6で供給した。架橋剤はバレル6で供給した。材料をさら
に混合し、次いでストランドダイの中を通して押出した。ストランドは浴中で水クエンチ
して固化させ、ペレタイザーで造粒した。
【0185】
[0193]比較サンプル3及び4は、同一組成から形成し、異なるスクリュー設計を使用してコンパウンディングした。
【0186】
【表5】
【0187】
[0194]形成後、引張り試験片を成形し、様々な物理的特性に関して試験した。結果を以下の表5に提供する。
【0188】
【表6】
【0189】
[0195]サンプルを230℃で2時間アニールし、物理的特性に関して再試験した。結果を以下の表6に提供する。
【0190】
【表7】
【0191】
[0196]理解されるように、サンプル10に関して、最高の引張伸びと、最高の衝撃強さが観察された。これは、加工処理の間に、架橋剤とジスルフィドの両方が同一の下流の地点で添加されたことを含む。
【0192】
[0197]図20は、サンプル3とサンプル6に関する温度変化に対するノッチ付きシャルピー衝撃強さの関係を説明する。理解されるように、サンプル6の熱可塑性組成物は、温度変化の全過程にわたって優れた特性を示し、比較材料と比較して、温度変化に関して衝撃強さの増加の割合が高い。
【0193】
[0198]図21は、サンプル3組成物(図21A)とサンプル6組成物(図21B)の製造で使用したポリアリーレンスルフィドの走査電子顕微鏡画像を含む。理解されるように、図21B(サンプル6)の組成物では、ポリアリーレンスルフィドと耐衝撃性改良剤との間に明確な境界が全くない。
【0194】
[0199]サンプル3、6及び10の引張試験片を、10wt%硫酸中に40℃または80℃で500時間浸漬した。引張り特性及び衝撃特性を、酸への暴露の前後で測定した。結果を以下の表7に提供する。
【0195】
【表8】
【0196】
[0200]高温において、酸溶液に暴露する間の、シャルピーノッチ付き衝撃強さにおける経時変化の結果を図22に説明する。理解されるように、サンプル6とサンプル10の相対損失は、比較のサンプルよりもずっと小さい。
【0197】
実施例3
[0201]実施例1に記載の材料を、ダイに一つを含む10個の温度制御ゾーンと、全L/Dが4
0のCoperion共回転完全噛み合い二軸押出機を使用して、溶融混合した。添加剤を樹脂マ
トリックスにコンパウンディングするために、高剪断スクリュー設計を使用した。ポリア
リーレンスルフィド、耐衝撃性改良剤及び滑剤を、重量測定供給機を使用して、第一の
バレルの主供給口に供給した。架橋剤は、重量測定供給機を使用して、主供給口及びバレ
ル6で供給した。材料をさらに混合し、次いでストランドダイの中を通して押出した。ス
トランドは浴中で水クエンチして固化させ、ペレタイザーで造粒した。
【0198】
[0202]サンプルの組成を以下の表8に提供する。量は、サンプルの重量をベースとして重量百分率として提供する。
【0199】
【表9】
【0200】
[0203]形成後、サンプルから成形した引張り試験片を、様々な物理的特徴に関して試験した。結果を以下の表9に提供する。
【0201】
【表10】
【0202】
[0204]理解されるように、架橋剤を上流で添加したものは、組成物の衝撃特性が低下したが、下流で供給流に添加したものは、引張り伸びが118%だけ、室温における衝撃強さが43%だけ増加した。
【0203】
実施例4
[0205]実施例1に記載の材料を、ダイに一つを含む10個の温度制御ゾーンと、全L/Dが4
0のCoperion共回転完全噛み合い二軸押出機を使用して、溶融混合した。添加剤を樹脂マ
トリックスにコンパウンディングするために、高剪断スクリュー設計を使用した。ポリア
リーレンスルフィド、耐衝撃性改良剤及び滑剤を、重量測定供給機を使用して、第一の
バレルの主供給口に供給した。架橋剤はバレル6で重力測定供給機を使用して供給した。
材料をさらに混合し、次いでストランドダイの中を通して押出した。ストランドは浴中で
水クエンチして固化させ、ペレタイザーで造粒した。
【0204】
[0206]サンプルの組成を以下の表10に提供する。量は、サンプルの重量をベースとして重量百分率として提供する。
【0205】
【表11】
【0206】
[0207]形成後、サンプルから成形した引張試験片を様々な物理的特性に関して試験した。結果を以下の表11に提供する。
【0207】
【表12】
【0208】
実施例5
[0208]ポリアリーレンスルフィドに関しては、Ticona Engineering Polymers of Florence、ケンタッキーから入手したFortron(登録商標)0320線状ポリフェニレンスルフィドを使用した以外には、実施例1に記載の材料を使用した。材料は、ダイに一つを含む10個の温度制御ゾーンと、全L/Dが40のCoperion共回転完全噛み合い二軸押出機を使用して、溶融混合した。添加剤を樹脂マトリックスにコンパウンディングするために、高剪断スクリュー設計を使用した。ポリアリーレンスルフィド及び耐衝撃性改良剤を、重量測定供給機を使用して、第一のバレルの主供給口に供給した。架橋剤は、バレル6で重量測定機を使用して供給した。材料をさらに混合し、ストランドダイの中を通して押出した。ストランドは浴中で水クエンチして固化させ、ペレタイザーで造粒した。
【0209】
[0209]サンプルの組成を以下の表12に提供する。量は、サンプルの重量をベースとして重量百分率として提供する。
【0210】
【表13】
【0211】
[0210]形成後、サンプルから成形した引張試験片を様々な物理的特性に関して試験した。結果を以下の表13に提供する。
【0212】
【表14】
【0213】
実施例6
[0211]組成物を形成するのに使用した材料は、以下のものを含んでいた:
ポリアリーレンスルフィド:Fortron(登録商標)0214、線状ポリフェニレンスルフィド、Ticona Engineering Polymers of Florence、ケンタッキー。
【0214】
耐衝撃性改良剤:LOTADER(登録商標)4720−エチレン、エチルアクリレート及び無水マレイン酸のランダムターポリマー、Arkema, Inc.製。
【0215】
【化8】
【0216】
架橋剤:ハイドロキノン。
【0217】
滑剤:Glycolube(登録商標)P、Lonza Group Ltd製。
【0218】
[0212]材料は、ダイに一つを含む10個の温度制御ゾーンと、全L/Dが40のCoperion共回
転完全噛み合い二軸押出機を使用して、溶融混合した。添加剤を樹脂マトリックスにコン
パウンディングするために、高剪断スクリュー設計を使用した。ポリアリーレンスルフィ
ド、耐衝撃性改良剤及び滑剤を、重量測定供給機を使用して、第一のバレルの主供給口
に供給した。上記成分を溶融及び混合するとすぐに、架橋剤は、サンプル24及び25に関し
ては主供給で、サンプル26及び27に関してはバレル6で、重力測定供給機を使用して供給
した。材料をさらに混合し、ストランドダイの中を通して押出した。ストランドは浴中で
水クエンチして固化させ、ペレタイザーで造粒した。
【0219】
[0213]サンプルの組成を以下の表14に提供する。量は、サンプルの重量をベースとして、重量百分率として提供する。
【0220】
【表15】
【0221】
[0214]成形後、サンプルは様々な物理的特性に関して試験した。結果を以下の表15に提供する。
【0222】
【表16】
【0223】
実施例7
[0215]組成物を形成するのに使用した材料は、以下のものを含んでいた:
ポリアリーレンスルフィド:
PPS1−Fortron(登録商標)0203、線状ポリフェニレンスルフィド、Ticona Engineering Polymers of Florence、ケンタッキー製。
【0224】
PPS2−Fortron(登録商標)0205線状ポリフェニレンスルフィド、Ticona Engineering Polymers of Florence、ケンタッキー製。
【0225】
PPS3−Fortron(登録商標)0320線状ポリフェニレンスルフィド、Ticona Engineering Polymers of Florence、ケンタッキー製。
【0226】
耐衝撃性改良剤:LOTADER(登録商標)AX8840−エチレンとグリシジルメタクリレートとのランダムコポリマー、Arkema, Inc製。
【0227】
架橋剤:テレフタル酸。
【0228】
滑剤:Glycolube(登録商標)P、Lonza Group Ltd.製。
【0229】
[0216]材料は、ダイに一つを含む10個の温度制御ゾーンと、全L/Dが40のCoperion共回
転完全噛み合い二軸押出機を使用して、溶融混合した。添加剤を樹脂マトリックスにコン
パウンディングするために、高剪断スクリュー設計を使用した。ポリアリーレンスルフィ
ド、耐衝撃性改良剤及び滑剤を、重量測定供給機を使用して、第一のバレルの主供給口
に供給した。上記成分を溶融及び混合するとすぐに、架橋剤はバレル6で、重力測定供給
機を使用して供給した。材料をさらに混合し、ストランドダイの中を通して押出した。ス
トランドは浴中で水クエンチして固化させ、ペレタイザーで造粒した。
【0230】
[0217]サンプルの組成を以下の表16に提供する。量は、サンプルの重量をベースとして重量百分率として提供する。
【0231】
【表17】
【0232】
[0218]成形後、サンプルは様々な物理的特性に関して試験した。結果を以下の表17に提供する。
【0233】
【表18】
【0234】
実施例8
[0219]組成物を形成するのに使用した材料は、以下のものを含んでいた:
ポリアリーレンスルフィド:Fortron(登録商標)0214線状ポリフェニレンスルフィド、Ticona Engineering Polymers of Florence、ケンタッキー。
【0235】
耐衝撃性改良剤:LOTADER(登録商標)AX8840−エチレンとグリシジルメタクリレートとのランダムコポリマー、Arkema, Inc.製。
【0236】
架橋剤:テレフタル酸。
【0237】
滑剤:Glycolube(登録商標)P、Lonza Group Ltd.製。
【0238】
[0220]材料は、ダイに一つを含む10個の温度制御ゾーンと、全L/Dが40のCoperion共回
転完全噛み合い二軸押出機を使用して、溶融混合した。添加剤を樹脂マトリックスにコン
パウンディングするために、高剪断スクリュー設計を使用した。ポリアリーレンスルフィ
ド、耐衝撃性改良剤及び滑剤を、重量測定供給機を使用して、第一のバレルの主供給口
に供給した。上記成分を溶融及び混合するとすぐに、架橋剤はバレル6で、重力測定供給
機を使用して供給した。材料をさらに混合し、ストランドダイの中を通して押出した。ス
トランドは浴中で水クエンチして固化させ、ペレタイザーで造粒した。
【0239】
[0221]サンプルの組成を以下の表18に提供する。量は、サンプルの重量をベースとして重量百分率として提供する。
【0240】
【表19】
【0241】
[0222]成形後、サンプルは様々な物理的特性に関して試験した。結果を以下の表19に提供する。サンプル39は射出成形可能ではなかった。
【0242】
【表20】
【0243】
実施例9
[0223]組成物を形成するのに使用した材料は、以下のものを含んでいた:
ポリアリーレンスルフィド:Fortron(登録商標)0214線状ポリフェニレンスルフィド、Ticona Engineering Polymers of Florence、ケンタッキー製。
【0244】
耐衝撃性改良剤:LOTADER(登録商標)AX8840−エチレンとグリシジルメタクリレートとのランダムコポリマー、Arkema, Inc.製。
【0245】
架橋剤:テレフタル酸。
【0246】
滑剤:Glycolube(登録商標)P、Lonza Group Ltd.製。
【0247】
[0224]材料は、ダイに一つを含む10個の温度制御ゾーンと、全L/Dが40のCoperion共回
転完全噛み合い二軸押出機を使用して、溶融混合した。添加剤を樹脂マトリックスにコン
パウンディングするために、高剪断スクリュー設計を使用した。ポリアリーレンスルフィ
ド、耐衝撃性改良剤及び滑剤を、重量測定供給機を使用して、第一のバレルの主供給口
に供給した。上記成分を溶融及び混合するとすぐに、架橋剤はバレル6で、重力測定供給
機を使用して供給した。材料をさらに混合し、ストランドダイの中を通して押出した。ス
トランドは浴中で水クエンチして固化させ、ペレタイザーで造粒した。
【0248】
[0225]サンプルの組成を以下の表20に提供する。量は、サンプルの重量をベースとして重量百分率として提供する。
【0249】
【表21】
【0250】
[0226]成形後、サンプルは様々な物理的特性に関して試験した。結果を以下の表21に提供する。
【0251】
【表22】
【0252】
[0227]サンプル41、42及び43は、複素粘度並びに、ヘンキー(Hencky)歪みの関数として溶融強度及び溶融伸びを測定するために試験した。比較材料として、実施例2に記載のサンプル3を使用した。サンプル41、42及び43は、310℃で実施し、サンプル3は290℃で実施した。結果を図23図24及び図25に示す。
【0253】
実施例10
[0228]実施例9で記載のサンプル42を使用して、ブロー成形した1.6ガロンタンクを成形した。成形したタンクを図26に説明する。タンクの断面図を図27A及び図27Bに示す。成形したタンクは、目視検査及び手触りの両方に関して良好な外表面をもつ。図27Aに示されているように、一様な壁厚(約3mm)が得られ、最小量の垂れ下がり(sag)が観察された。図27Bに示されているように、ピンチオフは優れた形状を形成した。
【0254】
実施例11
[0229]実施例9に記載のサンプル41、42及び43を試験して、CE10(10wt%エタノール、45wt%トルエン、45wt%イソオクタン)、CM15A(15wt%メタノール及び85wt%含酸素燃料)、並びにメタノールなどの様々な燃料の透過を測定した。実施例2に記載のサンプルNo.4を比較材料として使用した。それぞれの材料で二つのサンプルを試験した。
【0255】
[0230]以下の表22は、それぞれの燃料について試験したサンプルに関する平均サンプル厚さ及び有効面積を提供する。
【0256】
【表23】
【0257】
[0231]それぞれの材料及びそれぞれの燃料に関する日々の重量減少を図28〜30に示す。具体的には、図28は、CE10の透過試験の間における、サンプルの日々の重量減少を示し、図29は、CM15Aの透過試験の間における、サンプルの日々の重量減少を示し、及び図30は、メタノールの透過試験の間における、サンプルの日々の重量減少を示す。
【0258】
[0232]それぞれの燃料を用いるそれぞれのサンプルに関する平均透過速度を表23に提供する。サンプル43は、平衡に到達するのにより長い時間がかかったので、この材料に関しては42日と65日の間のデータをベースとして線形回帰をあてはめ、他の材料に関しては32日と65日の間で線形回帰をあてはめたことに留意すべきである。メタノールに関しては、20日と65日の間のデータをベースとして線形回帰をあてはめたが、サンプルNo.604に関しては、30日と65日の間のデータをベースとして線形回帰をあてはめた。サンプルによっては負の透過を示すものもあるが、これは、アルミニウムブランクに対してサンプルの重量減少が少ないためである。
【0259】
【表24】
【0260】
[0233]本開示に対するこれら及び他の変形及び変更は、本開示の趣旨及び範囲を逸脱す
ることなく当業者には実施をすることができる。さらに、様々な態様の側面は、その全体
または一部が交換可能であることは理解すべきである。さらに、当業者は、上記記載は単
なる例示であって、本開示を限定するものではないことを理解するだろう。
以下に、出願時の特許請求の範囲の記載を示す。
[請求項1]
ブロー成形した熱可塑性組成物を含む部品であって、前記熱可塑性組成物はポリアリーレ
ンスルフィドと架橋耐衝撃性改良剤とを含む、前記部品。
[請求項2]
前記部品が燃料系の部品、自動車の外部構造体もしくは支持構造体、自動車排気系の部品
、燃料給油ネック、または燃料タンクなどの自動車部品である、請求項1に記載の部品。
[請求項3]
前記部品が、フローライン、ライザー若しくはエアダクトなどの単層または多層管状部品
である、請求項1または2に記載の部品。
[請求項4]
前記熱可塑性組成物が、以下の物理的特性:
温度23℃でISO試験No.197-1に従って測定して、約3kJ/m2を超えるノッチ付きシャルピ
ー衝撃強さ;
温度−30℃でISO試験No.179-1に従って測定して、約8kJ/m2を超えるノッチ付きシャル
ピー衝撃強さ;
温度23℃及び試験速度5mm/分でISO試験No.527に従って測定して約3000MPa未満の引張弾
性率;
温度23℃及び試験速度5mm/分で、ISO試験No.527に従って測定して、約4.5%を超える降
伏点伸び;
温度23℃及び試験速度5mm/分でISO試験No.527に従って測定して約10%を超える破断点
引張伸び;
温度23℃及び試験速度5mm/分でISO試験No.527に従って測定して約30MPaを超える破断点
引張強さ;
温度23℃及び試験速度2mm/分でISO試験No.178に従って測定して約2500MPa未満の曲げ弾
性率;
1.8MPaにおいてISO試験No.78に従って測定して約80℃を超える荷重撓み温度;
温度23℃及び試験速度5mm/分でISO試験No.527に従って測定して約5%を超える破断点歪
み;及び
0.2ミリメートルの厚さでV-0燃焼性規格を満たす、
の一つ以上を有する請求項1〜3のいずれかに記載の部品。
[請求項5]
前記ポリアリーレンスルフィドがポリプロピレンスルフィドである、請求項1〜4のいず
れかに記載の部品。
[請求項6]
前記ポリアリーレンスルフィドが官能基化ポリアリーレンスルフィドである、請求項1〜
5のいずれかに記載の部品。
[請求項7]
一種以上の充填剤、UV安定剤、熱安定剤、滑剤及び着色剤からなる群から選択される一
種以上の添加剤をさらに含む、請求項1〜6のいずれかに記載の部品。
[請求項8]
前記架橋耐衝撃性改良剤が、耐衝撃性改良剤のエポキシ官能基と架橋剤との反応生成物を
含むか、または架橋耐衝撃性改良剤が、耐衝撃性改良剤の無水マレイン酸官能基と架橋剤
との反応生成物を含む、請求項1〜7のいずれかに記載の部品。
[請求項9]
前記熱可塑性組成物が、約1000ppm未満のハロゲン含有量をもつ、請求項1〜8のいずれ
かに記載の部品。
[請求項10]
前記部品の第一の区分が熱可塑性組成物を含み、前記第一の区分は、前記熱可塑性組成物
を含まない成形品の第二の区分に隣接する、請求項1〜9のいずれかに記載の部品。
[請求項11]
前記熱可塑性組成物が可塑剤を含まない、請求項1〜10のいずれかに記載の部品。
[請求項12]
前記部品が、SAE試験法NO.J2665に従って測定して約10-mm/m2-日未満の燃料または燃料源
に対する透過抵抗を示す、請求項1〜11のいずれかに記載の部品。
[請求項13]
請求項1〜12のいずれかに記載の熱可塑性組成物をブロー成形することを含む、部品の
成形方法。
[請求項14]
ポリアリーレンスルフィドを溶融加工装置に供給する工程;
前記溶融加工装置に耐衝撃性改良剤を供給する工程、ここで、前記溶融加工装置におい
て前記ポリアリーレンスルフィドと耐衝撃性改良剤は、耐衝撃性改良剤がポリアリーレン
スルフィドの中にくまなく分布されるように混合し、前記耐衝撃性改良剤は、反応性官能
基を含む;及び
前記溶融加工装置に架橋剤を供給する工程、ここで、前記架橋剤は、耐衝撃性改良剤を
ポリアリーレンスルフィドの中にくまなく分布させた後に、溶融加工装置に供給され、前
記架橋剤は、耐衝撃性改良剤の反応性官能基に対して反応性である反応性官能基を含む、
を含む、請求項13に記載の方法。
[請求項15]
前記溶融加工装置が長さL及びブレンド長さLBをもち、L/LBの比が約40〜約1.1である、請求項14に記載の方法。
[請求項16]
前記溶融加工装置にジスルフィド化合物を供給する工程をさらに含み、前記ジスルフィド
化合物は、ジスルフィド化合物の(一つまたは複数の)終端部に反応性官能基を含み、たと
えばジスルフィド化合物の反応性官能基は、架橋剤の反応性官能基と同一である、請求項
14に記載の方法。
[請求項17]
前記ジスルフィド化合物及び架橋剤を一緒に添加する、請求項16に記載の方法。
[請求項18]
前記架橋剤がジスルフィドを含まない架橋剤である、請求項16に記載の方法。
[請求項19]
前記耐衝撃性改良剤がエポキシ反応性官能基を含む、請求項14に記載の方法。
[請求項20]
前記ポリアリーレンスルフィドが耐衝撃性改良剤に架橋される、請求項14に記載の方法
図1
図2
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図21B
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図27A
図27B
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図30