特許第6549501号(P6549501)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6549501鋼製膨張式パッカーを用いた中空自穿孔ロックボルト補強工法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6549501
(24)【登録日】2019年7月5日
(45)【発行日】2019年7月24日
(54)【発明の名称】鋼製膨張式パッカーを用いた中空自穿孔ロックボルト補強工法
(51)【国際特許分類】
   E21D 20/00 20060101AFI20190711BHJP
【FI】
   E21D20/00 V
   E21D20/00 N
【請求項の数】1
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2016-35309(P2016-35309)
(22)【出願日】2016年2月26日
(65)【公開番号】特開2017-150264(P2017-150264A)
(43)【公開日】2017年8月31日
【審査請求日】2018年3月23日
(73)【特許権者】
【識別番号】000173784
【氏名又は名称】公益財団法人鉄道総合技術研究所
(73)【特許権者】
【識別番号】000129758
【氏名又は名称】株式会社ケー・エフ・シー
(74)【代理人】
【識別番号】100116207
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 俊明
(74)【代理人】
【識別番号】100089635
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 守
(74)【代理人】
【識別番号】100096426
【弁理士】
【氏名又は名称】川合 誠
(72)【発明者】
【氏名】森瀬 喬士
(72)【発明者】
【氏名】嶋本 敬介
(72)【発明者】
【氏名】野城 一栄
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 直樹
(72)【発明者】
【氏名】松尾 勉
(72)【発明者】
【氏名】岡部 正
【審査官】 田中 洋介
(56)【参考文献】
【文献】 特開平07−076819(JP,A)
【文献】 特開2002−174100(JP,A)
【文献】 特開2012−077509(JP,A)
【文献】 特開2006−249657(JP,A)
【文献】 特開2010−037743(JP,A)
【文献】 特開2009−249983(JP,A)
【文献】 独国特許出願公開第102004006872(DE,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E21D 20/00−20/02
E02D 3/12
JSTPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
膨張式鋼管を扁平に加工した鋼製パッカーを巻きつけた中空自穿孔ロックボルトを地山に打ち込んでボアホールを形成する工程と、
注水によって前記鋼製パッカーを膨張させる工程と、
前記中空自穿孔ロックボルト内に布製パッカーを挿入する工程と、
モルタルを注入して前記布製パッカーを膨張させる工程と、
膨張した布製パッカーより先端側の中空自穿孔ロックボルト内にモルタルを注入し、膨張した鋼製パッカーより先端側のボアホール内にモルタルを充填する工程と、
膨張した鋼製パッカーより基端側のボアホール内に所定量のウレタンを注入する工程とを備えることを特徴とする鋼製膨張式パッカーを用いた中空自穿孔ロックボルト補強工法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄道トンネルの維持管理における、地圧によるトンネル壁面の押出しを抑制する、鋼製膨張式パッカーを用いた中空自穿孔ロックボルト補強工法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
トンネル近傍の地山の緩みが激しい箇所において、ロックボルト補強工法を実施する場合、地山の削孔時に孔壁が自立しないため自穿孔ロックボルトを用いる必要がある(下記特許文献1参照)。
【0003】
自穿孔ロックボルトの中間部にパッカーを配置すると、穿孔時に破損するおそれがある(そのため、1種類の注入材料しか使用できない)(下記特許文献2参照)。
【0004】
孔壁が自立する地山では、地山削孔後にボルトを挿入するため、ボルト外側に布製等の材料でパッカーを設けることが可能であると考えられる(下記特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−97260号公報
【特許文献2】特開2003−35100号公報
【特許文献3】特開2010−37743号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記背景技術に記載のとおり、自穿孔ロックボルトの中間部に従来のパッカーを配置すると穿孔時に破損する恐れがある。
【0007】
本発明は、上記状況に鑑みて、穿孔時にパッカーを破損することがない、鋼製膨張式パッカーを用いた中空自穿孔ロックボルト補強工法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上記目的を達成するために、
〔1〕鋼製膨張式パッカーを用いた中空自穿孔ロックボルト補強工法であって、膨張式鋼管を扁平に加工した鋼製パッカーを巻きつけた中空自穿孔ロックボルトを地山に打ち込んでボアホールを形成する工程と、注水によって前記鋼製パッカーを膨張させる工程と、前記中空自穿孔ロックボルト内に布製パッカーを挿入する工程と、モルタルを注入して前記布製パッカーを膨張させる工程と、膨張した布製パッカーより先端側の中空自穿孔ロックボルト内にモルタルを注入し、膨張した鋼製パッカーより先端側のボアホール内にモルタルを充填する工程と、膨張した鋼製パッカーより基端側のボアホール内に所定量のウレタンを注入する工程とを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、次のような効果を奏することができる。
【0011】
(1)ロックボルト外部のパッカーを鋼製かつ膨張式とするため自穿孔削孔時のパッカー破損を防止できる。
【0012】
(2)「ロックボルト外部の鋼製膨張式パッカー」と「ロックボルト内部の布製膨張式パッカー」により、自穿孔ロックボルトでも2種類の注入材料で施工できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の鋼製膨張式パッカーを用いた中空自穿孔ロックボルト補強工法による仕上がりの模式図である。
図2】本発明の鋼製膨張式パッカーを用いた中空自穿孔ロックボルト補強工法の施工工程を示す図である。
図3図2のA−A線断面図である。
図4】本発明の他の実施例(リーク確認用パイプを具備する場合)を示す模式図である。
図5】本発明の他の実施例(布製膨張式パッカーを用いない場合)を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の鋼製膨張式パッカーを用いた中空自穿孔ロックボルト補強工法は、ロックボルト外側の注入材料の境界部としたい部分に膨張式鋼管を扁平に加工したものを巻きつけ、注水ポンプによる注水で該膨張式鋼管を膨張させることにより、強固な鋼製膨張式パッカーを形成する。
【実施例】
【0015】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
【0016】
図1は本発明の鋼製膨張式パッカーを用いた中空自穿孔ロックボルト補強工法による仕上がりの模式図である。図2は本発明の鋼製膨張式パッカーを用いた中空自穿孔ロックボルト補強工法の施工工程を示す図、図3図2のA−A線断面図である。なお、図2(c)〜(e)は内部構造が分かるように透視図としている。
【0017】
図1において、1はロックボルト、2は地山、Aは緩んだ地山、Bは安定した地山、Cはトンネル覆工、Dはモルタルによる定着効果部位、Eはウレタンによる地山改良(物性値向上)効果部位である。
【0018】
図2において、1はロックボルト、2は地山、3は鋼製膨張式パッカー(膨張前)、4は注水パイプ、5はウレタン噴出口, 6はモルタル噴出口、7は布製膨張式パッカー(膨張前)、8はモルタル注入用パイプ、9は鋼製膨張式パッカー(膨張後)、10は布製膨張式パッカー(膨張後)、Dはモルタルによる定着効果部位、Eはウレタンによる地山改良(物性値向上)効果部位である。
【0019】
(1) ロックボルト外部の鋼製膨張式パッカーは、ロックボルト外側の注入材料の境界部としたい部分に膨張式鋼管を扁平に加工したものを巻きつけ、注水ポンプによる注水で膨張させることにより、強固なパッカーが形成される。これにより、ボルト外部に「仕切り」を構築できる。
【0020】
(2) ロックボルト内部の布製膨張式パッカー(モルタル注入用パイプ付き) は、ロックボルト内部に、パイプを取り付けた膨張式布製のパッカー(袋)を挿入し、注入材料により膨張させることで、パッカーが形成される。これにより、ボルト内部に「仕切り」を構築できる。
【0021】
本発明の鋼製膨張式パッカーを用いた中空自穿孔ロックボルト補強工法の施工工程について説明する。
(1)ロックボルト1を削岩機にセットし、地山2に打ち込む〔図2(a)〕。
(2)鋼製膨張式パッカー3を注水パイプ4で送られる水の水圧で拡張させる。9は鋼製膨張式パッカー(膨張後)であり、ロックボルト1外部(自穿孔によりできたボアホール内部)の「仕切り」として働く。(外部仕切りの完成)〔図2(b)〕。
(3)モルタル注入用パイプ8付きの布製膨張式パッカー7をロックボルト1の中空に挿入する〔図2(c)〕。
(4)布製膨張式パッカー7をモルタル注入用パイプ8で圧送されるモルタルで膨張させる。10は布製膨張式パッカー(膨張後)であり、ロックボルト1内部の「仕切り」として働く((内部仕切りの完成)〔図2(d)〕。
(5)そのままモルタルを注入し続けると、モルタル噴出口6からモルタルが噴出し、ボアホールにモルタルが充填される。鋼製膨張式パッカー9により仕切られているので、モルタルは鋼製膨張式パッカー9により先端側にのみ充填される。なお、充填完了後、モルタル注入用パイプ8を覆工の口元で切断する〔図2(e)〕。
(6)モルタル硬化後(材齢1日)に、引抜試験を行うとともに、プレストレスを導入する。
(7)最後に、ロックボルト1の中空を利用して、ウレタンを所定量注入する。布製膨張式パッカー10により仕切られているので、ウレタンは、布製膨張式パッカー10より手前側でウレタン噴出口5から噴出されて地山を改良する〔図2(f)〕。
【0022】
図4は本発明の他の実施例(リーク確認用パイプを具備する場合)を示す模式図である。図2と同じ構成には同じ符号を付している。
【0023】
モルタル注入用とリーク確認用の2本のパイプを取り付けた布製膨張式パッカーを中空のロックボルト内部に挿入し施工するため、ボアホール内にモルタルが充填されていることをリークによって目視確認することが可能である。
【0024】
図5は本発明の他の実施例(布製膨張式パッカーを用いない場合)を示す模式図である。図2と同じ構成には同じ符号を付している。
【0025】
上記における布製膨張式パッカーを用いない場合もモルタルが先端定着部以外に漏出しないような構造とする。すなわち、図2(a)、図2(b)と同様の工程を行った後、
(1)ロックボルト1内部にモルタル注入用パイプを挿入し、モルタルの充填を行う。
【0026】
(2)モルタル硬化後、モルタル注入用パイプの撤去を行う。
【0027】
(3)ウレタンの注入を行う。
【0028】
なお、本発明は上記実施例に限定されるものではなく、本発明の趣旨に基づき種々の変形が可能であり、これらを本発明の範囲から排除するものではない。
【産業上の利用可能性】
【0029】
本発明の鋼製膨張式パッカーを用いた中空自穿孔ロックボルト補強工法は、穿孔時にパッカーを破損することがない、鋼製膨張式パッカーを用いた中空自穿孔ロックボルトとして利用可能である。
【符号の説明】
【0030】
1 ロックボルト
2 地山
A 緩んだ地山
B 安定した地山
C トンネル覆工
D モルタルによる定着効果部位
E ウレタンによる地山改良(物性値向上)効果部位
3 鋼製膨張式パッカー(膨張前)
4 注水パイプ
5 ウレタン噴出口
6 モルタル噴出口
7 布製膨張式パッカー(膨張前)
8 モルタル注入用パイプ
9 鋼製膨張式パッカー(膨張後)
10 布製膨張式パッカー(膨張後)
図1
図2
図3
図4
図5