(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
ホスト装置が搭載されたホスト車両と、中継装置が搭載された複数両の中継車両とで編成された列車において、前記ホスト装置および前記中継装置とがマルチホップ通信により互いに無線通信可能に構成された無線通信システムの前記ホスト装置であって、
前記ホスト装置は、前記列車の連結車両順序に関連付けて前記中継装置の識別情報を格納した連結情報と、前記ホスト装置が前記中継装置それぞれを宛先とする通信を行う場合に第1ホップ先とする中継装置の候補を示したホスト発第1ホップ先情報と、前記ホスト装置及び前記中継装置の各装置が互いに単一ホップで通信可能か否かを示す直接通信可否情報とを記憶し、
前記中継装置は、前記ホスト装置或いは自装置以外の中継装置それぞれを宛先とする通信を行う場合に第1ホップ先とする装置の候補である中継装置発第1ホップ先情報を記憶しており、
前記列車における前記中継車両の増解結(増結、解結、又はその両方のこと。以下同じ。)後の新たな前記連結情報(以下「新規連結情報」という。)を入力する入力手段と、
各車両の相対位置に基づいて単一ホップで通信可能な範囲を規定する所定のアルゴリズムに基づき、前記新規連結情報を用いて、増解結後の新たな前記ホスト発第1ホップ先情報および新たな前記直接通信可否情報を仮生成することと、仮生成した当該新たなホスト発第1ホップ先情報および当該新たな直接通信可否情報を、前記記憶していた前記ホスト発第1ホップ先情報および前記直接通信可否情報で補正することとを行って、前記記憶していた前記ホスト発第1ホップ先情報および前記直接通信可否情報を新たな情報に更新する更新手段と、
更新された前記直接通信可否情報に基づいて、前記中継装置それぞれの増解結後の前記中継装置発第1ホップ先情報を生成して、各中継装置に送信する手段と、
を備えたホスト装置。
ホスト装置が搭載されたホスト車両と、中継装置が搭載された複数両の中継車両とで編成された列車において、前記ホスト装置および前記中継装置とがマルチホップ通信により互いに無線通信可能に構成された無線通信システムの前記ホスト装置であって、
前記ホスト装置は、前記列車の連結車両順序に関連付けて前記中継装置の識別情報を格納した連結情報と、前記ホスト装置が前記中継装置それぞれを宛先とする通信を行う場合に第1ホップ先とする中継装置の候補を示したホスト発第1ホップ先情報と、前記ホスト装置及び前記中継装置の各装置が互いに単一ホップで通信可能か否かを示す直接通信可否情報とを記憶し、
前記中継装置は、前記ホスト装置或いは自装置以外の中継装置それぞれを宛先とする通信を行う場合に第1ホップ先とする装置の候補である中継装置発第1ホップ先情報を記憶しており、
前記列車における前記中継車両の増解結(増結、解結、又はその両方のこと。以下同じ。)後の新たな前記連結情報(以下「新規連結情報」という。)を入力する入力手段と、
増解結前の連結情報と前記新規連結情報とに基づき、増解結前の中継車両の位置に、増解結後の新たな中継車両が入れ替わって位置したとみなして、入れ替わった中継車両の中継装置を用いて、前記ホスト発第1ホップ先情報および前記直接通信可否情報のうちの、増解結前の車両数と増解結後の車両数との重複車両数分の情報を更新する第1更新手段と、
増解結前の車両数よりも増解結後の車両数が超過する場合に、各車両の相対位置に基づいて単一ホップで通信可能な範囲を規定する所定のアルゴリズムに基づいて、前記ホスト発第1ホップ先情報および前記直接通信可否情報のうちの当該超過車両数分の情報を、前記新規連結情報から補完して更新する第2更新手段と、
更新された前記直接通信可否情報に基づいて、前記中継装置それぞれの増解結後の前記中継装置発第1ホップ先情報を生成して、各中継装置に送信する手段と、
を備えたホスト装置。
ホスト装置が搭載されたホスト車両と、中継装置が搭載された複数両の中継車両とで編成された列車において、前記ホスト装置および前記中継装置とがマルチホップ通信により互いに無線通信可能に構成された無線通信システムの前記ホスト装置であって、
前記ホスト装置は、前記列車の連結車両順序に関連付けて前記中継装置の識別情報を格納した連結情報と、前記ホスト装置が前記中継装置それぞれを宛先とする通信を行う場合に第1ホップ先とする中継装置の候補を示したホスト発第1ホップ先情報と、前記ホスト装置及び前記中継装置の各装置が互いに単一ホップで通信可能か否かを示す直接通信可否情報とを記憶し、
前記中継装置は、前記ホスト装置或いは自装置以外の中継装置それぞれを宛先とする通信を行う場合に第1ホップ先とする装置の候補である中継装置発第1ホップ先情報を記憶しており、
前記列車における前記中継車両の増解結(増結、解結、又はその両方のこと。以下同じ。)後の新たな前記連結情報(以下「新規連結情報」という。)を入力する入力手段と、
各車両の相対位置に基づいて単一ホップで通信可能な範囲を規定する所定のアルゴリズムに基づき、前記新規連結情報を用いて、増解結後の新たな前記ホスト発第1ホップ先情報および新たな前記直接通信可否情報を仮生成することと、仮生成した当該新たなホスト発第1ホップ先情報および当該新たな直接通信可否情報を、前記記憶していた前記ホスト発第1ホップ先情報および前記直接通信可否情報で補正することとを行って、前記記憶していた前記ホスト発第1ホップ先情報および前記直接通信可否情報を新たな情報に更新する更新手段と、
各中継装置に、更新された前記直接通信可否情報のうちの当該中継装置に係る情報(以下「部分情報」という)および前記新規連結情報を送信する手段と、
を備えたホスト装置。
ホスト装置が搭載されたホスト車両と、中継装置が搭載された複数両の中継車両とで編成された列車において、前記ホスト装置および前記中継装置とがマルチホップ通信により互いに無線通信可能に構成された無線通信システムの前記ホスト装置であって、
前記ホスト装置は、前記列車の連結車両順序に関連付けて前記中継装置の識別情報を格納した連結情報と、前記ホスト装置が前記中継装置それぞれを宛先とする通信を行う場合に第1ホップ先とする中継装置の候補を示したホスト発第1ホップ先情報と、前記ホスト装置及び前記中継装置の各装置が互いに単一ホップで通信可能か否かを示す直接通信可否情報とを記憶し、
前記中継装置は、前記ホスト装置或いは自装置以外の中継装置それぞれを宛先とする通信を行う場合に第1ホップ先とする装置の候補である中継装置発第1ホップ先情報を記憶しており、
前記列車における前記中継車両の増解結(増結、解結、又はその両方のこと。以下同じ。)後の新たな前記連結情報(以下「新規連結情報」という。)を入力する入力手段と、
増解結前の連結情報と前記新規連結情報とに基づき、増解結前の中継車両の位置に、増解結後の新たな中継車両が入れ替わって位置したとみなして、入れ替わった中継車両の中継装置を用いて、前記ホスト発第1ホップ先情報および前記直接通信可否情報のうちの、増解結前の車両数と増解結後の車両数との重複車両数分の情報を更新する第1更新手段と、
増解結前の車両数よりも増解結後の車両数が超過する場合に、各車両の相対位置に基づいて単一ホップで通信可能な範囲を規定する所定のアルゴリズムに基づいて、前記ホスト発第1ホップ先情報および前記直接通信可否情報のうちの当該超過車両数分の情報を、前記新規連結情報から補完して更新する第2更新手段と、
各中継装置に、更新された前記直接通信可否情報のうちの当該中継装置に係る情報(以下「部分情報」という)および前記新規連結情報を送信する手段と、
を備えたホスト装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ワイヤレスセンサネットワークを、鉄道車両の状態を監視する車両状態監視システムに適用することを考えた場合、各車両にセンサを設置して列車単位でセンサデータを集約することが考えられる。しかし、ワイヤレスセンサネットワークは、そもそも監視対象物が固定的に定められていることを前提としているため、車両状態監視システムへそのまま適用することが困難である。すなわち、車両状態監視システムで監視対象となる列車は、車両の増解結(増結、解結、又はその両方のこと。以下同じ。)がなされる場合や、別の車両状態監視システムが稼働している別の列車が無線通信可能な距離で近接する場合がある。こういった鉄道特有の問題を考慮する必要がある。
【0005】
より具体的に説明する。マルチホップ通信に係る通信ネットワークの構築方法として、静的な構築方法と、動的な構築方法とがある。静的な通信ネットワークの構築方法では、予め、センサデータを転送する中継装置間の経路を設計しておき、各中継装置に設計した経路を設定しておく必要がある。このため、車両の増解結が行われる毎に、増解結後の列車全体の経路を再設計し、増解結後の各車両に搭載された各中継装置の設定を変更する必要がある。手間がかかり、設計ミスや設定ミスが発生し易い。また、時間もかかるため、増解結後の出発までにある程度の時間を確保する必要がある。
【0006】
一方、動的な通信ネットワークの構築方法では、各中継装置が通信毎に経路を探索(サーチ)するが、通信可能な全ての中継装置が通信先の候補になる。このため、例えば駅の停車中など、別の車両状態監視システムが稼働している別の列車が近接すると、互いの車両状態監視システムを構成する中継装置間で通信が始まってしまうといった問題が発生する。仮に、列車毎に異なる通信ネットワークの識別情報を与えて、異なる通信ネットワーク間では通信しない設計とした場合には、車両の増結によって新たに組み入れられた車両に係る中継装置が、従前の通信ネットワークと異なると判定されて、他の中継装置と通信できないといった事態が発生し、列車単位でのセンサデータの集約が行えなくなってしまう。
【0007】
また、動的な通信ネットワークの構築方法では、各中継装置が通信の度に経路を探索するため、各中継装置の消費電力が大きくなり、バッテリーで動作する場合の動作時間が短くなるという問題もある。
【0008】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、ワイヤレスセンサネットワークを車両状態監視システムに適用して無線通信システムを構成するための技術を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するための第1の発明は、
ホスト装置が搭載されたホスト車両と、中継装置(例えば、
図13の中継装置30−1)が搭載された複数両の中継車両とで編成された列車において、前記ホスト装置および前記中継装置とがマルチホップ通信により互いに無線通信可能に構成された無線通信システム(例えば、
図1の通信システム1)の前記ホスト装置(例えば、
図12のホスト装置20−1)であって、
前記ホスト装置は、前記列車の連結車両順序に関連付けて前記中継装置の識別情報を格納した連結情報(例えば、
図12の連結情報60)と、前記ホスト装置が前記中継装置それぞれを宛先とする通信を行う場合に第1ホップ先とする中継装置の候補を示したホスト発第1ホップ先情報(例えば、
図12のホスト装置用経路表308)と、前記ホスト装置及び前記中継装置の各装置が互いに単一ホップで通信可能か否かを示す直接通信可否情報(例えば、
図12の通信行列70)とを記憶し、
前記中継装置は、前記ホスト装置或いは自装置以外の中継装置それぞれを宛先とする通信を行う場合に第1ホップ先とする装置の候補である中継装置発第1ホップ先情報(例えば、
図13の自装置用経路表606)を記憶しており、
前記列車における前記中継車両の増解結(増結、解結、又はその両方のこと。以下同じ。)後の新たな前記連結情報(以下「新規連結情報」という。)を入力する入力手段(
図12の連結情報取得部202)と、
各車両の相対位置に基づいて単一ホップで通信可能な範囲を規定する所定のアルゴリズムに基づき、前記新規連結情報を用いて、増解結後の新たな前記ホスト発第1ホップ先情報および新たな前記直接通信可否情報を仮生成することと、仮生成した当該新たなホスト発第1ホップ先情報および当該新たな直接通信可否情報を、前記記憶していた前記ホスト発第1ホップ先情報および前記直接通信可否情報で補正することとを行って、前記記憶していた前記ホスト発第1ホップ先情報および前記直接通信可否情報を新たな情報に更新する更新手段(
図12の第1通信行列更新部208、および、経路表更新部210)と、
更新された前記直接通信可否情報に基づいて、前記中継装置それぞれの増解結後の前記中継装置発第1ホップ先情報を生成して、各中継装置に送信する手段(
図12の経路表送信制御部212)と、
を備えたホスト装置である。
【0010】
この第1の発明によれば、他の列車が接近している場合や、車両の増解結が行われた場合であっても、自列車のワイヤレスセンサネットワークに係る通信ネットワークを比較的簡単に構築可能である。すなわち、ホスト装置は、入力された中継車両の増解結後の新規連結情報を用いて、第1ホップで通信可能な範囲を規定する所定のアルゴリズムに基づき、ホスト装置及び中継装置の各装置が互いに第1ホップで通信可能か否かを示す直接通信可否情報を更新するとともに、他装置それぞれを宛先とする通信を行う場合に第1ホップ先とする装置の候補である自装置発第1ホップ先情報を更新する。また、更新した直接通信可否情報に基づいて、増解結後の各中継装置の中継装置発第1ホップ先情報を生成し送信する。これにより、通信ネットワークを比較的簡単・短時間に構築することができる。
【0011】
第2の発明は、
ホスト装置が搭載されたホスト車両と、中継装置(例えば、
図13の中継装置30−1)が搭載された複数両の中継車両とで編成された列車において、前記ホスト装置および前記中継装置とがマルチホップ通信により互いに無線通信可能に構成された無線通信システムの前記ホスト装置(例えば、
図20のホスト装置20−2)であって、
前記ホスト装置は、前記列車の連結車両順序に関連付けて前記中継装置の識別情報を格納した連結情報(例えば、
図20の連結情報60)と、前記ホスト装置が前記中継装置それぞれを宛先とする通信を行う場合に第1ホップ先とする中継装置の候補を示したホスト発第1ホップ先情報(例えば、
図20のホスト装置用経路表308)と、前記ホスト装置及び前記中継装置の各装置が互いに単一ホップで通信可能か否かを示す直接通信可否情報(例えば、
図20の通信行列70)とを記憶し、
前記中継装置は、前記ホスト装置或いは自装置以外の中継装置それぞれを宛先とする通信を行う場合に第1ホップ先とする装置の候補である中継装置発第1ホップ先情報(例えば、
図13の自装置用経路表606)を記憶しており、
前記列車における前記中継車両の増解結(増結、解結、又はその両方のこと。以下同じ。)後の新たな前記連結情報(以下「新規連結情報」という。)を入力する入力手段(例えば、
図20の連結情報取得部202)と、
増解結前の連結情報と前記新規連結情報とに基づき、増解結前の中継車両の位置に、増解結後の新たな中継車両が入れ替わって位置したとみなして、入れ替わった中継車両の中継装置を用いて、前記ホスト発第1ホップ先情報および前記直接通信可否情報のうちの、増解結前の車両数と増解結後の車両数との重複車両数分の情報を更新する第1更新手段(例えば、
図20の第2通信行列更新部216、および、経路表更新部210)と、
増解結前の車両数よりも増解結後の車両数が超過する場合に、各車両の相対位置に基づいて単一ホップで通信可能な範囲を規定する所定のアルゴリズムに基づいて、前記ホスト発第1ホップ先情報および前記直接通信可否情報のうちの当該超過車両数分の情報を、前記新規連結情報から補完して更新する第2更新手段(例えば、
図20の第2通信行列更新部216、及び、経路表更新部210)と、
更新された前記直接通信可否情報に基づいて、前記中継装置それぞれの増解結後の前記中継装置発第1ホップ先情報を生成して、各中継装置に送信する手段(例えば、
図20の経路表送信制御部212)と、
を備えたホスト装置である。
【0012】
この第2の発明によれば、他の列車が接近している場合や、車両の増解結が行われた場合であっても、自列車のワイヤレスセンサネットワークに係る通信ネットワークを比較的簡単に構築可能である。すなわち、ホスト装置は、増解結前の連結情報と、入力された増解結後の新規連結情報を用いて、増解結前の車両の位置に増解結後の新たな車両が入れ替わったとみなして直接通信可否情報を更新するとともに、自装置発第1ホップ先情報を更新する。また、更新した直接通信可否情報に基づいて、増解結後の各中継装置の中継装置発第1ホップ先情報を生成し送信する。これにより、通信ネットワークを比較的簡単・短時間に構築することができる。
【0013】
第3の発明は、
ホスト装置が搭載されたホスト車両と、中継装置(例えば、
図25の中継装置30−3)が搭載された複数両の中継車両とで編成された列車において、前記ホスト装置および前記中継装置とがマルチホップ通信により互いに無線通信可能に構成された無線通信システムの前記ホスト装置(例えば、
図24のホスト装置20−3)であって、
前記ホスト装置は、前記列車の連結車両順序に関連付けて前記中継装置の識別情報を格納した連結情報と、前記ホスト装置が前記中継装置それぞれを宛先とする通信を行う場合に第1ホップ先とする中継装置の候補を示したホスト発第1ホップ先情報(ホスト装置用経路表308)と、前記ホスト装置及び前記中継装置の各装置が互いに単一ホップで通信可能か否かを示す直接通信可否情報(例えば、
図24の通信行列70)とを記憶し、
前記中継装置は、前記ホスト装置或いは自装置以外の中継装置それぞれを宛先とする通信を行う場合に第1ホップ先とする装置の候補である中継装置発第1ホップ先情報(例えば、
図25の自装置用経路表606)を記憶しており、
前記列車における前記中継車両の増解結(増結、解結、又はその両方のこと。以下同じ。)後の新たな前記連結情報(以下「新規連結情報」という。)を入力する入力手段(例えば、
図24の連結情報取得部202)と、
各車両の相対位置に基づいて単一ホップで通信可能な範囲を規定する所定のアルゴリズムに基づき、前記新規連結情報を用いて、増解結後の新たな前記ホスト発第1ホップ先情報および新たな前記直接通信可否情報を仮生成することと、仮生成した当該新たなホスト発第1ホップ先情報および当該新たな直接通信可否情報を、前記記憶していた前記ホスト発第1ホップ先情報および前記直接通信可否情報で補正することとを行って、前記記憶していた前記ホスト発第1ホップ先情報および前記直接通信可否情報を新たな情報に更新する更新手段(
図24の第1通信行列更新部220、および、自装置経路表更新部220)と、
各中継装置に、更新された前記直接通信可否情報のうちの当該中継装置に係る情報(以下「部分情報」という)(例えば、
図23の個別通信確認情報80)および前記新規連結情報(例えば、
図23の連結情報60)を送信する手段(例えば、
図24の経路表作成指示部222)と、
を備えたホスト装置である。
【0014】
この第3の発明によれば、他の列車が接近している場合や、車両の増解結が行われた場合であっても、自列車のワイヤレスセンサネットワークに係る無線通信の通信ネットワークを比較的簡単に構築可能である。すなわち、ホスト装置は、入力された増解結後の新規連結情報を用いて、第1ホップで通信可能な範囲を規定する所定のアルゴリズムに基づき、直接通信可否情報を更新するとともに、自装置発第1ホップ先情報を更新する。また、各中継装置に、更新した直接通信可否情報のうち当該中継装置に係る部分情報と、新規連結情報とを送信する。これにより、通信ネットワークを比較的簡単・短時間に構築することができる。
【0015】
第4の発明は、
ホスト装置が搭載されたホスト車両と、中継装置(例えば、
図25の中継装置30−3)が搭載された複数両の中継車両とで編成された列車において、前記ホスト装置および前記中継装置とがマルチホップ通信により互いに無線通信可能に構成された無線通信システムの前記ホスト装置(例えば、
図24のホスト装置20−3)であって、
前記ホスト装置は、前記列車の連結車両順序に関連付けて前記中継装置の識別情報を格納した連結情報と、前記ホスト装置が前記中継装置それぞれを宛先とする通信を行う場合に第1ホップ先とする中継装置の候補を示したホスト発第1ホップ先情報(例えば、
図24のホスト装置用経路表308)と、前記ホスト装置及び前記中継装置の各装置が互いに単一ホップで通信可能か否かを示す直接通信可否情報(例えば、
図24の通信行列70)とを記憶し、
前記中継装置は、前記ホスト装置或いは自装置以外の中継装置それぞれを宛先とする通信を行う場合に第1ホップ先とする装置の候補である中継装置発第1ホップ先情報(例えば、
図25の自装置用経路表606)を記憶しており、
前記列車における前記中継車両の増解結(増結、解結、又はその両方のこと。以下同じ。)後の新たな前記連結情報(以下「新規連結情報」という。)を入力する入力手段(例えば、
図24の連結情報取得部202)と、
増解結前の連結情報と前記新規連結情報とに基づき、増解結前の中継車両の位置に、増解結後の新たな中継車両が入れ替わって位置したとみなして、入れ替わった中継車両の中継装置を用いて、前記ホスト発第1ホップ先情報および前記直接通信可否情報のうちの、増解結前の車両数と増解結後の車両数との重複車両数分の情報を更新する第1更新手段(例えば、
図20の第2通信行列更新部210、及び、自装置経路表更新部220)と、
増解結前の車両数よりも増解結後の車両数が超過する場合に、各車両の相対位置に基づいて単一ホップで通信可能な範囲を規定する所定のアルゴリズムに基づいて、前記ホスト発第1ホップ先情報および前記直接通信可否情報のうちの当該超過車両数分の情報を、前記新規連結情報から補完して更新する第2更新手段(例えば、
図20の第2通信行列更新部210、及び、自装置経路表更新部220)と、
各中継装置に、更新された前記直接通信可否情報のうちの当該中継装置に係る情報(以下「部分情報」という)および前記新規連結情報を送信する手段(例えば、
図24の経路表作成時事部222)と、
を備えたホスト装置である。
【0016】
この第4の発明によれば、他の列車が接近している場合や、車両の増解結が行われた場合であっても、自列車のワイヤレスセンサネットワークに係る無線通信の通信ネットワークを比較的簡単に構築可能である。すなわち、ホスト装置は、増解結前の連結情報と、入力された増解結後の新規連結情報を用いて、増解結前の車両の位置に増解結後の新たな車両が入れ替わったとみなして直接通信可否情報を更新するとともに、自装置発第1ホップ先情報を更新する。また、各中継装置に、更新した直接通信可否情報のうち当該中継装置に係る部分情報と、新規連結情報とを送信する。これにより、通信ネットワークを比較的簡単・短時間に構築することができる。
【0017】
第5の発明として、
第1又は第2の発明のホスト装置との無線通信により前記無線通信システムを構成する中継装置(例えば、
図13の中継装置30−1)であって、
前記ホスト装置から受信した増解結後の中継装置発第1ホップ先情報(例えば、
図13の自装置用経路表606)を記憶更新する手段(例えば、
図13の記憶部600−1)、
を備えた中継装置を構成しても良い。
【0018】
この第5の発明によれば、中継装置は、ホスト装置から送信された中継装置発第1ホップ先情報を記憶更新する。これにより、中継装置は、現在の編成における中継装置発第1ホップ先情報を自ら作成することなく更新可能となり、他の列車が接近している場合や、車両の増解結が行われた場合であっても、自列車のワイヤレスセンサネットワークに係る通信ネットワークを比較的簡単に構築可能である。
【0019】
第6の発明として、
第3又は第4のホスト装置との無線通信により前記無線通信システムを構成する中継装置(例えば、
図25の中継装置30−3)であって、
前記ホスト装置から受信した前記部分情報および前記新規連結情報に基づいて、増解結後の中継装置発第1ホップ先情報(例えば、
図25の自装置用経路表606)を記憶更新する手段(例えば、
図25の自装置経路表作成部508)、
を備えた中継装置を構成しても良い。
【0020】
この第6の発明によれば、中継装置は、ホスト装置から受信した直接通信可否情報の部分情報、及び、新規連結情報に基づいて、増解結後の中継装置発第1ホップ先情報を記憶更新する。これにより、中継装置は、無線通信を試行することなく、現在の編成における中継装置発第1ホップ先情報を更新することができ、他の列車が接近している場合や、車両の増解結が行われた場合であっても、自列車のワイヤレスセンサネットワークに係る通信ネットワークを比較的簡単に構築可能である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
[概要]
本実施形態の無線通信システムは、本発明を、複数車両で編成される鉄道列車において、各車両に付置したセンサによるセンサデータを列車単位で収集する車両状態監視システムに適用したものである。
【0023】
図1は、車両状態監視システムに対する無線通信システム1の適用例である。無線通信システム1は、ホスト装置20と中継装置30とを備えて構成される。本実施形態では、説明の簡単化のために、
図1に示すように、列車の先頭車両12にホスト装置20を搭載し、2両目以降の各車両10に中継装置30を搭載することとして説明する。ホスト装置20及び中継装置30は、無線通信機能を有しており、装置間での無線通信が可能となっている。また、ホスト装置20或いは中継装置30は、搭載車両に付置された各センサ40と無線通信或いは有線通信が可能となっており、これらの各センサ40によるセンサデータは、中継装置30を経由してホスト装置20に集約される。
【0024】
無線通信システム1における通信は、マルチホップ通信により実現され、通信毎に宛先(送信先)の装置までの経路を探索する動的な通信ネットワークである。但し、経路探索は、経路表50に従って行われる。ホスト装置20及び中継装置30それぞれは、経路表50を記憶している。
図2は、経路表50の一例である。
図2では、ホスト装置20の経路表50(ホスト発第1ホップ先情報)と、中継装置30の経路表50(中継装置発第1ホップ先情報)とを示している。経路表50は、宛先とする他装置それぞれに、第1ホップ先とする装置の候補を優先度順に対応付けて格納している。経路探索は、この優先度順に従った第1ホップ先の中から選択される。なお、マルチホップ通信だからといって無闇に第1ホップ先を設定するのではなく、宛先の装置までのホップ数が少なくなるように優先度を定めて第1ホップ先を設定することで、システム全体の通信量を削減する。このため、第1ホップ先は、宛先の装置に近い順に優先度が高くなるように列挙される。
【0025】
鉄道では、例えば途中駅において、車両が増結或いは解結又はその両方である増解結が行われ得る。なお、通常、運転台が設備された車両が先頭車両となるため、本実施形態では、先頭車両にホスト装置20を搭載することとし、2両目以降の車両を増解結することとする。すなわち、先頭車両がホスト車両となり、増解結されるのは中継装置30が搭載された中継車両となる。
【0026】
図3は、車両の増解結の一例である。
図3(a)では、増解結前は5両編成であった列車が、4両目の車両10cが解結されて、増解結後は4両編成となっている。また、
図3(b)では、増解結前は5両編成であった列車が、4両目の車両10cが解結されるとともに車両10e,10fが増結されて、増解結後は6両編成となっている。
【0027】
車両状態監視システムでは、列車単位でセンサデータを集約するために、1本の列車について1つの通信ネットワークを構築する必要がある。つまり、1本の列車に対して、当該列車を構成する各車両に搭載されるホスト装置20、及び、中継装置30によって、1つの通信ネットワークを構築する。従って、増解結が行われた場合には、1本の列車を構成する車両10が入れ替わることから、新たな通信ネットワークを再構築する必要がある。通信ネットワークを構築するとは、本実施形態において、ホスト装置20及び中継装置30それぞれの経路表50を作成・設定すること、すなわち各装置の第1ホップ先を作成・設定することを意味する。以下、無線通信システム1における通信ネットワークの構築方法についての3つの実施例を説明する。
【0028】
[第1実施例]
第1実施例では、ホスト装置20が各装置の経路表50を作成することで、通信ネットワークを構築する。
【0029】
(A)初回の通信ネットワークの構築
先ず、列車の編成直後における初回の通信ネットワークの構築について説明する。通信ネットワークの構築にあたり、ホスト装置20は、列車を構成する各車両10の情報である連結情報60が与えられる。編成される車両は予め定められているため、連結情報60が事前にホスト装置20に与えられるのである。
図4は、連結情報60の一例である。
図4に示すように、連結情報60は、列車を構成する各車両10の連結順序に対応付けて、各車両10の識別情報である車両IDと、当該車両10に搭載されているホスト装置20及び中継装置30の識別情報であり、通信アドレスを兼用する装置IDとを格納している。つまり、ホスト装置20は、連結情報60によって、自列車の各車両10の連結順や、各車両10に搭載されている中継装置30を把握することができる。
【0030】
通信ネットワークの構築では、先ず、ホスト装置20は、連結情報60を参照して、通信ネットワークを構築する対象となる中継装置30と、その連結順序を判断する。次いで、
図5に示すように、ホスト装置20は、これらの中継装置30それぞれとの直接通信(第1ホップの通信)を試みて、当該中継装置30との直接通信が可能か否かを確認する。また、各中継装置30は、
図6に示すように、ホスト装置20を含む上り方向の他の装置からの直接通信の確認要求を受けて、同様に、下り方向の他の中継装置30それぞれとの直接通信の可否を確認し、その確認結果をホスト装置20に通知する。ここで、下り方向とは、先頭車両12から最後尾車両に向かう方向であり、逆に、最後尾車両から先頭車両12に向かう方向を上り方向という。これにより、ホスト装置20は、中継装置30間の直接通信の可否を確認することができる。
【0031】
装置間の直接通信の可否の確認結果は、通信行列70として纏められる。
図7は、通信行列70の一例である、
図7によれば、通信行列70は、ホスト装置20及び中継装置30の各装置間において単一ホップでの通信(直接通信)が可能か否かを示す直接通信可否情報であり、縦方向を連結順に送信元の装置とし、横方向を連結順に送信先の装置として、装置間の直接通信の可否を格納している。但し、本実施形態では、通信送受の対称性から、ある装置間の一方向への直接通信が可能であれば、逆方向への直接通信も可能であるとみなす。このため、通信行列70は、送信先として下り方向の他の各装置との直接通信の可否のみを格納している。
【0032】
ホスト装置20は、この通信行列70をもとに、自装置の経路表50と、各中継装置30の経路表50を作成する。ある装置(「対象装置」という)の経路表50は、次のように作成する。すなわち、対象装置からみて宛先とする他の装置のうち、直接通信が可能な装置については、宛先の装置、及び、対象装置から宛先の装置までの間に連結されている他の装置を、宛先の装置に近い順に第1ホップ先とする。また、直接通信が不可能な装置については、対象装置と宛先の装置との間に連結された他の装置であって、対象装置と直接通信が可能な装置を、宛先の装置に近い順に第1ホップ先とする。
【0033】
そして、ホスト装置20は、
図8に示すように、各中継装置30について作成した経路表50を、当該中継装置30へ送信する。中継装置30は、ホスト装置20から受信した経路表50を記憶する。以上で、初回の通信ネットワークの構築が完了する。
【0034】
(B)増解結後の通信ネットワークの再構築
続いて、増解結に伴う通信ネットワークの再構築について説明する。
図9に示すような車両の増解結が行われた場合を例に挙げて説明する。
図9では、先頭車両12に5台の車両10a〜10eが連結された6両編成の列車に対して、車両10cを解結するとともに車両10f,10gを増結した増解結によって、7両編成に変更されている。つまり、増解結前後では、3両目までは同じであるが、4両目以降の車両10c〜10eが、車両10d〜10gに入れ替わっている。
【0035】
増解結前は、先頭車両12に搭載されたホスト装置20と、車両10a〜10eそれぞれに搭載された中継装置30a〜30eによって通信ネットワークが構築されている。この増解結前の通信ネットワークに対して、増解結後は、解結された車両10cに搭載された中継装置30cを除外し、増結された車両10f,10gそれぞれに搭載された中継装置30f,30gを追加した通信ネットワークを構築する必要がある。すなわち、増解結後は、ホスト装置20及び中継装置30a,30b,30d〜30gによる通信ネットワークを再構築する必要がある。
【0036】
通信ネットワークの再構築に際して、ホスト装置20は、増解結後の編成についての連結情報60(新規連結情報)を取得していることとする。増解結する車両の情報は予め定められているため、当該増解結に係る連結情報60(新規連結情報)がホスト装置20に与えられるのである。ホスト装置20は、この新規連結情報を参照して、増解結後の列車について、所定のアルゴリズムに基づき、各装置間の直接通信の可否を判断して、仮の通信行列を生成する。所定のアルゴリズムとは、各装置の無線通信の基本性能をもとに、各装置間の直接通信の可否を判断する方法である。無線通信の基本性能には、少なくとも無線通信が可能な距離を含む。また、本実施形態では、全ての装置(ホスト装置20及び中継装置30)についての無線通信が可能な距離は同じとする。また、各車両10の車両長を全て同じ所定長とする、或いは増解結され得る最長の車両長を所定長とする。これらに基づき、ホスト装置20は、所定のアルゴリズムに従って、各装置について、例えば「2両先の装置まで直接通信が可能」といったように判断する。
【0037】
図10は、直接通信の可否の判断結果の一例である。
図10では、各装置の無線通信の基本性能に基づく直接通信が可能な範囲を「2両先の装置まで」とした場合を矢印付きの線で示している。
【0038】
次いで、生成した仮の通信行列を増解結前の通信行列に基づいて補正して、通信行列を更新する。
図11は、増解結前の通信行列に基づく通信行列の補正の一例である。増解結の前後では、先頭からの車両順番が同じであっても異なる車両に入れ替わってしまったり、同じ車両が異なる車両順番に位置することがある。そのため、何両目といった連結順序に着目して、通信行列を補正する。すなわち、増解結前の列車についての通信行列70で定められる各装置間の通信可否を、増解結後の列車における同一の連結順序間に適用して、増解結後の列車における各装置間の無線通信の可否を補正する。
【0039】
図11の下段に示すように、増解結前は、1両目であるホスト装置20と、4両目である中継装置30cとの間の直接通信が可能であったので、同図上段に示すように、増解結後においても、1両目であるホスト装置20と、4両目である中継装置30dとの間の直接通信を可能とみなして通信行列を補正する。また、同図下段に示すように増解結前は、2両目である中継装置30aと、4両目である中継装置30cとの間の直接通信が不可能であったので、同図上段に示すように増解結後においても、2両目である中継装置30aと、4両目である中継装置30dとの間の直接通信を不可能とみなして通信行列を補正する。
【0040】
その後、ホスト装置20は、更新後の通信行列70に従って、自装置(ホスト装置20)及び各中継装置30の経路表50を再作成する。そして、ホスト装置20は、各中継装置30について作成した経路表50を、該当する中継装置30へ送信する。中継装置30は、ホスト装置20から受信した経路表を更新記憶する。以上で、増解結後の通信ネットワークの構築が完了する。増解結が行われる毎に、同様の通信ネットワークの再構築を行う。
【0041】
<機能構成>
図12は、第1実施例におけるホスト装置20−1の機能構成図である。
図12によれば、ホスト装置20−1は、操作部102と、表示部104と、音出力部106と、無線通信部108と、センサデータ入力部110と、処理部200−1と、記憶部300−1とを備えて構成される一種のコンピュータである。
【0042】
操作部102は、例えばタッチパネルや各種スイッチ等の入力装置で実現される入力装置であり、管理者の操作入力に応じた操作信号を処理部200−1に出力する。
表示部104は、例えばLCD(Liquid Crystal Display)等で実現される表示装置であり、処理部200−1からの表示信号に従った各種表示を行う。
音出力部106は、例えばスピーカ等で実現される音声出力装置であり、処理部200−1からの音声信号に従った各種音出力を行う。
【0043】
無線通信部108は、中継装置30との間でマルチホップ通信による無線通信を行うための無線通信モジュール等で実現される無線通信装置である。
通信部109は、集約センサデータ群314の送信先となる外部装置や、連結情報60の取得先となる始発駅や車両を増解結する駅等に設置された外部装置との無線通信を行う無線通信装置である。
【0044】
センサデータ入力部110は、無線通信装置或いは有線通信装置であり、ホスト装置20−1が搭載された車両に付置されているセンサからセンサデータを入力する。センサデータ入力部110によって入力されたセンサデータは、ホスト車両のセンサデータ群として、中継装置30から受信した車両センサデータ群608とともに集約センサデータ群314として蓄積記憶される。
【0045】
処理部200−1は、例えばCPUやASIC,FPGA等で実現される演算装置であり、記憶部300−1に記憶されたプログラムやデータ等に基づいてホスト装置20を構成する各部への指示やデータ転送を行い、ホスト装置20の全体制御を行う。また、処理部200−1は、機能構成として区分した場合に、連結情報取得部202と、通信行列生成部204と、経路表作成部206と、第1通信行列更新部208と、経路表更新部210と、経路表送信制御部212と、データ集約部214とを有する。これらの機能部は、処理部200−1がプログラムを実行することでソフトウェア的に実現されることとしてもよいし、専用のプロセッサ或いは回路で実現されることとしてもよい。本実施形態では前者として説明する。
【0046】
連結情報取得部202は、無線通信部108を介して外部装置から入力される連結情報60を取得する。取得した連結情報60は、例えば取得日時と対応付けて、連結情報DB306として蓄積記憶される。
【0047】
通信行列生成部204は、編成直後における初回の通信ネットワークの構築時に、自列車についての通信行列を生成する。すなわち、連結情報取得部202によって取得された最新の連結情報60を参照して、自列車に含まれる中継装置30やその連結順序を把握し、自列車の各中継装置30との直接通信を試みて、直接通信が可能であるか否かを確認する。また、各中継装置30との直接通信の可否の確認の際に、各中継装置30に対して、連結情報60を送信して、他の各中継装置30との直接通信の可否の確認を要求する。そして、ホスト装置20と各中継装置30との直接通信の可否の確認結果と、各中継装置30から受信した中継装置30間の直接通信の可否の確認結果とを纏めて、通信行列70を生成する。生成した通信行列70は、例えば該当する連結情報60の識別番号と対応付けて、通信行列DB304に蓄積記憶される。
【0048】
経路表作成部206は、始発となる列車編成直後における初回の通信ネットワークの構築時に、通信行列生成部204によって生成された通信行列70に基づいて、ホスト装置20、及び、各中継装置30の経路表を作成する。生成したホスト装置20の経路表50は、ホスト装置用経路表308として更新記憶され、各中継装置30の経路表は、該当する中継装置30の識別番号と対応付けて、中継装置用経路表310として更新記憶される。
【0049】
第1通信行列更新部208は、車両10の増解結による通信ネットワークの再構築時に、増解結後の自列車についての通信行列70を生成する。すなわち、連結情報取得部202によって取得された最新の連結情報60を参照して、自列車に含まれる中継装置30やその連結順序を把握する。そして、各装置の無線通信の基本性能をもとに、自列車の各装置(ホスト装置20及び各中継装置30)間の直接通信の可否を判断して、仮の通信行列を生成する。次いで、増解結前の自列車についての通信行列70で定められる各装置間の通信可否を、増解結後の自列車における同一の連結順序間に適用して、増解結後の自列車における各装置間の無線通信の可否を変更することで、仮の通信行列を補正して通信行列を生成する。
【0050】
ここで、無線通信の基本性能には、無線通信が可能な距離を含み、全ての装置において共通とし、無線通信性能情報312として記憶されている。また、生成した通信行列70は、例えば該当する連結情報60の識別番号と対応付けて、通信行列DB304として蓄積記憶される。
【0051】
経路表更新部210は、車両10の増解結による通信ネットワークの再構築時に、第1通信行列更新部208によって生成された通信行列70に従って、増解結後の自列車におけるホスト装置20及び各中継装置30の経路表50を作成する。生成したホスト装置20の経路表50は、ホスト装置用経路表308として更新記憶され、各中継装置30の経路表50は、該当する中継装置30の識別番号と対応付けて、中継装置用経路表310として更新記憶される。
【0052】
経路表送信制御部212は、始発となる列車の編成直後における初回の通信ネットワークの構築時に、経路表作成部206によって作成された各中継装置30の経路表50を、当該中継装置30へ送信する制御を行う。また、車両10の増解結による通信ネットワークの再構築時に、経路表更新部210によって作成された各中継装置30の経路表50を、当該中継装置30へ送信する制御を行う。
【0053】
データ集約部214は、各中継装置30から送信されるセンサデータ(車両センサデータ群608(
図13参照))を、集約センサデータ群314として蓄積記憶することで、自列車に係るセンサデータを集約する。また、ホスト装置20が搭載された車両のセンサデータも合わせて集約する。そして、所定の外部送信タイミングで集約センサデータ群314を、無線通信部108を介して外部装置へ送信する。外部送信タイミングは、例えば、所定駅に到着したタイミングとすることができ、その場合には、データ集約部214が、当該駅に設置されている通信装置(外部装置)に向けて集約センサデータ群314を送信する。
【0054】
記憶部300−1は、例えばハードディスクやROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)等で実現される記憶装置であり、処理部200−1がホスト装置20を統合的に制御するためのシステムプログラムや、各種機能を実現するためのプログラムやデータ等を記憶しているとともに、処理部200−1の作業領域として用いられ、処理部200−1が各種プログラムに従って実行した演算結果等が一時的に格納される。記憶部300−1には、第1ホスト制御プログラム302と、連結情報DB306と、通信行列DB304と、ホスト装置用経路表308と、中継装置用経路表310と、無線通信性能情報312と、集約センサデータ群314と、が記憶される。
【0055】
図13は、第1実施例における中継装置30−1の機能構成図である。
図13によれば、中継装置30−1は、操作部402と、表示部404と、音出力部406と、無線通信部408と、センサデータ入力部410と、処理部500−1と、記憶部600−1とを備えて構成される一種のコンピュータである。
【0056】
操作部402は、例えばタッチパネルや各種スイッチ等の入力装置で実現される入力装置であり、管理者の操作入力に応じた操作信号を処理部500−1に出力する。表示部404は、例えばLCD等で実現される表示装置であり、処理部500−1からの表示信号に従った各種表示を行う。音出力部406は、例えばスピーカ等で実現される音声出力装置であり、処理部500−1からの音声信号に従った各種音出力を行う。無線通信部408は、マルチホップ通信による無線通信を行う無線通信モジュール等で実現される装置であり、ホスト装置20や他の中継装置30との無線通信を行う。センサデータ入力部410は、無線通信装置或いは有線通信装置であり、中継装置30が搭載された車両10に付置されているセンサからセンサデータを入力する。センサデータ入力部410によって入力されたセンサデータは、車両センサデータ群608として蓄積記憶される。
【0057】
処理部500−1は、例えばCPUやASIC、FPGAで実現される演算装置であり、記憶部600−1に記憶されたプログラムやデータ等に基づいて中継装置30を構成する各部への指示やデータ転送を行い、中継装置30の全体制御を行う。また、処理部500−1は、機能構成として区分した場合に、通信状況確認部502と、経路表取得部504と、データ送信制御部506とを有する。これらの機能部は、処理部500−1がプログラムを実行することでソフトウェア的に実現されることとしてもよいし、専用のプロセッサ或いは回路で実現されることとしてもよい。本実施形態では前者として説明する。
【0058】
通信状況確認部502は、ホスト装置20や他の中継装置30等の自装置以外の他の装置からの要求に応じて、他の装置との直接通信の可否の確認を行う。すなわち、確認要求とともに受信した連結情報60を参照して、自装置の下り方向に連結されている他の中継装置30を判断し、これらの他の中継装置30それぞれに対して直接通信を試みて、直接通信の可否を確認し、その確認結果をホスト装置20へ送信する。またこのとき、下り方向の他の各中継装置30に対して連結情報60をともに送信して、直接通信の可否の確認を要求する。
【0059】
経路表取得部504は、ホスト装置20から受信した経路表50を取得し、自装置用経路表606として更新記憶する。
【0060】
データ送信制御部506は、所定周期で車両センサデータ群608を、ホスト装置20へ送信する制御を行う。具体的には、データ送信制御部506は、ホスト装置20を宛先として、自装置用経路表606を用いたマルチホップ通信により、車両センサデータ群608を送信する。
【0061】
記憶部600−1は、例えばハードディスクやROM、RAM等で実現される記憶装置であり、処理部500−1が中継装置30を統合的に制御するためのシステムプログラムや、各種機能を実現するためのプログラムやデータ等を記憶しているとともに、処理部500−1の作業領域として用いられ、処理部500−1が各種プログラムに従って実行した演算結果等が一時的に格納される。記憶部600−1には、第1中継制御プログラム602と、連結情報604と、自装置用経路表606と、車両センサデータ群608と、が記憶される。
【0062】
<処理の流れ>
図14は、第1実施例における通信ネットワーク構築処理の流れを説明するフローチャートである。
図14では、左側にホスト装置20の処理を示し、右側に中継装置30の処理を示している。この処理は、ホスト装置20−1の処理部200−1が第1ホスト制御プログラム302を実行し、中継装置30−1の処理部500−1が第1中継制御プログラム602を実行することで実現される処理であり、列車が編成されて運行を開始する際の“初回”の処理と、その後、増解結がなされる毎に実行される“増解結ごと”の処理との2つに分けられる。
【0063】
“初回”の処理は、ホスト装置20のステップA1〜A11、中継装置30のステップB1〜B5の処理である。先ず、初回の処理では、ホスト装置20の連結情報取得部202が連結情報60を取得すると(ステップA1)、初回の通信ネットワークの構築を開始する。すなわち、通信行列生成部204が、取得した連結情報60を参照して自列車を構成する中継装置30を判断し、判断した各中継装置30との直接通信の可否を確認するとともに、各中継装置30に連結情報60を送信して、下り方向の各装置との直接通信の確認を要求する(ステップA3)。すると、中継装置30では、通信状況確認部502が、ホスト装置20からの直接通信の確認要求に応じて、ともに受信した連結情報60を参照して下り方向の中継装置30を判断し、判断した各中継装置30との直接通信の可否を確認し(ステップB1)、確認結果をホスト装置20へ送信する(ステップB3)。そして、ホスト装置20では、通信行列生成部204が、各中継装置30との直接通信の確認結果と、各中継装置30から受信した中継装置30間の直接通信の確認結果とから、通信行列70を生成する(ステップA5)。
【0064】
次いで、経路表作成部206が、生成された通信行列70に従って、ホスト装置20の経路表50を作成する(ステップA7)。また、経路表作成部206は、生成された通信行列70に従って、各中継装置30の経路表50を作成し(ステップA9)、経路表送信制御部212が、作成された各中継装置30の経路表50を、該当する中継装置30へ送信する(ステップA11)。すると、中継装置30では、経路表取得部504が、ホスト装置20から受信した経路表を更新記憶する(ステップB5)。
【0065】
ここまでで初回の通信ネットワークの構築が完了する。その後、列車の運行が開始される。運行が開始されると、各中継装置30は、当該中継装置30が搭載された車両(中継車両)のセンサデータを車両センサデータ群608として蓄積することと、蓄積した車両センサデータ群608を、自装置用経路表606に基づき、所定周期でホスト装置20宛てにマルチホップ通信することと、を実行する。ホスト装置20では、各中継装置30から送信されてくる車両センサデータ群608とホスト装置20が搭載された車両(ホスト車両)のセンサデータ群とを集約して集約センサデータ群314として蓄積記憶し、所定のタイミングで外部装置へ送信する。
【0066】
その後、車両の増解結が行われる度に、“増解結ごと”の通信ネットワークの構築が実行される。“増解結ごと”の処理は、ホスト装置20のステップA12〜A23、中継装置30のステップB7の処理である。
【0067】
まず、増解結の実施を、運転台からの指示操作や、新たな連結情報60の入力がなされることで判断する(ステップA12)。増解結する場合(ステップA12:YES)、ホスト装置20の連結情報取得部202が、増解結後の編成についての連結情報60(新規連結情報)を取得すると(ステップA13)、通信ネットワークの再構築を開始する。すなわち、第1通信行列更新部208が、取得した連結情報60を参照し、無線通信の基本性能に基づき、増解結後の編成における各装置間の直接通信の可否を判断して、仮の通信行列を生成する(ステップA15)。次いで、前回の通信行列70に基づいて、各装置間の直接通信の可否を補正して、仮の通信行列を更新する(ステップA17)。
【0068】
続いて、経路表更新部210が、更新後の通信行列70に従って、ホスト装置20の経路表50を作成して更新記憶する(ステップA19)。また、経路表更新部210は、各中継装置30の経路表50を作成し(ステップA21)、経路表送信制御部212が、生成された各中継装置30の経路表50を、該当する中継装置30へ送信する(ステップA23)。すると、中継装置30では、経路表取得部504が、ホスト装置20から受信した経路表50を更新記憶する(ステップB7)。
【0069】
これで増解結時の通信ネットワークの構築が完了する。その後、新たな車両編成で列車の運行が開始されるが、運行が開始された後のセンサデータの集約等の処理は、始発による運行開始後と同じである。
【0070】
[第2実施例]
次に、第2実施例を説明する。第2実施例は、車両の増解結後における通信行列の更新方法が、第1実施例と異なる。なお、上述の第1実施例と同一の構成要素については同符号を付し、詳細な説明を省略する。
【0071】
第2実施例では、増解結前の通信行列で定められる各装置間の直接通信の可否を、増解結後の編成における同一の連結順序の装置間に適用して、通信行列を更新する。すなわち、増解結前の車両10の位置に、増解結後の新たな車両10が入れ替わって位置したとみなす。そして、増解結前後で重複する位置の装置については、増解結前の各装置間の直接通信の可否を、増解結後の重複する位置の各装置間にそのまま適用し、増解結後に重複しない位置の車両については、無線通信の基本性能に基づく所定のアルゴリズムに基づき、他の装置との間の直接通信の可否を判断して、通信行列を生成する。
【0072】
具体的に説明する。
図15は、増解結後によって編成車両数が減少する一例である。
図15では、増解結前は5両編成であった列車が、4両目の車両10cが解結されて、増解結後は4両編成となっている。つまり、増解結前後において、車両数として4両が重複しており、重複した車両10のうち、4両目の車両10cが車両10dに入れ替わっている。
【0073】
この場合には、
図16に示すように、増解結前の通信行列70における、増解結の前後で重複する4両分である1両目から4両目までの各装置間の直接通信の可否を、増解結後の1両目から4両目までの各装置間の直接通信の可否として、そのまま引き継ぐ。それとともに、増解結の前後で入れ替わった4両目については、増解結前の4両目である車両10cに搭載されていた中継装置30cを、増解結後に入れ替わった4両目の車両10dに搭載されている中継装置30dに置き換えて通信行列70を修正する。また、通信行列70のうち、増解結後に減少した5両目についての項目を削除する。
【0074】
図17は、増解結によって編成車両数が増加する一例である。
図17では、増解結前は4両編成であった列車が、車両10d,10eが増結されて、増解結後は6両編成となっている。つまり、増解結前後において、車両数として4両が重複しているとともに、重複車両数よりも5両目〜6両目が超過して増結されている。
【0075】
この場合には、
図18に示すように、増解結前の通信行列70における、増解結の前後で重複する4両分である1両目から4両目までの各装置間の直接通信の可否を、増解結後の1両目から4両目までの各装置間の直接通信の可否として、そのまま引き継ぐ。また、重複車両数を超過している5両目及び6両目である車両10d,10eそれぞれに搭載されている中継装置30d,30eについては、
図19に示すように、第1実施例において説明した無線通信の基本性能に基づく所定のアルゴリズムに基づいて、他の各装置との直接通信の可否を判断する。すなわち車両2つ分までは直接通信が可能であるとのアルゴリズムの下、直接通信の可否を判断する。
図19では、下り方向の直接通信のうち、送信先或いは送信元を中継装置30d、30eとした直接通信について矢印線で表している。
【0076】
<機能構成>
図20は、第2実施例におけるホスト装置20−2の機能構成図である。
図20によれば、ホスト装置20−2において、処理部200−2は、機能構成として区分した場合に、連結情報取得部202と、通信行列生成部204と、経路表作成部206と、第2通信行列更新部216と、経路表更新部210と、経路表送信制御部212と、データ集約部214とを有する。
【0077】
第2通信行列更新部216は、車両10の増解結による通信ネットワークの再構築時に、増解結後の自列車についての通信行列70を生成する。すなわち、連結情報取得部202によって取得された最新の連結情報60を参照して、自列車に含まれる中継装置30やその連結順序を把握する。そして、増解結前後で重複する位置の装置については、増解結前の各装置間の直接通信の可否を、増解結後の重複する位置の各装置間にそのまま適用し、増解結後に重複しない位置の車両については、無線通信の基本性能に基づく所定のアルゴリズムに基づき、他の装置との間の直接通信の可否を判断して、通信行列を生成する。生成した通信行列70は、例えば該当する連結情報60の識別番号と対応付けて、通信行列DB304として蓄積記憶される。
【0078】
中継装置30については、第1実施例と同様の機能構成である。
【0079】
<処理の流れ>
図21は、第2実施例における通信ネットワーク構築処理の流れを説明するフローチャートである。
図21では、左側にホスト装置20の処理を示し、右側に中継装置30の処理を示している。この処理は、ホスト装置20−2の処理部200−2が第1ホスト制御プログラム316を実行し、第1実施例と同様に、中継装置30−1が第1中継制御プログラム602を実行することで実現される処理である。また、第1実施例と同様に、列車が編成されて運行を開始する際の“初回”の処理と、その後、増解結がなされる毎に実行される“増解結ごと”の処理との2つに分けられる。
【0080】
“初回”の処理は、ホスト装置20のステップA1〜A11、中継装置30のステップB1〜B5の処理であり、第1実施例と同様である。
【0081】
その後、車両10の増解結が行われる度に、“増解結ごと”の通信ネットワークの構築が実行される。“増解結ごと”の処理は、ホスト装置20のステップA12〜A27、中継装置30のステップB7の処理である。中継装置30の処理は、第1実施例と同様である。
【0082】
先ず、増解結の実施を判断し(ステップA12)、増解結する場合(ステップA12:YES)、ホスト装置20の連結情報取得部202が、増解結後の編成についての連結情報60を取得すると(ステップA13)、通信ネットワークの再構築を開始する。すなわち、第2通信行列更新部216が、取得した連結情報60を参照し、増解結の前後で重複する車両10に搭載される装置については、増解結前の各装置間の直接通信の可否を引き継いで、通信行列70を生成する(ステップA25)。また、増解結後に超過する車両10に搭載される装置については、無線通信の基本性能に基づき、他の各装置との直接通信の可否を判断して、通信行列に追加して更新する(ステップA27)。
【0083】
続いて、経路表更新部210が、更新後の通信行列70に従って、ホスト装置20の経路表50を作成して更新記憶する(ステップA19)。また、経路表更新部210は、各中継装置30の経路表50を作成し(ステップA21)、経路表送信制御部212が、生成された各中継装置30の経路表50を、該当する中継装置30へ送信する(ステップA23)。すると、中継装置30では、経路表取得部504が、ホスト装置20から受信した経路表50を更新記憶する(ステップA25)。
【0084】
これで、増解結時の通信ネットワークの構築が完了する。その後、新たな車両編成で列車の運行が開始されるが、運行が開始された後のセンサデータの集約等の処理は、始発による運行開始後と同じである。
【0085】
[第3実施例]
次に、第3実施例を説明する。第3実施例は、中継装置30の経路表50は当該中継装置30自身が作成することが、第1実施例及び第2実施例と異なる。なお、上述の第1実施例及び第2実施例と同一の構成要素については同符号を付し、詳細な説明を省略する。
【0086】
(A)初回の通信ネットワークの構築時
先ず、列車の編成直後における初回の通信ネットワークの構築時について説明する。ホスト装置20は、第1実施例と同様に、自列車における各中継装置30との直接通信の可否を確認する(
図5参照)。この結果、通信行列70は、送信元がホスト装置20である一行についてのみ、値が格納された状態となる。
【0087】
次いで、
図22に示すように、ホスト装置20は、中継装置30に対して、連結情報60と、個別通信可能情報80とを送信し、経路表50の作成を行わせる。個別通信可能情報80は、通信行列70から判断される当該中継装置30が直接通信可能な装置の情報であり、通信行列70の一部といえる。この経路表50の作成指示は、ホスト装置20から近い中継装置30から順に対象として行う。また、通信行列70のうち、中継装置30間の直接通信の可否については、後述のように、中継装置30から受信した確認結果に基づいて値が格納される。このため、個別通信可能情報80は、対象の中継装置30からみて上り方向の各装置との直接通信の可否の情報となる。
【0088】
具体的には、ホスト装置20は、先ずは2両目の中継装置30aを対象とし、中継装置30aに対して、連結情報60と、ホスト装置20を示す個別通信可能情報80とを送信する。中継装置30aは、受信した連結情報60を参照して、自装置からみて下り方向に連結されている他の中継装置30が中継装置30b〜30eであると判断し、これらの中継装置30b〜30eそれぞれと直接通信を試みて、直接通信の可否を確認する。そして、中継装置30aは、この直接通信の可否の確認結果と、ホスト装置20から受信した個別通信可能情報80と、をもとに、自装置の経路表50を作成する。すなわち、自装置からみて上り方向の各装置を宛先とする第1ホップ先は、ホスト装置20から受信した個別通信可能情報80に基づいて決定し、下り方向の各装置を宛先とする第1ホップ先は、自装置で確認した直接通信の可否に基づいて決定する。
【0089】
また、中継装置30aは、下り方向の各中継装置30との直接通信の可否の確認結果を、ホスト装置20へ送信する。ホスト装置20は、中継装置30aから受信した直接通信の可否の確認結果をもとに、通信行列70において、中継装置30aを送信元とする一行を更新する。3両目以降の中継装置30についても同様である。
【0090】
(B)増解結後の通信ネットワークの再構築
次に、増解結に伴う通信ネットワークの再構築時について説明する。ホスト装置20は、上述の第1実施例或いは第2実施例の方法によって、増解結後の編成についての通信行列70を更新する。そして、更新後の通信行列70に従って、自装置の経路表50を作成し、更新記憶する。
【0091】
また、ホスト装置20は、
図23に示すように、中継装置30に対して、連結情報60と個別通信可能情報80とを送信し、経路表50の作成を行わせる。個別通信可能情報80は、更新後の通信行列70から判断される当該中継装置30が直接通信可能な装置の情報であるが、通信行列70の全体が更新されているため、当該中継装置30からみて上り方向及び下り方向の両方向の装置を含んでいる。そして、中継装置30は、ホスト装置20から受信した個別通信可能情報80をもとに、自装置の経路表50を作成する。
【0092】
<機能構成>
図24は、第3実施例におけるホスト装置20−3の機能構成図である。
図24によれば、ホスト装置20−3において、処理部200−3は、機能構成として区分した場合に、連結情報取得部202と、通信行列生成部204と、自装置経路表作成部218と、第1通信行列更新部208と、自装置経路表更新部220と、経路表作成指示部222と、データ集約部214とを有する。なお、第1通信行列更新部208は、第2通信行列更新部216に置き換えることもできる。
【0093】
自装置経路表作成部218は、始発となる編成直後における初回の通信ネットワークの構築時に、通信行列生成部204によって生成された通信行列70に基づいて、自装置(ホスト装置20)の経路表50を作成する。生成した経路表50は、ホスト装置用経路表308として記憶される。
【0094】
自装置経路表更新部220は、車両10の増解結による通信ネットワークの再構築時に、第1通信行列更新部208によって生成された通信行列に従って、自装置(ホスト装置20)の経路表を作成する。生成した経路表は、ホスト装置用経路表308として更新記憶される。
【0095】
経路表作成指示部222は、自列車に含まれる各中継装置30に対して、当該中継装置30の経路表50の作成を行わせる。すなわち、編成直後における初回の通信ネットワークの構築時には、中継装置30それぞれに対して、通信行列生成部204によって生成された通信行列70をもとに、当該中継装置30と直接通信が可能な装置を判断して個別通信可能情報80を生成し、この個別通信可能情報80と連結情報60とを、当該中継装置30に送信する。また、車両10の増解結による通信ネットワークの再構築時には、中継装置30それぞれに対して、第1通信行列更新部208によって生成された通信行列70をもとに、当該中継装置30と直接通信が可能な装置を判断して個別通信可能情報80を生成し、この個別通信可能情報80と連結情報60とを、当該中継装置30に送信する。
【0096】
記憶部300−3には、第3ホスト制御プログラム318と、通信行列DB304と、連結情報DB306と、ホスト装置用経路表308と、無線通信性能情報312と、センサデータ群314と、が記憶される。
【0097】
図25は、第3実施例における中継装置30−3の機能構成図である。
図25によれば、中継装置30−3において、処理部500−3は、通信状況確認部502と、自装置経路表作成部508と、データ送信制御部506とを有する。
【0098】
自装置経路表作成部508は、自装置(中継装置30)の経路表50を作成する。すなわち、編成直後における初回の通信ネットワークの構築時には、ホスト装置20から受信した連結情報60をもとに、自装置からみて上り方向及び下り方向の装置とその連結順序を判断する。そして、ホスト装置20から受信した個別通信可能情報80である上り方向の他の各装置との直接通信の可否と、通信状況確認部502による下り方向の他の各中継装置30との直接通信の確認結果とをもとに、自装置の経路表50を作成する。
【0099】
また、車両10の増解結による通信ネットワークの再構築時には、ホスト装置20から受信した連結情報60をもとに、自装置からみて上り方向及び下り方向の装置とその連結順序を判断する。そして、ホスト装置20から受信した個別通信可能情報80である上り方向及び下り方向の他の各装置との直接通信の可否とをもとに、自装置の経路表50を作成する。
【0100】
記憶部600−3には、第3中継制御プログラム610と、連結情報60と、中継装置用経路表310と、車両センサデータ群314と、が記憶される。
【0101】
<処理の流れ>
図26は、第3実施例における通信ネットワーク構築処理を説明するフローチャートである。
図26では、左側にホスト装置20の処理を示し、右側に中継装置30の処理を示している。この処理は、ホスト装置20−3の処理部200−3が第3ホスト制御プログラム318を実行し、中継装置30−3の処理部500−3が第3中継制御プログラム610を実行することで実現される処理であり、列車が編成されて運行を開始する際の“初回”の処理と、その後、増解結がなされる毎に実行される“増解結ごと”の処理との2つに分けられる。
【0102】
“初回”の処理は、ホスト装置20のステップA1〜3,A33〜A37、中継装置30のB9〜B15の処理である。先ず、“初回”の処理では、ホスト装置20の連結情報取得部202が連結情報を取得すると(ステップA1)、初回の通信ネットワークの構築を開始する。すなわち、通信行列生成部204が、取得した連結情報60を参照して自列車を構成する中継装置30を判断し、判断した各中継装置30との直接通信の可否を確認する(ステップA3)。そして、この直接通信の確認結果にもとづき、通信行列70におけるホスト装置20についての行部分を更新する(ステップA29)。次いで、自装置経路表作成部218が、自装置(ホスト装置20)の経路表50を作成する(ステップA31)。
【0103】
続いて、経路表作成指示部222が、自装置に近い順に、各中継装置30に対して経路表50の作成を行わせる。すなわち、通信行列70を参照して、中継装置30と直接通信が可能な装置を判断して個別通信可能情報80を生成し(ステップA33)、生成した個別通信可能情報80と連結情報60とを、中継装置30へ送信する(ステップA35)。すると、中継装置30では、通信状況確認部502が、受信した連結情報60を参照して下り方向の中継装置30を判断し、判断した各中継装置30との直接通信の可否を確認し(ステップB11)、確認結果をホスト装置20へ送信する(ステップB13)。
【0104】
そして、自装置経路表作成部508が、下り方向の各装置との直接通信の確認結果と、ホスト装置20から受信した個別通信可能情報80とをもとに、自装置(中継装置30)の経路表50を作成し、記憶する(ステップB15)。一方、ホスト装置20では、通信行列生成部204が、中継装置30から受信した直接通信の確認結果をもとに、通信行列70における当該中継装置30についての行部分を更新する(ステップA37)。
【0105】
ここまでで初回の通信ネットワークの構築が完了する。その後、列車の運行が開始される。列車の運行が開始された後のセンサデータの集約等の処理は、第1実施例と同様である。
【0106】
その後、車両10の増解結が行わる度に、“増解結ごと”の通信ネットワークの構築が実行される。“増解結ごと”の処理は、ホスト装置20のステップA12〜A19,A39〜A41、中継装置30のステップB17の処理である。
【0107】
先ず、増解結の実施を判断し(ステップA12)、増解結する場合(ステップA12:YES)、ホスト装置20の連結情報取得部202が、増解結後の編成についての連結情報60を取得すると(ステップA13)、通信ネットワークの再構築を開始する。すなわち、第1通信行列更新部208が、増解結後の編成についての通信行列70を作成する(ステップA15〜A17)。
【0108】
続いて、自装置経路表更新部220が、更新後の通信行列70に従って、自装置(ホスト装置20)の経路表50を作成して更新記憶する(ステップA19)。また、経路表作成指示部222が、各中継装置30に対して、経路表50の作成を行わせる。すなわち、通信行列70を参照して、中継装置30についての個別通信可能情報80を生成し(ステップA39)、この個別通信可能情報80と連結情報60とを、中継装置30へ送信する(ステップA41)。すると、中継装置30では、自装置経路表作成部508が、ホスト装置20から受信した連結情報60をもとに上り方向及び下り方向の装置とその連結順序を判断し、個別通信可能情報80をもとに自装置(中継装置30)の経路表50を作成し、更新記憶する(ステップB17)。
【0109】
これで増解結時の通信ネットワークの構築が完了する。その後、新たな車両編成で列車の運行が開始されるが、運行が開始された後のセンサデータの集約等の処理は、始発による運行開始後と同じである。
【0110】
[作用効果]
このように、本実施形態によれば、複数の列車が接近している場合や、車両の増解結が行われた場合であっても、自列車のワイヤレスセンサネットワークに係る通信ネットワークを比較的簡単に構築可能である。また、中継装置30が、記憶している経路表50に従って通信先までの経路を探索するため、経路探索が容易になるとともに、通信先の装置までのホップ数(経由する装置数)ができるだけ少ない経路を選択することができ、中継装置30の消費電力の削減につながる。
【0111】
すなわち、第1実施例及び第2実施例によれば、ホスト装置20は、増解結後の編成についての連結情報60(新規連結情報)を用いて、通信行列70を更新し、更新した通信行列70に従って、自装置(ホスト装置20)の経路表50を更新するとともに、各中継装置30の経路表50を作成し、作成した経路表50を該当する中継装置30へ送信する。
【0112】
また、第3実施例によれば、ホスト装置20は、増解結後の編成についての連結情報60(新規連結情報)を用いて、通信行列70を更新し、更新した通信行列70に従って、自装置(ホスト装置20)を更新するとともに、各中継装置30に、当該中継装置30が直接通信可能な装置の情報である個別通信可能情報80、及び、新規連結情報を送信する。そして、中継装置30は、ホスト装置20から受信した個別通信可能情報80及び新規連結情報をもとに経路表50を作成し、更新記憶する。
【0113】
[変形例]
なお、本発明の適用可能な実施形態は上述の実施形態に限定されることなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【0114】
(A)中継装置30による直接通信の可否の確認
また、第3実施例において、中継装置30が、下り方向の各装置との直接通信が可能であるか否かの確認を行って、その確認結果を通信行列70に反映させることとしても良い。そして、確認結果が受信した個別通信可能情報80と異なる場合には、その差異をホスト装置20に送信することとしても良い。
【0115】
(B)
第3実施例において、ホスト装置20は、各中継装置30に、増解結後の連結情報60(新規連結情報)のみを送信することとしても良い。中継装置30は、新規連結情報から他装置との連結順序を判断し、予め定められた自装置の無線通信の基本性能をもとに、他の装置との直接通信の可否を判断して、経路表50を作成する。
【0116】
(C)
第1実施例〜第3実施例のそれぞれにおいて、ホスト装置20における連結情報60の取得に伴うネットワークの構築/再構築は、操作部102を介した外部指示によって開始しても良い。
【0117】
(D)
また、列車に対して本発明を適用する実施形態としたが、1本の列車を複数編成で構成する場合における各編成に本発明を適用することとしても良い。