(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明に係る実施形態について、図面を参照して説明する。本出願書類におけるいずれの図についても、わかりやすくするために、適宜省略し又は誇張して模式的に描かれている。同一の構成要素については、同一の符号を付して説明を適宜省略する。なお、本出願書類において、「樹脂成形」とは、成形型により樹脂を成形することを意味し、成形型により封止樹脂部を成形する「樹脂封止」を含む概念の表現である。また、「樹脂成形品」とは、少なくとも樹脂成形された樹脂部分を含む製品を意味し。後述するような基板に装着されたチップが成形型により樹脂成形されて樹脂封止された形態の封止済基板を含む概念の表現である。
〔実施形態1〕
【0011】
(樹脂成形装置の構成)
本発明に係る実施形態1の樹脂成形装置の構成について、
図1を参照して説明する。
図1に示される樹脂成形装置1は、例えば、圧縮成形法を使用した樹脂成形装置である。樹脂材料として流動性樹脂である液状樹脂を使用する例を示す。
【0012】
樹脂成形装置1は、基板供給・収納モジュール2と、3つの成形モジュール3A、3B、3Cと、樹脂供給モジュール4とを、それぞれ構成要素として備える。構成要素である基板供給・収納モジュール2と、成形モジュール3A、3B、3Cと、樹脂供給モジュール4とは、それぞれ他の構成要素に対して、互いに着脱されることができ、かつ、交換されることができる。
【0013】
基板供給・収納モジュール2には、封止前基板5を供給する封止前基板供給部6と、封止済基板7を収納する封止済基板収納部8と、封止前基板5及び封止済基板7を受け渡しする基板載置部9と、封止前基板5及び封止済基板7を搬送する基板搬送機構10とが設けられる。基板搬送機構10には、封止前基板5が成形型の型面に供給された時の位置決め状態を撮像するカメラ11が設けられる。撮像素子としてCCD(Charge Coupled Device )イメージセンサ又はCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor )イメージセンサがカメラ11に搭載される。所定位置S1は、基板搬送機構10が動作しない状態において待機する位置である。
【0014】
各成形モジュール3A、3B、3Cには、昇降可能な下型12と、下型12に相対向して配置された上型(図示なし、
図2参照)とが設けられる。上型と下型12とは併せて成形型を構成する。各成形モジュール3A、3B、3Cは、上型と下型12とを型締め及び型開きする型締機構13を有する(図の二点鎖線で示される部分)。樹脂材料である液状樹脂が供給され硬化する空間であるキャビティ14が下型12に設けられる。下型12には、長尺状の離型フィルムを供給する離型フィルム供給機構15が設けられる。なお、ここでは、下型12にキャビティ14が設けられた構成について説明するが、キャビティは上型に設けられても良いし、上型と下型との両方に設けられても良い。
【0015】
樹脂供給モジュール4には、成形型に液状樹脂を供給するディスペンサ16とディスペンサ16を搬送する樹脂搬送機構17とが設けられる。ディスペンサ16は先端部に液状樹脂を吐出する樹脂吐出部18を備える。所定位置R1は、樹脂搬送機構17が動作しない状態において待機する位置である。
【0016】
図1に示されるディスペンサ16は、予め主剤と硬化剤とが混合された液状樹脂を使用する1液タイプのディスペンサである。主剤としては、例えば、熱硬化性を有するシリコーン樹脂又はエポキシ樹脂が使用される。液状樹脂を吐出する際に主剤と硬化剤とを混合して使用する2液混合タイプのディスペンサを使用することもできる。
【0017】
樹脂供給モジュール4には制御部19が設けられる。制御部19には、基板搬送機構10に設けられたカメラ11が撮像した画像データを記憶するメモリ20、撮像した画像データに基づき画像処理や演算処理などのデータ処理を行うプロセッサ21及び樹脂成形装置1を制御するために必要な機能などが組み込まれる。
【0018】
制御部19は、封止前基板5及び封止済基板7の搬送、封止前基板5の位置決め、液状樹脂の供給、成形型の加熱、成形型の開閉などを制御する。言い換えれば、制御部19は、基板供給・収納モジュール2、成形モジュール3A、3B、3C、樹脂供給モジュール4における各動作の制御を行う。
【0019】
制御部19が配置される位置はどこでも良く、基板供給・収納モジュール2、成形モジュール3A、3B、3C、樹脂供給モジュール4のうちの少なくとも一つに配置することもできるし、各モジュールの外部に配置することもできる。また、制御部19は、制御対象となる動作に応じて、少なくとも一部を分離させた複数の制御部として構成することもできる。
【0020】
(樹脂成形装置の動作)
図1〜
図2を参照して、樹脂成形装置1において、基板に装着されたチップを樹脂成形して樹脂封止する動作について説明する。樹脂成形装置1の動作として成形モジュール3Bを使用する場合について説明する。
【0021】
最初に、例えば、チップ22(
図2(a)参照)が装着された封止前基板5を、チップ22が装着された面を下側にして、封止前基板供給部6から基板載置部9に封止前基板5を送り出す。次に、基板搬送機構10を所定位置S1から+Y方向に移動させて基板載置部9から封止前基板5を受け取る。基板搬送機構10を所定位置S1に戻す。
【0022】
次に、例えば、基板搬送機構10を所定位置S1から成形モジュール3Bの所定位置M1まで+X方向に移動させる。次に、成形モジュール3Bにおいて、基板搬送機構10を+Y方向に移動させて上型23(
図2(a)参照)の下方の所定位置C1に停止させる。上型23と下型12とは併せて成形型24(
図2(a)参照)を構成する。次に、基板搬送機構10を上昇させて封止前基板5を上型23の型面に供給する。
【0023】
次に、位置決め機構(
図3(a)参照)を使用して封止前基板5を上型23の型面の所定位置に位置決めする。封止前基板5が、上型23の型面の所定位置に正常に位置決めされているか否か、基板搬送機構10に設けられたカメラ11を用いて検証することができる。封止前基板5が上型23の型面の所定位置に正常に位置決めされているか否かを判断する動作は、後述する(
図3〜
図5参照)。基板搬送機構10を基板供給・収納モジュール2の所定位置S1まで戻す。
【0024】
次に、樹脂供給モジュール4の所定位置R1から成形モジュール3Bの所定位置M1まで樹脂搬送機構17を使用してディスペンサ16を−X方向に移動させる。次に、成形モジュール3Bにおいて、樹脂搬送機構17を使用して所定位置M1から所定位置C1までディスペンサ16を+Y方向に移動させる。
図2(a)に示されるように、離型フィルム供給機構15(
図1参照)によって下型12のキャビティ14には離型フィルム25が供給されている。次に、ディスペンサ16の樹脂吐出部18からキャビティ14に所定量の液状樹脂26を吐出する。液状樹脂26の吐出終了後、樹脂搬送機構17を所定位置R1に戻す。
【0025】
次に、
図2(b)に示されるように、型締機構13(
図1参照)によって下型12を上昇させ、上型23と下型12とを型締めする。型締めすることによって、封止前基板5に装着されたチップ22を、キャビティ14に供給された液状樹脂26に浸漬させる。このとき、下型12に設けられたキャビティ底面部材(図示なし)を使用して、キャビティ14内の液状樹脂26に所定の樹脂圧力を加えることができる。
【0026】
なお、型締めする過程において、真空引き機構(図示なし)を使用してキャビティ14内を吸引してもよい。このことによって、キャビティ14内に残留する空気や液状樹脂26中に含まれる気泡などが成形型24の外部に排出される。加えて、キャビティ14内が所定の真空度に設定される。
【0027】
次に、下型12に設けられたヒータ(図示なし)を使用して、液状樹脂26を硬化させるために必要な時間だけ、液状樹脂26を加熱する。液状樹脂26を硬化させて硬化樹脂27を成形する。このことによって、封止前基板5に装着されたチップ22を、キャビティ14の形状に対応して成形された硬化樹脂27によって樹脂封止する。
【0028】
次に、
図2(c)に示されるように、液状樹脂26を硬化させた後に、型締機構13を使用して上型23と下型12とを型開きする。上型23の型面には樹脂封止された成形品28(封止済基板7)が固定されている。
【0029】
次に、基板供給・収納モジュール2の所定位置S1から上型23の下方の所定位置C1に基板搬送機構10を移動させて、封止済基板7を受け取る。次に、基板搬送機構10を移動させ、基板載置部9に封止済基板7を受け渡す。基板載置部9から封止済基板収納部8に封止済基板7を収納する。この段階において、樹脂封止が完了する。
【0030】
樹脂成形装置1において、制御部19(
図1参照)が、封止前基板5の供給、封止前基板5の位置決め、離型フィルム25の供給、樹脂搬送機構17の移動、液状樹脂26の吐出、上型23と下型12との型締め及び型開き、封止済基板7の収納などの動作を制御する。
【0031】
(基板の位置決め動作及び検証動作)
図3〜
図5を参照して、成形型24に供給された封止前基板5の位置決め動作と、供給された封止前基板5が正常に位置決めされているか否かを検証する動作とについて説明する。本実施形態においては、成形型24の上型23に封止前基板5を供給する場合を示す。
【0032】
図3(a)に示されるように、上型23の型面(下面)には、例えば、X方向に沿う基準マーク29とY方向に沿う基準マーク30とがそれぞれ設けられる。基準マーク29、30は、上型23の型面に供給された封止前基板5が正常に位置決めされているか否かを検証するための基準マークである。基準マーク29、30は、基板搬送機構10に設けられたカメラ11で認識できるものであれば良く、直線状、点状、曲線状などのパターン形状、表面の凹凸形状及び色などは特に限定されない。実施形態1においては、直線状の凸パターンを基準マークとして使用する例を示す。なお、基準マークを凸状パターンとした場合には、その凸部の高さを封止前基板5の厚さよりも小さくしておけば、成形型24の型締め時に妨げとならない。基準マークを凸状パターンとし、その凸部の高さよりも薄い封止前基板5を用いる可能性がある場合には、凸部と対向する下型12の型面の部分に凹部を設ければよい。
【0033】
本実施形態の上型23においては、基準マーク29が設けられた型面と反対側の型面に、封止前基板5をY方向に位置決めするための位置決め部材である位置決めピン31が設けられる。基準マーク30が設けられた型面と反対側の型面に、封止前基板5をX方向に位置決めするための位置決め部材である位置決めピン32が設けられる。位置決めピン31及び32は、例えば、X方向及びY方向に沿って少なくとも2個設けられる。
【0034】
図3(b)に示されるように、成形型24が型開きされた状態では、位置決めピン31、32は上型23の型面から突出している。成形型24が型締めされた状態では、位置決めピン31、32は下型12の型面に押し上げられて上型23の内部に収納されるように構成される。それには、例えば、位置決めピン31、32を、ばね等の弾性部材により支持する構成とすればよい。また、位置決めピン31、32を可動させず、下型12に設けられた開口穴に退避させるようにしても良い。
【0035】
図3を参照して、封止前基板5を上型23の型面の所定位置に位置決めする動作について説明する。まず、
図3(b)に示されるように、封止前基板5を収容した基板搬送機構10を上型23と下型12との間の所定位置まで移動させる。次に、基板搬送機構10を上昇させ、基板搬送機構10から上型23の型面に封止前基板5を受け渡す。次に、
図3(a)に示されるように、上型23に設けられた位置決め機構33及び34を使用して、封止前基板5の端面をそれぞれ位置決めピン31及び32に押し当てる。なお、位置決め機構33及び34は、基板搬送機構10に設けられてもよい。
【0036】
本実施形態においては、封止前基板5の長手方向がX方向に沿うようにして配置され、封止前基板5の短手方向がY方向に沿うようにして配置された場合を示す。以下、封止前基板5の長手方向に沿う端面を封止前基板5のX方向に沿う端面という。同様に、封止前基板5の短手方向に沿う端面を封止前基板5のY方向に沿う端面という。
【0037】
まず、位置決め機構33を使用して封止前基板5のX方向に沿う端面を2個の位置決めピン31に押し当てる。このことによって、封止前基板5のX方向に沿う端面が、上型23の型面の所定位置に位置決めされる。次に、位置決め機構34を使用して封止前基板5のY方向に沿う端面を2個の位置決めピン32に押し当てる。このことによって、封止前基板5のY方向に沿う端面が、上型23の型面の所定位置に位置決めされる。
【0038】
位置決め機構33及び34を使用して封止前基板5を位置決めピン31及び32に押し当てることによって、封止前基板5を上型23の型面の所定位置に位置決めする。封止前基板5を所定位置に位置決めした後に、吸着機構(図示なし)によって封止前基板5を真空吸着して上型23の型面に固定する。この状態で、封止前基板5の上型23への位置決めが完了する。
【0039】
この場合には、上型23に設けられた位置決め機構33及び34を使用して、封止前基板5のY方向及びX方向への位置決めをそれぞれ個別に行った。これに限らず、位置決め機構33及び34を連動させる構成にすることができる。このことによって、封止前基板5のY方向及びX方向への位置決めを同時に行うことができる。
【0040】
封止前基板5としては、例えば、リードフレーム、プリント基板、セラミックス基板、フィルムベース基板などが使用される。封止前基板5には、必要に応じて位置合わせ用のマーク35が適宜設けられる。封止前基板5に設けられた位置合わせ用のマーク35を、封止前基板5の位置決めを検証するためのマークとして用いることができる。
図3においては、封止前基板5の4隅にそれぞれ位置合わせ用のマーク35が設けられた例を示す。
【0041】
図4を参照して、上型23に供給された封止前基板5が正常に位置決めされているか否かを検証する動作ついて説明する。基本的な検証動作は次のようにして行われる。
【0042】
まず、基板搬送機構10に設けられたカメラ11を用いて、封止前基板5と基準マーク29とを含む領域、及び、封止前基板5と基準マーク30とを含む領域をそれぞれ撮像する。次に、カメラ11によって撮像されたそれぞれの画像データに基づき、封止前基板5と基準マーク29との間の距離、及び、封止前基板5と基準マーク30との間の距離をそれぞれ計測する。計測された距離を予め設定された許容範囲と比較して、許容範囲内であれば封止前基板5は正常に位置決めされていると判断し、成形型24を型締めして樹脂封止を行う。計測された距離が許容範囲から外れている場合には、封止前基板5は正常に位置決めされていないと判断し、次工程(型締め)へ進めることを停止する。
【0043】
以下、封止前基板5が正常に位置決めされているか否かを検証する動作を具体的に説明する。本実施形態では、例えば、
図4(a)に示されるように、封止前基板5のX方向に沿う端部の任意の位置P1と基準マーク29との間の距離Y1、及び、封止前基板5のY方向に沿う端部の任意の位置P2と基準マーク30との間の距離X2をそれぞれ計測することによって、封止前基板5が正常に位置決めされているか否かを検証する。
【0044】
まず、
図4(a)に示されるように、封止前基板5のX方向に沿う端部の位置P1と基準マーク29とを含む領域A1を撮像可能な位置に、基板搬送機構10に設けられたカメラ11を移動させる。その位置において、カメラ11により領域A1を撮像して画像データD1を取得する。取得した画像データD1を制御部19(
図1参照)に組み込まれたメモリ20(
図1参照)に保存する。
【0045】
次に、封止前基板5のY方向に沿う端部の位置P2と基準マーク30とを含む領域A2を撮像可能な位置にカメラ11を移動させる。その位置において、カメラ11により領域A2を撮像して画像データD2を取得する。取得した画像データD2を制御部19に組み込まれたメモリ20に保存する。
【0046】
次に、制御部19に組み込まれたプロセッサ21(
図1参照)を使用して、各領域A1、A2においてそれぞれ取得された画像データD1、D2をメモリ20から取り込み画像処理を行う。このことによって、封止前基板5のX方向に沿う端部の位置P1と基準マーク29との間の距離Y1、及び、封止前基板5のY方向に沿う端部の位置P2と基準マーク30との間の距離X2をそれぞれ計測することができる。具体的な画像処理の一例として、互いに対応する封止前基板5の端部と基準マーク29、30とのエッジをエッジ検出し、両者のエッジの間の距離を求めればよい。
【0047】
次に、プロセッサ21がそれぞれ計測された距離Y1及びX2を予め設定された基準値T0と比較する。ここで、基準値T0とは、封止前基板5が上型23の型面の所定位置に正常に位置決めされた時の封止前基板5の端部と基準マーク29及び30との間の設計上の距離(設計値)である。基準値T0としては、X方向及びY方向とも同じ値が設定されるものとする。
【0048】
図5を参照して、封止前基板5が上型23の型面に位置決めされた時に生じる3つの態様について説明する。3つの態様とは、(a)封止前基板5が正常に位置決めされた状態、(b)封止前基板5が正常に位置決めされず封止前基板5が位置決めピンに接触しなかった状態、(c)封止前基板5の位置決めに異常が発生している(位置決めピンに磨耗又は破損等による変形が発生している)状態である。
【0049】
図5においては、例えば、X方向に対して封止前基板5を位置決めした場合について、3つの態様を示す。
図5において、「T0」は、封止前基板5の端部と基準マーク30との間の正常な距離を示す基準値(設計値)、「d」は、各部材のばらつき及び計測の誤差などを含めて封止前基板5の位置決めに対して許容される許容値を示す。したがって、(T0−d)及び(T0+d)は、封止前基板5が正常に位置決めされた範囲を示す許容限界値になる。基準値T0及び許容値dは、X方向及びY方向とも同じ値を有する。この場合、X方向及びY方向のいずれにおいても、許容範囲は(T0−d)から(T0+d)となる。なお、ここでは、許容範囲を設定するのに、基準値T0に対してプラス側もマイナス側も同じ許容値dを設定したが、プラス側とマイナス側との許容値として異なる値を設定してもよい。
【0050】
図5(a)に示されるように、X方向に対して計測された距離X2が、(T0−d)≦X2≦(T0+d)であれば、封止前基板5は上型23の型面のX方向に対して正常に位置決めされていると判断する。言い換えれば、封止前基板5のY方向に沿う端面が、正常に位置決めピン32に接触している状態である。
【0051】
同様にして、Y方向に対して計測された距離Y1(
図4参照)が、(T0−d)≦Y1≦(T0+d)であれば、封止前基板5は上型23の型面のY方向に対して正常に位置決めされていると判断する。この場合には、X方向及びY方向に対して封止前基板5が正常に位置決めされていると判断し、次の工程である型締め工程へ進める。
【0052】
図5(b)に示されるように、X方向に対して計測された距離X2が、X2<(T0−d)であれば、封止前基板5は上型23の型面のX方向に対して正常に位置決めされていないと判断する。言い換えれば、封止前基板5のY方向に沿う端面が、位置決めピン32に接触していない状態である。この場合には、X方向に対して封止前基板5が正常に位置決めされていないと判断し、次の工程へ進めることを停止する。
【0053】
X方向に対して計測された距離X2が(T0−d)≦X2≦(T0+d)と正常であっても、Y方向に対して計測された距離Y1が、Y1<(T0−d)であれば、封止前基板5は上型23の型面のY方向に対して封止前基板5が正常に位置決めされていないと判断し、次の工程へ進めることを停止する。したがって、X方向及びY方向に対して計測された距離X2及びY1のうちいずれか一方の距離が許容限界値から外れている(X2、又は、Y1<(T0−d))場合には、封止前基板5が正常に位置決めされていないと判断し、次の工程へ進めることを停止する。封止前基板5が正常に位置決めされていないと判断した場合には、樹脂成形装置1の状態を確認した上で封止前基板5の位置決めを少なくとも1回再度実施する。
【0054】
図5(c)に示されるように、X方向に対して計測された距離X2が、X2>(T0+d)であれば、上型23に異常が発生している可能性があると判断する。この場合には、位置決めピン32に許容値dを超える磨耗又は破損などによる変形が発生している可能性がある。なぜなら、位置決めピン32に許容値dを超える変形が発生していない状態であれば、X2>(T0+d)となることはありえないからである。
【0055】
同様にして、Y方向に対して計測された距離Y1が、Y1>(T0+d)であれば、位置決めピン31に許容値dを超える磨耗又は破損などによる変形が発生している可能性があると判断する。X方向及びY方向に対して計測された距離X2及びY1のうちいずれか一方の距離が許容限界値から外れている(X2、又は、Y1>(T0+d))場合には、樹脂成形装置1に異常が発生していることを発信し、位置決めピン31、32の状態を確認して交換するなどの対応を実施する。
【0056】
このようにして、封止前基板5が上型23の型面に位置決めされた時に生じる3つの態様を判断することができる。したがって、封止前基板5が正常に位置決めされていると判断した場合には、次の工程へ進める。封止前基板5が正常に位置決めされていない、又は、成形型に異常が発生していると判断した場合には、次の工程へ進めることを停止する。このことによって、位置決めに起因する成形不良の発生を防止することができる。
【0057】
(基板の位置決め検証動作のデータ処理)
機能ブロック図である
図6とフローチャートである
図7を用いて、上述した基板の位置決め検証動作における基本的なデータ処理の一例について説明する。
【0058】
図6において、カメラCは
図1、
図3及び
図4のカメラ11に相当し、プロセッサはP
図1のプロセッサ21に相当し、メモリMは予め設定された許容範囲を記憶するメモリであり
図1のメモリ20と同じであっても良いし異なっていてもよい。情報出力部Oは、基板が正常に位置決めされていないと判断された場合に、その情報を外部に出力するものであり、例えば表示装置を用いることができ、樹脂成形装置1の操作部の表示装置を兼用してもよい。
【0059】
図7に示されるように、処理が開始すると、S11では、封止前基板5を上型23の型面において、位置決め機構33及び34による位置決め動作が実行される。この位置決め機構33及び34による位置決め動作は、プロセッサPにより指示されても良いし、制御部19内の別のプロセッサにより指示されても良い。
【0060】
S12では、プロセッサPが、カメラCに対して、基準マーク30と封止前基板5との距離X及び基準マーク29と封止前基板5との距離Yを計測するための画像データを要求する。カメラCは、撮像した画像データDをプロセッサPに出力する。プロセッサPは、画像データDをカメラCから取得し、画像データDを用いて、基準マーク30と封止前基板5との距離X及び基準マーク29と封止前基板5との距離Yを求める。なお、上述の説明では画像データDをメモリ20に取り込むこととしたが、ここでの説明のようにプロセッサPが画像データDをカメラCから直接取得しても良い。
【0061】
S13では、プロセッサPが、許容範囲の最小値(許容限界値の小さい方の値)である(T0−d)をメモリMから読み出し、距離X及びYとの比較を行う。比較の結果、距離X及びYのすべてが許容限界値(T0−d)よりも大きければS14に進み、距離X及びYの少なくも一つが許容限界値(T0−d)よりも小さければS15に進む。
【0062】
S14では、プロセッサPが、許容範囲の最大値(許容限界値の大きい方の値)である(T0+d)をメモリMから読み出し、距離X及びYとの比較を行う。比較の結果、距離X及びYのすべてが許容限界値(T0+d)よりも小さければ処理Aに進み、距離X及びYの少なくも一つが許容限界値(T0+d)よりも小さければ処理Bに進む。
【0063】
処理Aに進むことは、S13、14において、正常な基板の位置決めが行われたとプロセッサPが判断したことになる。
【0064】
処理Aは、位置決め動作及び位置決め検証動作を終了し、次の工程に進むためにプロセッサPが行う処理となる。具体的には、プロセッサPが、基板搬送機構10、位置決め機構33及び34を上型23と下型12との間から退避させ、次の型締め工程に進むように指示する。この際、プロセッサPが情報出力部Oに指示して、正常な基板の位置決めが完了して次の型締め工程へ移行する旨の情報を出力させても良い。
【0065】
処理Bに進むことは、S13及び14において、正常な基板の位置決めが行われておらず、位置決めピン31又は32が変形している可能性があるとプロセッサPが判断したことになる。言い換えれば、プロセッサPは、位置決めピン31又は32のあるべき位置に基板が食い込んだような状態になっていると判断したことになる。
【0066】
処理Bは、位置決め動作及び位置決め検証動作を終了し、樹脂成形のための工程を停止するためにプロセッサPが行う処理となる。具体的には、プロセッサPが、基板搬送機構10、位置決め機構33及び34を上型23と下型12との間から退避させ、次の型締め工程に進まないように指示する。この際、プロセッサPが情報出力部Oに指示して、例えば、正常な基板の位置決めができず、位置決めピン31又は32が変形しいている可能性がある又は位置決めピンの検査をうながす旨の情報を出力させる。出力する情報としては、正常な位置決め動作が行えなかったために、樹脂成形の工程を停止するなど、他の内容としても良い。
【0067】
S15に進むということは、位置決め機構33及び34による位置決め動作を行っても、封止前基板5が位置決めピン31又は32に接触していないと、プロセッサPが判断したことになる。
【0068】
S15では、プロセッサPが、予め設定した位置決め動作の回数に関する設定値を参照して、実行した位置決め動作の回数をカウントした値と比較する。なお、回数に関する設定値は、メモリMに記憶させておいても良いし、他のメモリに記憶させておいてもよい。比較の結果、カウント値が設定値より小さければ、再度位置決め動作を行う。ここでの位置決め動作は、位置決め機構33及び34の両方による位置決め動作を行わなくてもよい。S13の比較結果において、許容限界値(T0−d)よりも小さかった値に対応する位置決め機構による位置決め動作を、少なくとも行えばよい。
【0069】
2回目以降の処理において、S13では、距離X及びYの両方の比較処理を行わなくてもよい。直前のS13の比較結果において、許容限界値(T0−d)よりも小さかった値に対応する値についての比較処理を、少なくとも行えばよい。
【0070】
S15の比較の結果、カウント値が設定値より大きければ、処理Cに進む。
【0071】
処理Cに進むということは、正常な基板の位置決めが行われておらず、何らかの原因により封止前基板5が位置決めピン31又は32に接触できない可能性があるとプロセッサPが判断したことになる。
【0072】
処理Cは、位置決め動作及び位置決め検証動作を終了し、樹脂成形のための工程を停止するためにプロセッサPが行う処理となる。具体的には、プロセッサPが、基板搬送機構10、位置決め機構33及び34を上型23と下型12との間から退避させ、次の型締め工程に進まないように指示する。この際、プロセッサPが情報出力部Oに指示して、例えば、正常な基板の位置決めができず、何らかの原因により封止前基板5が位置決めピン31又は32に接触できない可能性がある又は位置決めピン及び位置決め機構の検査をうながす旨の情報を出力させる。出力する情報としては、正常な位置決め動作が行えなかったために、樹脂成形の工程を停止するなど、他の内容としても良い。
【0073】
なお、S15の処理を省略して、S13での比較結果において、距離X及びYの少なくも一つが許容限界値(T0−d)よりも小さければ処理Cに移行するようにも構成できる。
【0074】
以上のようにして、基板の位置決め検証動作におけるデータ処理を実行することができる。なお、ここでの説明において、距離X及びYのそれぞれが後述の実施形態2以降の説明のように複数であっても、同様にデータ処理できるので、説明を簡単にするため、総括的に「X」及び「Y」と表記して説明した。また、画像データDについても、実際には複数のデータとなるが、説明を簡単にするため、総括的に「D」と表記して説明した。したがって、後述の実施形態2以降において、同様な説明を繰り返さない。
【0075】
(作用効果)
本実施形態では、樹脂成形装置1は、互いに対向して配置される第1の型である上型23及び第2の型である下型12を有する成形型24と、上型23及び下型12のいずれか一方の型である上型23の型面に基板を供給する基板供給機構10と、少なくとも基板を含む位置決め対象物である封止前基板5を型面において位置決めする位置決め機構33、34と、成形型24を型締めする型締機構13と、成形型24が型開きされた状態で、上型23と下型12との間に配置可能なカメラ11(C)と、カメラ11(C)により撮像された画像データに基づき処理を行うプロセッサ21(P)とを含む構成としている。
【0076】
更に、一方の型である上型23は、カメラ11(C)の撮像により認識可能な位置決め用の基準マーク29、30を有し、カメラ11(C)は、位置決め機構33、34により位置決めされた封止前基板5と基準マーク29、30とを撮像し、プロセッサ21(P)は、カメラ11(C)により撮像された封止前基板5と基準マーク29、30との画像データに基づいて、封止前基板5が正常に位置決めされているか否かを判断する。
【0077】
このような構成とすることにより、成形型24に供給された封止前基板5が正常に位置決めされていることを検証した状態で樹脂成形して樹脂封止することができ、位置決めに起因する成形不良の発生を低減することができる。したがって、封止前基板5が正常に位置決めされていると判断した場合には、樹脂成形による樹脂封止を実施する。封止前基板5が正常に位置決めされていないと判断した場合には、樹脂成形による樹脂封止を停止する。
【0078】
また、本実施形態は、一方の型である上型23は、位置決め対象物である封止前基板5の接触による位置決めに用いられる位置決め部材である位置決めピン31、32を有し、位置決め機構33、34は、封止前基板5を位置決めピン31、32に接触させることにより位置決めを行う。
【0079】
この構成によれば、位置決めピン31、32が磨耗又は破損などによる変形しても、位置決めに起因する成形不良の発生を低減することができる。
【0080】
また、プロセッサ21(P)は、カメラ11(C)により撮像された位置決め対象物である封止前基板5と基準マーク29、30との画像データに基づいて、封止前基板5と基準マーク29、30との距離に関する情報を求め、予め設定された許容範囲と比較して、封止前基板5が正常に位置決めされているか否かを判断する。
【0081】
この構成によれば、より確実に、位置決めに起因する成形不良の発生を低減することができる。
【0082】
本実施形態は、位置決め対象物である封止前基板5が位置決め部材である位置決めピン31、32の少なくとも一部に接触していないとプロセッサ21(P)が判断した場合に、少なくも1回は位置決め機構33、34が再度位置決め動作を行う。
【0083】
この構成によれば、正常な基板の位置決めができる可能性を高めることができ、生産性を向上させることができる。
【0084】
より詳細には、本実施形態によれば、封止前基板5が上型23に位置決めされた状態で、封止前基板5の端部の位置P1、P2と上型23に設けられた基準マーク29、30とを含む領域A1、A2をカメラ11によってそれぞれ撮像して画像データD1、D2を取得する。取得した画像データD1、D2に基づき、プロセッサ21が封止前基板5の端部P1、P2と基準マーク29、30との間の距離Y1、X2をそれぞれ計測する。プロセッサ21がこれらの距離Y1、X2と予め設定された基準値T0とを比較することによって、封止前基板5が上型23の所定位置に正常に位置決めされているか否かを検証することができる。
【0085】
封止前基板5が上型23の型面に位置決めされた状態には3つの態様がある。第1の態様は、封止前基板5が上型23の所定位置に正常に位置決めされている状態である。この場合には、次の工程である型締めを実行する。第2の態様は、封止前基板5が正常に位置決めされず、封止前基板5が位置決めピン31、32に接触していない状態である。この場合には、樹脂成形による樹脂封止を一旦停止して少なくとも1回再度位置決めを実施する。第3の態様は、封止前基板5の位置決めにおいて異常が発生している状態である。本来はありえない状態が発生しているので、位置決めピン31、32に許容値を超える磨耗又は破損等による変形が発生している可能性がある。この場合には、装置に異常が発生していることを発信し、装置の状態を調査して対応する。カメラ11が撮像した画像データに基づき、プロセッサ21がデータ処理を行うことによって、これら3つの態様を判断することができる。
【0086】
本実施形態によれば、カメラ11が撮像した画像データに基づき、プロセッサ21が画像処理を行う。画像処理により計測された距離を基準値と比較することによって、封止前基板5が上型23の所定位置に正常に位置決めされているか否かを判断する。このことにより、正常に位置決めがされていない場合、又は、装置に異常が発生している場合には、次の工程へ進むことを停止させる。したがって、封止前基板5が正常に位置決めされていない状態で樹脂成形して樹脂封止することがないので、位置決めに起因する成形不良の発生を低減することができる。
【0087】
本実施形態においては、封止前基板5の端部の位置と上型23に設けられた基準マーク29、30とを含む領域をカメラ11によって撮像して画像データを取得した。この場合には、封止前基板5の端部の位置をカメラ11によって認識した。封止前基板5を認識する位置は、封止前基板5の端部の位置に限らない。例えば、
図3で示されたように、封止前基板5の4隅に設けられた位置合わせ用のマーク35を認識しても良い。更には、封止前基板5の内部に形成されているパターンやチップなど、カメラ11によって認識可能なものであれば良い。
【0088】
本実施形態においては、封止前基板5を位置決めする手段として、上型23に設けられた位置決め機構33、34を使用した。これに限らず、基板搬送機構10に位置決め機構を設けても良い。基板搬送機構10が封止前基板5を上型23の型面に受け渡した後に、基板搬送機構10に設けられた位置決め機構を使用して封止前基板5を位置決めピン31及び32にそれぞれ押し当てる。このことによって、封止前基板5を上型23の型面の所定位置に位置決めすることができる。基板搬送機構10に位置決め機構を設けることにより、樹脂成形装置1の構成をより簡略化することができる。
【0089】
さらに、基板搬送機構10自体を位置決め機構として使用することができる。基板搬送機構10自体を位置決め機構として使用する場合には、封止前基板5を上型23の型面に受け渡すと共に、基板搬送機構10を使用して封止前基板5をY方向及びX方向に移動させることによって封止前基板5の端面を位置決めピン31及び32にそれぞれ押し当てる。このことによって、封止前基板5を上型23の型面の所定位置に位置決めすることができる。基板搬送機構10自体を位置決め機構として使用することにより、樹脂成形装置1の構成をいっそう簡略化することができる。
【0090】
本実施形態においては、基準マーク29が設けられた型面と反対側の型面に、封止前基板5をY方向に位置決めするための位置決めピン31を設けた。同様に、基準マーク30が設けられた型面と反対側の型面に、封止前基板5をX方向に位置決めするための位置決めピン32を設けた。これに限らず、基準マーク29を設けた同じ側の型面に、封止前基板5をY方向に位置決めするための位置決めピン31を設け、基準マーク30を設けた同じ側の型面に、封止前基板5をX方向に位置決めするための位置決めピン32を設けても良い。この場合には、
図5(b)、(c)で示した計測された距離と許容限界値との大小関係が逆になる。したがって、
図6及び
図7を参照する説明においても、距離X,Yと許容限界値との大小関係が逆になる。
【0091】
本実施形態においては、基板供給・収納モジュール2と樹脂供給モジュール4との間に、3個の成形モジュール3A、3B、3CをX方向に並べて装着した。基板供給・収納モジュール2と樹脂供給モジュール4とを1つのモジュールにして、そのモジュールに1個の成形モジュール3AをX方向に並べて装着してもよい。さらに、その成形モジュール3Aに他の成形モジュール3Bを装着してもよい。これらのことによって、生産形態又は生産量に対応して、成形モジュール3A、3B、・・・を増減することができる。したがって、樹脂成形装置1の構成を最適にすることができるので、生産性の向上を図ることができる。
【0092】
なお、本実施形態では、樹脂成形装置1として、基板供給・収納モジュール2と、3つの成形モジュール3A、3B、3Cと、樹脂供給モジュール4とを備える構成について説明した。樹脂成形装置は、この構成に限定されず、少なくとも成形型と、液状樹脂を供給するディスペンサと、成形型を型締めする型締機構とを備え、樹脂成形を行う機能を有する装置であれば良い。
【0093】
本実施形態は、基板としてセラミックス基板など比較的硬度の高い基板を用いた場合に位置決めピンが変形しやすいので、このような場合に特に有効である。また、比較的高い位置精度が要求されるLED又はフォトダイオード等の光学チップをレンズ部等の光学樹脂部により樹脂封止する場合に特に有効である。
〔実施形態2〕
【0094】
図8〜
図9を参照して、実施形態2において、上型23に供給された封止前基板5が正常に位置決めされているか否かを検証する動作について説明する。実施形態1との違いは、封止前基板5のX方向及びY方向に沿う端部おいてそれぞれ2箇所の位置を撮像することによって位置決めを検証することである。このことによって、X方向及びY方向だけでなく、θ方向も含めて位置決めが正常にされているか否かを検証することができる。それ以外の動作及び成形型の構成については、実施形態1と同じなので説明を省略する。
【0095】
(基板の位置決め検証動作)
以下、実施形態2において、封止前基板5が正常に位置決めされているか否かを検証する動作を説明する。本実施形態では、例えば、
図8(a)に示されるように、封止前基板5のX方向に沿う端部の任意の位置P3及びP4と基準マーク29との間の距離Y3及びY4をそれぞれ計測する。同様にして、封止前基板5のY方向に沿う端部の任意の位置P5及びP6と基準マーク30との間の距離X5及びX6をそれぞれ計測する。これらの4点の位置と基準マークとの間の距離を計測することによって、封止前基板5が、X方向、Y方向及びθ方向に正常に位置決めされているか否かを検証することができる。
【0096】
まず、
図8(a)に示されるように、封止前基板5のX方向に沿う端部の位置P3と基準マーク29とを含む領域A3を撮像できる位置に、基板搬送機構10に設けられたカメラ11を移動させる。その位置において、カメラ11により領域A3を撮像して画像データD3を取得する。取得した画像データD3を制御部19に組み込まれたメモリ20に保存する。
【0097】
次に、封止前基板5のX方向に沿う端部の位置P4と基準マーク29とを含む領域A4を撮像できる位置にカメラ11を移動させる。その位置において、カメラ11により領域A4を撮像して画像データD4を取得する。取得した画像データD4を制御部19に組み込まれたメモリ20に保存する。
【0098】
次に、封止前基板5のY方向に沿う端部の位置P5と基準マーク30とを含む領域A5を撮像できる位置にカメラ11を移動させる。その位置において、カメラ11により領域A5を撮像して画像データD5を取得する。取得した画像データD5を制御部19に組み込まれたメモリ20に保存する。
【0099】
次に、封止前基板5のY方向に沿う端部の位置P6と基準マーク30とを含む領域A6を撮像できる位置にカメラ11を移動させる。その位置において、カメラ11により領域A6を撮像して画像データD6を取得する。取得した画像データD6を制御部19に組み込まれたメモリ20に保存する。
【0100】
次に、制御部19に組み込まれたプロセッサ21を使用して、各領域A3、A4、A5、A6においてそれぞれ取得された画像データD3、D4、D5、D6をメモリ20から取り込み画像処理する。封止前基板5のX方向に沿う端部の位置P3及びP4と基準マーク29との間の距離Y3及びY4をそれぞれ計測する。同様にして、封止前基板5のY方向に沿う端部の位置P5及びP6と基準マーク30との間の距離X5及びX6をそれぞれ計測する。
【0101】
次に、プロセッサ21がそれぞれ計測された距離Y3、Y4及びX5、X6を予め設定された基準値T0と比較する。このことによって、封止前基板5が上型23の型面に位置決めされた時に生じる4つの態様を検証することができる。
【0102】
図9を参照して、封止前基板5が上型23の型面に位置決めされた時に生じる4つの態様について説明する。4つの態様とは、(a)封止前基板5が正常に位置決めされた状態、(b)封止前基板5が正常に位置決めされず封止前基板5が二つの位置決めピンに接触しなかった状態、(c)封止前基板5の位置決めに異常が発生している状態(位置決めピンに磨耗又は破損等による変形が発生している)、(d)θ方向の位置ずれが発生している状態である。
【0103】
図9においては、例えば、X方向に対して封止前基板5を位置決めした場合について、4つの態様を説明する。実施形態1と同様に、「T0」は、封止前基板5の端部と基準マーク30との間の正常な距離を示す基準値、「d」は、ばらつき及び測定誤差などを含めて封止前基板5の位置決めに対して許容される許容値である。(T0−d)及び(T0+d)は、封止前基板5が正常に位置決めされた範囲を示す許容限界値である。
【0104】
図9(a)に示されるように、X方向に対して計測された距離X5及びX6が、(T0−d)≦X5かつX6≦(T0+d)であれば、封止前基板5は上型23の型面のX方向に対して正常に位置決めされていると判断する。言い換えれば、封止前基板5のY方向に沿う端面が、正常に位置決めピン32に接触している状態である。
【0105】
同様にして、Y方向に対して計測された距離Y3及びY4が、(T0−d)≦Y3かつY4≦(T0+d)であれば、封止前基板5は上型23の型面のY方向に対して正常に位置決めされていると判断する。X方向に対して2箇所及びY方向に対して2箇所正常に位置決めされているので、θ方向に対しても正常に位置決めされていると判断できる。したがって、この場合には、X方向、Y方向及びθ方向に対して封止前基板5が正常に位置決めされていると判断し、次の工程である型締め工程へ進める。
【0106】
図9(b)に示されるように、X方向に対して計測された距離X5及びX6が、X5<(T0−d)かつX6<(T0−d)であれば、封止前基板5は上型23の型面のX方向に対して正常に位置決めされていないと判断する。言い換えれば、封止前基板5のY方向に沿う端面が、二つの位置決めピン32に接触していない状態である。
【0107】
同様にして、Y方向に対して計測された距離Y3及びY4が、Y3<(T0−d)かつY4<(T0−d)であれば、封止前基板5は上型23の型面のY方向に対して正常に位置決めされておらず、封止前基板5のX方向に沿う端面が二つの位置決めピン31に接触していないと判断する。このような場合には、X方向又はY方向に対して封止前基板5が正常に位置決めされていないと判断して、次の工程へ進めることを停止する。
【0108】
図9(c)に示されるように、X方向に対して計測された距離X5及びX6が、X5>(T0+d)かつX6>(T0+d)であれば、上型23に異常が発生している可能性があると判断する。この場合には、位置決めピン32に許容値dを超える磨耗又は破損等による変形が発生している可能性がある。
【0109】
同様にして、Y方向に対して計測された距離Y3及びY4が、Y3>(T0+d)かつY4>(T0+d)であれば、上型23に異常が発生している可能性があると判断する。このような場合には、樹脂成形装置1に異常が発生していることを発信し、位置決めピン31、32の状態を確認して交換するなどの対応を実施する。
【0110】
図9(d)に示されるように、例えば、X方向に対して計測された距離X5及びX6が、(T0−d)≦X5≦(T0+d)、かつ、X6<(T0−d)であれば、封止前基板5は上型23の型面において、θ方向の位置ずれが発生していると判断することができる。この場合には、封止前基板5の端面と位置決めピン31、32との接触状態がどのようになっているのかは、よくわからない。X方向に対して計測された距離X5及びX6について、いずれか一方は許容範囲内であるが、他方が許容範囲を外れている場合には、θ方向の位置ずれが発生していると判断することができる。このように、封止前基板5の1方向に沿う端部の位置2点と基準マークとの間の距離を2箇所計測することによって、θ方向の位置ずれを確認することができる。
【0111】
同様にして、Y方向に対して計測された距離Y3及びY4が、例えば、(T0−d)≦Y4≦(T0+d)、かつ、Y3<(T0−d)であれば、封止前基板5は上型23の型面において、θ方向の位置ずれが発生していると判断する。このような場合には、X方向、Y方向及びθ方向に対して封止前基板5が位置ずれしていると判断して、次の工程へ進めることを停止する。
【0112】
図8〜
図9で示したように、封止前基板5のX方向及びY方向に沿う端部の位置2点について、基準マークとの間の距離をそれぞれ計測することによって、X方向、Y方向及びθ方向に正常に位置決めされているか否かを判断することができる。したがって、計測された4点の距離がすべて許容範囲内である場合には、正常に位置決めされていると判断し、次の工程へ進める。4点のうち1点でも許容範囲から外れている場合には、正常に位置決めされていないと判断して、次の工程へ進めることを停止する。
【0113】
なお、
図9(b)及び
図9(d)に示した状態の場合、即ち上述の(a)〜(d)の4つの態様のうちの(b)及び(d)の態様の場合、複数の距離Xの値の少なくとも一つが、許容範囲の最小値である許容限界値(T0−d)より小さくなる。これらの場合、位置決め動作を再度実施することにより、基板5を正常に位置決めされた位置にできる可能性があるので、位置決め動作を少なくとも1回再度実施してもよい。
【0114】
本実施形態における基板の位置決め検証動作のデータ処理は、実施形態1と同様であるので、説明を繰り返さない。
【0115】
(作用効果)
本実施形態によれば、封止前基板5のX方向に沿う端部の位置P3及びP4と基準マーク29との間の距離Y3及びY4をそれぞれ計測する。同様にして、封止前基板5のY方向に沿う端部の位置P5及びP6と基準マーク30との間の距離X5及びX6をそれぞれ計測する。これらの計測された距離Y3、Y4、X5、X6と予め設定された許容範囲とを比較することによって、封止前基板5が、X方向、Y方向及びθ方向に正常に位置決めされているか否かを検証することができる。したがって、位置決めに起因する成形不良の発生を低減することができる。
【0116】
封止前基板5が上型23の型面に位置決めされた状態には4つの態様がある。第1の態様は、封止前基板5が上型23の所定位置に正常に位置決めされている状態である。この場合には、次の工程である型締めを実行する。第2の態様は、封止前基板5が正常に位置決めされず封止前基板5が二つの位置決めピンに接触していない状態である。この場合には、封止前基板5の端面が位置決めピン31、32に接触していない状態であり、樹脂成形による樹脂封止を一旦停止して少なくとも1回再度位置決めを実施する。第3の態様は、封止前基板5の位置決めにおいて異常が発生している状態である。本来はありえない状態が発生しているので、位置決めピン31、32に許容値を超える磨耗又は破損等による変形が発生している可能性がある。この場合には、装置に異常が発生していることを発信し、装置の状態を調査して対応する。第4の態様は、θ方向の位置ずれが発生して正常に位置決めされていない状態である。この場合には、位置決めピン31及び32のうち少なくとも一方が封止前基板5の端面と接触していない状態であり、樹脂成形による樹脂封止を一旦停止して少なくとも1回再度位置決めを実施する。カメラ11が撮像した4箇所の画像データに基づき、データ処理を行うことによって、これら4つの態様を判断することができる。
【0117】
本実施形態においては、封止前基板5のX方向に沿う端部の位置2点と基準マーク29との間の距離、及び、封止前基板5のY方向に沿う端部の位置2点と基準マーク30との間の距離、合計4箇所の距離を計測することによって、X方向、Y方向及びθ方向のずれを検証した。これに限らず、封止前基板5のX方向及びY方向に沿う端部の位置3点と基準マーク29及び30との間の距離を少なくとも3点計測することによって、X方向、Y方向及びθ方向のずれを検証することができる。θ方向のずれを検証するためには、封止前基板5のX方向に沿う端部又はY方向に沿う端部のいずれか一方の2点と基準マークとの間の距離を計測すれば良い。
〔実施形態3〕
【0118】
図10を参照して、実施形態3において、上型23に供給された封止前基板5が正常に位置決めされているか否かを検証する動作について説明する。実施形態1との違いは、上型23において、X方向及びY方向を含むコの字型の基準マークを設けたことと、基板の角部の位置をデータ処理に用いることである。それ以外の成形型の構成及び動作については、実施形態1と同じなので説明を省略する。
【0119】
以下、実施形態3において、封止前基板5が正常に位置決めされているか否かを検証する動作を説明する。
図10(a)に示されるように、上型23の型面には、コの字型の基準マーク36が設けられる。本実施形態では、例えば、封止前基板5の角部の位置P7とコの字型の基準マーク36との間の距離X7及びY7をそれぞれ計測する。同様にして、封止前基板5の角部の位置P8とコの字型の基準マーク36との間の距離X8及びY8をそれぞれ計測する。X方向に対してX7、X8の2点及びY方向に対してY7、Y8の2点をそれぞれ計測することによって、封止前基板5が、X方向、Y方向及びθ方向に正常に位置決めされているか否かを検証する。なお、封止前基板5の角部の位置P7及びP8に関する画像処理には、コーナー検出を利用でき、また封止前基板5の角部で交わる二つの端面のエッジ検出を利用しても良い。
【0120】
まず、
図10(a)に示されるように、封止前基板5の角部の位置P7と基準マーク36とを含む領域A7を撮像できる位置に、基板搬送機構10に設けられたカメラ11を移動させる。その位置において、カメラ11により領域A7を撮像して画像データD7を取得する。取得した画像データD7を制御部19に組み込まれたメモリ20に保存する。
【0121】
次に、封止前基板5の角部の位置P8と基準マーク36とを含む領域A8を撮像できる位置にカメラ11を移動させる。その位置において、カメラ11により領域A8を撮像して画像データD8を取得する。取得した画像データD8を制御部19に組み込まれたメモリ20に保存する。
【0122】
次に、制御部19に組み込まれたプロセッサ21を使用して、各領域A7、A8においてそれぞれ取得された画像データD7、D8をメモリ20から取り込み画像処理する。封止前基板5の角部P7とコの字型の基準マーク36との間の距離X7、Y7、及び、封止前基板5の角部P8とコの字型の基準マーク36との間の距離X8、Y8をそれぞれ計測する。
【0123】
次に、プロセッサ21がそれぞれ計測された距離X7、Y7及びX8、Y8を予め設定された基準値T0と比較する。これらの距離X7、Y7、X8、Y8がすべて許容範囲内であれば、X方向、Y方向及びθ方向に正常に位置決めされていると判断して次の工程へ進める。
【0124】
計測された距離X7、Y7、X8、Y8のうち、いずれか1つでも許容範囲から外れている場合には、正常に位置決めされていないと判断して次の工程へ進めることを停止する。このようにして、封止前基板5が、X方向、Y方向及びθ方向に正常に位置決めされているか否かを検証することができる。
【0125】
本実施形態の基板の位置決め検証動作のデータ処理について、実施形態1における
図6及び
図7を用いた説明と異なる点を以下に記載する。
【0126】
S13の距離Yに関する比較処理において、距離Y7については同じだが、距離Y8について異なる。本実施形態では、距離Y8に関する比較処理について、プロセッサPが、許容範囲の最大値(許容限界値の大きい方の値)である(T0+d)をメモリMから読み出し、距離Y8との比較を行う。比較の結果、距離Y8が許容限界値(T0+d)よりも小さく、かつ他の距離X7、X8及びY7のすべてが許容限界値(T0−d)よりも大きければS14に進む。比較の結果、距離Y8が許容限界値(T0+d)よりも大きいか、または他の距離X7、X8及びY7の少なくとも一つが許容限界値(T0−d)よりも小さければS15に進む。
【0127】
S14の距離Yに関する比較処理において、距離Y7については同じだが、距離Y8について異なる。本実施形態では、距離Y8に関する比較処理について、プロセッサPが、許容範囲の最小値(許容限界値の小さい方の値)である(T0−d)をメモリMから読み出し、距離Y8との比較を行う。比較の結果、距離Y8が許容限界値(T0−d)よりも大きく、かつ他の距離X7、X8及びY7のすべてが許容限界値(T0+d)よりも小さければ処理Aに進む。比較の結果、距離Y8が許容限界値(T0−d)よりも小さいか、または他の距離X7、X8及びY7の少なくとも一つが許容限界値(T0+d)よりも大きければ処理Bに進む。
【0128】
S13、S14以外の処理については、これらS13、S14における相違点に基づいて適宜変更すればよい。
【0129】
本実施形態においては、封止前基板5の角部の位置P7及びP8を用いてデータ処理する例を説明したが、封止前基板5の角部で交わる二つの端面を用いてデータ処理しても良い。
【0130】
本実施形態によれば、封止前基板5の角部P7とコの字型の基準マーク36との間の距離X7、Y7、及び、封止前基板5の角部P8とコの字型の基準マーク36との間の距離X8、Y8をそれぞれ計測することによって、封止前基板5が、X方向、Y方向及びθ方向に正常に位置決めされているか否かを検証することができる。したがって、位置決めに起因する成形不良の発生を低減することができる。
【0131】
基板搬送機構10に設けられたカメラ11によって、封止前基板5の角部とコの字型の基準マーク36を含む領域を2箇所撮像することによって、封止前基板5が、X方向、Y方向及びθ方向に正常に位置決めされているか否かを検証することができる。したがって、カメラ11を移動させる距離を短くすることができる。封止前基板5を撮像する工数を減らすことができる。このことによって、封止前基板5が正常に位置決めされているか否かを検証する動作を短縮することができる。
【0132】
本実施形態においては、封止前基板5の角部とコの字型の基準マーク36との間の距離を計測することによって、封止前基板5が、X方向、Y方向及びθ方向に正常に位置決めされているか否かを検証した。これに限らず、例えば、封止前基板5の4隅に設けられた位置合わせ用のマーク35とコの字型の基準マーク36との間の距離を計測することによって、封止前基板5が、X方向、Y方向及びθ方向に正常に位置決めされているか否かを検証することもできる。
〔実施形態4〕
【0133】
図11を参照して、実施形態4において、上型23に供給された封止前基板5が正常に位置決めされているか否かを検証する動作について説明する。実施形態3との違いは、上型23において、Y方向に沿って設けられる位置決めピン32をコの字型の基準マーク36と同じ側の型面に設けたことである。それ以外の成形型の構成及び動作については、実施形態3と同じなので説明を省略する。
【0134】
図11(a)に示されるように、本実施形態では、封止前基板5の角部の位置P7と基準マーク36と位置決めピン32とを含む領域A9を撮像する。同様にして、封止前基板5の角部の位置P8と基準マーク36と位置決めピン32とを含む領域A10を撮像する。領域A9を撮像することによって、封止前基板5の角部P7と基準マーク36との間の距離X7及びY7を計測すると共に位置決めピン32の状態を観察することができる。同様に、領域A10を撮像することによって、封止前基板5の角部P8と基準マーク36との間の距離X8及びY8を計測すると共に位置決めピン32の状態を観察することができる。したがって、封止前基板5が、X方向、Y方向及びθ方向に正常に位置決めされているか否かを検証すると共に、位置決めピン32に磨耗又は破損等による変形が発生しているかどうかを確認することができる。
【0135】
本実施形態の基板の位置決め検証動作のデータ処理について、実施形態3と異なる点は、距離Xと許容限界値との大小関係を逆にする変更を行えばよい。
【0136】
本実施形態によれば、封止前基板5の角部の位置と基準マークと位置決めピンとを含む領域を同時に撮像する。したがって、X方向、Y方向及びθ方向に正常に位置決めされているか否かを検証すると共に、位置決めピンの状態を常に確認することができる。したがって、位置決めピンに異常が発生した場合には、早期に発見することができる。
〔実施形態5〕
【0137】
図12を参照して、実施形態5において、上型23に供給された封止前基板5が正常に位置決めされているか否かを検証する動作について説明する。実施形態4との違いは、上型23のY方向に沿って、上型23の角部付近に矩形状の基準マークをそれぞれ設け、その基準マークの角部を用いてデータ処理することである。それ以外の成形型の構成及び動作については、実施形態4と同じなので説明を省略する。
【0138】
図12(a)に示されるように、例えば、上型23の型面の角部付近に矩形の基準マーク37、38がそれぞれ設けられる。本実施形態においては、封止前基板5の角部の位置P7と基準マーク37と位置決めピン32とを含む領域A9を撮像する。同様にして、封止前基板5の角部の位置P8と基準マーク38と位置決めピン32とを含む領域A10を撮像する。
【0139】
撮像したそれぞれの画像データに基づき、封止前基板5の角部の位置P7と基準マーク37の角部との間の距離L1、及び、封止前基板5の角部の位置P8と基準マーク38の角部との間の距離L2をそれぞれ計測する。計測された距離L1は、実施形態3、4で計測した距離X7及びY7の情報を含んでいる。同様に、計測された距離L2は、実施例3、4で計測した距離X8及びY8の情報を含んでいる。したがって、封止前基板5の角部と基準マーク37、38との間の距離を2箇所計測することによって、封止前基板5が、X方向、Y方向及びθ方向に正常に位置決めされているか否かを検証することができる。なお、基準マーク37、38の角部に関する画像処理には、コーナー検出を利用でき、また角部で交わる二つの端面のエッジ検出を利用しても良い。
【0140】
本実施形態の基板の位置決め検証動作のデータ処理について、実施形態1〜4と異なる点は、本実施形態では、距離L1及びL2と許容範囲とを比較する。比較の結果、距離L1及びL2の両方が許容範囲内であれば、正常な基板の位置決めが行われたとプロセッサPが判断し、
図7の処理Aに移行する。
【0141】
比較の結果、距離L1及びL2の少なくも一方が許容範囲外であれば、正常な基板の位置決めが行われなかったとプロセッサPが判断し、位置決め動作及び位置決め検証動作を終了し、樹脂成形のための工程を停止するための処理をプロセッサPが実行する。この際、プロセッサPが情報出力部Oに指示して、例えば、正常な位置決め動作が行えなかったために、樹脂成形の工程を停止するなどの情報を出力させる。
【0142】
本実施形態によれば、封止前基板5の角部P7と基準マーク37の角部との間の距離L1、及び、封止前基板5の角部P8と基準マーク38の角部との間の距離L2、これら2箇所の距離を計測することによって、封止前基板5が、X方向、Y方向及びθ方向に正常に位置決めされているか否かを検証することができる。したがって、撮像された画像データに基づき画像処理をする工数を減らすことができる。このことによって、封止前基板5が正常に位置決めされているか否かを検証する動作を短縮することができる。
【0143】
本実施形態においては、基準マークとして矩形状の基準マークを設けた。画像処理により点を検出できるものであれば、これに限らず、円状、三角形状、多角形状などを有する基準マークを使用しても良い。更に、点状、プラス(+)形状、マイナス(−)形状などの基準マークを使用しても良い。カメラによって認識可能なマークであれば良い。基準マークを配置する位置は、封止前基板5の角部からX方向及びY方向に対して実質的な距離を有する位置であれば良い。
【0144】
各実施形態においては、成形型24の上型23に封止前基板5を供給し、カメラ11で撮像することによって上型23に供給された封止前基板5が正常に位置決めされているか否かを検証した。これに限らず、成形型24の下型12に封止前基板5を供給し、下型12の型面に位置決めする場合においても、本発明を適用することができる。この場合においても各実施形態で示した同様の効果を奏する。
【0145】
各実施形態においては、圧縮成形法を使用した樹脂成形装置1の成形型24において、上型23に供給された封止前基板5が正常に位置決めされているか否かを検証する場合を示した。これに限らず、トランスファ成形法又は射出成形法を使用した樹脂成形装置の成形型においても、本発明を適用することができる。
【0146】
各実施形態においては、位置決め対象物として封止前基板5を使用した例を示したが、これに限定されない。例えば補強用の治具を基板に取付けたものなど、少なくとも基板が含まれればよい。
【0147】
各実施形態においては、樹脂材料として液状樹脂を使用する場合を示した。これに限らず、樹脂材料として、粉末状、顆粒状、シート状、固形状の樹脂材料などを使用することができる。
【0148】
各実施形態においては、半導体チップを樹脂成形する際に使用される樹脂成形装置及び樹脂成形品の製造方法を説明した。樹脂成形する対象はIC、トランジスタなどの半導体チップでもよく、半導体を用いない非半導体チップでもよく、半導体チップと非半導体チップとが混在するチップ群でもよい。リードフレーム、プリント基板、セラミックス基板などの基板に装着された1個又は複数個のチップを硬化樹脂によって樹脂成形する際に本発明を適用することができる。
【0149】
以上のように、上記実施形態の樹脂成形装置では、互いに対向して配置される第1の型及び第2の型を有する成形型と、記第1の型及び第2の型のいずれか一方の型の型面に基板を供給する基板供給機構と、少なくとも基板を含む位置決め対象物を型面において位置決めする位置決め機構と、成形型を型締めする型締機構と、成形型が型開きされた状態で、第1の型と前記第2の型との間に配置可能なカメラと、カメラにより撮像された画像データに基づき処理を行うプロセッサとを備え、前記一方の型は、前記カメラの撮像により認識可能な位置決め用の基準マークを有し、カメラは、位置決め機構により位置決めされた位置決め対象物と基準マークとを撮像し、プロセッサは、カメラにより撮像された位置決め対象物と基準マークとの画像データに基づいて、位置決め対象物が正常に位置決めされているか否かを判断する構成としている。
【0150】
さらに、上記実施形態の樹脂成形装置では、一方の型は、位置決め対象物の接触による位置決めに用いられる位置決め部材を有し、位置決め機構は、位置決め対象物を位置決め部材に接触させることにより位置決めを行う。
【0151】
この構成によれば、位置決め部材が磨耗又は破損などによる変形しても、位置決めに起因する成形不良の発生を低減することができる。
【0152】
さらに、上記実施形態の樹脂成形装置では、プロセッサは、カメラにより撮像された位置決め対象物と基準マークとの画像データに基づいて、位置決め対象物と基準マークとの距離に関する情報を求め、予め設定された許容範囲と比較して、位置決め対象物が正常に位置決めされているか否かを判断する。ここで、位置決め対象物が正常に位置決めされていないと判断された場合に、少なくとも1回は位置決め機構が再度位置決め動作を行うようにしても良い。
【0153】
この構成によれば、より確実に、位置決めに起因する成形不良の発生を低減することができる。
【0154】
また、上記実施形態の樹脂成形装置では、位置決め対象物が位置決め部材の少なくとも一部に接触していないとプロセッサが判断した場合に、少なくも1回は位置決め機構が再度位置決め動作を行う。
【0155】
この構成によれば、正常な基板の位置決めができる可能性を高めることができ、生産性を向上させることができる。
【0156】
上記実施形態の樹脂成形品の製造方法は、互いに対向して配置される第1の型及び第2の型を有する成形型のいずれか一方の型の型面に基板を供給する基板供給工程と、少なくとも基板を含む位置決め対象物を型面において位置決めする位置決め工程と、位置決め工程において位置決めされた位置決め対象物と、一方の型に設けられた基準マークとを撮像する撮像工程と、撮像工程において得られた位置決め対象物と基準マークとの画像データに基づいて、位置決め対象物が正常に位置決めされたか否かを判断する判断工程と、判断工程において、基板が正常に位置決めされていると判断した場合は成形型を型締めして樹脂成形する樹脂成形工程とを含む。
【0157】
この方法によれば、成形型に供給された位置決め対象物が正常に位置決めされていることを検証した状態で樹脂成形することができ、位置決めに起因する成形不良の発生を低減することができる。
【0158】
さらに、上記実施形態の樹脂成形品の製造方法では、位置決め工程は、一方の型に設けられた位置決め部材に、位置決め対象物を接触させることにより位置決めを行う。
【0159】
この方法によれば、位置決め部材が磨耗又は破損などによる変形しても、位置決めに起因する成形不良の発生を低減することができる。
【0160】
さらに、上記実施形態の樹脂成形品の製造方法では、判断工程は、位置決め対象物と基準マークとの距離に関する情報を求め、予め設定された許容範囲と比較して、位置決め対象物が正常に位置決めされているか否かを判断する。
【0161】
この方法によれば、より確実に、位置決めに起因する成形不良の発生を低減することができる。
【0162】
また、上記実施形態の樹脂成形品の製造方法では、判断工程において位置決め対象物が位置決め部材の少なくとも一部に接触していないと判断した場合に、少なくも1回は前記位置決め工程の位置決め動作を再度行う。
【0163】
この方法によれば、正常な基板の位置決めができる可能性を高めることができ、生産性を向上させることができる。
【0164】
本発明は、上述した各実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で、必要に応じて、任意にかつ適宜に組み合わせ、変更し、又は選択して採用できるものである。