特許第6549580号(P6549580)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6549580化学強化のアルカリアルミノシリケートガラス用ガラス組成物及びその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6549580
(24)【登録日】2019年7月5日
(45)【発行日】2019年7月24日
(54)【発明の名称】化学強化のアルカリアルミノシリケートガラス用ガラス組成物及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C03C 3/085 20060101AFI20190711BHJP
   C03C 3/091 20060101ALI20190711BHJP
   C03C 3/093 20060101ALI20190711BHJP
   C03C 21/00 20060101ALI20190711BHJP
【FI】
   C03C3/085
   C03C3/091
   C03C3/093
   C03C21/00 101
【請求項の数】44
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2016-537115(P2016-537115)
(86)(22)【出願日】2014年8月26日
(65)【公表番号】特表2016-531831(P2016-531831A)
(43)【公表日】2016年10月13日
(86)【国際出願番号】CN2014085178
(87)【国際公開番号】WO2015027896
(87)【国際公開日】20150305
【審査請求日】2016年4月21日
【審判番号】不服2018-6685(P2018-6685/J1)
【審判請求日】2018年5月16日
(31)【優先権主張番号】201310384108.0
(32)【優先日】2013年8月27日
(33)【優先権主張国】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】516060635
【氏名又は名称】コーナーストーン・マテリアルズ・テクノロジー・カンパニー・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】Kornerstone Materials Technology Company, Ltd.
(74)【代理人】
【識別番号】100205936
【弁理士】
【氏名又は名称】崔 海龍
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【弁理士】
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100103034
【弁理士】
【氏名又は名称】野河 信久
(74)【代理人】
【識別番号】100153051
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100179062
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 正
(74)【代理人】
【識別番号】100189913
【弁理士】
【氏名又は名称】鵜飼 健
(74)【代理人】
【識別番号】100199565
【弁理士】
【氏名又は名称】飯野 茂
(72)【発明者】
【氏名】ディン、ジャック・ワイ.
(72)【発明者】
【氏名】シェン、チェリー
(72)【発明者】
【氏名】リャン、ピーター
(72)【発明者】
【氏名】カイ、ダニー
【合議体】
【審判長】 大橋 賢一
【審判官】 菊地 則義
【審判官】 宮澤 尚之
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−214356(JP,A)
【文献】 特表2002−507538(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C03C 1/00-14/00,21/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
化学強化のアルカリアルミノシリケートガラスを製造するためのイオン交換可能なガラス組成物であって、
60.0〜69.9モル%のSiOと、
9.5〜12.0モル%のAlと、
少なくとも10.5モル%のNaOと、
0〜5.0モル%のBと、
0〜0.4モル%のKOと、
少なくとも8.1モル%のMgOと、
2.0〜6.0モル%のZnOと、
0〜2.0モル%のLiOと、を含み、
LiO、NaO及びKOの合計含有量が13.0モル%以上であることを特徴とするイオン交換可能なガラス組成物。
【請求項2】
前記ガラス組成物は、10.5〜20.0モル%のNaOを含むことを特徴とする請求項1に記載のイオン交換可能なガラス組成物。
【請求項3】
前記ガラス組成物は、14.0〜20.0モル%のNaOを含むことを特徴とする請求項2に記載のイオン交換可能なガラス組成物。
【請求項4】
前記ガラス組成物は、8.1〜12.0モル%のMgOを含むことを特徴とする請求項1に記載のイオン交換可能なガラス組成物。
【請求項5】
NaO及びMgOの合計含有量が22.4モル%〜24.3モル%であることを特徴とする請求項1に記載のイオン交換可能なガラス組成物。
【請求項6】
NaO及びMgOの合計含有量とSiO及びAlの合計含有量との比が、0.29〜0.33であることを特徴とする請求項1に記載のイオン交換可能なガラス組成物。
【請求項7】
前記ガラス組成物は、2.0〜2.5モル%のZnOを含むことを特徴とする請求項1に記載のイオン交換可能なガラス組成物。
【請求項8】
前記ガラス組成物は、少なくとも900℃の液相線温度を有することを特徴とする請求項1に記載のイオン交換可能なガラス組成物。
【請求項9】
前記ガラス組成物は、少なくとも950℃の液相線温度を有することを特徴とする請求項8に記載のイオン交換可能なガラス組成物。
【請求項10】
前記ガラス組成物は、少なくとも1000℃の液相線温度を有することを特徴とする請求項9に記載のイオン交換可能なガラス組成物。
【請求項11】
前記ガラス組成物は、少なくとも1100℃の液相線温度を有することを特徴とする請求項10に記載のイオン交換可能なガラス組成物。
【請求項12】
前記ガラス組成物は、900〜1100℃の液相線温度を有することを特徴とする請求項1に記載のイオン交換可能なガラス組成物。
【請求項13】
ガラス組成物から製造された化学強化のアルカリアルミノシリケートガラスであって、
前記ガラス組成物は、
60.0〜69.9モル%のSiOと、
9.5〜12.0モル%のAlと、
少なくとも10.5モル%のNaOと、
0〜5.0モル%のBと、
0〜0.4モル%のKOと、
少なくとも8.1モル%のMgOと、
2.0〜6.0モル%のZnOと、
0〜2.0モル%のLiOと、を含み、
LiO、NaO及びKOの合計含有量が13.0モル%以上であり、
前記ガラス組成物は、イオン交換され、表面圧縮応力層を有し、
前記表面圧縮応力層は、圧縮応力(MPa)及び深さ(μm)を有し、
前記表面圧縮応力層の前記圧縮応力(MPa)と前記表面圧縮応力層の前記深さ(μm)の比が少なくとも26MPa/μmであることを特徴とする化学強化のアルカリアルミノシリケートガラス。
【請求項14】
前記ガラス組成物は、
14.0〜20.0モル%のNaOと、
8.1〜12.0モル%のMgOと、を含むことを特徴とする請求項13に記載の化学強化のアルカリアルミノシリケートガラス。
【請求項15】
前記表面圧縮応力層は、少なくとも500MPaの前記圧縮応力を有することを特徴とする請求項13に記載の化学強化のアルカリアルミノシリケートガラス。
【請求項16】
前記表面圧縮応力層は、少なくとも800MPaの前記圧縮応力を有することを特徴とする請求項15に記載の化学強化のアルカリアルミノシリケートガラス。
【請求項17】
前記表面圧縮応力層は、少なくとも1100MPaの前記圧縮応力を有することを特徴とする請求項16に記載の化学強化のアルカリアルミノシリケートガラス。
【請求項18】
前記表面圧縮応力層は、少なくとも1350MPaの前記圧縮応力を有することを特徴とする請求項17に記載の化学強化のアルカリアルミノシリケートガラス。
【請求項19】
前記表面圧縮応力層は、500〜1350MPaの前記圧縮応力を有することを特徴とする請求項13に記載の化学強化のアルカリアルミノシリケートガラス。
【請求項20】
前記表面圧縮応力層は、少なくとも18.5μmの前記深さを有することを特徴とする請求項13に記載の化学強化のアルカリアルミノシリケートガラス。
【請求項21】
前記表面圧縮応力層は、少なくとも22.0μmの前記深さを有することを特徴とする請求項20に記載の化学強化のアルカリアルミノシリケートガラス。
【請求項22】
前記表面圧縮応力層は、少なくとも35.0μmの前記深さを有することを特徴とする請求項21に記載の化学強化のアルカリアルミノシリケートガラス。
【請求項23】
前記表面圧縮応力層は、18.5〜35.0μmの前記深さを有することを特徴とする請求項13に記載の化学強化のアルカリアルミノシリケートガラス。
【請求項24】
前記表面圧縮応力層の前記圧縮応力と前記表面圧縮応力層の前記深さの比が少なくとも30MPa/μmであることを特徴とする請求項13に記載の化学強化のアルカリアルミノシリケートガラス。
【請求項25】
前記表面圧縮応力層の前記圧縮応力と前記表面圧縮応力層の前記深さとの比が26〜70MPa/μmであることを特徴とする請求項13に記載の化学強化のアルカリアルミノシリケートガラス。
【請求項26】
前記表面圧縮応力層の前記圧縮応力と前記表面圧縮応力層の前記深さとの比が30〜70MPa/μmであることを特徴とする請求項13に記載の化学強化のアルカリアルミノシリケートガラス。
【請求項27】
前記表面圧縮応力層の前記圧縮応力と前記表面圧縮応力層の前記深さとの比が35〜70MPa/μmであることを特徴とする請求項13に記載の化学強化のアルカリアルミノシリケートガラス。
【請求項28】
前記表面圧縮応力層の前記圧縮応力と前記表面圧縮応力層の前記深さとの比が40〜70MPa/μmであることを特徴とする請求項13に記載の化学強化のアルカリアルミノシリケートガラス。
【請求項29】
前記ガラスは、0.3〜2.0mmの厚さを有することを特徴とする請求項13に記載の化学強化のアルカリアルミノシリケートガラス。
【請求項30】
前記ガラスは、最大2.6g/cm密度を有することを特徴とする請求項13に記載の化学強化のアルカリアルミノシリケートガラス。
【請求項31】
前記ガラスは、25〜300℃の温度で測定する86.0〜99.0×10−7/℃の線膨張係数を有することを特徴とする請求項13に記載の化学強化のアルカリアルミノシリケートガラス。
【請求項32】
化学強化のアルカリアルミノシリケートガラスを製造する方法であって、
均質なガラス溶融物を形成するように、ガラス原料成分を混合し溶融する工程と、
ダウンドロー法及びフロート法から選択される方法を用いてガラスを成形する工程と、
前記ガラスをアニールする工程と、
イオン交換による前記ガラスを化学強化する工程と、を含み、
前記均質なガラス溶融物は、
60.0〜69.9モル%のSiOと、
9.5〜12.0モル%のAlと、
少なくとも10.5モル%のNaOと、
0〜5.0モル%のBと、
0〜0.4モル%のKOと、
少なくとも8.1モル%のMgOと、
2.0〜6.0モル%のZnOと、
0〜2.0モル%のLiOと、を含み、
LiO、NaO及びKOの合計含有量が13.0モル%以上であることを特徴とする化学強化のアルカリアルミノシリケートガラスを製造する方法。
【請求項33】
前記ガラス原料成分は、1650℃の温度で12時間までに溶融されることを特徴とする請求項32に記載の方法。
【請求項34】
前記ガラス原料成分は、1650℃の温度で6時間までに溶融されることを特徴とする請求項33に記載の方法。
【請求項35】
前記ガラス原料成分は、1650℃の温度で4時間までに溶融されることを特徴とする請求項34に記載の方法。
【請求項36】
前記ガラス原料成分は、1650℃の温度で2時間までに溶融されることを特徴とする請求項35に記載の方法。
【請求項37】
前記ガラスは、0.5℃/時間の速度でアニールされることを特徴とする請求項32に記載の方法。
【請求項38】
前記ガラスは、溶融塩浴においてイオン交換によって化学強化されることを特徴とする請求項32に記載の方法。
【請求項39】
前記溶融塩は、KNOであることを特徴とする請求項38に記載の方法。
【請求項40】
前記ガラスは、390〜450℃の温度でイオン交換により化学強化されることを特徴とする請求項32に記載の方法。
【請求項41】
前記ガラスは、8時間までにイオン交換によって化学強化されることを特徴とする請求項32に記載の方法。
【請求項42】
前記ガラスは、4時間までにイオン交換によって化学強化されることを特徴とする請求項41に記載の方法。
【請求項43】
前記ガラスは、2時間までにイオン交換によって化学強化されることを特徴とする請求項42に記載の方法。
【請求項44】
前記ガラスは、2〜8時間にイオン交換によって化学強化されることを特徴とする請求項32に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化学強化のアルカリアルミノシリケートガラス用ガラス組成物、化学強化のアルカリアルミノシリケートガラスを製造するための方法及び化学強化のアルカリアルミノシリケートガラスの応用と用途に関する。
【背景技術】
【0002】
ガラスを製造するために使用される組成物及び化学強化工程のため、化学強化のガラスは、一般的にアニール処理のガラスよりもかなり強い。このような化学強化工程は、すべてのサイズと形状のガラスを強化するために使用でき、光学的歪みを生成することなく、焼戻しのできない、薄く小さい複雑な形状のガラスサンプルの製造を可能にする。これらの特性による化学強化のガラス(特に化学強化のアルカリアルミノシリケートガラス)は普及し、スマートフォン、タブレット、ノートパッドなどの消費者向け携帯電子機器に広く使用されている。
【0003】
化学強化工程は、通常、イオン交換工程を含む。このようなイオン交換工程において、ガラスは、ガラスに存在しているイオンよりも大きいイオン半径を有するイオンを含む加熱溶液中に配置され、ガラス中に存在している小さなイオンは、加熱された溶液のより大きなイオンによって置換されるようになっている。一般的に、加熱された溶液中のカリウムイオンは、ガラスに存在している小さなナトリウムイオンを置換する。イオン交換工程の後、表面圧縮応力(「CS」)層が、ガラス表面に形成される。表面圧縮応力層の圧縮応力は、より大きなイオン半径を有するアルカリ金属イオンの化学強化中の置換によって引き起こされる。表面圧縮応力層の深さは、一般的に、CS層の深さ(depth of layer、DOL)と呼ばれる。中央張力領域(CT)は、ガラスの両側にあるCS層の間に同時に形成される。圧縮応力と層の深さとの比は、CS/DOLとして表され、このような化学強化のアルカリアルミノシリケートガラスの強度や薄さと直接相関している。
【0004】
化学強化のアルカリアルミノシリケートガラスは、通常、フロート法又はオーバーフロー・フュージョン・ダウンドロー法によって製造される。従来の製品(例えばコーニング社から購入できるGorilla(R)(ゴリラ)ガラス2及びGorilla(R)ガラス3、旭硝子から購入できるDragontrail(R)(ドラゴントレイル)及びショット社から購入できるXensation(R)(センセーション))のCS/DOL比は、一般的に30未満のCS/DOL比を有している。これは、従来の製品のためのより高い表面圧縮応力を得るために、表面圧縮応力層の深さを増加させる必要があることを意味する。しかし、表面圧縮応力層の深さを増加させると共に、ガラスの厚さも増加させるため、現実的な解決策ではない。
【0005】
また、より長いイオン交換工程は、一般に、表面圧縮応力層の深さを大きくする必要がある。なお、表面圧縮応力層の深さがより大きくなると、ガラスを処理することがより困難になる。特に、チップなしで滑らかな縁を有するようにガラスを切断するために、ガラス切断機のスクライビングホイールは、ガラスを表面圧縮応力層の深さよりも大きい深さまで貫通する必要がある。表面圧縮応力層の深さを増加させるにつれて、ガラスを切断することもより困難になる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
電子携帯機器市場は、より薄いカバーガラスを要求し続けており、表面圧縮応力層の深さを減少する必要がある。適切な特性を有するカバーガラスを製造するために、CS/DOL比を増加させ、DOLを増加させない化学強化のガラスが必要とされる。
【0007】
いくつかの例示的な実施形態において、本発明は、表面圧縮応力層を有する化学強化のアルカリアルミノシリケートガラスを製造するためのイオン交換可能なガラス組成物を開示する。前記表面圧縮応力層は、高い圧縮応力(CS)と低い層の深さ(DOL)を有するので、増加させたCS/DOL比を有する。高い圧縮応力(CS)と低い層の深さ(DOL)は、化学強化工程を経て得られ、ガラス表面にあるナトリウムイオンがより大きいカリウムイオンで置換される。低いDOLは、スクライビング工程の収率が増加するため、ガラス加工に有益である。又、高い圧縮応力を有するガラス面は、外部衝撃力に耐えることができる強力なガラスを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
いくつかの例示的な実施形態において、本発明は、化学強化のアルカリアルミノシリケートガラスを製造するためのイオン交換可能なガラス組成物であって、
約60.0〜70.0モル%のSiOと、
約6.0〜12.0モル%のAlと、
少なくとも約10.5モル%のNAOと、
約0〜5.0モル%のBと、
約0〜0.4モル%のKOと、
少なくとも約8.0モル%のMgOと、
約0〜6.0モル%のZnOと、
約0〜2.0モル%のLiOと、を含み、
LiO+ZnO+KO>13.0モル%である。
【0009】
いくつかの例示的な実施形態によれば、化学強化のアルカリアルミノシリケートガラスを製造するためのイオン交換可能なガラス組成物は、約60.0〜70.0モル%の二酸化ケイ素(SiO)を含む。二酸化ケイ素は、アルカリアルミノシリケートガラス組成物の最大の単一成分であり、ガラスの基質を形成する。二酸化ケイ素は、ガラスの構造的なコーディネーターとしての役割を果たし、ガラスの成形性、剛性及び化学的耐久性に寄与する。二酸化ケイ素の濃度が70.0モル%を超える場合、ガラス組成物の溶融温度が上昇し、溶融ガラスを処理しにくくなり、形成し難くなる。二酸化ケイ素の濃度が60.0モル%以下になる場合、ガラス(特に高い濃度を有する酸化ナトリウム又は酸化マグネシウムのガラス組成物)の液相線温度は、実質的に増加する傾向があり、ガラスの失透が生じやすい。
【0010】
いくつかの例示的な実施形態によれば、化学強化アルカリアルミノシリケートガラスを製造するためのイオン交換可能なガラス組成物は、約6.0〜12.0モル%の酸化アルミニウム(Al)を含む。酸化アルミニウムは、約6.0〜12.0モル%の濃度を有する場合、化学強化のアルカリアルミノシリケートガラスの強度を高め、ガラス表面のナトリウムイオンとイオン交換溶液中のカリウムイオンとのイオン交換を促進する。酸化アルミニウムが、15.0モル%の濃度を越える場合、ガラスの粘度が極端に高くなり、ガラスの失透の傾向があり、液相線温度は高すぎて連続シート形成工程を行うことができない。
【0011】
いくつかの例示的な実施形態によれば、化学強化のアルカリアルミノシリケートガラスを製造するためのイオン交換可能なガラス組成物は、少なくとも約10.5モル%の酸化ナトリウム(NAO)を含む。いくつかの例示的な実施形態によれば、化学強化のアルカリアルミノシリケートガラスを製造するためのイオン交換可能なガラス組成物は、約10.5〜20.0モル%の酸化ナトリウムを含む。いくつかの例示的な実施形態によれば、化学強化のアルカリアルミノシリケートガラスを製造するためのイオン交換可能なガラス組成物は、約14.0〜20.0モル%の酸化ナトリウムを含む。アルカリ金属酸化物は、低い液相線温度及び低い溶融温度を達成することを助ける。ナトリウムの場合、NAOは、イオン交換を可能にするために使用される。十分なイオン交換を可能にして実質的に強化されたガラス強度を提供するために、酸化ナトリウムは、上記の濃度で組成物に含まれている。また、ナトリウムイオンとカリウムイオンとのイオン交換の可能性を増加させるために、いくつかの例示的な実施形態によれば、化学強化のアルカリアルミノシリケートガラスを製造するためのイオン交換可能なガラス組成物は、約0〜0.4モル%の酸化カリウム(KO)を含む。
【0012】
いくつかの例示的な実施形態によれば、化学強化のアルカリアルミノシリケートガラスを製造するためのイオン交換可能なガラス組成物は、約0〜2.0モル%の酸化リチウム(LiO)を含む。いくつかの例示的な実施形態によれば、化学強化のアルカリアルミノシリケートガラスを製造するためのイオン交換可能なガラス組成物は、合計13モル%以上の酸化リチウム(LiO)、酸化ナトリウム(NAO)及び酸化カリウム(KO)を含む。
【0013】
いくつかの例示的な実施形態によれば、化学強化のアルカリアルミノシリケートガラスを製造するためのイオン交換可能なガラス組成物は、約0〜5.0モル%の三酸化ホウ素(B)を含む。三酸化ホウ素は、フラックス及びガラスコーディネーターとして機能している。また、ガラスの溶融温度は、三酸化ホウ素の濃度の増加とともに減少する傾向があるが、ナトリウムとカリウムイオンとのイオン交換の方向は、三酸化ホウ素の濃度の増加により負の影響を受ける。従って、三酸化ホウ素の濃度の増加とともに、ガラスの溶融性とガラスのイオン交換性の間にトレードオフが存在する。
【0014】
いくつかの例示的な実施形態によれば、化学強化のアルカリアルミノシリケートガラスを製造するためのイオン交換可能なガラス組成物は、少なくとも約8.0モル%の酸化マグネシウム(MgO)を含む。いくつかの例示的な実施形態において、化学強化のアルカリアルミノシリケートガラスを製造するためのイオン交換可能なガラス組成物は、約8.0〜12.0モル%の酸化マグネシウム(MgO)を含む。酸化マグネシウムは、少なくとも8.0モル%濃度を有する場合、圧縮応力と圧縮応力層と深さとの比が劇的に増加する。酸化カルシウム(CaO)、酸化ストロンチウム(SrO)、酸化バリウム(BaO)といったアルカリ土類金属の酸化物と比較して、酸化マグネシウムは、ガラスの強度を増大させ、ガラスの比重量を減少させると考えられる。
【0015】
いくつかの例示的な実施形態によれば、化学強化のアルカリアルミノシリケートガラスを製造するためのイオン交換可能なガラス組成物は、酸化ナトリウム(NAO)及び酸化マグネシウム(MgO)の合計含有量が約22.4〜24.3モル%である。
【0016】
いくつかの例示的な実施形態によれば、化学強化のアルカリアルミノシリケートガラスを製造するためのイオン交換可能なガラス組成物は、酸化ナトリウム(NAO)及び酸化マグネシウム(MgO)の合計含有量と、二酸化ケイ素(SiO)及び酸化アルミニウム(Al)の合計含有量との比が0.29〜0.33である。
【0017】
いくつかの例示的な実施形態によれば、化学強化のアルカリアルミノシリケートガラスを製造するためのイオン交換可能なガラス組成物は、約0〜6.0モル%の酸化亜鉛(ZnO)を含む。いくつかの例示的な実施形態によれば、化学強化のアルカリアルミノシリケートガラスを製造するためのイオン交換可能なガラス組成物は、約1.0〜2.5モル%の酸化亜鉛を含む。酸化亜鉛及び酸化マグネシウム(MgO)は、特に、酸化カルシウム(CaO)、酸化ストロンチウム(SrO)、酸化バリウム(BaO)に比べて、イオン交換率を向上させる。
【0018】
上述した化学強化のアルカリアルミノシリケートガラスを製造するためのイオン交換可能なガラス組成物のいくつかの例示的な実施形態によれば、前記ガラスは、少なくとも約900℃の液相線温度(結晶が最初に観察される温度)を有する。上述した化学強化のアルカリアルミノシリケートガラスを製造するためのイオン交換可能なガラス組成物のいくつかの例示的な実施形態によれば、前記ガラスは、少なくとも約950℃の液相線温度を有する。上述した化学強化のアルカリアルミノシリケートガラスを製造するためのイオン交換可能なガラス組成物のいくつかの例示的な実施形態によれば、前記ガラスは、少なくとも約1000℃の液相線温度を有する。上述した化学強化のアルカリアルミノシリケートガラスを製造するためのイオン交換可能なガラス組成物のいくつかの例示的な実施形態によれば、前記ガラスは、少なくとも約1100℃の液相線温度を有する。上述した化学強化のアルカリアルミノシリケートガラスを製造するためのイオン交換可能なガラス組成物のいくつかの例示的な実施形態によれば、前記ガラスは、900〜1100℃の液相線温度を有する。
【0019】
いくつかの例示的な実施形態によれば、本発明は、化学強化のアルカリアルミノシリケートガラスを製造するための方法を開示する。いくつかの例示的な実施形態によれば、前記方法は、
均質なガラス溶融物を形成するように、ガラス原料成分を混合し溶融する工程と、
ダウンドロー法、フロート法及びそれらの組み合わせから選択される方法を用いてガラスを成形する工程と、
前記ガラスをアニールする工程と、
イオン交換による前記ガラスを化学強化する工程と、を含む。
【0020】
いくつかの例示的な実施形態によれば、化学強化のアルカリアルミノシリケートガラスの製造は、当業者によく知られている従来のダウンドロー法を用いて行うことができ、これは通常、直接または間接的に加熱された貴金属系を含む。前記貴金属系は、均質化装置、微細化により気泡含有量を低下させる装置、冷却と熱の均質化に用いられる装置、分散装置及び他の装置からなる。フロート法は、溶融ガラスを溶融金属(錫)床に浮上し、非常に平坦で均一な厚さを有するガラスが得られる。
【0021】
上述した化学強化の化学強化のアルカリアルミノシリケートガラスを製造するための方法のいくつかの例示的な実施形態によれば、イオン交換可能なガラス組成物は、約1650℃の温度で約12時間までに溶融される。上述した化学強化の化学強化のアルカリアルミノシリケートガラスを製造するための方法のいくつかの例示的な実施形態によれば、イオン交換可能なガラス組成物は、約1650℃の温度で約6時間までに溶融される。上述した化学強化の化学強化のアルカリアルミノシリケートガラスを製造するための方法のいくつかの例示的な実施形態によれば、イオン交換可能なガラス組成物は、約1650℃の温度で約4時間までに溶融される。上述した化学強化の化学強化のアルカリアルミノシリケートガラスを製造するための方法のいくつかの例示的な実施形態によれば、イオン交換可能なガラス組成物は、約1650℃の温度で約2時間までに溶融される。
【0022】
上述した化学強化のアルカリアルミノシリケートガラスを製造するための方法のいくつかの例示的な実施形態によれば、イオン交換可能なガラス組成物は、約0.5℃/時間の速度で室温(約21℃)に達するまでアニールされる。
【0023】
いくつかの例示的な実施形態によれば、上述した化学強化のアルカリアルミノシリケートガラスを製造するためのイオン交換可能なガラス組成物は、従来のイオン交換条件に応じて化学的に強化される。上述した化学強化のアルカリアルミノシリケートガラスを製造するための方法のいくつかの例示的な実施形態によれば、イオン交換工程は、溶融塩浴において起こる。いくつかの例示的な実施形態において、溶融塩は、硝酸カリウム(KNO)である。
【0024】
上述した化学強化のアルカリアルミノシリケートガラスを製造するための方法のいくつかの例示的な実施形態によれば、イオン交換工程は、約390〜450℃までの温度範囲で行われる。
【0025】
上述した化学強化のアルカリアルミノシリケートガラスを製造するための方法のいくつかの例示的な実施形態によれば、イオン交換工程は、約8時間まで行われる。上述した化学強化のアルカリアルミノシリケートガラスを製造するための方法のいくつかの例示的な実施形態によれば、イオン交換工程は、約4時間まで行われる。上述した化学強化のアルカリアルミノシリケートガラスを製造するための方法のいくつかの例示的な実施形態によれば、イオン交換工程は、約2時間まで行われる。上述した化学強化のアルカリアルミノシリケートガラスを製造するための方法のいくつかの例示的な実施形態によれば、イオン交換工程は、約2〜8時間行われる。
【0026】
上述した化学強化のアルカリアルミノシリケートガラスのいくつかの例示的な実施形態によれば、前記ガラスは、少なくとも約500MPaの圧縮応力を有する表面圧縮応力層を有する。上述した化学強化のアルカリアルミノシリケートガラスのいくつかの例示的な実施形態によれば、前記ガラスは、少なくとも約800MPaの圧縮応力を有する表面圧縮応力層を有する。上述した化学強化のアルカリアルミノシリケートガラスのいくつかの例示的な実施形態によれば、前記ガラスは、少なくとも約1100MPaの圧縮応力を有する表面圧縮応力層を有する。上述した化学強化のアルカリアルミノシリケートガラスのいくつかの例示的な実施形態によれば、前記ガラスは、少なくとも約1350MPaの圧縮応力を有する表面圧縮応力層を有する。上述した化学強化のアルカリアルミノシリケートガラスのいくつかの例示的な実施形態によれば、前記ガラスは、500〜1350MPaの圧縮応力を有する表面圧縮応力層を有する。
【0027】
上述した化学強化のアルカリアルミノシリケートガラスのいくつかの例示的な実施形態によれば、前記ガラスは、少なくとも約18.5μmの深さを有する圧縮応力層を有する。上述した化学強化のアルカリアルミノシリケートガラスのいくつかの例示的な実施形態によれば、前記ガラスは、少なくとも約22.0μmの深さを有する圧縮応力層を有する。上述した化学強化のアルカリアルミノシリケートガラスのいくつかの例示的な実施形態によれば、前記ガラスは、少なくとも約35.5μmの深さを有する圧縮応力層を有する。上述した化学強化のアルカリアルミノシリケートガラスのいくつかの例示的な実施形態によれば、前記ガラスは、18.5〜35.5μmの深さを有する圧縮応力層を有する。
【0028】
上述した化学強化のアルカリアルミノシリケートガラスのいくつかの例示的な実施形態によれば、前記ガラスは、少なくとも約26の圧縮応力と表面圧縮応力層の深さとの比を有する。上述した化学強化のアルカリアルミノシリケートガラスのいくつかの例示的な実施形態によれば、前記ガラスは、少なくとも約30の圧縮応力と表面圧縮応力層の深さとの比を有する。上述した化学強化のアルカリアルミノシリケートガラスのいくつかの例示的な実施形態によれば、前記ガラスは、約70までの圧縮応力と表面圧縮応力層の深さとの比を有する。上述した化学強化のアルカリアルミノシリケートガラスのいくつかの例示的な実施形態によれば、前記ガラスは、26〜70の圧縮応力と表面圧縮応力層の深さとの比を有する。上述した化学強化のアルカリアルミノシリケートガラスのいくつかの例示的な実施形態によれば、前記ガラスは、30〜70の圧縮応力と表面圧縮応力層の深さとの比を有する。上述した化学強化のアルカリアルミノシリケートガラスのいくつかの例示的な実施形態によれば、前記ガラスは、35〜70の圧縮応力と表面圧縮応力層の深さとの比を有する。上述した化学強化のアルカリアルミノシリケートガラスのいくつかの例示的な実施形態によれば、前記ガラスは、40〜70の圧縮応力と表面圧縮応力層の深さとの比を有する。
【0029】
上述した化学強化のアルカリアルミノシリケートガラスのいくつかの例示的な実施形態によれば、前記ガラスは、約0.3〜2.0mmの厚さを有する。
【0030】
上述した化学強化のアルカリアルミノシリケートガラスのいくつかの例示的な実施形態によれば、前記ガラスは、最大約2.6g/cmの密度及び約86.0〜99.0の線膨張係数(α25−30010−7/℃)を有する。
【0031】
上述した化学強化のアルカリアルミノシリケートガラスのいくつかの例示的な実施形態によれば、前記ガラスは、ソーラーパネル、冷蔵庫のドア、及びその他の家庭用品などの用途に保護ガラスとして使用してもよい。上述した化学強化のアルカリアルミノシリケートガラスのいくつかの例示的な実施形態によれば、前記ガラスは、テレビの保護ガラス、現金自動預け払い機用安全ガラス及び他の電子製品の安全ガラスとして使用してもよい。上述した化学強化のアルカリアルミノシリケートガラスのいくつかの例示的な実施形態によれば、前記ガラスは、スマートフォン、タブレット、ノートパッドなどの消費者の携帯電子機器用のカバーガラスとして使用してもよい。上述した化学強化のアルカリアルミノシリケートガラスのいくつかの例示的な実施形態によれば、前記ガラスは、その高い強度でタッチスクリーンやタッチパネルとして使用してもよい。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下の実施例は、上述の組成物及び方法を例示するものである。
【0033】
以下の表1に示す成分が含まれるイオン交換可能なガラス組成物は、次のように調製した。
【表1】
【0034】
表2に示すようなバッチ材料を秤量して混合し、2リットルのプラスチック容器に添加する。使用されるバッチ材料は、化学試薬等級の品質を有する。
【表2】
【0035】
砂の粒子サイズは0.045〜0.25mmである。タンブラーは、均質なバッチを作成し、ソフトな凝集体を破壊するために原料を混合するために使用する。ガラス溶融のために、混合バッチをプラスチック容器から800mlの白金・ロジウム合金るつぼに移す。白金・ロジウム合金るつぼは、アルミナバッカーに入れ置き、900℃の温度でMoSi加熱要素を備えた高温炉に詰め込む。高温炉の温度を徐々に1650℃まで上昇させ、前記バッカーを有する白金・ロジウム合金るつぼをこの温度で4時間保持する。次いで、ガラスサンプルは、ガラスパテを形成するために、白金・ロジウム合金るつぼから溶融バッチ材料をステンレス板に注入することにより形成する。ガラスパテがまだ熱い間に、アニーラーに移し、620℃の温度で2時間保持し、その後、0.5℃/分の速度で室温(21℃)に冷却する。
【0036】
次いで、ガラスサンプルは、溶融塩浴タンクに配置されることによって化学的に強化される。溶融塩浴タンクにおいて、ガラスの組成であるナトリウムイオンは、420℃の温度(ガラスの歪み点以下)で外部から供給されるカリウムイオンと4時間交換される。この方法により、ガラスサンプルは、処理された表面に圧縮応力層を生成するようにイオン交換によって強化される。
【0037】
ガラス表面の圧縮応力及び圧縮応力層の深さ(複屈折に基づく)の測定は、ガラスの断面に偏光顕微鏡(ベレック補償板)を用いて行う。ガラス表面の圧縮応力は、0.26(nmcm/N)の応力−光学定数(Scholze, H., Nature, Structure and Properties, Springer-Verlag, 1988, p.260)を仮定して測定した複屈折から算出する。
【0038】
上記表1に示す組成物の結果は、以下の表3において“Ex. 1”として指定された列に示す。表3に示す“Ex. 2” 〜“Ex. 12”の他の組成物は、上述“Ex. 1”として指定された組成物と同様の方法で調製する。
【表3】
【0039】
表3に記載された記号の定義は以下のとおりである。
・D:アルキメデス法(ASTM C693)により測定される密度(g/ml)
・nD:屈折率測定によって測定された屈折率
・α:膨張計によって測定された25〜300℃の線形寸法変化量である熱膨張係数(CTE)
・T10e2.5:高温円筒粘度計によって測定された102.5ポアズの粘度での温度
・TW:10ポアズの粘度でのガラス作業温度
・Tliq:第一結晶は、傾斜温度炉(ASTM C829-81)内のボートに観察される液相線温度であり、一般的に、テストは、結晶化に対し作用する72時間行われる
・Tsoft:繊維伸長法によって測定された107.6ポアズの粘度でのガラスの軟化温度
・Ta:繊維伸長法によって測定された1013ポアズの粘度でのガラスのアニール温度
・Ts:繊維伸長法によって測定された1014.5ポアズの粘度でのガラス歪み温度
・VH:ビッカース硬度
・VHCS:化学強化後のビッカース硬度。
・CS:圧縮応力(面内応力、表面の原子を圧縮する傾向がある)
・DOL:ゼロ応力面に最も近い表面よりも低い圧縮応力層の深さを表す層の深さ。
・CS / DOL:圧縮応力と層の深さとの比
【0040】
本発明は、特定の実施形態に関して説明してきたが、当業者であれば、本発明は添付の特許請求の範囲の精神及び範囲内の変更で実施することができることを理解するだろう。
【0041】
任意の空間参照例、例えば「より上」、「より下」、「上」、「下」、「との間」、「下部」、「垂直」、「水平」、「角度」、「上向き」、「下向き」、「左右に」、「右から左」、「左」、「右」、「左から右」、「上から下」「下から上」、「トップ」、「ボトム」、「ボトムアップ」、「トップダウン」等は、説明のためのものであり、上記構造の特定の方向や位置を限定するものではない。
【0042】
本発明は、特定の実施形態により説明した。本発明を読んだ後に当業者に明らかとなる改良や変更は、本願の精神及び範囲内にあるとみなされる。前述の開示を逸脱しない範囲で、いくつかの修正、変更及び置換が可能であり、いくつかの場合において、本発明の一部の特徴は、他の特徴に対応する使用しないときに使用されることが理解される。従って、添付の特許請求の範囲は、本発明の範囲と一致する方法で広く解釈されることが適当である。
以下に、本願の出願当初の請求項の記載を付記する。
[1] 化学強化のアルカリアルミノシリケートガラスを製造するためのイオン交換可能なガラス組成物であって、
約60.0〜70.0モル%のSiOと、
約6.0〜12.0モル%のAlと、
少なくとも約10.5モル%のNAOと、
約0〜5.0モル%のBと、
約0〜0.4モル%のKOと、
少なくとも約8.0モル%のMgOと、
約0〜6.0モル%のZnOと、
約0〜2.0モル%のLiOと、を含み、
LiO+ZnO+KO>13.0モル%であることを特徴とするイオン交換可能なガラス組成物。
[2] 前記ガラス組成物は、約10.5〜20.0モル%のNAOを含むことを特徴とする[1]に記載のイオン交換可能なガラス組成物。
[3] 前記ガラス組成物は、約14.0〜20.0モル%のNAOを含むことを特徴とする[2]に記載のイオン交換可能なガラス組成物。
[4] 前記ガラス組成物は、約8.0〜12.0モル%のMgOを含むことを特徴とする[1]に記載のイオン交換可能なガラス組成物。
[5] 22.4モル%<NAO+MgO<24.3モル%であることを特徴とする[1]に記載のイオン交換可能なガラス組成物。
[6] 0.29<(NAO+MgO)/(SiO+Al)<0.33であることを特徴とする[1]に記載のイオン交換可能なガラス組成物。
[7] 前記ガラス組成物は、約1.0〜2.5モル%のZnOを含むことを特徴とする[1]に記載のイオン交換可能なガラス組成物。
[8] 前記ガラス組成物は、少なくとも約900℃の液相線温度を有することを特徴とする[1]に記載のイオン交換可能なガラス組成物。
[9] 前記ガラス組成物は、少なくとも約950℃の液相線温度を有することを特徴とする[8]に記載のイオン交換可能なガラス組成物。
[10] 前記ガラス組成物は、少なくとも約1000℃の液相線温度を有することを特徴とする[9]に記載のイオン交換可能なガラス組成物。
[11] 前記ガラス組成物は、少なくとも約1100℃の液相線温度を有することを特徴とする[10]に記載のイオン交換可能なガラス組成物。
[12] 前記ガラス組成物は、少なくとも約900〜1100℃の液相線温度を有することを特徴とする[1]に記載のイオン交換可能なガラス組成物。
[13] ガラス組成物から製造された化学強化のアルカリアルミノシリケートガラスであって、
前記ガラス組成物は、
約60.0〜70.0モル%のSiOと、
約6.0〜12.0モル%のAlと、
少なくとも約10.5モル%のNAOと、
約0〜5.0モル%のBと、
約0〜0.4モル%のKOと、
少なくとも約8.0モル%のMgOと、
約0〜6.0モル%のZnOと、
約0〜2.0モル%のLiOと、を含み、
LiO+ZnO+KO>13.0モル%であり、
前記ガラス組成物は、イオン交換され、表面圧縮応力層を有し、
前記表面圧縮応力層は、圧縮応力及び深さを有し、
前記表面圧縮応力層の前記圧縮応力と前記表面圧縮応力層の前記深さの比が少なくとも約26であることを特徴とする化学強化のアルカリアルミノシリケートガラス。
[14] 前記ガラス組成物は、
約14.0〜20.0モル%のNAOと、
約8.0〜12.0モル%のMgOと、を含むことを特徴とする[13]に記載の化学強化のアルカリアルミノシリケートガラス。
[15] 前記表面圧縮応力層は、少なくとも約500MPaの前記圧縮応力を有することを特徴とする[13]に記載の化学強化のアルカリアルミノシリケートガラス。
[16] 前記表面圧縮応力層は、少なくとも約800MPaの前記圧縮応力を有することを特徴とする[15]に記載の化学強化のアルカリアルミノシリケートガラス。
[17] 前記表面圧縮応力層は、少なくとも約1100MPaの前記圧縮応力を有することを特徴とする[16]に記載の化学強化のアルカリアルミノシリケートガラス。
[18] 前記表面圧縮応力層は、少なくとも約1350MPaの前記圧縮応力を有することを特徴とする[17]に記載の化学強化のアルカリアルミノシリケートガラス。
[19] 前記表面圧縮応力層は、約500〜1350MPaの前記圧縮応力を有することを特徴とする[13]に記載の化学強化のアルカリアルミノシリケートガラス。
[20] 前記表面圧縮応力層は、少なくとも約18.5μmの前記深さを有することを特徴とする[13]に記載の化学強化のアルカリアルミノシリケートガラス。
[21] 前記表面圧縮応力層は、少なくとも約22.0μmの前記深さを有することを特徴とする[20]に記載の化学強化のアルカリアルミノシリケートガラス。
[22] 前記表面圧縮応力層は、少なくとも約35.0μmの前記深さを有することを特徴とする[21]に記載の化学強化のアルカリアルミノシリケートガラス。
[23] 前記表面圧縮応力層は、約18.5〜35.0μmの前記深さを有することを特徴とする[13]に記載の化学強化のアルカリアルミノシリケートガラス。
[24] 前記表面圧縮応力層の前記圧縮応力と前記表面圧縮応力層の前記深さの比が少なくとも約30であることを特徴とする[13]に記載の化学強化のアルカリアルミノシリケートガラス。
[25] 前記表面圧縮応力層の前記圧縮応力と前記表面圧縮応力層の前記深さとの比が少なくとも約26〜70であることを特徴とする[13]に記載の化学強化のアルカリアルミノシリケートガラス。
[26] 前記表面圧縮応力層の前記圧縮応力と前記表面圧縮応力層の前記深さとの比が少なくとも約30〜70であることを特徴とする[13]に記載の化学強化のアルカリアルミノシリケートガラス。
[27] 前記表面圧縮応力層の前記圧縮応力と前記表面圧縮応力層の前記深さとの比が少なくとも約35〜70であることを特徴とする[13]に記載の化学強化のアルカリアルミノシリケートガラス。
[28] 前記表面圧縮応力層の前記圧縮応力と前記表面圧縮応力層の前記深さとの比が少なくとも約40〜70であることを特徴とする[13]に記載の化学強化のアルカリアルミノシリケートガラス。
[29] 前記ガラスは、約0.3〜2.0mmの厚さを有することを特徴とする[13]に記載の化学強化のアルカリアルミノシリケートガラス。
[30] 前記ガラスは、最大約2.6g/cm密度を有することを特徴とする[13]に記載の化学強化のアルカリアルミノシリケートガラス。
[31] 前記ガラスは、約86.0〜99.0の線膨張係数(α25−30010−7/℃)を有することを特徴とする[13]に記載の化学強化のアルカリアルミノシリケートガラス。
[32] 化学強化のアルカリアルミノシリケートガラスを製造する方法であって、
均質なガラス溶融物を形成するように、ガラス原料成分を混合し溶融する工程と、
ダウンドロー法、フロート法及びそれらの組み合わせから選択される方法を用いてガラスを成形する工程と、
前記ガラスをアニールする工程と、
イオン交換による前記ガラスを化学強化する工程と、を含み、
前記均質なガラス溶融物は、
約60.0〜70.0モル%のSiOと、
約6.0〜12.0モル%のAlと、
少なくとも約10.5モル%のNAOと、
約0〜5.0モル%のBと、
約0〜0.4モル%のKOと、
少なくとも約8.0モル%のMgOと、
約0〜6.0モル%のZnOと、
約0〜2.0モル%のLiOと、を含み、
LiO+ZnO+KO>13.0モル%であることを特徴とする化学強化のアルカリアルミノシリケートガラスを製造する方法。
[33] 前記ガラス原料成分は、約1650℃の温度で約12時間までに溶融されることを特徴とする[32]に記載の方法。
[34] 前記ガラス原料成分は、約1650℃の温度で約6時間までに溶融されることを特徴とする[33]に記載の方法。
[35] 前記ガラス原料成分は、約1650℃の温度で約4時間までに溶融されることを特徴とする[34]に記載の方法。
[36] 前記ガラス原料成分は、約1650℃の温度で約2時間までに溶融されることを特徴とする[35]に記載の方法。
[37] 前記ガラスは、約0.5℃/時間の速度でアニールされることを特徴とする[32]に記載の方法。
[38] 前記ガラスは、溶融塩浴においてイオン交換によって化学強化されることを特徴とする[32]に記載の方法。
[39] 前記溶融塩は、KNOであることを特徴とする[38]に記載の方法。
[40] 前記ガラスは、約390〜450℃の温度でイオン交換により化学強化されることを特徴とする[32]に記載の方法。
[41] 前記ガラスは、約8時間までにイオン交換によって化学強化されることを特徴とする[32]に記載の方法。
[42] 前記ガラスは、約4時間までにイオン交換によって化学強化されることを特徴とする[41]に記載の方法。
[43] 前記ガラスは、約2時間までにイオン交換によって化学強化されることを特徴とする[42]に記載の方法。
[44] 前記ガラスは、約2〜8時間にイオン交換によって化学強化されることを特徴とする[32]に記載の方法。