【実施例】
【0056】
以下、本発明について、実施例に基づき具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0057】
[製造例1:NCM系複合酸化物の二次粒子(NCM−A)の製造]
Ni:Co:Mnのモル比が1:1:1となるように、硫酸ニッケル六水和物 263g、硫酸コバルト七水和物 281g、硫酸マンガン五水和物 241g、及び水 3Lを混合した後、かかる混合液に25%アンモニア水を、滴下速度300ml/分で滴下して、pHが11の金属複合水酸化物を含むスラリーA1を得た。
次いで、スラリーA1をろ過、乾燥して、金属複合水酸化物の混合物B1を得た後、かかる混合物B1に炭酸リチウム37gをボールミルで混合して粉末混合物C1を得た。
得られた粉末混合物C1を、空気雰囲気下で800℃×5時間仮焼成して解砕した後、本焼成として空気雰囲気下で800℃×10時間焼成し、NCM系複合酸化物(LiNi
1/3Co
1/3Mn
1/3O
2)の二次粒子Aを得た。(二次粒子の平均粒径:10μm)
以後、上記NCM系複合酸化物の二次粒子AをNCM−Aと称する。
【0058】
[製造例2:NCM系複合酸化物の二次粒子(NCM−B)の製造]
製造例1のNCM系複合酸化物(1)の製造において、硫酸ニッケル六水和物、硫酸コバルト七水和物、硫酸マンガン五水和物硫酸ニッケル六水和物の使用量を、それぞれ473g、169g、145g(Ni:Co:Mnのモル比=6:2:2)とし、金属複合水酸化物の混合物に混合した炭酸リチウムの代わりに水酸化リチウム一水和物 22gを混合した以外、製造例1と同様にして、NCM系複合酸化物(LiNi
1/3Co
1/3Mn
1/3O
2)の二次粒子Bを得た。(二次粒子の平均粒径:10μm)
以後、上記NCM系複合酸化物の二次粒子BをNCM−Bと称する。
【0059】
[製造例3:NCA系複合酸化物の二次粒子(NCA−A)の製造]
Li:Ni:Co:Alのモル比が1:0.8:0.15:0.05となるように、炭酸リチウム370g、炭酸ニッケル950g、炭酸コバルト150g、炭酸アルミニウム58g、及び水3Lを混合した後、ボールミルで混合して粉末混合物A2を得た。得られた粉末混合物A2を、空気雰囲気下で800℃×5時間仮焼成して解砕した後、本焼成として空気雰囲気下で800℃×24時間焼成し、NCA系複合酸化物(LiNi
0.8Co
0.15Al
0.05O
2)の二次粒子Cを得た。(二次粒子の平均粒径:10μm)
以後、上記NCA系複合酸化物の二次粒子CをNCA−Aと称する。
【0060】
[製造例4:リチウム系ポリアニオン粒子(LMP−A)の製造]
LiOH・H
2O 1272g、及び水4Lを混合してスラリーA3を得た。次いで、得られたスラリーA3を、25℃の温度に保持しながら3分間撹拌しつつ85%のリン酸水溶液1153gを35mL/分で滴下し、続いてセルロースナノファイバー(Wma−10002、スギノマシン社製、繊維径4〜20nm)5892gを添加して、速度400rpmで12時間撹拌して、Li
3PO
4を含むスラリーB3を得た。
得られたスラリーB3に窒素パージして、スラリーB3の溶存酸素濃度を0.5mg/Lとした後、スラリーB3全量に対し、MnSO
4・5H
2O 1688g、FeSO
4・7H
2O 834gを添加してスラリーC3を得た。添加したMnSO
4とFeSO
4のモル比(マンガン化合物:鉄化合物)は、70:30であった。
次いで、得られたスラリーC3をオートクレーブに投入し、170℃で1時間水熱反応を行った。オートクレーブ内の圧力は0.8MPaであった。水熱反応後、生成した結晶をろ過し、次いで結晶1質量部に対し12質量部の水により洗浄した。洗浄した結晶を−50℃で12時間凍結乾燥して複合体D3を得た。
得られた複合体D3を1000g分取し、これに水1Lを添加して、スラリーE3を得た。得られたスラリーE3を超音波攪拌機(T25、IKA社製)で1分間分散処理して、全体を均一に呈色させた後、スプレードライ装置(MDL−050M、藤崎電機株式会社製)を用いてスプレードライに付して造粒体F3を得た。
得られた造粒体F3を、アルゴン水素雰囲気下(水素濃度3%)、700℃で1時間焼成して、2.0質量%のセルロースナノファイバー由来の炭素が担持されたリン酸マンガン鉄リチウムA(LiMn
0.7Fe
0.3PO
4、炭素の量=2.0質量%、平均粒径:100nm)を得た。
以後、上記リン酸マンガン鉄リチウムAをLMP−Aと称する。
【0061】
[製造例5:リチウム系ポリアニオン粒子(LMP−B)の製造]
製造例4のリチウム系ポリアニオン粒子の製造において、スラリーA3に添加したセルロースナノファイバー5892gをグルコース125gに変更した以外、製造例4と同様にして、2.0質量%のグルコース由来の炭素が担持されたリン酸マンガン鉄リチウムB(LiMn
0.7Fe
0.3PO
4、炭素の量=2.0質量%、平均粒径:100nm)を得た。
以後、上記リン酸マンガン鉄リチウムBをLMP−Bと称する。
【0062】
[製造例6:リチウム系ポリアニオン粒子(LMP−C)の製造]
製造例4のリチウム系ポリアニオン粒子の製造において、スラリーA3へのセルロースナノファイバーの添加量5892gを53028gに変更した以外、製造例4と同様にして、18.0質量%のセルロースナノファイバー由来の炭素が担持されたリン酸マンガン鉄リチウムC(LiMn
0.7Fe
0.3PO
4、炭素の量=18.0質量%、平均粒径:100nm)を得た。
以後、上記リン酸マンガン鉄リチウムCをLMP−Cと称する。
【0063】
[製造例7:リチウム系ポリアニオン粒子(LMP−D)の製造]
製造例4のリチウム系ポリアニオン粒子の製造において、スラリーA3へのセルロースナノファイバーの添加量5892gを35352gに変更した以外、製造例4と同様にして、12.0質量%のセルロースナノファイバー由来の炭素が担持されたリン酸マンガン鉄リチウムD(LiMn
0.7Fe
0.3PO
4、炭素の量=12.0質量%、平均粒径:100nm)を得た。
以後、上記リン酸マンガン鉄リチウムDをLMP−Dと称する。
【0064】
[製造例8:リチウム系ポリアニオン粒子(LMP−E)の製造]
製造例4のリチウム系ポリアニオン粒子の製造において、スラリーA3へのセルロースナノファイバーの添加量5892gを2946gに変更した以外、製造例4と同様にして、1.0質量%のセルロースナノファイバー由来の炭素が担持されたリン酸マンガン鉄リチウムE(LiMn
0.7Fe
0.3PO
4、炭素の量=1.0質量%、平均粒径:100nm)を得た。
以後、上記リン酸マンガン鉄リチウムEをLMP−Eと称する。
【0065】
[製造例9:リチウム系ポリアニオン粒子(LMP−F)の製造]
製造例4のリチウム系ポリアニオン粒子の製造において、スラリーA3へのセルロースナノファイバーの添加量5892gを294gに変更した以外、製造例4と同様にして、0.1質量%のセルロースナノファイバー由来の炭素が担持されたリン酸マンガン鉄リチウムF(LiMn
0.7Fe
0.3PO
4、炭素の量=0.1質量%、平均粒径:100nm)を得た。
以後、上記リン酸マンガン鉄リチウムFをLMP−Fと称する。
【0066】
[製造例10:リチウム系ポリアニオン粒子(LMP−G)の製造]
製造例4のリチウム系ポリアニオン粒子の製造において、スラリーA3へのセルロースナノファイバーの添加量5892gを147gに変更した以外、製造例4と同様にして、0.05質量%のセルロースナノファイバー由来の炭素が担持されたリン酸マンガン鉄リチウムG(LiMn
0.7Fe
0.3PO
4、炭素の量=0.05質量%、平均粒径:100nm)を得た。
以後、上記リン酸マンガン鉄リチウムGをLMP−Gと称する。
【0067】
[製造例11:リチウム系ポリアニオン粒子(LMP−H)の製造]
製造例4のリチウム系ポリアニオン粒子の製造において、スラリーC3の水熱反応条件170℃×1時間を200℃×48時間に変更した以外、製造例4と同様にして、2.0質量%のセルロースナノファイバー由来の炭素が担持されたリン酸マンガン鉄リチウムH(LiMn
0.7Fe
0.3PO
4、炭素の量=2.0質量%、平均粒径:500nm)を得た。
以後、上記リン酸マンガン鉄リチウムHをLMP−Hと称する。
【0068】
[製造例12:リチウム系ポリアニオン粒子(LMP−I)の製造]
製造例4のリチウム系ポリアニオン粒子の製造において、スラリーC3の水熱反応条件170℃×1時間を200℃×3時間に変更した以外、製造例4と同様にして、2.0質量%のセルロースナノファイバー由来の炭素が担持されたリン酸マンガン鉄リチウムI(LiMn
0.7Fe
0.3PO
4、炭素の量=2.0質量%、平均粒径:150nm)を得た。
以後、上記リン酸マンガン鉄リチウムIをLMP−Iと称する。
【0069】
[製造例13:リチウム系ポリアニオン粒子(LMP−J)の製造]
製造例4のリチウム系ポリアニオン粒子の製造において、スラリーC3の水熱反応条件170℃×1時間を140℃×1時間に変更した以外、製造例4と同様にして、2.0質量%のセルロースナノファイバー由来の炭素が担持されたリン酸マンガン鉄リチウムJ(LiMn
0.7Fe
0.3PO
4、炭素の量=2.0質量%、平均粒径:70nm)を得た。
以後、上記リン酸マンガン鉄リチウムJをLMP−Jと称する。
【0070】
[製造例14:リチウム系ポリアニオン粒子(LMP−K)の製造]
製造例4のリチウム系ポリアニオン粒子の製造において、スラリーC3の水熱反応条件170℃×1時間を140℃×10分間に変更した以外、製造例4と同様にして、2.0質量%のセルロースナノファイバー由来の炭素が担持されたリン酸マンガン鉄リチウムK(LiMn
0.7Fe
0.3PO
4、炭素の量=2.0質量%、平均粒径:10nm)を得た。
以後、上記リン酸マンガン鉄リチウムKをLMP−Kと称する。
【0071】
[製造例15:リチウム系ポリアニオン粒子(LMP−L)の製造]
製造例4のリチウム系ポリアニオン粒子の製造において、スラリーA3にセルロースナノファイバーを添加しない以外、製造例4と同様にして、炭素が担持されていないリン酸マンガン鉄リチウムL(LiMn
0.7Fe
0.3PO
4、炭素の量=0.0質量%、平均粒径:10nm)を得た。
以後、上記リン酸マンガン鉄リチウムLをLMP−Lと称する。
【0072】
[実施例1:(NCM−A70%+LMP−A30%)複合体a1]
製造例1で得られたNCM−A350gと、製造例4で得られたLMP−A 150gを、メカノフュージョン(ホソカワミクロン社製、AMS−Lab)を用いて20m/s(2600rpm)で10分間の複合化処理を行い、NCMとLMP−Aとが複合化してなるリチウムイオン二次電池用正極活物質複合体a1を得た。
【0073】
[実施例2:(NCM−A70%+LMP−B30%)複合体b1]
LMP−Aを製造例5で得られたLMP−Bに変更した以外、実施例1と同様にして、リチウムイオン二次電池用正極活物質複合体b1を得た。
【0074】
[実施例3:(NCM−A90%+LMP−A10%)複合体c1]
NCM−Aを450gに、LMP−Aを50gに変更した以外、実施例1と同様にして、リチウムイオン二次電池用正極活物質複合体c1を得た。
【0075】
[実施例4:(NCM−A90%+LMP−D10%)複合体d1]
NCM−Aを450gとし、LMP−Aを製造例7で得られたLMP−Dに変更し、その複合化処理量を50gとした以外、実施例1と同様にして、リチウムイオン二次電池用正極活物質複合体d1を得た。
【0076】
[実施例5:(NCM−A80%+LMP−A20%)複合体e1]
NCM−Aを400gに、LMP−Aを100gに変更した以外、実施例1と同様にして、リチウムイオン二次電池用正極活物質複合体e1を得た。
【0077】
[実施例6:(NCM−A70%+LMP−E30%)複合体f1]
LMP−Aを製造例8で得られたLMP−Eに変更した以外、実施例1と同様にして、リチウムイオン二次電池用正極活物質複合体f1を得た。
【0078】
[実施例7:(NCM−A70%+LMP−I30%)複合体g1]
LMP−Aを製造例12で得られたLMP−Iに変更した以外、実施例1と同様にして、リチウムイオン二次電池用正極活物質複合体g1を得た。
【0079】
[実施例8:(NCM−A70%+LMP−J30%)複合体h1]
LMP−Aを製造例13で得られたLMP−Jに変更した以外、実施例1と同様にして、リチウムイオン二次電池用正極活物質複合体h1を得た。
【0080】
[実施例9:(NCM−A70%+LMP−F30%)複合体i1]
LMP−Aを製造例9で得られたLMP−Fに変更した以外、実施例1と同様にして、リチウムイオン二次電池用正極活物質複合体i1を得た。
【0081】
[実施例10:(NCM−A70%+LMP−F30%)99%+グラファイト1%複合体j1]
LMP−Aを製造例9で得られたLMP−Fに変更し、さらにグラファイト(日本黒鉛社製、CGB10、平均粒径10μm)5gを添加して複合化処理を行った以外、実施例1と同様にして、リチウムイオン二次電池用正極活物質複合体j1を得た。
【0082】
[実施例11:(NCM−A70%+LMP−F30%)90%+グラファイト10%複合体k1]
LMP−Aを製造例9で得られたLMP−Fに変更し、さらにグラファイト(日本黒鉛社製、CGB10、平均粒径10μm)55gを添加して複合化処理を行った以外、実施例1と同様にして、リチウムイオン二次電池用正極活物質複合体k1を得た。
【0083】
[実施例12:(NCM−A70%+LMP−F30%)99%+グラフェン1%複合体l1]
LMP−Aを製造例9で得られたLMP−Fに変更し、さらにグラフェン(XG sciences社製、xGNP、平均粒径30μm)5gを添加して複合化処理を行った以外、実施例1と同様にして、リチウムイオン二次電池用正極活物質複合体l1を得た。
【0084】
[実施例13:(NCM−A70%+LMP−F30%)99%+アセチレンブラック1%複合体m1]
LMP−Aを製造例9で得られたLMP−Fに変更し、さらにアセチレンブラック(デンカ社製、LI−100、平均粒径50nm)5gを添加して複合化処理を行った以外、実施例1と同様にして、リチウムイオン二次電池用正極活物質複合体m1を得た。
【0085】
[実施例14:(NCM−A70%+LMP−F30%)99%+ポリアニリン1%複合体n1]
LMP−Aを製造例9で得られたLMP−Fに変更し、さらにポリアニリン(シグマアルドリッチ社製)5gを添加して複合化処理を行った以外、実施例1と同様にして、リチウムイオン二次電池用正極活物質複合体n1を得た。
【0086】
[実施例15:(NCM−B70%+LMP−A30%)複合体o1]
NCM−Aを製造例2で得られたNCM−Bに変更した以外、実施例1と同様にして、リチウムイオン二次電池用正極活物質複合体o1を得た。
【0087】
[実施例16:(NCA−A70%+LMP−A30%)複合体a2]
製造例3で得られたNCA−A350gと、製造例4で得られたLMP−A 150gを、メカノフュージョン(ホソカワミクロン社製、AMS−Lab)を用いて20m/s(2600rpm)で10分間の複合化処理を行い、NCAとLMP−Aとが複合化してなるリチウムイオン二次電池用正極活物質複合体a2を得た。
【0088】
[実施例17:(NCA−A70%+LMP−B30%)複合体b2]
LMP−Aを製造例5で得られたLMP−Bに変更した以外、実施例16と同様にして、リチウムイオン二次電池用正極活物質複合体b2を得た。
【0089】
[実施例18:(NCA−A90%+LMP−A10%)複合体c2]
NCA−Aを450gに、LMP−Aを50gに変更した以外、実施例16と同様にして、リチウムイオン二次電池用正極活物質複合体c2を得た。
【0090】
[実施例19:(NCA−A90%+LMP−D10%)複合体d2]
NCA−Aを450gとし、LMP−Aを製造例7で得られたLMP−Dに変更し、その複合化処理量を50gとした以外、実施例16と同様にして、リチウムイオン二次電池用正極活物質複合体d2を得た。
【0091】
[実施例20:(NCA−A80%+LMP−A20%)複合体e2]
NCA−Aを400gに、LMP−Aを100gに変更した以外、実施例16と同様にして、リチウムイオン二次電池用正極活物質複合体e2を得た。
【0092】
[実施例21:(NCA−A70%+LMP−E30%)複合体f2]
LMP−Aを製造例8で得られたLMP−Eに変更した以外、実施例16と同様にして、リチウムイオン二次電池用正極活物質複合体f2を得た。
【0093】
[実施例22:(NCA−A70%+LMP−I30%)複合体g2]
LMP−Aを製造例12で得られたLMP−Iに変更した以外、実施例16と同様にして、リチウムイオン二次電池用正極活物質複合体g2を得た。
【0094】
[実施例23:(NCA−A70%+LMP−J30%)複合体h2]
LMP−Aを製造例13で得られたLMP−Jに変更した以外、実施例16と同様にして、リチウムイオン二次電池用正極活物質複合体h2を得た。
【0095】
[実施例24:(NCA−A70%+LMP−F30%)複合体i2]
LMP−Aを製造例9で得られたLMP−Fに変更した以外、実施例16と同様にして、リチウムイオン二次電池用正極活物質複合体i2を得た。
【0096】
[実施例25:(NCA−A70%+LMP−F30%)99%+グラファイト1%複合体j2]
LMP−Aを製造例9で得られたLMP−Fに変更し、さらにグラファイト(日本黒鉛社製、CGB10、平均粒径10μm)5gを添加して複合化処理を行った以外、実施例16と同様にして、リチウムイオン二次電池用正極活物質複合体j2を得た。
【0097】
[実施例26:(NCA−A70%+LMP−F30%)90%+グラファイト10%複合体k2]
LMP−Aを製造例9で得られたLMP−Fに変更し、さらにグラファイト(日本黒鉛社製、CGB10、平均粒径10μm)55gを添加して複合化処理を行った以外、実施例16と同様にして、リチウムイオン二次電池用正極活物質複合体k2を得た。
【0098】
[実施例27:(NCA−A70%+LMP−F30%)99%+グラフェン1%複合体l2]
LMP−Aを製造例9で得られたLMP−Fに変更し、さらにグラフェン(XG sciences社製、xGNP、平均粒径30μm)5gを添加して複合化処理を行った以外、実施例16と同様にして、リチウムイオン二次電池用正極活物質複合体l2を得た。
【0099】
[実施例28:(NCA−A70%+LMP−F30%)99%+アセチレンブラック1%複合体m2]
LMP−Aを製造例9で得られたLMP−Fに変更し、さらにアセチレンブラック(デンカ社製、LI−100、平均粒径50nm)5gを添加して複合化処理を行った以外、実施例16と同様にして、リチウムイオン二次電池用正極活物質複合体m2を得た。
【0100】
[実施例29:(NCA−A70%+LMP−F30%)99%+ポリアニリン1%複合体n2]
LMP−Aを製造例9で得られたLMP−Fに変更し、さらにポリアニリン(シグマアルドリッチ社製)5gを添加して複合化処理を行った以外、実施例16と同様にして、リチウムイオン二次電池用正極活物質複合体n2を得た。
【0101】
[実施例30:(NCM−A35%+NCA−A35%+LMP−A30%)複合体o2]
LMP−A350gを、LMP−A175gと製造例3で得られたNCA−A175gの混合物に変更した以外、実施例1と同様にして、リチウムイオン二次電池用正極活物質複合体o2を得た。
【0102】
[比較例1:(NCM−A70%+LMP−A30%)混合物p1]
製造例1で得られたNCM−A350gと、製造例4で得られたLMP−A 150gとを、乳鉢を用いて、5分間の混合処理を行い、NCM−AとLMP−Aとが複合化することなく、単に混合してなるリチウムイオン二次電池用正極活物質混合物p1を得た。
【0103】
[比較例2:(NCM−A70%+LMP−L30%)複合体q1]
LMP−Aを製造例15で得られたLMP−Lに変更した以外、実施例1と同様にして、リチウムイオン二次電池用正極活物質複合体q1を得た。
【0104】
[比較例3:(NCM−A99.5%+LMP−A0.5%)複合体r1]
NCM−Aを497.5gに、LMP−Aを2.5gに変更した以外、実施例1と同様にして、リチウムイオン二次電池用正極活物質複合体r1を得た。
【0105】
[比較例4:(NCM−A50%+LMP−A50%)複合体s1]
NCM−Aを250.0gに、LMP−Aを250.0gに変更した以外、実施例1と同様にして、リチウムイオン二次電池用正極活物質複合体s1を得た。
【0106】
[比較例5:(NCM−A70%+LMP−G30%)複合体t1]
LMP−Aを製造例10で得られたLMP−Gに変更した以外、実施例1と同様にして、リチウムイオン二次電池用正極活物質複合体t1を得た。
【0107】
[比較例6:(NCM−A70%+LMP−C30%)複合体u1]
LMP−Aを製造例6で得られたLMP−Cに変更した以外、実施例1と同様にして、リチウムイオン二次電池用正極活物質複合体u1を得た。
【0108】
[比較例7:(NCM−A70%+LMP−K30%)複合体v1]
LMP−Aを製造例14で得られたLMP−Kに変更した以外、実施例1と同様にして、リチウムイオン二次電池用正極活物質複合体v1を得た。
【0109】
[比較例8:(NCM−A70%+LMP−H30%)複合体w1]
LMP−Aを製造例11で得られたLMP−Hに変更した以外、実施例1と同様にして、リチウムイオン二次電池用正極活物質複合体w1を得た。
【0110】
[比較例9:(NCM−B70%+LMP−A30%)混合物x1]
NCM−Aを製造例2で得られたNCM−Bに変更した以外、比較例1と同様にして、リチウムイオン二次電池用正極活物質混合物x1を得た。
【0111】
[比較例10:(NCA−A70%+LMP−A30%)混合物p2]
製造例3で得られたNCA−A350gと、製造例4で得られたLMP−A 150gとを、乳鉢を用いて、5分間の混合処理を行い、NCA−AとLMP−Aとが複合化することなく、単に混合してなるリチウムイオン二次電池用正極活物質混合物p2を得た。
【0112】
[比較例11:(NCA−A70%+LMP−L30%)複合体q2]
LMP−Aを製造例15で得られたLMP−Lに変更した以外、実施例16と同様にして、リチウムイオン二次電池用正極活物質複合体q2を得た。
【0113】
[比較例12:(NCA−A99.5%+LMP−A0.5%)複合体r2]
NCA−Aを497.5gに、LMP−Aを2.5gに変更した以外、実施例16と同様にして、リチウムイオン二次電池用正極活物質複合体r2を得た。
【0114】
[比較例13:(NCA−A50%+LMP−A50%)複合体s2]
NCA−Aを250.0gに、LMP−Aを250.0gに変更した以外、実施例16と同様にして、リチウムイオン二次電池用正極活物質複合体s2を得た。
【0115】
[比較例14:(NCA−A70%+LMP−G30%)複合体t2]
LMP−Aを製造例10で得られたLMP−Gに変更した以外、実施例16と同様にして、リチウムイオン二次電池用正極活物質複合体t2を得た。
【0116】
[比較例15:(NCA−A70%+LMP−C30%)複合体u2]
LMP−Aを製造例6で得られたLMP−Cに変更した以外、実施例16と同様にして、リチウムイオン二次電池用正極活物質複合体u2を得た。
【0117】
[比較例16:(NCA−A70%+LMP−K30%)複合体v2]
LMP−Aを製造例14で得られたLMP−Kに変更した以外、実施例16と同様にして、リチウムイオン二次電池用正極活物質複合体v2を得た。
【0118】
[比較例17:(NCA−A70%+LMP−H30%)複合体w2]
LMP−Aを製造例11で得られたLMP−Hに変更した以外、実施例16と同様にして、リチウムイオン二次電池用正極活物質複合体w2を得た。
【0119】
≪X線光電子分光法による複合体粒子表面のLMP被覆度の評価≫
比較例1、比較例9及び比較例10で得られたリチウムイオン二次電池用正極活物質混合物p1、リチウムイオン二次電池用正極活物質混合物x1、及びリチウムイオン二次電池用正極活物質混合物p2を除いた、全てのリチウムイオン二次電池用正極活物質複合体について、X線光電子分光法(XPS)を用いた複合体粒子表面に存在する元素を分析した。具体的には、正極活物資複合体もしくは正極活物質混合物のNi2p
3/2のピークから、正極活物資複合体もしくは正極活物質混合物のP2pのピークに対して規格化したLMP由来のNi2p
3/2のピークを差し引いた、差分XPSプロファイルにおけるNCM又はNCA由来のNi2p
3/2のピーク強度と、正極活物資複合体もしくは正極活物質混合物におけるLMP由来のP2pのピーク強度及びC1sのピーク強度から、下記式(2)によりXPSピーク強度比(A)を求めた。このXPSピーク強度比(A)は、値が小さいほど複合体粒子表面がLMPに被覆されていることを示す。結果を表1及び表2に示す。
XPSピーク強度比(A)=(Ni2p
3/2のピーク強度)/
((P2pのピーク強度)+(C1sのピーク強度))
・・・(2)
【0120】
≪X線光電子分光法による複合体粒子表面のLMP被覆強度の評価≫
比較例1、比較例9及び比較例10で得られたリチウムイオン二次電池用正極活物質混合物p1、リチウムイオン二次電池用正極活物質混合物x1、及びリチウムイオン二次電池用正極活物質混合物p2を除いた、全てのリチウムイオン二次電池用正極活物質複合体について、複合体粒子に一定のせん断力を加えた後に複合体粒子表面に存在する元素を上記と同様にX線光電子分光法を用いてXPSピーク強度比を求め、せん断力を加える前後のXPSピーク強度比の比からNCM又はNCAへのLMPの被覆強度を評価した。
具体的には、得られたリチウムイオン二次電池用正極活物質複合体2gとN−メチル−2−ピロリドン10gを高速ミキサー(プライミクス社製フィルミックス40L型)を用い2000rpmで3分間攪拌混練した。これは、二次電池の製造プロセスでの集電体への正極スラリーの塗布工程を強調的に模擬したものであって、かかる塗布工程で正極活物質粒子に加えられるせん断力以上の力が加わっている。攪拌混練処理後のスラリーを、温風乾燥機を用いて80℃×12時間乾燥してリチウムイオン二次電池用正極活物質複合体を得た後、得られたリチウムイオン二次電池用正極活物質複合体にX線光電子分光法を行い、上記式(2)と同様の計算からXPSピーク強度比(B)を求めた後、下記式(3)により被覆強度比を求めた。この被覆強度比は、値が小さく、1に近いほど複合体粒子表面に強固にLMPが被覆されていることを示す。結果を、リチウムイオン二次電池用正極活物質複合体の製造条件と共に表1及び表2に示す。
被覆強度比=(XPSピーク強度比(B))/(XPSピーク強度比(A))
・・・(3)
【0121】
【表1】
【0122】
【表2】
【0123】
≪電解液への遷移金属溶出量≫
実施例1〜30、比較例1〜17で得られたリチウムイオン二次電池用正極活物質複合体又はリチウムイオン二次電池用正極活物質混合物を正極材料として用い、リチウムイオン二次電池の正極を作製した。具体的には、得られたリチウムイオン二次電池用正極活物質複合体またはリチウムイオン二次電池用正極活物質混合物、アセチレンブラック、ポリフッ化ビニリデンを質量比90:5:5の配合割合で混合し、これにN−メチル−2−ピロリドンを加えて充分混練し、正極スラリーを調製した。正極スラリーを厚さ20μmのアルミニウム箔からなる集電体に塗工機を用いて塗布し、80℃で12時間の真空乾燥を行った。その後、φ14mmの円盤状に打ち抜いてハンドプレスを用いて16MPaで2分間プレスし、正極とした。
次いで、上記の正極を用いてコイン型二次電池を構築した。負極には、φ15mmに打ち抜いたリチウム箔を用いた。電解液には、エチレンカーボネート及びエチルメチルカーボネートを体積比3:7の割合で混合した混合溶媒に、LiPF
6を1mol/Lの濃度で溶解したものを用いた。セパレータには、ポリプロピレンなどの高分子多孔フィルムなど、公知のものを用いた。これらの電池部品を露点が−50℃以下の雰囲気で常法により組み込み収容し、コイン型二次電池(CR−2032)を製造した。
【0124】
得られた二次電池に対し、充電を行った。具体的には、条件を電流170mA/g、電圧4.5Vの定電流充電を行った。
その後、かかる二次電池を解体し、取り出した正極を炭酸ジメチルで洗浄後、電解液に浸した。このときの電解液は、エチレンカーボネート及びエチルメチルカーボネートを体積比3:7の割合で混合した混合溶媒に、LiPF
6を1mol/Lの濃度で溶解したものを用いた。正極を浸した電解液を密閉容器に入れ、70℃で1週間静置した。
静置後、正極を取り出した電解液を0.45μmのディスミックフィルタで濾過し、硝酸により酸分解した。酸分解した電解液に含まれるNCM由来のMn、Ni、Co、又はNCA由来のAl、Ni、Coを、ICP発光分光法を用いて定量した。結果を表3及び表4に示す。
【0125】
【表3】
【0126】
【表4】
【0127】
≪高温サイクル特性の評価≫
上記の電解液への遷移金属溶出量の評価で製造した二次電池を用いて、高温サイクル特性を評価した。具体的には、電流密度85mA/g、電圧4.25Vの定電流充電と、電流密度85mA/g、終止電圧3.0Vの定電流放電とし、電流密度85mA/g(0.5CA)における放電容量を求めた。さらに、同じ充放電条件の100サイクル繰り返し試験を行い、下記式(4)により容量保持率(%)を求めた。なお、充放電試験は全て45℃で行った。結果を表5及び表6に示す。
容量保持率(%)=
(100サイクル後の放電容量)/(1サイクル後の放電容量)×100
・・・(4)
【0128】
《レート特性の評価》
上記の電解液への遷移金属溶出量の評価で製造した二次電池を用いて、レート特性を評価した。具体的には、電流密度34mA/g、電圧4.25Vの定電流充電と、電流34mA/g、終止電圧3.0Vの定電流放電とし、電流密度34mA/gにおける放電容量を求めた。さらに、同条件で定電流充電を行い、電流密度510mA/g、終止電圧3.0Vの定電流放電とし、電流密度510mA/gにおける放電容量を求めた。なお、充放電試験は30℃で行った。
得られた放電容量から、下記式(5)により容量比(%)を求めた。結果を表5及び表6に示す。
容量比(%)=(電流密度510mA/gにおける放電容量)/
(電流密度34mA/gにおける放電容量)×100
・・・(5)
【0129】
【表5】
【0130】
【表6】
【0131】
表5又は表6から明らかなように、実施例で得られたリチウムイオン二次電池用正極活物質複合体を正極活物質として使用したリチウムイオン二次電池は、比較例で得られたリチウムイオン二次電池用正極活物質複合体又はリチウムイオン二次電池用正極活物質混合物を正極活物質として使用したリチウムイオン二次電池と比べ、高温サイクル特性及びレート特性の双方に優れることがわかる。
さらに、表3又は表4から明らかなように、実施例で得られたリチウムイオン二次電池用正極活物質複合体を正極活物質として使用したリチウムイオン二次電池は、比較例で得られたリチウムイオン二次電池用正極活物質複合体又はリチウムイオン二次電池用正極活物質混合物を正極活物質として使用したリチウムイオン二次電池と比べ、電極から電解液への遷移金属の溶出量が少なく、耐久性においても優れていることがわかる。