(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6549819
(24)【登録日】2019年7月5日
(45)【発行日】2019年7月24日
(54)【発明の名称】選択可能な排出口を有するポンプ
(51)【国際特許分類】
F04D 29/44 20060101AFI20190711BHJP
F04D 29/50 20060101ALI20190711BHJP
【FI】
F04D29/44 D
F04D29/44 B
F04D29/50
【請求項の数】8
【外国語出願】
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2014-60599(P2014-60599)
(22)【出願日】2014年3月24日
(65)【公開番号】特開2014-185638(P2014-185638A)
(43)【公開日】2014年10月2日
【審査請求日】2017年1月23日
(31)【優先権主張番号】201310093591.7
(32)【優先日】2013年3月22日
(33)【優先権主張国】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】502458039
【氏名又は名称】ジョンソン エレクトリック ソシエテ アノニム
(74)【代理人】
【識別番号】100092093
【弁理士】
【氏名又は名称】辻居 幸一
(74)【代理人】
【識別番号】100082005
【弁理士】
【氏名又は名称】熊倉 禎男
(74)【代理人】
【識別番号】100067013
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 文昭
(74)【代理人】
【識別番号】100086771
【弁理士】
【氏名又は名称】西島 孝喜
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100109335
【弁理士】
【氏名又は名称】上杉 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120525
【弁理士】
【氏名又は名称】近藤 直樹
(72)【発明者】
【氏名】チュアンフイ ファン
(72)【発明者】
【氏名】フォン リウ
(72)【発明者】
【氏名】フォン シュエ
(72)【発明者】
【氏名】チュアンジアン グオ
(72)【発明者】
【氏名】リアン グアン
(72)【発明者】
【氏名】セルジュ ペセツキー
【審査官】
新井 浩士
(56)【参考文献】
【文献】
国際公開第2012/046264(WO,A1)
【文献】
特開平06−249179(JP,A)
【文献】
米国特許第03807426(US,A)
【文献】
米国特許第02992652(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04D 29/44
F04D 29/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
遠心インペラ、
前記遠心インペラを収容するインペラ室、及び
前記インペラ室と連通する注入口パイプ、を備えたポンプであって、
前記インペラ室の第一の面において前記インペラ室と連通する第一の流路と、
前記インペラ室の前記第一の面から離れた前記インペラ室の第二の面において前記インペラ室と連通する第二の流路と、
前記第一の流路と接続された第一の排出口室と、
前記第一の排出口室と反対側にあり前記第二の流路と接続された第二の排出口室と、
第一の排出口であって、該第一の排出口の端壁内に定められ、かつ前記第一の排出口室と連通する開口部を有する、第一の排出口と、
第二の排出口であって、該第二の排出口の端壁内に定められ、かつ前記第二の排出口室と連通する開口部を有する、第二の排出口と、
前記第一の排出口室と前記第二の排出口室の間に配置され、前記第一の排出口の前記開口部と前記第二の排出口の前記開口部に隣接したバルブと、を備え、
第一の方向に回転する前記遠心インペラは、第一の方向に前記バルブを弾性的に変形させるために前記インペラ室から前記第一の流路まで実質的に液体を送りこみ、それによって前記第一の排出口を通して液体の流れを制御し、
前記第一の方向とは逆の第二の方向に回転する前記遠心インペラは、前記第一の方向とは逆の第二の方向に前記バルブを弾性的に変形させるために前記インペラ室から前記第二の流路まで実質的に液体を送りこみ、それによって前記第二の排出口を通して液体の流れを制御し、
前記バルブは、
前記第一の排出口室と前記第二の排出口室の間に配置された外側リングと、
前記バルブが前記第一の方向に弾性的に変形することに応答して、前記第二の排出口を塞ぎ、前記バルブが前記第二の方向に弾性的に変形することに応答して前記第一の排出口を塞ぐように構成された中心部と、
前記外側リングと前記中心部の間の弾性リングと、を備え、
前記バルブの前記中心部は、2つの支持リング及び各支持リングにより囲まれた2つの中心突出部を含み、2つの支持リングは前記弾性リングに接続され、2つの支持リングの各々は該バルブの各面に位置し、2つの中心突出部の各々は、該バルブの各面に位置して、前記第一の排出口の前記開口部及び前記第二の排出口の前記開口部に各々面し、
各支持リングは、平面的であり、前記第一の排出口の前記開口部又は前記第二の排出口の前記開口部の外径よりも大きい外径を有し、各中心突出部は、前記第一の排出口の前記開口部又は前記第二の排出口の前記開口部の内径よりも小さい外径を有し、
前記遠心インペラが前記第二の方向に回転するのに応答して、一方の支持リングは、前記第一の排出口の前記端壁に対して接し、かつ前記第一の排出口の前記開口部内に嵌まるように構成された一方の中心突出部は、前記バルブが弾性的に変形するときに前記第一の排出口の前記開口部内に嵌まり、
前記遠心インペラが前記第一の方向に回転するのに応答して、他方の支持リングは、前記第二の排出口の前記端壁に対して接し、かつ前記第二の排出口の前記開口部内に嵌まるように構成された他方の中心突出部は、前記バルブが弾性的に変形するときに前記第二の排出口の前記開口部内に嵌まる、
ポンプ。
【請求項2】
前記バルブは、前記第一の流路を流れる液量が前記第二の流路を流れる液量を超える場合に前記第一の方向に弾性的に変形し、
前記バルブは、前記第二の流路を流れる液量が前記第一の流路を流れる液量を超える場合に前記第二の方向に弾性的に変形することを特徴とする、請求項1に記載のポンプ。
【請求項3】
モーター、
前記モーターによって駆動されるインペラ、及び
前記モーターに取り付けられるハウジング、を備えたポンプであって、
前記ハウジングは、前記インペラを収容するインペラ室と、
前記インペラ室と連通する注入口パイプと、を備え、
前記インペラ室の第一の面にて前記インペラ室と連通する第一の排出口室と、
前記第一の面とは反対側にある前記インペラ室の第二の面にて前記インペラ室と連通する第二の排出口室と、
前記第一の排出口室と連通する開口部を有する第一の排出口と、
前記第二の排出口室と連通する開口部を有する第二の排出口と、
前記第一の排出口室と前記第二の排出口室の間に配置され、弾性部と中心部を具備するバルブと、を備え、
前記第二の排出口室の中の液量と比較した前記第一の排出口室の中の液量は、少なくとも部分的には前記インペラの回転方向に基づき、
前記バルブの前記弾性部は変形し、前記第二の排出口室の中の液量と比較した前記第一の排出口室の中の液量に少なくとも部分的には基づいて前記中心部の移動を引き起こし、 前記第一の排出口と前記第二の排出口を通した液体の流れは、少なくとも部分的には前記バルブの前記中心部の移動に基づき、
前記バルブの前記中心部は、2つの支持リング及び各支持リングにより囲まれた2つの中心突出部を含み、2つの支持リングは前記弾性部に接続され、2つの支持リングの各々は該バルブの各面に位置し、2つの中心突出部の各々は、該バルブの各面に位置して、前記第一の排出口の前記開口部及び前記第二の排出口の前記開口部に各々面し、
各支持リングは、平面的であり、前記第一の排出口の前記開口部又は前記第二の排出口の前記開口部の外径よりも大きい外径を有し、各中心突出部は前記第一の排出口の前記開口部又は前記第二の排出口の前記開口部の内径よりも小さい外径を有し、
前記インペラが前記第二の方向に回転するのに応答して、一方の支持リングは、前記第一の排出口の前記端壁に対して接し、かつ前記第一の排出口の前記開口部内に嵌まるように構成された一方の中心突出部は、前記バルブが弾性的に変形するときに前記第一の排出口の前記開口部内に嵌まり、
前記インペラが前記第一の方向に回転するのに応答して、他方の支持リングは、前記第二の排出口の前記端壁に対して接し、かつ前記第二の排出口の前記開口部内に嵌まるように構成された他方の中心突出部は、前記バルブが弾性的に変形するときに前記第二の排出口の前記開口部内に嵌まる、
ポンプ。
【請求項4】
前記バルブは、前記第一の排出口室と前記第二の排出口室の間の液体の流れを妨げることを特徴とする、請求項1から3のいずれか1項に記載のポンプ。
【請求項5】
前記バルブは、前記第一の排出口の開口部と前記第二の排出口の開口部に隣接して配置され、前記バルブと前記第一の排出口の開口部の間隔が前記中心部の移動の範囲以下であり、 前記第二の排出口室よりも前記第一の排出口室の液量が多いことにより、前記第二の排出口を通った液体の流れを制限する前記バルブの前記中心部の移動が起こり、
前記第一の排出口室よりも前記第二の排出口室の液量が多いことにより、前記第一の排出口を通った液体の流れを制限する前記バルブの前記中心部の移動が起こる、ことを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載のポンプ。
【請求項6】
2つの排出口のうちの1つへ選択的に液体を送りこむ方法であって、
遠心インペラが収容されているインペラ室を提供するステップと、
前記インペラ室と連通するドームを提供するステップと、
前記インペラ室の第一の面からドームの第一の面への第一の流路を提供するステップと、
前記インペラ室の第二の面からドームの第二の面への第二の流路を提供するステップと、
二つの排出口のうちの第一の排出口と前記ドームの第一の面を接続するステップと、
二つの排出口のうちの第二の排出口と前記ドームの第二の面を接続するステップと、
前記第一の流路を通して実質的に液体を押しこむために、第一の方向へインペラを回転させるステップと、
前記ドームの前記第一の面及び前記第二の面の間に保持された外側部と、2つの平面的な支持リング及び2つの中心突出部を備える中心部と、前記外側部及び前記中心部を接続する弾性部とを有するバルブを提供するステップであって、2つの支持リングの各々は該バルブの各面に位置し、2つの中心突出部の各々は該バルブの各面に位置する、バルブを提供するステップと、
前記第一の流路を液体が流れることに応答して、前記弾性部の弾性変形とともに前記中心部は第一の方向に移動して、前記第二の排出口の端壁に対して前記支持リングを接するように、かつ前記第二の排出口内に嵌まるように構成された前記中心突出部を前記第二の排出口の開口部内に嵌まるようにして、それによって前記第一の排出口へ液体を送りこむステップと、を有する方法。
【請求項7】
前記第二の流路を通して実質的に液体を押しこむために、前記第一の方向とは逆の第二の方向へインペラを回転させるステップと、
前記第二の流路を液体が流れることに応答して、前記第一の排出口を塞ぐために前記第一の方向とは逆の第二の方向へバルブを弾性的に変形させ、それによって前記第二の排出口へ液体を送りこむステップと、をさらに有する請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記バルブは、前記ドームの第二の面内よりも前記ドームの第一の面内にある液量が多いことに応答して前記第一の方向に弾性的に変形することを特徴とする、請求項6に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は機械設備、特に選択可能な排出口を有するポンプに関する。
【背景技術】
【0002】
液体ポンプは、食器洗い機や洗濯機などの、様々な種類の機械や器具に使用されている。いくつかの器具において、機械又は器具の異なる機能は、複数の異なる流路を通して液体が送り込まれることを要求しうる。
【0003】
例えば、最近の多くの洗濯機は、排水機能と再循環機能を有する。動作中、洗濯機の洗濯室内の水は、ノズルを通って洗濯室に再注入される再循環路に入るか、洗濯機外へ排出する排水路を通りうる。排水および水循環機能を実行するために、洗濯室に接続された単一の注入口、排水路に接続された排出口および循環路に接続された排出口を有する水ポンプが、洗濯機には含まれうる。伝統的に、ソレノイドバルブは2つの排出口の開口部を二者択一的に制御するように使用され、どちらの流路に水を流すかを決定する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
したがって、単一のポンプが異なる流路を通して液体を送りこむよう使用されるように、ポンプが異なる流路に対応する選択可能な排出口を有することが望ましい。しかしながら、2つのソレノイドバルブとそれに関する制御回路の使用は、1つの排出口ずつポンプのコストを増大させる。
【0005】
したがって、選択可能な排出口を有するポンプ装置をより低コストにする必要性がある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
ある実施形態は、選択可能な排出口を有する液体ポンプを対象にしている。ある実施形態においては、液体ポンプは、インペラ室内に収容されている遠心インペラ、インペラ室と連通する注入口パイプ、インペラ室の第一面と連通する第一の流路、およびインペラ室の第一面から離れたインペラ室の第二面と連通する第二の流路を含む。加えて、第一の排出口室は第一の流路とつながり、第一の排出口の開口部と連通するが、第一の排出口室と反対にある第二の排出口室は第二の流路とつながり、第二の排出口の開口部と連通する。バルブは、第一と第二の排出口室の間に配置され、第一と第二の排出口の開口部に隣接しており、それによって、動作中、第一の方向に回転する遠心インペラは、第一の方向にバルブを弾性的に変形させるためにインペラ室から第一の流路まで液体を実質的に送りこみ、それによって第一の排出口を通して液体の流れを制御する。一方、第一の方向とは逆の第二の方向に回転する遠心インペラは、第一の方向とは逆の第二の方向にバルブを弾性的に変形させるために、インペラ室から第二の流路まで液体を実質的に送りこみ、それによって第二の排出口を通して液体の流れを制御する。
【0007】
ある実施形態においては、インペラ室と対向する側に第一と第二の流路があり、それらはインペラ室と排出口室の間で徐々に増加する断面幅を持っている。ある実施形態においては、第一と第二の排出口室は半球状の、あるいはドームの形状をしている。
【0008】
ある実施形態においては、バルブは第一と第二の排出口室の間の液体の流れを妨げる。バルブは、第一と第二の排出口室の間に配置された外側リング、第一又は第二の方向それぞれに弾性的に変形するバルブに対応して第二又は第一の排出口を塞ぐように構成された中心部、および外側リングと中心部の間の弾性リング、を含むことができる。
【0009】
ある実施形態においては、第一の流路を流れる液量が第二の流路を流れる液量を超える場合にバルブが第一の方向に弾性的に変形し、第二の流路を流れる液量が第一の流路を流れる液量を超える場合にバルブが第二の方向に弾性的に変形する。バルブの中心部は、支持リング、中心突出部を含むことができる。その支持リングの直径は第一又は第二の排出口の開口部の直径よりも大きく、中心突出部は、バルブが弾性的に変形するときに第一又は第二の開口部内に嵌まるように構成される。
【0010】
ある実施形態においては、ポンプはモーター、そのモーターによって駆動されるインペラおよびそのモーターに取り付けられるハウジングを含む。ハウジングは、インペラを収容するインペラ室、インペラ室と連通する注入口パイプ、インペラ室の第一面と連通する第一の排出口室、および第一面とは反対側のインペラ室の第二面と連通する第二の排出口室を含むことができ、それによって、動作中に、第二の排出口室の中の液量と比較した第一の排出口室の中の液量は、少なくとも部分的には、インペラの回転方向に基づくようになる。そのポンプはさらにまた、第一の排出口および第二の排出口を含み、第一の排出口の開口部は第一の排出口室と連通し、第二の排出口の開口部は第二の排出口室と連通する。弾性部と中心部を含むバルブは、第一と第二の排出口室の間に配置される。これは、動作中、バルブの弾性部が、第二の排出口室の中の液量と比較した第一の排出口室の中の液量に少なくとも部分的には基づいて、中心部の移動を引き起こすためであり、第一と第二の排出口を通した液体の流れは、少なくとも部分的にはバルブの中心部の移動に基づいている。そのバルブは、バルブと排出口の開口部の間隔が中心部の移動の範囲以下であるように、第一の排出口の開口部と第二の排出口の開口部に隣接して配置されうる。
【0011】
ある実施形態においては、ポンプはさらにまた、インペラ室の第一面と第一の排出口室を接続する第一の遠心流路とインペラ室の第二面と第二の排出口室を接続する第二の遠心流路を含み、第一と第二の遠心流路の断面幅は、インペラ室と第一と第二の排出口室との間で、徐々に増加する。ある実施形態においては、第一の排出口室および第二の排出口室は、実質的に4分の1球状の形態をしている。
【0012】
ある実施形態においては、第一の方向で回転しているインペラは、インペラ室から第一の排出口室へ液体を実質的に送りこみ、一方、第二の方向で回転しているインペラは、インペラ室から第二の排出口室へ液体を実質的に送りこむ。第二の排出口室よりも第一の排出口室の液量が多いことにより、第二の排出口を通った液体の流れを制限するバルブの中心部の移動が起こる。一方、第一の排出口室よりも第二の排出口室の液量が多いことにより、第一の排出口を通った液体の流れを制限するバルブの中心部の移動が起こる。
【0013】
ある実施形態においては、バルブの中心部は支持リングおよび中心突出部を含む。その支持リングの直径は第一又は第二の排出口の開口部の直径よりも大きく、中心突出部は、その中心部が移動するときに第一又は第二の開口部内に嵌まるように構成される。
【0014】
ある実施形態は2つの排出口のうちの1つへ選択的に液体を送りこむ方法を対象にしている。この方法は、遠心インペラが収容されているインペラ室を備え、インペラ室の第一面からドームの第一面への第一の流路を備え、インペラ室の第二面からドームの第二面への第二の流路を備え、二つの排出口のうちの第一の排出口とそのドームの第一面が接続され、二つの排出口のうちの第二の排出口とそのドームの第二面が接続され、第一の流路を通して液体を実質的に押しこむために、第一の方向へインペラを回転し、第一の流路を液体が流れることに応答して第二の排出口をふさぐために、ドームの第一面と第二面の間で第一の方向へバルブを弾性的に変形させ、それによって第一の排出口へ液体を送りこむこと、を含む。
【0015】
ある実施形態においては、その方法はさらにまた、第二の流路を通して液体を実質的に押しこむために、第一の方向とは逆の第二の方向へインペラを回転し、第二の流路を液体が流れることに応答して、第一の排出口をふさぐために第二の方向へバルブを弾性的に変形させ、それによって第二の排出口へ液体を送りこむこと、を含む。
【0016】
ある実施形態においては、そのバルブは、ドームの第二面内よりも第一面内にある液量が多いことに応答して第一の方向に弾性的に変形し、ドームの第一面内よりも第二面内にある液量が多いことに対応して第二の方向に弾性的に変形する。
【0017】
図面は実施形態のデザインと有用性について説明し、この中で類似した構成要素は一般の参照番号によって言及される。これらの図面は必ずしも一定の比率で描かれていない。上記列挙した事項や利点や目的がどのように得られるかをより良く理解するために、添付図面の中で説明されている実施形態のより具体的な記載が与えられる。これらの図面は代表的な実施形態を描写したものであり、それゆえに特許請求の範囲を限定するものとは考えられない。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1A】
図1Aは、ある実施形態に従ったポンプの斜視図を図示する。
【
図1B】
図1Bは、ある実施形態に従ったポンプの斜視図を図示する。
【
図1C】
図1Cは、ある実施形態に従ったポンプの斜視図を図示する。
【
図2】
図2は、
図1A‐1Cで説明されているポンプの断面図を図示する。
【
図4A】
図4Aは、ある実施形態に従ったポンプの動作中の液体の流れを図示する。
【
図4B】
図4Bは、ある実施形態に従ったポンプの動作中の液体の流れを図示する。
【
図5A】
図5Aは、異なるバルブ形状を有するポンプの相補的な実施形態を図示する。
【
図5B】
図5Bは、異なるバルブ形状を有するポンプの相補的な実施形態を図示する。
【発明を実施するための形態】
【0019】
様々な特徴は以下に図面を参照して説明する。図面は縮尺で描かれていないこと、図面における類似した構造又は機能の構成要素は参照番号等で表されていることに留意する。他に特に一つ以上の具体的な実施形態が記載され、または一つ以上の具体的な請求が主張されない限り、図面は単なる図示および説明の目的のための特徴の説明を容易にすることを意図しているのみであることにも留意する。ここに記載された図面や様々な実施形態は、網羅的な説明または様々な他の実施形態の説明として、または特許請求の範囲、若しくは本出願に記載された実施形態を考慮すると当業者には明らかである他の実施形態の範囲を限定するものとして、意図されていない。加えて、説明された実施形態は、全ての態様や利点が示される必要はない。
【0020】
特定の実施形態に関連して記載された態様や利点は、必ずしもその実施形態を限定せず、説明されていなくても、また明示的に説明されていなくても、その他の実施形態においても実施されうる。本明細書の「ある実施形態」又は「その他の実施形態」という言及は、その実施形態に関連して記載された特別な特徴、構造、材料、過程又は特質が少なくとも一つの実施形態には含まれていることを意味する。したがって、本明細書の様々な場所にある「ある実施形態において」、「一つ以上の実施形態において」、「その他の実施形態において」というフレーズの出現は、必ずしも同じ実施形態について言及していない。
【0021】
ある実施形態は選択可能な排出口を有する液体ポンプを対象にしている。ある実施形態に従うと、液体ポンプは一つの注入口と複数の排出口を含む。インペラを駆動するモーターは、ポンプに入る液体を注入口から複数の排出口へ送りこむために使用される。可撓性のあるバルブは、複数の排出口の所望の排出口へポンプの中の液体を送るために使用される。ある実施形態においては、バルブの位置は、液体が送りこまれる排出口のように、モーターの回転方向によって決定される。
【0022】
説明を簡単にするため、その説明された実施形態は主として洗濯機における水ポンプの使用に言及しているが、当然のことながら、ある実施形態は異なるタイプの機械や器具(例えば食器洗い機や他の家庭電化製品)にも適用され、及び/又は水以外の液体にも使用されうる。
【0023】
図1A‐1Cは、ある実施形態に従ってポンプ10の斜視図を説明する。
図2は、IV平面(
図1Aに例示)に沿って切ったポンプ10の切欠図を説明する。ポンプ10は、ハウジング20、ハウジング20に取り付けられたモーター40、モーター40と一緒に回転するよう構成されたインペラ60、およびハウジング20内に収容された可撓性バルブ、を含む。ある実施形態においては、ハウジング20はプラスチック材料でできている。
【0024】
ある実施形態においては、モーター40はハウジング20の底に固定されている。シールリング及び/又はガスケット(これは示されていない)は、ハウジング20内の水がモーター40に入らないようにするため、ハウジング20とモーター40の間に使用されうる。動作中、モーター40の回転はインペラ60を駆動し、注入口26を通ってポンプ排出口35aまたは35bに向かうポンプ10へ入る水を押しだす。どちらに向かうのかは、インペラ60の回転方向次第である。
【0025】
ある実施形態においては、ハウジング20はメインハウジング21、第一のサブハウジング30および第二のサブハウジング31を含む。メインハウジング21は、インペラ60を収容するよう構成されたインペラ室22、第一の流路23および第二の流路24、を含む。第一および第二の流路23、24はインペラ室22の逆側に位置し、それぞれ第一および第二のサブハウジング30、31と接続されている。
【0026】
メインハウジング21はさらにまた、インペラ室22に接続された注入口26を含み、注入口26からポンプ10へ水を入れられるように、インペラ室22へ水が堆積するようにしている。メインハウジング21は、第一および第二の流路23、24の間のインペラ室22のある一面に位置するストッパー25からもなりうる。ストッパー25は、ストッパー25から離れたまたは反対側のインペラ室22の一部のみを通って第一および第二の流路23、24の間に水を流せるように、位置しており、このようにしてポンプ10の効率を低下させるかもしれないインペラ室22での水の循環を防いでいる。
【0027】
図1A‐1Cおよび
図2に描かれている実施形態においては、注入口26に入る水はインペラ室22へ注入されるよう、注入口26はインペラ室22の上部に接続されており、インペラ60の軸方向に配置されている。加えて、第一および第二の遠心流路23、24は、インペラ60の軸方向と実質的に垂直に構成される。第一および第二の流路23、24は、インペラ室22とインペラ60の接続点において、インペラ60の軸方向と実質的に垂直に幅Dを持つ。ある実施形態においては、ポンプ10の効率を改善するために、第一および第二の流路23、24の幅は、流路23、24がインペラ室22から離れて延在するにつれて、徐々に増える。当然のことながら、「実質的に垂直」のような「実質的に」という用語は、ここではある特徴を示しているために使用され、正確な特徴(例えば完全に垂直等)や、わずかにオフセットされているか、完全ではない特徴(例えば完全に垂直からわずかにオフセットされている等)にもまた言及しうる。加えて当然のことながら、他の配置や構成や他の実施形態においても使用されうる。
【0028】
第一のサブハウジング30は、第一の排出口室39aの境界となる壁32および第一の排出口パイプ35a、を含む。ある実施形態においては、第一の排出口室39aが4分の1球状、4分の1楕円球状、または半ドーム形状であるため、壁32は実質的に弓形である。第一の排出口室39aは、第一の接続部分33と第二の接続部分34を有し、双方はお互いに実質的に垂直である。第一の接続部分33は、壁32の内面36がインペラ室22から離れた第一の流路23の側面と面するように、メインハウジング21の一面と接続する。このようにして、排出口室39aは第一の流路23を通りインペラ室22に接続される。
【0029】
ある実施形態においては、第一の排出口パイプ35aは、壁32を通り抜け、第二の接続部分34の方向へ延在する構成となる。端壁に囲まれた排出口パイプ35の開口部37は第二の接続部分34の近くに位置している。
【0030】
第二のサブハウジング31は第一のサブハウジング30と似た構成であるので、別々に議論する必要はない。第二のサブハウジング31は、メインハウジング21の第一のサブハウジング30の逆側に接続され、第二の流路24を通りインペラ室22へ接続される第二の排出口室39bを定める。第一と第二の排出口室39aおよび39bは、共に半球またはドームを形成しうる。
【0031】
第二のサブハウジング31はさらにまた、第一のサブハウジング30の第一の排出口パイプ35aに対応した第二の排出口パイプ35b、を含む。第一および第二の排出口パイプ35aおよび35bは、2つの異なる流路を形成し、その流路を通じてポンプ10から液体が排出されうる。例えば洗濯機においては、第一の排出口パイプ35aは排水路に、第二の排出口パイプ35bは再循環路になりうる。
【0032】
バルブ80はサブハウジング30および31の間に配置され、ポンプ10から第一排出口パイプ35aまたは第二の排出口パイプ35bを通って液体が排出できるかどうかを制御する。外力を受けないとき、バルブ80は、第一のサブハウジング30上の開口部とそれに対応する第二のサブハウジング31上の開口部と実質的に等距離にあるように構成されうる。
【0033】
ある実施形態に従うと、第一のサブハウジング30はメインハウジング21と一体的に形成されるが、第二のサブハウジング31は分離した構成要素であり、第一の接続箇所を通じてメインハウジング21に接続され、第二の接続箇所を通じて第一のサブハウジング30に接続される。この配置は、バルブ80にアクセスして取り替えるのを容易にするだけでなく、簡単な組み立ても可能にする。
【0034】
図3Aおよび3Bは、ある実施形態に従ってバルブ80の両側の説明である。本発明では、バルブ80は、例えばゴムのような、弾性材でできている。バルブ80は第一の排出口パイプ35aと第二の排出口パイプ35bの間に配置され、第一および第二の排出口室39aおよび39bをお互いに分離するように構成され、第一の排出口パイプ35aの開口部またはこれに対応する第二の排出口パイプ35bの開口部を密封することができるようになっている。ある実施形態においては、バルブ80は実質的に円盤状であり、外側部82、弾性部84および中央部86、を含む。ここで外側部82は、第一のサブハウジング30の第二の接続部34とこれに対応する第二のサブハウジング31上の第二の接続部に挟まれている。
【0035】
弾性部84は複数の折り目を含み、外力を受けるときには、この折り目によって弾性的に変形することができる。バルブ80の中心部86は、弾性部84の変形に対応して移動をするように構成される。バルブ80が外力を受けないとき、中心部86は第一および第二の排出口パイプ35aおよび35bの開口部37から離れている。
【0036】
ある実施形態においては、バルブ80の中心部86は、2つの突出部88を囲んでいる実質的に平面的な支持リング87、を含む。この支持リング87はバルブ80の各面に1つずつある。支持リング87の外径は、第一の排出口パイプ35aと第二の排出口パイプ35bの端壁38の外径以上になるよう構成されるが、突出部88の外径は端壁38の内径よりも小さくなるよう構成される。
【0037】
図4Aおよび4Bは、ある実施形態に従った、動作中のポンプ10内部の液体の流れの説明である。
図4Aは、第一の排出口パイプ35aを通してポンプ10から水を排出したいときの動作の説明である(例えば、洗濯機の排水モード用)。こうするために、モーター40はインペラ60を時計回りに回転させる。遠心力によって、注入口26を通ってインペラ室22に入る水が、第一の流路23を通って、ここで第一のサブハウジング30の壁32の内面36によってさらにバルブ80に向けられ、第一の排出口室39aへ流れる。それと同時に、第二の流路24を通って、第二の排出口室39bへ少量の水が流れ込みうる。このようにして、バルブ80の二面の間で圧力差が生じる。より大量の水に起因した、第一の排出口室39a側のより大きな圧力によって、弾性部84は変形し、それにより第二のサブハウジング31の第二の排出口パイプ35bへ向かって中心部86が変位する。
【0038】
結果的に、バルブ80の中心部86は第二の排出口パイプ35bの開口部を塞ぎ、水が第二の排出口室39bを通って第二の排出口パイプ35bへ流れないようにする。加えて、支持リング87を第二の排出口パイプ35bの端面に整列させて、突出部88は第二の排出口パイプ35bの開口部内に収容されうる。
【0039】
それと同時に、バルブ80の中心部86と第一のサブハウジング30の端面38の間の距離は、第一の排出口パイプ35aと離れた中心部86の移動によって増加し、開口部37を通って第一の排出口パイプ35aへ、第一のサブハウジング30の第一の排出口室39aの中の水を流すことができる。ここで、メインハウジング20の外に流れてポンプ10から排水されうる(例えば、洗濯機の排水向け)。
【0040】
図4Bは、第二の排出口パイプ35bを通してポンプ10から水を排出したいときの動作の説明であり(例えば、洗濯機の水再循環モード用)、モーター40はインペラ60を反時計回りに回転させる。インペラ室22の中の水は、遠心力により、第二の流路24を通って第二の排水路室39bへ向かい、そこで第二のサブハウジング31の壁の内面により、水はバルブ80に向けられる。この間、第一の排出口室39a内には少量の水のみがあることになる。このようにして、バルブ80の二面間の圧力差は、弾性部84を変形させ、第一の排出路パイプ35aの開口部37を密封するために、中心部86を押す。一方サブハウジング31内の水は、第二の排出口パイプ35bを通じてハウジング20の外へ流れることができる。
【0041】
その結果、バルブ80の位置はインペラ60の回転方向によって制御されうるため、バルブ80のための別個の制御機構の必要性は無くなる。加えて、第一の排出口パイプ35aまたは第二の排出口パイプ35bを通して、選択的に水を誘導するための一対のソレノイドバルブの代わりに、一つのバルブ80のみが必要となる。このようにして、ポンプ10の全体的なコストおよび複雑性は低減される。
【0042】
ある実施形態においては、バルブ80ならびに第一の排出口パイプ35aおよび第二の排出口パイプ35bの開口部37は様々な形状を取りうるものであり、そしてこれらは図面に描画されたものに限定されない。例えばバルブ80の中心部86は、
図5Aで説明されているように凸面を有しうる、または
図5Bで説明されているように実質的に平面的でありうる。ある実施形態においては、排出口パイプ35aおよび35bの端壁38は、密封機能を果たすため、中心部86の形状に適合するための対応する傾斜を有する。
【0043】
前述した明細書においては、それについての具体的な実施形態を参照して、様々な態様が説明されている。しかしながら、ここに説明された様々な実施形態のより広範な趣旨と範囲を逸脱しないで、様々な修正および変更がそこになされうることは明らかである。例えば、上述したシステムまたはモジュールは、構成要素の特定の配置を参照して説明されている。それにもかかわらず、説明された構成要素の多くのものの順序またはその要素間の空間的な関係は、ここに説明されている様々な実施形態の範囲、作用または効果に影響を及ぼさないで、変わりうる。加えて、特定の特徴が示されて説明されているが、当然のことながら特許請求の範囲または他の実施形態の範囲を限定することを意図しておらず、様々な修正および変更は、ここに説明されている様々な実施形態の範囲を逸脱しないでなされうることは、当業者にとっては明らかである。したがって、明細書と図面は、限定的意味というよりは説明的および解説的なものだとみなすことができる。このように、記載された実施形態は、代替形態、修正形態、および均等物を包含することを意図している。