(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第2基材層が、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン酢酸ビニル共重合体からなる群より選ばれた1種以上の樹脂をさらに含む請求項2〜4のいずれかに記載のダイシングダイボンドフィルム。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に実施形態を掲げ、本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらの実施形態のみに限定されるものではない。
【0020】
[実施形態1]
(ダイシングダイボンドフィルム1)
図1に示すように、ダイシングダイボンドフィルム1はロール状をなす。
【0021】
ダイシングダイボンドフィルム1は、カバーフィルム13およびカバーフィルム13上に配置されたダイシングシート一体型接着フィルム71a、71b、71c、……、71m(以下、「ダイシングシート一体型接着フィルム71」と総称する。)を含む。ダイシングシート一体型接着フィルム71aとダイシングシート一体型接着フィルム71bのあいだの距離、ダイシングシート一体型接着フィルム71bとダイシングシート一体型接着フィルム71cのあいだの距離、……ダイシングシート一体型接着フィルム71lとダイシングシート一体型接着フィルム71mのあいだの距離は一定である。
【0022】
図2に示すように、ダイシングシート一体型接着フィルム71は、ダイシングシート12およびダイシングシート12上に配置された接着フィルム11を含む。ダイシングシート12は、基材層121および基材層121上に配置された粘着剤層122を含む。基材層121は、粘着剤層122と接した第1面121aおよび第1面121aに対向した第2面121bで両面が定義される。接着フィルム11は、粘着剤層122と接した第1主面11aおよび第1主面11aに対向した第2主面11bで両面が定義される。第2主面11bはカバーフィルム13と接する。
【0023】
第2面121bの表面抵抗値は、1.0×10
11Ω/sq.以下、好ましくは8.0×10
10Ω/sq.以下である。1.0×10
11Ω/sq.以下であるため、カバーフィルム13の剥離不良を防止できる。第2面121bの表面抵抗値の下限は、たとえば1.0×10
5Ω/sq.、1.0×10
7Ω/sq.、1.0×10
8Ω/sq.などである。
【0024】
第2面121bの光沢は、好ましくは1〜20である。
【0025】
第2主面11bの表面抵抗値は、1.0×10
12Ω/sq.以上、好ましくは1.0×10
14Ω/sq.以上である。1.0×10
12Ω/sq.以上であるため、パッケージング時などにおけるリーク電流を防止可能で、半導体チップの静電気破壊を防止できる。第2主面11bの表面抵抗値の上限は、たとえば1.0×10
17Ω/sq.、1.0×10
18Ω/sq.などである。
【0026】
ダイシングシート12の破断伸度は、好ましくは500%以上である。500%以上であると、エキスパンド性が良好である。ダイシングシート12のヘイズは、好ましくは45%〜95%である。
【0027】
基材層121の厚みは、好ましくは50μm〜150μmである。
【0028】
基材層121は、第1面121aを有する第1基材層1211を含む。第1基材層1211は、第1面121aおよび第1面121aに対向した隠れ面で両面を定義できる。基材層121は、第2面121bを有する第2基材層1212をさらに含む。第2基材層1212は、第1基材層1211の隠れ面と接する。
【0029】
第1基材層1211は、樹脂を含む。樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン酢酸ビニル共重合体(EVA)などが挙げられる。良好なエキスパンド性を発現するため、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン酢酸ビニル共重合体が好ましい。エキスパンド性が悪いという点から、ポリエチレンテレフタレートは好ましくない。
【0030】
第1基材層1211が導電性成分を含む場合、導電性成分がダイシング時に装置内に飛散することがある。したがって、好ましくは、第1基材層1211は導電性成分を含まない。
【0031】
第1基材層1211の厚みは、好ましくは30μm〜150μmである。
【0032】
好ましくは、第2基材層1212は導電性成分を含む。導電性成分が第2面121bの表面抵抗値を下げるためである。
【0033】
導電性成分としては、有機系導電性成分、無機系導電性成分などが挙げられる。有機系導電性成分は脱落し難く、樹脂と容易に混ざるため、好ましい。有機系導電性成分としては、導電性高分子が挙げられる。
【0034】
好ましくは、第2基材層1212は樹脂を含む。樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン酢酸ビニル共重合体などが挙げられる。ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン酢酸ビニル共重合体は有機系導電性成分と容易に混ざり、良好なエキスパンド性を発現するため、好ましい。エキスパンド性が悪いという点から、ポリエチレンテレフタレートは好ましくない。
【0035】
第2基材層1212の厚みは、好ましくは1μm〜30μmである。
【0036】
第1基材層1211の厚みの第2基材層1212の厚みに対する比(第1基材層1211の厚み/第2基材層1212の厚み)は、好ましくは1〜30である。
【0037】
粘着剤層122は、接着フィルム11と接する接触部122Aを含む。粘着剤層122は、接触部122Aの周辺に配置された周辺部122Bをさらに含む。接触部122Aは放射線により硬化されている。一方、周辺部122Bは放射線により硬化する性質を有する。放射線としては紫外線が好ましい。
【0038】
粘着剤層122は粘着剤により形成されており、粘着性を有している。このような粘着剤としては、特に制限されず、公知の粘着剤の中から適宜選択することができる。具体的には、粘着剤としては、たとえば、アクリル系粘着剤、ゴム系粘着剤、ビニルアルキルエーテル系粘着剤、シリコーン系粘着剤、ポリエステル系粘着剤、ポリアミド系粘着剤、ウレタン系粘着剤、フッ素系粘着剤、スチレン−ジエンブロック共重合体系粘着剤、これらの粘着剤に融点が約200℃以下の熱溶融性樹脂を配合したクリ−プ特性改良型粘着剤などの公知の粘着剤(たとえば、特開昭56−61468号公報、特開昭61−174857号公報、特開昭63−17981号公報、特開昭56−13040号公報など参照)の中から、かかる特性を有する粘着剤を適宜選択して用いることができる。また、粘着剤としては、放射線硬化型粘着剤(またはエネルギー線硬化型粘着剤)や、熱膨張性粘着剤を用いることもできる。粘着剤は単独でまたは2種以上組み合わせて使用することができる。
【0039】
粘着剤としては、アクリル系粘着剤、ゴム系粘着剤を好適に用いることができ、特にアクリル系粘着剤が好適である。アクリル系粘着剤としては、(メタ)アクリル酸アルキルエステルの1種または2種以上を単量体成分として用いたアクリル系重合体(単独重合体または共重合体)をベースポリマーとするアクリル系粘着剤が挙げられる。
【0040】
アクリル系粘着剤における(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、たとえば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸s−ブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸ペンチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸ヘプチル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸ノニル、(メタ)アクリル酸イソノニル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸イソデシル、(メタ)アクリル酸ウンデシル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸トリデシル、(メタ)アクリル酸テトラデシル、(メタ)アクリル酸ペンタデシル、(メタ)アクリル酸ヘキサデシル、(メタ)アクリル酸ヘプタデシル、(メタ)アクリル酸オクタデシル、(メタ)アクリル酸ノナデシル、(メタ)アクリル酸エイコシルなどの(メタ)アクリル酸アルキルエステルなどが挙げられる。(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、アルキル基の炭素数が4〜18の(メタ)アクリル酸アルキルエステルが好適である。なお、(メタ)アクリル酸アルキルエステルのアルキル基は、直鎖状または分岐鎖状のいずれであっても良い。
【0041】
なお、アクリル系重合体は、凝集力、耐熱性、架橋性などの改質を目的として、必要に応じて、(メタ)アクリル酸アルキルエステルと共重合可能な他の単量体成分(共重合性単量体成分)に対応する単位を含んでいてもよい。このような共重合性単量体成分としては、たとえば、(メタ)アクリル酸(アクリル酸、メタクリル酸)、カルボキシエチルアクリレート、カルボキシペンチルアクリレート、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、クロトン酸などのカルボキシル基含有モノマー;無水マレイン酸、無水イタコン酸などの酸無水物基含有モノマー;(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシヘキシル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシオクチル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシデシル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシラウリル、(4−ヒドロキシメチルシクロヘキシル)メチルメタクリレートなどのヒドロキシル基含有モノマー;スチレンスルホン酸、アリルスルホン酸、2−(メタ)アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、(メタ)アクリルアミドプロパンスルホン酸、スルホプロピル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロイルオキシナフタレンスルホン酸などのスルホン酸基含有モノマー;2−ヒドロキシエチルアクリロイルホスフェートなどのリン酸基含有モノマー;(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N−ブチル(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N−メチロールプロパン(メタ)アクリルアミドなどの(N−置換)アミド系モノマー;(メタ)アクリル酸アミノエチル、(メタ)アクリル酸N,N−ジメチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸t−ブチルアミノエチルなどの(メタ)アクリル酸アミノアルキル系モノマー;(メタ)アクリル酸メトキシエチル、(メタ)アクリル酸エトキシエチルなどの(メタ)アクリル酸アルコキシアルキル系モノマー;アクリロニトリル、メタクリロニトリルなどのシアノアクリレートモノマー;(メタ)アクリル酸グリシジルなどのエポキシ基含有アクリル系モノマー;スチレン、α−メチルスチレンなどのスチレン系モノマー;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニルなどのビニルエステル系モノマー;イソプレン、ブタジエン、イソブチレンなどのオレフィン系モノマー;ビニルエーテルなどのビニルエーテル系モノマー;N−ビニルピロリドン、メチルビニルピロリドン、ビニルピリジン、ビニルピペリドン、ビニルピリミジン、ビニルピペラジン、ビニルピラジン、ビニルピロール、ビニルイミダゾール、ビニルオキサゾール、ビニルモルホリン、N−ビニルカルボン酸アミド類、N−ビニルカプロラクタムなどの窒素含有モノマー;N−シクロヘキシルマレイミド、N−イソプロピルマレイミド、N−ラウリルマレイミド、N−フェニルマレイミドなどのマレイミド系モノマー;N−メチルイタコンイミド、N−エチルイタコンイミド、N−ブチルイタコンイミド、N−オクチルイタコンイミド、N−2−エチルヘキシルイタコンイミド、N−シクロヘキシルイタコンイミド、N−ラウリルイタコンイミドなどのイタコンイミド系モノマー;N−(メタ)アクリロイルオキシメチレンスクシンイミド、N−(メタ)アクルロイル−6−オキシヘキサメチレンスクシンイミド、N−(メタ)アクリロイル−8−オキシオクタメチレンスクシンイミドなどのスクシンイミド系モノマー;(メタ)アクリル酸ポリエチレングリコール、(メタ)アクリル酸ポリプロピレングリコール、(メタ)アクリル酸メトキシエチレングリコール、(メタ)アクリル酸メトキシポリプロピレングリコールなどのグリコール系アクリルエステルモノマー;(メタ)アクリル酸テトラヒドロフルフリル、フッ素(メタ)アクリレート、シリコーン(メタ)アクリレートなどの複素環、ハロゲン原子、ケイ素原子などを有するアクリル酸エステル系モノマー;ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、エポキシアクリレート、ポリエステルアクリレート、ウレタンアクリレート、ジビニルベンゼン、ブチルジ(メタ)アクリレート、ヘキシルジ(メタ)アクリレートなどの多官能モノマーなどが挙げられる。これらの共重合性単量体成分は1種または2種以上使用できる。
【0042】
粘着剤として放射線硬化型粘着剤(またはエネルギー線硬化型粘着剤)を用いる場合、放射線硬化型粘着剤(組成物)としては、たとえば、ラジカル反応性炭素−炭素二重結合をポリマー側鎖または主鎖中もしくは主鎖末端に有するポリマーをベースポリマーとして用いた内在型の放射線硬化型粘着剤や、粘着剤中に紫外線硬化性のモノマー成分やオリゴマー成分が配合された放射線硬化型粘着剤などが挙げられる。また、粘着剤として熱膨張性粘着剤を用いる場合、熱膨張性粘着剤としては、たとえば、粘着剤と発泡剤(特に熱膨張性微小球)とを含む熱膨張性粘着剤などが挙げられる。
【0043】
好ましい単量体成分は、アクリル酸2−エチルヘキシルである。好ましくは、アクリル系粘着剤がウレタン結合を有するアクリル系重合体を含む。
【0044】
粘着剤層122は、各種添加剤(たとえば、粘着付与樹脂、着色剤、増粘剤、増量剤、充填材、可塑剤、老化防止剤、酸化防止剤、界面活性剤、架橋剤など)を含むことができる。
【0045】
粘着剤層122は、たとえば、粘着剤(感圧接着剤)と、必要に応じて溶媒やその他の添加剤などとを混合して、シート状の層に形成する慣用の方法を利用し形成することができる。具体的には、たとえば、粘着剤および必要に応じて溶媒やその他の添加剤を含む混合物を、基材層121上に塗布する方法、適当なセパレータ(剥離紙など)上に混合物を塗布して粘着剤層122を形成し、これを基材層121上に転写(移着)する方法などにより、粘着剤層122を形成することができる。
【0046】
粘着剤層122の厚みは、好ましくは3μm以上、より好ましくは5μm以上である。粘着剤層122の厚みは、好ましくは50μm以下、より好ましくは30μm以下である。なお、粘着剤層122は複層形状をなしてもよい。
【0047】
(接着フィルム11)
接着フィルム11は熱硬化性を備える。
【0048】
接着フィルム11における25℃のタック強度は、好ましくは0.2N〜3.0Nである。0.2N〜3.0Nであると、ピックアップ性が良好である。
【0049】
接着フィルム11における120℃の損失弾性率G’’は、好ましくは2KPa〜20KPaである。2KPa以上であると、ダイボンド時の接着フィルム11のはみ出しを防ぐことが可能である。20KPa以下であると、ダイボンド時の接着フィルム11の被着体に対する濡れ性が良好である。
【0050】
接着フィルム11は、樹脂成分を含む。樹脂成分としては、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂などが挙げられる。
【0051】
好ましくは、熱可塑性樹脂はアクリル樹脂である。
【0052】
アクリル樹脂としては、特に限定されるものではなく、炭素数30以下、特に炭素数4〜18の直鎖若しくは分岐のアルキル基を有するアクリル酸又はメタクリル酸のエステルの1種又は2種以上を成分とする重合体(アクリル共重合体)などが挙げられる。前記アルキル基としては、たとえばメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、t−ブチル基、イソブチル基、アミル基、イソアミル基、ヘキシル基、へプチル基、シクロヘキシル基、2−エチルヘキシル基、オクチル基、イソオクチル基、ノニル基、イソノニル基、デシル基、イソデシル基、ウンデシル基、ラウリル基、トリデシル基、テトラデシル基、ステアリル基、オクタデシル基、又はドデシル基などが挙げられる。
【0053】
また、重合体(アクリル共重合体)を形成する他のモノマーとしては、特に限定されるものではなく、たとえばアクリル酸、メタクリル酸、カルボキシエチルアクリレート、カルボキシペンチルアクリレート、イタコン酸、マレイン酸、フマール酸若しくはクロトン酸などの様なカルボキシル基含有モノマー、無水マレイン酸若しくは無水イタコン酸などの様な酸無水物モノマー、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸4−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸6−ヒドロキシヘキシル、(メタ)アクリル酸8−ヒドロキシオクチル、(メタ)アクリル酸10−ヒドロキシデシル、(メタ)アクリル酸12−ヒドロキシラウリル若しくは(4−ヒドロキシメチルシクロヘキシル)−メチルアクリレートなどの様なヒドロキシル基含有モノマー、スチレンスルホン酸、アリルスルホン酸、2−(メタ)アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、(メタ)アクリルアミドプロパンスルホン酸、スルホプロピル(メタ)アクリレート若しくは(メタ)アクリロイルオキシナフタレンスルホン酸などの様なスルホン酸基含有モノマー、又は2−ヒドロキシエチルアクリロイルホスフェートなどの様な燐酸基含有モノマーが挙げられる。
【0054】
アクリル樹脂のなかでも、重量平均分子量が10万以上のものが好ましく、30万〜300万のものがより好ましく、50万〜200万のものがさらに好ましい。かかる数値範囲内であると、接着性および耐熱性に優れるからである。なお、重量平均分子量は、GPC(ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー)により測定し、ポリスチレン換算により算出された値である。
【0055】
アクリル樹脂は、官能基を含むことが好ましい。官能基としては、たとえば、ヒドロキシル基、カルボキシ基、ニトリル基などが挙げられる。なかでも、ニトリル基が好ましい。
【0056】
樹脂成分100重量%中の熱可塑性樹脂の含有量は、好ましくは10重量%以上、より好ましくは20重量%以上である。10重量%以上であると、可撓性が良好である。樹脂成分100重量%中の熱可塑性樹脂の含有量は、好ましくは80重量%以下、より好ましくは70重量%以下である。
【0057】
熱硬化性樹脂としては、エポキシ樹脂、フェノール樹脂などが挙げられる。
【0058】
エポキシ樹脂としては特に限定されず、たとえばビスフェノールA型、ビスフェノールF型、ビスフェノールS型、臭素化ビスフェノールA型、水添ビスフェノールA型、ビスフェノールAF型、ビフェニル型、ナフタレン型、フルオンレン型、フェノールノボラック型、オルソクレゾールノボラック型、トリスヒドロキシフェニルメタン型、テトラフェニロールエタン型などの二官能エポキシ樹脂や多官能エポキシ樹脂、又はヒダントイン型、トリスグリシジルイソシアヌレート型若しくはグリシジルアミン型などのエポキシ樹脂が用いられる。これらのエポキシ樹脂のうちノボラック型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、トリスヒドロキシフェニルメタン型樹脂又はテトラフェニロールエタン型エポキシ樹脂が特に好ましい。これらのエポキシ樹脂は、硬化剤としてのフェノール樹脂との反応性に富み、耐熱性などに優れるからである。
【0059】
エポキシ樹脂のエポキシ当量は、好ましくは100g/eq.以上、より好ましくは120g/eq.以上である。エポキシ樹脂のエポキシ当量は、好ましくは1000g/eq.以下、より好ましくは500g/eq.以下である。
なお、エポキシ樹脂のエポキシ当量は、JIS K 7236−2009に規定された方法で測定できる。
【0060】
フェノール樹脂は、エポキシ樹脂の硬化剤として作用するものであり、たとえば、フェノールノボラック樹脂、フェノールアラルキル樹脂、クレゾールノボラック樹脂、tert−ブチルフェノールノボラック樹脂、ノニルフェノールノボラック樹脂などのノボラック型フェノール樹脂、レゾール型フェノール樹脂、ポリパラオキシスチレンなどのポリオキシスチレンなどが挙げられる。これらのフェノール樹脂のうちフェノールノボラック樹脂、フェノールアラルキル樹脂が特に好ましい。半導体装置の接続信頼性を向上させることができるからである。
【0061】
フェノール樹脂の水酸基当量は、好ましくは150g/eq.以上、より好ましくは200g/eq.以上である。フェノール樹脂の水酸基当量は、好ましくは500g/eq.以下、より好ましくは300g/eq.以下である。
【0062】
エポキシ樹脂とフェノール樹脂との配合割合は、たとえば、エポキシ樹脂成分中のエポキシ基1当量当たりフェノール樹脂中の水酸基が0.5〜2.0当量になるように配合することが好適である。より好適なのは、0.8〜1.2当量である。即ち、両者の配合割合がかかる範囲を外れると、十分な硬化反応が進まず、硬化物の特性が劣化し易くなるからである。
【0063】
樹脂成分100重量%中のエポキシ樹脂およびフェノール樹脂の合計含有量は、好ましくは20重量%以上、より好ましくは30重量%以上である。エポキシ樹脂およびフェノール樹脂の合計含有量は、好ましくは90重量%以下、より好ましくは80重量%以下である。
【0064】
好ましくは、接着フィルム11は無機充填剤を含む。
【0065】
無機充填剤としては、たとえば、シリカ、クレー、石膏、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、アルミナ、酸化ベリリウム、炭化珪素、窒化珪素、アルミニウム、銅、銀、金、ニッケル、クロム、鉛、錫、亜鉛、パラジウム、半田、カーボンなどが挙げられる。なかでも、シリカ、アルミナ、銀などが好ましく、シリカがより好ましい。
【0066】
無機充填剤の平均粒径は、好ましくは0.001μm〜1μmである。フィラーの平均粒径は、以下の方法で測定できる。
【0067】
無機充填剤の平均粒径の測定
接着フィルム11をるつぼに入れ、大気雰囲気下、700℃で2時間強熱して灰化させる。得られた灰分を純水中に分散させて10分間超音波処理し、レーザー回折散乱式粒度分布測定装置(ベックマンコールター社製、「LS 13 320」;湿式法)を用いて平均粒径を求める。
【0068】
接着フィルム11中の無機充填剤の含有量は、好ましくは0重量%以上、より好ましくは1重量%以上、さらに好ましくは3重量%以上、よりさらに好ましくは20重量%以上である。接着フィルム11中の無機充填剤の含有量は、好ましくは85重量%以下、より好ましくは20重量%以下、さらに好ましくは15重量%以下である。
【0069】
接着フィルム11は、前記成分以外にも、フィルム製造に一般に使用される配合剤、たとえば、シランカップリング剤、硬化促進剤、架橋剤などを適宜含有してよい。
【0070】
接着フィルム11が導電性成分を含む場合、導電性成分がダイシング時に装置内に飛散することがある。導電性成分がワイヤーの腐食を促進することもある。したがって、好ましくは、接着フィルム11は導電性成分を含まない。
【0071】
接着フィルム11は、通常の方法で製造できる。たとえば、前記各成分を含有する接着剤組成物溶液を作製し、接着剤組成物溶液を基材セパレータ上に所定厚みとなる様に塗布して塗布膜を形成した後、塗布膜を乾燥させることで、接着フィルム11を製造できる。
【0072】
接着剤組成物溶液に用いる溶媒としては特に限定されないが、前記各成分を均一に溶解、混練又は分散できる有機溶媒が好ましい。たとえば、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドン、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン系溶媒、トルエン、キシレンなどが挙げられる。塗布方法は特に限定されない。溶剤塗工の方法としては、たとえば、ダイコーター、グラビアコーター、ロールコーター、リバースコーター、コンマコーター、パイプドクターコーター、スクリーン印刷などが挙げられる。なかでも、塗布厚みの均一性が高いという点から、ダイコーターが好ましい。
【0073】
基材セパレータとしては、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレン、ポリプロピレンや、フッ素系剥離剤、長鎖アルキルアクリレート系剥離剤などの剥離剤により表面コートされたプラスチックフィルムや紙などが使用可能である。接着剤組成物溶液の塗布方法としては、たとえば、ロール塗工、スクリーン塗工、グラビア塗工などが挙げられる。また、塗布膜の乾燥条件は特に限定されず、たとえば、乾燥温度70〜160℃、乾燥時間1〜5分間で行うことができる。
【0074】
接着フィルム11の製造方法としては、たとえば、前記各成分をミキサーにて混合し、得られた混合物をプレス成形して接着フィルム11を製造する方法なども好適である。ミキサーとしてはプラネタリーミキサーなどが挙げられる。
【0075】
接着フィルム11の厚みは、好ましくは2μm以上、より好ましくは5μm以上、さらに好ましくは10μm以上である。接着フィルム11の厚みは、好ましくは200μm以下、より好ましくは150μm以下、さらに好ましくは100μm以下である。
【0076】
接着フィルム11は、半導体装置を製造するために使用される。具体的には、接着フィルム11はダイボンディング用途で使用される。
【0077】
(カバーフィルム13)
カバーフィルム13としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムなどが挙げられる。好ましくは、カバーフィルム13は離型処理が施されたポリエチレンテレフタレートフィルムである。
【0078】
カバーフィルム13の厚みは、好ましくは20μm〜75μm、より好ましくは25μm〜50μmである。
【0079】
(半導体装置の製造方法)
図3に示すように、ダイシングシート一体型接着フィルム71に半導体ウエハ4を圧着する。半導体ウエハ4としては、シリコンウエハ、シリコンカーバイドウエハ、化合物半導体ウエハなどが挙げられる。化合物半導体ウエハとしては、窒化ガリウムウエハなどが挙げられる。
【0080】
圧着方法としては、たとえば、圧着ロールなどの押圧手段により押圧する方法などが挙げられる。
【0081】
圧着温度(貼り付け温度)は、35℃以上が好ましく、37℃以上がより好ましい。圧着温度の上限は低い方が好ましく、好ましくは50℃以下、より好ましくは45℃以下である。低温で圧着することにより、半導体ウエハ4への熱影響を防止することが可能で、半導体ウエハ4の反りを抑制できる。また、圧力は、1×10
5Pa〜1×10
7Paであることが好ましく、2×10
5Pa〜8×10
6Paであることがより好ましい。
【0082】
図4に示すように、半導体ウエハ4をダイシングすることにより、ダイボンド用チップ5を形成する。ダイボンド用チップ5は、半導体チップ41および半導体チップ41上に配置されたフィルム状接着剤111を含む。半導体チップ41は電極パッドを含む。電極パッドの材料としては、アルミニウムなどが挙げられる。本工程では、ダイシングシート一体型接着フィルム71まで切込みを行なうフルカットと呼ばれる切断方式などを採用できる。ダイシング装置としては特に限定されず、従来公知のものを用いることができる。また、半導体ウエハ4は、ダイシングシート一体型接着フィルム71により接着固定されているので、チップ欠けやチップ飛びを抑制できると共に、半導体ウエハ4の破損も抑制できる。
【0083】
ダイボンド用チップ5をピックアップする。ピックアップの方法としては特に限定されず、従来公知の種々の方法を採用できる。たとえば、個々の半導体チップ41をダイシングシート一体型接着フィルム71側からニードルによって突き上げ、次いでダイボンド用チップ5をピックアップ装置によってピックアップする方法などが挙げられる。
【0084】
図5に示すように、ダイボンド用チップ5を被着体6に圧着することにより半導体チップ付き被着体2を得る。半導体チップ付き被着体2は、被着体6、被着体6上に配置されたフィルム状接着剤111およびフィルム状接着剤111上に配置された半導体チップ41を備える。被着体6は、端子部を備える。被着体6としては、リードフレーム、インターポーザ、TABフィルム、半導体チップなどが挙げられる。被着体6がリードフレームである場合、端子部はインナーリードであることができる。
【0085】
ダイボンド用チップ5を被着体6に圧着する温度(以下、「ダイアタッチ温度」という)は、好ましくは80℃以上、より好ましくは90℃以上である。また、ダイアタッチ温度は、好ましくは150℃以下、より好ましくは130℃以下である。
【0086】
半導体チップ付き被着体2を加圧下で加熱することによりフィルム状接着剤111を硬化させる。これにより、半導体チップ41を被着体6に固着させる。加圧下でフィルム状接着剤111を硬化させることにより、フィルム状接着剤111と被着体6との間に存在するボイドを消滅させることが可能で、フィルム状接着剤111が被着体6と接触する面積を確保できる。
【0087】
加圧下で加熱する方法としては、たとえば、不活性ガスが充填されたチャンバー内に配置された半導体チップ付き被着体2を加熱する方法などが挙げられる。加圧雰囲気の圧力は、好ましくは0.5kg/cm
2(4.9×10
−2MPa)以上、より好ましくは1kg/cm
2(9.8×10
−2MPa)以上、さらに好ましくは5kg/cm
2(4.9×10
−1MPa)以上である。0.5kg/cm
2以上であると、フィルム状接着剤111と被着体6との間に存在するボイドを容易に消滅させることができる。加圧雰囲気の圧力は、好ましくは20kg/cm
2(1.96MPa)以下、より好ましくは18kg/cm
2(1.77MPa)以下、さらに好ましくは15kg/cm
2(1.47MPa)以下である。20kg/cm
2以下であると、過度な加圧によるフィルム状接着剤111のはみ出しを抑制できる。
【0088】
加熱温度は、好ましくは80℃以上、より好ましくは120℃以上、さらに好ましくは150℃以上、特に好ましくは170℃以上である。80℃以上であると、フィルム状接着剤111を適度な硬さとすることが可能で、加圧キュアによりボイドを効果的に消失させることができる。加熱温度は、好ましくは260℃以下、より好ましくは200℃以下、より好ましくは180℃以下である。260℃以下であると、フィルム状接着剤111の分解を防ぐことができる。
【0089】
加熱時間は、好ましくは0.1時間以上、より好ましくは0.2時間以上である。加熱時間は、好ましくは24時間以下、より好ましくは3時間以下、さらに好ましくは1時間以下、特に好ましくは30分以下である。
【0090】
図6に示すように、半導体チップ41の電極パッドと被着体6の端子部をボンディングワイヤー7で電気的に接続するワイヤーボンディング工程を行う。ボンディングワイヤー7の材料としては、銅などが挙げられる。
【0091】
ワイヤーボンディング工程は、ボンディングワイヤー7の一端と半導体チップ41の電極パッドを接合するステップ、ボンディングワイヤー7の他端と被着体6の端子部を接合するステップなどを含む。
【0092】
ワイヤーボンディング工程を行った後、封止樹脂8により半導体チップ41を封止する封止工程を行う。本工程は、被着体6に搭載された半導体チップ41やボンディングワイヤー7を保護する為に行われる。本工程は、封止用の樹脂を金型で成型することにより行う。封止樹脂8としては、たとえばエポキシ系の樹脂を使用する。樹脂封止の際の加熱温度は、好ましくは165℃以上、より好ましくは170℃以上であり、加熱温度は、好ましくは185℃以下、より好ましくは180℃以下である。
【0093】
必要に応じて、封止後にさらに加熱をしてもよい(後硬化工程)。これにより、封止工程で硬化不足の封止樹脂8を完全に硬化できる。加熱温度は適宜設定できる。
【0094】
以上の方法により得られた半導体装置は、被着体6、被着体6上に配置された接着層および接着層上に配置された半導体チップ41を含む。接着層は、フィルム状接着剤111が硬化することにより形成される。半導体装置は、半導体チップ41を覆う封止樹脂8をさらに含む。
【0095】
以上のとおり、半導体装置の製造方法は、ダイシングダイボンドフィルム1を準備する工程と、ダイシングシート一体型接着フィルム71の接着フィルム11に半導体ウエハ4を圧着する工程と、接着フィルム11に半導体ウエハ4を圧着する工程の後に、ダイ分割をなすことによりダイボンド用チップ5を形成する工程と、ダイボンド用チップ5を被着体6に圧着する工程とを含む。半導体装置の製造方法は、ダイボンド用チップ5を被着体6に圧着する工程の後に、ボンディングワイヤー7の一端と半導体チップ41の電極パッドを接合するステップ、ボンディングワイヤー7の他端と被着体6の端子部を接合するステップを含む工程をさらに含む。半導体装置の製造方法は、封止樹脂8で半導体チップ41を封止する工程をさらに含む。
【0096】
接着フィルム11に半導体ウエハ4を圧着する工程は、カバーフィルム13からダイシングシート一体型接着フィルム71を剥離するステップを含む。
【0097】
(変形例1)
粘着剤層122の接触部122Aは放射線により硬化する性質を有する。粘着剤層122の周辺部122Bも放射線により硬化する性質を有する。半導体装置の製造方法において、ダイボンド用チップ5を形成し、粘着剤層122に紫外線を照射し、ダイボンド用チップ5をピックアップする。これにより、粘着剤層122のダイボンド用チップ5に対する粘着力が低下するので、ダイボンド用チップ5を容易にピックアップできる。
【0098】
(変形例2)
粘着剤層122の接触部122Aは放射線により硬化されている。粘着剤層122の周辺部122Bも放射線により硬化されている。
【0099】
(変形例3)
接着フィルム11は、第1層および第1層上配置された第2層を含む複層形状をなす。
【0100】
(変形例4)
図7に示すように、ダイシングシート12における粘着面の全体が、接着フィルム11と接する。粘着剤層122は、放射線により硬化する性質を有することが好ましい。半導体装置の製造方法において、ダイボンド用チップ5を形成し、粘着剤層122に紫外線を照射し、ダイボンド用チップ5をピックアップする。これにより、粘着剤層122のダイボンド用チップ5に対する粘着力が低下するので、ダイボンド用チップ5を容易にピックアップできる。
【0101】
(変形例5)
基材層121は単層形状をなす。
【0102】
(変形例6)
ダイボンド用チップ5を形成する工程が、エキスパンドによりダイシングシート一体型接着フィルム71上に配置された半導体ウエハ4を分割する段階を含む。たとえば、ダイボンド用チップ5を形成する工程が、ダイシングシート一体型接着フィルム71上に配置された半導体ウエハ4にレーザー光を照射することにより、半導体ウエハ4の内部に脆弱層を形成するステップを含む。このとき、ダイボンド用チップ5を形成する工程は、脆弱層を形成するステップの後にエキスパンドをなすステップをさらに含む。エキスパンドにより接着フィルム11および半導体ウエハ4を同時に分割する。
【0103】
(変形例7)
図8に示すように、半導体装置の製造方法は、接着フィルム11に半導体ウエハ4を圧着する工程と、接着フィルム11に半導体ウエハ4を圧着する工程の後に、ダイ分割をなすことによりダイボンド用チップ5を形成する工程と、ダイボンド用チップ5を被着体61に圧着する工程とを含む。具体的は、ダイボンド用チップ5を被着体61に圧着する工程は、ダイボンド用チップ5を被着体61の半導体チップ641に圧着する工程である。被着体61は、基板606、半導体チップ641および半導体チップ641と基板606を接続するボンディングワイヤー607を含む。より具体的には、被着体61は、基板606、基板606上に配置された接着層611、接着層611上に配置された半導体チップ641および半導体チップ641と基板606を接続するボンディングワイヤー607を含む。ボンディングワイヤー607は、フィルム状接着剤111に埋まった部分を有する。
【0104】
(変形例8)
図9に示すように、ダイボンド用チップ5を被着体61に圧着する工程は、ダイボンド用チップ5を被着体61の基板606に圧着する工程である。ボンディングワイヤー607は、フィルム状接着剤111に埋まった両端を含む。
【0105】
(その他の変形例)
変形例1〜変形例8などは、任意に組み合わせることができる。
【実施例】
【0106】
以下、本発明に関し実施例を用いて詳細に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。
【0107】
[1.ダイシングシート一体型接着フィルムの作製]
ダイシングシート一体型接着フィルムA〜Eを作製した。
図10に示すように、ダイシングシート一体型接着フィルムA〜Eは、ダイシングシート9およびダイシングシート9上に配置された接着フィルム3を有する。ダイシングシート9は、基材91および基材91上に配置された粘着剤層92を有する。基材91は、第1基材911および第1基材911上に配置された第2基材912を有する。第2基材912は、第2面912bを有する。接着フィルムAは、第2主面3bを有する。
【0108】
(1)接着フィルムの作製
接着フィルムを作製するために使用した成分について説明する。
アクリル樹脂:ナガセケムテックス社製のテイサンレジンWS023−EK30(ヒドロキシル基およびカルボキシ基を有するアクリル酸エステル共重合体、Mw:50万、ガラス転移温度:−10℃)
エポキシ樹脂1:三菱化学社製のjER1001(固形エポキシ樹脂、エポキシ当量450g/eq.〜500g/eq.)
エポキシ樹脂2:三菱化学社製のjER828(液状エポキシ樹脂、エポキシ当量180g/eq.)
フェノール樹脂1:明和化成社製のMEH−7851(フェノール樹脂、水酸基当量201〜220g/eq.)
球状シリカ:アドマテックス社製のSO−25R(平均粒径0.5μmの球状シリカ)
導電性高分子:綜研化学社製のWED−S
【0109】
表1に記載の配合比に従い、各成分をメチルエチルケトンに溶解し、固形分濃度20重量%の接着剤組成物溶液を調製した。厚み50μmのセパレータ(シリコーン離型処理したPETフィルム)上に接着剤組成物溶液を塗布し、130℃のオーブンで2分間乾燥し、厚み20μmの接着フィルムA〜Cを作製した。
【0110】
【表1】
【0111】
(2)粘着剤層の作製
次に、冷却管、窒素導入管、温度計および撹拌装置を備えた反応容器に、アクリル酸2−エチルヘキシル(以下、「2EHA」という。)100部、アクリル酸−2−ヒドロキシエチル(以下、「HEA」という。)10部、過酸化ベンゾイル0.3部およびトルエン80部を入れ、窒素気流中で60℃にて8時間重合処理をし、アクリル系ポリマーAを得た。このアクリル系ポリマーAに2−メタクリロイルオキシエチルイソシアネート(以下、「MOI」という。)5部を加え、空気気流中で50℃にて50時間、付加反応処理をし、アクリル系ポリマーA’を得た。
【0112】
次に、アクリル系ポリマーA’100部に対し、ポリイソシアネート化合物(商品名「コロネートL」、日本ポリウレタン(株)製)5部、および光重合開始剤(商品名「イルガキュア184」、チバ・スペシャルティー・ケミカルズ社製)5部を加えて、粘着剤溶液を作製した。粘着剤溶液を、PET剥離ライナーのシリコーン処理を施した面上に塗布し、120℃で2分間加熱乾燥し、厚さ30μmの粘着剤層を形成した。
【0113】
(3)実施例1におけるダイシングシート一体型接着フィルムAの作製
第1基材911は、厚み50μmのポリプロピレン製の基材である。第2基材912は、ポリエチレン100重量部に対して、綜研化学社製のWED−Sを20重量部含有する基材である。第2基材912の厚みは30μmである。
【0114】
粘着剤層と第1基材911を貼り合わせ、23℃にて72時間保存した。紫外線照射装置(日東精機製のUM−810)を用いて、基材91越しに「粘着剤層における半導体ウエハが搭載される領域」に500mJ/cm
2の紫外線を照射することにより、ダイシングシート9を形成した。
【0115】
ハンドローラーを用いて、接着フィルムAとダイシングシート9を貼り合わせることにより、ダイシングシート一体型接着フィルムAを作製した。
【0116】
(4)実施例2におけるダイシングシート一体型接着フィルムBの作製
第1基材911は、厚み80μmのポリプロピレン製の基材である。第2基材912は、エチレン−酢酸ビニル共重合体100重量部に対して、T&K TOKA社製のPA−200(導電性高分子)を20重量部含有する基材である。第2基材912の厚みは10μmである。
【0117】
粘着剤層と第1基材911を貼り合わせ、23℃にて72時間保存した。紫外線照射装置(日東精機製のUM−810)を用いて、基材91越しに「粘着剤層における半導体ウエハが搭載される領域」に500mJ/cm
2の紫外線を照射することにより、ダイシングシート9を形成した。
【0118】
ハンドローラーを用いて、接着フィルムBとダイシングシート9を貼り合わせることにより、ダイシングシート一体型接着フィルムBを作製した。
【0119】
(5)実施例3におけるダイシングシート一体型接着フィルムCの作製
【0120】
第1基材911は、厚み50μmのエチレン−酢酸ビニル共重合体製の基材である。第2基材912は、ポリエチレン100重量部に対して、T&K TOKA社製のPA−200を30重量部含有する基材である。第2基材912の厚みは30μmである。
【0121】
粘着剤層と第1基材911を貼り合わせ、23℃にて72時間保存した。紫外線照射装置(日東精機製のUM−810)を用いて、基材91越しに「粘着剤層における半導体ウエハが搭載される領域」に500mJ/cm
2の紫外線を照射することにより、ダイシングシート9を形成した。
【0122】
ハンドローラーを用いて、接着フィルムAとダイシングシート9を貼り合わせることにより、ダイシングシート一体型接着フィルムCを作製した。
【0123】
(6)比較例1におけるダイシングシート一体型接着フィルムDの作製
第1基材911は、厚み50μmのポリプロピレン製の基材である。第2基材912は、厚みは30μmのポリエチレン製の基材である。
【0124】
粘着剤層と第1基材911を貼り合わせ、23℃にて72時間保存した。紫外線照射装置(日東精機製のUM−810)を用いて、基材91越しに「粘着剤層における半導体ウエハが搭載される領域」に500mJ/cm
2の紫外線を照射することにより、ダイシングシート9を形成した。
【0125】
ハンドローラーを用いて、接着フィルムCとダイシングシート9を貼り合わせることにより、ダイシングシート一体型接着フィルムDを作製した。
【0126】
(7)比較例2におけるダイシングシート一体型接着フィルムEの作製
第1基材911は、ポリエチレン100重量部に対して、綜研化学社製のWED−Sを20重量部含有する基材である。第1基材911の厚みは50μmである。第2基材912は、厚み30μmのポリプロピレン製の基材である。
【0127】
粘着剤層と第1基材911を貼り合わせ、23℃にて72時間保存した。紫外線照射装置(日東精機製のUM−810)を用いて、基材91越しに「粘着剤層における半導体ウエハが搭載される領域」に500mJ/cm
2の紫外線を照射することにより、ダイシングシート9を形成した。
【0128】
ハンドローラーを用いて、接着フィルムAとダイシングシート9を貼り合わせることにより、ダイシングシート一体型接着フィルムEを作製した。
【0129】
[2.評価]
ダイシングシート一体型接着フィルムA〜Eについて、以下の評価を行った。結果を表2に示す。
【0130】
(1)第2面912bの表面抵抗値
アドバンテスト社製ハイメグオームメーターTR−8601の超高抵抗測定用試料箱TR−42を用いた。23±2℃、50±5%雰囲気下にダイシングシート一体型接着フィルムを2時間静置した後、同環境下で第2面912bに印加電圧500Vを加え、印加開始から1分後の数値を読み取った。印加電圧を表面電流で割った数値から、表面抵抗値を求めた。
【0131】
(2)破断伸度
ダイシングシート9から初期長さ120mm、幅10mmの短冊状のサンプルを切り出し、チャック間距離50mm、引張速度300mm/minで引張試験を行うことにより、サンプルの伸びの変化量(mm)を測定した。引張試験器として島津社製のオートグラフAG−IS、ロードセルとして島津社製のPFG−50NAを用いた。
【0132】
(3)カバーフィルム剥離試験
カバーフィルムにダイシングシート一体型接着フィルムを200枚貼りつけ、ロール状に巻き、ウエハマウント装置MA−3000III(日東精機製)を用いてウエハ貼り合せ試験を行った。ダイシングシート一体型接着フィルム10枚からカバーフィルムを剥離し、ダイシングシート一体型接着フィルム10枚全てにおいてカバーフィルムを剥離できた場合を○と判定し、1枚以上剥離できなかった場合を×と判定した。
【0133】
(4)ダイシング後の飛散状況
ダイシングシート一体型接着フィルムに12インチ、500μm厚のミラーウエハをウエハマウント装置(MA−3000III、日東精機製)にて60℃、10mm/secの速度で貼り合せした。その後、ダイシング装置(DFD6361、ディスコ製)にて10mm×10mmのチップサイズにダイシングを行った(シングルカット、ブレード高さ90μm、速度50mm/sec)。チップ上に導電性成分が付着しているかどうかをSEMにて分析した。導電性成分がチップ上に付着していなかった場合を○と判定し、導電性成分がチップ上に付着していた場合を×と判定した。
【0134】
(5)第2主面3bの表面抵抗値
アドバンテスト社製ハイメグオームメーターTR−8601の超高抵抗測定用試料箱TR−42を用いた。23±2℃、50±5%雰囲気下にダイシングシート一体型接着フィルムを2時間静置した後、同環境下で第2主面3bに印加電圧500Vを加え、印加開始から1分後の数値を読み取った。印加電圧を表面電流で割った数値から、表面抵抗値を求めた。
【0135】
(6)タック強度
直径5.0mmのプローブを、25℃、加圧条件100gf、加圧時間1秒で接着フィルムに押し付け、テストスピード120mm/minでプローブが接着フィルムから離れるときの荷重を測定した。
【0136】
【表2】