特許第6549905号(P6549905)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6549905
(24)【登録日】2019年7月5日
(45)【発行日】2019年7月24日
(54)【発明の名称】半導体集積回路
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/822 20060101AFI20190711BHJP
   H01L 27/04 20060101ALI20190711BHJP
   H01L 27/06 20060101ALI20190711BHJP
   H01L 21/331 20060101ALI20190711BHJP
   H01L 29/73 20060101ALI20190711BHJP
   H01L 29/861 20060101ALI20190711BHJP
   H01L 29/868 20060101ALI20190711BHJP
【FI】
   H01L27/04 H
   H01L27/06 311B
   H01L29/72 Z
   H01L29/91 C
【請求項の数】3
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2015-108594(P2015-108594)
(22)【出願日】2015年5月28日
(65)【公開番号】特開2016-225401(P2016-225401A)
(43)【公開日】2016年12月28日
【審査請求日】2017年11月21日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000003551
【氏名又は名称】株式会社東海理化電機製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100079049
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 淳
(74)【代理人】
【識別番号】100084995
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 和詳
(74)【代理人】
【識別番号】100099025
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 浩志
(72)【発明者】
【氏名】島 健悟
【審査官】 綿引 隆
(56)【参考文献】
【文献】 特開平05−183109(JP,A)
【文献】 特開平06−163841(JP,A)
【文献】 特開2003−060059(JP,A)
【文献】 特開2010−135489(JP,A)
【文献】 特開2011−018685(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2003/0168682(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/331
H01L 21/822
H01L 27/04−082
H01L 29/73
H01L 29/861
H01L 29/868
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体基板に設けられた回路部と、
当該回路部に接続され、信号が入力又は出力される外部端子と、
前記回路部と前記外部端子との接続途中にコレクタ領域が接続され、固定電位にエミッタ領域が接続されるバイポーラトランジスタを含んで構成された保護素子と、
前記コレクタ領域と前記バイポーラトランジスタのベース領域とのpn接合に付加される接合容量よりも小さな接合容量が付加されるpn接合を有し、前記外部端子にカソード領域が接続され、前記ベース領域にアノード領域が接続され、かつ、逆方向に接続されたトリガ素子と、
を備え、
前記カソード領域が前記コレクタ領域と共通な構成として構成され、前記アノード領域が前記コレクタ領域の主面部に形成されており、
前記コレクタ領域及び前記ベース領域が、前記半導体基板の主面と平行な方向に並置され且つ前記ベース領域が前記コレクタ領域の外側に形成されている
半導体集積回路。
【請求項2】
前記トリガ素子は、前記アノード領域が、前記ベース領域の接合深さよりも浅い接合深さを有し、前記コレクタ領域に対して逆導電型であるダイオードを含んで構成されている請求項1に記載の半導体集積回路。
【請求項3】
前記トリガ素子は、前記コレクタ領域の比抵抗値よりも小さい比抵抗値を有する配線を介して、前記ベース領域に接続されている請求項1又は請求項2に記載の半導体集積回路。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、保護素子を備えた半導体集積回路に関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、静電気保護素子が開示されている。静電気保護素子は、入出力端子と内部回路との間にコレクタ領域が接続され、接地電位にエミッタ領域が接続されたnpn型バイポーラトランジスタにより構成されている。
【0003】
静電気保護素子では、入出力端子にサージが印加されると、コレクタ領域とベース領域とのpn接合においてブレークダウンが生じてベース領域にホットキャリアが発生する。このため、ベース領域のベース電位が上昇してベース領域からエミッタ領域に順方向電流が流れるので、バイポーラトランジスタが動作する。これにより、サージが内部回路に到達する前にコレクタ領域、ベース領域、エミッタ領域を通して接地電位に流れるので、内部回路の静電気破壊を防止することができる。
【0004】
ところで、静電気保護素子としてのバイポーラトランジスタでは、コレクタ領域及びベース領域の接合深さがいずれもエミッタ領域の接合深さよりも深く形成されている。このため、コレクタ領域とベース領域とのpn接合に付加される接合容量が大きい。接合容量にサージの電荷がチャージされないと、pn接合においてブレークダウンが生じないので、バイポーラトランジスタの動作開始までの時間が長くなる。従って、静電気保護素子の動作開始前にサージが内部回路に入力されてしまうと、内部回路に静電気破壊が発生するので、内部回路の静電気破壊に対して、改善の余地があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第5203850号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、外部端子に印加されたサージが短時間において吸収される保護素子を備えた半導体集積回路を得ることが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に記載された発明に係る半導体集積回路は、半導体基板に設けられた回路部と、回路部に接続され、信号が入力又は出力される外部端子と、回路部と外部端子との接続途中にコレクタ領域が接続され、固定電位にエミッタ領域が接続されるバイポーラトランジスタを含んで構成された保護素子と、コレクタ領域とバイポーラトランジスタのベース領域とのpn接合に付加される接合容量よりも小さな接合容量が付加されるpn接合を有し、外部端子にカソード領域が接続され、ベース領域にアノード領域が接続され、かつ、逆方向に接続されたトリガ素子と、を備え、カソード領域がコレクタ領域と共通な構成として構成され、アノード領域がコレクタ領域の主面部に形成されており、コレクタ領域及びベース領域が、半導体基板の主面と平行な方向に並置され且つベース領域がコレクタ領域の外側に形成されている。
【0008】
請求項1に係る半導体集積回路では、半導体基板に回路部が設けられ、信号が入力又は出力される外部端子が回路部に接続される。保護素子はバイポーラトランジスタを含んで構成される。このバイポーラトランジスタのコレクタ領域は外部端子と回路部との接続途中に接続され、エミッタ領域は固定電位に接続される。
【0009】
ここで、半導体集積回路はトリガ素子を備える。トリガ素子のカソード領域は外部端子に接続され、トリガ素子のアノード領域はバイポーラトランジスタのベース領域に接続され、かつ、トリガ素子は逆方向に接続される。このトリガ素子は、バイポーラトランジスタのコレクタ領域とベース領域とのpn接合に付加される接合容量よりも小さな接合容量が付加されるpn接合を有する。外部端子にサージが印加されると、トリガ素子のpn接合に付加される接合容量が、バイポーラトランジスタのコレクタ領域とベース領域とのpn接合に付加される接合容量よりも短時間にチャージされる。このため、コレクタ領域とベース領域とのpn接合よりも短時間にトリガ素子のpn接合においてブレークダウンが生じる。サージはトリガ素子を介してベース領域に流れるので、ベース領域のベース電位が上昇してベース領域から他の主電極領域に順方向電流が流れる。順方向電流が流れると、コレクタ領域とベース領域とのpn接合に付加される接合容量がチャージされる前の短時間にバイポーラトランジスタが動作する。これにより、サージは、回路部に入力される前に、コレクタ領域、ベース領域及びエミッタ領域を介して固定電位に流れる。トリガ素子のカソード領域はコレクタ領域と共通な構成によって構成され、アノード領域がコレクタ領域の主面部に形成されている。このため、バイポーラトランジスタのコレクタ領域の占有面積内にトリガ素子が形成され、保護素子内にトリガ素子が設けられるので、保護素子に対して別の領域にトリガ素子を設ける場合に比べて、半導体集積回路の集積度を向上させることができる。
【0010】
請求項2に記載された発明に係る半導体集積回路では、請求項1に係る半導体集積回路において、トリガ素子は、アノード領域が、ベース領域の接合深さよりも浅い接合深さを有し、コレクタ領域に対して逆導電型であるダイオードを含んで構成されている。
【0011】
請求項2に係る半導体集積回路によれば、トリガ素子がダイオードを含んで構成され、ダイオードはカソード領域とアノード領域とを有する。ここで、ダイオードのアノード領域は、ベース領域の深さよりも浅い接合深さを有し、コレクタ領域に対して逆導電型を有する
【0012】
請求項3に記載された発明に係る半導体集積回路では、請求項1又は請求項2に係る半導体集積回路において、トリガ素子は、コレクタ領域の比抵抗値よりも小さい比抵抗値を有する配線を介して、ベース領域に接続されている。
【0013】
請求項3に係る半導体集積回路によれば、比抵抗値が小さい配線を介してトリガ素子がベース領域に接続されるので、サージはトリガ素子からベース領域に短時間に流れる。このため、トリガ素子からベース領域に流れるサージによるバイポーラトランジスタの動作開始時間を更に短縮させることができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、外部端子に印加されたサージが短時間において吸収される保護素子を備えた半導体集積回路を得ることができるという優れた効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の一実施の形態に係る保護素子及びトリガ素子を含む半導体集積回路の要部回路図である。
図2図1に示される保護素子及びトリガ素子の断面構造を含む半導体集積回路の要部断面図である。
図3】トリガ素子の動作を説明する図2に対応する半導体集積回路の要部断面図である。
図4】保護素子の動作を説明する図2に対応する半導体集積回路の要部断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図1図4を用いて、本発明の一実施の形態に係る保護素子を備えた半導体集積回路を説明する。
【0017】
(半導体集積回路及び保護素子の回路構成)
図1に示されるように、本実施の形態に係る半導体集積回路10は、半導体基板(半導体チップ)12の主面中央部に回路部14を備えている。回路部14の周囲であって、半導体基板12の縁部に沿って、半導体基板12上には外部端子22が配置されている。本実施の形態において、外部端子22は入力信号用外部端子として形成されている。外部端子22は回路部14の初段回路16に配線24を介して電気的に接続されている。つまり、半導体集積回路10の外部から外部端子22に入力された信号は、配線24を介して、初段回路16に送られる。
【0018】
回路構成は限定されないが、本実施の形態では、初段回路16が相補型回路により構成されている。詳しく説明すると、初段回路16は、pチャネル型IGFET(絶縁ゲート電界効果トランジスタ)18とnチャネル型IGFET20との直列回路により構成されている。IGFET18及びIGFET20の双方のゲート電極は外部端子22に接続されている。IGFET18のソース領域は、回路動作に必要な固定電位が供給される電源端子Vccに接続されている。IGFET20のソース領域は、回路動作の基準の固定電位となる接地端子GNDに接続されている。
【0019】
本実施の形態に係る半導体集積回路10は、例えば自動車等の車両に電子部品として組み込まれ、半導体集積回路10の回路動作に必要な電源(例えば、直流12V又は直流24V)がバッテリから供給される。このため、電源端子Vccにはバッテリから固定電位が供給される。接地端子GNDはバッテリの接地端子又は車体アースに接続される。IGFET18及びIGFET20のドレイン領域は次段回路の入力端子に接続されている。
【0020】
本実施の形態に係る半導体集積回路10では、外部端子22と回路部14の初段回路16との間に保護素子30が配設され、更に保護素子30にはトリガ素子32が接続されている。詳しく説明すると、保護素子30は、本実施の形態において、npn型バイポーラトランジスタにより構成されている。バイポーラトランジスタの一方の主電極領域としてのn型コレクタ領域は、外部端子22と回路部14との間の配線24に電気的に接続されている(接続途中に接続されている)。バイポーラトランジスタの他方の主電極領域としてのn型エミッタ領域は、固定電位としての接地端子GNDに電気的に接続されている。
【0021】
トリガ素子32は、本実施の形態において、ダイオードにより構成されている。詳しく説明すると、ダイオードは、アノード領域とカソード領域とを備えている。アノード領域は、保護素子30としてのバイポーラトランジスタのベース領域に電気的に接続されている。カソード領域は、サージが印加される外部端子22からバイポーラトランジスタのコレクタ領域までの間において、配線24又はコレクタ領域に電気的に接続されている。結果的に、カソード領域は外部端子22に電気的に接続されている。
【0022】
(半導体集積回路、保護素子及びトリガ素子の縦断面構造)
図2に示されるように、半導体集積回路10の半導体基板12は、ここでは第1導電型としてのp型シリコン(Si)基板によって構成されている。半導体基板12の不純物密度は例えば1015 atoms/cm3 に設定され、比抵抗値は例えば8Ω・cm〜12Ω・cmに設定されている。
【0023】
保護素子30のバイポーラトランジスタは、第2導電型としてのn型コレクタ領域42と、p型ベース領域44と、n型エミッタ領域46とを備えている。コレクタ領域42は半導体基板12の主面12Aから厚さ方向に拡散されたn型半導体領域によって形成されている。コレクタ領域42の不純物密度は例えば1016 atoms/cm3 〜1017 atoms/cm3 に設定され、コレクタ領域42の比抵抗値は例えば0.07Ω・cm〜0.5Ω・cmに設定されている。コレクタ領域42の接合深さは、ベース領域44の接合深さよりも深く、例えば3μm以上に設定されている。なお、本実施の形態において、「拡散」とは、イオン注入法によって不純物を注入して活性化のために拡散する場合、所謂、固相拡散する場合のいずれも含まれる意味で使用されている。
【0024】
コレクタ領域42の主面部において、素子分離絶縁膜40により周囲が囲まれた領域には、n型半導体領域46Cが設けられている。素子分離絶縁膜40は、例えば半導体基板12の主面12Aの選択酸化によって形成されたシリコン酸化膜である。半導体領域46Cは、コレクタ領域42と同一導電型に設定され、コレクタ領域42よりも不純物密度が高い例えば1019 atoms/cm3 〜1020 atoms/cm3 の不純物密度に設定されている。また、半導体領域46Cの深さは、コレクタ領域42よりも浅い例えば1μm以下に設定されている。
【0025】
半導体領域46Cには配線24の他端部が接続されている。配線24の一端部は外部端子22、回路部14に接続されている。配線24は半導体基板12の主面12A上及び素子分離絶縁膜40上を覆う層間絶縁膜50上に形成されている。配線24の他端部は、層間絶縁膜50に形成された接続孔52を通して半導体領域46Cに接続されている。配線24として、例えばアルミニウムにシリコン(Si)、銅(Cu)等が添加されたアルミニウム合金膜又はそれを主体とした複合膜が使用されている。配線24の比抵抗値は例えば0.002Ω・cm〜0.003Ω・cmに設定されている。半導体領域46Cが介在されることにより、コレクタ領域42に配線24をオーミックに接続することができる。
【0026】
ベース領域44は、コレクタ領域42に隣接して形成され、コレクタ領域42の接合深さよりも浅く、半導体領域46Cの深さよりも深く、半導体基板12の主面12Aから厚さ方向に拡散されたp型半導体領域によって形成されている。ベース領域44の不純物密度は例えば1017 atoms/cm3 〜1018 atoms/cm3 に設定され、ベース領域44の深さは例えば3μm程度に設定されている。ベース領域44とコレクタ領域42とが隣接された部位にはpn接合J1が形成されている。
【0027】
ベース領域44の主面部において、素子分離絶縁膜40により周囲が囲まれた領域には、p型半導体領域48Cが設けられている。半導体領域48Cは、ベース領域44と同一導電型に設定され、ベース領域44よりも不純物密度が高い例えば1019 atoms/cm3 〜1020 atoms/cm3 の不純物密度に設定されている。また、半導体領域48Cの深さは、ベース領域44よりも浅い例えば1μm以下に設定されている。半導体領域48Cには、配線26の一端部が接続されている。配線26の他端部はトリガ素子32のアノード領域に接続されている。配線26は、配線24と同一導電層で形成され、かつ、配線24と同一材料によって形成されている。半導体領域48Cが介在されることによって、ベース領域44に配線26をオーミックに接続することができる。
【0028】
エミッタ領域46は、ベース領域44の主面部において、素子分離絶縁膜40により周囲が囲まれた領域に形成されている。エミッタ領域46は、ベース領域44の深さよりも浅い接合深さを有し、半導体基板12の主面12Aから厚さ方向に拡散されたn型半導体領域により形成されている。エミッタ領域46は、半導体領域46Cと同一製造工程によって、半導体領域46Cと同様の条件により形成されている。エミッタ領域46には、配線28の一端部が接続されている。配線28の他端部は接地端子GNDに接続されている。配線28は、配線24と同一導電層で形成され、かつ、配線24と同一材料によって形成されている。
【0029】
トリガ素子32のカソード領域は、本実施の形態において、保護素子30のn型コレクタ領域42が利用されてこのコレクタ領域42によって形成されている。アノード領域は、コレクタ領域42の主面部において、半導体領域46Cとは離間され、素子分離絶縁膜40により周囲が囲まれた領域に形成されたp型半導体領域48によって形成されている。半導体領域48は、半導体領域48Cと同一製造工程によって、半導体領域48Cと同様の条件により形成されている。半導体領域48には配線26の一端部が接続され、アノード領域は配線26及び半導体領域48Cを介してベース領域44に接続されている。カソード領域(コレクタ領域42)とアノード領域(半導体領域48)とが隣接された部位にはpn接合J2が形成されている。
【0030】
pn接合J2に付加される接合容量(寄生接合容量)は、アノード領域の接合深さがベース領域44に比べて浅いので、コレクタ領域42とベース領域44とのpn接合J1に付加される接合容量(寄生接合容量)に対して小さい。また、pn接合J2では、アノード領域(半導体領域48)の不純物密度がベース領域44の不純物密度よりも高いので、pn接合J2からアノード領域側への空乏層の伸びが、pn接合J1からベース領域44側への空乏層の伸びに対して小さい。従って、pn接合J2は、pn接合J1に対して、ブレークダウンし易い。
【0031】
(本実施の形態の作用及び効果)
本実施の形態に係る半導体集積回路10は、図1及び図2に示されるように、npn型バイポーラトランジスタを含んで構成される保護素子30に加えて、トリガ素子32を備える。トリガ素子32のカソード領域(n型コレクタ領域42)は外部端子22に接続され、トリガ素子32のアノード領域(p型半導体領域48)は保護素子30(バイポーラトランジスタ)のベース領域44に接続され、かつ、トリガ素子32は逆方向に接続される。本実施の形態ではトリガ素子32としてダイオードが使用されるので、「逆方向に接続される」とは、正のサージ(過電流)の流れる方向に対して、ダイオードが順方向接続ではなく、「ブレークダウンが生じる逆方向接続に接続される」という意味で使用されている。トリガ素子32は、バイポーラトランジスタのコレクタ領域42とベース領域44とのpn接合J1に付加される接合容量よりも小さな接合容量が付加されるpn接合J2を有する。
【0032】
ここで、図3に示されるように、外部端子22にサージSが印加されると、サージSは、矢印A1に示すように、配線24及び半導体領域46Cを介して保護素子30のn型コレクタ領域42に流れる。トリガ素子32のpn接合J2に付加される接合容量が保護素子30のpn接合J1に付加される接合容量よりも小さいので、サージSの電荷が、pn接合J1に付加される接合容量よりもpn接合J2に付加される接合容量に短時間にチャージされる。このため、pn接合J1よりも短時間にトリガ素子32のpn接合J2においてブレークダウンが生じる。サージSは、矢印A2に示されるようにトリガ素子32を介して、更に矢印A3、A4に示されるように配線26、半導体領域48Cを介してベース領域44に流れる。このサージSによりベース領域44のベース電位が上昇する。
【0033】
ベース電位が上昇すると、図4に矢印B1に示されるように、ベース領域44からエミッタ領域46に順方向電流が流れる。これにより、pn接合J1に付加される接合容量がチャージされる前の短時間に保護素子30の動作が開始される。すなわち、サージSの大半は、矢印B2に示されるように、保護素子30のコレクタ領域42、ベース領域44及びエミッタ領域46を介して接地端子GNDに流れる。
【0034】
このように、本実施の形態に係る半導体集積回路10によれば、外部端子22に印加されたサージSが短時間において吸収される保護素子30を実現することができる。言い換えると、保護素子30の動作速度の高速化を実現することができる。この結果、外部端子22に印加されたサージSが、回路部14の初段回路16に入力される前に、接地端子GNDに流れるので、初段回路16のサージSに伴う破壊(静電気破壊)を未然に防ぐことができる。
【0035】
また、本実施の形態に係る半導体集積回路10では、図1及び図2に示されるように、トリガ素子32がダイオードを含んで構成され、ダイオードはカソード領域とアノード領域とを有する。ここで、ダイオードのカソード領域は、保護素子30のバイポーラトランジスタのn型コレクタ領域42によって形成される。アノード領域は、コレクタ領域42の主面部に形成され、ベース領域44の深さよりも浅い接合深さを有し、コレクタ領域42に対して逆導電型を有する(p型半導体領域48により形成される)。このため、バイポーラトランジスタのコレクタ領域42の占有面積内にダイオードが形成されるので、結果的に保護素子30内にトリガ素子32が設けられる。従って、保護素子30に対して別の領域にトリガ素子32を設ける場合に比べて、半導体集積回路10の集積度を向上させることができる。
【0036】
さらに、本実施の形態に係る半導体集積回路10では、コレクタ領域42、ベース領域44等の半導体領域の比抵抗値に比べて、比抵抗値が小さい配線26を介してトリガ素子32のアノード領域がベース領域44に接続される。このため、図3に示されるように、トリガ素子32に入力されたサージSはトリガ素子32からベース領域44に短時間に流れるので、トリガ素子32からベース領域44に流れるサージSによる保護素子30の動作開始時間を更に短縮させることができる。
【0037】
[上記実施の形態の補足説明]
本発明は、上記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において例えば以下の通り変形可能である。例えば、本発明は、回路部の最終段回路と、この最終段回路からの信号を外部に出力する出力信号用外部端子との接続途中に設けられた保護素子に適用可能である。また、本発明は、回路部の入出力回路と、この入出力回路に外部から信号が入力される、若しくはこの入出力回路からの信号を外部に出力する入出力信号用外部端子との接続途中に設けられた保護素子にも適用可能である。
【0038】
さらに、保護素子は、pnp型バイポーラトランジスタを含んで構成されてもよい。この場合、保護素子は、固定電位として電源端子Vccに接続される。また、保護素子は、npn型バイポーラトランジスタとpnp型バイポーラトランジスタとを相補型回路として含んで構成されてもよい。また、保護素子は、外部端子との間に電気的に直列に接続され、かつ、サージをなまらせる抵抗素子を含んで構成されてもよい。また、トリガ素子は、2以上のダイオードを向きを反対にして直列に接続した構成としてもよい。この場合、トリガ素子は、正、負のいずれのサージに対しても逆方向となるpn接合を有する。
【0039】
さらに、本発明は、半導体基板として、シリコン基板に限定されるものではなく、シリコン基板以外の化合物半導体基板を使用してもよい。また、本発明は、車両に搭載される半導体集積回路に限定されるものではなく、一般的なパーソナルコンピュータ、携帯端末、携帯電話機等に内蔵される半導体集積回路に適用してもよい。
【符号の説明】
【0040】
10 半導体集積回路
12 半導体基板
14 回路部
22 外部端子
24、26、28 配線
30 保護素子
32 トリガ素子
42 コレクタ領域(一方の主電極領域、カソード領域)
44 ベース領域
46 エミッタ領域(他方の主電極領域)
48 半導体領域(アノード領域)
J1、J2 pn接合
図1
図2
図3
図4