特許第6549910号(P6549910)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6549910
(24)【登録日】2019年7月5日
(45)【発行日】2019年7月24日
(54)【発明の名称】携帯物落下防止具
(51)【国際特許分類】
   B25H 3/00 20060101AFI20190711BHJP
   E04G 21/32 20060101ALI20190711BHJP
【FI】
   B25H3/00 Z
   E04G21/32 Z
【請求項の数】4
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2015-116918(P2015-116918)
(22)【出願日】2015年6月9日
(65)【公開番号】特開2017-1132(P2017-1132A)
(43)【公開日】2017年1月5日
【審査請求日】2018年6月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】391032026
【氏名又は名称】株式会社パテントアイランド
(74)【代理人】
【識別番号】100071205
【弁理士】
【氏名又は名称】野本 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100179970
【弁理士】
【氏名又は名称】桐山 大
(72)【発明者】
【氏名】付 強
【審査官】 亀田 貴志
(56)【参考文献】
【文献】 特開2002−179342(JP,A)
【文献】 登録実用新案第3060248(JP,U)
【文献】 特開2003−074190(JP,A)
【文献】 実開昭61−187683(JP,U)
【文献】 特開2002−180673(JP,A)
【文献】 特開2003−311660(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25H 3/00
E04G 21/32
A47G 29/00 − 29/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケースと、このケース内にあって、先端に落下防止対象の携帯物を繋着可能な紐状体をばねの付勢力によって巻き取るリールを備え、前記ケースが、装着ベースと、前記リールが収納されると共に一側面に前記紐状体を引き出す引き出し口が開設されたケース本体とからなり、このケース本体が、前記装着ベースに着脱可能に取り付けられ、前記ケース本体が、前記装着ベースと、この装着ベースと結合・分離可能な外殻との間に固定され、前記装着ベースが、前記ケース本体の一方又は他方の端面と嵌合可能な基板部と、この基板部から折り返されるように延びるフック部からなり、前記外殻が、前記フック部の先端部と掛止可能な第一掛止部と、前記基板部と掛止可能な第二掛止部を備えることを特徴とする携帯物落下防止具。
【請求項2】
装着ベースに対するケース本体の取付方向によって、引き出し口の向きを任意に変更可能であることを特徴とする請求項1に記載の携帯物落下防止具。
【請求項3】
第一掛止部をフック部の先端部と掛止した状態では、第二掛止部が基板部との掛止状態でロックされることを特徴とする請求項に記載の携帯物落下防止具。
【請求項4】
装着ベースに複数のケース本体がリールの軸方向に互いに連接した状態で取付可能であることを特徴とする請求項1〜のいずれかに記載の携帯物落下防止具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば工具などの携帯物を過って落としてしまうのを防止して安全性を高めるために携帯物を繋着するのに用いる携帯物落下防止具に関する。
【背景技術】
【0002】
建設現場等において、作業者が例えば高所での作業中に過って工具を手から落としてしまった場合の安全性を確保するために使用される従来の携帯物落下防止具(工具落下防止具)として、作業者が腰に装着しているベルトに係止されるケース内に、ワイヤが巻回されると共に引き込みばねによってワイヤを巻き取る回転方向へ付勢されたリールが組み込まれ、このリールからケースの外部へ引き出されるワイヤの先端に工具を繋着するための係止具が設けられたものが知られている。
【0003】
この種の携帯物落下防止具は、高所作業に際して、作業者が腰に装着しているベルト等にケースを固定し、ワイヤの先端の係止具に工具を繋着して使用する。そして図9に示すように、高所作業中に過って作業者Aが工具Tを手から過って落としてしまった場合、作業者Aの腰ベルトBに装着したケース100内のリール(不図示)から、工具Tの落下によってワイヤ101が引き出されていき、これに伴い、リールに内蔵された引き込みばねが蓄勢されるので、工具Tの落下を途中で食い止めることができる(下記の特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実公平6−38995号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしこの種の携帯物落下防止具は、ワイヤ101を引き出す引き出し口がケース100の一側面に開設されているので、例えば図9に示す例では、ケース100を腰の右側に装着しているが、左利きであるなどの理由によって通常とは反対側に装着した場合、引き出し口の向きも逆になってしまい、すなわち図9に示す例では、ケース100を腰の右側に取り付けることによって引き出し口100aが作業者の前方を向いているが、腰の左側に装着した場合は引き出し口100aが後ろ向きになってしまうので、使い勝手が悪くなり、したがって装着位置が制限されてしまう問題があった。また、ワイヤ101以外の紐状体を用いたものなどが必要である場合は、携帯物落下防止具全体を異なる仕様のものと交換する必要があった。
【0006】
本発明は、以上のような点に鑑みてなされたものであって、その技術的課題は、工具などの携帯物を過って落としてしまうことによる危険を回避するために携帯物を繋着するのに用いる携帯物落下防止具において、ユーザーの腰ベルト等への装着位置の自由度や仕様変更の自由度を高めて使い勝手を向上させることにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した技術的課題を有効に解決するための手段として、請求項1の発明に係る携帯物落下防止具は、ケースと、このケース内にあって、先端に落下防止対象の携帯物を繋着可能な紐状体をばねの付勢力によって巻き取るリールを備え、前記ケースが、装着ベースと、前記リールが収納されると共に一側面に前記紐状体を引き出す引き出し口が開設されたケース本体とからなり、このケース本体が、前記装着ベースに着脱可能に取り付けられ、前記ケース本体が、前記装着ベースと、この装着ベースと結合・分離可能な外殻との間に固定され、前記装着ベースが、前記ケース本体の一方又は他方の端面と嵌合可能な基板部と、この基板部から折り返されるように延びるフック部からなり、前記外殻が、前記フック部の先端部と掛止可能な第一掛止部と、前記基板部と掛止可能な第二掛止部を備えることを特徴とするものである。なお、ここでいう「紐状体」とは、紐、ワイヤ、ロープ、糸などを総称するものである。
【0008】
上記構成の携帯物落下防止具は、ケースにおける装着ベースをユーザーの腰ベルトなどに装着し、ケースの外部へ引き出された紐状体の先端に、工具など落下防止対象の携帯物を繋着して使用する。ユーザーが携帯物の使用中に、過ってこの携帯物を手から落としてしまった場合は、携帯物の落下による紐状体の引き出しによってリールが紐状体の引き出し方向へ回転するのに伴って引き込みばねが蓄勢されていき、これによって携帯物の落下速度を低下させて、落下を途中で食い止めるものである。また、上記構成の携帯物落下防止具は、ユーザーの腰ベルトなどを装着ベースの基板部とフック部の間に通した状態でフック部の先端部を外殻の第一掛止部に掛止することによって、ケースを前記腰ベルト等にしっかりと固定することができる。
【0009】
そしてこの携帯物落下防止具におけるケースは、リールが収納されたケース本体と、これを保持する装着ベースに分離可能であるため、例えば装着ベース又はケース本体を仕様の異なるものに変更して組み合わせることができ、使い勝手が向上する。
【0010】
請求項2の発明に係る携帯物落下防止具は、請求項1に記載の構成において、装着ベースに対するケース本体の取付方向によって、引き出し口の向きを任意に変更可能であることを特徴とするものである。
【0011】
請求項2の構成によれば、ユーザーが例えば左利きであるなど何らかの理由によって、ユーザーの腰ベルト等に対する装着位置を通常とは反対側とした場合でも、装着ベースに対するケース本体の取付方向を変更することによって、引き出し口の向きが逆にならないようにすることができ、使い勝手が向上する。
【0014】
請求項の発明に係る携帯物落下防止具は、請求項に記載の構成において、第一掛止部をフック部の先端部と掛止した状態では、第二掛止部が基板部との掛止状態でロックされることを特徴とするものである。
【0015】
請求項の構成を備える携帯物落下防止具は、ユーザーの腰ベルトなどを装着ベースの基板部とフック部の間に通した状態でフック部の先端部を外殻の第一掛止部に掛止することによって、ケースを前記腰ベルト等に固定した状態では、第二掛止部が基板部との掛止状態でロックされることによって装着ベースと外殻との結合状態が維持されるので、リールが収納されたケース本体がしっかりと保持される。
【0016】
請求項の発明に係る携帯物落下防止具は、請求項1〜のいずれかに記載の構成において、装着ベースに複数のケース本体がリールの軸方向に互いに連接した状態で取付可能であることを特徴とするものである。
【0017】
請求項の構成を備える携帯物落下防止具は、ケース本体を複数有することによって、ケースの横幅を増大させずに、腰回り等への携帯物落下防止具の装着数を増加することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明に係る携帯物落下防止具によれば、装着ベース又はケース本体を仕様の異なるものに変更したり、ケース本体における引き出し口の向きを変更したりすることができるため、使い勝手を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明に係る携帯物落下防止具の好ましい実施の形態を示す外観斜視図である。
図2】本発明に係る携帯物落下防止具の好ましい実施の形態において、ケースをケース本体と装着ベース及び外殻に分離した状態を示す斜視図である。
図3】本発明に係る携帯物落下防止具の好ましい実施の形態を示す断面図である。
図4】本発明に係る携帯物落下防止具の好ましい実施の形態における装着ベース及び外殻の掛止構造を説明するための図である。
図5】ユーザーが右利きの場合の携帯物落下防止具の装着例を示す説明図である。
図6】本発明に係る携帯物落下防止具の好ましい実施の形態において、ケース本体を図1とは逆向きとした場合を示す外観斜視図である。
図7】ユーザーが左利きの場合の携帯物落下防止具の装着例を示す説明図である。
図8】本発明に係る携帯物落下防止具の他の好ましい実施の形態を示す外観斜視図である。
図9】作業者が、携帯物落下防止具に繋着した工具を過って手から落としてしまっ場合の状況を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明に係る携帯物落下防止具の好ましい実施の形態について、図面を参照しながら説明する。図1図2及び図3に示すように、この実施の形態の携帯物落下防止具は、ケース1と、このケース1内にあって、先端に落下防止対象の工具を繋着可能なワイヤ4を引き込みばね5の付勢力によって巻き取るリール2を備える。なお、ワイヤ4は請求項1に記載された紐状体に相当するものである。
【0021】
ケース1は、互いに結合・分離可能な装着ベース11、外殻12、ケース本体13からなり、ケース本体13は、装着ベース11と外殻12の間に嵌合固定されていて、装着ベース11と外殻12の結合を解除することによって嵌合が解除されて分離可能となっている。
【0022】
ケース1における装着ベース11は、基板部111と、この基板部111の上端から下方へ折り返されるように延びる板状フック部112と、基板部111の下部にビス114で取り付けられた金属製の結索環113と、からなる。基板部111における板状フック部112との対向面には幅方向へ延びる複数の突起111aが形成されており、板状フック部112には、幅方向へ延び、基板部111の突起111aと異なる位置と対向する複数の突起112aが形成されている。
【0023】
図2及び図4に示すように、装着ベース11の基板部111の下端近傍に開設された開口部111bには左右一対の被掛止段部111cが形成されており、装着ベース11の板状フック部112の下端近傍に開設された開口部112bには左右一対の被掛止突起112cが形成されている。
【0024】
図2及び図3に示すように、ケース1における外殻12は、正面板121と、この正面板121の上部から背面側へ延びて先端に装着ベース11の上部被掛止梁115を掛止可能な上部掛止爪122aを有する上面板122と、正面板121の下部から背面側へ延びる下部第一掛止爪123及び下部第二掛止爪124からなり、側面形状が略コ字形をなしている。なお、下部第一掛止爪123は請求項3及び4に記載の第一掛止部に相当するものであり、下部第二掛止爪124は請求項3及び4に記載の第二掛止部に相当するものである。
【0025】
図4に示すように、外殻12の下部第一掛止爪123は、基板部111の下端部に開設された開口部111bを通じて、先端鉤部123aが装着ベース11の板状フック部112の被掛止突起112cを掛止可能となっており、下部第二掛止爪124は、下部第一掛止爪123の左右両側を互いにほぼ平行に延びるように一対設けられ、先端鉤部124aが、装着ベース11の基板部111に形成された被掛止段部111cを掛止可能となっている。このうち下部第一掛止爪123は、上下方向への弾性的な曲げ変形によって被掛止段部111cと掛合あるいは掛合解除されるものであり、下部第二掛止爪124は、その下面に突設されたつまみ124bの操作によって左右方向へ弾性的に曲げ変形して先端鉤部124aが被掛止突起112cと掛合あるいは掛合解除されるものである。
【0026】
ケース1におけるケース本体13は、ビス133によって互いに結合された一対のシェル131,132からなるものであって、リール2が回転可能に収納されており、このケース本体13における左右両側面部は、図1に示すケース1の組立状態において、略コ字形をなす外殻12の左右両側の開口部から露出するようになっている。また、ケース本体13における左右両側面部のうち一方の側面部には、ワイヤ引き出し口130が開設されている。
【0027】
ケース本体13(シェル131,132)は、リール2の軸方向への投影形状が左右対称となっている。そしてこのケース本体13は、装着ベース11と外殻12の間に嵌合固定された状態では、リール2の軸方向に対するケース本体13の両端面13a,13b、すなわちシェル131の端面及びシェル132の端面のうちのいずれか一方が装着ベース11の基板部111と衝合され、他方が外殻12の正面板121の裏面と衝合され、円筒面状の凸面をなす上面13cが円筒面状の凹面をなす外殻12の上面板122の下面と嵌合し、ケース本体13下面に形成された凹部13dが、下部第一掛止爪123及び第下部二掛止爪124と嵌合されるようになっている。
【0028】
すなわち、ケース1は、図2に示す分離状態から、例えばケース本体13を、その両端面13a,13bのうちいずれかを外殻12の正面板121の裏面に衝合させるようにして、外殻12の上面板122と下部第一掛止爪123及び下部第二掛止爪124の間に嵌め込み、上面板122の先端の上部掛止爪122aを装着ベース11の上部被掛止梁115と掛合させてから、装着ベース11の基板部111を、結索環113を介してケース本体13側(外殻12側)へ押圧すれば、図4(A)に示す非掛合状態から、左右の下部第二掛止爪124が内側へ弾性的に曲げ変形しながら開口部111bへ相対的に圧入され、図4(B)に示すように先端鉤部124aが被掛止段部111cと掛合される。そしてこれによって、図1及び図3に示すように、装着ベース11、外殻12及びケース本体13を互いに結合状態としてケース1を組み立てることができる。
【0029】
また、この状態から装着ベース11の板状フック部112を基板部111側へ押圧すれば、図4(B)に示す状態から、板状フック部112が基板部111へ接近する過程で被掛止突起112cが下部第一掛止爪123を上側へ弾性的に曲げ変形させながらその先端鉤部123aを乗り越えて、図4(C)に示すように掛合される。そしてこの状態では、被掛止突起112cが、基板部111の被掛止段部111cと掛合されている下部第二掛止爪124の先端鉤部124aの内側に位置して下部第一掛止爪123と掛合されているので、下部第二掛止爪124は被掛止段部111cとの掛合を解除する方向(内側)へ変位することができず、すなわち基板部111との掛止状態でロックされるようになっている。
【0030】
図3に示すように、リール2は、ケース本体13におけるシェル131,132の内面に形成された環状のリール受け131a,132aの間で回転可能に支持された状態に配置されており、巻き取り筒部21と、その軸方向両端から延びるガイド鍔部22を有し、巻き取り筒部21の内周側はばね収納部23となっている。
【0031】
リール2の内径の軸孔には、ばね芯3がリール2と相対回転可能に挿通されている。また、このばね芯3の軸方向両端は、ケース本体13におけるシェル131,132に開設された軸孔に回転可能に支持されている。
【0032】
ワイヤ4は金属の撚り線からなるものであって、リール2の巻き取り筒部21に巻き付けられ、ケース1におけるケース本体13のワイヤ引き出し口130から引き出された先端には、落下防止対象の携帯物を繋着するための繋着金具6が取り付けられている。
【0033】
リール2を巻き取り回転方向へ付勢する引き込みばね5は、軸方向に並列した互いにばね定数の異なる第一及び第二渦巻きばね51,52からなる。第一及び第二渦巻きばね51,52は、帯状の鋼材を渦巻き状に巻いた、いわゆるぜんまいばねからなるものであって、このうち相対的に低ばねの第一渦巻きばね51は、リール2のばね収納部23内に配置されていて、外周端がリール2の巻き取り筒部21に結合されると共に、内周端がばね芯3における軸方向一端寄りの位置に形成されたスリット3aに結合されている。また、相対的に高ばねの第二渦巻きばね52は、ケース本体13のリール受け131aの内周に配置されていて、内周端がばね芯3における軸方向他端寄りの位置に形成されたスリット3bに結合されると共に、外周端がリール受け131aに結合されている。なお、第一渦巻きばね51がばね芯3に完全に巻き付いた時点でばね芯3が引き出し回転方向へ回転して第二渦巻きばね52がばね芯3に巻き付いていくように、第一渦巻きばね51と第二渦巻きばね52のばね定数が設定されている。
【0034】
以上のように構成された実施の形態による携帯物落下防止具は、例えば図5に示すように、高所作業を行う作業者Aの腰ベルトBの裏側に、図1及び図3に示す状態でケース1の装着ベース11の板状フック部112を差し込んでから、この板状フック部112の先端の被掛止突起112cを外殻12の下部第一掛止爪123に掛止することによって、ケース1を腰ベルトBに固定すると共に、ワイヤ4の先端の繋着金具6に工具Tを繋着して用いる。板状フック部112の被掛止突起112cを外殻12の下部第一掛止爪123に掛止した状態では、装着ベース11の基板部111に形成された突起111aと板状フック部12に形成された突起112aで腰ベルトBが噛み込まれるため、ケース1をこの腰ベルトBにしっかりと固定することができる。
【0035】
また、ケース1における装着ベース11の基板部111に設けられた結索環113には、他の工具類や道具類をロープなどで結索しておくことができる。
【0036】
作業のために工具Tを使用する際には、工具Tによる作業に必要な長さだけワイヤ4が引き出される。そして、これに伴うリール2の引き出し方向への回転によって、引き込みばね5は、相対的に低ばねの第一渦巻きばね51が先行して、ばね芯3における軸方向一端寄りの外周に巻曲されていく。
【0037】
また、作業者Aが作業中に過って工具Tを手から落としてしまった場合は、その落下力によってワイヤ4がさらに引き出される。そしてワイヤ4の引き出し過程では、先に説明したように、引き込みばね5はまず相対的に低ばねの第一渦巻きばね51がリール2の引き出し回転方向のトルクによってばね芯3における軸方向一端寄りの外周に巻き付きながら蓄勢されていくので、落下速度の増大が有効に抑制される。
【0038】
そして第一渦巻きばね51がばね芯3に完全に巻き付いた時点で、リール2の引き出し回転方向のトルクによってばね芯3も引き出し回転方向へ回転し、これによって、高ばねの第二渦巻きばね52がばね芯3に巻き付いていき、その蓄勢力の増大によって工具Tの落下速度を急速に低下させて落下を途中で食い止め、そのときの衝撃を有効に緩和する。
【0039】
ここで図1に示すように、ワイヤ引き出し口130がケース1における左側の側面に位置するように、ケース本体13を装着ベース11と外殻12の間に嵌合固定した場合は、図5に示すように、作業者Aはケース1を腰の右側に位置するように腰ベルトBに装着すれば、ワイヤ引き出し口130が作業者Aの正面を向くことになるが、例えば作業者Aが左利きであるとか、あるいは腰の右側に他の複数の工具類が繋着されているなど、何らかの理由によって、ケース1を腰の左側に装着する場合、図1に示す状態のままでケース1を腰の左側に装着すると、ワイヤ引き出し口130が作業者Aの後ろを向いてしまうことになる。
【0040】
しかしながら、この実施の形態によれば、下部第一掛止爪123及び下部第二掛止爪124と被掛止突起112c及び被掛止段部111cとの掛合を解除すると共に上部掛止爪122aと上部被掛止梁115との掛合を解除することによって、ケース1をいったん図2に示すように分離してから、ケース本体13を、端面13aを装着ベース11の基板部111と衝合させ、端面13bを外殻12の正面板121と衝合させた状態で装着ベース11と外殻12を結合すれば、ケース1を、図6に示すようにワイヤ引き出し口130が右側の側面に位置するように組み立てられる。すなわち、ケース本体13(シェル131,132)と、装着ベース11及び外殻12との嵌合面の形状が左右対称であるため、ケース本体13を逆向きに取り付けることができるのである。
【0041】
したがって、このように組み立てたケース1を、腰の左側に位置するように腰ベルトBに装着することによって、図7に示すようにワイヤ引き出し口130が作業者Aの正面を向くことになるので、良好な使い勝手を維持することができる。
【0042】
また、図4(C)に示すように、外殻12の下部第二掛止爪124と装着ベース11における基板部111の被掛止段部111cが掛合し、外殻12の下部第一掛止爪123と装着ベース11における板状フック部112の被掛止突起112cが掛合した状態では、被掛止突起112cによって、下部第二掛止爪124は基板部111の被掛止段部111cとの掛合状態でロックされているので、装着ベース11、外殻12、ケース本体13が不用意に分離されてしまうようなことがなく、安全性が高いものとなっている。
【0043】
なお、図4(C)に示す下部第二掛止爪124の拘束状態を解除するには、装着ベース11の板状フック部112の開口部112bから手指で下部第一掛止爪123を曲げ変形させることによって被掛止突起112cとの掛合を解除し、図4(B)に示すように板状フック部112を基板部111から離間方向へ変位させればよい。
【0044】
図8は、本発明に係る携帯物落下防止具の他の好ましい実施の形態を示すものである。この実施の形態は、ケース1における外殻12の上面板122と下部第一掛止爪及び下部第二掛止爪(不図示)を長くすることによって、装着ベース11と外殻12の間に、複数のケース本体13を、リール2の軸方向へ連接した状態で嵌合固定するようにしたものである。
【0045】
このように構成すれば、ケース1の横幅を増大させることなくに、繋着可能な工具数を増やすことができるほか、例えば一方のケース本体13は、ワイヤ引き出し口130が右側の側面に位置し、他方のケース本体13は、ワイヤ引き出し口130が左側の側面に位置するようにケース1を組み立てるなど、種々の使い方が可能となる。
【0046】
なお、上述した各実施の形態では、落下防止対象の携帯物が工具である場合について説明したが、これには限定されず、例えば携帯通信端末や、各種キー(玄関ドア用、自動車用)などの携帯物にも本発明を適用することができる。
【0047】
また、本発明に係る携帯物落下防止具によれば、ケース1が装着ベース11、外殻12及びケース本体13に互いに結合・分離可能であることから、上述のようにケース本体13の向きを変更するだけでなく、例えばケース本体13をワイヤ4以外の紐状体を用いたものに取り換えたり、あるいは外殻12を工具ホルダ付きなどの仕様のものと交換することもでき、使い勝手を向上することができる。
【0048】
また、上述の説明では、装着ベース11及び外殻12とケース本体13との嵌合形状を左右対称とすることによってケース本体13を表裏いずれの方向にも組み込むことができるものとし、これによってワイヤ引き出し口130の方向を左右に変更できるようにしたが、装着ベース11及び外殻12とケース本体13との嵌合形状を、リール2の軸心と平行な仮想軸を対称軸とする180度回転対称とすることによって、ケース本体13の表裏の方向はそのままで、嵌合方向を前記仮想軸の周りに180度変更することによってワイヤ引き出し口130の方向を左右に変更できるようにしても良い。
【符号の説明】
【0049】
1 ケース
11 装着ベース
111c 被掛止段部
112c 被掛止突起
115 上部被掛止梁
12 外殻
122a 上部掛止爪
123 下部第一掛止爪(第一掛止爪)
124 下部第二掛止爪(第二掛止爪)
13 ケース本体
130 ワイヤ引き出し口
2 リール
4 ワイヤ(紐状体)
5 引き込みばね(ばね)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9