(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記絵柄層は、当該絵柄層を厚み方向に切断した断面において絵柄層の上辺が異なる曲率半径を有する複数の曲線を連ねた形状を有し、且つ互いに平行である複数の断面における絵柄層の断面形状が異なる、ことを特徴とする請求項1に記載の積層シート。
光透過性を有し、軟化温度が120℃以下である樹脂層の一方の面に、軟化温度が120℃以下である着色層と、軟化温度が120℃以下であるバッキング層を順次積層し、
その後、前記樹脂層の他方の面に電離放射線硬化型樹脂インクを付与し、電離放射線硬化型樹脂インクに電離放射線を照射することにより、光透過性を有し、軟化温度が140〜160℃であり、且つ表面が凹凸面形状をなして厚さが連続的に変化した絵柄層を形成する、積層シートの製造方法。
請求項1〜4のいずれか1項に記載の積層シートと、前記積層シートに一体化された成形樹脂層とを含み、前記絵柄層の表面が平滑であり、且つ前記バッキング層が前記成形樹脂層と接している、ことを特徴とする成形体。
前記絵柄層と前記樹脂層との境界面、前記樹脂層と前記着色層との境界面、および前記着色層と前記バッキング層との境界面が、互いに平行な凹凸面形状をなしている、ことを特徴とする請求項6記載の成形体。
請求項6または7記載の成形体を製造する方法であって、前記絵柄層側を金型キャビティ面に向けて前記積層シートを金型キャビティ内に配置し、前記積層シートのバッキング層側に樹脂を注入し、前記絵柄層側を金型キャビティ面に押し付けながら、前記成形樹脂層を成形する、ことを特徴とする成形体の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照しながら、本実施形態について詳しく説明する。
【0017】
図1は一実施形態に係る積層シートの断面を模式的に示したものである。積層シート1は、光透過性を有する樹脂層2の一方の面に、着色層3、バッキング層4が順次積層され、樹脂層2の他方の面に電離放射線硬化型樹脂からなる光透過性を有する絵柄層5が積層された積層シートであって、絵柄層5の表面が凹凸面形状をなして、絵柄層5の厚みが連続的に変化したものである。積層シート1の製造方法としては、樹脂層2の一方の面に、着色層3、バッキング層4を順次積層した後、樹脂層2の他方の面に電離放射線硬化型樹脂インクを付与し、電離放射線硬化型樹脂インクに電離放射線を照射することにより絵柄層5を形成する方法が挙げられる。本明細書において絵柄層の表面とは絵柄層のオモテ面のことである。同様に、成形体の表面とは成形体のオモテ面のことである。
【0018】
樹脂層2は、光透過性を有するシート状物であり、市販のフィルムを用いてもよいし、樹脂を硬化させて用いてもよい。樹脂層2が光透過性を有することにより絵柄層5および樹脂層2を介して着色層3を視認することができ、さらには絵柄層5と樹脂層2の厚みを視認することができる。樹脂層2の光透過率は波長400〜700nmの範囲において80%以上であることが好ましい。
【0019】
樹脂層2を形成する樹脂としては、例えばアクリル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリエチレンテレフタレート系樹脂、ポリブチレンテレフタレート系樹脂、アクリロニトリルブタジエンスチレン系樹脂、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂等の熱可塑性樹脂や、ポリウレタン系樹脂、不飽和ポリエステル系樹脂等の熱硬化性樹脂などが挙げられる。また、樹脂層2は、これらの樹脂2種類以上の複合体や積層体であってもよい。なお、複合体とは2種類以上の樹脂の混合物からなる樹脂層のことをいい、積層体とは樹脂組成の異なる樹脂層を2種類以上積層してなる樹脂層のことをいう。これらの中でも、熱成形のしやすさの観点から、熱可塑性樹脂であることが好ましく、具体的には、アクリル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリエチレンテレフタレート系樹脂、ポリブチレンテレフタレート系樹脂、アクリロニトリルブタジエンスチレン系樹脂、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、およびポリ塩化ビニル系樹脂からなる群から選択されるいずれか1種の樹脂、または2種以上の樹脂の複合体もしくは積層体であることが好ましい。
【0020】
また、樹脂層2を形成する樹脂には、その他必要に応じて分散剤、熱安定剤、熱ラジカル重合禁止剤、光安定剤、酸化防止剤、防腐剤、pH調整剤、消泡剤、浸透剤などの添加剤を添加してもよい。
【0021】
また、樹脂層2は、1種類以上の顔料や染料等の着色剤を用いて光透過性を阻害しない程度に着色されていてもよい。また、全面同一の着色あるいは部分的な着色、さらには部分的に異なる着色がされていてもよい。耐候性や耐光性が求められる場合には、顔料を使用することが好ましい。
【0022】
樹脂層2の厚みは、特に限定されるものではなく、50〜200μmが好ましい。50μm以上であることにより、強度を高めて後加工時のハンドリング性を向上させることができ、また奥行き感を向上させることができる。200μm以下であることにより、熱成形性の低下を抑えることができるため、正確な形状に賦形しやすい。樹脂層2の厚みは、より好ましくは50〜150μmである。樹脂層2の厚みは一定であることが好ましい。
【0023】
樹脂層2の軟化温度は120℃以下であり、100℃以下であることが好ましい。軟化温度が120℃以下であることにより、射出成形等の成形方法で成形体7を形成するときに、樹脂層2を沈み込むように変形させて、絵柄層5の表面の凹凸面形状を平滑面に変形させやすくなる。樹脂層2の軟化温度の下限は、特に限定されず、例えば80℃以上でもよい。
【0024】
着色層3は、積層シート1を着色するための層である。着色層3が光を透過せず反射することにより、立体感を向上させることができる。なお、着色層3の形成方法は、特に限定されず、例えばリバースロールコーター、ナイフコーター、又はコンマコーターなどの公知の塗工機を用いて、樹脂層2に積層してもよい。
【0025】
着色層3を形成する樹脂としては、例えば、ポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂、塩化ビニル系樹脂などの熱可塑性樹脂が挙げられる。あるいはそれら樹脂2種類以上の複合体または積層体であってもよい。
【0026】
着色層3は、1種類以上の顔料や染料等の着色剤を用いて着色されている。耐候性や耐光性が求められる場合には、顔料を用いることが好ましい。顔料としては、有機、無機を問わず使用することができる。有機顔料としては、例えば、ニトロソ類、染付レーキ類、アゾレーキ類、不溶性アゾ類、モノアゾ類、ジスアゾ類、縮合アゾ類、ベンゾイミダゾロン類、フタロシアニン類、アントラキノン類、ペリレン類、キナクリドン類、ジオキサジン類、イソインドリン類、アゾメチン類、ピロロピロール類などが挙げられる。無機顔料としては、例えば、酸化物類、水酸化物類、硫化物類、フェロシアン化物類、クロム酸塩類、炭酸塩類、ケイ酸塩類、リン酸塩類、炭素類(カーボンブラック)、金属粉類などが挙げられる。
【0027】
着色層3の色は特に限定されるものではないが、立体感が向上するという観点から、樹脂層2との凹凸形状の境界面でより光を反射させやすくするために光輝性の顔料を含んだものが好ましい。あるいは、着色層3は、着色された層に追加して光を反射させる効果がある金属蒸着膜を積層した複合着色層としてもよい。複合着色層の場合は、その一部が着色していればよく、例えば、あえて着色しない透明な層に金属蒸着膜を積層して金属調を強調してもよい。
【0028】
光輝性の顔料としては、代表的なものとして、メタリック調の光沢を発現するメタリック顔料と、パール調の光沢を発現するパール顔料の2つを挙げることができる。メタリック顔料としては、アルミニウム、銅などの金属の粉末または薄片、真鍮などの合金の粉末または薄片、金属蒸着フィルムの微裁断細片などが挙げられる。パール顔料としては、酸化チタン、酸化ケイ素、酸化鉄などの金属酸化物を一層または二層以上被覆した天然雲母または合成雲母、光の屈折の異なる樹脂の層を積層したフィルムの微細断片、真珠粉末、貝殻の内壁の粉末、魚鱗箔などが挙げられる。
【0029】
また、着色層3には必要に応じて、分散剤、熱安定剤、酸化防止剤、防腐剤、pH調整剤、消泡剤、浸透剤などの添加剤を添加してもよい。
【0030】
着色層3の光透過性は、立体感が向上するという観点から、樹脂層2および絵柄層5の光透過性よりも低いことが好ましい。すなわち、立体感は、絵柄層5および樹脂層2を透過した光が着色層3で反射されることによって得られる。そのため、下の層であるバッキング層4までは光が透過しないこと、つまり着色層3によりバッキング層4を隠蔽ないし遮蔽することが望ましい。着色層3の光透過率は、かかる隠蔽性の観点から、波長400〜700nmの範囲において、10%以下であることが好ましく、5%以下であることがより好ましく、0%であることが更に好ましい。
【0031】
着色層3の厚みは、特に限定されるものではなく、20〜80μmが好ましい。20μm以上であることにより、隠蔽性に優れる。80μm以下であることにより、熱成形性の低下を抑えることができるため、正確な形状に賦形しやすい。着色層3の厚みは、30〜60μmであることがより好ましい。着色層3の厚みは一定であることが好ましい。
【0032】
着色層3の軟化温度は120℃以下であり、100℃以下であることが好ましい。軟化温度が120℃以下であることにより、射出成形等の成形方法で成形体7を形成するときに、絵柄層5の表面の凹凸面形状が平滑面に変形しやすくなる。したがって、絵柄層5の表面の凹凸面形状が平滑面に変形することに伴って、樹脂層2および着色層3を沈み込んだ形状に変形させやすい。着色層3の軟化温度の下限は、特に限定されず、例えば80℃以上でもよい。
【0033】
バッキング層4は、射出成形等の成形方法で成形体7を作製する際に、成形樹脂層6を形成する樹脂と溶融接着(密着)させるための層である。また、積層シート1を構成する層の一つである着色層3を保護するための層でもある。なお、バッキング層4の形成方法は、特に限定されず、例えばヒートラミネート加工などにより樹脂シートを着色層3の表面に積層することで形成してもよい。
【0034】
バッキング層4を形成する樹脂は、例えばアクリル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリエチレンテレフタレート系樹脂、ポリブチレンテレフタレート系樹脂、アクリロニトリルブタジエンスチレン系樹脂、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂等の熱可塑性樹脂や、ポリウレタン系樹脂、不飽和ポリエステル系樹脂等の熱硬化性樹脂などが挙げられる。また、これらの樹脂2種類以上の複合体や積層体であってもよい。これらのなかでも、熱成形のしやすさ、着色層3の保護の観点から、熱可塑性樹脂であることが好ましく、具体的には、アクリル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、アクリロニトリルブタジエンスチレン系樹脂、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、およびポリ塩化ビニル系樹脂からなる群から選択されるいずれか1種の樹脂、または2種以上の樹脂の複合体もしくは積層体であることが好ましい。
【0035】
また成形体7を形成するときの密着性の観点から、射出成形等の成形方法で作製する成形体7に用いられる樹脂、すなわち成形樹脂層6を形成する樹脂と同系の熱可塑性樹脂がよい。
【0036】
バッキング層4の厚みは、特に限定されるものではなく、200〜400μmが好ましい。200μm以上であることにより、着色層3を、成形時の熱、圧力等のダメージから保護することができる。400μm以下であることにより、熱成形性の低下を抑えることができるため、正確な形状に賦形しやすい。バッキング層4の厚みは、より好ましくは200〜300μmである。バッキング層4の厚みは一定であることが好ましい。
【0037】
バッキング層4の軟化温度は120℃以下であり、100℃以下であることが好ましく、より好ましくは90℃以下である。軟化温度が120℃以下であることにより、射出成形等の成形方法で成形体7を形成するときに、絵柄層5の表面の凹凸面形状が平滑面に変形しやすくなる。したがって、絵柄層5の表面の凹凸面形状が平滑面に変化することに伴って、樹脂層2、着色層3およびバッキング層4を沈み込んだ形状に変形させやすい。また、バッキング層4の軟化温度は、樹脂層2および着色層3の軟化温度より低いことが好ましい。これにより、バッキング層4の厚みが樹脂層2および着色層3の厚みよりも厚くとも、射出成形等の成形方法で成形体7を形成するときに絵柄層5と樹脂層2との境界面、および樹脂層2と着色層3との境界面、および着色層3とバッキング層4との境界面が互いに平行な凹凸面形状の状態とすることができる。バッキング層4の軟化温度の下限は、特に限定されず、例えば60℃以上でもよい。
【0038】
絵柄層5は、積層シート1に、絵柄(ここで、絵柄は図柄および模様を含む概念である。)を付与する層である。絵柄層を厚みの変化がある層(凹凸のある層)にすることで、射出成形等の成形方法で成形体7を作製する際に、樹脂層2、着色層3、およびバッキング層4を変形させることができる。
【0039】
絵柄層5を形成する樹脂は、光透過性を有する硬化された樹脂であり、電離放射線硬化型樹脂である。電離放射線硬化型樹脂は、凹凸面形状をした表面を容易に、かつ短時間で得ることができ、加工生産性を伴う用途に適している。凹凸面形状をした表面を形成することにより、後述するように成形樹脂層6の成形時に絵柄層5と樹脂層2の境界面および樹脂層2と着色層3の境界面を凹凸面形状に変形させることが可能となる。このように境界面が凹凸面形状に変形することにより入射光の乱反射が発生し、光の入射角度や見る位置が僅かに変化するだけで、絵柄層5を介して見える樹脂層2と着色層3の複合的な見え方が変化する。そのため、絵柄層自体の厚みの変化による奥行き感と、凹凸面形状の曲面で光が乱反射することで感じる立体感が相まって独特の意匠を表現することが可能となる。
【0040】
電離放射線硬化型樹脂としては、公知の紫外線硬化型樹脂および電子線硬化型樹脂を用いることができる。例えば、アクリル官能基を有するものが好ましく、汎用性が高く、多種多様の硬化樹脂を得ることができるという点で、アクリル系の紫外線硬化樹脂がより好ましい。アクリル系の紫外線硬化型樹脂は、基本的に、光重合開始剤、反応性モノマー、および反応性オリゴマーから構成される。紫外線が照射されることにより、光重合開始剤がラジカルになり、これが反応性モノマーおよび反応性オリゴマーの官能基を活性化して、次々に鎖状に結合してポリマー(アクリル樹脂)へと転換する。
【0041】
絵柄層5の軟化温度は、140〜160℃である。この範囲であることにより、積層シート1を真空成形や圧空成形等の熱成形法を用いて所望の意匠形状に賦形しやすく、また射出成形等の成形方法で成形体7を形成するときに絵柄層5の表面の凹凸面形状を平滑面に変形させやすい。すなわち、軟化温度が140℃以上であることにより、成形体7の成形時に、絵柄層5は自身の連続的な厚み変化を保持しつつ表面の凹凸面形状を平滑面に変形させやすい。また、160℃以下であることにより、積層シート1を、熱成形法を用いて所望の意匠形状に賦形しやすい。
【0042】
絵柄層5は、1種類以上の顔料や染料等の着色剤を用いて、光透過性を阻害しない程度に着色されていることが好ましい。また全面同一の着色あるいは部分的な着色、さらには部分的に異なる着色がされていてもよい。耐候性や耐光性が求められる場合には、顔料を用いることが好ましい。顔料は、有機、無機を問わず使用することができる。有機顔料としては、例えば、ニトロソ類、染付レーキ類、アゾレーキ類、不溶性アゾ類、モノアゾ類、ジスアゾ類、縮合アゾ類、ベンゾイミダゾロン類、フタロシアニン類、アントラキノン類、ペリレン類、キナクリドン類、ジオキサジン類、イソインドリン類、アゾメチン類、ピロロピロール類などが挙げられる。無機顔料としては、例えば、酸化物類、水酸化物類、硫化物類、フェロシアン化物類、クロム酸塩類、炭酸塩類、ケイ酸塩類、リン酸塩類、炭素類(カーボンブラック)、金属粉類などが挙げられる。
【0043】
絵柄層5には、その他必要に応じて、光重合開始剤の開始反応を促進させるための増感剤、分散剤、熱安定剤、熱ラジカル重合禁止剤、酸化防止剤、防腐剤、pH調整剤、消泡剤、浸透剤などの添加剤を添加してもよい。
【0044】
絵柄層5に顔料等の着色剤を含有させ、光透過性を確保しつつ着色された絵柄層5にすることにより、樹脂層2および着色層3との複合的な見え方を有する意匠とすることができる。つまり、絵柄層5側から樹脂層2および着色層3を見たときに絵柄層5そのものの色とその下にある樹脂層2および着色層3の色が重なって見えることになる。例えば、絵柄層5に淡い色を着色してその下の樹脂層2あるいは着色層3に濃色を着色することにより絵柄層5の厚みを感じつつ、樹脂層2あるいは着色層3の色と重なり合った立体感とその変化、さらには奥行き感を明確に認識しやすい意匠となる。また、絵柄層5が無色透明であっても光の反射加減にて絵柄層の厚みの変化を感じ、同様の効果を得ることが可能である。
【0045】
なお、樹脂層2と絵柄層5を合わせた積層体は、その少なくとも一部において、波長400〜700nmの範囲で10%以上の光透過率を有することが好ましい。さらに、該積層体は、光透過率が各部分で異なってもよく、このように光透過率が変化することにより、奥行き感を高めることができる。また、必要に応じて奥行き感を持たせない部分を有してもよい。この部分の該光透過率は10%未満であることが好ましい。奥行き感を有する部分と奥行き感を有しない部分を混在させることにより、全体の意匠として変化に富んだ意匠を得ることができる。なお、奥行き感を有する部分と有しない部分が混在する場合、光透過率の測定に際しては、奥行き感を有する部分と有しない部分に分けて、それぞれ10カ所測定し、それぞれの光透過率がすべて10%以上、10%未満であることが好ましい。
【0046】
絵柄層5は、表面が凹凸面形状をなすとともに、樹脂層2との境界面が平滑である。そのため、絵柄層5の厚みは一定ではなく連続的に変化している。これにより、前述の絵柄層5と樹脂層2と着色層3とによる複合的な見え方の意匠とする上で、絵柄層5の着色濃度が一定であっても厚みの変化による見た目の濃度(色の濃さ)の違いが生じる。そのため、より立体感とその変化、さらには奥行き感を感じる意匠を表現できる。絵柄層5の厚みは、特に限定されず、求められる意匠に応じて設定することができる。一実施形態に係る絵柄層5の厚みは、最薄部(最も薄い部分)の厚みで5〜50μmでもよく、10〜30μmでもよい。また、最厚部(最も厚い部分)の厚みで30〜150μmでもよく、50〜100μmでもよい。
【0047】
本実施形態において、厚みが連続的に変化する絵柄層5は、断面の上辺が異なる曲率半径を有する複数の曲線が連なってなる。すなわち、絵柄層5を厚み方向において切断した断面において、絵柄層5の上辺は、異なる曲率半径を有する曲線を連ねた形状を有する。かかる絵柄層5の断面の上辺を構成する複数の曲線の曲率半径は、例えば17.5μm〜100mmの範囲内であることが好ましく、17.5〜1000μmの範囲内でもよい。
【0048】
また、本実施形態において、連続的に厚みが変化する絵柄層5は、互いに平行である複数の断面における絵柄層5の断面形状が異なっている。すなわち、絵柄層5は任意の断面における断面形状が連続的に変化する。このことを以下に詳しく説明する。
【0049】
図1に示す絵柄層5内にある任意の断面(a)を考える。その一例を示したものが
図2である。この断面(a)は、絵柄層5の樹脂層2と接している側の面に形成された長さwの直線(b)と、その直線(b)の両端から垂直に絵柄層5の厚さ方向にのびる長さh1の直線(c)と長さh2の直線(d)と、絵柄層5の表面に形成された異なる曲率半径を持つ曲線が連なってできた曲線(e)とで構成された形状をしている。次に、この断面(a)から微小距離(Δf)だけ離れ、断面(a)と平行関係にある断面(g)を考えた場合、断面(g)は、長さwの直線(b’)と、その直線(b’)の両端から垂直に絵柄層5の厚さ方向にのびる長さh1’の直線(c’)と長さh2’の直線(d’)と、絵柄層5の表面に形成された異なる曲率半径を持つ曲線が連なってできた曲線(e’)とで構成される。本実施形態では、(1)直線(c)と(c’)の長さが異なる(h1≠h1’)、(2)直線(d)と(d’)の長さが異なる(h2≠h2’)、あるいは(3)曲線(e)と(e’)を構成する個々の曲線の曲率半径や曲線の長さが異なる、以上3つのうち少なくとも1つ以上を満足する構造となっている。言いかえれば、前述の2つの断面を比較したときにそれぞれの断面を構成する3つの直線と1つの曲線のうち、厚さ方向の2つ直線の長さと絵柄層5の表面に形成された異なる曲率半径の曲線が連なってできた曲線のうち、少なくともいずれか1つが2つの断面(a)と(g)とで異なっている。つまり、断面(a)と断面(g)の断面形状が異なることを意味し、本実施形態の積層シート1を構成する連続的に厚さが変化する絵柄層5は、一定幅wの任意の断面における断面形状が連続的に変化している。断面(a)と断面(g)の断面積は同一でも異なってもよいが、好ましくは、断面形状および断面積が異なることであり、断面形状および断面積が連続的に変化することが好ましい。このような変化は、微小距離で起こるものであり、広域では断面形状や断面積が同じものが存在する場合もある。ここで、上記wは、例えば500μmに設定することができ、また微小距離(Δf)は、例えば35〜70μmの範囲内である。
【0050】
絵柄層5の積層方法は特に限定されるものではない。従来知られている印刷方法であるスクリーン印刷やグラビア印刷、インクジェット印刷等の方法で積層することができる。なかでも絵柄層5の任意の断面における断面形状と断面積を連続的に変化させることが比較的容易なことから、インクジェット印刷が好ましい。
【0051】
以上のようにして得られた積層シート1は、以下の成形方法を用いて成形樹脂層6と一体化され、成形体7が形成される。
【0052】
積層シート1を成形樹脂層6と一体化させ成形体7を形成する成形方法としては、射出成形が好ましい。射出成形としては、一般の射出成形の他、射出圧縮成形、射出プレス成形等が挙げられる。一実施形態に係る成形体7の加工法として、第1工程で積層シート1を予備賦形し、その後の第2工程において予備賦形した積層シート1を用いた射出成形を行うフィルムインサート成形法が挙げられる。
【0053】
第1工程の予備賦形では、積層シート1を真空成形や圧空成形等の熱成形法を用いて所望の意匠形状に賦形した賦形体を作製する。ここで、真空成形は、加飾フィルムを予め熱変形可能な温度まで予熱し、これを金型へ減圧によって吸引して延伸しながら金型に圧着冷却し成形する方法である。圧空成形は、加飾フィルムを予め熱変形可能な温度まで予熱し、金型の反対側から加圧して金型に圧着冷却し成形する方法である。これら減圧及び加圧を同時に行ってもよい。
【0054】
第2工程の射出成形では、金型キャビティ内に賦形体を配置して溶融樹脂を注入することで賦形体と成形樹脂層6を一体化する。詳細には、射出成形では、
図8に示すように、積層シート1を、絵柄層5側が金型キャビティ面12に向くようにして金型10のキャビティ11内に配置し、金型10を閉じた後、ゲート部13を通じて樹脂を、積層シート1のバッキング層4側に射出注入する。そのため、積層シート1の絵柄層5側を金型キャビティ面12に押し付けながら、成形樹脂層6を成形することになる。これにより、積層シート1が成形樹脂層6と一体化された上記成形体7が得られる。なお、射出成形時における溶融樹脂の温度としては、例えば、180〜320℃でもよく、200〜300℃でもよい。
【0055】
成形体7に使用する樹脂、すなわち成形樹脂層6を形成する樹脂としては、特に限定されるものではなく、例えばポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリ(メタ)アクリレート系樹脂、アクリル系樹脂、ポリアセタール系樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリフェニレンサルファイド系樹脂、ポリイミド系樹脂等の公知の熱可塑性樹脂を用いることができる。これらの樹脂を単独あるいは2種類以上を混合して用いることもできる。
【0056】
得られた成形体7は、
図3に示すように、絵柄層5の表面が平滑であり、且つバッキング層4が成形樹脂層6と接している。また、絵柄層5と樹脂層2との境界面、樹脂層2と着色層3との境界面、および着色層3とバッキング層4との境界面が、互いに平行な凹凸面形状をなしている。このような形状となる理由について説明する。
【0057】
図1に示すように絵柄層5は成形体7を形成するまでは樹脂層2と接していない側、すなわち表面側に凹凸面を有している。しかし、射出成形等の成形方法で成形体7を形成するとき、積層シート1はバッキング層4側に射出注入された高温高圧の成形樹脂層6を形成する樹脂の影響により軟化しながら絵柄層5側が金型キャビティ面12に押し付けられる。このとき、金型キャビティ面12と接している絵柄層5の表面の凹凸は、平滑に仕上げられた金型キャビティ面12を倣うように平滑になる。
【0058】
一方、積層シート1を構成するその他の層群、すなわち樹脂層2、着色層3、およびバッキング層4を合せた層群は、絵柄層5より軟化温度の低い材質である。そのため、絵柄層5は、凹凸面を有していた表面が平滑化しつつ、その他の層群の方がより軟化しているため、その層群の中に埋もれることとなる。つまり、絵柄層5の表面の凸部が、金型キャビティ面12に押し付けられ、凹部と同じ位置まで押し込まれて平滑になると同時に、絵柄層5と他方の面で接している樹脂層2側に絵柄層5の凸形状が形成される。元々絵柄層5は樹脂層2と接していない側に凹凸面を有していたが、この変形により必然的に絵柄層5と樹脂層2との境界面が凹凸面形状に変形する。さらに樹脂層2と着色層3との境界面も同様に凹凸面形状に変形する。ここで、樹脂層2が厚み一定であるため、樹脂層2と着色層3の境界面と、絵柄層5と樹脂層2の境界面とは、互いに平行な凹凸面形状をなす。
【0059】
同様に着色層3とバッキング層4との境界面およびバッキング層4と成形樹脂層6との境界面にまで変形が及ぶ。すなわち、着色層3とバッキング層4との境界面およびバッキング層4と成形樹脂層6との境界面についても、絵柄層5と樹脂層2の境界面と平行な凹凸面形状をなす。従って、積層シート1は射出成形等の成形方法で成形体7を形成すると、
図3に示すように絵柄層5の表面は平滑で、絵柄層5と樹脂層2との境界面、樹脂層2と着色層3との境界面、および着色層3とバッキング層4との境界面が互いに平行な(即ち、一定の距離をおいて隔てた)凹凸面形状の状態となる。
【0060】
このように絵柄層5の厚さが連続的に変化していることで、
図5に示すように樹脂層2と着色層3との境界面形状はさまざまな法線方向をもつ曲面で構成される凹凸面形状になる。かかる曲面に光が当たった場合、さまざまな方向に乱反射し、光の入射角度や見る位置が僅かに変化するだけで、絵柄層5を介して見える樹脂層2と着色層3の複合的な見え方は変化する。そのため、絵柄層自体の厚さの変化による奥行き感と、凹凸面形状の曲面で光が乱反射することで感じる立体感が相まって、独特の意匠を表現することが可能となる。
【0061】
なお、成形体7を形成した段階で、絵柄層5は、連続的に厚みが変化し、互いに平行である複数の断面における絵柄層5の断面形状が異なっており、この点は成形体7の形成前と同じである。但し、成形体7の形成後では、絵柄層5は、表面が平滑で、樹脂層2との境界面が凹凸面形状をなす。そのため、成形体7の形成後の絵柄層5の形状は、
図4を参照して次の通りである。すなわち、絵柄層5の任意の断面(A)は、絵柄層5の表面に形成された長さwの直線(B)と、その直線(B)の両端から垂直に絵柄層5の厚さ方向にのびる長さH1の直線(C)と長さH2の直線(D)と、絵柄層5と樹脂層2との境界面に形成された異なる曲率半径を持つ曲線が連なってできた曲線(E)とで構成された形状をしている。また、この断面(A)から微小距離(Δf)だけ離れ、断面(A)と平行関係にある断面(G)は長さwの直線(B’)と、その直線(B’)の両端から垂直に絵柄層5の厚さ方向にのびる長さH1’の直線(C’)と長さH2’の直線(D’)と、絵柄層5と樹脂層2との境界面に形成された異なる曲率半径を持つ曲線が連なってできた曲線(E’)とで構成される。本実施形態では、(1)直線(C)と(C’)の長さが異なる(H1≠H1’)、(2)直線(D)と(D’)の長さが異なる(H2≠H2’)、あるいは(3)曲線(E)と(E’)を構成する個々の曲線の曲率半径や曲線の長さが異なる、以上3つのうち少なくとも1つ以上を満足する構造となっている。従って、断面(A)と断面(G)の断面形状が異なり、すなわち、本実施形態の成形体7を構成する連続的に厚さが変化する絵柄層5は、一定幅wの任意の断面における断面形状(好ましくは断面形状および断面積)が連続的に変化している。なお、wおよびΔfの寸法は上記積層シート1の場合と同じである。
【0062】
該成形体7の用途としては、特に限定されず、例えば、家電製品、自動車の内装部品、通信機器、OA機器、建材などの様々な製品ないし部品を構成するものとして用いることができる。
【0063】
本明細書において、上記各層の光透過率、厚み、および軟化温度の測定は、以下のように行う。
【0064】
・光透過率:積層シートのうち、測定対象となる層のみを単体でフィルム状に形成し、得られたフィルムを用いて、分光光度計(コニカミノルタ株式会社製、CM−3600d)にて、光透過率のスペクトルを測定する。作製するフィルムの厚みは、測定対象となる層の積層シートでの厚みとする。測定は、波長400〜700nmの範囲で行い、該範囲内での平均値を求める。各層につき、フィルムは10枚作製して、測定し、これらの平均値を算出することで、光透過率を求める。なお、樹脂層と絵柄層を合わせた積層体の光透過率については、積層シートでのそれぞれの厚みに応じて樹脂層および絵柄層をフィルム状に積層した積層体を作製して測定する。
【0065】
・厚み:積層シート1の垂直断面をマイクロスコープ(キーエンス株式会社製、デジタルHFマイクロスコープVH−8000)で観察し、測定対象とする層について任意の10カ所での厚みを測定し、これらの平均値を算出することで求める。
【0066】
・軟化温度:積層シートのうち、測定対象となる層のみを単体で、所望の厚み(即ち、測定対象となる層の積層シートでの厚み)でフィルム状に形成し、これを所望の大きさ(下記実施例では5mm四方)にカットし、得られたフィルムを熱機械分析(TMA)による針侵入法(荷重100mN、針の径:φ1mm、昇温速度:5℃/分)を用いて測定する。なお、各層につき、フィルムは10枚作製して、測定し、これらの平均値を算出することで求める。
【実施例】
【0067】
次に実施例により本発明をさらに詳しく説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0068】
[実施例1]
〔絵柄層インクの作製〕
(顔料母液の処方)
1)カーボンブラック顔料;15質量部
(商品名「NIPex 35」、エボニックデグサジャパン株式会社)
2)分散剤;7.5質量部
(商品名「SOLSPERSE32000」、日本ルーブリゾール株式会社)
3)反応性モノマー;77.5質量部
(商品名「SR9003」、プロポキシ化(2)ネオペンチルグリコールジアクリレート、サートマージャパン株式会社)
上記材料をミキサーにて混合することにより、顔料母液を作製した。
【0069】
(絵柄層インクの処方)
1)上記にて作製した顔料母液;13質量部
2)脂肪族ウレタンアクリレートオリゴマー;10質量部
(商品名「CN996」、アルケマ株式会社)
3)テトラヒドロフルフリルアクリレート;10質量部
(商品名「V#150」、大阪有機化学工業株式会社)
4)アクリルモルフォリン;60質量部
(商品名「ACMO」、興人株式会社)
5)2−(1,2−シクロヘキサンジカルボキシイミド)エチルアクリレート;5質量部(商品名「アロニックスM−140」、東亞合成株式会社)
6)2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン;5質量部
(商品名「ダロキュア1173」、BASF株式会社)
7)ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド);5質量部
(商品名「イルガキュア819」、BASF株式会社)
上記材料をミキサーにて混合することにより、絵柄層インクを作製した。
【0070】
樹脂層としてアクリル系樹脂からなる透明フィルム(厚さ75μm、光透過率95%(400〜700nm)、軟化温度100℃)を用いた。
【0071】
樹脂層の一方の面に、リバースロールコーターにて、ポリエステル系樹脂を塗布し、乾燥機にて処理し、ポリエステル樹脂層を形成した。その後、ポリエステル樹脂層の表面に、真空蒸着加工によりインジウムを付着させ、金属蒸着層を形成し、複合着色層を形成した。
【0072】
次に、複合着色層の表面に、ヒートラミネート加工によりアクリルニトリルブタジエンスチレン系樹脂からなるシートを積層し、バッキング層を形成した。
【0073】
この積層物の樹脂層側、すなわち樹脂層の他方の面に、上記で作製した絵柄層インクをシリアル型インクジェット方式の印刷設備にて木目柄を付与した。付与後、紫外線ランプを用いて紫外線を照射し、インクを硬化させ、凹凸面形状の曲面を表面に持つ木目模様の絵柄層を形成した。かくして、積層シートを得た。得られた積層シートの複合着色層の厚みは30μm、光透過率は5%(400〜700nm)、軟化温度は100℃であり、バッキング層の厚みは250μm、光透過率は0%(400〜700nm)、軟化温度は70℃であった。なお、印刷条件および紫外線照射条件は以下のとおりである。
【0074】
(印刷条件)
ヘッド加熱温度:57℃
ノズル径:70μm
印加電圧:50V
パルス幅:15μs
駆動周波数:4.5kHz
解像度:720dpi
図柄:木目柄
【0075】
(紫外線照射条件)
ランプ種類:メタルハライドランプ
ランプの出力:120W/cm
照射時間:1秒
照射回数:20回
照射距離:5mm
【0076】
木目模様をした凹凸曲面を有する絵柄層を形成するための付与条件は以下のとおりである。まず
図6(a)に示すような木目柄8をスキャナーで読み取り、読み取った画像をグレースケールに変換し(
図6(b)参照)、グレースケールの明度の低い部分を絵柄層の厚みが厚くなるよう、明度が高い部分を厚みが薄くなるように変化させ、デジタル画像データを作成し使用した。例えば、
図6(b)の断面A−A’においては
図7のような微小幅35μmの矩形9に細分化し、この微小幅の矩形9に10〜100μmの高さの変化を持たせるように付与量を制御するようインクジェット方式印刷設備で印刷した。このようにして絵柄層の厚みに変化を付与し、濃色部分は絵柄層の厚みを厚く、淡色部分は絵柄層の厚みを薄くした。印刷後の紫外線照射により形成された絵柄層は厚みが連続的に変化し、且つ表面が滑らかな曲面となっていた。すなわち、絵柄層は、任意の断面における上辺が異なる曲率半径を有する複数の曲線が連なってなる形状をなし、且つ任意の断面の断面形状および断面積が連続的に変化する形状をなしていた。なお、樹脂層と絵柄層を合わせた積層体の光透過率(400〜700nm)は奥行き感を持たせる部分が20〜85%の範囲を有したものであり、奥行き感を有しない部分で3〜8%であった。また絵柄層の軟化温度は150℃であった。また、絵柄層の断面の上辺を構成する複数の曲線の曲率半径は35μm〜80mmであった。また、絵柄層の厚み(任意の10カ所での平均厚み)は70μmであり、最薄部は10μm、最厚部は100μmであった。
【0077】
次に、積層シートの絵柄層が成形体の表面側になるように真空圧空成形法により予備賦形し、射出成形金型キャビティ内面に沿う形状の賦形体を得た。この賦形体の不用部分をカットし射出成形金型キャビティ内面に沿わせてセットし、バッキング層の側に樹脂を射出することにより積層シートを成形樹脂層と一体化した成形体を得た。なお、射出成形条件としては、成形樹脂層を形成する樹脂は帝人化成株式会社製ポリカーボネートとABS樹脂のアロイ材T−2711を用いて樹脂温度260℃、金型温度40℃、射出圧力200MPaの成形条件にて成形体を得た。得られた成形体は表面が平滑で、絵柄層の厚さの変化による立体感とその変化と、絵柄層と着色層との重なりによる複合的な視覚的変化による奥行き感が得られることにより、自然物の木目模様に、金属調の光沢を付与した新規で斬新な意匠を有するものであった。
【0078】
[比較例1]
絵柄層の軟化温度が33℃であること以外は実施例1と同様にして積層シートおよび成形体を得た。得られた成形体は表面が平滑でなく凹凸が残るものであった(
図8参照)。凹凸が残っている影響で絵柄層と着色層との複合的な作用で発生する奥行き感が無く意匠性が優れているとは言えないものであった。なお、このとき絵柄層を付与するために使用したインクの作製方法を以下に示す。
【0079】
〔比較例1の絵柄層インクの作製〕
(絵柄層インクの処方)
1)実施例1と同じ顔料母液;13質量部
2)脂肪族ウレタンアクリレートオリゴマー;10質量部
(商品名「CN996」、アルケマ株式会社)
3)テトラヒドロフルフリルアクリレート;50質量部
(商品名「V#150」、大阪有機化学工業株式会社)
4)アクリルモルフォリン;20質量部
(商品名「ACMO」、興人株式会社)
5)2−(1,2−シクロヘキサンジカルボキシイミド)エチルアクリレート;5質量部(商品名「アロニックスM−140」、東亞合成株式会社)
6)2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン;5質量部
(商品名「ダロキュア1173」、BASF株式会社)
7)ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド;5質量部
(商品名「イルガキュア819」、BASF株式会社)
上記材料をミキサーにて混合することにより、絵柄層インクを作製した。
【0080】
[比較例2]
樹脂層としてポリカーボネート系樹脂からなる透明フィルム(厚さ200μm、光透過率88%(400〜700nm)、軟化温度150℃)を用いたこと以外は実施例1と同様にして積層シートおよび成形体を得た。得られた成形体は表面が平滑でなく凹凸が残るものであった(
図9参照)。凹凸が残っている影響で絵柄層と着色層との複合的な作用で発生する奥行き感が無く意匠性が優れているとは言えないものであった。
【0081】
上述の結果からわかるように、本実施形態によって得られた成形体は表面が平滑であり、絵柄層に立体感とその変化、さらに奥行き感を感じられる意匠性に優れたものであった。