特許第6549952号(P6549952)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6549952
(24)【登録日】2019年7月5日
(45)【発行日】2019年7月24日
(54)【発明の名称】ダイバーシチ送信装置
(51)【国際特許分類】
   H04B 7/06 20060101AFI20190711BHJP
   H04W 16/28 20090101ALI20190711BHJP
   H04W 74/08 20090101ALI20190711BHJP
【FI】
   H04B7/06 100
   H04W16/28 151
   H04W74/08
【請求項の数】5
【全頁数】24
(21)【出願番号】特願2015-184279(P2015-184279)
(22)【出願日】2015年9月17日
(65)【公開番号】特開2017-60045(P2017-60045A)
(43)【公開日】2017年3月23日
【審査請求日】2018年9月13日
(73)【特許権者】
【識別番号】000147833
【氏名又は名称】株式会社イシダ
(74)【代理人】
【識別番号】110000202
【氏名又は名称】新樹グローバル・アイピー特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】清水 健
【審査官】 吉江 一明
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−54998(JP,A)
【文献】 特開2012−49936(JP,A)
【文献】 特開2010−118794(JP,A)
【文献】 特開2012−50183(JP,A)
【文献】 国際公開第2015/006640(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 7/06
H04W 16/28
H04W 74/08
IEEE Xplore
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電波の送信前に第1時間以上の第1キャリアセンスを必要とし、前記第1キャリアセンス後の前記電波の送信開始から第2時間が経過するまでの間は、前記電波の再送信前に、前記第1時間よりも短い第3時間以上の第2キャリアセンスを必要とする無線通信を行うダイバーシチ送信装置であって、
前記電波を送信する第1送信部と、
前記電波を送信する第2送信部と、
前記第1送信部および前記第2送信部を制御する送信制御部と、
を備え、
前記送信制御部は、
前記第1送信部にデータ信号の送信を始めさせる前に、前記第1送信部および前記第2送信部の両方に前記第1キャリアセンスを行わせ、
前記第1送信部および前記第2送信部が前記第1キャリアセンスを完了させた後に、前記第1送信部に前記データ信号の送信を始めさせると共に、前記第2送信部にダミー信号の送信を始めさせる、
ダイバーシチ送信装置。
【請求項2】
前記送信制御部は、前記第1送信部が前記第1キャリアセンスを完了させた後に、前記第1送信部に前記ダミー信号の送信を始めさせ、前記ダミー信号の送信完了後に前記データ信号の送信を始めさせる、
請求項1に記載のダイバーシチ送信装置。
【請求項3】
前記送信制御部は、前記第1送信部が前記第1キャリアセンスを完了させた後に、前記ダミー信号および前記データ信号を連続して前記第1送信部に送信させる、
請求項2に記載のダイバーシチ送信装置。
【請求項4】
前記送信制御部は、前記第1送信部および前記第2送信部が前記第1キャリアセンスを完了させた後に、前記第1送信部および前記第2送信部に、同一の前記ダミー信号の送信を同時に始めさせる、
請求項2または3に記載のダイバーシチ送信装置。
【請求項5】
前記送信制御部は、前記第1送信部および前記第2送信部が前記第1キャリアセンスを完了させた後、前記第2時間が経過するまでの間において、前記第1送信部および前記第2送信部に前記電波を受信させ、前記第1送信部および前記第2送信部のうち、受信した前記電波の強度が大きい方に前記データ信号を送信させる、
請求項1から4のいずれか1項に記載のダイバーシチ送信装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の電波送信器を用いて無線信号の効率的な送信を行うダイバーシチ送信装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、特許文献1(特開2014−165750号公報)に記載されているように、920MHz帯の特定小電力無線を用いる無線通信システムが、免許不要の自営無線システムとして家電等に採用されている。しかし、特定小電力無線では、電波法によって、電波送信前のキャリアセンスが義務付けられている。キャリアセンスは、同一エリア内に存在する複数の無線通信機器が同一の周波数帯域で送信したデータ同士の干渉による混信を防止するために実施される。また、特定小電力無線では、電波法によって、キャリアセンス実施後における電波の連続送信可能時間の上限が設定されている場合がある。
【0003】
さらに、従来、無線通信システムにおいて無線通信の安定化が求められている。無線通信の安定化を実現する技術の一つとして、複数のアンテナを用いるダイバーシチ送信装置が用いられている。ダイバーシチ送信装置は、電波を受信した複数のアンテナから電波受信強度が最も高いアンテナを選択し、選択されたアンテナを用いて電波の送信を行う。これにより、電波受信状態が最もよいアンテナに定期的に切り替えながら、無線通信を行うことができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、920MHz帯の特定小電力無線システムにおいて、ダイバーシチ送信装置を用いる場合、電波受信状態が最もよいアンテナに切り替えて電波送信を開始する前にキャリアセンスが必要となる。そのため、920MHz帯の特定小電力無線システムでは、ダイバーシチ送信装置を用いることにより、効率的な電波送信が困難になるおそれがある。
【0005】
本発明の目的は、特定小電力無線システムにおいて無線信号の送信を効率的に行うことができるダイバーシチ送信装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係るダイバーシチ送信装置は、電波の送信前に第1時間以上の第1キャリアセンスを必要とし、第1キャリアセンス後の電波の送信開始から第2時間が経過するまでの間は、電波の再送信前に、第1時間よりも短い第3時間以上の第2キャリアセンスを必要とする無線通信を行う。このダイバーシチ送信装置は、電波を送信する第1送信部と、電波を送信する第2送信部と、第1送信部および第2送信部を制御する送信制御部とを備える。送信制御部は、第1送信部にデータ信号の送信を始めさせる前に、第1送信部および第2送信部の両方に第1キャリアセンスを行わせる。送信制御部は、第1送信部および第2送信部が第1キャリアセンスを完了させた後に、第1送信部にデータ信号の送信を始めさせると共に、第2送信部にダミー信号の送信を始めさせる。
【0007】
本発明に係るダイバーシチ送信装置は、例えば920MHz帯の特定小電力無線でのダイバーシチ送信において、電波を送信するアンテナを第1送信部から第2送信部に切り替えた後であっても、第2送信部は、第1時間より短い第3時間のキャリアセンスでデータ信号を送信することができる。そのため、このダイバーシチ送信装置は、アンテナ切替後のキャリアセンスの時間を短くすることができるので、データ信号の送信を効率的に行うことができる。データ信号は、第1送信部および第2送信部から送信先が受信する必要がある信号である。ダミー信号は、第1送信部および第2送信部から送信先が受信する必要がない信号である。送信先は、ダイバーシチ送信装置と無線通信する装置である。
【0008】
本発明に係るダイバーシチ送信装置は、送信制御部は、第1送信部が第1キャリアセンスを完了させた後に、第1送信部にダミー信号の送信を始めさせ、ダミー信号の送信完了後にデータ信号の送信を始めさせることが好ましい。
【0009】
この場合、ダイバーシチ送信装置は、第1キャリアセンス後に、データ信号を送信する予定の第1送信部にもダミー信号を送信させる。第1送信部にも所定のダミー信号を送信させることで、ダミー信号を用いるダイバーシチ送信制御をダイバーシチ送信装置が行うことが明確になる。
【0010】
本発明に係るダイバーシチ送信装置は、送信制御部は、第1送信部が第1キャリアセンスを完了させた後に、ダミー信号およびデータ信号を連続して第1送信部に送信させることが好ましい。
【0011】
この場合、ダイバーシチ送信装置は、第1キャリアセンス後に、ダミー信号とデータ信号とが一体となった信号を第1送信部に送信させる。ダミー信号送信完了とデータ信号送信開始との間の時間がゼロであるので、データ信号送信開始前に第2キャリアセンスを行う必要がない。そのため、このダイバーシチ送信装置は、データ信号の送信のために第2時間を効率的に用いることができる。
【0012】
本発明に係るダイバーシチ送信装置は、送信制御部は、第1送信部および第2送信部が第1キャリアセンスを完了させた後に、第1送信部および第2送信部に、同一のダミー信号の送信を同時に始めさせることが好ましい。
【0013】
この場合、ダイバーシチ送信装置は、第1キャリアセンス後に、第1送信部および第2送信部に同一のダミー信号を同時に送信させる。これにより、無線信号の送信に関する仕様が簡潔になる。例えば、このダイバーシチ送信装置は、ダミー信号とデータ信号とを明確に区別することができ、第1送信部および第2送信部の制御を容易にすることができる。
【0014】
本発明に係るダイバーシチ送信装置は、送信制御部は、第1送信部および第2送信部が第1キャリアセンスを完了させた後、第2時間が経過するまでの間において、第1送信部および第2送信部に電波を受信させ、第1送信部および第2送信部のうち、受信した電波の強度が大きい方にデータ信号を送信させることが好ましい。
【0015】
この場合、ダイバーシチ送信装置は、第1送信部および第2送信部が受信した電波の強度を定期的にチェックして、強度がより大きい電波を受信した送信部を用いてデータ信号の送信を行う。そのため、このダイバーシチ送信装置は、安定的な電波送信を実現することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係るダイバーシチ送信装置は、特定小電力無線システムにおいて無線信号の送信を効率的に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の一実施形態に係るダイバーシチ送信装置を備える無線表示システムを示す図である。
図2図1の無線表示システムが備える無線表示器の配置例を示す図である。
図3図1の無線表示システムが備える無線表示サーバの概略構成を示すブロック図である。
図4図1の無線表示システムが備えるアクセスポイントの概略構成を示すブロック図である。
図5図5(a)は、2つの無線通信部が、無線表示器からの信号を受信している状態を表す図である。図5(b)は、2つの無線通信部の一方が、無線表示器へ無線信号を送信している状態を表す図である。
図6図1の無線表示システムが備える無線表示器の外観を示す図である。
図7図1の無線表示システムが備える無線表示器の概略構成を示すブロック図である。
図8図1の無線表示システムが備える無線表示器の動作を説明するためのフローチャートである。
図9図1の無線表示システムが備えるアクセスポイントの2つのアンテナから送信される信号のタイミングチャートである。
図10】本実施形態の効果を説明するため用いられる、比較例としてのタイミングチャートである。
図11】変形例Aにおける、アクセスポイントの2つのアンテナから送信される信号のタイミングチャートである。
図12】変形例Cにおける、アクセスポイントの2つのアンテナから送信される信号のタイミングチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の一実施形態に係るダイバーシチ送信装置について、図面を参照しながら説明する。以下に説明する実施形態は、本発明の一具体例であって、本発明の技術的範囲を限定するものではない。
【0019】
(1)無線表示システムの基本構成
図1は、本発明の一実施形態に係るダイバーシチ送信装置を備える無線表示システム100の構成を示す概念図である。無線表示システム100は、スーパーマーケットおよびコンビニエンスストア等の店舗において、売り場に陳列された商品の商品情報を顧客に提示するために使用される。商品情報は、例えば、商品の名称および販売価格である。
【0020】
図1に示されるように、無線表示システム100は、主として、無線表示サーバ10と、複数のアクセスポイント30,30,・・・と、複数の無線表示器40,40,・・・とから構成される。無線表示システム100に含まれるアクセスポイント30および無線表示器40の数は、図1に示される数に限定されない。
【0021】
無線表示システム100では、無線表示サーバ10に記憶されている商品情報が、アクセスポイント30を介して、売り場に陳列された各種商品に対応する無線表示器40に送信される。無線表示器40は、受信した商品情報を表示する。
【0022】
無線表示サーバ10は、無線表示システム100を統括的に制御するコンピュータである。無線表示サーバ10は、無線表示器40に表示される商品情報を記憶している。無線表示サーバ10は、アクセスポイント30を介して、無線表示器40に商品情報を送信する。無線表示サーバ10は、無線表示器40に対して、商品情報を画像データとして送信する。しかし、商品情報のデータ形式は、画像データに限定されない。例えば、無線表示サーバ10は、無線表示器40に対して、商品情報をテキストデータとして送信してもよい。
【0023】
アクセスポイント30は、電波の送受信機である。アクセスポイント30は、無線表示器40との間で、電波を用いて無線信号の送受信を行う。アクセスポイント30は、例えば、店舗内の天井に、一定の間隔を空けて取り付けられる。アクセスポイント30の設置場所および設置間隔は、店舗内に設置された無線表示器40が、いずれかのアクセスポイント30と通信可能となるように決定される。アクセスポイント30は、LAN(Local Area Network)等のネットワーク102を介して、無線表示サーバ10と接続されている。
【0024】
アクセスポイント30は、無線表示サーバ10からネットワーク102を介して送信されてくる商品情報を受信し、受信した商品情報を無線表示器40に送信する。また、アクセスポイント30は、無線表示器40から送信されてくる信号を受信し、受信した信号を、ネットワーク102を介して無線表示サーバ10に送信する。
【0025】
無線表示器40は、持ち運び可能な装置である。図2は、無線表示システム100が備える無線表示器40の配置例を示す図である。無線表示器40は、店舗で取り扱われる複数の商品Pの各種類に対応して配置される。無線表示器40は、無線表示サーバ10からアクセスポイント30を介して送信される商品情報を受信する。無線表示器40は、自身に対応する商品Pの商品情報を表示する。
【0026】
無線表示器40は、常に同一のアクセスポイント30と通信できるとは限らない。例えば、店舗の改装時に、無線表示器40が、自身に対応する商品Pと共に店舗内で移動させられる場合には、当該無線表示器40が通信するアクセスポイント30が変化することがある。また、無線表示器40は、複数のアクセスポイント30と通信可能な場所に設置される場合がある。この場合、無線表示器40は、これまで通信を行っていた一のアクセスポイント30と何らかの理由で通信できなくなると、他のアクセスポイント30との通信を開始する。
【0027】
無線表示システム100において、アクセスポイント30と無線表示器40との間の無線通信で使用される電波は、例えば、特定小電力無線システムで用いられる920MHz帯の電波である。しかし、無線表示システム100において使用される電波は、これに限定されない。
【0028】
(2)無線表示システムの詳細構成
次に、無線表示システム100の各構成要素について詳細に説明する。
【0029】
(2−1)無線表示サーバ
無線表示サーバ10は、無線表示システム100の管理サーバである。無線表示サーバ10は、アクセスポイント30を介して、商品Pの商品情報である画像データを無線表示器40に送信する。無線表示サーバ10は、店舗のバックヤード等に配置される。
【0030】
図3は、無線表示サーバ10の概略構成を示すブロック図である。無線表示サーバ10は、主として、サーバ通信部11と、サーバ表示部12と、サーバ入力部13と、サーバ記憶部14と、サーバ制御部15とを有する。
【0031】
(2−1−1)サーバ通信部
サーバ通信部11は、無線表示サーバ10とアクセスポイント30との通信を可能にするための通信インターフェースである。サーバ通信部11は、無線表示システム100以外の機器とも通信可能に構成されている。このような機器として、例えば、無線表示システム100と共に店舗内に設置される、POSシステムのサーバ、および、ストアコントローラが挙げられる。サーバ通信部11からアクセスポイント30に送られる画像データは、アクセスポイント30によって無線表示器40へ電波により送信される。
【0032】
(2−1−2)サーバ表示部
サーバ表示部12は、液晶ディスプレイである。サーバ表示部12は、無線表示システム100に関する各種情報を表示することができる。
【0033】
(2−1−3)サーバ入力部
サーバ入力部13は、マウスおよびキーボード等である。無線表示システム100の管理者は、無線表示サーバ10に対する各種命令および各種情報を、サーバ入力部13を介して入力することができる。
【0034】
(2−1−4)サーバ記憶部
サーバ記憶部14は、主として、ROM、RAMおよびハードディスクから構成される。サーバ記憶部14には、サーバ制御部15により実行される各種プログラムが記憶されている。
【0035】
サーバ記憶部14には、無線表示器40に表示される商品情報が記憶されている。商品情報は、商品Pの商品名、重量、通常販売価格、特別販売価格、単位重量あたりの価格、商品ID等である。商品IDは、商品Pの種類ごとに一意に割り当てられている識別子である。商品IDは、バーコード等の形式で商品Pに付されていることがある。
【0036】
サーバ記憶部14には、無線表示器40の装置IDと、商品Pの商品IDとが関連付けられて記憶されている。無線表示器40の装置IDは、無線表示器40ごとに一意に割り当てられている識別子である。また、サーバ記憶部14には、無線表示器40の装置IDと、アクセスポイント30の論理番号とが関連付けられて記憶されている。アクセスポイント30の論理番号は、アクセスポイント30ごとに一意に割り当てられている識別子である。
【0037】
ある商品Pの商品情報が、無線表示サーバ10からアクセスポイント30を介して無線表示器40に送信される際、商品情報と共に、当該商品情報の送信先となる無線表示器40の装置IDが送信される。無線表示器40は、送信されてきた装置IDと、自己の装置IDとを比較することで、送信されてきた商品情報が自分宛てに送信されてきたものか否かを判定する。
【0038】
(2−1−5)サーバ制御部
サーバ制御部15は、主として、CPUから構成される。サーバ制御部15は、サーバ記憶部14に記憶されているプログラムおよびデータに基づいて各種制御を行う。
【0039】
サーバ制御部15は、無線表示システム100の起動時、および、無線表示器40の表示変更が必要な時等に、アクセスポイント30を介して無線表示器40に商品情報を送信する。無線表示器40の表示変更が必要な時とは、例えば、サーバ記憶部14に記憶される商品情報が更新された時、商品Pの特売期間開始時に価格を通常販売価格から特別販売価格へと変更する時、および、商品Pの特売期間終了時に価格を特別販売価格から通常販売価格へと変更する時である。
【0040】
サーバ制御部15は、アクセスポイント30を介して無線表示器40に商品情報を送信する際、具体的には、以下の処理を行う。
【0041】
最初に、サーバ制御部15は、サーバ記憶部14を参照して、無線表示器40の表示変更が必要な商品Pについて、無線表示器40に送信するための画像データ(商品情報の画像データ)を生成する。また、サーバ制御部15は、サーバ記憶部14を参照して、無線表示器40の表示変更が必要な商品Pと関連付けられている無線表示器40の装置IDを、画像データの送信先である無線表示器40の識別子として取得する。また、サーバ制御部15は、サーバ記憶部14を参照して、取得した無線表示器40の装置IDと関連付けられているアクセスポイント30の論理番号を取得する。
【0042】
次に、サーバ制御部15は、無線表示器40に送信するための画像データと、画像データの送信先である無線表示器40の装置IDとを、論理番号を取得したアクセスポイント30に送信する。商品情報の画像データ、および、無線表示器40の装置IDを受信したアクセスポイント30は、それらを無線表示器40に送信する。
【0043】
無線表示器40は、アクセスポイント30から、商品情報の画像データ、および、無線表示器40の装置IDを受信すると、受信した装置IDが自己の装置IDと一致するか否かを判定する。そして、受信した装置IDが自己の装置IDと一致する場合、無線表示器40は、受信した画像データが自己宛てであると判断し、アクセスポイント30に対してACK信号を送信する。無線表示器40からACK信号を受信したアクセスポイント30は、無線表示サーバ10のサーバ通信部11に対して、ネットワーク102を介してACK信号を送信する。サーバ制御部15は、サーバ通信部11がACK信号を受信すると、無線表示器40との通信が成功したと判断して、画像データの送信処理を終了する。一方、何らかの原因で、アクセスポイント30が無線表示器40からACK信号を受信しない場合には、サーバ制御部15は、前回送信した画像データを再送信する。
【0044】
また、サーバ制御部15は、アクセスポイント30のビーコンの送信タイミングの同期を取るために、全てのアクセスポイント30のビーコンの送信タイミングを大まかに同期させるための同期用信号を、アクセスポイント30に対して送信する。
【0045】
(2−2)アクセスポイント
アクセスポイント30は、電波の送受信器である。アクセスポイント30は、本発明のダイバーシチ送信装置に相当する。図4は、アクセスポイント30の概略構成を示すブロック図である。アクセスポイント30は、主として、第1アンテナ31aと、第2アンテナ32aと、第1無線通信部31と、第2無線通信部32と、AP通信部33と、AP制御部34と、AP記憶部35とを有する。以下、必要に応じて、第1アンテナ31aおよび第2アンテナ32aを「アンテナ31a,32a」と総称し、第1無線通信部31および第2無線通信部32を「無線通信部31,32」と総称する。
【0046】
アクセスポイント30は、通信品質を高く維持するために、アンテナ選択方式のダイバーシチ送信機能を備えている。具体的には、アクセスポイント30は、定期的に、無線表示器40から、2つのアンテナ31a,32aを介して同一の信号を受信する。その後、アクセスポイント30は、電波状況がより優れているアンテナ(第1アンテナ31aまたは第2アンテナ32a)を選択する。ここで、電波状況がより優れているアンテナとは、受信した信号の電界強度がより大きいアンテナを指す。アクセスポイント30が無線表示器40から受信する信号として、例えば、アクセスポイント30から無線表示器40に画像データが送信された後に無線表示器40から送信されるACK信号が用いられる。
【0047】
無線表示システム100では、各アクセスポイント30は、他のアクセスポイント30と異なるチャネル(周波数)を用いて通信を行う。そのため、各アクセスポイント30から送信される信号は、互いに干渉しない。
【0048】
(2−2−1)アンテナおよび無線通信部
第1アンテナ31aは、第1無線通信部31と接続されている。第2アンテナ32aは、第2無線通信部32と接続されている。第1無線通信部31は、第1アンテナ31aを用いて、無線表示器40との通信を行う。第2無線通信部32は、第2アンテナ32aを用いて、無線表示器40との通信を行う。第1無線通信部31および第2無線通信部32は、同じ構成および機能を有する。第1アンテナ31aおよび第2アンテナ32aは、同じ構成および機能を有する。図5(a)は、2つの無線通信部31,32が、無線表示器40からの信号(例えば、ACK信号)を受信している状態を表す図である。図5(b)は、2つの無線通信部31,32の一方が、無線表示器40へ無線信号(例えば、商品情報の画像データ)を送信している状態を表す図である。
【0049】
無線通信部31,32は、後述するAP制御部34の無線通信制御部34aによって制御される。無線通信部31,32は、例えば、無線表示器40から送信されてくるACK信号を、アンテナ31a,32aを用いて受信する。ACK信号の受信には、図5(a)に示されるように、2つの無線通信部31,32の両方が用いられる。無線通信部31,32がACK信号を受信すると、後述するAP制御部34のアンテナ選択部34bは、2つのアンテナ31a,32aのうち、電波状況がより優れている方のアンテナを、無線表示器40に無線信号を送信するためのアンテナとして選択する。無線通信部31,32がそれぞれアンテナ31a,32aを用いて受信した2つのACK信号のうち、アンテナ選択部34dによって選択されたアンテナ(第1アンテナ31aまたは第2アンテナ32a)が受信したACK信号は、無線表示器40から受信したACK信号として無線表示サーバ10に送信される。
【0050】
また、図5(b)に示されるように、アンテナ選択部34dによって選択されたアンテナ31a,31bと接続される無線通信部31,32(第1無線通信部31または第2無線通信部32)は、後述するAP通信部33が無線表示サーバ10から受信した画像データを、自身に接続されたアンテナ31a,32a(第1アンテナ31aまたは第2アンテナ32a)を用いて無線表示器40に送信する。
【0051】
(2−2−2)AP通信部
AP通信部33は、アクセスポイント30と無線表示サーバ10との通信を可能にするための通信インターフェースである。AP通信部33は、無線表示サーバ10のサーバ通信部11から送信されてくる画像データ(商品情報)、および、当該画像データの送信先である無線表示器40の識別子を受信する。
【0052】
AP通信部33は、無線通信部31,32が受信したACK信号のうち、アンテナ選択部34bによって選択されたアンテナ31a,32aが受信したACK信号を、サーバ通信部11に送信する。
【0053】
(2−2−3)AP制御部
AP制御部34は、主として、CPUから構成される。AP制御部34は、後述するAP記憶部35に記憶されたプログラムを実行することでアクセスポイント30を制御する。AP制御部34は、主として、無線通信制御部34aと、アンテナ選択部34bと、ビーコン生成部34cとを有する。
【0054】
(2−2−3−1)無線通信制御部
無線通信制御部34aは、無線通信部31,32を制御する。例えば、無線通信制御部34aは、無線表示器40から送信される信号(例えば、ACK信号)を無線通信部31,32に受信させる。また、無線通信制御部34aは、無線通信部31,32を制御して、後述するビーコン生成部34cが生成するビーコンを無線表示器40へ送信させる。また、無線通信制御部34aは、AP通信部33が受信した画像データを、アンテナ選択部34bによって選択されたアンテナ31a,32aを介して、無線表示器40に送信させる。無線通信制御部34aは、無線表示器40との無線信号の送受信には、予め定められたチャネルを用いる。無線通信制御部34aによる、無線通信部31,32の詳細な制御については後述する。
【0055】
(2−2−3−2)アンテナ選択部
アンテナ選択部34bは、第1アンテナ31aおよび第2アンテナ32aがそれぞれ受信した2つの信号(例えば、ACK信号)のうち、どちらのACK信号の電界強度がより強いかを判定する。アンテナ選択部34bは、電界強度がより強いと判定されたACK信号を受信したアンテナ31a,32aを、電波状況がより優れているアンテナとして選択する。
【0056】
AP制御部34は、アンテナ選択部34bによって電波状況がより優れていると判定されたアンテナ31a,32aが受信したACK信号を、AP通信部33を介して、無線表示サーバ10に送信させる。また、無線通信制御部34aは、アンテナ選択部34bによって選択されたアンテナ31a,32aに接続される無線通信部31,32を制御して、無線表示器40に画像データを送信させる。
【0057】
(2−2−3−3)ビーコン生成部
ビーコン生成部34cは、ビーコンを生成する。ビーコンは、アクセスポイント30と無線表示器40との間のリンクを確立するために送信される信号である。アクセスポイント30と無線表示器40との間のリンクの確立については後述する。
【0058】
ビーコンは、アンテナ選択部34bによって選択されたアンテナ31a,32a(第1アンテナ31aまたは第2アンテナ32a)から所定の周期で送信される、所定の長さの信号である。ビーコンは、例えば、4秒間に1回、100ミリ秒の間、送信される。この場合、ビーコンの送信サイクル時間は、4秒であり、ビーコン送信時間(ビーコンの送信開始から送信終了までに要する時間)は、100ミリ秒である。
【0059】
ビーコンは、具体的には、複数のパケットからなる信号である。各パケットには、当該パケットを含むビーコンを送信するアクセスポイント30の論理番号、パケット番号、および、データ送信フラグが少なくとも含まれている。パケット番号は、当該パケットを含むビーコンの送信が開始されてから何番目のパケットであるかを示す情報である。データ送信フラグは、アクセスポイント30から無線表示器40に送信される画像データが存在するか否かのフラグである。データ送信フラグが真である場合、アクセスポイント30から無線表示器40に送信される画像データが存在する。
【0060】
アクセスポイント30は、無線表示器40に画像データを送信する直前に、無線表示器40にビーコンを送信する。無線表示器40は、受信したビーコンに含まれているデータ送信フラグが真である場合には、後述するように、自身の動作モードをスリープモードからウェイクアップモードに切り替えて、ビーコンの後に送信されてくる画像データの受信に備える。
【0061】
(2−2−4)AP記憶部
AP記憶部35は、主として、ROMおよびRAMから構成される。AP記憶部35には、AP制御部34により実行される各種プログラムが記憶される。AP記憶部35には、自身が所属するアクセスポイント30の論理番号が記憶されている。
【0062】
(2−3)無線表示器
無線表示器40は、無線表示システム100が設置される店舗で取り扱われる商品Pの各種類に対応して配置されている。無線表示器40は、対応する商品Pの商品情報を表示する。図6は、無線表示器40の外観を示す図である。図7は、無線表示器40の概略構成を示すブロック図である。図6に示されるように、無線表示器40は、商品Pの商品名、重量あたりの単価および販売価格等を、商品情報として表示する。無線表示器40は、主として、表示器表示部41、表示器通信部42、表示器記憶部43、表示器制御部44および電池45を有する。
【0063】
無線表示器40は、動作モードとして、スリープモード(待機モード)およびウェイクアップモード(起動モード)を有する。スリープモードは、無線表示器40の消費電力を最低限に抑制するモードである。スリープモードでは、表示器表示部41、表示器通信部42および表示器記憶部43に電池45から電力が供給されないように、表示器制御部44が制御される。一方、ウェイクアップモードでは、表示器表示部41、表示器通信部42および表示器記憶部43に電池45から必要な電力が供給されるように、表示器制御部44が制御される。ウェイクアップモードでは、無線表示器40の各種機能(例えば、表示器表示部41の表示の変更、および、表示器通信部42によるアクセスポイント30との通信)が実行される。ウェイクアップモード時には、スリープモード時よりも、無線表示器40の消費電力が大きくなる。
【0064】
(2−3−1)表示器表示部
表示器表示部41は、図6に示されるように、表示器記憶部43に記憶されている商品情報を表示するための画面である。表示器表示部41としては、電子ペーパが用いられる。すなわち、表示器表示部41は、マトリクス状に配列された複数の画素から構成される、ドットマトリクス方式のディスプレイである。表示器表示部41は、不揮発性であり、電力が供給されていなくても表示内容を保持することができる。なお、表示器表示部41は、電子ペーパに限定されるものではなく、例えば、液晶ディスプレイが用いられてもよい。
【0065】
(2−3−2)表示器通信部
表示器通信部42は、アクセスポイント30との送受信機能を有する。表示器通信部42は、無線表示器40の導入時または位置変更時に、表示器制御部44によって自己の所属するアクセスポイント30が決定されると、自己の所属するアクセスポイント30が使用するチャネルを用いて無線信号の送受信を行う。
【0066】
表示器通信部42は、アクセスポイント30から送信されるビーコンおよび画像データを受信する。表示器通信部42によるビーコンの受信動作は、ビーコンの送信サイクル時間に対し1回だけ実施される。例えば、ビーコンの送信サイクル時間が4秒の場合、表示器通信部42は、4秒間隔でビーコンの受信動作を行う。
【0067】
また、表示器通信部42は、自己宛ての画像データを受信した場合に、表示器制御部44の命令に従って、当該画像データを受信した旨の信号(ACK信号)を、アクセスポイント30に送信する。
【0068】
(2−3−3)表示器記憶部
表示器記憶部43は、EEPROM等の不揮発性メモリから構成される。しかし、表示器記憶部43は、RAM等の揮発性メモリから構成されてもよい。
【0069】
表示器記憶部43には、無線表示器40の各構成部品(表示器表示部41、表示器通信部42および表示器記憶部43)の制御を表示器制御部44が行うためのプログラム、無線表示器40の装置ID、無線表示サーバ10から送信された画像データ(商品情報)、自己が所属するアクセスポイント30の論理番号、および、自己が所属するアクセスポイント30が使用するチャネル等が記憶されている。
【0070】
(2−3−4)表示器制御部
表示器制御部44は、主として、CPUから構成される。表示器制御部44は、図7に示されるように、無線表示器40の各構成部品と電気的に接続され、無線表示器40の各構成部品の動作を制御する。表示器制御部44は、例えば、無線表示器40の導入時および位置変更時において、無線表示器40が所属するアクセスポイント30を決定する機能を有する。表示器制御部44が実行する制御の詳細については後述する。
【0071】
(2−3−5)電池
電池45は、表示器表示部41、表示器通信部42、表示器記憶部43および表示器制御部44に駆動電力を供給する。表示器表示部41、表示器通信部42および表示器記憶部43は、FET等のスイッチ(図示せず)を有する。表示器制御部44は、これらのスイッチを制御することで、表示器表示部41、表示器通信部42および表示器記憶部43への電力の供給を制御する。例えば、無線表示器40の動作モードが、ウェイクアップモードからスリープモードへ切り換えられる場合、表示器制御部44は、これらのスイッチをオフにすることで、表示器表示部41、表示器通信部42および表示器記憶部43に電力が供給されないように制御する。
【0072】
(3)無線表示器の動作
次に、無線表示器40の動作について説明する。図8は、無線表示器40の動作を説明するためのフローチャートである。無線表示器40は、基本的に、スリープモードの状態をとっている期間が多い。そこで、無線表示器40がスリープモードにある状態を初期状態(ステップS0)として、無線表示器40の動作について順に説明する。
【0073】
最初に、ステップS1では、表示器制御部44は、表示器通信部42が前回のビーコンの受信動作を開始した時点から、アクセスポイント30のビーコンの送信サイクル時間(ここでは4秒)が経過しているか否かを判定する。送信サイクル時間が経過している場合、ステップS2へ進む。送信サイクル時間が経過していない場合、ステップS1へ戻る。
【0074】
ステップS2では、表示器制御部44は、無線表示器40の動作モードを、スリープモードからウェイクアップモードへ変更する。その後、ステップS3へ進む。
【0075】
ステップS3では、表示器制御部44は、表示器通信部42を制御して、アクセスポイント30から送信されるビーコンを受信させる。その後、ステップS4へ進む。
【0076】
ステップS4では、表示器制御部44は、表示器通信部42が受信したビーコンのパケットに含まれているデータ送信フラグが真であるか否かを判定する。データ送信フラグが真である場合、ステップS5へと進む。データ送信フラグが真でない場合、ステップS0へ戻る。この場合、表示器制御部44は、無線表示器40の動作モードを、ウェイクアップモードからスリープモードへ変更する。
【0077】
ステップS5では、表示器制御部44は、表示器通信部42を制御して、データ送信フラグを含むビーコンに続いてアクセスポイント30から送信されてくる画像データを受信させる。その後、ステップS6へ進む。
【0078】
ステップS6では、表示器制御部44は、アクセスポイント30から受信した画像データが自己宛てか否かを判定する。受信した画像データが自己宛てである場合、ステップS7へと進む。受信した画像データが自己宛てでない場合、ステップS0へ戻る。ステップS6での判定は、上述したように、無線表示器40が画像データと共に受信した装置IDが自己の装置IDと一致するか否かを判定することにより行われる。
【0079】
ステップS7では、表示器制御部44は、表示器通信部42を制御して、自己宛ての画像データを受信した旨を知らせる信号(ACK信号)を、アクセスポイント30へ送信させる。その後、ステップS8へ進む。
【0080】
ステップS8では、表示器制御部44は、表示器通信部42が受信した自己宛ての画像データを、表示器記憶部43に記憶させる。その後、ステップS9へ進む。
【0081】
ステップS9では、表示器制御部44は、表示器表示部41を制御して、表示器記憶部43に記憶された画像データを表示器表示部41に表示させる。その後、ステップS0へ戻る。
【0082】
(4)アクセスポイントの動作
次に、アクセスポイント30の動作について説明する。図9は、アクセスポイント30の2つのアンテナ31a,32aから送信される信号のタイミングチャートである。図9では、第1アンテナ31aから送信される信号のタイミングチャートが上側に示され、第2アンテナ32aから送信される信号のタイミングチャートが下側に示されている。これらの2つのチャートは、共通の時間軸上に示されている。この時間軸は、水平方向に沿って左から右に向かって、時間の経過を表している。
【0083】
アクセスポイント30は、上述したように、送信サイクル時間(4秒)ごとに、ビーコン送信時間(100ミリ秒)の間、ビーコンを送信する。アクセスポイント30は、ビーコンの送信が完了した後、画像データ(商品情報)を無線表示器40に送信する。以下、便宜上、アクセスポイント30から送信されるビーコンおよび画像データを、まとめて「データ信号」と呼ぶ。データ信号は、アクセスポイント30から送信され、送信先の無線表示器40が受信する信号である。
【0084】
無線表示システム100では、各アクセスポイント30は、アンテナ31a,32aを用いて電波を送信する前に、キャリアセンスを行う。キャリアセンスは、アクセスポイント30が電波を送信する前に、使用するチャネルの利用状況を確認する処理である。キャリアセンスを行うことで、複数のアクセスポイント30が同一のチャネルでデータ信号を送信することによる電波干渉が防止される。例えば、特定小電力無線システムでは、電波干渉による混信を防止して通信品質を向上させる目的で、信号の送信前にキャリアセンスが行われる。図9には、データ信号を送信する前に行われるキャリアセンスである第1キャリアセンスCS1が示されている。第1キャリアセンスCS1は、第1キャリアセンス実行期間P11の間、行われる。第1キャリアセンス実行期間P11は、少なくとも5ミリ秒である。
【0085】
無線表示システム100では、アクセスポイント30が第1キャリアセンスCS1の完了後にデータ信号を連続して送信できる時間であるデータ連続送信可能期間P1が設定されている。図9には、データ連続送信可能期間P1が示されている。データ連続送信可能期間P1は、4秒以内である。あるデータ連続送信可能期間P1と、次のデータ連続送信可能期間P1との間には、送信休止期間P2が設定されている。アクセスポイント30は、送信休止期間P2が経過した後は、再び、データ連続送信可能期間P1が経過するまで、データ信号を連続して送信することができる。その場合、図9に示されるように、データ連続送信可能期間P1の開始前の送信休止期間P2において、第1キャリアセンスCS1が行われる。送信休止期間P2は、少なくとも50ミリ秒である。
【0086】
また、アクセスポイント30から送信されるデータ信号は、通常、複数のデータパケットDPに分割されて送信される。図9には、データ連続送信可能期間P1に送信される複数のデータパケットDPが示されている。データ信号を分割して送信する理由について説明する。アクセスポイント30から一度に連続して送信される信号が長いほど、送信された信号のビット列にエラーが発生する確率が高くなる。アクセスポイント30は、エラーが発生して信号の送信に失敗した場合、すなわち、無線表示器40からACK信号を受信できなかった場合、前回送信した信号を再送信する。そのため、一度に連続して送信される信号が長いほど、エラー発生後の信号の再送信に時間がかかる。従って、データ連続送信可能期間P1において、アクセスポイント30から一度に連続して送信される信号が長すぎると、送信効率が低下するおそれがある。そこで、無線表示システム100では、アクセスポイント30が、データ連続送信可能期間P1に、複数のデータパケットDPにデータ信号を分割して送信することで、送信効率の低下が抑制される。なお、一のデータパケットDPが送信される時間であるデータ送信期間P4は、32ミリ秒とする。アクセスポイント30の信号送信時の通信速度が100kbpsである場合、一のデータパケットDPは400バイトのデータを含むことができる。また、データ連続送信可能期間P1において、データパケットDPは、所定の周期で送信される。データパケットDPの送信開始の周期であるデータパケット送信周期P3は、50ミリ秒である。図9には、データパケット送信周期P3およびデータ送信期間P4が示されている。
【0087】
アクセスポイント30がデータ連続送信可能期間P1に複数のデータパケットDPを送信する場合、アクセスポイント30は、最初に送信されるデータパケットDPを除いて、データパケットDPの送信前にキャリアセンスを行う。図9には、最初のデータパケットDP以外のデータパケットDPの送信前に行われるキャリアセンスである第2キャリアセンスCS2が示されている。第2キャリアセンスCS2は、第2キャリアセンス実行期間P12の間、行われる。第2キャリアセンス実行期間P12は、少なくとも128マイクロ秒である。第1キャリアセンスCS1は、データ連続送信可能期間P1前に行われるキャリアセンスであり、第2キャリアセンスCS2は、データ連続送信可能期間P1中に行われるキャリアセンスである。第2キャリアセンス実行期間P12は、第1キャリアセンス実行期間P11よりも短い。
【0088】
また、データ連続送信可能期間P1において、アクセスポイント30から送信されたデータパケットDPを無線表示器40が受信すると、無線表示器40は、アクセスポイント30にACK信号を送信する。このとき、アクセスポイント30の2つのアンテナ31a,32aは、無線表示器40から送信されたACK信号を、実質的に同時に受信する。アクセスポイント30のアンテナ選択部34bは、電界強度がより強いACK信号を受信した方のアンテナ31a,32a一つを、電波状況がより優れているアンテナ31a,32aとして選択する。アクセスポイント30は、アンテナ選択部34bによって選択されたアンテナ31a,32aを用いて、次のデータパケットDPを無線表示器40に送信する。
【0089】
このように、データ連続送信可能期間P1では、アクセスポイント30からデータパケットDPが送信される度に、当該アクセスポイント30のアンテナ選択部34bによって、電波状況がより優れているアンテナ31a,32aが選択される。選択されたアンテナ31a,32aは、次のデータパケットDPの送信に用いられる。図9では、最初の2つのデータパケットDPは、第1アンテナ31aから送信され、3番目のデータパケットDPは、第2アンテナ32aから送信されている。そのため、アクセスポイント30は、2番目のデータパケットDPの送信後に、データパケットDPの送信に用いるアンテナを、第1アンテナ31aから第2アンテナ32aに切り替えている。なお、最初のデータパケットDPを送信するアンテナは、任意に設定されてもよい。図9では、最初のデータパケットDPは、第1アンテナ31aから送信されている。以上説明した、データパケットDPの送信が完了する度に、電波状況がより優れているアンテナ31a,32aを選択し、データパケットDPの送信に用いられるアンテナ31a,32aを必要に応じて切り替える機能は、アクセスポイント30のダイバーシチ送信機能である。無線表示システム100では、ダイバーシチ送信機能の実行に要する時間であるダイバーシチ送信実行期間は、15ミリ秒である。
【0090】
また、無線表示システム100では、アクセスポイント30は、第1アンテナ31aおよび第2アンテナ32aの両方を用いて、データ連続送信可能期間P1の開始前に第1キャリアセンスCS1を行う。図9に示されるように、第1アンテナ31aによる第1キャリアセンスCS1、および、第2アンテナ32aによる第1キャリアセンスCS1は、同時に同じ期間、行われる。アクセスポイント30の無線通信制御部34aは、アンテナ31a,32aに接続される無線通信部31,32を制御するので、第1アンテナ31aおよび第2アンテナ32aによる第1キャリアセンスCS1の同期を容易に取ることができる。
【0091】
そして、アクセスポイント30は、第1アンテナ31aおよび第2アンテナ32aによる第1キャリアセンスCS1の完了後、データ連続送信可能期間P1において、第1アンテナ31aおよび第2アンテナ32aを用いてダミー信号DSの送信を行う。図9では、ダミー信号DSは、ハッチングされた領域として示されている。第1アンテナ31aおよび第2アンテナ32aから送信されるダミー信号DSは、共通のビット列を含む信号である。ダミー信号DSは、任意の信号であり、例えば、0と1とが交互に配置されるビット列「01010101・・・」であってもよい。また、ダミー信号DSの長さおよび強度は、任意でよい。後述するように、データ信号の効率的な送信の観点からは、ダミー信号DSの長さは短いほどよく、例えば1マイクロ秒であってもよい。また、アクセスポイント30の消費電力を抑制する観点からは、ダミー信号DSの電波強度は小さいほどよく、例えば1mW〜10mWであってもよい。図9には、ダミー信号DSが送信される時間であるダミー信号送信期間P21が示されている。
【0092】
次に、図9を参照しながら、アクセスポイント30の動作について具体的に説明する。図9において、アクセスポイント30は、データ連続送信可能期間P1において、第1アンテナ31aにダミー信号DSを送信させた後、続けて最初のデータパケットDPを第1アンテナ31aに送信させる。アクセスポイント30は、最初のデータパケットDPを第1アンテナ31aに送信させた後、信号の送信を停止し、第1アンテナ31aによる第2キャリアセンスCS2を行う。アクセスポイント30は、第1アンテナ31aによる第2キャリアセンスCS2の完了後、2番目のデータパケットDPを第1アンテナ31aに送信させる。
【0093】
一方、アクセスポイント30は、データ連続送信可能期間P1において、第2アンテナ32aにダミー信号DSを送信させた後は、第2アンテナ32aに信号を送信させない。しかし、図9に示されるように、アクセスポイント30は、2番目のデータパケットDPの送信後に、信号の送信に用いるアンテナを、第1アンテナ31aから第2アンテナ32aに切り替える。アクセスポイント30は、アンテナの切り替えが発生した後は、第2アンテナ32aによる第2キャリアセンスCS2を行う。アクセスポイント30は、第2アンテナ32aによる第2キャリアセンスCS2の完了後、3番目のデータパケットDPを第2アンテナ32aに送信させる。この間、アクセスポイント30は、第1アンテナ31aに信号を送信させない。
【0094】
その後、図9に示されるように、アクセスポイント30は、3番目のデータパケットDPの送信後に、信号の送信に用いるアンテナを、第2アンテナ32aから第1アンテナ31aに切り替える。アクセスポイント30は、アンテナの切り替えが発生した後は、第1アンテナ31aによる第2キャリアセンスCS2を行う。アクセスポイント30は、第1アンテナ31aによる第2キャリアセンスCS2の完了後、4番目のデータパケットDPを第1アンテナ31aに送信させる。この間、アクセスポイント30は、第2アンテナ32aに信号を送信させない。
【0095】
以上説明したように、データ連続送信可能期間P1において、アクセスポイント30は、データパケットDPの送信が完了する度に、アンテナ31a,32aの切り替えを行うか否かを判断する。アクセスポイント30は、アンテナ31a,32aの切り替えを行う場合には、切り替え後のアンテナ31a,32aを用いて、第2キャリアセンスCS2、および、次のデータパケットDPの送信を行う。
【0096】
(5)特徴
本実施形態の無線表示システム100は、無線表示サーバ10と、複数のアクセスポイント30と、複数の無線表示器40とを備える。アクセスポイント30は、無線表示サーバ10に記憶されている商品情報を取得して、当該商品情報を画像データとして、適切な無線表示器40に無線送信する。無線表示器40は、アクセスポイント30から送信されてきた商品情報を受信して、受信した商品情報を表示する。
【0097】
アクセスポイント30は、無線表示器40との無線通信に用いられる2つのアンテナ31a,32aを有する。アクセスポイント30は、第1アンテナ31aおよび第2アンテナ32aの一方を用いて、商品情報を含むデータ信号を無線表示器40へ送信する。アクセスポイント30は、2つのアンテナ31a,32aのうち、電波状況がより優れているアンテナ31a,32a一つを定期的に選択するダイバーシチ送信機能を有する。これにより、アクセスポイント30は、無線表示器40との間で安定的に無線通信することができるので、アクセスポイント30と無線表示器40との間の通信品質が向上する。アクセスポイント30のダイバーシチ送信機能は、2つのアンテナ31a,32aがそれぞれ受信する電波の電界強度を比較して、より電界強度が高い電波を受信したアンテナ31a,32aを、電波状況がより優れているアンテナ31a,32aとして選択することで実現される。例えば、データパケットDPを送信するアンテナとして第1アンテナ31aが用いられている場合、電波状況がより優れているアンテナとして第2アンテナ32aが選択されると、アクセスポイント30は、データパケットDPを送信するためのアンテナを、第1アンテナ31aから第2アンテナ32aに切り替える。
【0098】
無線表示システム100のアクセスポイント30は、無線表示器40への無線信号の送信を効率的に行うことができるダイバーシチ送信装置である。アクセスポイント30による無線信号の効率的な送信は、次の2つの処理により実現される。第1の処理は、アクセスポイント30の2つのアンテナ31a,32aの両方が、第1キャリアセンスCS1を同時に行う処理である。第2の処理は、第1キャリアセンスCS1の完了後にデータパケットDPを送信しないアンテナが、第1キャリアセンスCS1の完了後にダミー信号DSを送信する処理である。次に、これらの2つの処理によって、無線信号の効率的な送信が実現される理由について説明する。
【0099】
図10は、本実施形態の効果を説明するため用いられる、比較例としてのタイミングチャートである。以下の比較例の説明では、便宜上、本実施形態の構成要素と同じ参照符号が用いられる。図10は、図9と同様に、アクセスポイント30の2つのアンテナ31a,32aから送信される信号のタイミングチャートである。図10では、第1アンテナ31aから送信される信号のタイミングチャートが上側に示され、第2アンテナ32aから送信される信号のタイミングチャートが下側に示されている。これらの2つのチャートは、共通の時間軸上に示されている。この時間軸は、水平方向に沿って左から右に向かって、時間の経過を表している。
【0100】
図10の比較例では、アクセスポイント30は、2つのアンテナ31a,32aのうち、電波状況がより優れているアンテナ一つを定期的に選択するダイバーシチ送信機能を有する。しかし、アクセスポイント30の2つのアンテナ31a,32aのうち、データパケットDPの送信を行うアンテナのみが第1キャリアセンスCS1を行い、データパケットDPの送信を行わないアンテナは第1キャリアセンスCS1を行わない。また、2つのアンテナ31a,32aは、図9に示されるダミー信号DSを送信しない。
【0101】
そのため、図10の比較例では、アクセスポイント30が、ダイバーシチ送信機能によってデータパケットDPを送信するためのアンテナ31a,32aを切り替える場合、切り替え後のアンテナ31a,32aは、データパケットDPの送信前に第1キャリアセンスCS1を行う必要がある。なぜなら、当該アンテナ31a,32aは、この時点で第1キャリアセンスCS1を未だに行っていないので、データ連続送信可能期間P1を確保していないからである。従って、図10の比較例では、アクセスポイント30は、データパケットDPを送信するためのアンテナ31a,32aを切り替えた後、次のデータパケットDPを送信する前に、第1キャリアセンスCS1を行う必要がある。
【0102】
一方、本実施形態では、図9に示されるように、アクセスポイント30は、データパケットDPを送信するためのアンテナ31a,32aを切り替えた後、次のデータパケットDPを送信する前に、第1キャリアセンスCS1を行う必要がなく、第2キャリアセンスCS2を行えばよい。第2キャリアセンス実行期間P12は、第1キャリアセンス実行期間P11よりも短い。そのため、無線表示システム100では、アクセスポイント30がアンテナ31a,32aを切り替えた後のキャリアセンスの実行時間を短くすることができる。従って、無線表示システム100は、アクセスポイント30から無線表示器40への無線信号の送信を効率的に行うことができる。
【0103】
次に、アクセスポイント30から無線表示器40への無線信号の送信の効率性の向上について、本実施形態の図9と比較例の図10とに基づいて、具体的な数値を挙げながら説明する。ここでは、データ連続送信可能期間P1は4秒とし、送信休止期間P2は50ミリ秒とし、データパケット送信周期P3は50ミリ秒とし、データ送信期間P4は32ミリ秒とし、ダイバーシチ送信実行期間は15ミリ秒とし、第1キャリアセンス実行期間P11は5ミリ秒とし、第2キャリアセンス実行期間P12は128マイクロ秒とし、ダミー信号送信期間P21は1マイクロ秒とする。以上の数値は、本実施形態の説明で挙げられた数値に基づいている。
【0104】
この場合、データパケット送信周期P3は50ミリ秒であり、データ送信期間P4は32ミリ秒であるので、1つのデータパケットDPの送信完了時から次のデータパケットDPの送信開始時までの期間は、P3からP4を減じた18ミリ秒である。この18ミリ秒の間に、アクセスポイント30は、ダイバーシチ送信機能をダイバーシチ送信実行期間(15ミリ秒)内に実行するので、残りの期間は3ミリ秒となる。以下、この3ミリ秒の期間を「準備期間」と呼ぶ。
【0105】
アクセスポイント30が、ダイバーシチ送信機能によって、ある一のデータパケットDPの送信完了後にアンテナ31a,32aの切り替えを行わない場合について説明する。この場合、切り替え後の一のアンテナ31a,32aは、次のデータパケットDPの送信開始前に、第2キャリアセンスCS2を行う。第2キャリアセンス実行期間P12は、128マイクロ秒である。そのため、当該アンテナ31a,32aは、3ミリ秒の準備期間内に第2キャリアセンスCS2を行うことができる。この場合、例えば、アクセスポイント30の第1アンテナ31aが、一のデータパケットDPの送信を完了し、続けて次のデータパケットDPの送信を開始する。
【0106】
次に、アクセスポイント30が、ダイバーシチ送信機能によって、ある一のデータパケットDPの送信完了後にアンテナ31a,32aの切り替えを行う場合について説明する。この場合、切り替え後の一のアンテナ31a,32aは、次のデータパケットDPの送信開始前に、第2キャリアセンスCS2を行うことができる。なぜなら、当該アンテナ31a,32aは、第1キャリアセンスCS1を既に行っているので、データ連続送信可能期間P1を確保しているからである。そして、当該アンテナ31a,32aは、3ミリ秒の準備期間内に第2キャリアセンスCS2を行うことができる。この場合、例えば、アクセスポイント30の第1アンテナ31aが、一のデータパケットDPの送信を完了し、その後にアンテナ31a,32aの切り替えが発生し、その後に第2アンテナ32aが次のデータパケットDPの送信を開始する。
【0107】
従って、本実施形態では、アクセスポイント30は、データ連続送信可能期間P1において、データパケット送信周期P3の50ミリ秒間隔で、第1アンテナ31aおよび第2アンテナ32aの一方を用いてデータパケットDPを送信することができる。
【0108】
一方、図10の比較例では、アクセスポイント30がデータ連続送信可能期間P1にアンテナ31a,32aの切り替えを行わない場合、アクセスポイント30は、3ミリ秒の準備期間内に第2キャリアセンスCS2を実行することができる。しかし、アクセスポイント30がデータ連続送信可能期間P1にアンテナ31a,32aの切り替えを行う場合、アクセスポイント30は、次のデータパケットDPの送信前に第1キャリアセンスCS1を行う必要がある。しかし、第1キャリアセンス実行期間P11は5ミリ秒であるので、アクセスポイント30は、3ミリ秒の準備期間内に第1キャリアセンスCS1を行うことはできない。
【0109】
従って、図10の比較例では、アクセスポイント30は、データ連続送信可能期間P1において、データパケット送信周期P3の50ミリ秒間隔で、第1アンテナ31aおよび第2アンテナ32aの一方を用いてデータパケットDPを送信することができない。そのため、図10の比較例では、アクセスポイント30がデータ連続送信可能期間P1にアンテナ31a,32aの切り替えを行う場合、アクセスポイント30は、切り替え後のアンテナ31a,32aによる第1キャリアセンスCS1を行うための時間を確保する必要がある。そのため、アクセスポイント30は、アンテナ31a,32aの切り替えを行った後のデータパケットDPの送信開始時を遅らせる必要がある。このように、データ連続送信可能期間P1におけるアンテナ31a,32aの切り替えの発生頻度が高いほど、データパケットDPの送信の遅延が発生しやすいので、データ連続送信可能期間P1に送信可能なデータパケットDPの数が小さくなる傾向にある。従って、図10の比較例では、アクセスポイント30から無線表示器40への無線信号の送信を効率的に行えないおそれがある。
【0110】
(6)変形例
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。例えば、以下のような変更が考えられる。
【0111】
(6−1)変形例A
実施形態では、アクセスポイント30は、データ連続送信可能期間P1において、第1アンテナ31aに最初のデータパケットDPを送信させる前に、第1アンテナ31aおよび第2アンテナ32aの両方にダミー信号DSを送信させる。しかし、この場合、アクセスポイント30は、第1アンテナ31aにはダミー信号DSを送信させなくてもよい。
【0112】
図11は、本変形例における、アクセスポイント30の2つのアンテナ31a,32aから送信される信号のタイミングチャートである。実施形態に係る図9との相違点は、図11では、アクセスポイント30は、第1キャリアセンス実行期間P11の完了後、第1アンテナ31aに、ダミー信号DSを送信させずに、最初のデータパケットDPを送信させることである。
【0113】
実施形態に係る図9において、アクセスポイント30が第2アンテナ32aにダミー信号DSを送信させる目的は、第2アンテナ32aが、第1アンテナ31aと共に第1キャリアセンスCS1を行えるようにするためである。そして、第2アンテナ32aが第1キャリアセンスCS1を行う目的は、第2アンテナ32aが、第1アンテナ31aと共にデータ連続送信可能期間P1を確保できるようにするためである。これにより、データ連続送信可能期間P1において、第2アンテナ32aは、アンテナ31a,32aの切り替え後、データパケットDPの送信前に、第1キャリアセンスCS1を行う必要がなく、第1キャリアセンスCS1より実行時間が短い第2キャリアセンスCS2を行うだけでよい。そのため、図9において、アンテナ31a,32aの最初の切り替え後は、第2アンテナ32aが第1キャリアセンスCS1を行う必要がないので、上述した理由により、アクセスポイント30は、無線通信を効率的に行うことができる。
【0114】
逆に述べると、アクセスポイント30が無線通信を効率的に行うためには、図9において、第2アンテナ32aは、第1アンテナ31aと共に第1キャリアセンスCS1を行う必要がある。この場合、アクセスポイント30は、第1キャリアセンスCS1の完了後、第2アンテナ32aに何らかの信号を送信させる必要があるため、ダミー信号DSを送信させる。
【0115】
実施形態では、2つのアンテナ31a,32aから同一のダミー信号DSが第1キャリアセンスCS1の完了後に同時に送信されるように、アクセスポイント30は無線通信部31,32を制御する。これにより、アクセスポイント30による無線通信部31,32の制御が簡潔になる。
【0116】
しかし、アクセスポイント30は、第1キャリアセンスCS1の完了後、第1アンテナ31aにデータパケットDPを送信させ、ダミー信号DSを送信させなくてもよい。この場合、アクセスポイント30による無線通信部31,32の制御が多少複雑になるおそれがある。しかし、図11において、アクセスポイント30は、第1アンテナ31aにダミー信号DSを送信させなくてもよいので、図9に示されるダミー信号送信期間P21をデータパケットDPの送信のために用いることができる。これにより、本変形例では、アクセスポイント30は、無線通信をより効率的に行うことができる。
【0117】
(6−2)変形例B
実施形態では、アクセスポイント30は、データ連続送信可能期間P1において、第1アンテナ31aに最初のデータパケットDPを送信させる前に、第1アンテナ31aおよび第2アンテナ32aの両方に、同一のダミー信号DSを送信させる。しかし、この場合、アクセスポイント30は、第1アンテナ31aおよび第2アンテナ32aに、互いに異なるダミー信号DSを送信させてもよい。ここで、互いに異なるダミー信号DSとは、信号を構成するビット列の長さ、および、信号の電界強度等が少なくとも一つ互いに異なっている複数のダミー信号DSである。
【0118】
上述したように、図9において、第2アンテナ32aのデータ連続送信可能期間P1を確保して無線通信を効率的に行うために、アクセスポイント30は、第2アンテナ32aに第1キャリアセンスCS1を行わせて、その後にダミー信号DSを送信させる。そのため、第1アンテナ31aおよび第2アンテナ32aから送信されるダミー信号DSが互いに異なっていても、第2アンテナ32aに第1キャリアセンスCS1を行わせれば、アクセスポイント30は、無線通信を効率的に行うことができる。なお、この場合、第1アンテナ31aから送信されるダミー信号DSを、第2アンテナ32aから送信されるダミー信号DSよりも短くすることで、アクセスポイント30は、図9に示されるダミー信号送信期間P21の一部をデータパケットDPの送信のために用いることができる。
【0119】
(6−3)変形例C
実施形態では、データ連続送信可能期間P1において、アクセスポイント30は、第1アンテナ31aに、第1キャリアセンスCS1の完了後にダミー信号DSを送信させ、ダミー信号DSの送信完了後に、続けて最初のデータパケットDPを送信させる。すなわち、第1アンテナ31aによるダミー信号DSの送信完了時と、最初のデータパケットDPの送信開始時とは同じ時刻である。しかし、データ連続送信可能期間P1において、アクセスポイント30は、第1アンテナ31aに、第1キャリアセンスCS1の完了後にダミー信号DSを送信させ、その後信号の送信を所定時間停止させた後に、最初のデータパケットDPを送信させてもよい。この場合、第1アンテナ31aは、最初のデータパケットDPの送信前に、第2キャリアセンスCS2を行う必要がある。
【0120】
図12は、本変形例におけるアクセスポイント30の2つのアンテナ31a,32aから送信される信号のタイミングチャートである。実施形態に係る図9との相違点は、図12では、データ連続送信可能期間P1において、第1アンテナ31aによるダミー信号DSの送信完了時と、最初のデータパケットDPの送信開始時とが同じ時刻ではないことである。
【0121】
変形例Bで説明したように、アクセスポイント30は、第1キャリアセンスCS1の完了後に、第1アンテナ31aおよび第2アンテナ32aに、同一のダミー信号DSを送信させる必要がない。しかし、第1アンテナ31aおよび第2アンテナ32aから送信されるダミー信号DSは、同じ長さであることが好ましい。その理由は、データ連続送信可能期間P1におけるデータパケットDPの送信タイミングを、第1アンテナ31aと第2アンテナ32aとの間で容易に同期させることができるからである。具体的には、図9において、ダミー信号DSの送信完了時を基準にした、データパケットDPの送信開始時は、第1アンテナ31aと第2アンテナ32aとで共通である。これにより、アクセスポイント30は、第1アンテナ31aおよび第2アンテナ32aを用いてデータパケットDPを送信する時刻を容易に管理することができる。
【0122】
本変形例では、図12において、第1アンテナ31aから送信されるダミー信号DS1は、第2アンテナ32aから送信されるダミー信号DS2よりも短い。また、図12において、第1アンテナ31aからダミー信号DS1が送信される時間P31と、第2キャリアセンス実行期間P12との合計は、第2アンテナ32aからダミー信号DS2が送信される時間P32よりも短い。そのため、図12では、アクセスポイント30は、第2アンテナ32aからダミー信号DS2を送信している間、第1アンテナ31aからダミー信号DS1を送信し、かつ、第1アンテナ31aによる第2キャリアセンスCS2を行うことができる。この場合、第1アンテナ31aによる第2キャリアセンスCS2の完了時、および、第2アンテナ32aによるダミー信号DS2の送信完了時は、同じ時刻である。本変形例では、実施形態と比べて、第1アンテナ31aから送信されるダミー信号DS1の長さが短いため、アクセスポイント30の消費電力がより低減される。
【0123】
(6−4)変形例D
実施形態では、図9のタイミングチャートに示されるように、種種のパラメータが設定されている。これらのパラメータは、データ連続送信可能期間P1、送信休止期間P2、データパケット送信周期P3、データ送信期間P4、ダイバーシチ送信実行期間、第1キャリアセンス実行期間P11および第2キャリアセンス実行期間P12等である。これらのパラメータの具体的な数値は、無線表示システム100の仕様に合わせて任意に設定されてもよい。
【0124】
(6−5)変形例E
実施形態の無線表示システム100は、スーパーマーケットおよびコンビニエンスストア等の店舗において、売り場に陳列された商品の商品情報を表示するために使用される。しかし、無線表示システム100は、例えば、工場で利用されてもよい。この場合、無線表示器40は、工場内をベルトコンベア等で搬送される作業対象物に付される。無線表示器40は、作業対象物が存在する作業エリアごとに設置されるアクセスポイントから、種種の情報(例えば、作業対象物に対して作業者が行うべき加工内容に関するデータ)を受信する。無線表示器40は、受信した情報を表示して、作業者に提示する。
【符号の説明】
【0125】
10 無線表示サーバ
30 アクセスポイント(ダイバーシチ送信装置)
31 第1無線通信部
31a 第1アンテナ(第1送信部)
32 第2無線通信部
32a 第2アンテナ(第2送信部)
34a 無線通信制御部(送信制御部)
40 無線表示器
100 無線表示システム
【先行技術文献】
【特許文献】
【0126】
【特許文献1】特開2014−165750号公報
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12