特許第6550022号(P6550022)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6550022メタリック調塗工シート及びその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6550022
(24)【登録日】2019年7月5日
(45)【発行日】2019年7月24日
(54)【発明の名称】メタリック調塗工シート及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   D21H 19/38 20060101AFI20190711BHJP
   B05D 5/06 20060101ALI20190711BHJP
   B05D 7/04 20060101ALI20190711BHJP
   C09D 7/40 20180101ALI20190711BHJP
   C09D 201/00 20060101ALI20190711BHJP
   C09D 109/08 20060101ALI20190711BHJP
   C09D 133/08 20060101ALI20190711BHJP
【FI】
   D21H19/38
   B05D5/06 101A
   B05D7/04
   C09D7/12
   C09D201/00
   C09D109/08
   C09D133/08
【請求項の数】8
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2016-166269(P2016-166269)
(22)【出願日】2016年8月26日
(65)【公開番号】特開2018-31099(P2018-31099A)
(43)【公開日】2018年3月1日
【審査請求日】2018年8月24日
(73)【特許権者】
【識別番号】000241810
【氏名又は名称】北越コーポレーション株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098899
【弁理士】
【氏名又は名称】飯塚 信市
(72)【発明者】
【氏名】田中 光次
(72)【発明者】
【氏名】藤田 敏宏
(72)【発明者】
【氏名】野田 義樹
(72)【発明者】
【氏名】小熊 修一
(72)【発明者】
【氏名】▲桑▼原 貴雅
(72)【発明者】
【氏名】中村 達也
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 重徳
【審査官】 長谷川 大輔
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−149790(JP,A)
【文献】 特開平06−220388(JP,A)
【文献】 特開平11−246798(JP,A)
【文献】 特開2008−013756(JP,A)
【文献】 特開平11−189996(JP,A)
【文献】 特開2016−064370(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B05D1/00−7/26
C09D1/00−10/00
101/00−201/10
D21B1/00−1/38
D21C1/00−11/14
D21D1/00−99/00
D21F1/00−13/12
D21G1/00−9/00
D21H11/00−27/42
D21J1/00−7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材の少なくとも一方の面に、光輝性顔料とバインダーとポリカルボン酸塩と成膜助剤とを含有する塗工層を有し、
前記バインダーは、前記光輝性顔料100質量部に対して、150〜200質量部の範囲で含有され、
前記成膜助剤が、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールモノイソブチレート(テキサノール)、4−ブトキシ−1−エタノール(ブチルセロソルブ)、1−ヒドロキシ−3−ブタノン、2−エチル−1−ヒドロキシ−3−ヘキサノン、2,2,4−トリメチル−1−ヒドロキシ−3−ペンタノンより選ばれる1種以上であることを特徴とするメタリック調塗工シート。
【請求項2】
前記塗工層には、前記光輝性顔料100質量部に対し、前記ポリカルボン酸塩が1〜5質量部及び前記成膜助剤が1〜5質量部含有されることを特徴とする請求項1に記載のメタリック調塗工シート。
【請求項3】
前記光輝性顔料がアルミニウムであることを特徴とする請求項1又は2に記載のメタリック調塗工シート。
【請求項4】
前記バインダーが、スチレン−ブタジエン共重合ラテックス及び/又はアクリル酸エステル樹脂であることを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載のメタリック調塗工シート。
【請求項5】
前記ポリカルボン酸塩がポリカルボン酸ナトリウムであることを特徴とする請求項1〜4の何れかに記載のメタリック調塗工シート。
【請求項6】
前記塗工層には更に高級アルコール酸化エチレン縮合物が含まれていることを特徴とする請求項1〜5の何れかに記載のメタリック調塗工シート。
【請求項7】
光輝性顔料とバインダーとポリカルボン酸塩と成膜助剤とを含有し、
前記バインダーは、前記光輝性顔料100質量部に対して、150〜200質量部の範囲で含有され、
前記成膜助剤が、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールモノイソブチレート(テキサノール)、4−ブトキシ−1−エタノール(ブチルセロソルブ)、1−ヒドロキシ−3−ブタノン、2−エチル−1−ヒドロキシ−3−ヘキサノン、2,2,4−トリメチル−1−ヒドロキシ−3−ペンタノンより選ばれる1種以上であることを特徴とするメタリック調塗工シート用の塗工液。
【請求項8】
基材の少なくとも一方の面に、光輝性顔料とバインダーとポリカルボン酸塩と成膜助剤とを含有する塗工液を塗工するメタリック調塗工シートの製造方法であって、
前記塗工液中には、前記光輝性顔料100質量部に対して、前記バインダーが150〜200質量部、前記ポリカルボン酸塩が1〜5質量部、前記成膜助剤が1〜5質量部含まれ、
前記成膜助剤が、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールモノイソブチレート(テキサノール)、4−ブトキシ−1−エタノール(ブチルセロソルブ)、1−ヒドロキシ−3−ブタノン、2−エチル−1−ヒドロキシ−3−ヘキサノン、2,2,4−トリメチル−1−ヒドロキシ−3−ペンタノンより選ばれる1種以上であることを特徴とするメタリック調塗工シートの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、メタリック調塗工シート及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、カレンダーやパンフレット等の商業・美術印刷、ビジュアル雑誌や写真集等の出版印刷及びショッピングバッグ、ファッションバッグ(袋)、あるいは医薬品、化粧品等の紙器等の包装印刷分野での高級化及び個性化傾向は、メーカーのブランド戦略と共に、一段と進みつつある。このような分野では、紙やフィルム上に、アルミニウムや青銅、黄銅等の金属粉末を含有する塗工層を設けたメタリック調塗工シートが用いられている。メタリック調塗工シートは、その表面の高い光沢性により、これを用いた印刷物や包装紙器等に高級感や意匠性を与えることができる。
【0003】
このようなメタリック調塗工シートとして、特許文献1には、基材の表面にアルミニウムペーストを主体とした塗工液を塗布したメタリック調光沢紙が開示されている。特許文献2には、塗被層が顔料とアルミニウム等の金属粉末と接着剤とを主成分とするキャスト塗被紙用塗工液よりなるメタリック調キャスト塗被紙が開示されている。特許文献3には、基材の片面にアルミニウムペーストとバインダーとを主体とするアルミニウム塗工層を設け、更にオーバーコート層設けたメタリック調塗工紙が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実開平6−20499号公報
【特許文献2】特開平8−49194号公報
【特許文献3】特開2005−336660号公報
【特許文献4】特開2016−64370号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載されたメタリック調塗工シートは、溶剤系のアルミニウム配合インキを基材表面に塗工して製造されているものの、塗工量が少ない場合には光沢が発現し難くなる問題がある。また特許文献2に記載されたメタリック調塗工シートは、金属粉末を配合した塗工液を基材の表面に塗工して製造されているが、塗工液中の金属粉末の配合量が少ないためにキャストコート以外の製造方法では高光沢の発現は難しい問題がある。また、特許文献3に記載のメタリック調塗工シートはエアーナイフやグラビアなどの塗工方式でもある程度の光沢を有するが、その光沢度は必ずしも満足できるものではなかった。また、特許文献4に記載されたメタリック調塗工シートは、色調の安定したものであるが、光沢度については十分に満足できるものではなかった。
【0006】
本発明はこのような問題を鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、光沢度の高いメタリック調塗工シートを提供することにある。
【0007】
また、本発明の他の目的とするところは、ブロッキングが生じ難いメタリック調塗工シートを提供することにある。
【0008】
発明のさらに他の目的並びに作用効果については、以下の記述を参照することにより、当業者であれば容易に理解されるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明のメタリック調塗工シートは、基材の少なくとも一方の面に、前記光輝性顔料と前記バインダーと前記ポリカルボン酸塩と前記成膜助剤とを含有する塗工層を有し、前記バインダーは、前記光輝性顔料100質量部に対して、150〜200質量部の範囲で含有し、前記成膜助剤が、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールモノイソブチレート(テキサノール)、4−ブトキシ−1−エタノール(ブチルセロソルブ)、1−ヒドロキシ−3−ブタノン、2−エチル−1−ヒドロキシ−3−ヘキサノン、2,2,4−トリメチル−1−ヒドロキシ−3−ペンタノンより選ばれる1種以上とするものである。
【0010】
このような構成によれば、ポリカルボン酸塩と成膜助剤とを併用したことにより、塗工層の光沢度が高く、ブロッキングの生じ難いメタリック調塗工シートとすることができる。
【0011】
また、本発明においては、前記塗工層には、前記光輝性顔料100質量部に対し、前記ポリカルボン酸塩が1〜5質量部及び前記成膜助剤が1〜5質量部含有されることが好ましい。
【0012】
このような構成によれば、各成分の配合比率が好ましい範囲であるため塗工層の光沢度を更に高くすることができる。
【0013】
本発明の好ましい実施の形態においては、前記光輝性顔料がアルミニウムであってもよい。
【0014】
このような構成によれば、光輝性顔料としてアルミニウムを採用したことにより、より良好な金属光沢が得られる。
【0015】
本発明の好ましい実施の形態においては、前記バインダーが、スチレン−ブタジエン共重合ラテックス及び/又はアクリル酸エステル樹脂であってもよい。
【0016】
このような構成によれば、バインダーとしてスチレン−ブタジエン共重合ラテックス及び/又はアクリル酸エステル樹脂を選択したことにより、より光沢のある塗工層が得られやすくなる。
【0017】
本発明の好ましい実施の形態においては、前記ポリカルボン酸塩がポリカルボン酸ナトリウムであってもよい。
【0018】
このような構成によれば、ポリカルボン酸塩としてポリカルボン酸ナトリウムを採用したことにより、より光沢のある塗工面が得られやすい。
【0019】
本発明の好ましい実施の形態においては、前記塗工層には更に高級アルコール酸化エチレン縮合物が含まれていてもよい。
【0020】
このような構成によれば、高級アルコール酸化エチレン縮合物により光輝性顔料の塗工液中での沈降が抑制され、安定した色調のメタリック調塗工シートが得られる。
【0021】
また本発明は、メタリック調塗工シート用の塗工液に関する発明としても捉えることができる。
【0022】
本発明に係るメタリック調塗工シート用の塗工液は、光輝性顔料とバインダーとポリカルボン酸塩と成膜助剤とを含有し、前記バインダーは、前記光輝性顔料100質量部に対して、150〜200質量部の範囲で含有され、前記成膜助剤が、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールモノイソブチレート(テキサノール)、4−ブトキシ−1−エタノール(ブチルセロソルブ)、1−ヒドロキシ−3−ブタノン、2−エチル−1−ヒドロキシ−3−ヘキサノン、2,2,4−トリメチル−1−ヒドロキシ−3−ペンタノンより選ばれる1種以上であることを特徴とする。
【0023】
このような構成によれば、本発明に係るメタリック調塗工シート用の塗工液を基材の少なくとも一方の面に塗布することで、光沢性に優れたメタリック調塗工シートを製造することが出来る。
【0024】
また、本発明は、メタリック調塗工シートの製造方法の発明とも捉えることができる。本発明に係るメタリック調塗工シートの製造方法は、基材の少なくとも一方の面に、光輝性顔料とバインダーとポリカルボン酸塩と成膜助剤とを含有する塗工液を塗工するメタリック調塗工シートの製造方法であって、前記塗工液中には、前記光輝性顔料100質量部に対して、前記バインダーが150〜200質量部、前記ポリカルボン酸が1〜5質量部、前記成膜助剤が1〜5質量部含まれ、前記成膜助剤が、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールモノイソブチレート(テキサノール)、4−ブトキシ−1−エタノール(ブチルセロソルブ)、1−ヒドロキシ−3−ブタノン、2−エチル−1−ヒドロキシ−3−ヘキサノン、2,2,4−トリメチル−1−ヒドロキシ−3−ペンタノンより選ばれる1種以上であることを特徴とする。
【0025】
このような構成によれば、光沢性に優れたメタリック調塗工シートを製造することが出来る。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、光沢度が高く、ブロッキングの生じ難いメタリック調塗工シートとすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】実施例により得られたメタリック調塗工シートの配合及び物性評価結果を示す図表である。
図2】比較例により得られたメタリック調塗工シートの配合及び物性評価結果を示す図表である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明について説明するが、本発明はこれらの実施形態に限定して解釈されるものではない。
【0029】
(基材)
本発明において用いる基材としては、紙やフィルム状の合成樹脂シート、不織布等を用いることができる。より具体的には、紙としては、上質紙、コート紙、キャストコート紙、アート紙、アートポスト紙、合成紙、ラミネート紙などを用いることができ、ラミネート紙であればポリエチレンラミネート紙である場合が特に有利である。また、合成樹脂シートとしては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリアミド、ポリ塩化ビニル等の合成樹脂シートを用いることができる。本発明のメタリック調塗工シートにおいては、高級感を感じさせるために平滑性の高い基材を用いることが好ましい。また、その一方で製造コストの面からは紙を基材とすることが好ましく、これらの理由から、本発明においては基材としてコート紙、キャストコート紙、アート紙またはアートポスト紙といった平滑性の高い紙を用いることが好ましい。
【0030】
(光輝性顔料)
本発明で用いる光輝性顔料としては、アルミニウム、銅、亜鉛、鉄、ニッケル、スズ、酸化アルミニウム等の金属または合金等の金属粉末、また、干渉マイカ顔料、ホワイトマイカ顔料、グラファイト顔料等の金属様の色調を有する非金属粉末などが挙げられ、これらの中では、金属光沢の良好なアルミニウムの金属粉末を使用することが好ましい。該光輝性顔料は、1種または2種以上を混合して使用することができる。また、本発明で用いる光輝性顔料は、あらかじめ高濃度のペースト状に分散(光輝性顔料を固形分で50乃至70質量%含有)してあるものを使用すれば、塗工液中に分散することが容易となる。アルミニウムを高濃度のペースト状に分散させた製品としては、例えば、東洋アルミニウム社より市販されている、商品名「SAP 260 PW−HS」がある。
【0031】
また、本発明で用いる光輝性顔料は、着色顔料や着色染料で着色されたものであってもよい。このような光輝性顔料の製品としては、アルミニウムに着色顔料を付着させて樹脂でコーティングしたものなどがあり、例えば、東洋アルミニウム社より市販されている、商品名「フレンドカラー」などが挙げられる。
本発明においては、光輝性顔料とバインダーとを含有する塗工液中に、更に着色顔料や着色染料といった着色剤を添加してメタリック調塗工シートの色調を調整することができる。このような着色剤としては特に限定するものではなく、例えば、アゾ系、フタロシアニン系、アントラキノン系、ペルリン系、ピランスロン系、キナクリドン系、ジオキサジン系、イソインドリノン系、チオインジゴ系、キノフタロン系、ピグメント系、カーボン系、酸化硫黄系、硫酸塩系、炭酸塩系、ケイ酸塩系、クロム酸塩系、アルミン酸塩系、フェロシアン系等の着色剤が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0032】
着色剤を用いる場合の色調の調整方法としては、例えば、光輝性顔料として無彩色のアルミニウムペーストを使用する場合には、黒色顔料を光輝性顔料に対して0.01〜0.1質量%添加することで、色調の鮮やかなシルバー系のメタリック調塗工シートとすることができる。また、このシルバー系の色調を基準として、光輝性顔料に対して黄色顔料を10〜30質量%、赤色顔料を5〜20質量%添加することで、色調の鮮やかなゴールド系のメタリック調塗工シートとすることができる。
【0033】
(バインダー)
本発明で用いるバインダーとしては、スチレン−ブタジエン共重合体ラテックス、アクリル変性スチレン−ブタジエン共重合体ラテックス、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体ラテックス、メチルメタクリレート−ブタジエン共重合ラテックス、アクリル酸エステル−メタアクリル酸エステル共重合体ラテックス、ポリビニルアルコール、スチレン−アクリル共重合体樹脂等のアクリル酸エステル樹脂、ビニル系樹脂、ポリエステル系樹脂、デンプン等のセルロース系樹脂等のバインダーが挙げられ、これらの1種または2種以上を混合して使用することができる。この中では、光沢のある塗工層が得られやすい点からスチレン−ブタジエン共重合ラテックス及び/又はアクリル酸エステル樹脂を使用することが好ましい。
【0034】
塗工液中のバインダーの添加量は、光輝性顔料100質量部に対して150〜200質量部、好ましくは160〜190質量部、更に好ましくは170〜180質量部である。バインダーの添加量をこのような範囲とすることで塗工層中に光輝性顔料を十分に固着させ、塗工層に光沢感を与えることができる。バインダーの添加量が150質量部未満となると、塗工層の光沢度が低下する。逆にバインダーの添加量が200質量部を超えても塗工層の光沢度が低下し、また、ブロッキングも生じやすくなる。
【0035】
(ポリカルボン酸塩)
本発明においては、塗工層にポリカルボン酸塩を含有させる。ここで用いるポリカルボン酸塩としては、ポリカルボン酸ナトリウム、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリアクリル酸−ポリエーテル、ポリウレタン変性ポリエーテル、カルボキシメチルセルロース、カルボキシル変性ポリビニルアルコールなどが挙げられる。本発明では、これらの中でも光沢のある塗工面が得られやすい点からポリカルボン酸ナトリウムを使用することが好ましい。
【0036】
ポリカルボン酸塩の塗工層中の含有量は、光輝性顔料100質量部に対して1〜5質量部とすることが好ましく、より好ましくは2〜4質量部である。ポリカルボン酸塩の含有量が1質量部未満となると、塗工層の光沢度の向上効果に乏しくなるおそれがある。逆に、5質量部を超えると、塗工液の粘度が上昇しやすく、塗工液の粘度が過度に上昇すると、光輝性顔料の配向性が損なわれるためか、光沢度の向上効果が乏しくなるおそれがある。また、塗工層のブロッキングも生じやすくなる。
【0037】
(成膜助剤)
本発明においては、塗工層に成膜助剤を含有させる。ここで用いる成膜助剤としては、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールモノイソブチレート(テキサノール)、4−ブトキシ−1−エタノール(ブチルセロソルブ)、1−ヒドロキシ−3−ブタノン、2−エチル−1−ヒドロキシ−3−ヘキサノン、2,2,4−トリメチル−1−ヒドロキシ−3−ペンタノンから選ばれる1種以上を用いることができる。これらの中でも塗工液の塗工安定性が得られやすいことから、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールモノイソブチレートを使用することが好ましい。
【0038】
成膜助剤の塗工層中の含有量は、光輝性顔料100質量部に対して1〜5質量部とすることが好ましく、より好ましくは2〜4質量部である。塗工層に成膜助剤を配合することにより、バインダーマイグレーションが抑制され、光輝性顔料の配向性が向上するためか、塗工層の光沢度が向上する。成膜助剤の含有量が1質量部未満となると、成膜助剤による塗工層の光沢度向上効果が十分に得られないおそれがある。逆に、成膜助剤の含有量が5質量部を超えると、塗工層のブロッキングが生じやすくなるおそれがある。
【0039】
本発明において重要なことは、塗工層中にポリカルボン酸と成膜助剤との両方を含有させることである。どちらか一方のみを含有させるだけでも塗工層の光沢度は上昇する傾向にあるが、ポリカルボン酸と成膜助剤とを同時に塗工層中に含有させることで、光沢度の向上効果は飛躍的に上昇する。
【0040】
(高級アルコール酸化エチレン縮合物)
本発明においては、光輝性顔料とバインダーとを含有する塗工液に、更に高級アルコール酸化エチレン縮合物を含有させてもよい。塗工液中の高級アルコール酸化エチレン縮合物の添加量は、光輝性顔料100質量部に対して、10〜50質量部、好ましくは20〜40質量部、更に好ましくは25〜35質量部とする。このような塗工液の組成とすることにより、光輝性顔料の塗工液中での沈降を抑制し、安定した色調のメタリック調塗工シートを得やすくなる。高級アルコール酸化エチレン縮合物の添加量が10質量部未満となると、光輝性顔料の沈降の抑制効果が十分に得られない。逆に、添加量が50質量部を超えると、光輝性顔料の沈降の抑制効果が頭打ちになるばかりか、塗工液の粘度が上がることで泡立ちが生じやすくなり、塗工層表面に塗工の抜け(欠点部)を多く発生させて、安定した色調の発現を損ねるおそれがある。
【0041】
本発明において用いる高級アルコール酸化エチレン縮合物としては、塗工液中での光輝性顔料の沈降抑制効果の点からポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコールが好ましく、とりわけポリオキシエチレンオレイン酸エステル、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコールが好ましい。
【0042】
(その他助剤)
本発明に用いる塗工液には、前述した資材の他に、本発明の目的とする効果を損ねない範囲で各種公知の助剤を適宜使用することができる。助剤としては、例えば、分散剤、消泡剤、保水剤、増粘剤、潤滑剤、湿潤剤、離型剤、耐水化剤、防腐剤、蛍光増白剤、帯電防止剤、印刷適性向上剤等が挙げられる。
【0043】
(メタリック調塗工シートの製造方法)
本発明においては、走行する基材の少なくとも一方の面に、光輝性顔料とバインダーとポリカルボン酸塩と成膜助剤とを含有する塗工液を塗工装置により塗工してメタリック調塗工シートを製造する。本発明において用いる塗工装置としては、特に限定するものではなく、一般の塗工装置を用いることができる。例えば、ブレードコーター、ロールコーター、リバースロールコーター、エアナイフコーター、ダイコーター、バーコーター、グラビアコーター、カーテンコーター、チャンプフレックスコーター、リップコーター、ロッドコーターなどの塗工装置を用いることができる。塗工液の液性からはエアナイフコーター、カーテンコーター、ロッドコーターが好ましく、さらに好ましくはエアナイフコーターである。また、いわゆるオフマシンコーターであってもオンマシンコーターであってもよい。基材への塗工液の塗工は、単層塗工であっても多層塗工であってもよい。
【0044】
光輝性顔料とバインダーとポリカルボン酸塩と成膜助剤とを含有する塗工液の塗工量は、基材の片面あたり、4g/m2以上とすることが好ましく、より好ましくは6g/m2以上であり、更に好ましくは8g/m2以上である。塗工量が4g/m2を下回ると、メタリック調塗工シートの高級感や意匠性を損なうおそれがある。塗工量の上限は特に限定するものではないが、15g/m2を超えて塗工しても高級感や意匠性の発現は頭打ちとなるため、15g/m2以下、好ましくは12g/m2以下とすることがコスト的に有利となる。
【0045】
本発明においては、基材へ塗工液を塗工した後に、塗工液を乾燥させることで基材の表面に塗工層を設けることができる。塗工後の乾燥方式は特に限定されるものではなく、例えば、熱風乾燥、赤外乾燥、常温乾燥、凍結乾燥等が挙げられるが、その乾燥効率から赤外乾燥、熱風乾燥が好ましい。
【0046】
また、塗工液を乾燥させて基材の表面に塗工層を設けた後には、スーパーキャレンダー、マシンキャレンダー、ソフトキャレンダー等のキャレンダー装置を用いて平滑化処理を行ってもよい。
【0047】
本発明においては、高い光沢感を付与する目的で、光輝性顔料とバインダーとを含有する塗工層の表面に、更にオーバーコート層を設けることもできる。このようなオーバーコート層としては、例えば、ガラス転移温度(Tg)が25℃乃至50℃である水系アクリルバインダーを主体とした塗工液を片面あたりの乾燥塗工量が0.5乃至4g/m2となるように塗工することで設けることができる。
【実施例1】
【0048】
次に、実施例及び比較例を挙げて、本発明を更に具体的に説明する。なお、以下に示す実施例及び比較例中、「部」又は「%」とあるのは、特に断りのない限り、固形分における質量基準である。
【0049】
(実施例1)
<塗工液の調整>
アルミニウムペースト(商品名:SAP260PW−HS、東洋アルミニウム社製)100部を水中に分散して分散液を得た後、更に分散液を攪拌しながら、高級アルコール酸化エチレン縮合物としてポリオキシエチレンオレイン酸エステル(商品名:ノイゲンES−149D、第一工業製薬社製)20部、ポリカルボン酸塩としてポリカルボン酸ナトリウム(商品名:SNシックナー929S、サンノプコ社製)2部、バインダーとしてスチレンブタジエン系ラテックス(A)(商品名:L−1924、Tg:4.5℃、旭化成社製)150部、スチレンブタジエン系ラテックス(B)(商品名:L−1638、Tg:39℃、旭化成社製)30部、ポリスチレン系顔料(商品名:サイビノールPG−2、サイデン化学社製)10部、黒色顔料(商品名:TB786Black、大日精化社製)0.2部、黄色顔料(商品名:Emacol NS Yellow 4618、山陽色素社製)35部、赤色顔料(商品名:SA RED DKR−5)14部、ポリエチレンワックス(商品名:WAX♯100、御国色素社製)4部、成膜助剤として2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールモノイソブチレート(商品名:CS−12、JNC社製)3部を順次添加して分散混合し、固形分30.2%の塗工液を得た。
<塗工液の塗工>
市販のコート紙(商品名:ミューコート、127.9g/m2、北越紀州製紙社製)を基材として用い、塗工速度を115m/分として走行する基材の一方の面に、エアナイフコーターにて塗工量が固形分換算で6g/m2となるように塗工液を塗工した。その後、エアドライヤーで熱風乾燥しメタリック調塗工シートを得た。
【0050】
(実施例2)
実施例1の塗工液の調整において、ポリカルボン酸ナトリウム(商品名:SNシックナー929S、サンノプコ社製)の添加量を2部から1部に変更した以外は、実施例1と同様にしてメタリック調塗工シートを得た。
【0051】
(実施例3)
実施例1の塗工液の調製において、ポリカルボン酸ナトリウム(商品名:SNシックナー929S、サンノプコ社製)の添加量を2部から4部に変更した以外は、実施例1と同様にしてメタリック調塗工シートを得た。
【0052】
(実施例4)
実施例1の塗工液の調製において、ポリカルボン酸ナトリウム(商品名:SNシックナー929S、サンノプコ社製)の添加量を2部から5部に変更した以外は、実施例1と同様にしてメタリック調塗工シートを得た。
【0053】
(実施例5)
実施例1の塗工液の調整において、スチレンブタジエン系ラテックス(A)(商品名:L−1924、Tg:4.5℃、旭化成社製)の添加量を150部から105部に、スチレンブタジエン系ラテックス(B)(商品名:L−1638、Tg:39℃、旭化成社製)の添加量を30部から45部に、それぞれ変更した以外は実施例1と同様にしてメタリック調塗工シートを得た。
【0054】
(実施例6)
実施例1の塗工液の調整において、スチレンブタジエン系ラテックス(A)(商品名:L−1924、Tg:4.5℃、旭化成社製)の添加量を150部から180部に、スチレンブタジエン系ラテックス(B)(商品名:L−1638、Tg:39℃、旭化成社製)の添加量を30部から20部に、それぞれ変更した以外は実施例1と同様にしてメタリック調塗工シートを得た。
【0055】
(実施例7)
実施例1の塗工液の調整において、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールモノイソブチレート(商品名:CS−12、JNC社製)の添加量を3部から5部に変更した以外は実施例1と同様にしてメタリック調塗工シートを得た。
【0056】
(実施例8)
実施例1の塗工液の調整において、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールモノイソブチレート(商品名:CS−12、JNC社製)の添加量を3部から1部に変更した以外は実施例1と同様にしてメタリック調塗工シートを得た。
【0057】
(実施例9)
実施例1の塗工液の調整において、ポリカルボン酸塩としてポリカルボン酸ナトリウム(商品名:SNシックナー929S、サンノプコ社製)2部を、ポリアクリル酸ナトリウム(商品名:アロンA−20L、東亜合成社製)2部に変更した以外は実施例1と同様にしてメタリック調塗工シートを得た。
【0058】
(実施例10)
実施例1の塗工液の調整において、ポリカルボン酸塩としてポリカルボン酸ナトリウム(商品名:SNシックナー929S、サンノプコ社製)2部を、ポリアクリル酸ナトリウム(商品名:アロンA−20L、東亜合成社製)4部に変更した以外は実施例1と同様にしてメタリック調塗工シートを得た。
【0059】
(実施例11)
実施例1の塗工液の調整において、スチレンブタジエン系ラテックス(B)(商品名:L−1638、Tg:39℃、旭化成社製)30部を、スチレンアクリル系樹脂(商品名:サイビノールEK−81、Tg:40℃、サイデン化学社製)30部に変更した以外は実施例1と同様にしてメタリック調塗工シートを得た。
【0060】
(実施例12)
実施例1の塗工液の調整において、スチレンブタジエン系ラテックス(B)(商品名:L−1638、Tg:39℃、旭化成社製)30部を、変性スチレンブタジエン系ラテックス(商品名:A−6081、Tg:46℃、旭化成社製)30部に変更した以外は実施例1と同様にしてメタリック調塗工シートを得た。
【0061】
(実施例13)
実施例1の塗工液の調整において、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールモノイソブチレート(商品名:CS−12、JNC社製)3部を、2,2,4−トリメチル−1−ヒドロキシ−3−ペンタノン(商品名:CS−202、JNC社製)3部に変更した以外は実施例1と同様にしてメタリック調塗工シートを得た。
【0062】
(比較例1)
実施例1の塗工液の調整において、ポリカルボン酸塩と、成膜助剤を添加しなかった以外は実施例1と同様にしてメタリック調塗工シートを得た。
【0063】
(比較例2)
実施例1の塗工液の調整において、成膜助剤を添加しなかった以外は実施例1と同様にしてメタリック調塗工シートを得た。
【0064】
(比較例3)
実施例9の塗工液の調整において、成膜助剤を添加しなかった以外は実施例9と同様にしてメタリック調塗工シートを得た。
【0065】
(比較例4)
実施例1の塗工液の調整において、ポリカルボン酸塩を添加しなかった以外は実施例1と同様にしてメタリック調塗工シートを得た。
【0066】
(比較例5)
実施例1の塗工液の調整において、スチレンブタジエン系ラテックス(A)(商品名:L−1924、Tg:4.5℃、旭化成社製)の添加量を150部から90部に、スチレンブタジエン系ラテックス(B)(商品名:L−1638、Tg:39℃、旭化成社製)の添加量を30部から50部に、それぞれ変更した以外は実施例1と同様にしてメタリック調塗工シートを得た。
【0067】
(比較例6)
実施例1の塗工液の調整において、スチレンブタジエン系ラテックス(A)(商品名:L−1924、Tg:4.5℃、旭化成社製)の添加量を150部から130部に、スチレンブタジエン系ラテックス(B)(商品名:L−1638、Tg:39℃、旭化成社製)の添加量を30部から80部に、それぞれ変更した以外は実施例1と同様にしてメタリック調塗工シートを得た。
【0068】
各実施例及び比較例で得たメタリック調塗工シートの評価結果を図1,2に示す。尚、測定及び評価は次の方法で行った。
【0069】
(光沢度)
光沢度計(機器名:GLOSS METER GM−26D、村上色彩技術研究所社製)を使用し、JIS P−8142に準拠して塗工層の表面の75°光沢度を測定した。
【0070】
(耐ブロッキング性)
メタリック調塗工シートを10cm×5cmに裁断した2枚の試験片を、塗工面と非塗工面とが接触するように重ね合わせ、プレス機(佐川製作所社製)を用いて圧力1.0MPa(ゲージ目盛り)、時間15分の条件でプレスした。プレス後の試験片2枚の剥離強度を測定し、剥離強度が100mN/50mm未満のものを「○」、100〜150mN/50mmのものを「△」、150mN/50mmを上回るものを「×」として三段階で評価し、「○」と「△」を合格とした。剥離強度の測定条件は次の通りである。
<測定条件>
測定機器 : オートグラフ
剥離速度 : 300mm/min
測定巾 : 50mm
剥離角度 : 90℃(T字剥離)
【0071】
図1の結果から明らかなように、各実施例で得られたメタリック調塗工シートは、何れも光沢度が高く、耐ブロッキング性に優れるものであった。
【0072】
これに対して、図2に示されたように、比較例1で得られたメタリック調塗工シートは光沢度が低いものであった。これは、ポリカルボン酸塩と成膜助剤とを添加しなかったことが原因と考えられる。
【0073】
また、比較例2及び比較例3で得られたメタリック調塗工シートも、やはり光沢度は低くなった。これは成膜助剤を添加しなかったため塗工層の成膜性が低下したことが原因と考えられる。
【0074】
比較例4で得られたメタリック調塗工シートは、ポリカルボン酸塩を添加しなかったためか、塗工液の粘度が低くなりすぎて安定した塗工ができず、塗工層の面感が損なわれて未塗工部分が散見された。このため光沢度と耐ブロッキング性の評価は行わなかったが、メタリック調塗工シートとしては外観を損ねるものであった。
【0075】
また、比較例5で得られたメタリック調塗工シートは、バインダーの配合部数が少なすぎたためか光沢度が低いものであった。これはバインダー量が少なかったために、塗工層に微小なひび割れが生じて光沢度が低下したものと考えられる。
【0076】
また、比較例6で得られたメタリック調塗工シートは、バインダーの配合部数が多すぎたためか光沢度が低いものであった。これは光輝性顔料をバインダーが被覆しすぎたことが原因だと推察される。また、バインダー量が多すぎるため、耐ブロッキング性にも劣るものであった。
図1
図2