特許第6550023号(P6550023)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6550023
(24)【登録日】2019年7月5日
(45)【発行日】2019年7月24日
(54)【発明の名称】姿勢保持装置
(51)【国際特許分類】
   A61G 5/14 20060101AFI20190711BHJP
   A61G 5/00 20060101ALI20190711BHJP
   A61G 5/10 20060101ALI20190711BHJP
【FI】
   A61G5/14 702
   A61G5/00 705
   A61G5/10 706
【請求項の数】4
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2016-172155(P2016-172155)
(22)【出願日】2016年9月2日
(65)【公開番号】特開2018-33878(P2018-33878A)
(43)【公開日】2018年3月8日
【審査請求日】2018年6月29日
(73)【特許権者】
【識別番号】304026696
【氏名又は名称】国立大学法人三重大学
(73)【特許権者】
【識別番号】390003230
【氏名又は名称】株式会社啓愛義肢材料販売所
(74)【代理人】
【識別番号】110002653
【氏名又は名称】特許業務法人アズテックIP
(74)【代理人】
【識別番号】100200584
【弁理士】
【氏名又は名称】浜林 尊幸
(72)【発明者】
【氏名】矢野 賢一
(72)【発明者】
【氏名】小椋 朝香
(72)【発明者】
【氏名】伊丹 琢
(72)【発明者】
【氏名】亀田 和弘
【審査官】 小島 哲次
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許第08371305(US,B1)
【文献】 米国特許第04927167(US,A)
【文献】 特公平07−053130(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61G 5/14
A61G 5/00
A61G 5/10
A61G 7/10−7/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持板と、
前記支持板に接続されるスライド機構部と、
前記スライド機構部に接続される継手と、を左右一対に備え、
さらに、左右一対の前記継手に接続され、中央にパッドを有するフレームを備え、
復帰機構を有する前記スライド機構部の摺動によって、前記継手、前記パッド、および前記フレームが、一体として、前記パッドが胸部に当接する使用者の前傾動作および座位復帰動作に連動することを特徴とする姿勢保持装置。
【請求項2】
前記スライド機構部は、
前記支持板に接続する内側接続板と、
前記内側接続板の外面に接続するスライドレールと、
前記スライドレールの外面を直線的に摺動するブロックと、
前記ブロックの外面に接続する外側接続板と、を備え、
前記外側接続板は、前記継手と接続し、
前記内側接続板は、端部にフックが装着され、
前記外側接続板は、端部にアイプレートが装着され、
前記フックは、先端が前記外側接続板のスリットから突出し、
前記フックと、前記アイプレートは、バネによって連結し、
前記復帰機構の反発力は、前記バネの弾性によって発揮されることを特徴とする請求項1に記載の姿勢保持装置。
【請求項3】
前記支持板は、L型金具を介して脚金具に接続され、前記脚金具は、前記L型金具との接続部が直角に傾倒可能とする構造であり、前記脚金具のロックが解除された状態で、前記支持板、前記スライド機構部、前記継手、前記パッドおよび前記フレームが、一体として、傾倒可能であることを特徴とする請求項1または2に記載の姿勢保持装置。
【請求項4】
前記パッドは、前記フレームに丸棒および小型スライドレールを介して接続され、上下動および回転が可能であることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の姿勢保持装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、体幹を保持する装置に関するものであり詳しくは、座位における姿勢を保持する装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
事故等で脊髄の機能が損傷すると、身体の麻痺による運動機能障害が生じる。このような体幹機能障害者数は、日本国内において、15万人を超える。体幹の機能障害は、頭に近い部位が損傷するほど症状が重くなる。特に、頸髄の頸神経を損傷すると、通常は胸から下は動かすことができず、車椅子が必要となる。上肢に関しては、頸神経の損傷部位によって可動部位が異なるものの、総じて筋力が低下する。このような症状の下では、前傾姿勢をとることができず、倒れたときに起き上がることができない。
【0003】
前傾姿勢を取れない、倒れても起き上がることができない等の状態は、日常生活におけるQOLやADLの低下をもたらす。車椅子から倒れても起き上がれないとなると、転倒や転落の危険がある凹凸や段差のある道を通行することを躊躇せざるを得ない。また、食事やパソコン操作、棚の物を取る等の動作は、車椅子から前傾姿勢が取れないことによって、著しく困難となる。
【0004】
そこで、体幹機能障害者のQOL(Quality Of Life)やADL(Activity of Daily Living)の向上を目的とした、様々な装置が開発されている。QOLやADLの向上のためには、主に2つの面からのアプローチが考えられる。1つは、体幹を固定し、転倒を防止する体幹保持装置である。もう1つは、身体を動かすための力を付加する装着型パワーアシスト装置である。
【0005】
体幹保持装置は、ベルトが身体を固定または姿勢維持のために補助をする装置(特許文献1、2)、シートが身体形状に対応して姿勢を保持する装置(特許文献3)、胸骨、腰部、恥骨結合部で3点支持する装置(特許文献4)等がある。これらの装置は、転倒防止のみならず、姿勢の矯正、脊柱の湾曲防止等の効果を有する。また、装着型パワーアシスト装置は、複数台の直動アクチュエータで脊柱の動き、腰の屈曲および伸展動作をアシストする装置(特許文献5)等がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2016−34296号公報
【特許文献2】特開2015−24087号公報
【特許文献3】特開平7−313554号公報
【特許文献4】特開2013−215246号公報
【特許文献5】国際公開第2015/164814号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
体幹保持装置には、体幹を固定するが故に、姿勢が変えられない、褥瘡や痛みが発生する、使用者にストレスがかかるといった問題点がある。また、装着型パワーアシスト装置には、アクチュエータを身体に装着するが故に、重量による負担、騒音、熱、装着部のずれの発生といった問題点がある。
【0008】
そこで、本発明は、体幹機能障害者のQOLやADLの向上のために、必要時には、姿勢の保持、起き上がりの支援を可能とし、通常時には、身体と接触せず使用者に負担をかけない姿勢保持装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
すなわち、本発明は前記した目的を達成せんとするもので、請求項1の手段は、姿勢保持装置は、支持板と、前記支持板に接続されるスライド機構部と、前記スライド機構部に接続される継手と、を左右一対に備え、さらに、左右一対の前記継手に接続され、中央にパッドを有するフレームを備え、復帰機構を有する前記スライド機構部の摺動によって、前記継手、前記パッド、および前記フレームが、一体として、前記パッドが胸部に当接する使用者の前傾動作および座位復帰動作に連動することを特徴とする。
【0010】
また、請求項2の手段は、前記スライド機構部は、前記支持板に接続する内側接続板と、前記内側接続板の外面に接続するスライドレールと、前記スライドレールの外面を直線的に摺動するブロックと、前記ブロックの外面に接続する外側接続板と、を備え、前記外側接続板は、前記継手と接続し、前記内側接続板は、端部にフックが装着され、前記外側接続板は、端部にアイプレートが装着され、前記フックは、先端が前記外側接続板のスリットから突出し、前記フックと、前記アイプレートは、バネによって連結し、前記復帰機構の反発力は、前記バネの弾性によって発揮されることを特徴とする。
【0011】
また、請求項3の手段は、前記支持板は、L型金具を介して脚金具に接続され、前記脚金具は、前記L型金具との接続部が直角に傾倒可能とする構造であり、前記脚金具のロックが解除された状態で、前記支持板、前記スライド機構部、前記継手、前記パッドおよび前記フレームが、一体として、傾倒可能であることを特徴とする。
【0012】
また、請求項4の手段は、前記パッドは、前記フレームに丸棒および小型スライドレールを介して接続され、上下動および回転が可能であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
請求項1の構成によって、本発明の姿勢保持装置は、座位において使用者の身体への接触を最小限にとどめ、圧迫や褥瘡発症等といった皮膚への負担を軽減することができる。
【0014】
また、請求項2の構成によって、本発明の姿勢保持装置は、使用者の安定した前傾姿勢の保持および前傾姿勢からの復帰を補助し、転倒の防止に寄与し、両手を使った作業を容易にできることを可能とする。
【0015】
また、請求項3の構成によって、本発明の姿勢保持装置は、使用者の着座を妨げることがなく、着座の後の装着も容易である。
【0016】
また、請求項4の構成によって、本発明の姿勢保持装置は、使用者の前傾および座位復帰動作にパッドが追随するため、スライド機構部が直線移動をする機構であっても、使用者の胸部における前傾時と復帰時の軌道の差を許容することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の姿勢保持装置の斜視図である。
図2】本発明の姿勢保持装置の使用例の側面図である。
図3】本発明の姿勢保持装置の傾倒状態を表す側面図である。
図4】本発明の姿勢保持装置のパッドの拡大図である。
図5】本発明の姿勢保持装置の継手およびフレームの動作状態を表す側面図である。
図6】本発明の姿勢保持装置のスライド機構部の拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【実施例1】
【0018】
以下、本発明について、実施するための形態を図面にしたがって説明する。
【0019】
図1は、本発明の姿勢保持装置100の全体の斜視図である。姿勢保持装置100は、支持板110と、支持板110に接続されるスライド機構部120と、スライド機構部120に接続される継手130と、を左右一対に備える。さらに、左右一対の継手130に接続され、中央にパッド140を有するフレーム150を備える。
【0020】
図2は、平板300を車椅子Wの座部の下に取り付けることによって、姿勢保持装置100を車椅子Wに適用した使用例の側面図である。本実施例においては、支持板110は脚金具200に接続され、脚金具200が平板300に固定される。本実施例は、車椅子Wの使用者Pにとって好適な構成である。なお、姿勢保持装置100は、脚金具200および平板300を用いて車椅子Wに取り付ける用途に限られるものではない。姿勢保持装置100は、通常の椅子に取り付けても良い。一例として、支持板110を、通常の椅子の脚部に取り外し容易な態様で取り付けることがあげられる。
【0021】
姿勢保持装置100は、使用者Pの胸部にパッド140が当接する構成であり、使用者Pの前傾動作および座位復帰動作を補助して連動する。具体的には、復帰機構を有するスライド機構部120の摺動によって、継手130、パッド140、およびフレーム150が、一体として、パッド140が胸部に当接する使用者Pの前傾動作および座位復帰動作に連動する。
【0022】
図2が示すとおり、支持板110の長手方向は、車椅子Wの座部に対して垂直である。このとき、スライド機構部120は、支持板110との接続部から継手130との接続部にかけて、上方に傾きを有する。傾きの角度は、水平方向に対して12度であることが好ましいが、限定されるものではない。12度という角度は、頸髄損傷者による座位から前傾姿勢に移行するときの胸部の軌道、および前傾姿勢から座位移行するときの胸部の軌道を実験により求め、各軌道を直線で近似すると12度となることを基にしている。
【0023】
スライド機構部120を水平方向に対して12度の角度をもって支持板110に接続することで、姿勢保持装置100の負荷を軽減することができる。姿勢保持装置100の負荷を軽減するために、脚金具200および平板300の使用の有無に関わらず、通常、支持板110は、その長手方向が使用者Pの座部に対して垂直になるように設置するべきである。
【0024】
本実施例においては、支持板110は、L型金具210を介して脚金具200に接続されているが、脚金具200は、ロックを解除することによって、L型金具210との接続部が直角に傾倒可能とする構造である。そのため、支持板110、スライド機構部120、継手130、パッド140およびフレーム150が、一体として、傾倒可能である。
【0025】
図3は、姿勢保持装置100の傾倒状態を表す側面図である。脚金具200は、テーブル脚部の折りたたみのために用いられる金具が好適であり、本実施例においては、タキゲン製造株式会社のテーブル金具「B−1847」を適用しているが、これに限定されるものではない。
【0026】
本実施例において、車椅子Wおよび姿勢保持装置100の使用者Pは、姿勢保持装置100が傾倒した状態で、側方から車椅子Wに移乗され、それから姿勢保持装置100を元の位置に戻すことで、図2の姿勢保持装置100の初期状態に至る。
本構成によって、姿勢保持装置100は、使用者Pの着座を妨げることがなく、着座の後の装着も容易である。
【0027】
スライド機構部120は、継手130を介して、中央にパッド140を有するフレーム150と接続される。継手130は、使用者Pの前傾方向に可動することが好ましく、本実施例においては、ダブルクレンザックを用いるが、これに限定されるものではない。ダブルクレンザックを用いることによって、容易に初期状態の調節および可動範囲の調整をすることができる。また、継手130は、フレーム150との接続に際して接続位置を調節できることが好ましく、本実施例においては、ねじ穴131および緊締具132を備える。接続位置を調整できることによって、パッド140を使用者の体格にあわせて配置することが可能となる。具体的には、姿勢保持装置100の使用者Pの身長が高い場合は、上方のねじ穴131を用いて緊締具132によって継手130とフレーム150とを接続する。反対に、姿勢保持装置100の使用者Pの身長が低い場合は、下方のねじ穴131を用いて緊締具132によって継手130とフレーム150とを接続する。継手130は、通常、その長手方向が使用者Pの座部に対して垂直になるように、スライド機構部120と接続する。
【0028】
図4は、パッド140の拡大図であり、フレーム150との接続状態を示している。パッド140は、使用者Pが前傾姿勢となるときに、使用者Pの胸骨に当接する。胸骨は丈夫であり、痛みも感じにくい部位であるため、使用者Pの前傾姿勢を支持することに適している。パッド140は、フレーム150に丸棒151および小型スライドレール152を介して接続され、上下動および回転が可能である。具体的には、パッド140は、丸棒151を軸として回転が可能であり、さらに小型スライドレール152によって上下動が可能である。小型スライドレール152は、図示しないバネを備える。パッド140は、使用者が前傾姿勢となっても、継手130およびフレーム150の傾倒に追随して、上下動および回転をしながら当接し、胸部から離れたときに、バネによって初期位置に戻る。
本構成によって、姿勢保持装置100は、使用者Pの前傾および座位復帰動作にパッド140が追随するため、スライド機構部120が直線移動をする機構であっても、使用者Pの胸部における前傾時と復帰時の軌道の差を許容することができる。
【0029】
姿勢保持装置100の装着時において、支持板110、スライド機構部120および継手130は、使用者Pの側方に左右一対に位置する。また、フレーム150は、継手130との接続部から、脇の下を経由し、人体の胸部の形状に沿って湾曲し、胸部の正面に至る構造である。フレーム150は、ジュエット型の体幹装具の上部を援用することができる。パッド140は、使用者Pが前傾するときに胸部に当接する部分であるものの、常時接触していなくてもよい。姿勢保持装置100は、装着時においては、使用者Pの身体に全く接触しない構成であってもよく、接触する部分があったとしても、使用者Pの身体にかかる負担はごく軽微である。
本構成によって、姿勢保持装置100は、座位において使用者Pの身体への接触を最小限にとどめ、圧迫や褥瘡発症等といった皮膚への負担を軽減することができる。
【0030】
図5は、継手130およびフレーム150の動作状態を表す側面図である。継手130のダブルクレンザックは、初期状態を、ダブルクレンザックの内部のスプリングによって調節することができる。使用者Pが前傾姿勢となると、パッド140は胸骨に押され、フレーム150が前方に移動しようとする。フレーム150は、継手130のダブルクレンザックの可動範囲内で傾倒するが、可動範囲を超えると、スライド機構部120に沿って前傾方向にスライドする。ダブルクレンザックの前傾方向の可動範囲は、約20度とすることが好ましい。
【0031】
図6は、スライド機構部120の拡大図である。スライド機構部120は、支持板110に接続する内側接続板121と、内側接続板121の外面に接続するスライドレール122と、スライドレール122の外面を直線的に摺動するブロック123と、ブロック123の外面に接続する外側接続板124と、を備える。外側接続板124は、継手130と接続する。内側接続板121は、端部にフック125が装着され、外側接続板124は、端部にアイプレート126が装着され、フック125は、先端が外側接続板124のスリット127から突出し、フック125と、アイプレート126は、バネ128によって連結する。
【0032】
スライドレール122、フック125、アイプレート126、およびバネ128は、一般的な市販品を使用することができるが、限定されるものではなく、以下はいずれも一例である。本実施例においては、スライドレール122は、株式会社ミスミの「SELBWZ12−200」を使用する。また、フック125は、スガツネ工業株式会社の「FC−50」を使用する。また、アイプレート126は、株式会社ハイロジックの「CH−551」を使用する。また、バネ128は、株式会社昌和バネ製作所の「HS200シリーズ」を使用する。
【0033】
使用者Pの前傾によってフレーム150が前方に移動するとき、フレーム150は、継手130を介して外側接続板124に接続しているため、外側接続板124は、スライドレール122の外面を直線的に摺動するブロック123とともに直線的に移動する。同時に、外側接続板124に装着されているアイプレート126も、前方に移動する。このとき、アイプレート126は、連結しているバネ128を引っ張る。バネ128と他方で連結し、先端が外側接続板124のスリット127から突出するフック125の位置は、支持板110に接続する内側接続板121に装着されているため、フレーム150の移動にかかわらず、変動しない。使用者の前傾姿勢によって蓄勢されたバネ128は、パッド140を介して、使用者Pの姿勢を元の座位に復帰させようとする弾性エネルギーを有する。この弾性エネルギーは、使用者Pの前傾姿勢を保持する効果もある。
【0034】
適切な弾性エネルギーを得るために、バネ128には適切な強度が求められる。バネ128の選定に必要なバネ定数は、バネの変位による荷重の釣り合いから、下記の式1が成り立つ。
【数1】
式1中、mは使用者Pの頭部および体幹部の重量、gは重力加速度、θは使用者Pの前傾姿勢の角度、kはバネ定数、xは釣り合った時点のバネの変位であり、角度は度数法による。左辺の第1項は、バネ128が姿勢保持装置100の左右に2個連結されているため、0.5倍とする。ここで、変位xは、スリット127の長さで釣り合うことを前提とする。一例として、スリット127が120mmである場合において、使用者Pが35度の前傾姿勢となったときに、バネ128が変位xの最大値であるスリット127の長さまで伸びて、頭部および体幹部の重量が22.4kgである使用者Pの前傾姿勢が釣り合う場合のばね定数kは、0.525N/mmである。
【0035】
本実施例においては、スライド機構部120の復帰機構の反発力は、バネ128の弾性によって発揮されるが、適切な反発力を発揮することが可能であれば、バネ128の弾性に限定されるものではない。例えば、自動制御可能である油圧シリンダーによって、適切な反発力を発揮する復帰機構であってもよい。また、使用者Pへの衝撃を和らげるために、バネとダンパーを併用することも可能である。
また、支持板110、スライド機構部の内側接続板121および外側接続板124と継手130はそれぞれ分離した部品として説明したが、一体成形によっても構成することができる。
本構成によって、姿勢保持装置100は、使用者Pの安定した前傾姿勢の保持および前傾姿勢からの復帰を補助し、転倒の防止に寄与し、両手を使った作業を容易にできることを可能とする。
【符号の説明】
【0036】
100…姿勢保持装置。
110…支持板。
120…スライド機構部、121…内側接続板、122…スライドレール、123…ブロック、124…外側接続板、125…フック、126…アイプレート、127…スリット、128…バネ。
130…継手、131…ねじ穴、132…緊締具。
140…パッド。
150…フレーム、151…丸棒、152…小型スライドレール。
200…脚金具。
210…L型金具。
300…平板。
P…使用者。
W…車椅子。

図1
図2
図3
図4
図5
図6