特許第6550041号(P6550041)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6550041
(24)【登録日】2019年7月5日
(45)【発行日】2019年7月24日
(54)【発明の名称】果汁飲料
(51)【国際特許分類】
   A23L 2/02 20060101AFI20190711BHJP
   A23L 2/62 20060101ALI20190711BHJP
   A23L 2/52 20060101ALI20190711BHJP
【FI】
   A23L2/02 B
   A23L2/00 L
   A23L2/52 101
【請求項の数】13
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2016-510321(P2016-510321)
(86)(22)【出願日】2015年3月23日
(86)【国際出願番号】JP2015058669
(87)【国際公開番号】WO2015146880
(87)【国際公開日】20151001
【審査請求日】2017年11月6日
(31)【優先権主張番号】特願2014-69791(P2014-69791)
(32)【優先日】2014年3月28日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】596126465
【氏名又は名称】アサヒ飲料株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110928
【弁理士】
【氏名又は名称】速水 進治
(72)【発明者】
【氏名】櫻井 崇
【審査官】 太田 雄三
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭62−104571(JP,A)
【文献】 特開平6−90722(JP,A)
【文献】 特開平6−335371(JP,A)
【文献】 特表平8−506733(JP,A)
【文献】 特開2012−60947(JP,A)
【文献】 特開2010−273658(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2011/0129591(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2012/0135124(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L 2/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
果汁と、
当該果汁飲料中に分散された果実由来の粒子と、を含む果汁飲料であって、
前記粒子のレーザー回折散乱式粒度分布測定法による体積基準粒度分布における平均粒径D50600μm以上1000μm以下であり、かつ、粒径D25が400μm以上900μm以下であり、
平均粒径D50に対する粒径D25の比が0.70以上であり、
当該果汁飲料の全量を100体積%としたとき、果実由来のパルプ成分の含有量が1.2体積%以上5.0体積%以下である果汁飲料。
【請求項2】
請求項1に記載の果汁飲料において、
前記粒子のレーザー回折散乱式粒度分布測定法による体積基準粒度分布における粒径D90が1200μm以下である果汁飲料。
【請求項3】
請求項1または2に記載の果汁飲料において、
レーザー回折散乱式粒度分布測定法による体積基準粒度分布における粒径250μm以下の粒子を実質的に含まない果汁飲料。
【請求項4】
請求項1乃至いずれか一項に記載の果汁飲料において、
前記果汁が柑橘系果汁である果汁飲料。
【請求項5】
請求項1乃至いずれか一項に記載の果汁飲料において、
前記果実が柑橘類である果汁飲料。
【請求項6】
請求項1乃至いずれか一項に記載の果汁飲料において、
粒径D90に対する粒径D50の比が0.60以上である果汁飲料。
【請求項7】
請求項1乃至いずれか一項に記載の果汁飲料において、
当該果汁飲料の全量を100質量%としたとき、前記果汁の含有量が1質量%以上25質量%以下である果汁飲料。
【請求項8】
請求項1乃至いずれか一項に記載の果汁飲料において、
精油をさらに含む果汁飲料。
【請求項9】
請求項に記載の果汁飲料において、
前記精油の含有量は、当該果汁飲料の全量を100体積%としたとき、0.007体積%以上1.5体積%以下である果汁飲料。
【請求項10】
請求項1乃至いずれか一項に記載の果汁飲料において、
ビタミン類をさらに含む果汁飲料。
【請求項11】
請求項10に記載の果汁飲料において、
前記ビタミン類の含有量は、当該果汁飲料の全量を100質量%としたとき、0.015質量%以上0.35質量%以下である果汁飲料。
【請求項12】
請求項1乃至11いずれか一項に記載の果汁飲料において、
炭酸ガスをさらに含む果汁飲料。
【請求項13】
請求項1乃至12いずれか一項に記載の果汁飲料において、
前記果実由来の粒子が前記果実由来の前記パルプ成分である果汁飲料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、果汁飲料、特に粒子入り炭酸果汁飲料に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、飲料に対する嗜好の多様化により、果実由来の粒子を含有する果汁飲料が提供されている。このような飲料は、果実由来の粒子によって、飲用したときに果実感が得られるという特徴がある。
【0003】
果実由来の粒子を含有する果汁飲料に関する従来技術として、たとえば以下のものがある。
特許文献1(特開2012−60947号公報)には、果実感が得られるとともに、喉越しの良い炭酸飲料を提供することが課題として記載されている。
かかる課題を解決するために、特許文献1に記載の粒子含有炭酸飲料では、粒径が3μm以上の果実由来の粒子を含み、粒径が811μm以上の果実由来の粒子を含まない構成を採用している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2012−60947号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の果汁飲料において、濃厚感を得るために果実由来の粒子の粒径を増大させると、果汁飲料が製造されてから消費者が喫飲するまでの間に、粒子の沈殿物が生じてしまうことがあった。このような場合、果汁飲料を振とうさせても沈殿物が崩れず、粒子を再分散することが難しかった。また、このような飲料は沈殿物がダマとなり、舌触りや喉越しが悪いものであった。
【0006】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、濃厚感と再分散性のバランスに優れる果汁飲料を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは鋭意検討を行った結果、果実由来の粒子の平均粒径を増大させつつ、粒度分布をシャープにすることで、粒子の再分散性が改善することを見出した。
【0008】
本発明はこのような知見に基づいて発案されたものである。
【0009】
本発明によれば、
果汁と、
当該果汁飲料中に分散された果実由来の粒子と、を含む果汁飲料であって、
前記粒子のレーザー回折散乱式粒度分布測定法による体積基準粒度分布における平均粒径D50600μm以上1000μm以下であり、かつ、粒径D25が400μm以上900μm以下であり、
平均粒径D50に対する粒径D25の比が0.70以上であり、
当該果汁飲料の全量を100体積%としたとき、果実由来のパルプ成分の含有量が1.2体積%以上5.0体積%以下である果汁飲料が提供される。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、濃厚感と再分散性のバランスに優れる果汁飲料を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態について説明する。
【0012】
<果汁飲料>
はじめに、本実施形態に係る果汁飲料について説明する。
本実施形態に係る果汁飲料は、果汁と、当該果汁飲料中に分散された果実由来の粒子とを含むものである。
そして、本実施形態に係る果汁飲料において、上記粒子のレーザー回折散乱式粒度分布測定法による体積基準粒度分布における平均粒径D50が500μm以上、好ましくは600μm以上、そして1000μm以下、好ましくは900μm以下、より好ましくは800μm以下である。
さらに、本実施形態に係る果汁飲料において、上記粒子のレーザー回折散乱式粒度分布測定法による体積基準粒度分布における粒径D25が400μm以上、好ましくは450μm以上、より好ましくは500μm以上、そして900μm以下、好ましくは850μm以下、より好ましくは800μm以下である。
本実施形態によれば、このような粒度分布を有する果実由来の粒子を果汁に含ませることにより、濃厚感と再分散性のバランスに優れた果汁飲料を提供することができる。
【0013】
ここで、本実施形態において、粒子の粒径はレーザー回折式粒子径分布測定装置によって測定した値である。レーザー回折式粒子径分布測定装置としては、例えば、島津製作所社製のSALD−2100を用いることができる。
ここで、果汁飲料が炭酸を含む場合は、果汁飲料から炭酸を抜いてから粒径を測定する。たとえば、超音波処理により果汁飲料から炭酸を抜くことができる。また、粒径Dxは、レーザー回折式粒子径分布測定装置を用いて測定した粒度分布において累積体積分布がX%となる粒子径を示す。
【0014】
このように、本実施形態においては、果実由来の粒子の平均粒径D50と、粒径D25とが、特定の条件を満たす構成となっている。
【0015】
ここで、特許文献1等に記載されている従来の果汁飲料は、発明が解決しようとする課題の項で述べたように、濃厚感を得るために果実由来の粒子の平均粒径を増大させると、果汁飲料が製造されてから消費者が喫飲するまでの間に、粒子の沈殿が生じてしまうことがあった。このような場合、果汁飲料を振とうさせても沈殿物が崩れず、粒子を再分散することが難しかった。また、このような飲料は沈殿物がダマとなり、舌触りや喉越しが悪いものであった。
この理由は必ずしも明らかではないが、従来の粒子入り果汁飲料は粒子の粒度分布が広いため、大粒径成分の隙間に小粒径成分が充填され、粒子の充填性が上がり、その結果、生じる沈殿物の緻密性が高くなるからだと考えられる。沈殿物の緻密性が高くなると、果汁飲料を振とうさせても沈殿物が崩れず、再分散することが難しいと考えられる。
【0016】
これに対し、本実施形態に係る果汁飲料は、果実由来の粒子の平均粒径D50と、粒径D25とが、特定の条件を満たす構成となっている。すなわち、本実施形態に係る果汁飲料は、従来の粒子入り果汁飲料に比べて、果実由来の粒子の平均粒径が大きく、かつ、粒度分布がシャープな構成となっている。こうすることで、たとえ粒子の沈殿物が生じたとしても、粒子の充填性が上がらないため、果汁飲料を振とうさせることにより、粒子が容易に再分散する。そして、粒子の再分散の結果、飲料中に粒子の沈殿物やダマがなくなるため、舌触りや喉越しが良く、飲み心地が良い果汁飲料を実現できる。
さらに、平均粒径D50および粒径D25が上記下限値以上であることにより、濃厚感に優れた果汁飲料を実現できる。
また、平均粒径D50および粒径D25が上記上限値以下であることにより、粒子の再分散性がより一層優れた果汁飲料を実現できる。
【0017】
本実施形態に係る果汁飲料において、平均粒径D50に対する粒径D25の比は0.70以上、好ましくは0.75以上、より好ましくは0.80以上である。
平均粒径D50に対する粒径D25の比が上記下限値以上であることにより、本実施形態に係る果汁飲料中の粒子の再分散性をより一層向上させることができる。
【0018】
本実施形態に係る果汁飲料において、粒径D90に対する粒径D50の比は0.60以上、好ましくは0.65以上、特に好ましくは0.70以上である。
粒径D90に対する粒径D50の比が上記下限値以上であることにより、本実施形態に係る果汁飲料中の粒子の再分散性をより一層向上させることができる。
【0019】
本実施形態に係る果汁飲料において、粒径D90に対する粒径D25の比は0.50以上、好ましくは0.55以上である。
粒径D90に対する粒径D25の比が上記下限値以上であることにより、本実施形態に係る果汁飲料中の粒子の再分散性をより一層向上させることができる。
【0020】
本実施形態に係る果汁飲料において、上記粒子のレーザー回折散乱式粒度分布測定法による体積基準粒度分布における粒径D90は好ましくは1200μm以下、より好ましくは1100μm以下、特に好ましくは1000μm以下である。
粒径D90が上記上限値以下であることにより、より優れた濃厚感が得られるとともに、舌触りや喉越しが良く、飲み心地がより一層優れた果汁飲料を実現することができる。
【0021】
本実施形態に係る果汁飲料は、上記粒子のレーザー回折散乱式粒度分布測定法による体積基準粒度分布における粒径250μm以下の粒子を実質的に含まないことが好ましい。
こうすることにより、生じる沈殿物の密度を低減でき、本実施形態に係る果汁飲料中の粒子の再分散性をより一層向上させることができる。
なお、「粒径250μm以下の粒子を実質的に含まない」とは、本発明の効果が損なわれない程度には含有してもよいことを意味する。たとえば、レーザー回折散乱式粒度分布測定法による体積基準粒度分布において、粒径250μm以下の粒子の積算値が1体積%以下、好ましくは0.5体積%以下である。
【0022】
以下、本実施形態に係る果汁飲料の各成分について説明する。
本実施形態に係る果汁飲料は、果汁と、果実由来の粒子とを含む。
ここで、果汁とは、たとえば、果実を破砕して搾汁し得られた汁である。
また、果実由来の粒子とは、たとえば、果実に破砕等の処理をすることにより得られるものである。具体的には果実が柑橘類の果実の場合、果皮、さのう、じょうのう、じょうのう膜等を破砕して得られるパルプ成分等が挙げられる。
本実施形態において、粒子には、繊維状のものも含まれるものとする。
【0023】
果汁および果実由来の粒子の原料となる果実の種類としては、特に限定されるものではないが、たとえば、マスカット、巨峰等のぶどう類;みかん、オレンジ、レモン、グレープフルーツ、ライム、マンダリン、ユズ、シークワーサー、タンジェリン、テンプルオレンジ、タンジェロ、カラマンシー、デコポン、ポンカン、イヨカン、バンペイユ等の柑橘類;イチゴ、ブルーベリー、ラズベリー、アサイー、キウイフルーツ、モモ、リンゴ、パイナップル、グアバ、バナナ、マンゴー、アセロラ、プルーン、パパイヤ、パッションフルーツ、ウメ、ナシ、アンズ、ライチ、メロン、スイカ、サクランボ、西洋ナシ、スモモ類等が挙げられる。これらの果実は、1種を単独で又は2種以上を混合して使用してもよい。これらの中でも柑橘類の果実が好ましい。すなわち、果汁および果実由来の粒子は、それぞれ柑橘系果汁および柑橘類由来の粒子が好ましい。
本実施形態に係る果汁飲料は、飲用したときに得られる果実感、味、香り等のバランスの観点から、果汁および果実由来の粒子の原料となる果実は同じ種類の果実が好ましい。
【0024】
本実施形態に係る果汁飲料は、パルプ成分を含む。このパルプ成分は、果皮、さのう、じょうのう、じょうのう膜等を破砕して得られるものが主なものである。本実施形態に係る果汁飲料において、飲用したときに得られる果実感、濃厚感、舌触りや喉越し等のバランスの観点から、当該果汁飲料の全量を100体積%としたとき、パルプ成分の含有量は1.2体積%以上、好ましくは1.4体積%以上であり、特に好ましくは1.5体積%以上である。
また、本実施形態に係る果汁飲料において、飲用したときに得られる果実感、濃厚感、舌触りや喉越し等のバランスの観点から、当該果汁飲料の全量を100体積%としたとき、パルプ成分の含有量は好ましくは5.0体積%以下であり、より好ましくは4.0体積%以下、特に好ましくは3.0体積%以下である。
なお、パルプ成分の含有量は、例えば、International Federation of Fruit Juice Procedures, Determination of centrifugable pulp (IFFJP Analyses No.60,1991)に記載の方法に従って測定することができる。
【0025】
本実施形態に係る果汁飲料において、飲用したときに得られる果実感、果汁感等のバランスの観点から、当該果汁飲料の全量を100質量%としたとき、果汁の含有量は、好ましくは1質量%以上25質量%以下であり、より好ましくは1質量%以上20質量%以下であり、さらに好ましくは1質量%以上15質量%以下である。
【0026】
本実施形態に係る果汁飲料は、さらに精油を含んでいてもよい。これにより、より優れた果汁感が得られる。ここで、精油とは、果実、果皮などから、採油した芳香性を有する揮発性液体である。
【0027】
本実施形態に係る果汁飲料において、飲用したときに得られる果実感、果汁感等のバランスの観点から、当該果汁飲料の全量を100体積%としたとき、精油の含有量は、好ましくは0.007体積%以上1.5体積%以下である。
【0028】
本実施形態に係る果汁飲料は、さらにビタミン類を含んでいてもよい。これにより、本実施形態に係る果汁飲料の経時的な褐変を抑制することができる。
上記ビタミン類は特に限定されるものではないが、ビタミンA、ビタミンB1、ビタミンB2、ビタミンC、ビタミンB6、ビオチン、ビタミンB12、ビタミンE、ニコチン酸、パントテン酸等を挙げることができる。これらのビタミンは1種類のみを用いてもよいし、2種類以上を混合して用いてもよい。
これらの中でも、果汁飲料の経時的な褐変を効果的に抑制できる観点から、ビタミンCが好ましい。
【0029】
本実施形態に係る果汁飲料において、果汁飲料の経時的な褐変の抑制に優れる観点から、当該果汁飲料の全量を100質量%としたとき、ビタミン類の含有量は、好ましくは0.015質量%以上0.35質量%以下である。
【0030】
本実施形態に係る果汁飲料は炭酸ガスをさらに含むこと好ましい。すなわち、本実施形態に係る果汁飲料は粒子入り炭酸果汁飲料であることが好ましい。
本実施形態に係る果汁飲料に含まれる炭酸ガス量は、特に限定されないが、たとえば、2.3vol以上3.3vol以下であることが好ましい。
【0031】
なお、本実施形態に係る果汁飲料には、以上に説明した成分の他にも、本発明の目的を損なわない範囲で、水、糖類、甘味料、酸味料、香料、色素成分、酸化防止剤、ミネラル分、栄養成分、機能性成分等を添加することもできる。
これら成分は、単独で用いてもよいし、2種類以上を適宜混合して用いてもよい。
【0032】
<果汁飲料の製造方法>
次に、本実施形態に係る果汁飲料の製造方法を説明する。
本実施形態に係る果汁飲料は、果実由来の粒子の平均粒径D50と、粒径D25とが、特定の条件を満たす構成となっている。本実施形態に係る果汁飲料は、あらかじめ果皮の破砕物と果汁とを混合し、さらにその混合物を摩砕することにより得ることができる。
【0033】
特許文献1等に記載されている従来の粒子入り果汁飲料の製造方法では、あらかじめ果実を破砕、摩砕等の処理により、果実由来の粒子を得た後、この粒子を果汁と混合することにより粒子入りの果汁飲料を製造していた。
しかし、このような方法では、本実施形態に係る果汁飲料のような、平均粒径が大きく粒度分布がシャープな果実由来の粒子を得ることが難しかった。
これに対し、本発明者は鋭意検討したところ、あらかじめ果皮の破砕物と果汁とを混合し、さらにその混合物を摩砕することにより、平均粒径が大きく粒度分布がシャープな果実由来の粒子を含む果汁飲料を得ることができることを見出した。
上記方法により本実施形態に係る果汁飲料が得られる理由は必ずしも明らかではないが、混合物にかかるせん断力が影響していると考えられる。
【0034】
以下、本実施形態に係る果汁飲料の製造方法の一例を示す。ただし、本実施形態に係る果汁飲料の製造方法は、これらの例に限定されない。
【0035】
はじめに、果物を洗浄後、搾汁し、ストレート果汁と果皮とに分離する。
搾汁方法としては特に限定されず、たとえば、市販の搾汁機を用いて搾汁することができる。
次いで、果実から果汁を搾り取った後の残った果皮について、破砕機を用いて破砕する。破砕機としては、たとえば、チョッパー等を用いることができる。
次いで、得られた果皮の破砕物とストレート果汁を混合し、たとえば、フィニッシャーにより裏ごしする。
裏ごしして得られた混合物に、濃縮果汁および精油を混合し、得られた混合物をたとえばグラインドミルにより摩砕することにより、本実施形態に係る果汁飲料が得られる。
【0036】
また、必要に応じて、前述したビタミン類、水、炭酸ガス、糖類、甘味料、酸味料、香料、色素成分、酸化防止剤、ミネラル分、栄養成分、機能性成分等の各種成分を添加してもよい。また、pHの調整や加熱殺菌をおこなってもよい。
【0037】
以上、本発明の実施形態について述べたが、これらは本発明の例示であり、上記以外の様々な構成を採用することもできる。
以下、本発明の参考形態の一例を示す。
<1>
果汁と、
当該果汁飲料中に分散された果実由来の粒子と、を含む果汁飲料であって、
前記粒子のレーザー回折散乱式粒度分布測定法による体積基準粒度分布における平均粒径D50が500μm以上1000μm以下であり、かつ、粒径D25が400μm以上900μm以下であり、
平均粒径D50に対する粒径D25の比が0.70以上であり、
当該果汁飲料の全量を100体積%としたとき、パルプ成分の含有量が1.2体積%以上である果汁飲料。
<2>
<1>に記載の果汁飲料において、
当該果汁飲料の全量を100体積%としたとき、パルプ成分の含有量が5.0体積%以下である果汁飲料。
<3>
<1>または<2>に記載の果汁飲料において、
前記粒子のレーザー回折散乱式粒度分布測定法による体積基準粒度分布における粒径D90が1200μm以下である果汁飲料。
<4>
<1>乃至<3>いずれか一つに記載の果汁飲料において、
レーザー回折散乱式粒度分布測定法による体積基準粒度分布における粒径250μm以下の粒子を実質的に含まない果汁飲料。
<5>
<1>乃至<4>いずれか一つに記載の果汁飲料において、
前記果汁が柑橘系果汁である果汁飲料。
<6>
<1>乃至<5>いずれか一つに記載の果汁飲料において、
前記果実が柑橘類である果汁飲料。
<7>
<1>乃至<6>いずれか一つに記載の果汁飲料において、
粒径D90に対する粒径D50の比が0.60以上である果汁飲料。
<8>
<1>乃至<7>いずれか一つに記載の果汁飲料において、
当該果汁飲料の全量を100質量%としたとき、前記果汁の含有量が1質量%以上25質量%以下である果汁飲料。
<9>
<1>乃至<8>いずれか一つに記載の果汁飲料において、
精油をさらに含む果汁飲料。
<10>
<9>に記載の果汁飲料において、
前記精油の含有量は、当該果汁飲料の全量を100体積%としたとき、0.007体積%以上1.5体積%以下である果汁飲料。
<11>
<1>乃至<10>いずれか一つに記載の果汁飲料において、
ビタミン類をさらに含む果汁飲料。
<12>
<11>に記載の果汁飲料において、
前記ビタミン類の含有量は、当該果汁飲料の全量を100質量%としたとき、0.015質量%以上0.35質量%以下である果汁飲料。
<13>
<1>乃至<12>いずれか一つに記載の果汁飲料において、
炭酸ガスをさらに含む果汁飲料。
<14>
<1>乃至<13>いずれか一つに記載の果汁飲料において、
前記果実由来の粒子が果実由来パルプ成分である果汁飲料
【実施例】
【0038】
以下、本発明を実施例および比較例により説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0039】
(実施例1)
レモン果汁として、CITRUS VITA社のコミニュティッドレモン果汁を使用した。コミニュティッドレモン果汁は以下の方法により製造したものである。
はじめに、レモンを洗浄し、搾汁機を用いてストレート果汁を搾汁した。
次いで、チョッパーを用いて残ったレモンの皮を破砕した。
次いで、得られたレモンの皮の破砕物と上記ストレート果汁を混合し、フィニッシャーを用いて裏ごしした。
裏ごしして得られた混合物に、レモン濃縮果汁、精油を混合した。その後、得られた混合溶液をグラインドミルにより摩砕し、次いで、30メッシュのストレーナーに通すことによりコミニュティッドレモン果汁を得た。
得られたコミニュティッドレモン果汁に対し、果汁の含有量が7質量%となるように純水を添加した。また、ビタミンCを0.2g/L(0.019質量%)となるように添加した。次いで、炭酸ガス量が2.6volとなるように炭酸ガスを溶解させた。その後、PETボトルに混合溶液を充填・密封し、65℃、10分の条件で加熱殺菌を行った。このようにして粒子入り炭酸レモン果汁飲料を作製した。なお、精油の含有量は0.053体積%であった。
【0040】
(実施例2)
実施例1で用いたコミニュティッドレモン果汁の粒度分布およびパルプ成分の含有量を調整することにより、得られる粒子入り炭酸レモン果汁飲料の粒度分布およびパルプ成分の含有量を表1に示す値になるように調整した以外は、実施例1と同様にして粒子入り炭酸レモン果汁飲料を作製した。
【0041】
(実施例3)
オレンジ果汁として、CITRUS VITA社のコミニュティッドオレンジ果汁を使用した。コミニュティッドオレンジ果汁は以下の方法により製造したものである。
はじめに、オレンジを洗浄し、搾汁機を用いてストレート果汁を搾汁した。
次いで、チョッパーを用いて残ったオレンジの皮を破砕した。
次いで、得られたオレンジの皮の破砕物と上記ストレート果汁を混合し、フィニッシャーを用いて裏ごしした。
裏ごしして得られた混合物に、オレンジ濃縮果汁、精油を混合した。その後、得られた混合溶液をグラインドミルにより摩砕し、次いで、30メッシュのストレーナーに通すことによりコミニュティッドオレンジ果汁を得た。
得られたコミニュティッドオレンジ果汁に対し、果汁の含有量が16質量%となるように純水を添加した。また、ビタミンCを0.5g/L(0.048質量%)となるように添加した。次いで、炭酸ガス量が2.6volとなるように炭酸ガスを溶解させた。その後、PETボトルに混合溶液を充填・密封し、65℃、10分の条件で加熱殺菌を行った。このようにして粒子入り炭酸オレンジ果汁飲料を作製した。なお、精油の含有量は0.072体積%であった。
【0042】
(実施例4〜6)
実施例3で用いたコミニュティッドオレンジ果汁の粒度分布およびパルプ成分の含有量を調整することにより、得られる粒子入り炭酸オレンジ果汁飲料の粒度分布およびパルプ成分の含有量を表1に示す値になるようにそれぞれ調整した以外は、実施例3と同様にして粒子入り炭酸オレンジ果汁飲料をそれぞれ作製した。
【0043】
(比較例1)
レモン果汁として、SAN−MIGUEL社のレモン混濁果汁(商品名:レモン混濁濃縮果汁)を使用した以外は実施例1と同様にして粒子入り炭酸レモン果汁飲料を作製した。
【0044】
(比較例2〜5)
実施例1で用いたコミニュティッドレモン果汁の粒度分布およびパルプ成分の含有量を調整することにより、得られる粒子入り炭酸レモン果汁飲料の粒度分布およびパルプ成分の含有量を表2に示す値になるようにそれぞれ調整した以外は、実施例1と同様にして粒子入り炭酸レモン果汁飲料を作製した。
【0045】
(比較例6〜8)
実施例3で用いたコミニュティッドオレンジ果汁の粒度分布およびパルプ成分の含有量を調整することにより、得られる粒子入り炭酸オレンジ果汁飲料の粒度分布およびパルプ成分の含有量を表2に示す値になるようにそれぞれ調整した以外は、実施例3と同様にして粒子入り炭酸オレンジ果汁飲料をそれぞれ作製した。
【0046】
(粒度分布測定)
粒子入り炭酸果汁飲料について、飲料に含有される粒子の粒度分布を島津製作所社製レーザー回折式粒子径分布測定装置SALD−2100により、体積基準で測定した。この粒度分布により平均粒径D50、粒径D25、粒径D90および粒径250μm以下の粒子の積算値をそれぞれ算出した。
なお、サンプルは、超音波により果汁飲料から炭酸ガスを抜く処理をおこなった後、純水で希釈し、次いで、振とうさせることにより粒子を十分に分散させた状態で測定に供した。
【0047】
(パルプ成分の含有量)
International Federation of Fruit Juice Procedures, Determination of centrifugable pulp (IFFJP Analyses No.60,1991)に記載の方法に従って、パルプ成分の含有量を測定した。
まず、粒子入り炭酸果汁飲料10mLを遠沈管に秤量し、遠心分離機を用いて、370×gで10分間遠心した。沈殿量の体積を測定し、パルプ成分の量とした。
【0048】
(再分散性の評価)
粒子入り炭酸果汁飲料を25℃で14日間静置した。次いで、静置した粒子入り炭酸果汁飲料を上下に5回振とうし、粒子の再分散性を評価した。評価は、目視で行い、○:沈殿物なし、×:沈殿物ありとした。
【0049】
(官能評価)
得られた粒子入り炭酸果汁飲料について、飲料の開発を担当するパネラーにより、上記粒子入り炭酸果汁飲料の濃厚感及び果汁感を、以下の基準にて評価した。
○:良好である
×:悪い
【0050】
(香味評価)
粒子入り炭酸果汁飲料の香味を評価した。評価基準は以下のとおりである。
○:良好である
×:悪い
【0051】
以上の結果を表1および2に示す。
【0052】
【表1】
【0053】
【表2】
【0054】
表1および2から分かるように、本実施形態に係る果汁飲料は、濃厚感と再分散性のバランスに優れていた。果汁感および香味にも優れるものであった。
【0055】
この出願は、2014年3月28日に出願された日本出願特願2014−069791号を基礎とする優先権を主張し、その開示の全てをここに取り込む。