(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0028】
[太陽電池モジュール]
図1は、本発明の一実施形態にかかる太陽電池モジュールの模式的断面図である。
図1に示す太陽電池モジュール200は、複数の太陽電池100を備える。太陽電池100は、配線材34によって他の太陽電池または外部電極と電気的に接続されている。これにより、複数の太陽電池100が直列または並列に接続されている。
【0029】
複数の太陽電池100の受光面側および裏面側には、それぞれ保護材201および202が配置されている。受光面側保護材201と裏面側保護材202との間には封止材203が設けられており、封止材203により、複数の太陽電池100が封止されている。
【0030】
太陽電池モジュールの作製においては、まず、複数の太陽電池100が配線材34を介して互いに接続された、太陽電池ストリングを作製する。この太陽電池ストリングが、封止材203を介して、受光面側保護材201および裏面側保護材202に挟持され、太陽電池モジュールが形成される。この際、
図1に示すように、受光面側保護材201上に、封止材203、太陽電池ストリング、封止材203および裏面側保護材202を順次積層して積層体とすることが好ましい。その後、上記積層体を所定条件で加熱することにより、封止材203を硬化させることが好ましい。そして、Alフレーム(不図示)等を取り付けることで太陽電池モジュール200を作製することができる。
【0031】
受光面側保護材201は、複数の太陽電池100のそれぞれの受光面側(光入射面側)に配置され、太陽電池モジュールの表面を保護することが好ましい。受光面側保護材としては、透光性および遮水性を有するガラス、透光性プラスチック等を用いることができる。裏面側保護材202は、複数の太陽電池100のそれぞれの裏面側に配置され、太陽電池モジュールの裏面を保護することが好ましい。裏面側保護材としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)等の樹脂フィルム、Al箔を樹脂フィルムでサンドイッチした構造を有する積層フィルム等を用いることができる。
【0032】
封止材203は、受光面側保護材201と裏面側保護材202との間で太陽電池ストリングを封止する。封止材としては、エチレン酢酸ビニル共重合樹脂(EVA)、エチレン−エチルアクリレート共重合樹脂(EEA)、ポリビニルブチラール樹脂(PVB)、シリコン、ウレタン、アクリル、エポキシ等の透光性の樹脂を用いることができる。
【0033】
以上のようにして太陽電池モジュール200を作製することができるが、太陽電池モジュールの基本的な構成および作製方法は、上記に限定されるものではない。
【0034】
図2は、太陽電池モジュールを構成する太陽電池および配線材の受光面側における模式的平面図である。
図3は、太陽電池モジュールを構成する太陽電池および配線材の裏面側における模式的平面図である。
図4は、
図2のX−X線断面図であり、太陽電池モジュールの一部分を模式的に示している。
図2〜
図4を参照しながら、太陽電池および配線材の基本的な構成について説明する。
【0035】
図4に模式的に示すように、太陽電池100は、光電変換部50の一方の主面(受光面)上に集電極7を備え、光電変換部50の他方の主面(裏面)上に裏面電極8を備える。集電極7は、光電変換部50側から順に、第一集電極71、第二集電極72を含む。裏面電極8は、光電変換部50側から順に、第一裏面電極81、第二裏面電極82を含む。本発明においては、
図4に示すように、第二集電極72が、光電変換部50側から順に、第二集電極の第一層721および第二集電極の第二層722の2層を有することが好ましい。また、第二裏面電極82が、光電変換部50側から順に、第二裏面電極の第一層821および第二裏面電極の第二層822の2層を有することが好ましい。
【0036】
図2に示すように、集電極7は、一定間隔を隔てて互いに平行に延びるように形成された複数のフィンガー電極7aと、フィンガー電極7aにより収集された電流を集めるバスバー電極7bとによって構成されている。一般的に、フィンガー電極7aに略垂直になるようにバスバー電極7bが形成される。受光面側では、
図2および
図4に示すように、集電極7のバスバー電極7bと配線材34とが接続されることが好ましい。集電極がフィンガー電極とバスバー電極とから構成される場合、少なくとも配線材が接続される領域の集電極(
図2ではバスバー電極7b)が上述の第一集電極と第二集電極とからなる構成であればよい。
【0037】
一方、裏面側では、
図3に示すように、裏面電極8が光電変換部の全面を覆い、裏面電極8と配線材34とが接続されることが好ましい。
【0038】
本発明においては、太陽電池100の集電極7と配線材34とが接続されている。
図4では、集電極7の第二集電極72が、配線材34と電気的に接続されている。また、太陽電池100の裏面電極8と他の配線材(不図示)とが接続されている。
図4では図示されていないが、裏面電極8の第二裏面電極82は、他の配線材と電気的に接続されている。
図4に示すように、配線材34は、芯材341と、芯材341の表面を覆う導電体342により形成されている。
【0039】
配線材の材料は特に制限されないが、芯材として銅箔、導電体として半田を用いることが好ましい。すなわち、配線材として、表面が半田層で被覆された銅箔を用いることが好ましい。半田層を銅箔の表面に形成することにより、銅箔表面の腐食を防止する効果が得られるとともに、集電極との電気的接続の役割を果たす。
【0040】
半田を構成する材料としては、Snを主成分として、Cu、Ni、Ag、Pbの中から選ばれた1種以上の元素を含む合金半田が好ましい。例えば、Snが96.5質量%、Agが3.0質量%、Cuが0.5質量%含まれる合金、Snが99〜99.5質量%、Cuが0.5〜1.0質量%含まれる合金、Agが1〜1.5質量%、Biが30〜50質量%含まれ(ただし50質量%は含まれない)、残りがSnである合金、Snが60質量%、Pbが40質量%含まれる合金、Cuが0.05〜2.0質量%、Niが0.001〜2.0質量%、残りがSnである合金等が挙げられる。その他、Snを主成分として、Cu、Ni、Ag、Bi、In等を含む合金も好ましい。
【0041】
半田層の厚みは、銅箔の酸化を防ぎ、集電極との電気的接続を担う必要があるため、60μm以下が好ましい。半田メッキ工程において厚みのバラツキを押さえ、コストを抑制する観点から、半田層の厚さは40μm程度がより好ましい。
【0042】
図4においては、半田付け等により、第二集電極72と配線材34の導電体342とを接触させることで、集電極7と配線材34の導電体342とを電気的に接続させている。その他、
図5に示すように、導電性微粒子を含有する導電性接着剤343を用いて、第二集電極72と配線材34の導電体342とを接着させることで、集電極7と配線材34とを電気的に接続させてもよい。コスト抑制や生産性を高めるという観点からは、導電性接着剤を用いず、第二集電極と配線材の導電体とを接触させる方法が好ましい。裏面電極と配線材との接続方法についても同様に、導電性接着剤を用いず、第二裏面電極と他の配線材の導電体とを接触させる方法が好ましい。
【0043】
導電性接着剤としては、例えば、導電性微粒子を樹脂ペーストに添加したものを用いることができる。樹脂ペーストとしては、例えば、エポキシ樹脂、イミド樹脂、フェノール樹脂等が用いられる。導電性微粒子としては、例えば、Ni、Cu、Zn、In等の金属粉が用いられる。金属粉以外に、炭素粉等の導電性の紛体や、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、ポリイミド樹脂、フェノール樹脂等からなる絶縁性微粒子の表面が金属等の導電性材料でコーティングされたものを、導電性微粒子として用いることもできる。
【0044】
本発明においては、太陽電池として、結晶シリコン系太陽電池を用いることが好ましい。以下、ヘテロ接合結晶シリコン太陽電池(ヘテロ接合太陽電池ともいう)を例として、太陽電池の構成をより詳細に説明する。ヘテロ接合太陽電池は、一導電型の単結晶シリコン基板の表面に、単結晶シリコンとはバンドギャップの異なるシリコン系薄膜を有することで、拡散電位が形成された結晶シリコン系太陽電池である。シリコン系薄膜としては、非晶質のものが好ましい。中でも、拡散電位を形成するための導電型非晶質シリコン系薄膜と結晶シリコン基板の間に、薄い真性の非晶質シリコン層を介在させたものは、変換効率の最も高い結晶シリコン太陽電池の形態の一つとして知られている。
【0045】
図6は、一実施形態にかかるヘテロ接合太陽電池の模式的断面図である。
図6に示す太陽電池101は、光電変換部50として、基板1の一方の面(光入射側の面、受光面)上に、導電型シリコン系薄膜3aおよび透明電極層6aをこの順に有する。基板1の他方の面(光反射側の面、裏面)上に、導電型シリコン系薄膜3bおよび透明電極層6bをこの順に有する。光電変換部50表面の透明電極層6a上には、集電極7が設けられており、透明電極層6b上には、裏面電極8が積層されている。太陽電池101は、基板1と導電型シリコン系薄膜3a,3bとの間に、真性シリコン系薄膜2a,2bを有することが好ましい。
【0046】
基板1は、一導電型単結晶シリコン基板によって形成されている。一般的に単結晶シリコン基板には、シリコン原子に電子を導入するための原子(例えばリン)を含有させたn型と、シリコン原子に正孔を導入する原子(例えばホウ素)を含有させたp型がある。すなわち、「一導電型」とは、n型又はp型のどちらか一方であることをいう。つまり、基板1は、n型またはp型のどちらか一方であることを意味する。本実施形態において、基板1は、n型単結晶シリコン基板であることが好ましい。
【0047】
基板1は、受光面および裏面にテクスチャ構造を有していることが好ましい。すなわち、基板1を基体として形成される光電変換部50もテクスチャ構造を備えることが好ましい。この場合、太陽電池101は、入射した光を光電変換部50に閉じ込めることができ、発電効率が向上する。
【0048】
シリコン系薄膜2a,3a,2b,3bの成膜方法としては、プラズマCVD法が好ましい。導電型シリコン系薄膜3a,3bは、一導電型または逆導電型のシリコン系薄膜である。「逆導電型」とは、「一導電型」と異なる導電型であることをいう。例えば、「一導電型」がn型である場合には、「逆導電型」はp型である。本実施形態では、導電型シリコン系薄膜3aは、逆導電型シリコン系薄膜であり、導電型シリコン系薄膜3bは、一導電型シリコン系薄膜であることが好ましい。シリコン系薄膜は、シリコン系薄膜であれば特に限定されないが、非晶質シリコン系薄膜を用いることが好ましい。本実施形態では、導電型シリコン系薄膜3aがp型非晶質シリコン系薄膜であり、導電型シリコン系薄膜3bがn型非晶質シリコン系薄膜であることが好ましい。
【0049】
真性シリコン系薄膜2a,2bとしては、シリコンと水素で構成されるi型水素化非晶質シリコンが好ましい。
【0050】
太陽電池101の光電変換部50は、導電型シリコン系薄膜3a,3b上に、透明電極層6a,6bを備えることが好ましい。透明電極層6a,6bの成膜方法は、特に限定されないが、例えばスパッタ法等が挙げられる。
【0051】
透明電極層6a,6bは、導電性酸化物を主成分とすることが好ましい。導電性酸化物としては、酸化インジウムを含んだインジウム系酸化物が好ましく、中でも酸化インジウム錫(ITO)を主成分とするものがより好ましい。ここで、「主成分とする」とは、含有量が50重量%よりも多いことを意味し、65重量%以上が好ましく、80重量%以上がより好ましい。透明電極層は、単層でもよく、複数の層からなる積層構造でもよい。透明電極層には、ドーピング剤を添加することができる。
【0052】
光入射側の透明電極層6aの膜厚は、透明性、導電性、および光反射低減の観点から、10nm以上140nm以下であることが好ましい。透明電極層6aの役割は、集電極7へのキャリアの輸送であり、そのために必要な導電性があればよく、膜厚は10nm以上であることが好ましい。膜厚を140nm以下にすることにより、透明電極層6aでの吸収ロスが小さく、透過率の低下に伴う光電変換効率の低下を抑制することができる。また、透明電極層6aの膜厚が上記範囲内であれば、透明電極層6a内のキャリア濃度上昇も防ぐことができるため、赤外域の透過率低下に伴う光電変換効率の低下も抑制される。
【0053】
光入射側の透明電極層6a上には、第一集電極71および第二集電極72からなる集電極7が形成されている。前述のように、第二集電極72は、太陽電池をモジュール化する際に、配線材と接続される電極である。第二集電極72と透明電極層6aとの間に第一集電極71を設けることにより、透明電極層6aと集電極との密着性が高められる。
【0054】
集電極は、太陽電池の高効率化(特に、低抵抗化による曲線因子の向上)の観点から、めっき法により形成されることが好ましい。めっき法により形成される金属層は、樹脂材料を含有するペーストを用いて形成される金属層に比べて導電率が高いためである。本発明においては、めっきの起点となる導電性下地層として第一集電極71、該導電性下地層上にめっき層として第二集電極72が形成されることが好ましい。例えば、第一集電極71は樹脂を含む層であり、第二集電極72はめっき層である。第一集電極71が、導電性材料および樹脂を含有する導電性ペーストを用いて形成される場合、スクリーン印刷等により、フィンガー電極やバスバー電極の形状に対応したパターンを容易に形成できる。また、第一集電極71として、樹脂を含む導電層を形成することにより、透明電極層上に直接めっき層を形成する場合に比べて、透明電極層と集電極との密着性が高められる。なお、第一集電極71および第二集電極72は、それぞれ1層でも2層以上でもよい。
【0055】
本発明においては、第二集電極72の表面粗さが、第一集電極71の表面粗さと同じであるか、第一集電極71の表面粗さより小さいことが好ましい。すなわち、第一集電極71の表面粗さをRa1、第二集電極72の表面粗さをRa2としたとき、Ra1≧Ra2を満たすことが好ましい。Ra1≧Ra2にすることにより、第一集電極と第二集電極との密着性を向上させることができる。中でも、密着性をより向上できる観点から、Ra1>Ra2を満たすことが好ましい。
【0056】
本明細書において、第二集電極の表面粗さRa2は、第二集電極の最表面層の表面粗さを意味する。例えば、第二集電極が、光電変換部側から第二集電極の第一層と第二集電極の第二層とを有する場合、第二集電極の第二層の表面粗さがRa2である。この際、第二集電極の第一層の表面粗さをRa2’とすると、集電極間の密着性をより向上させる観点から、Ra1≧Ra2’≧Ra2を満たすことが好ましく、Ra1>Ra2’を満たすことがより好ましく、Ra2’>Ra2を満たすことがさらに好ましく、Ra1>Ra2’ >Ra2を満たすことが特に好ましい。
【0057】
本発明においては、第二集電極の表面粗さRa2が1.0μm〜10.0μmであることが好ましい。Ra2を1.0μm以上10.0μm以下とすることにより、第二集電極と配線材との密着性を高めることができるため、第二集電極と配線材との接続性を向上させることができる。また、第一集電極の表面粗さRa1が1.0μm以上であることが好ましい。Ra1を上記範囲とすることにより、その上に形成する絶縁層や第二集電極等との密着性をより向上させることができ、セル特性等を向上させることができる。
【0058】
裏面側の透明電極層6b上には、第一裏面電極81および第二裏面電極82を含む裏面電極8が形成されている。集電極7と同様、裏面電極8は、めっき法により形成されることが好ましく、めっきの起点となる導電性下地層として第一裏面電極81、該導電性下地層上にめっき層として第二裏面電極82が形成されることが好ましい。第一裏面電極81および第二裏面電極82は、それぞれ1層でも2層以上でもよい。
【0059】
第一裏面電極の表面粗さをRa’1、第二裏面電極の表面粗さをRa’2としたとき、受光面側と同様に、Ra’1≧Ra’2を満たすことが好ましく、Ra’1>Ra’2を満たすことがより好ましい。第二裏面電極が第一層および第二層の2層を有する場合、第二裏面電極の第二層の表面粗さがRa’2である。第二裏面電極の第一層の表面粗さをRa’2’とすると、Ra’2’>Ra’2を満たすことが好ましく、Ra’1>Ra’2’≧Ra’2を満たすことがより好ましい。
【0060】
第二裏面電極の表面粗さRa’2は、1.0μm〜10.0μmを満たすことが好ましい。
【0061】
第一裏面電極81の製膜方法は、特に限定されず、スパッタ法や真空蒸着法等の物理気相堆積法や、スクリーン印刷等の印刷法等が適用可能である。第一裏面電極81としては、近赤外から赤外域の反射率が高く、かつ導電性や化学的安定性が高い材料を用いることが望ましい。このような特性を満たす材料としては、銀やアルミニウム等が挙げられる。
【0062】
第二裏面電極82が、光電変換部50側から、第二裏面電極の第一層821および第二裏面電極の第二層822の2層構造である場合、第二裏面電極の第一層821としては、電気抵抗を十分に抑制できる材料を用いることが望ましい。このような特性を満たす材料としては、銀や銅、亜鉛等が挙げられる。第二裏面電極の第一層の製膜方法は、めっき法が好ましいが、蒸着法等でもよい。
【0063】
第二裏面電極の第二層822としては、第二裏面電極の第一層の酸化やマイグレーションを抑制できる材料を用いることが望ましい。このような特性を満たす材料として、錫、ニッケル、チタン、クロム等が挙げられる。第二裏面電極の第二層822の製膜方法は、めっき法が好ましいが、スパッタ法、真空蒸着法等でもよい。
【0064】
本発明においては、第二集電極の最表面層と第二裏面電極の最表面層とは、同一の導電性材料を主成分とすることが好ましい。これにより、温度変化に対する太陽電池モジュールの信頼性を向上させることができる。上記のとおり、「主成分とする」とは、含有量が50重量%よりも多いことを意味し、65重量%以上が好ましく、80重量%以上がより好ましい。
【0065】
本発明においては、受光面側の第二集電極の最表面層と裏面側の第二裏面電極の最表面層とが同一の導電性材料を主成分としていればよい。例えば、第二集電極や第二裏面電極がそれぞれ1層である場合は、第二集電極と第二裏面電極とが同一の導電性材料を主成分としていればよい。また、第二集電極や第二裏面電極がそれぞれ2層以上の複数層を有する場合、少なくとも第二集電極の最表面層と第二裏面電極の最表面層とが、同一の導電性材料を主成分としていればよい。例えば、第二集電極および第二裏面電極がそれぞれ2層からなり、光電変換部側から順に第一層と第二層とを有する場合、第二集電極の第二層と第二裏面電極の第二層とが、同一の導電性材料を主成分としていればよい。
【0066】
集電極の最表面層および裏面電極の最表面層は、配線材との接続時に、熱による影響を受けやすい。また、太陽電池モジュールは屋根や地上等に設置されるため、氷点下になる場合や、60〜80度程度の高温になる場合があり、熱により影響を受けやすい。温度変化に対してセルの表面と裏面の膨張や収縮が異なると、配線材の集電極からの剥離が発生したり、セル割れが発生したりして、出力が低下するといった問題が生じうる。
【0067】
これに対し、受光面側の集電極の最表面層および裏面側の裏面電極の最表面層の主成分を同一の導電性材料とすることで、モジュールの信頼性を確保することができる。これは、セル表裏の材料の熱膨張係数を同程度にすることができ、配線材の剥離やセル割れを防ぐことができるためと考えられる。中でも、受光面側と裏面側の熱膨張係数をより近づけることができる観点から、第二集電極および第二裏面電極を構成する層の数が同じであり、第二集電極の第n層と第二裏面電極の第n層(nは自然数)とが同一の導電性材料を主成分とすることが好ましい。なお、第n層と第n+1層とは同一の導電性材料でなくてもよい。さらに、第一集電極と第一裏面電極とが同一の導電性材料を主成分とすることが好ましい。
【0068】
図7は、他の実施形態にかかるヘテロ接合太陽電池の模式的断面図である。
図7に示す太陽電池102のように、裏面電極80は、スクリーン印刷法、めっき法等により、パターン状に形成されていてもよい。この場合、集電極7と同一の材料および製造方法を用いて集電極7と同一の形状の裏面電極80を形成することで、集電極と配線材との密着性、および、裏面電極と配線材との密着性を高めることができるため、これらの電極と配線材との接続性を向上でき、モジュール特性を向上できると考えられる。
【0069】
以下、集電極および裏面電極の製造方法の好ましい形態について説明する。まず、集電極の製造方法の一形態として、第一集電極上にめっき法により第二集電極を形成する方法について説明する。ヘテロ接合太陽電池の場合、光電変換部の表面には、シリコン層や透明電極層等が形成されているため、光電変換部上の集電極が形成領域されない領域(以下、集電極非形成領域ともいう)をめっき液から保護するために、絶縁層で覆う必要がある。
【0070】
特に、例えばヘテロ接合太陽電池等、光電変換部の第一主面上の最表面層として透明電極層を有するものを用いる場合、透明電極層上における第一集電極非形成領域にレジストや絶縁層が製膜されている必要がある。
【0071】
絶縁層等で集電極非形成領域を覆う方法としては、開口部を有する絶縁層を光電変換部の表面上に形成し、該開口部に第一集電極を形成した後、その上に第二集電極を形成する方法、第一集電極を光電変換部の第一主面上のほぼ全面に形成した後、開口部を有するレジストを形成し、該開口部に第二集電極を形成する方法、第一集電極を形成後に、マスクを用いて開口部を有する絶縁層を第一集電極上に形成し、該開口部に第二集電極を形成する方法、第一集電極を形成後に、第一集電極形成領域と非形成領域を覆うように開口部を有する絶縁層を形成し、該開口部に第二集電極を形成する方法等が挙げられる。第二集電極が2層構成であり、いずれの層もめっき法で形成する場合も同様である。
【0072】
めっき法により集電極を形成する場合、第一集電極と第二集電極との間に開口部を有する絶縁層を形成し、該開口部を通じて第一集電極と第二集電極とが導通されることが好ましい。これにより、第一集電極と第二集電極との密着性がより向上すると考えられる。
【0073】
絶縁層に、第一集電極と第二集電極とを導通させるための開口部を形成する方法は特に制限されず、上述したレジストやマスクを用いる方法のほか、レーザー照射、機械的な孔開け、化学エッチング等の方法が採用できる。一実施形態では、第一集電極中の導電性材料として低融点材料を用い、該低融点材料を熱流動させることによって、その上に形成された絶縁層に開口部を形成する方法が挙げられる。
【0074】
第一集電極中の低融点材料の熱流動により開口を形成する方法としては、低融点材料を含有する第一集電極上に絶縁層を形成後、低融点材料の熱流動開始温度T
1以上に加熱(アニール)して第一集電極の表面形状に変化を生じさせ、その上に形成されている絶縁層に開口(き裂)を形成する方法;あるいは、低融点材料を含有する第一集電極上に絶縁層を形成する際にT
1以上に加熱することにより、低融点材料を熱流動させ、絶縁層の形成と同時に開口を形成する方法が挙げられる。
【0075】
以下、第一集電極中の低融点材料の熱流動を利用して、絶縁層に開口を形成する方法を図面に基づいて説明する。
【0076】
図8は、太陽電池の光電変換部50上への集電極7の形成方法の一実施形態を示す工程概念図である。この実施形態では、まず、光電変換部50が準備される(光電変換部準備工程、
図8(A))。
【0077】
光電変換部の一主面上に、低融点材料711を含む第一集電極71が形成される(第一集電極形成工程、
図8(B))。第一集電極71上には、絶縁層9が形成される(絶縁層形成工程、
図8(C)または(C)’)。本実施形態においては、絶縁層9は、第一集電極71上に加えて、光電変換部50の第一集電極71が形成されていない領域(第一集電極非形成領域)上に形成されている。
【0078】
図8(C)に示すように絶縁層9が形成された後、加熱によるアニール処理(加熱処理ともいう)が行われる(アニール工程、
図8(D))。アニール処理により、第一集電極71がアニール温度Taに加熱され、低融点材料が熱流動することによって表面形状が変化し、それに伴って第一集電極71上に形成された絶縁層9に変形が生じる。絶縁層9の変形は、典型的には、絶縁層への開口部9hの形成である。開口部9hは、例えば、き裂状に形成される。
【0079】
アニール処理は、絶縁層形成工程において行われてもよい。この場合、
図8(C)’に示すように、絶縁層の製膜とほぼ同時に開口部9hが形成される。
図8の破線矢印で示されるように、絶縁層形成工程においてアニール処理(
図8(C)’)を行い、絶縁層形成工程後に、さらにアニール処理(
図8(D))を行ってもよい。
【0080】
アニール処理により絶縁層9に開口部を形成した後に、めっき法により第二集電極72(第二集電極の第一層721および第二層722)が形成される(めっき工程、
図8(E)および
図8(F))。第二集電極が2層構成である場合、
図8(F)に示すように、第二集電極の第一層721上に、めっき法により第二集電極の第二層722が形成されることが好ましい。
図8(E)において、第一集電極71は絶縁層9により被覆されているが、絶縁層9に開口部9hが形成された部分では、第一集電極71が露出した状態である。そのため、第一集電極71がめっき液に曝されることとなり、この開口部9hを起点として金属の析出が可能となる。このようにして、本実施形態においては、第一集電極71と第二集電極72との間に開口部を有する絶縁層9が形成される。集電極7において、第二集電極72の一部は、第一集電極71に導通されている。
【0081】
ここで「一部が導通されている」とは、典型的には絶縁層に開口部が形成され、その開口部に第二集電極の材料が充填されていることによって、導通されている状態である。また、絶縁層の一部の膜厚が、数nm程度と非常に薄くなる(すなわち局所的に薄い膜厚の領域が形成される)ことによって、第二集電極72が第一集電極71に導通しているものも含む。例えば、第一集電極71の導電性材料がアルミニウム等の金属材料である場合、その表面に形成された酸化被膜(絶縁層に相当)を介して第一集電極71と第二集電極72との間が導通されている状態が挙げられる。
【0082】
めっき法により第二集電極を形成する場合、絶縁層は、めっき前に形成されればよく、
図8に示すように、第一集電極形成後かつめっき前に形成されてもよいし、
図9に示すように、光電変換部作製後かつ第一集電極形成前に形成されてもよい。
図9は、マスクにより第一集電極71に対応する部分を保護し、第一集電極71を形成する以外の部分に絶縁層9を形成する例を示している。
【0083】
(第一集電極)
第一集電極71としては、導電性を有するものを用いることができる。例えば、第二集電極をめっき法により形成する場合、第一集電極は、導電性下地層として機能し得る程度の導電性を有していればよい。本明細書においては、体積抵抗率が10
−2Ω・cm以下であれば導電性であると定義する。また、体積抵抗率が、10
2Ω・cm以上であれば絶縁性であると定義する。
【0084】
例えば、集電極が、第一集電極/第二集電極の第一層/第二集電極の第二層という構成である場合、後述のように、各層の製膜条件等によりRa2を所望の範囲に適宜設定しうると考えられており、第一集電極上の第二集電極の第一層の表面粗さRa2’は、第一集電極の表面粗さRa1に影響を及ぼされると考えられる。また同様に、第二集電極の第二層の表面粗さRa2もRa2’に影響を及ぼされると考えられる。したがって、Ra2を所定の範囲とするために、Ra1を調整することが好ましい。この際、Ra1は1.0μm以上が好ましく、3.0μm以上がより好ましく、6.0μm以上がさらに好ましい。また、Ra1は10.0μm以下が好ましく、8.0μm以下がより好ましい。
【0085】
第一集電極の表面粗さRa1を上記範囲にすることで、第二集電極の第二層の表面粗さRa2を容易に調整できるため、第二集電極と配線材の導電体との密着性を高めることができる。その結果、第二集電極と配線材の導電体との接続性をより向上でき、モジュール性能および信頼性をより向上させることができる。なお、第二集電極が1層である場合も同様である。
【0086】
第一集電極71の膜厚は、コスト的な観点から20μm以下が好ましく、15μm以下がより好ましい。一方、第一集電極71のライン抵抗を所望の範囲とする観点から、膜厚は0.5μm以上が好ましく、1μm以上がより好ましい。
【0087】
第一集電極71に含まれる導電性材料としては、特に限定されず、例えば銀、銅、アルミニウムなどを用いることができる。第二集電極をめっき法により形成し、第一集電極と第二集電極との間に絶縁層を形成する場合、導電性材料は、上述のように、熱流動開始温度T
1の低融点材料を含むことが好ましい。熱流動開始温度とは、加熱により材料が熱流動を生じ、低融点材料を含む層の表面形状が変化する温度であり、典型的には融点である。高分子材料やガラスでは、融点よりも低温で材料が軟化して熱流動を生じる場合がある。このような材料では、熱流動開始温度=軟化点と定義できる。軟化点とは、粘度が4.5×10
6Pa・sとなる温度である(ガラスの軟化点の定義に同じ)。
【0088】
低融点材料は、アニール処理において熱流動を生じ、第一集電極71の表面形状に変化を生じさせるものであることが好ましい。そのため、低融点材料の熱流動開始温度T
1は、アニール温度Taよりも低温であることが好ましい。また、本発明においては、光電変換部50の耐熱温度よりも低温のアニール温度Taでアニール処理が行われることが好ましい。したがって、低融点材料の熱流動開始温度T
1は、光電変換部の耐熱温度よりも低温であることが好ましい。
【0089】
光電変換部の耐熱温度とは、当該光電変換部を備える太陽電池(「セル」ともいう)あるいはセルを用いて作製した太陽電池モジュールの特性が不可逆的に低下する温度である。例えば、
図6に示すヘテロ接合太陽電池101では、光電変換部50を構成する単結晶シリコン基板1は、500℃以上の高温に加熱された場合でも特性変化を生じ難いが、透明電極層6や非晶質シリコン系薄膜2,3は250℃程度に加熱されると、熱劣化を生じたり、ドープ不純物の拡散を生じたりして、太陽電池特性の不可逆的な低下を生じる場合がある。そのため、ヘテロ接合太陽電池においては、第一集電極71は、熱流動開始温度T
1が250℃以下の低融点材料を含むことが好ましい。
【0090】
低融点材料の熱流動開始温度T
1の下限は特に限定されない。アニール処理時における第一集電極の表面形状の変化量を大きくして、絶縁層9に開口部9hを容易に形成する観点からは、第一集電極の形成工程において、低融点材料は熱流動を生じないことが好ましい。例えば、塗布や印刷により第一集電極が形成される場合は、乾燥のために加熱が行われることがある。この場合、低融点材料の熱流動開始温度T
1は、第一集電極の乾燥のための加熱温度よりも高温であることが好ましい。かかる観点から、低融点材料の熱流動開始温度T
1は、80℃以上が好ましく、100℃以上がより好ましい。
【0091】
低融点材料は、導電性を有する金属材料であることが望ましい。低融点材料が金属材料であれば、第一集電極の抵抗値を小さくできるため、電気めっきにより第二集電極が形成される場合に、第二集電極の膜厚の均一性を高めることができる。また、低融点材料が金属材料であれば、光電変換部50と集電極7との間の接触抵抗を低下させることも可能となる。
【0092】
低融点材料としては、低融点金属材料の単体もしくは合金、複数の低融点金属材料の混合物を好適に用いることができる。低融点金属材料としては、例えば、インジウムやビスマス、ガリウム等が挙げられる。
【0093】
第一集電極71は、導電性材料として、上記の低融点材料に加えて、低融点材料よりも相対的に高温の熱流動開始温度T
2を有する高融点材料を含有してもよい。第一集電極71が高融点材料を有することで、第一集電極と第二集電極とを効率よく導通させることができ、太陽電池の変換効率を向上させることができる。
【0094】
高融点材料の熱流動開始温度T
2は、アニール温度Taよりも高いことが好ましい。すなわち、第一集電極71が低融点材料および高融点材料を含有する場合、低融点材料の熱流動開始温度T
1、高融点材料の熱流動開始温度T
2、およびアニール処理におけるアニール温度Taは、T
1<Ta<T
2を満たすことが好ましい。高融点材料は、絶縁性材料であっても導電性材料であってもよいが、第一集電極の抵抗をより小さくする観点から導電性材料が好ましい。導電性の高融点材料としては、例えば、銀、アルミニウム、銅などの金属材料の単体もしくは、複数の金属材料を好ましく用いることができる。
【0095】
第一集電極71が低融点材料と高融点材料とを含有する場合、その含有比は、低融点材料粗大化による断線の抑止や、第一集電極の導電性、絶縁層への開口部の形成容易性(第二集電極の金属析出の起点数の増大)等の観点から、適宜に調整される。
【0096】
第一集電極71の材料として、例えば、金属粒子等の粒子状低融点材料が用いられる場合、アニール処理による絶縁層への開口の形成を容易とする観点から、低融点材料の粒径D
Lは、第一集電極の膜厚dの1/20以上であることが好ましく、1/10以上であることがより好ましい。低融点材料の粒径D
Lは、0.25μm以上が好ましく、0.5μm以上がより好ましい。また、第一集電極71が、スクリーン印刷等の印刷法により形成される場合、粒子の粒径は、スクリーン版のメッシュサイズ等に応じて適宜に設定され得る。
【0097】
第一集電極71の材料として上記のような低融点材料と高融点材料との組合せ以外に、材料の大きさ(例えば、粒径)等を調整することにより、アニール処理時の加熱による第一集電極の断線を抑制し、変換効率を向上させることも可能である。例えば、銀、銅、金等の高い融点を有する材料も、粒径が1μm以下の微粒子であれば、融点よりも低温の200℃程度あるいはそれ以下の温度T
1’で焼結ネッキング(微粒子の融着)を生じるため、本発明の「低融点材料」として用いることができる。このような焼結ネッキングを生じる材料は、焼結ネッキング開始温度T
1’以上に加熱されると、微粒子の外周部付近に変形が生じるため、第一集電極の表面形状を変化させ、絶縁層9に開口部を形成することができる。また、微粒子が焼結ネッキング開始温度T
1’以上に加熱された場合であっても、融点T
2’未満の温度であれば微粒子は固相状態を維持するため、
図10に示すような材料の粗大化による断線が生じ難い。すなわち、金属微粒子等の焼結ネッキングを生じる材料は、本発明における「低融点材料」でありながら、「高融点材料」としての側面も有しているといえる。
【0098】
このような焼結ネッキングを生じる材料では、焼結ネッキング開始温度T
1’=熱流動開始温度T
1と定義できる。
図11は、焼結ネッキング開始温度について説明するための図である。
図11(A)は、焼結前の粒子を模式的に示す平面図である。焼結前であることから、粒子は互いに点で接触している。
図11(B)および
図11(C)は、焼結が開始した後の粒子を、各粒子の中心を通る断面で切ったときの様子を模式的に示す断面図である。
図11(B)は焼結開始後(焼結初期段階)、
図11(C)は、
図11(B)から焼結が進行した状態を示している。
図11(B)において、粒子A(半径r
A)と粒子B(半径r
B)との粒界は長さa
ABの点線で示されている。
【0099】
焼結ネッキング開始温度T
1’は、r
Aとr
Bの大きい方の値max(r
A,r
B)と、粒界の長さa
ABとの比、a
AB/max(r
A,r
B)が、0.1以上となるときの温度で定義される。すなわち、少なくとも一対の粒子のa
AB/max(r
A,r
B)が0.1以上となる温度を焼結ネッキング開始温度という。なお、
図11(A)〜
図11(C)では単純化のために、粒子を球形として示しているが、粒子が球形でない場合は、粒界近傍における粒子の曲率半径を粒子の半径とみなす。また、粒界近傍における粒子の曲率半径が場所によって異なる場合は、測定点の中で最も大きな曲率半径を、その粒子の半径とみなす。例えば、
図12(A)に示すように、焼結を生じた一対の微粒子A,B間には、長さa
ABの粒界が形成されている。この場合、粒子Aの粒界近傍の形状は、点線で示された仮想円Aの弧で近似される。一方、粒子Bの粒界近傍は、一方が破線で示された仮想円B
1の弧で近似され、他方が実線で示された仮想円B
2の弧で近似される。
図12(B)に示されるように、r
B2>r
B1であるため、r
B2を粒子Bの半径r
Bとみなす。なお、上記の仮想円は、断面もしくは表面の観察像の白黒2値化処理により境界を定め、粒界近傍の境界の座標に基づいて最小二乗法により中心座標および半径を算出する方法により、決定できる。なお、上記の定義により焼結ネッキング開始温度を厳密に測定することが困難な場合は、微粒子を含有する第一集電極を形成し、加熱により絶縁層に開口部(き裂)が生じる温度を焼結ネッキング開始温度とみなすことができる。また、絶縁層形成時に加熱が行われる場合は、絶縁層形成時の加熱により開口部(き裂)が生じる温度を焼成ネッキング開始温度とみなすことができる。
【0100】
第一集電極の導電性材料としては、上記低融点材料を含有しないものを用いることもできる。例えば、第一集電極の導電性材料として、上記高融点材料のみを含有するものを用いることができる。第一集電極が低融点材料を含有しない場合であっても、上述のように、第一集電極を覆うように絶縁層を製膜した後、絶縁層に開口部を別途形成する等の方法により、第一集電極上の絶縁層に開口部を形成することができる。
【0101】
第一集電極の形成材料には、上記の導電性材料(例えば、低融点材料および/または高融点材料等)に加えて、絶縁性材料が含有されていてもよい。絶縁性材料を含有する第一集電極の形成材料としては、バインダー樹脂等を含有するペースト等を好ましく用いることができる。また、スクリーン印刷法により形成された第一集電極の導電性を十分向上させるためには、熱処理により第一集電極を硬化させることが望ましい。したがって、ペーストに含まれるバインダー樹脂としては、上記乾燥温度にて硬化させることができる材料を用いることが好ましく、エポキシ系樹脂、フェノール系樹脂、アクリル系樹脂等が適用可能である。
【0102】
第一集電極71は、インクジェット法、スクリーン印刷法、導線接着法、スプレー法、真空蒸着法、スパッタ法等の公知技術によって作製できる。第一集電極71は、櫛形等の所定形状にパターン化されていることが好ましい。パターン化された第一集電極の形成には、生産性の観点からスクリーン印刷法が適している。スクリーン印刷法では、導電性材料を含む印刷ペースト、および集電極のパターン形状に対応した開口パターンを有するスクリーン版を用いて、集電極パターンを印刷する方法が好ましく用いられる。
【0103】
印刷ペーストとして、溶剤を含む材料が用いられる場合には、溶剤を除去するための乾燥工程が必要となる。前述のごとく、この場合の乾燥温度は、光電変換部の耐熱温度よりも低いことが好ましい。例えば、光電変換部に透明電極層や非晶質シリコン系薄膜等を有する場合、乾燥温度は250℃以下であることが好ましく、200℃以下であることがより好ましい。また、低融点材料を含有する印刷ペーストを用いる場合、乾燥温度は、低融点材料の熱流動開始温度T
1よりも低温であることが好ましい。乾燥時間は、例えば5分間〜1時間程度で適宜に設定され得る。
【0104】
第一集電極に含まれる導電性材料の種類、粒子径、含有量等を適宜調整することにより、Ra1を所定の範囲に容易に設定できる。特に、導電性材料として低融点材料を用いる場合、低融点材料の粒子径や含有量等を適宜調整することにより、容易にRa1を上記範囲に設定することができる。Ra1を所定範囲にすることで、その上に形成する第二集電極との密着性を向上させることができる。
【0105】
例えば、第一集電極の形成に印刷ペーストを用いる場合、印刷ペーストの粘度は、20Pa・s以上500Pa・s以下が好ましい。印刷ペーストの粘度を上記範囲とすることで、第一集電極のRa1をより容易に所定の範囲にすることが可能となる。印刷ペーストの粘度を20Pa・s以上とすることにより、第一集電極の線幅に対する厚みの比(アスペクト比)を高くすることができ、遮光ロスやライン抵抗を軽減することができる。印刷ペーストの粘度は、50Pa・s以上であることがより好ましく、80Pa・s以上であることが特に好ましい。また、透明導電層とのコンタクトを良好にするために、印刷ペーストの粘度は、500Pa・s以下であることが好ましく、400Pa・s以下であることがより好ましく、300Pa・s以下であることが特に好ましい。
【0106】
第一集電極は、複数の層から構成されてもよい。例えば、光電変換部表面の透明電極層との接触抵抗が低い下層と、低融点材料を含む上層とからなる積層構造であってもよい。このような構造によれば、透明電極層との接触抵抗の低下に伴う太陽電池の曲線因子向上が期待できる。また、低融点材料含有層と高融点材料含有層との積層構造とすることにより、第一集電極のさらなる低抵抗化が期待できる。
【0107】
(絶縁層)
上述のとおり、めっき法により第二集電極72が形成される場合、第一集電極71上には、絶縁層9が形成されることが好ましい。ここで、第一集電極71が所定のパターン(例えば櫛形)に形成された場合、光電変換部50の表面上には、第一集電極71が形成されている第一集電極形成領域と、第一集電極71が形成されていない第一集電極非形成領域とが存在する。
【0108】
絶縁層9は、少なくとも第一集電極非形成領域に形成される。絶縁層9は、第一集電極非形成領域の全面に形成されることが好ましい。絶縁層が第一集電極非形成領域の全面に形成されている場合、めっき法により第二集電極が形成される際に、光電変換部や透明電極層をめっき液から化学的および電気的に保護することが可能となる。例えば、ヘテロ接合太陽電池のように光電変換部50の表面に透明電極層が形成されている場合は、透明電極層の表面に絶縁層が形成されることで、透明電極層とめっき液との接触が抑止され、透明電極層上への金属層(第二集電極)の析出を防ぐことができる。
【0109】
第一集電極71の形成後に絶縁層9が形成される場合、絶縁層9は、第一集電極形成領域上にも形成されていることが好ましい。すなわち、第一集電極を被覆するように絶縁層が形成されることにより、めっき液から光電変換部を保護することができる。また、生産性の観点からも、第一集電極形成領域と第一集電極非形成領域との全体に絶縁層が形成されることがより好ましい。
【0110】
一般的に、遮光損を低減させる観点から細線化した集電極が好ましく用いられる。この場合、第一集電極と第二集電極との間の密着性をより向上させることが望まれている。
【0111】
第一集電極と第二集電極との間に絶縁層を形成する場合、第一集電極のRa1を所定の範囲にすることにより、絶縁層の第二集電極側の表面に凹凸構造を容易に形成することができ、その上に形成される第二集電極との密着性が向上すると考えられる。その結果、集電極を細線化した際も、第一集電極と第二集電極の間の剥離防止効果が期待できる。これにより、歩留まりの向上(剥がれ防止による効果)や遮光損の低減(細線化による効果)などが期待できる。
【0112】
絶縁層9の材料としては、電気的に絶縁性を示す材料が用いられる。また、絶縁層9は、めっき液に対する化学的安定性を有する材料であることが望ましい。めっき液に対する化学的安定性が高い材料を用いることにより、第二集電極形成時のめっき工程中に、絶縁層が溶解しにくく、光電変換部表面へのダメージが生じにくくなる。また、めっき工程前において第一集電極非形成領域上に絶縁層9が形成される場合、絶縁層9は、光電変換部50との付着強度が大きいことが好ましい。例えば、ヘテロ接合太陽電池では、絶縁層9は、光電変換部50表面の透明電極層6aとの付着強度が大きいことが好ましい。透明電極層と絶縁層との付着強度を大きくすることにより、めっき工程中に、絶縁層が剥離しにくくなり、透明電極層上への金属の析出を防ぐことができる。
【0113】
絶縁層9には、光吸収が少ない材料を用いることが好ましい。絶縁層9は、光電変換部50の光入射面側に形成されるため、絶縁層による光吸収が小さければ、より多くの光を光電変換部へ取り込むことが可能となる。例えば、絶縁層9が透過率90%以上の十分な透明性を有する場合、絶縁層での光吸収による光学的な損失が小さく、第二集電極形成後に絶縁層を除去することなく、そのまま太陽電池として使用することができる。そのため、太陽電池の製造工程を単純化でき、生産性をより向上させることが可能となる。絶縁層9が除去されることなくそのまま太陽電池として使用される場合、絶縁層9は、透明性に加えて、十分な耐候性、および熱・湿度に対する安定性を有する材料を用いることがより望ましい。
【0114】
絶縁層の材料は、無機絶縁性材料でも有機絶縁性材料でもよいが、無機絶縁性材料が好ましい。無機絶縁性材料としては、めっき液耐性や透明性の観点から、酸化シリコン、窒化シリコン、酸化窒化シリコン、酸化アルミニウム、サイアロン(SiAlON)、酸化イットリウム、酸化マグネシウム、チタン酸バリウム、酸化サマリウム、タンタル酸バリウム、酸化タンタル、フッ化マグネシウム、酸化チタン、チタン酸ストロンチウム等が好ましく用いられる。中でも、電気的特性や透明電極層との密着性等の観点からは、酸化シリコン、窒化シリコン、酸化窒化シリコン、酸化アルミニウム、サイアロン(SiAlON)、酸化イットリウム、酸化マグネシウム、チタン酸バリウム、酸化サマリウム、タンタル酸バリウム、酸化タンタル、フッ化マグネシウム等が好ましく、屈折率を適宜に調整し得る観点からは、酸化シリコンや窒化シリコン等が特に好ましく用いられる。なお、これらの無機材料は、化学量論的(stoichiometric)組成を有するものに限定されず、酸素欠損等を含むものであってもよい。有機絶縁性材料としては、例えば、ポリエステル、エチレン酢酸ビニル共重合体、アクリル、エポキシ、ポリウレタン等の材料を用いることができる。
【0115】
絶縁層9の膜厚は、絶縁層の材料や形成方法に応じて適宜設定される。低融点材料を含む第一集電極を用いて、第一集電極上にも絶縁層を形成する場合、絶縁層9の膜厚は、アニール処理における第一集電極の表面形状の変化に伴って生じる界面の応力等によって、絶縁層に開口部が形成され得る程度に薄いことが好ましい。かかる観点から、絶縁層9の膜厚は、1000nm以下であることが好ましく、500nm以下であることがより好ましい。また、第一集電極非形成部における絶縁層9の光学特性や膜厚を適宜設定することで、光反射特性を改善し、太陽電池内部へ導入される光量を増加させ、変換効率をより向上させることが可能となる。このような効果を得るためには、絶縁層9の屈折率が、光電変換部50表面の屈折率よりも低いことが好ましい。また、絶縁層9に好適な反射防止特性を付与する観点から、膜厚は30nm〜250nmの範囲内で設定されることが好ましく、50nm〜250nmの範囲内で設定されることがより好ましい。なお、第一集電極上にも絶縁層を形成する場合、第一集電極形成領域上の絶縁層の膜厚と第一集電極非形成領域上の絶縁層の膜厚は異なっていてもよい。例えば、第一集電極形成領域では、アニール処理による開口部の形成を容易とする観点で絶縁層の膜厚が設定され、第一集電極非形成領域では、適宜の反射防止特性を有する光学膜厚となるように絶縁層の膜厚が設定されてもよい。
【0116】
一方、無機絶縁性材料をペースト等の形態で塗布することにより絶縁層を形成する場合、絶縁層の膜厚は、テクスチャの凹部や凸部が満たされるように1μm以上が好ましく、3μm以上がより好ましい。また、絶縁層の膜厚は、第一集電極の高さを超えないように、15μm以下が好ましく、10μm以下がより好ましい。
【0117】
ヘテロ接合太陽電池のように、光電変換部50の表面に透明電極層(一般には屈折率:1.9〜2.1程度)を有する場合、界面での光反射防止効果を高めて太陽電池内部へ導入される光量を増加させるために、絶縁層の屈折率は、空気(屈折率=1.0)と透明電極層との中間的な値であることが好ましい。また、太陽電池が封止されてモジュール化される場合、絶縁層の屈折率は、封止材と透明電極層の中間的な値であることが好ましい。かかる観点から、絶縁層9の屈折率は、例えば1.4〜1.9が好ましく、1.5〜1.8がより好ましく、1.55〜1.75がさらに好ましい。屈折率を上記範囲にすることで、めっき液に対する撥水性を抑制できることから、めっき層の膜厚、膜質等を容易に調整できると考えられる。
【0118】
絶縁層の屈折率は、絶縁層の材料、組成等により所望の範囲に調整され得る。例えば、酸化シリコンの場合は、酸素含有量を小さくすることにより、屈折率が高くなる。なお、本明細書における屈折率は、特に断りがない限り、波長550nmの光に対する屈折率であり、分光エリプソメトリーにより測定される値である。また、絶縁層の屈折率に応じて、反射防止特性が向上するように絶縁層の光学膜厚(屈折率×膜厚)が設定されることが好ましい。
【0119】
絶縁層は、公知の方法を用いて形成できる。例えば、酸化シリコンや窒化シリコン等の無機絶縁性材料の場合は、プラズマCVD法、スパッタ法等の乾式法が好ましく用いられる。また、有機絶縁性材料の場合は、スピンコート法、スクリーン印刷法等の湿式法が好ましく用いられる。これらの方法によれば、ピンホール等の欠陥が少なく、緻密な構造の膜を形成することが可能となる。
【0120】
中でも、
図6に示すヘテロ接合太陽電池のように、光電変換部50の表面にテクスチャ構造(凹凸構造)を有する場合、テクスチャの凹部や凸部に精度よく膜形成できる観点から、絶縁層はプラズマCVD法またはスクリーン印刷法により形成されることが好ましい。緻密性が高い絶縁層を用いることにより、めっき処理時の透明電極層へのダメージを低減できることに加えて、透明電極層上への金属の析出を防止することができる。このように緻密性が高い絶縁膜は、
図6のヘテロ接合太陽電池におけるシリコン系薄膜3aのように、光電変換部50内部の層に対しても、水や酸素などのバリア層として機能し得るため、太陽電池の長期信頼性の向上の効果も期待できる。
【0121】
第一集電極71と第二集電極72との間に絶縁層9が形成される場合、この絶縁層9は、第一集電極71と第二集電極72との付着力の向上にも寄与し得る。例えば、第一集電極としての銀層上に、めっき法により第二集電極として銅層が形成される場合、銀層と銅層との付着力は小さい。一方、酸化シリコン等の絶縁層上に銅層が形成されることにより、第二集電極の付着力が高められ、太陽電池の信頼性向上が期待される。
【0122】
上述のように、例えば、第一集電極71が低融点材料を含有する場合、第一集電極71上に絶縁層9が形成された後かつ第二集電極72が形成される前に、アニール処理が行われる。アニール処理時に、第一集電極71が低融点材料の熱流動開始温度T
1よりも高温に加熱され、低融点材料が流動状態となるために、第一集電極の表面形状が変化する。この変化に伴って、その上に形成される絶縁層9に開口部9hが形成される。したがって、その後のめっき工程において、第一集電極71の表面の一部が、めっき液に曝されて導通するため、
図8(E)に示すように、この導通部を起点として金属を析出させることが可能となる。
【0123】
アニール処理時におけるアニール温度(加熱温度)Taは、低融点材料の熱流動開始温度T
1よりも高温、すなわちT
1<Taであることが好ましい。アニール温度Taは、第一集電極の材料の組成や含有量等に応じて適宜設定され得る。また、前述のごとく、アニール温度Taは、光電変換部50の耐熱温度よりも低温であることが好ましい。
【0124】
なお、絶縁層への開口部の形成方法は、絶縁層形成後にアニール処理を行う方法に限定されず、
図8(C)’に示したように、基板を加熱しながら絶縁層が形成されることで、絶縁層の形成と略同時に開口部が形成されてもよい。絶縁層形成工程においてアニール処理を行う場合、絶縁層の材料および組成、製膜条件(製膜方法、基板温度、導入ガスの種類および導入量、製膜圧力、パワー密度等)を適宜調整することにより、絶縁層に開口部を形成することができる。
【0125】
(第二集電極)
第二集電極72は、第一集電極71を導電性下地層としてめっき法により形成することが好ましい。
図8のように、開口部9hを有する絶縁層9が形成された後、第一集電極形成領域の絶縁層9上に第二集電極72が形成される。
【0126】
第二集電極は、無電解めっき法、電解めっき法のいずれでも形成され得るが、生産性の観点から、電解めっき法が好適である。電解めっき法では、金属の析出速度を大きくすることができるため、第二集電極を短時間で形成することができる。
【0127】
第二集電極として析出させる金属は、めっき法で形成できる材料であれば特に限定されず、例えば、銅、ニッケル、錫、アルミニウム、クロム、銀、金、亜鉛、鉛、パラジウム等、あるいはこれらの混合物を用いることができる。
【0128】
第二集電極は、表面粗さRa2が1.0μm〜10.0μmであることが好ましい。第二集電極の表面粗さRa2を上記範囲とすることにより、太陽電池をモジュール化する際の、配線材の導電体と集電極との密着性を高めることができる。その結果、配線材の導電体と集電極との接続性を向上でき、モジュール初期性能および信頼性を向上させることが可能となる。Ra2は、1.5μm以上がより好ましく、3.0μm以上がさらに好ましい。また、配線材の導電体と集電極との接続性を向上させる観点から、Ra2は9.0μm以下がより好ましく、5.0μm以下がさらに好ましい。
【0129】
Ra2を上記範囲内に調整する方法としては、例えば、第二集電極の下に形成される層の表面の凹凸形状を調整する方法、第二集電極の形成条件を調整する方法、機械的研磨法等が挙げられる。中でも、太陽電池に与えるダメージをより抑制できる観点から、第二集電極の下に形成される層の表面の凹凸形状を調整する方法が好ましく、第二集電極の下に形成される層の表面の凹凸形状を調整し、かつ、第二集電極の形成条件を調整する方法がより好ましい。
【0130】
第二集電極の下に形成される層の表面凹凸を調整する方法としては、例えば、第一集電極の表面粗さRa1を調整する方法等が挙げられる。また、第一集電極と第二集電極との間に絶縁層を有する場合には、第一集電極上に形成する絶縁層の表面粗さ、膜厚、製膜条件、水との接触角等を調整することでも、Ra2を上記範囲内に調整することができる。
【0131】
第二集電極をめっき法により形成する場合、第二集電極の形成条件を調整する方法としては、例えば、めっき液の温度、めっき時間、めっき時の電流等の条件を調整し、膜厚を制御する方法等が挙げられる。
【0132】
第二集電極が、第一層および第二層の2層構成である場合、第二集電極の表面粗さ(第二集電極の第二層の表面粗さ)Ra2は、上述の第一集電極の場合と同様に、第二集電極の第一層の表面形状を調整することにより、適宜調整することができる。
【0133】
上述のように、第二集電極の表面粗さRa2は、その下に形成される第一集電極の表面粗さRa1や絶縁層の表面粗さの影響を受ける。したがって、Ra1を調整することにより、絶縁層の表面粗さやRa2を所定の範囲に調整することができる。前述のように、Ra1は1.0μm〜10.0μmが好ましく、3.0μm〜8.0μmがより好ましく、6.0μm〜8.0μmがさらに好ましい。
【0134】
図1〜
図4に示したように、太陽電池モジュール200においては、配線材34の導電体342と太陽電池100の集電極7が接続されることで、配線材34と太陽電池100とが接続される。
図2に示したように、受光面側の集電極7は、光を取り込むためにパターン状に形成されている。このようなパターン状の集電極上に配線材を接続させる場合、集電極の表面粗さが大きすぎたり、小さすぎたりすると、接続不良が生じやすくなるため、太陽電池モジュールの初期性能が低下したり、信頼性が低下したりするといった問題点が生じる。これに対し、本発明においては、所定の表面粗さを有する集電極を形成することにより、太陽電池モジュールを作製する際の、配線材の導電体と集電極との密着性を高めることができる。その結果、配線材の導電体と集電極との接続性を向上でき、モジュール初期性能および信頼性を向上させることが可能となる。
【0135】
太陽電池の動作時(発電時)には、電流は主として第二集電極を流れる。そのため、第二集電極での抵抗損を抑制する観点から、第二集電極のライン抵抗は、できる限り小さいことが好ましい。具体的には、第二集電極のライン抵抗は、1Ω/cm以下であることが好ましく、0.5Ω/cm以下であることがより好ましい。一方、第一集電極のライン抵抗は、電気めっきの際の下地層として機能し得る程度に小さければよく、例えば、5Ω/cm以下にすればよい。
【0136】
第二集電極をめっき法により形成する場合、めっき液としては、例えば硫酸銅、硫酸、および水を主成分とする公知の組成の酸性銅めっき液が使用可能であり、これに0.1〜10A/dm
2の電流を流すことにより、第二集電極である金属を析出させることができる。適切なめっき時間は、集電極の面積、電流密度、陰極電流効率、設定膜厚等に応じて適宜設定される。
【0137】
めっき液温度、電流密度、めっき時間等の条件を変更することで、金属析出のレートまたは膜質等の調整が可能であり、第二集電極の表面凹凸を調整することができる。例えば、めっき液の温度を20〜40℃、電流密度を3〜6A/dm
2、めっき時間を3〜6分程度とすることにより、析出する金属の膜質を調整でき、第二集電極の表面粗さRa2を容易に所定の範囲に調整できる。
【0138】
第二集電極が2層以上から構成される場合、少なくとも1層がめっき法により形成されることが好ましく、いずれもめっき法により形成されることがより好ましい。例えば、第二集電極の第一層をめっき法により形成し、第二集電極の第二層もめっき法で形成することが好ましく、第二集電極の第一層および第二層を電解めっき法で形成することがより好ましい。この際、第一層を形成するためのめっき液としては、上述の酸性銅めっき液を用い、第二層を形成するためのめっき液としては、別のめっき液、例えば、錫イオン、メタンスルホン酸を主成分とするアルキルスルホン酸を含んだ水溶液を用いることが好ましい。この場合、錫イオンは、メタンスルホン酸錫等のアルキルスルホン酸錫から供給されることが好ましい。
【0139】
錫イオン、メタンスルホン酸を主成分とするアルキルスルホン酸、添加剤および水を主成分とする公知の組成のめっき液に0.1〜10A/dm
2の電流を流すことにより、第二集電極の第二層である金属を析出させることができる。適切なめっき時間は、集電極の面積、電流密度、陰極電流効率、設定膜厚等に応じて適宜設定される。
【0140】
めっき液温度、電流密度、めっき時間等の条件を変更することで、金属析出のレートや膜質等の調整が可能であり、第二集電極の第二層の表面凹凸を調整することができる。例えば、第二集電極の第二層を形成するためのめっき液の温度を20〜40℃、電流を0.5〜4A/dm
2、めっき時間を1〜6分程度とすることにより、析出する金属の膜質を調整でき、第二集電極の第二層の表面粗さRa2を容易に所定の範囲に調整できる。
【0141】
めっき工程の後には、めっき液除去工程を設けて、基板の表面に残留しためっき液を除去することが好ましい。めっき液除去工程を設けることによって、アニール処理で形成された絶縁層9の開口部9h以外を起点として析出し得る金属を除去することができる。開口部9h以外を起点として析出する金属としては、例えば絶縁層9のピンホール等を起点とするものが挙げられる。めっき液除去工程によってこのような金属が除去されることによって、遮光損が低減され、太陽電池特性をより向上させることが可能となる。
【0142】
めっき工程の後には、絶縁層除去工程が行われてもよい。特に、絶縁層として光吸収の大きい材料が用いられる場合は、絶縁層の光吸収による太陽電池特性の低下を抑制するために、絶縁層除去工程が行われることが好ましい。絶縁層の除去方法は、絶縁層材料の特性に応じて適宜選択される。なお、絶縁層として光吸収の小さい材料が用いられる場合は、絶縁層除去工程が行われる必要はない。
【0143】
(裏面電極)
上述のとおり、第一裏面電極81の製膜方法としては、スパッタ法や真空蒸着法等の物理気相堆積法や、スクリーン印刷等の印刷法等が挙げられる。また、第二裏面電極82の製膜方法としては、めっき法、蒸着法等が挙げられる。第二裏面電極82が第一層821および第二層822の2層から構成される場合、第一層821の製膜方法としては、めっき法、蒸着法等が挙げられ、第二層822の製膜方法としては、スパッタ法や真空蒸着法、めっき法等が挙げられる。
【0144】
第二裏面電極が1層である場合、第一裏面電極/第二裏面電極の材料としては、銀/銅、アルミ/銅が好ましく、第二裏面電極が2層である場合、第一裏面電極/第二裏面電極の第一層/第二裏面電極の第二層の材料としては、銀/銅/ニッケル、銀/銅/錫、銀/銅/銀、アルミ/銅/ニッケル、アルミ/銅/錫が好ましく、銀/銅/錫がより好ましい。
【0145】
裏面電極の膜厚は、例えば、裏面側の全面に裏面電極を製膜する場合、低抵抗化の観点から、1200〜6000nmが好ましい。例えば、第一集電極/第二集電極の第一層/第二集電極の第二層が銀/銅/錫である裏面電極の場合、第一集電極の膜厚は8〜100nmが好ましく、第二集電極の第一層の膜厚は200〜1000nmが好ましく、第二集電極の第二層の膜厚は1000nm〜5000nmが好ましい。
【0146】
本発明においては、受光面側の第二集電極の最表面層と裏面側の第二裏面電極の最表面層とが、同一の導電性材料を主成分とすることが好ましい。第二集電極や第二裏面電極が複数層から構成される場合、少なくとも受光面側の最表面層および裏面側の最表面層の主成分が同一の導電性材料であればよい。
【0147】
太陽電池をモジュール化する際、配線材と太陽電池とを接続するために、加熱圧着により両者を接続する必要がある。この場合、集電極および裏面電極の熱膨張係数が大幅に異なっていると、接続後のセル反りに起因して、封止後にセル割れが発生する。また、温度変化に対して配線材が集電極や裏面電極から剥離し、モジュール性能が低下するといった問題が生じる。特に、半田付け等によって配線材の導電体と集電極、または配線材の導電体と裏面電極を接触させる方法では、導電性接着剤を用いた接続方法と比べて高温で接続する必要があるため、上記の問題が顕著である。これに対し、本発明のように受光面側の第二集電極の最表面層と裏面側の第二裏面電極の最表面層の主成分を同一の導電性材料にすることで、接続後のセル反り、温度変化に対する配線材の剥離を防止でき、モジュール性能の低下を抑制できる。
【0148】
特に、第二集電極および第二裏面電極の導電性材料を、配線材の導電体の材料と同一にすることが好ましい。この場合、集電極と配線材との密着性、および裏面電極と配線材との密着性がより向上し、集電極や裏面電極からの配線材の剥離を防止できる。なお、第二集電極や第二裏面電極が複数層から構成される場合、最表面層の導電性材料が、配線材の導電体の材料と同一であればよい。
【0149】
光電変換部の裏面のほぼ全面を覆うように裏面電極が形成されており、かつ配線材と裏面電極とが直接接続されている場合、熱により溶融した配線材の導電体が配線材の幅より拡がるため、接触面積が大きくなり、導電体が裏面電極に安定的に付着すると考えられる。導電性接着剤を介して配線材と裏面電極とが接続される場合も、導電性接着剤が熱により圧着されて拡がるため、導電性接着剤が裏面電極に安定的に付着すると考えられる。一方、裏面電極がパターン状である場合、上述の集電極と同様に、裏面電極の表面粗さを所定の範囲に調整することが好ましい。
【0150】
本発明においては、第二集電極の最表面層および第二裏面電極の最表面層の主成分が同一の導電性材料である限り、これらの製膜方法等は異なっていてもよい。例えば、受光面側の第一集電極としてスクリーン印刷で銀ペーストを印刷し、第一裏面電極としてスパッタ法で銀を製膜しておき、受光面側の第二集電極としてめっき法で銅を堆積し、第二裏面電極としてスパッタ法で銅を製膜してもよい。中でも、製造工程を簡略化できるとともに、第二集電極の最表面層の線膨張係数と第二裏面電極の最表面層の線膨張係数とを近づけることができるという観点から、第二集電極の最表面層および第二裏面電極の最表面層を同一の製法で形成することが好ましい。
【0151】
上述のとおり、太陽電池をモジュール化する際、第二集電極および第二裏面電極は、それぞれ配線材と接続されるため、配線材を接続する際の熱膨張や、接続後の冷却による収縮の影響を受けやすい。第二集電極の最表面層および第二裏面電極の最表面層を同一の製法で作製する場合には、容易に両者の膜厚を同程度にすることができ、それにより、熱膨張係数を近づけることができる。その結果、太陽電池の集電極からの配線材の剥離やセル割れを防ぐことができ、モジュールの信頼性を確保することができる。中でも、製造工程を大幅に簡略化できるため、第二集電極の最表面層および第二裏面電極の最表面層がいずれもめっき法により形成されることが好ましい。この場合、第二集電極の最表面層および第二裏面電極の最表面層は、それぞれ別の工程で形成されてもよいが、製造工程を簡略化できる観点から、同時に形成されることが好ましい。
【0152】
第二集電極および第二裏面電極が複数層から構成される場合、最表面層以外の層についても、第二集電極の第n層および第二裏面電極の第n層(nは自然数)が、いずれも同一の導電性材料を主成分として形成されることが好ましく、いずれもめっき法により形成されることが好ましい。例えば、第二集電極および第二裏面電極が各々2層により構成される場合、第二層同士の主成分を同一の導電性材料とするだけでなく、第一層同士の主成分も同一の導電性材料とすることで、第二集電極の第一層と第二裏面電極の第一層の熱膨張係数も同程度にすることができるため、配線材の熱圧着の際の影響をより防止することができる。
【0153】
以上、ヘテロ接合太陽電池を例に挙げて説明したが、ヘテロ接合太陽電池のように結晶シリコン基板を用いた太陽電池は、電流量が大きいため、一般に、透明電極層/集電極間の接触抵抗の損失による発電ロスが顕著となる傾向がある。これに対して、本発明では、第一集電極と第二集電極を有する集電極は、透明電極層との接触抵抗が低いため、接触抵抗に起因する発電ロスを低減することが可能となる。
【0154】
また、本発明は、ヘテロ接合太陽電池以外の結晶シリコン太陽電池や、GaAs等のシリコン以外の半導体基板が用いられる太陽電池、非晶質シリコン系薄膜や結晶質シリコン系薄膜のpin接合あるいはpn接合上に透明電極層が形成されたシリコン系薄膜太陽電池や、CIS,CIGS等の化合物半導体太陽電池、色素増感太陽電池や有機薄膜(導電性ポリマー)等の有機薄膜太陽電池のような各種の太陽電池に適用可能である。
【実施例】
【0155】
以下、
図6に示すヘテロ接合太陽電池に関する実施例を挙げて、本発明を具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0156】
[表面粗さ測定]
キーエンス社製のレーザー顕微鏡VK−8510を用いて、JIS B 0601:2001(ISO 4287:1997に対応)に基づいて、第一集電極および第二集電極のそれぞれの表面粗さRa1およびRa2を測定した。この際、第一集電極の表面粗さは、第二集電極を形成する前に測定した。また、第二集電極が2層構造である場合、第一層の表面粗さは、第二層を形成する前に測定した。
【0157】
[粘度測定]
印刷ペーストの粘度は、株式会社ブルックフィールド社製の回転式粘度計により、溶液温度25℃、回転速度10rpmで測定した。
【0158】
(比較例1)
比較例1のヘテロ接合太陽電池を、以下のようにして製造した。
【0159】
一導電型単結晶シリコン基板として、入射面の面方位が(100)で、厚みが200μmのn型単結晶シリコンウェハを用い、このシリコンウェハを2重量%のHF水溶液に3分間浸漬し、表面の酸化シリコン膜が除去された後、超純水によるリンスが2回行われた。このシリコン基板を、70℃に保持された5/15重量%のKOH/イソプロピルアルコール水溶液に15分間浸漬し、ウェハの表面をエッチングすることでテクスチャが形成された。その後に超純水によるリンスが2回行われた。原子間力顕微鏡(AFM パシフィックナノテクノロジー社製)により、ウェハの表面観察を行ったところ、ウェハの表面はエッチングが最も進行しており、(111)面が露出したピラミッド型のテクスチャが形成されていた。
【0160】
エッチング後のウェハがCVD装置へ導入され、その光入射側に、真性シリコン系薄膜2aとしてi型非晶質シリコンが5nmの膜厚で製膜された。i型非晶質シリコンの製膜条件は、基板温度:170℃、圧力:100Pa、SiH
4/H
2流量比:3/10、投入パワー密度:0.011W/cm
2であった。なお、本実施例における薄膜の膜厚は、ガラス基板上に同条件にて製膜された薄膜の膜厚を、分光エリプソメーター(商品名M2000、ジェー・エー・ウーラム社製)にて測定することにより求められた製膜速度から算出された値である。
【0161】
i型非晶質シリコン層2a上に、逆導電型シリコン系薄膜3aとしてp型非晶質シリコンが7nmの膜厚で製膜された。p型非晶質シリコン層3aの製膜条件は、基板温度が170℃、圧力60Pa、SiH
4/B
2H
6流量比が1/3、投入パワー密度が0.01W/cm
2であった。なお、上記でいうB
2H
6ガス流量は、H
2によりB
2H
6濃度が5000ppmまで希釈された希釈ガスの流量である。
【0162】
次にウェハの裏面側に、真性シリコン系薄膜2bとしてi型非晶質シリコン層が6nmの膜厚で製膜された。i型非晶質シリコン層2bの製膜条件は、上記のi型非晶質シリコン層2aの製膜条件と同様であった。i型非晶質シリコン層2b上に、一導電型シリコン系薄膜3bとしてn型非晶質シリコン層が4nmの膜厚で製膜された。n型非晶質シリコン層3bの製膜条件は、基板温度:170℃、圧力:60Pa、SiH
4/PH
3流量比:1/2、投入パワー密度:0.01W/cm
2であった。なお、上記でいうPH
3ガス流量は、H
2によりPH
3濃度が5000ppmまで希釈された希釈ガスの流量である。
【0163】
この上に透明電極層6aおよび6bとして、各々酸化インジウム錫(ITO、屈折率:1.9)が100nmの膜厚で製膜された。ターゲットとして酸化インジウムを用い、基板温度:室温、圧力:0.2Paのアルゴン雰囲気中で、0.5W/cm
2のパワー密度を印加して透明電極層の製膜が行われた。
【0164】
裏面側透明電極層6b上には、第一裏面電極81として、スパッタ法により銀が100nmの膜厚で形成された。
【0165】
光入射側透明電極層6a上には、第一集電極71が以下のように形成された。第一集電極71の形成には、導電性材料として低融点材料(粒径D
L=0.3〜0.7μmの銀微粒子)を含み、さらにバインダー樹脂としてエポキシ系樹脂を含む印刷ペースト(粘度=80Pa・s)が用いられた。この印刷ペーストを、集電極パターンに対応する開口幅(L=40μm)を有する#230メッシュ(開口幅:l=85μm)のスクリーン版を用いて、スクリーン印刷し、130℃で乾燥が行われた。
【0166】
第一集電極71が形成されたウェハが、CVD装置に投入され、絶縁層9として酸化シリコン層(屈折率:1.5)が、プラズマCVD法により100nmの厚みで光入射面側に形成された。絶縁層9の製膜条件は、基板温度:135℃、圧力133Pa、SiH
4/CO
2流量比:1/20、投入パワー密度:0.05W/cm
2(周波数13.56MHz)であった。製膜後、大気雰囲気において、180℃で20分間、アニール処理が行われた。
【0167】
以上のようにアニール処理までが行われた基板が、めっき槽に投入された。めっき液には、硫酸銅五水和物、硫酸、および塩化ナトリウムが、それぞれ120g/l、130g/l、および70mg/lの濃度となるように調製された溶液に、添加剤(上村工業製:品番ESY−2B、ESY−H、ESY−1A)が添加されたものが用いられた。このめっき液を用いて、温度25℃、電流密度4A/dm
2の条件でめっきが行われ、第一集電極71上の絶縁層上および第一裏面電極上81に、10μm程度の厚みでそれぞれ第二集電極の第一層721および第二裏面電極の第一層821として銅が均一に析出した。第一集電極が形成されていない領域への銅の析出はほとんど見られなかった。
【0168】
その後、基板が、別のめっき槽に投入された。めっき液には、錫(II)イオンが30g/l、メタンスルホン酸を主成分とするアルキルスルホン酸が1mol/lとなるように調製された溶液に、上記添加剤が添加されたものが用いられた。このめっき液を用いて、温度25℃、電流密度2A/dm
2の条件でめっきが行われ、第二集電極の第一層721および第二裏面電極の第一層上に、3μm程度の厚みでそれぞれ第二集電極の第二層722および第二裏面電極の第二層822として錫が均一に析出した。第一集電極が形成されていない領域への錫の析出はほとんど見られなかった。以上により、第一集電極71上に、第一層721および第二層722を有する第二集電極72が形成され、第一裏面電極81上に、第一層821および第二層822を有する第二裏面電極82が形成された。その結果、光入射側透明電極層6a上に、第一集電極71および第二集電極72を有する集電極7が形成され、裏面側透明電極層6b上に、第一裏面電極81および第二裏面電極82を有する裏面電極8が形成された。
【0169】
その後、レーザー加工機によりセル外周部のシリコンウェハが0.5mmの幅で除去され、ヘテロ接合太陽電池101が作製された。
【0170】
次に、太陽電池の集電極および裏面電極上に、合金半田層でめっきされた銅箔からなる配線材をそれぞれ配置した。合金半田層は、厚みが40μmであり、錫60質量%、鉛40質量%を含有していた。その後、配線材の上部より、250℃の熱風で3秒加熱することで、合金半田を溶融させ、集電極と配線材と接続し、裏面電極と配線材とを接続した。
【0171】
以上のように配線材を接続した太陽電池を用い、ガラス、EVA(封止材)、太陽電池、EVA、および裏面保護シートの順に積層させた。その後、大気圧での加熱圧着を5分間行い、EVA樹脂で太陽電池を封止した。続いて、150℃にて50分間保持して、EVA樹脂を架橋させて、太陽電池モジュールとした。
【0172】
(実施例1)
第一集電極71形成用印刷ペーストの粘度が表1に示すように変更された点を除いて、比較例1と同様にしてヘテロ接合太陽電池が作製され、モジュール化が行われた。
【0173】
(実施例2〜4、比較例2)
導電性材料として、低融点材料(粒径D
L=25μm、融点T
1=141℃のSnBi金属粉末)と、高融点材料(粒径D
H=2〜3μm、融点T
2=971℃の銀粉末)とを20:80の重量比で含み、さらにバインダー樹脂としてエポキシ系樹脂を含む印刷ペーストが、第一集電極71形成用印刷ペーストとして用いられた。印刷ペーストの粘度および低融点材料の粒径は、表1に示すとおりであった。この印刷ペーストが用いられた点を除いて、比較例1と同様にしてヘテロ接合太陽電池が作製され、モジュール化が行われた。
【0174】
(比較例3)
裏面電極として、第一裏面電極81と第二裏面電極の第一層821が形成され、第二裏面電極の第二層822が形成されなかった点を除いて、実施例2と同様にしてヘテロ接合太陽電池が作製され、モジュール化が行われた。
【0175】
(比較例4)
第一集電極形成用の印刷ペーストとして、低融点材料を含まない銀ペースト(すなわち金属材料粉末と銀粉末との比率を0:100としたもの)が用いられ、集電極パターンに対応する形状にスクリーン印刷した後に、180℃で乾燥が行われた点を除いて、比較例1と同様にして第一集電極(銀電極)71の形成までが行われた。また、比較例1と同様にして第一裏面電極(銀電極)81の形成までが行われた。その後、絶縁層形成工程、アニール工程、第二集電極形成工程、第二裏面電極形成工程のいずれも実施せず、銀電極を集電極7および裏面電極8とするヘテロ接合太陽電池が作製され、モジュール化が行われた。
【0176】
[セル特性測定およびモジュール初期性能測定]
各実施例および比較例のヘテロ接合太陽電池のセル特性およびモジュール初期性能の測定を行った。
【0177】
[剥離強度試験]
めっき前後の集電極の表面粗さと、配線材を接続した集電極の剥離強度との関係を検証した。具体的には、ガラス板上に、ITOからなる膜厚100nmの透明電極層を製膜し、その上に、実施例1〜4および比較例1〜4と同様の方法で集電極を形成した。この集電極の上に、幅:1.5mm、銅厚み150μm、合金半田厚み40μmの配線材(合金半田層でめっきされた銅箔)を接続した。その後、剥離強度試験器(IMADA社製 MX−2000N)を用いて、配線材(銅箔)の法線方向に沿って、40mm/分の速度で銅箔を引張り、銅箔が剥離したときの最大荷重を剥離強度とした。
【0178】
[温度サイクル試験]
JIS C 8917に従い、各実施例および比較例の太陽電池モジュールの温度サイクル試験を実施した。各太陽電池モジュールにおける温度サイクル試験前の出力を各々1とし、温度サイクル試験実施後の出力との比、すなわち、サイクル試験前後での保持率を算出した。
【0179】
上記の結果をまとめたものを表1に示す。なお、表1において、セル特性、モジュール初期性能および剥離強度は、比較例4を基準値(=1)とした相対値で示されている。
【0180】
【表1】
【0181】
実施例1〜4および比較例1〜3において、めっき工程により第二集電極として銅が析出したのは、アニール処理により第一集電極形成領域上の絶縁層に開口部が形成され、第一集電極がめっき液と接触(導通)し、この開口部を析出の起点として、めっきが行われたためである。
【0182】
表1から、第一集電極71形成用印刷ペーストの粘度または導電性材料として用いた低融点材料の粒径を変更することにより、第一集電極の表面粗さRa1、第二集電極の第一層の表面粗さRa2’、第二集電極の第二層の表面粗さRa2を変更できることがわかる。
【0183】
比較例1と実施例1の対比、実施例2と実施例3の対比、および実施例4と比較例2の対比から、印刷ペーストの粘度を高くすると、第一集電極の表面粗さRa1が大きくなり、それに伴い、第二集電極の第一層の表面粗さRa2’、第二集電極の第二層の表面粗さRa2も大きくなることがわかる。また、実施例2と実施例4の対比、および実施例3と比較例2の対比を各々比較することにより、低融点材料の粒径を大きくすると、第一集電極の表面粗さRa1、第二集電極の第一層の表面粗さRa2’、および第二集電極の第二層の表面粗さRa2を大きくできることがわかる。
【0184】
この結果から、第一集電極71形成用印刷ペーストの粘度または導電性材料の粒径等を変更することにより、第一集電極の表面粗さRa1、第二集電極の第一層の表面粗さRa2’、第二集電極の第二層の表面粗さRa2を制御できると考えられる。
【0185】
実施例1〜4および比較例2と比較例1との比較から、Ra1を1.0μm以上とすることによりセル特性が向上していることがわかる。これは、Ra1が1.0μm以上であれば、第一集電極と第二集電極の密着性が向上するためと考えられる。
【0186】
表1から、剥離強度とモジュール初期性能との間に相関がみられることがわかる。実施例1〜4、比較例1および比較例2は、比較例4に比べて剥離強度およびモジュール初期性能が向上していた。Ra2が1.0μm未満である比較例1に比べて、Ra2が1.0μm以上である実施例1〜4および比較例2は、剥離強度およびモジュール初期性能が向上していた。実施例1〜3では、Ra2が1.0μmから大きくなるにつれて剥離強度およびモジュール初期性能が向上していた。
【0187】
実施例3、実施例4および比較例2では、Ra2がさらに大きくなるにつれて剥離強度およびモジュール初期性能が減少する傾向がみられた。これは、Ra2が大きくなると、配線材の導電体(半田)が集電極の凸部付近にのみ付着し、導電体と集電極との付着面積が減少するためと考えられる。この結果から、Ra2が3.0〜5.0μm程度の場合に、剥離強度およびモジュール初期性能が特に向上すると考えられる。
【0188】
剥離強度は主に、第二集電極と配線材の導電体との接続性に影響を及ぼされていると考えられることから、Ra2を3.0〜5.0μm程度とすることにより、第二集電極と配線材の導電体との接続性が特に向上すると考えられる。また、Ra1を1.0μm以上とすることにより、第一集電極と第二集電極との密着性が向上し、剥離強度の向上に寄与すると考えられる。
【0189】
実施例1〜4および比較例1〜3の太陽電池モジュールは、銀ペースト電極からなる集電極を有する比較例4の太陽電池モジュールに比べて、温度サイクル試験後の保持率が高いことがわかる。特に、実施例1〜4の太陽電池モジュールは比較例1〜3の太陽電池モジュールと比べて、温度サイクル試験後の保持率が高いことがわかる。これは、実施例1〜4の太陽電池モジュールにおいては、比較例1〜3の太陽電池に比べて、第一集電極と第二集電極との密着強度が高いことに加え、第二集電極と配線材との接続性が高いため、温度サイクル試験における膜剥がれ等の不具合が抑制されたためと考えられる。
【0190】
各実施例の太陽電池モジュールにおいては、Ra1≧Ra2とすることで、第一集電極と第二集電極との密着強度を向上でき、さらに、Ra2を1.0μm以上10.0μm以下とすることで、第二集電極と配線材の導電体との接続性を向上できると考えられる。
【0191】
さらに、実施例2と比較例3とを比較すると、実施例2の方が、剥離強度や温度サイクル試験後の保持率が高いことがわかる。比較例3では、集電極の最表面層の主成分(錫)と、裏面電極の最表面層の主成分(銅)とが異なっているのに対し、実施例2では、集電極の最表面層の主成分(錫)と、裏面電極の最表面層の主成分(錫)とが同じである。そのため、実施例2では、温度変化に対する材料の膨張および収縮の程度が受光面側と裏面側とで同程度となり、密着性が向上して剥離が生じにくくなると考えられる。
【0192】
以上、実施例を用いて説明したように、本発明によれば、所定の集電極および裏面電極が形成された太陽電池を用いることにより、太陽電池モジュールの変換効率および信頼性を向上できる。