特許第6550045号(P6550045)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ フンダシオ、インスティトゥト、デ、レセルカ、ビオメディカ(イエレベ、バルセロナ)の特許一覧 ▶ インスティトゥーシオ カタラーナ デ レセルカ イ エストゥディス アバンサッツの特許一覧

特許6550045乳がんに由来する骨の転移がんの予後診断および処置のための方法
<>
  • 特許6550045-乳がんに由来する骨の転移がんの予後診断および処置のための方法 図000011
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6550045
(24)【登録日】2019年7月5日
(45)【発行日】2019年7月24日
(54)【発明の名称】乳がんに由来する骨の転移がんの予後診断および処置のための方法
(51)【国際特許分類】
   C12Q 1/6851 20180101AFI20190711BHJP
   C12N 15/12 20060101ALI20190711BHJP
   G01N 33/53 20060101ALI20190711BHJP
   G01N 33/574 20060101ALI20190711BHJP
   A61K 31/395 20060101ALI20190711BHJP
   A61K 31/381 20060101ALI20190711BHJP
   A61K 31/663 20060101ALI20190711BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20190711BHJP
   A61K 38/17 20060101ALI20190711BHJP
   A61P 35/04 20060101ALI20190711BHJP
【FI】
   C12Q1/6851 ZZNA
   C12N15/12
   G01N33/53 M
   G01N33/574 A
   A61K31/395
   A61K31/381
   A61K31/663
   A61K39/395 N
   A61K38/17
   A61P35/04
【請求項の数】20
【全頁数】88
(21)【出願番号】特願2016-521355(P2016-521355)
(86)(22)【出願日】2014年10月7日
(65)【公表番号】特表2016-539625(P2016-539625A)
(43)【公表日】2016年12月22日
(86)【国際出願番号】IB2014002675
(87)【国際公開番号】WO2015052583
(87)【国際公開日】20150416
【審査請求日】2017年10月10日
(31)【優先権主張番号】61/888,984
(32)【優先日】2013年10月9日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】514134284
【氏名又は名称】フンダシオ、インスティトゥト、デ、レセルカ、ビオメディカ(イエレベ、バルセロナ)
【氏名又は名称原語表記】FUNDACIO INSTITUT DE RECERCA BIOMEDICA (IRB BARCELONA)
(73)【特許権者】
【識別番号】514256243
【氏名又は名称】インスティトゥーシオ カタラーナ デ レセルカ イ エストゥディス アバンサッツ
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【弁護士】
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】ゴミス, ロジェル
(72)【発明者】
【氏名】プラネット, エバリスト
(72)【発明者】
【氏名】パブロビック, ミリカ
(72)【発明者】
【氏名】アルナル, アナ
(72)【発明者】
【氏名】タラゴナ, マリア
【審査官】 戸来 幸男
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2012/125828(WO,A2)
【文献】 欧州特許出願公開第02626431(EP,A2)
【文献】 J. Clin. Oncol.,2010年,vol.28, no.35,pp.5132-5139
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12Q 1/68−1/70
C12N 15/00−15/90
A61P 35/00−35/04
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS/
WPIDS(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
PubMed
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
MAF遺伝子の発現レベル、増幅またはコピー数を、HER2+乳がんに罹患している被験体における該がんの骨転移および/または再発および/または臨床転帰の指標とするインビトロでの方法であって、該方法は、
i)該被験体のサンプル中のMAF遺伝子の発現レベル、増幅またはコピー数を決定する工程、および
ii)工程i)において得られた発現レベル、増幅またはコピー数をMAF発現、増幅またはコピー数の所定の参照レベルと比較する工程
を含み、ここで、該MAF発現、増幅またはコピー数の所定の参照レベルと比較して上昇した該遺伝子の発現レベル、増幅またはコピー数は、骨転移および/または再発および/または不良な臨床転帰を起こす上昇したリスクを示す、インビトロでの方法。
【請求項2】
MAF遺伝子の発現レベル、増幅またはコピー数を、HER2+乳がんに罹患している被験体において骨転移を予防するおよび/または処置するため個別化治療を決定するための指標とするインビトロでの方法であって、該方法は、
i)該被験体のサンプル中のMAF遺伝子発現レベル、増幅またはコピー数を定量する工程、および
ii)i)において得られた発現レベル、増幅またはコピー数をMAF発現、増幅またはコピー数の所定の参照レベルと比較する工程
を含み、ここで、該MAF発現、増幅またはコピー数の所定の参照レベルと比較しての発現レベル、増幅またはコピー数の上昇は、該被験体に、骨転移の予防および/または処置を目指す該個別化治療が投与され得ることを示し、ここで、該MAF発現、増幅またはコピー数の所定の参照レベルと比較して該発現レベル、増幅またはコピー数が上昇しないことは、該被験体が、骨転移の予防および/または処置ならびに/あるいは骨分解の回避および/または予防を目指す該個別化治療を投与されるべきではないことを示す、インビトロでの方法。
【請求項3】
MAF遺伝子の発現レベル、増幅またはコピー数を、HER2+乳がんに罹患している被験体における骨転移のリスクを決定するための指標とするインビトロでの方法であって、該方法は、該被験体のサンプル中のMAF遺伝子の発現レベル、増幅またはコピー数を決定する工程を含み、ここで、平均値+1標準偏差より高い該遺伝子の発現レベル、増幅またはコピー数は、骨転移の上昇したリスクを示す、インビトロでの方法。
【請求項4】
前記骨転移が、溶骨性転移である、請求項1〜3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
MAF遺伝子の発現レベル、増幅またはコピー数を、HER2+乳がんを罹患している被験体において骨分解を予防するため個別化治療を決定するための指標とするインビトロでの方法であって、該方法は、
i)該被験体のサンプル中のMAF遺伝子の発現レベル、増幅またはコピー数を定量する工程、および
ii)工程(i)において得られた発現レベル、増幅またはコピー数をMAF遺伝子の発現、増幅またはコピー数の所定の参照レベルと比較する工程
を含み、ここで、該MAF遺伝子の発現、増幅またはコピー数の所定の参照レベルと比較しての該MAF遺伝子の発現レベル、増幅またはコピー数の上昇は、該被験体に、骨分解の予防を目指す該個別化治療が投与され得ることを示し、そしてここで、該MAF遺伝子の発現レベル、増幅またはコピー数が、該MAF遺伝子の発現、増幅またはコピー数の所定の参照レベルと比較して上昇していない場合、該被験体には、骨分解の予防を目指す個別化治療が投与されるべきではないことを示す、インビトロでの方法。
【請求項6】
前記治療が、ビスホスホネート、RANKLインヒビター、PTHインヒビター、PTHLHインヒビター、PRGアナログ、ラネル酸ストロンチウム、DKK−1インヒビター、METおよびVEGFR2の二重インヒビター、エストロゲンレセプター調節因子、カルシトニン、カテプシンKインヒビター、mTorインヒビター、Srcキナーゼインヒビター、CCR5アンタゴニスト、COX−2インヒビター、ラジウム−223、ならびに化学療法、ホルモン処置、免疫療法、放射線治療および手術が挙げられるがこれらに限定されない全身性処置からなる群より選択される因子を使用する治療である、請求項2または5に記載の方法。
【請求項7】
前記METおよびVEGFR2の二重インヒビターが、Cabozantinibであり、前記mTorインヒビターが、Everolimusであり、前記Srcキナーゼインヒビターが、ダサチニブであり、前記ラジウム−223が、アルファラディンであり、前記ビスホスホネートが、ゾレドロン酸またはクロドロネートであり、そして前記RANKLインヒビターが、RANKL特異的抗体、RANKL特異的ナノボディおよびオステオプロテゲリンからなる群より選択される、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記RANKL特異的抗体が、デノスマブであるか、または前記RANKL特異的ナノボディが、ALX−0141である、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記MAF遺伝子の発現レベル、増幅またはコピー数の決定が、該遺伝子によってコードされるタンパク質またはそのバリアントの発現レベル、増幅またはコピー数を定量する工程であって、ここで、タンパク質の該発現レベル、増幅またはコピー数が、ウエスタンブロット、ELISA、FISH、免疫組織化学またはタンパク質アレイによって定量される工程、あるいは前記遺伝子のメッセンジャーRNA(mRNA)または該mRNAのフラグメント、前記遺伝子の相補DNA(cDNA)または該cDNAのフラグメントを定量する工程を含む、請求項1〜8のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
前記発現レベル、増幅またはコピー数が、定量的ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)、またはDNA、RNAアレイ、またはヌクレオチドハイブリダイゼーション技法によって定量される、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記サンプルが、腫瘍組織サンプル、循環腫瘍細胞または循環腫瘍DNAである、請求項1〜10のいずれかに記載の方法。
【請求項12】
HER2+乳がんに罹患しており、かつ腫瘍組織サンプルにおいて、コントロールサンプルと比較して上昇したMAFレベルを有する被験体における骨転移の処置、阻害または予防において使用するための、骨分解を回避するかもしくは予防することができる薬剤を含む組成物であって、該被験体が上昇したc−MAFレベルを有すると判定されている、組成物
【請求項13】
前記薬剤が、ビスホスホネート、RANKLインヒビター、PTHインヒビター、PTHLHインヒビター、PRGアナログ、ラネル酸ストロンチウム、DKK−1インヒビター、METおよびVEGFR2の二重インヒビター、エストロゲンレセプター調節因子、カルシトニン、ラジウム−223、カテプシンKインヒビター、ならびにmTorインヒビター、Srcキナーゼインヒビター、CCR5アンタゴニスト、およびCOX−2インヒビターからなる群より選択される転移を処置、予防または阻害をする薬剤からなる群より選択される、請求項12に記載の組成物。
【請求項14】
前記METおよびVEGFR2の二重インヒビターが、Cabozantinibであるか、前記mTorインヒビターが、Everolimusであるか、前記Srcキナーゼインヒビターが、ダサチニブであるか、前記ラジウム−223が、アルファラディンであるか、前記ビスホスホネートが、ゾレドロン酸またはクロドロネートであるか、または前記RANKLインヒビターが、RANKL特異的抗体、RANKL特異的ナノボディおよびオステオプロテゲリンの群から選択される、請求項13に記載の組成物。
【請求項15】
前記RANKL特異的抗体が、デノスマブであるか、または前記RANKLナノボディが、ALX−0141である、請求項14に記載の組成物。
【請求項16】
HER2+乳がんに罹患している被験体のサンプルをタイプ分けするためのインビトロでの方法であって、該方法は:
該被験体のサンプル中のMAFの発現レベル、増幅またはコピー数を定量する工程;
MAFの定量された発現レベル、増幅またはコピー数をMAF発現の所定の参照レベルと比較することによって該サンプルをタイプ分けする工程;
を含み、ここで、該タイプ分けは、該被験体における骨転移のリスクに関する予後情報を提供する、インビトロでの方法。
【請求項17】
MAFの発現レベル、増幅またはコピー数を、HER2+乳がんに罹患している被験体をコホートに分類するのを決定するための指標とするインビトロでの方法であって、該方法は、a)該被験体のサンプル中のMAFの発現レベル、増幅またはコピー数を決定する工程;b)該サンプル中のMAFの該発現レベル、増幅またはコピー数をMAFの発現、増幅またはコピー数の所定の参照レベルと比較する工程;およびc)該サンプル中のMAFの該発現レベル、増幅またはコピー数に基づいて、該被験体をコホートに分類する工程を含む、方法。
【請求項18】
前記サンプル中のMAFの前記発現レベル、増幅またはコピー数が、前記所定の参照レベルと比べて上昇しており、前記コホートのメンバーが、骨転移の上昇したリスクを有すると分類される、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
MAF遺伝子の16q23または16q22−16q24染色体領域が、増幅されているか、または転座している、請求項1618のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
前記骨転移が、溶骨性転移である、請求項18に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
配列表への言及
本願とともに出願され、電子的に提出される配列表(「3190_011PC01_SequenceListing_ascii.txt」、48,430バイト、2014年10月7日に作成)の内容は、その全体が参照により本明細書中に援用される。
【0002】
発明の背景
発明の分野
一実施形態では、本発明は、原発腫瘍サンプルにおける、MAF遺伝子のレベル、16q23または16q22−24遺伝子座の増幅または転座の決定に基づく、ERBB2陽性(ヒト上皮レセプター2陽性、HER2+)乳がんにおける骨転移の予後診断に関する。同様に、一実施形態では、本発明は、ERBB2陽性(ヒト上皮レセプター2陽性、HER2+)乳がんを有する被験体において個別化治療(customized therapy)をデザインするための方法にも関し、その方法は、MAF遺伝子の発現レベル、および/または16q23もしくは16q22−24遺伝子座の増幅または転座を決定する工程を含む。最後に、別の実施形態では、本発明は、HER2+乳がんの転移、特に、骨転移の処置における治療薬としてのc−Mafインヒビターの使用に関する。
【背景技術】
【0003】
背景技術
乳がんは、世界中で2番目に一般的なタイプのがん(10.4%;肺がんの次位)および5番目に一般的ながんによる死亡原因(肺がん、胃がん、肝臓がんおよび結腸がんの次位)である。女性の中で、乳がんは、最も一般的ながんによる死亡原因である。2005年は、世界中で502,000人が乳がんによって死亡した(がんによる死亡数の7%;全死亡数のほぼ1%)。1970年代から、世界中の症例数は著しく増加しており、これは、西洋諸国における現代的な生活様式に一部起因する現象である。
【0004】
乳がんは、TNMシステムに従ってステージに分類される(American Joint Committee on Cancer.AJCC Cancer Staging Manual.6th ed.New York,NY:Springer,2002(その全体が参照により本明細書中に援用される)を参照のこと)。予後診断は、ステージ分類の結果と密接な関係があり、ステージ分類は、臨床試験と医療行為の両方において患者を処置に割り当てるためにも使用される。ステージに分類するための情報は、以下のとおりである:
・TX:原発腫瘍の評価が不可能である。T0:腫瘍のエビデンスが無い。Tis:上皮内癌腫(in situ carcinoma)で、浸潤無し。T1:腫瘍は、2cm以下である。T2:腫瘍は、2cmより大きいが5cm未満である。T3:腫瘍は、5cmより大きい。T4:胸壁もしくは皮膚において成長している任意のサイズの腫瘍、または炎症性乳がん。
・NX:近傍のリンパ節の評価が不可能である。N0:がんは、領域リンパ節に広がっていない。N1:がんは、1〜3つの腋窩リンパ節または1つの内乳腺リンパ節に広がっている。N2:がんは、4〜9つの腋窩リンパ節または複数の内乳腺リンパ節に広がっている。N3:以下のうちの1つに当てはまる:
・がんは、10個以上の腋窩リンパ節に広がっているか、またはがんは、鎖骨下リンパ節に広がっているか、またはがんは、鎖骨上リンパ節に広がっているか、またはがんは、腋窩リンパ節に波及していて、内乳腺リンパ節に広がっているか、またはがんは、4つ以上の腋窩リンパ節に波及していて、最小限のがんが、内乳腺リンパ節またはセンチネルリンパ節の生検材料に存在する。
・MX:遠隔拡散(転移)の存在の評価が不可能である。M0:遠隔拡散は無い。M1:鎖骨上リンパ節を含まない遠隔器官への広がりが生じている。
【0005】
固形腫瘍がんを有する患者のほとんどが転移後に死亡するという事実は、腫瘍を転移させる分子機序および細胞機序を理解することが極めて重要であることを意味している。最近の刊行物は、まだほとんど知られていない複雑な機序によってどのようにして転移が引き起こされるか、およびまた、どのようにして種々の転移細胞型が特定の器官に対する指向性を有するかを示してきた。これらの組織特異的な転移細胞は、それらを特定の器官に転移増殖させる(colonize)、獲得した一連の機能を有する。
【0006】
すべての細胞が、その表面上、細胞質内および細胞核内にレセプターを有する。ある特定の化学メッセンジャー(例えば、ホルモン)は、上記レセプターに結合し、これにより、細胞に変化が引き起こされる。乳がん細胞に影響し得る重要なレセプターは3つ存在する:エストロゲンレセプター(ER)、プロゲステロンレセプター(PR)およびHER2/neuである。これらのレセプターのいずれかを有する細胞を命名する目的で、そのレセプターが存在するときは、陽性の符号がそれに付けられ、存在しないときは、陰性の符号が付けられる:ER陽性(ER+)、ER陰性(ER−)、PR陽性(PR+)、PR陰性(PR−)、HER2陽性(HER2+)およびHER2陰性(HER2−)。レセプターの状態は、特定の処置、例えば、タモキシフェンまたはトラスツズマブを使用する適格性を決定するものであるので、そのレセプターの状態は、すべての乳がんに対して重大な評価になっている。
【0007】
教師なし遺伝子発現アレイプロファイリング(Unsupervised gene expression array profiling)は、内因性サブタイプ(例えば、ルミナルA、ルミナルB、HER2+/ER−および基底細胞様サブタイプ)の識別を通じて、乳がんの不均質性に対する生物学的エビデンスを提供した。
【0008】
HER2+がんは、種々のレベルの過剰発現を含め、遺伝子HER2を過剰発現する腫瘍と定義される。このサブグループは、すべてのタイプの乳がんのうちの30%を占める。これは疾患再発の増大および不良な予後診断と強く関連している。過剰発現はまた、卵巣がん、胃がんおよび攻撃形態の子宮がん(例えば、子宮漿液性子宮内膜がん(uterine serous endometrial cancer))において生じることが公知である。
【0009】
乳がんを処置する場合に要となるものは、腫瘍が限局性であるとき、実行可能なアジュバントホルモン療法(タモキシフェンまたはアロマターゼインヒビターを用いる)、化学療法および/または放射線治療を伴う、手術である。現在、手術後の処置に対する提案(補助療法)は、あるパターンに従う。世界的な多施設研究の実際の結果を議論する世界会議がSt.Gallen,Switzerlandで2年ごとに開催されるので、このパターンは、変更される可能性がある。同様に、上記パターンはまた、National Institute of Health(NIH)のコンセンサス基準に従って見直される。これらの基準に基づくと、リンパ節に転移を有しない患者の85〜90%超が、アジュバント全身療法を受ける候補になるだろう。HER2+患者は、HER2に対するアジュバント標的化療法に適格である。HER2は、モノクローナル抗体トラスツズマブ(ハーセプチンとして市販される)の標的である。トラスツズマブは、HER2が過剰発現されるがんにおいてのみ、有効である。HER2+レセプターおよびHER3レセプターの二量体化を阻害する代替のモノクローナル抗体(例えば、ペルツズマブ)、薬物と組み合わされた抗体、T−DM1および小さな阻害剤は、可能性のある、標的化治療選択肢である。HER2試験は、予後診断を評価するため、およびトラスツズマブ療法の適切さを決定するために、乳がん患者において行われる。トラスツズマブは高価であり、心臓毒性と関連付けられているため、トラスツズマブがHER2陽性個体に制限されることが重要である。HER2−腫瘍については、トラスツズマブの危険性は、利点を明らかに上回る。
【0010】
試験は、穿刺吸引、コア針生検、真空補助下胸部生検(vacuum-assisted breast biopsy)、または外科的切除のいずれかによって得られた生検サンプルについて通常行われる。免疫組織化学は、上記サンプル中に存在するHER2タンパク質の量を測定するために用いられる。あるいは、蛍光インサイチュハイブリダイゼーション(FISH)は、上記遺伝子の存在するコピー数を測定するために用いられ得る。
【0011】
現在、Oncotype DXなどのPCRアッセイまたはMammaPrintなどのマイクロアレイアッセイが、特定の遺伝子の発現に基づいて乳がん再発のリスクを予測し得る。2007年2月に、MammaPrintアッセイは、Food and Drug Administrationの公的認可を獲得した最初の乳がん指標になった。
【0012】
特許出願EP1961825−A1には、骨、肺、肝臓または脳への乳がん転移の発生率を予測するための方法が記載されており、その方法は、コントロールサンプルにおける対応する発現レベルと比べて、腫瘍組織サンプルにおいて1つまたは複数のマーカー(MAFを含む)の発現レベルを決定する工程を含む。しかしながら、この文書では、乳がん患者の生存時間の決定を可能にするいくつかの遺伝子を同時に決定することが要求されており、骨転移なしでの生存可能性の予測についての遺伝子シグネチャ(gene signature)の能力の相関関係は、統計学的に有意でなかった。
【0013】
特許出願US2011/0150979には、基底細胞様乳がんの予後を予測するための方法が記載されており、その方法は、FOXC1のレベルを検出する工程を含む。
【0014】
特許出願US2010/0210738は、トリプルネガティブ乳がんを有する被験体におけるがんを予後診断するための方法に関し、その方法は、サンプル中の、ランダムにアップレギュレートされているかまたはダウンレギュレートされている一連の遺伝子の発現レベルを検出する工程を含む。
【0015】
特許出願US2011/0130296は、トリプルネガティブ乳がんの診断および予後診断において有用なマーカー遺伝子の同定に関する。
トリプルネガティブ乳がんに罹患している被験体が転移を起こす確率の予測を可能にする新しいマーカーを同定する必要がある。新しい予後因子の同定は、最も適した処置の選択において指針となり得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【特許文献1】欧州特許出願公開第1961825号明細書
【特許文献2】米国特許出願公開2011/0150979号明細書
【特許文献3】米国特許出願公開2010/0210738号明細書
【特許文献4】米国特許出願公開2011/0130296号明細書
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0017】
1つの態様において、本発明は、Her2+乳がんに罹患している被験体における上記がんの骨転移を予測するためのインビトロでの方法に関し、その方法は、
i)上記被験体のサンプル中のMAF遺伝子の発現レベルを決定する工程、および
ii)工程i)において得られた発現レベルを参照値と比較する工程
を含み、ここで、上記参照値と比較して上昇した上記遺伝子の発現レベルは、骨転移を起こす上昇したリスクを示す。一部の実施形態では、上昇した発現レベルは、遺伝子座の増幅を通して行われる(covered)。一部の実施形態では、上昇した発現レベルは、遺伝子座の転移を通して行われる。
【0018】
別の態様において、本発明は、骨転移性HER2+乳がんに罹患している患者の臨床転帰を予測するためのインビトロでの方法に関し、その方法は、
i)上記被験体のサンプル中のMAF遺伝子の発現レベルを定量する工程、および
ii)工程i)において得られた発現レベルを参照値と比較する工程
を含み、ここで、上記参照値と比較して上昇した上記遺伝子の発現レベルは、不良な臨床転帰を示す。
【0019】
別の態様において、本発明は、HER2+乳がんに罹患している被験体のために個別化治療をデザインするためのインビトロでの方法に関し、その方法は、
i)上記被験体のサンプル中のMAF遺伝子発現レベルを定量する工程、および
ii)i)において得られた発現レベルを参照値と比較する工程
を含み、ここで、その発現レベルが、上記参照値と比較して上昇している場合、上記被験体は、骨転移の予防、阻害および/または処置を目指す治療を受けるのに適格である(is susceptible to receive a therapy)。この方法の特定の態様において、被験体は、その後、骨転移を予防する、阻害するおよび/または処置する少なくとも1つの治療薬を投与される。発現レベルが、上記参照値と比較して高くない場合、上記被験体は、骨転移の予防、阻害および/または処置を目指す治療を受けるのに適格ではない。この方法の特定の態様において、被験体は、その後、骨転移を予防する、阻害するおよび/または処置する少なくとも1つの治療薬を投与されない。
【0020】
別の態様において、本発明は、乳がん、例えば、HER2+乳がんに罹患している被験体における骨転移のリスクを決定するための方法に関し、その方法は、上記被験体のサンプル中のMAF遺伝子の発現レベルを決定する工程を含み、ここで、平均値+1標準偏差より高い上記遺伝子の発現レベルは、早期の骨転移の上昇したリスクを示す。この方法の特定の態様において、被験体は、その後、骨転移を予防するかまたは阻害する少なくとも1つの治療薬を投与される。
【0021】
別の態様において、本発明は、骨転移を伴うHER2+乳がんを有する被験体のために個別化治療をデザインするためのインビトロでの方法に関し、その方法は、
i)上記被験体の骨転移サンプル中のMAF遺伝子発現レベルを定量する工程、および
ii)工程(i)において得られた発現レベルを参照値と比較する工程
を含み、ここで、MAF遺伝子発現レベルが、上記参照値と比較して上昇している場合、上記被験体は、骨分解を予防するための治療を受けるのに適格である。この方法の特定の態様において、被験体は、その後、骨転移を予防する、阻害するおよび/または処置する少なくとも1つの治療薬を投与される。MAF遺伝子発現レベルが、上記参照値と比較して上昇していない場合、上記被験体は、骨分解を予防するための治療を受けるのに適格ではない。この方法の特定の態様において、被験体は、その後、骨転移を予防する、阻害するおよび/または処置する少なくとも1つの治療薬を投与されない。
【0022】
別の態様において、本発明は、HER2+乳がんに罹患している被験体における上記がんの骨転移を予測するためのインビトロでの方法に関し、その方法は、上記被験体のサンプル中のMAF遺伝子が、参照遺伝子コピー数と比べて増幅されているかを決定する工程を含み、ここで、上記参照遺伝子コピー数と比較したときのMAF遺伝子の増幅は、骨転移を起こす上昇したリスクを示す。この方法の特定の態様において、被験体は、その後、骨転移を予防するかまたは阻害する少なくとも1つの治療薬を投与される。
【0023】
別の態様において、本発明は、乳がん、例えば、HER2+乳がんに罹患している被験体における上記がんの骨転移を予測するためのインビトロでの方法に関し、その方法は、上記被験体のサンプル中のMAF遺伝子が、転座しているかを決定する工程を含み、ここで、MAF遺伝子の転座は、骨転移を起こす上昇したリスクを示す。この方法の特定の態様において、被験体は、その後、骨転移を予防するかまたは阻害する少なくとも1つの治療薬を投与される。
【0024】
別の態様において、本発明は、HER2+乳がんに罹患している患者の臨床転帰を予測するためのインビトロでの方法に関し、その方法は、上記被験体のサンプル中のMAF遺伝子が、参照遺伝子コピー数と比べて増幅されているかを決定する工程を含み、ここで、上記参照遺伝子コピー数と比較したときのMAF遺伝子の増幅は、不良な臨床転帰を示す。この方法の特定の態様において、被験体は、その後、骨転移を予防する、阻害するおよび/または処置する少なくとも1つの治療薬を投与される。そのような増幅が観察されない場合、被験体は、その後、骨転移を予防する、阻害するおよび/または処置する少なくとも1つの治療薬を投与されない。別の実施形態において、本発明は、HER2+乳がんに罹患している患者の臨床転帰を予測するためのインビトロでの方法に関し、その方法は、上記被験体のサンプル中のMAF遺伝子が、転座しているかを決定する工程を含み、ここで、MAF遺伝子の転座(すなわち、t(14,16))は、不良な臨床転帰を示す。いくつかの実施形態において、本発明は、MAFの増幅または転座を有する患者のために個別化治療をデザインすることに関する。いくつかの実施形態において、個別化治療は、骨転移を予防する、阻害するおよび/または処置する少なくとも1つの治療薬である。
【0025】
別の態様において、本発明は、HER2+乳がんからの骨転移の予防において使用するためのc−Maf阻害剤に関する。
【0026】
別の態様において、本発明は、HER2+乳がんに罹患しており、かつ転移サンプルにおいてコントロールサンプルと比較して上昇したMAFレベルを有する被験体における骨転移の処置において使用するための、c−Maf阻害剤、または骨分解を回避するかもしくは予防することができる薬剤に関する。
【0027】
別の態様において、本発明は、Her2+乳がんに罹患している被験体における上記がんの骨転移を予測するためのキットに関し、そのキットは:a)上記被験体のサンプル中のMAFの発現レベルを定量するための手段;およびb)上記サンプル中の定量されたMAFの発現レベルを参照MAF発現レベルと比較するための手段を備える。本発明はまた、Her2+乳がんに罹患している被験体における上記がんの骨転移を予測するためのこのようなキットの使用に関する。一つの実施形態では、上記被験体は、その後、そのキットを使用した結果に基づいて、骨転移を予防する、阻害する、および/もしくは処置する少なくとも1つの治療薬を投与されるか、またはその治療薬が投与されない。
【0028】
例えば、KRAS変異患者は、抗EGFR療法(すなわち、セツキシマブ)を受けない。なぜなら、それは、KRASよりも上流のレセプターを標的とし、それゆえ、その変異により、上流のあらゆる作用が無益になり、患者はその療法の利益を受けられないからである。KRASが野生型の患者は、その薬物を使用することにより利益を受ける。なぜなら、その薬物がRAS経路を阻止するからである。別の態様において、本発明は、Her2+乳がんに罹患している被験体における上記がんの骨転移を予測するためのキットに関し、そのキットは:a)上記被験体のサンプル中のMAF遺伝子の転座、16q23または16q22−24遺伝子座の増幅または転座を決定するための手段;およびb)上記サンプル中のMAFの転座、16q23または16q22−24遺伝子座の増幅または転座を参照MAFサンプルと比較するための手段を備える。本発明は、乳がんに罹患している被験体における上記がんの骨転移を予測するための、そのようなキットの使用にも関する。1つの実施形態において、被験体は、その後、そのキットを使用した結果に基づいて、骨転移を予防する、阻害するおよび/もしくは処置する少なくとも1つの治療薬を投与されるか、またはその治療薬が除外される。
【0029】
別の態様において、本発明は、Her2+乳がんに罹患している被験体における上記がんの骨転移を予測するためのキットに関し、そのキットは:a)上記被験体のサンプル中のMAF遺伝子の増幅、16q23または16q22−24遺伝子座の増幅または転座を定量するための手段;およびb)上記サンプル中のMAF遺伝子の増幅されたレベル、16q23または16q22−24遺伝子座の増幅または転座を参照と比較するための手段を備える。
【0030】
別の態様において、本発明は、HER2+乳がんからの骨転移に罹患している被験体の臨床転帰を予測するためのキットに関し、そのキットは:a)上記被験体のサンプル中のMAFの発現レベルを定量するための手段;およびb)上記サンプル中の定量されたMAFの発現レベルを参照MAF発現レベルと比較するための手段を備える。本発明は、HER2+乳がんからの骨転移に罹患している被験体の臨床転帰を予測するための、そのようなキットの使用にも関する。1つの実施形態において、被験体は、その後、そのキットを使用した結果に基づいて、骨転移を予防する、阻害するおよび/もしくは処置する少なくとも1つの治療薬を投与されるか、またはその治療薬が投与されない。
【0031】
別の態様において、本発明は、Her2+乳がんに罹患している被験体に対する治療を決定するためのキットに関し、そのキットは:a)上記被験体のサンプル中のMAFの発現レベルを定量するための手段;b)上記サンプル中の定量されたMAFの発現レベルを参照MAF発現レベルと比較するための手段;ならびにc)定量された発現レベルと参照発現レベルとの比較に基づいて、上記被験体において骨転移を予防するためおよび/または減少させるための治療を決定するための手段を備える。本発明は、乳がんに罹患している被験体に対する治療を決定するための、そのようなキットの使用にも関する。1つの実施形態において、被験体は、その後、そのキットを使用した結果に基づいて、骨転移を予防する、阻害するおよび/もしくは処置する少なくとも1つの治療薬を投与されるか、またはその治療薬が投与されない。
【0032】
別の態様において、本発明は、i)HER2+乳がんに罹患している被験体のサンプル中のMAFの発現レベルを定量するための試薬、およびii)骨転移のリスクと相関するように予め決定されている1つまたは複数のMAF遺伝子発現レベル指標を備えるキットに関する。本発明は、Her2+乳がんに罹患している被験体における上記がんの骨転移を予測するための、そのようなキットの使用にも関する。1つの実施形態において、被験体は、その後、そのキットを使用した結果に基づいて、骨転移を予防する、阻害するおよび/もしくは処置する少なくとも1つの治療薬を投与されるか、またはその治療薬が投与されない。
【0033】
別の態様において、本発明は、Her2+乳がんに罹患している被験体のサンプルをタイプ分けするためのインビトロでの方法に関し、その方法は:
a)上記被験体からのサンプルを提供する工程;
b)上記サンプル中のMAFの発現レベルを定量する工程;
c)定量されたMAFの発現レベルをMAF発現の所定の参照レベルと比較することによって上記サンプルをタイプ分けする工程;
を含み、ここで、上記タイプ分けは、上記被験体における骨転移のリスクに関する予後情報を提供する。1つの実施形態において、被験体は、タイプ分けによって提供される予後情報に基づいて、少なくとも1つの治療薬を投与されるか、またはその治療薬が投与されない。
【0034】
別の態様において、本発明は、HER2+乳がんに罹患している被験体における骨転移のリスクを予防するためまたは減少させるための方法に関し、上記方法は、骨転移を予防するかまたは減少させる薬剤を上記被験体に投与する工程を含み、ここで、上記薬剤は、上記被験体におけるMAFの発現レベルの定量から決定された処置レジメンに従って投与される。
【0035】
別の態様において、本発明は、Her2+乳がんに罹患している被験体をコホートに分類する方法に関し、その方法は:a)上記被験体のサンプル中のMAFの発現レベルを決定する工程;b)上記サンプル中のMAFの発現レベルをMAF発現の所定の参照レベルと比較する工程;およびc)そのサンプル中のMAFの上記発現レベルに基づいて、上記被験体をコホートに分類する工程を含む。特定の態様において、そのコホートは、臨床試験を行うために使用される。
特定の実施形態では、例えば以下が提供される:
(項目1)
HER2+乳がんに罹患している被験体における該がんの骨転移を予測するためのインビトロでの方法であって、該方法は、
i)該被験体のサンプル中のMAF遺伝子の発現レベルを決定する工程、および
ii)工程i)において得られた発現レベルを参照値と比較する工程
を含み、ここで、該参照値と比較して上昇した該遺伝子の発現レベルは、骨転移を起こす上昇したリスクを示す、インビトロでの方法。
(項目2)
HER2+乳がんからの骨転移に罹患している患者の臨床転帰を予測するためのインビトロでの方法であって、該方法は、
i)該被験体のサンプル中のMAF遺伝子の発現レベルを定量する工程、および
ii)工程i)において得られた発現レベルを参照値と比較する工程
を含み、ここで、該参照値と比較して上昇した該遺伝子の発現レベルは、不良な臨床転帰を示す、インビトロでの方法。
(項目3)
HER2+乳がんに罹患している被験体のために個別化治療をデザインするためのインビトロでの方法であって、該方法は、
i)該被験体のサンプル中のMAF遺伝子発現レベルを定量する工程、および
ii)i)において得られた発現レベルを参照値と比較する工程
を含み、ここで、該発現レベルが、該参照値と比較して上昇した場合、該被験体は、骨転移の予防および/または処置を目指す治療を受けるのに適格である、インビトロでの方法。
(項目4)
HER2+乳がんに罹患している被験体のために個別化治療をデザインするためのインビトロでの方法であって、該方法は、
iii)該被験体のサンプル中のMAF遺伝子発現レベルを定量する工程、および
iv)i)において得られた発現レベルを参照値と比較する工程
を含み、ここで、該発現レベルが、該参照値と比較して上昇していない場合、該被験体は、骨転移の予防および/または処置を目指す治療を受けるのに適格ではない、インビトロでの方法。
(項目5)
平均より高い前記遺伝子の発現レベルが、骨転移の上昇したリスクを示し、このリスクは、MAF発現のレベルに比例する、項目1に記載のインビトロでの方法。
(項目6)
乳がんに罹患している被験体における骨転移のリスクを決定するためのインビトロでの方法であって、該方法は、該被験体のサンプル中のMAF遺伝子の発現レベルを決定する工程を含み、ここで、平均値+1標準偏差より高い該遺伝子の発現レベルは、早期の骨転移の上昇したリスクを示す、インビトロでの方法。
(項目7)
前記乳がんが、HER2+乳がんである、項目6に記載の方法。
(項目8)
前記骨転移が、溶骨性転移である、項目1〜7のいずれかに記載の方法。
(項目9)
骨転移を伴うHER2+乳がんを有する被験体のために個別化治療をデザインするためのインビトロでの方法であって、該方法は、
i)該被験体の骨転移サンプル中のMAF遺伝子発現レベルを定量する工程、および
ii)工程(i)において得られた発現レベルを参照値と比較する工程
を含み、ここで、該MAF遺伝子発現レベルが、該参照値と比較して上昇している場合、該被験体は、骨分解の予防を目指す治療を受けるのに適格である、インビトロでの方法。
(項目10)
骨転移を伴うHER2+乳がんを有する被験体のために個別化治療をデザインするためのインビトロでの方法であって、該方法は、
iii)該被験体の骨転移サンプル中のMAF遺伝子発現レベルを定量する工程、およびiv)工程(i)において得られた発現レベルを参照値と比較する工程
を含み、ここで、該MAF遺伝子発現レベルが、該参照値と比較して上昇していない場合、該被験体は、骨分解の予防を目指す治療を受けるのに適格ではない、インビトロでの方法。
(項目11)
前記治療が、ビスホスホネート、RANKLインヒビター、PTHおよびPTHLHのインヒビターまたはPRGアナログ、ラネル酸ストロンチウム、DKK−1インヒビター、METおよびVEGFR2の二重インヒビター、エストロゲンレセプター調節因子、カルシトニン、ならびにカテプシンKインヒビターからなる群より選択される、項目3〜4または9〜10に記載の方法。
(項目12)
前記RANKLインヒビターが、RANKL特異的抗体、RANKL特異的ナノボディおよびオステオプロテゲリンからなる群より選択される、項目11に記載の方法。
(項目13)
前記RANKL特異的抗体が、デノスマブである、項目12に記載の方法。
(項目14)
前記RANKL特異的ナノボディが、ALX−0141である、項目12に記載の方法。
(項目15)
前記ビスホスホネートが、ゾレドロン酸である、項目11に記載の方法。
(項目16)
前記METおよびVEGFR2の二重インヒビターが、Cabozantinibである、項目11に記載の方法。
(項目17)
ラジウム−223が、アルファラディンである、項目11に記載の方法。
(項目18)
前記MAF遺伝子発現レベルの決定が、前記遺伝子のメッセンジャーRNA(mRNA)または該mRNAのフラグメント、前記遺伝子の相補DNA(cDNA)または該cDNAのフラグメントを定量する工程を含む、項目1〜17のいずれかに記載の方法。
(項目19)
前記発現レベルが、定量的ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)、またはDNA、RNAアレイ、またはヌクレオチドハイブリダイゼーション法によって定量される、項目18に記載の方法。
(項目20)
前記MAF遺伝子発現レベルの決定が、該遺伝子によってコードされるタンパク質またはそのバリアントのレベルを定量する工程を含む、項目1〜17のいずれかに記載の方法。
(項目21)
前記タンパク質のレベルが、ウエスタンブロット、ELISA、免疫組織化学またはタンパク質アレイによって定量される、項目20に記載の方法。
(項目22)
前記参照値が、転移に罹患していない被験体由来のHER2+乳がんのサンプル中のMAF遺伝子発現レベルである、項目1〜21のいずれかに記載の方法。
(項目23)
HER2+乳がんに罹患している被験体における該がんの骨転移を予測するためのインビトロでの方法であって、該方法は、該被験体のサンプル中のMAF遺伝子が、参照遺伝子コピー数と比べて増幅されているかを決定する工程を含み、ここで、該参照遺伝子コピー数と比較したときの該MAF遺伝子の増幅は、骨転移を起こす上昇したリスクを示す、方法。
(項目24)
HER2+乳がんに罹患している被験体における該がんの骨転移を予測するためのインビトロでの方法であって、該方法は、該被験体のサンプル中の該MAF遺伝子が、転座しているかを決定する工程を含む、方法。
(項目25)
前記骨転移が、溶骨性転移である、項目23〜24のいずれか1項に記載の方法。
(項目26)
HER2+乳がんに罹患している患者の臨床転帰を予測するためのインビトロでの方法であって、該方法は、該被験体のサンプル中のMAF遺伝子が、参照遺伝子コピー数と比べて増幅されているかを決定する工程を含み、ここで、該参照遺伝子コピー数と比較したときの該MAF遺伝子の増幅は、不良な臨床転帰を示す、方法。
(項目27)
HER2+乳がんに罹患している患者の臨床転帰を予測するためのインビトロでの方法であって、該方法は、該被験体のサンプル中の該MAF遺伝子が、転座しているかを決定する工程を含み、ここで、該MAF遺伝子の転座は、不良な臨床転帰を示す、方法。
(項目28)
遺伝子座16q23または16q22−q24が、転座している、項目24および27のいずれかに記載の方法。
(項目29)
遺伝子座16q23または16q22−q24が、14番染色体の遺伝子座14q32に転座している、項目24、27または28のいずれかに記載の方法。
(項目30)
前記がんに罹患している被験体のサンプル中のMAF遺伝子が、参照遺伝子コピー数と比べて増幅されているかを決定する工程をさらに含み、ここで、該参照遺伝子コピー数と比較したときの該MAF遺伝子の増幅は、骨転移を起こす上昇したリスクを示す、項目23〜29のいずれかに記載の方法。
(項目31)
前記MAF遺伝子の増幅および転座が、遺伝子座16q23または16q22−q24の増幅または転座を決定することによって決定される、項目23〜30のいずれかに記載の方法。
(項目32)
前記MAF遺伝子の増幅または転座が、MAF遺伝子特異的プローブを使用することによって決定される、項目23〜31のいずれかに記載の方法。
(項目33)
前記MAF遺伝子特異的プローブが、Vysis LSI/IGH MAF Dual Color Dual Fusion Probeである、項目32に記載の方法。
(項目34)
前記参照遺伝子コピー数が、転移に罹患していない被験体由来のHER2+乳がんの腫瘍組織サンプル中の遺伝子コピー数である、項目23〜33のいずれかに記載の方法。
(項目35)
前記増幅が、インサイチュハイブリダイゼーションまたはPCRによって決定される、項目23〜34のいずれかに記載の方法。
(項目36)
前記被験体サンプルが、前記MAF遺伝子の倍数体であるかをさらに決定する工程を含む、項目23〜35のいずれかに記載の方法。
(項目37)
前記サンプルが、腫瘍組織サンプル、循環腫瘍細胞または循環腫瘍DNAである、項目1〜36のいずれかに記載の方法。
(項目38)
HER2+乳がんからの骨転移の予防において使用するためのc−Maf阻害剤。
(項目39)
HER2+乳がんに罹患しており、かつ転移性腫瘍組織サンプルにおいて、コントロールサンプルと比較して上昇したMAFレベルを有する被験体における骨転移の処置において使用するための、c−Maf阻害剤、または骨分解を回避するかもしくは予防することができる薬剤。
(項目40)
前記c−Maf阻害剤が、MAF特異的siRNA、MAF特異的アンチセンスオリゴヌクレオチド、c−Maf特異的リボザイム、c−Maf阻害性抗体もしくはナノボディ、ドミナントネガティブc−Mafバリアント、表1もしくは表2の化合物、c−Maf特異的小分子、c−Maf特異的抗体、c−Maf特異的抗体様分子、c−Maf特異的な構造的に制約された(環状の)ペプチド、c−Maf特異的ステープルドペプチド、またはc−Maf特異的アルファボディからなる群より選択される、項目38または39のいずれかに記載の、骨転移または骨分解の処置、阻害または予防における使用のためのc−Maf阻害剤。
(項目41)
前記薬剤が、ビスホスホネート、RANKLインヒビター、PTHもしくはPTHLHインヒビターまたはPRGアナログ、ラネル酸ストロンチウム、DKK−1インヒビター、METおよびVEGFR2の二重インヒビター、エストロゲンレセプター調節因子、カルシトニン、ラジウム−223およびカテプシンKインヒビターからなる群より選択される、項目39に記載の、骨転移または骨分解の処置、阻害または予防において使用するための、骨分解を回避するかまたは予防することができる薬剤。
(項目42)
前記RANKLインヒビターが、RANKL特異的抗体、RANKL特異的ナノボディおよびオステオプロテゲリンの群から選択される、項目41に記載の、骨転移または骨分解の処置、阻害または予防において使用するための、骨分解を回避するかまたは予防することができる薬剤。
(項目43)
前記RANKL特異的抗体が、デノスマブである、項目42に記載の、骨転移または骨分解の処置、阻害または予防において使用するための、骨分解を回避するかまたは予防することができる薬剤。
(項目44)
前記RANKL特異的ナノボディが、ALX−0141である、項目42に記載の、骨転移または骨分解の処置、阻害または予防において使用するための、骨分解を回避するかまたは予防することができる薬剤。
(項目45)
前記ビスホスホネートが、ゾレドロン酸である、項目41に記載の、骨転移または骨分解の処置、阻害または予防において使用するための、骨分解を回避するかまたは予防することができる薬剤。
(項目46)
前記METおよびVEGFR2の二重インヒビターが、Cabozantinibである、項目41に記載の、骨転移または骨分解の処置、阻害または予防において使用するための、骨分解を回避するかまたは予防することができる薬剤。
(項目47)
前記ラジウム−223が、アルファラディンである、項目41に記載の、骨転移または骨分解の処置、阻害または予防において使用するための、骨分解を回避するかまたは予防することができる薬剤。
(項目48)
前記骨転移が、溶骨性転移である、項目38〜47のいずれかに記載の、骨転移または骨分解の処置、阻害または予防において使用するための、c−Maf阻害剤、または骨分解を回避するかもしくは予防することができる薬剤。
(項目49)
乳がんに罹患している被験体における該がんの骨転移を予測するためのキットであって、該キットは:a)該被験体のサンプル中のMAFの発現レベルを定量するための手段;およびb)該サンプル中の定量されたMAFの発現レベルを参照MAF発現レベルと比較するための手段を備える、キット。
(項目50)
乳がんからの骨転移に罹患している被験体の臨床転帰を予測するためのキットであって、該キットは:a)該被験体のサンプル中のMAFの発現レベルを定量するための手段;およびb)該サンプル中の定量されたMAFの発現レベルを参照MAF発現レベルと比較するための手段を備える、キット。
(項目51)
乳がんに罹患している被験体に対する治療を決定するためのキットであって、該キットは:a)該被験体のサンプル中のMAFの発現レベルを定量するための手段;b)該サンプル中の定量されたMAFの発現レベルを参照MAF発現レベルと比較するための手段;ならびにc)定量された発現レベルと参照発現レベルとの比較に基づいて、該被験体において骨転移を予防するためおよび/または減少させるための治療を決定するための手段を備える、キット。
(項目52)
i)乳がんに罹患している被験体のサンプル中のMAFの発現レベルを定量するための試薬、およびii)骨転移のリスクと相関するように予め決定されている1つまたは複数のMAF遺伝子発現レベル指標を備える、キット。
(項目53)
発現を定量するための前記手段が、MAF遺伝子、16q23遺伝子座または16q22−16q24染色体領域に特異的に結合および/または増幅するプローブおよび/またはプライマーのセットを含む、項目49〜52のいずれか1項に記載のキット。
(項目54)
前記がんが、HER2+乳がんである、項目49〜53のいずれか1項に記載のキット。
(項目55)
HER2+乳がんに罹患している被験体のサンプルをタイプ分けするためのインビトロでの方法であって、該方法は:
(a)該被験体からサンプルを提供する工程;
(b)該サンプル中のMAFの発現レベルを定量する工程;
(c)定量されたMAFの発現レベルをMAF発現の所定の参照レベルと比較することによって該サンプルをタイプ分けする工程;
を含み、ここで、該タイプ分けは、該被験体における骨転移のリスクに関する予後情報を提供する、インビトロでの方法。
(項目56)
HER2+乳がんに罹患している被験体における骨転移のリスクを予防するためまたは減少させるための方法であって、該方法は、骨転移を予防するかまたは減少させる薬剤を該被験体に投与する工程を含み、ここで、該薬剤は、該被験体におけるMAFの発現レベルの定量から決定された処置レジメンに従って投与される、方法。
(項目57)
乳がんに罹患している被験体をコホートに分類する方法であって、該方法は、a)該被験体のサンプル中のMAFの発現レベルを決定する工程;b)該サンプル中のMAFの発現レベルをMAF発現の所定の参照レベルと比較する工程;およびc)該サンプル中のMAFの該発現レベルに基づいて、該被験体をコホートに分類する工程を含む、方法。
(項目58)
前記コホートが、前記参照発現レベルと比較して、匹敵するMAF発現レベルを有すると決定された少なくとも1つの他の個体を含む、項目57に記載の方法。
(項目59)
前記サンプル中のMAFの前記発現レベルが、前記所定の参照レベルと比べて上昇しており、前記コホートのメンバーが、骨転移の上昇したリスクを有すると分類される、項目57または58に記載の方法。
(項目60)
前記コホートが、臨床試験を行うためのコホートである、項目57〜58のいずれかに記載の方法。
(項目61)
前記乳がんが、HER2+乳がんである、項目57〜60のいずれかに記載の方法。
(項目62)
前記サンプルが、腫瘍組織サンプルである、項目55〜60のいずれかに記載の方法。
(項目63)
MAF遺伝子、16q23または16q22−16q24染色体領域が、増幅されているか、または転座している、項目55〜60のいずれかに記載の方法。
(項目64)
骨転移を処置するためまたは予防するために使用される前記治療が、mTorインヒビターである、項目3に記載の方法。
(項目65)
前記mTorインヒビターが、Everolimusである、項目64に記載の方法。
(項目66)
骨転移を処置するためまたは予防するために使用される前記治療が、Srcキナーゼインヒビターである、項目3に記載の方法。
前記Srcキナーゼインヒビターが、ダサチニブである、項目66に記載の方法。
(項目67)
骨転移を処置するためまたは予防するために使用される前記治療が、COX−2インヒビターである、項目3に記載の方法。
(項目68)
第2の処置が、前記COX−2インヒビターと組み合わせて使用される、項目67に記載の方法。
(項目69)
骨転移を処置するためまたは予防するために使用される前記治療が、Alpharadinである、項目3に記載の方法。
【図面の簡単な説明】
【0036】
図1】MAF遺伝子を含む16q22−24と、乳がん原発腫瘍における骨転移発生率との関連。
【0037】
a)HER2+原発性乳がん組織における16q22−24 DNA増幅を測定するために16q22−24 DNA増幅領域内の16q23領域のプローブおよびCEP16(16q11.2)プローブを使用するFISH。16q23増幅のない患者サンプル(症例1、16q23/CEP16 CNA <1.5コピー)および16q23増幅がある患者サンプル(症例2、16q23/CEP16 CNA>1.5コピー)の代表的な画像。
【0038】
b)ステージI、IIおよびIIIのBCヒト原発性腫瘍データセット(n=334)での競合事象として骨における再発前の死亡を使用した、任意の時点での骨転移の累積発生率。患者を、1細胞あたり16q23/CEP16が1.5コピーというカットオフに基づいて16q23/CEP16 CNA陰性(<1.5)および16q23/CEP16 CNA陽性(>または=1.5)グループにしたがって階層化した。1コアあたり最小で50細胞および1腫瘍あたり3コアがスコア付けされた。HR−ハザード比、CI−信頼区間。
【発明を実施するための形態】
【0039】
発明の詳細な説明
一般的な用語および表現の定義
本明細書中で使用されるとき、「および/または」は、他のものを伴うかまたは伴わない、2つの指定された特徴または成分の各々についての特定の開示であると解釈されるべきである。例えば、「Aおよび/またはB」は、あたかも各々が本明細書中に個々に記載されたかのように、(i)A、(ii)B、ならびに(iii)AおよびBの各々についての特定の開示であると解釈されるべきである。
【0040】
本明細書中で使用されるとき、「骨分解を回避するためまたは予防するための薬剤」とは、骨芽細胞の増殖を刺激するか、または破骨細胞の増殖を阻害するか、または骨の構造を固定することによって、骨分解を予防するか、阻害するか、処置するか、減少させるか、または停止することができる任意の分子のことを指す。
【0041】
本明細書中で使用されるとき、用語「遺伝子の増幅」とは、遺伝子または遺伝子フラグメントの様々なコピーが、個別の細胞または細胞系において形成されるプロセスのことを
指す。その遺伝子のコピーは、必ずしも同じ染色体に位置するとは限らない。その重複領域は、「アンプリコン」と呼ばれることが多い。通常は、生成されるmRNAの量、すなわち、遺伝子発現レベルは、特定の遺伝子のコピー数に比例して増加する。
【0042】
本明細書中で使用されるとき、「HER2+」とは、細胞表面上に通常位置するレセプターである上皮成長因子レセプタータイプ2(HER2またはErbB2)の検出可能な発現および/またはHER2遺伝子の増幅を有する腫瘍細胞を特徴とする乳がんのことを指す。本明細書中で使用されるとき、腫瘍細胞は、ポリクローナル抗HER2一次抗体を使用する半定量的免疫組織化学的アッセイであるHercepTestTMKit(Code K5204,Dako North America,Inc.,Carpinteria,CA)を用いて試験されたときに0もしくは1+もしくは2+という試験結果スコアをもたらす場合、またはHER2 FISHが陰性である場合、HER2過剰発現について陰性であると考えられる。
【0043】
本明細書中で使用されるとき、「c−MAF遺伝子」または「MAF」(MAFまたはMGC71685としても知られるv−maf筋腱膜性線維肉腫癌遺伝子ホモログ(鳥類))は、ホモ二量体またはヘテロ二量体のように作用するロイシンジッパーを含む転写因子である。DNA結合部位に応じて、コードされるタンパク質は、転写活性化因子または転写抑制因子であり得る。MAFをコードするDNA配列は、アクセッション番号NG_016440(配列番号1(コーディング))としてNCBIデータベースに記載されている。MAFのゲノム配列は、配列番号13に示されている。本発明の方法は、コード配列またはゲノムDNA配列を利用し得る。上記DNA配列からは2つのメッセンジャーRNAが転写され、その各々が、2つのMAFタンパク質アイソフォーム、αアイソフォームおよびβアイソフォームのうちの1つを生じる。上記アイソフォームの各々に対する相補DNA配列は、それぞれ、アクセッション番号NM_005360.4(配列番号2)およびNM_001031804.2(配列番号3)としてNCBIデータベースに記載されている。がんの予後診断を予測するためのMAF遺伝子の使用は、例えば、国際出願第PCT/IB2013/001204号および同第PCT/ES2011/070693号、ならびに米国出願第13/878,114号および同第13/878,114号(トリプルネガティブ乳がんおよびER+乳がん)、国際出願第PCT/US2014/026154号(腎細胞癌)、国際出願第PCT/US2014/028722号(乳がん)、国際出願第PCT/US2013/044584号(肺がん)、米国出願第14/050,262号および国際出願第PCT/IB2013/002866号(前立腺がん)、米国出願第14/213,670号および国際出願第PCT/US2014/028569号(転移性がん)(これらの各々は、その全体が本明細書に参考として援用される)において見出される。
【0044】
本明細書中で使用されるとき、「MAF阻害剤」とは、MAF遺伝子発現を完全にまたは部分的に阻害することができる(その両方が、上記遺伝子の発現産物の生成を妨げること(MAF遺伝子の転写を妨害することおよび/またはMAF遺伝子発現に由来するmRNAの翻訳を阻止すること)およびc−Mafタンパク質活性を直接阻害することによって)任意の分子のことを指す。MAF遺伝子発現インヒビターは、国際特許公開WO2005/046731(その全内容が本明細書に参照により援用される)に示されているような、c−Mafがインビトロにおける細胞増殖を促進する能力に基づく方法、国際公開WO2008/098351(その全内容が本明細書によって参照により援用される)に記載されているような、インヒビターまたは試験化合物がc−Mafを発現する細胞においてサイクリンD2プロモーターもしくはc−Maf応答領域(MAREまたはc−Maf応答エレメント)を含むプロモーターの支配下のレポーター遺伝子の転写能力を阻止する能力に基づく方法を用いて同定され得る。c−Mafのバリアントはまた、米国公開第US2009/048117A号(その全内容が本明細書によって参照により援用される)に記載されているような、NFATc2およびc−Mafを発現する細胞においてPMA/イオノマイシンによる刺激に応答するIL−4プロモーターの支配下のレポーター遺伝子の発現をインヒビターが阻止する能力に基づいて同定され得る。
【0045】
本明細書中で使用されるとき、ラパマイシンの哺乳動物における標的(mTOR)または「mTor」とは、EC2.7.11.1に相当するタンパク質のことを指す。mTor酵素は、セリン/トレオニンタンパク質キナーゼであり、細胞増殖、細胞運動性、細胞成長、細胞生存および転写を制御する。
【0046】
本明細書中で使用されるとき、「mTorインヒビター」とは、mTor遺伝子の発現を完全にまたは部分的に阻害することができる(その両方が、上記遺伝子の発現産物の生成を妨げること(mTor遺伝子の転写を妨害することおよび/またはmTor遺伝子発現に由来するmRNAの翻訳を阻止すること)およびmTorタンパク質活性を直接阻害することによって)任意の分子のことを指す。二重またはそれより多くの標的および中でもmTorタンパク質活性を有するインヒビターを含む。
【0047】
本明細書中で使用されるとき、「Src」とは、EC2.7.10.2に相当するタンパク質のことを指す。Srcは、非レセプターチロシンキナーゼおよび癌原遺伝子である。Srcは、細胞成長および胚発生において役割を果たし得る。
【0048】
本明細書中で使用されるとき、「Srcインヒビター」とは、Src遺伝子の発現を完全にまたは部分的に阻害することができる(その両方が、上記遺伝子の発現産物の生成を妨げること(Src遺伝子の転写を妨害することおよび/またはSrc遺伝子発現に由来するmRNAの翻訳を阻止すること)およびSrcタンパク質活性を直接阻害することによって)任意の分子のことを指す。
【0049】
本明細書中で使用されるとき、「プロスタグランジン−エンドペルオキシドシンターゼ2」、「シクロオキシゲナーゼ−2」または「COX−2」とは、EC1.14.99.1に相当するタンパク質のことを指す。COX−2は、アラキドン酸からのプロスタグランジンエンドペルオキシドH2への変換に関与する。
【0050】
本明細書中で使用されるとき、「COX−2インヒビター」とは、COX−2遺伝子の発現を完全にまたは部分的に阻害することができる(その両方が、上記遺伝子の発現産物の生成を妨げること(COX−2遺伝子の転写を妨害することおよび/またはCOX−2遺伝子発現に由来するmRNAの翻訳を阻止すること)およびCOX−2タンパク質活性を直接阻害することによって)任意の分子のことを指す。
【0051】
本明細書中で使用されるとき、「転帰」または「臨床転帰」とは、結果として生じる疾患の経過および/または疾患の進行のことを指し、例えば、再発、再発までの期間、転移、転移までの期間、転移の数、転移の部位の数および/または疾患に起因する死亡によって特徴付けられ得る。例えば、良好な臨床転帰としては、治癒、再発の予防、転移の予防および/または一定の期間内の生存(再発なし)が挙げられ、不良な臨床転帰としては、疾患の進行、転移および/または一定の期間内の死亡が挙げられる。
【0052】
本明細書中で使用されるとき、本明細書中で使用される遺伝子の「発現レベル」という用語は、被験体のサンプル中の遺伝子によって生成される遺伝子産物の測定可能な量のことを指し、ここで、その遺伝子産物は、転写産物または翻訳産物であり得る。したがって、発現レベルは、核酸遺伝子産物(例えば、mRNAまたはcDNA)またはポリペプチド遺伝子産物に関係し得る。発現レベルは、被験体のサンプルおよび/または参照サンプル(複数可)から得られ、例えば、新規に検出され得るか、または事前の測定値に対応し得る。発現レベルは、例えば、当業者に公知であるような、マイクロアレイ法、PCR法(例えば、qPCR)および/または抗体ベースの方法を用いて、決定され得るかまたは測定され得る。
【0053】
本明細書中で使用されるとき、用語「遺伝子コピー数」とは、細胞における核酸分子のコピー数のことを指す。遺伝子コピー数は、細胞のゲノム(染色体)DNAにおける遺伝子コピー数を含む。正常な細胞(非腫瘍細胞)では、遺伝子コピー数は、通常、2コピー(染色体対の各メンバーにおいて1コピー)である。遺伝子コピー数は、時折、細胞集団のサンプルから採取された遺伝子コピー数の半数を含む。
【0054】
「上昇した発現レベル」は、それが参照サンプルまたはコントロールサンプルにおけるMAF遺伝子のレベルよりも高いレベルのことを指すときの発現レベルと理解される。上昇したレベルは、ある遺伝子または16q23もしくは16q22−24染色体遺伝子座の増幅または転座によって、他の機序を排除せずに引き起こされ得る。特に、患者から単離されたサンプル中の発現レベルが、参照またはコントロールと比較して、少なくとも、約1.1倍、約1.5倍、約5倍、約10倍、約20倍、約30倍、約40倍、約50倍、約60倍、約70倍、約80倍、約90倍、約100倍またはなおもそれより高いとき、そのサンプルは、高いMAF発現レベルを有すると考えられ得る。
【0055】
「プローブ」は、本明細書中で使用されるとき、目的の特定の核酸配列に相補的なオリゴヌクレオチド配列のことを指す。いくつかの実施形態において、プローブは、転座を起こすと知られている染色体の領域に特異的であり得る。いくつかの実施形態において、プローブは、特異的な標識またはタグを有する。いくつかの実施形態において、タグは、フルオロフォアである。いくつかの実施形態において、プローブは、その標識が核酸およびタンパク質への白金の安定な配位結合(coordinative binding)に基づくDNAインサイチュハイブリダイゼーションプローブである。いくつかの実施形態において、プローブは、米国特許出願12/067532および米国特許出願12/181,399(これらの全体が参照により援用される)に記載されているか、またはSwennenhuisら、「Construction of repeat−free fluorescence in situ hybridization probes」Nucleic Acids Research 40(3):e20(2012)に記載されている。
【0056】
「タグ」または「標識」は、本明細書中で使用されるとき、プローブまたはプローブの位置を可視化するか、マークするか、または別途捕捉することを可能にする、プローブと直接または間接的に会合されている任意の物理的な分子のことを指す。
【0057】
「転座」は、本明細書中で使用されるとき、等しくない量または等しい量で染色体間で染色体材料が交換することを指す。場合によっては、転座は、同じ染色体上で起きる。場合によっては、転座は、異なる染色体間で起きる。転座は、乳がんおよび白血病を含む多くのタイプのがんにおいて高頻度で生じる。転座は、主要な相互転座またはより複雑な二次転座であり得る。多くのがんの起因事象を構成すると考えられている免疫グロブリン(immunoglobin)重鎖(IgH)遺伝子座が関わる主要な転座がいくつかある(Eychene,A.,Rocques,N.,およびPuoponnot,C.,A new MAFia in cancer.2008.Nature Reviews:Cancer.8:683−693)。
【0058】
「倍数体」または「倍数性」は、本明細書中で使用されるとき、細胞が、2より多いコピーの目的の遺伝子を含むことを示す。場合によっては、目的の遺伝子は、MAFである。いくつかの実施形態において、倍数性は、目的の遺伝子の発現の蓄積に関連する。いくつかの実施形態において、倍数性は、ゲノム不安定性に関連する。いくつかの実施形態において、ゲノム不安定性は、染色体転座に至り得る。
【0059】
「ホールゲノムシーケンシング」は、本明細書中で使用されるとき、生物のゲノム全体が1回で配列決定されるプロセスである。例えば、Ng.,P.C.amd Kirkness,E.F.,Whole Genome Sequencing.2010.Methods in Molecular Biology.628:215−226を参照のこと。
【0060】
「エクソームシーケンシング」は、本明細書中で使用されるとき、生物のDNAのコード領域全体が配列決定されるプロセスである。エクソームシーケンシングでは、mRNAが配列決定される。ゲノムの非翻訳領域は、エクソームシーケンシングに含められない。例えば、Choi,M.ら、Genetic diagnosis by whole exome capture and massively parallel DNA
sequencing.2009.PNAS.106(45):19096−19101を参照のこと。
【0061】
「転移」は、本明細書中で使用されるとき、最初にがんが生じた器官から異なる器官へのがんの伝播として理解されている。転移は、通常、血液またはリンパ系を通じて起きる。がん細胞が広がって、新しい腫瘍を形成するとき、後者は、二次性腫瘍または転移性腫瘍と呼ばれる。二次性腫瘍を形成しているがん細胞は、元の腫瘍のがん細胞に似ている。乳がんが、例えば、肺に広がる(転移する)場合、二次性腫瘍は、悪性の乳がん細胞から形成される。その肺における疾患は、転移性乳がんであって、肺がんではない。本発明の方法の特定の実施形態において、転移は、骨に広がった(転移した)HER2+乳がんである。
【0062】
「予測する」は、本明細書中で使用されるとき、HER2+乳がんに罹患している被験体が遠隔器官への転移を起こす可能性の決定のことを指す。本明細書中で使用されるとき、「予後良好」は、被験体が、一定期間内において生存するおよび/または再発もしくは遠隔転移を有しないかもしくは有するリスクが低いと予想される(例えば、予測される)ことを示す。用語「低い」は、相対的な用語であり、本願の文脈において、臨床転帰(再発、遠隔転移など)に関して「低」発現グループのリスクのことを指す。「低」リスクは、不均一ながん患者集団に対する平均リスクより低いリスクと考えられ得る。Paikら(2004)の研究では、再発の全体的な「低」リスクは、15パーセントより低いと考えられた。そのリスクはまた、期間に応じて変動し得る。その期間は、がんの最初の診断の後または予後診断が行われた後の、例えば、5年、10年、15年またはなおも20年であり得る。
【0063】
本明細書中で使用されるとき、「予後不良」は、被験体が、一定期間内において生存しないおよび/または再発もしくは遠隔転移を有するかもしくは有するリスクが高いと予想される、例えば、予測されることを示す。用語「高い」は、相対的な用語であり、本願の文脈において、臨床転帰(再発、遠隔転移など)に関して「高」発現グループのリスクのことを指す。「高」リスクは、不均一ながん患者集団に対する平均リスクより高いリスクと考えられ得る。Paikら(2004)の研究では、再発の全体的な「高」リスクは、15パーセントより高いと考えられた。そのリスクはまた、期間に応じて変動し得る。その期間は、がんの最初の診断のまたは予後診断が行われた後の、例えば、5年、10年、15年またはなおも20年であり得る。
【0064】
「参照値」は、本明細書中で使用されるとき、患者または患者から回収されたサンプルの臨床検査によって得られた値/データに対する参照として使用される検査値のことを指す。参照値または参照レベルは、絶対値;相対値;上限および/もしくは下限を有する値;一連の値;平均値(average value);中央値、平均値(mean value)、または特定のコントロール値もしくはベースライン値と比較される値であり得る。参照値は、個別のサンプル値、例えば、試験されている被験体から得られた値などであるが、より早い時点における値に基づき得る。参照値は、多数のサンプル(例えば、暦年齢が一致する群の被験体の集団由来)に基づいてもよいし、試験されるべきサンプルを含むまたは除外したサンプルのプールに基づいてもよい。
【0065】
本明細書中で使用されるとき、「被験体」または「患者」とは、哺乳動物として分類されるすべての動物のことを指し、それらとしては、飼育動物(domestic animal)および家畜(farm animal)、霊長類およびヒト、例えば、人間、非ヒト霊長類、ウシ、ウマ、ブタ、ヒツジ、ヤギ、イヌ、ネコまたはげっ歯類が挙げられるが、これらに限定されない。好ましくは、被験体は、任意の年齢または人種のヒトの男性または女性である。
【0066】
用語「処置」は、本明細書中で使用されるとき、本明細書中に記載されるような臨床状態を終結させるか、予防するか、回復させるか、またはその臨床状態への罹患性を低下させることを目指す任意のタイプの治療のことを指す。好ましい実施形態において、処置という用語は、本明細書中で定義されるような障害または状態の予防的処置(すなわち、臨床状態への罹患性を低下させる治療)に関する。したがって、「処置」、「処置する」およびそれらの等価な用語は、ヒトを含む哺乳動物において、病理学的な状態または障害の任意の処置を包含する、所望の薬理学的効果または生理学的効果を得ることを指す。その効果は、障害もしくはその徴候を完全にもしくは部分的に予防することに関して予防的であり得、かつ/または障害および/もしくはその障害に起因し得る有害作用に対する部分的もしくは完全な治癒に関して治療的であり得る。すなわち、「処置」は、(1)被験体において障害が生じることもしくは再発することを予防すること、(2)障害を阻害すること、例えば、その進行を停止すること、(3)例えば、失った機能、不足している機能もしくは不完全な機能を再建するかもしくは修復するか、または非効率なプロセスを刺激することによって、宿主が障害もしくはその徴候にもはや罹患していないように、障害もしくはそれに関連する少なくとも徴候を停止することもしくは終結させること(例えば、障害またはその徴候の後退を引き起こすこと)、または(4)障害もしくはそれに関連する徴候を軽減すること、緩和すること、もしくは回復させること(ここで、回復させることとは、少なくとも、パラメータ(例えば、炎症、疼痛または免疫不全)の大きさの減少のことを指すために広い意味において使用される)を含む。
【0067】
本明細書中で使用されるとき、「サンプル」または「生物学的サンプル」は、被験体から単離された生物学的材料を意味する。生物学的サンプルは、MAF遺伝子の発現レベルの決定に適した任意の生物学的材料を含み得る。サンプルは、任意の好適な生物学的組織または体液(例えば、腫瘍組織、血液、血漿、血清、尿または脳脊髄液(CSF)など)から単離され得る。
【0068】
「腫瘍組織サンプル」は、原発性HER2+乳がん腫瘍を起源とする組織サンプルと理解される。上記サンプルは、従来の方法、例えば、関連する医学的技法の当業者に周知の方法を用いる生検によって、得ることができる。
【0069】
「溶骨性骨転移」とは、骨吸収(骨密度の進行性消失)が、腫瘍細胞による破骨細胞活性の刺激に起因する転移の近くにおいて生じる転移のタイプのことを指し、重篤な疼痛、病理学的骨折、高カルシウム血症、脊髄圧迫、および神経圧迫に起因する他の症候群を特徴とする。
【0070】
MAFの発現レベルに基づいてHER2+乳がんの骨転移を予測するための方法
HER2+乳がんのサンプル中のMAFの発現レベルは、骨転移に罹患するリスクと相関する。さらに、HER2+原発腫瘍におけるMAFの遺伝子発現は、骨転移の再発と有意に相関し、無骨転移生存率および生存率と逆相関する。さらに、MAF発現レベルは、用量依存的様式で骨転移を予測する。
【0071】
第1の態様において、本発明は、HER2+乳がんに罹患している被験体における上記がんの骨転移を予測するためのインビトロでの方法(本明細書中以後、本発明の第1の方法)に関し、その方法は:
i)上記被験体のサンプル中のMAF遺伝子の発現レベルを決定する工程、および
ii)工程i)において得られた発現レベルを参照値と比較する工程
を含み、ここで、上記参照値と比較して上昇した上記遺伝子の発現レベルは、骨転移を起こす上昇したリスクを示す。
【0072】
本発明の方法は、第1の工程に、被験体由来のサンプル中のMAF遺伝子発現レベルを決定する工程を含む。好ましい実施形態において、サンプルは、腫瘍組織サンプルである。
【0073】
生検サンプルを得るための方法は、腫瘍を大きな片に分割する工程、または顕微解剖、または当該分野で公知の他の細胞分離方法を含む。腫瘍細胞は、さらに、小ゲージ針を用
いた吸引による細胞診によって得ることができる。サンプルの保存および取扱いを単純にするために、サンプルは、ホルマリン中で固定されて、パラフィンに浸され得るか、またはまず凍結されて、次いで、急速凍結を可能にする極低温媒体(highly cryogenic medium)への浸漬によってOCT化合物などの組織凍結媒体に浸され得る。
【0074】
好ましい実施形態において、本発明の第1の方法は、MAF遺伝子発現レベルだけを単一マーカーとして定量する工程を含み、すなわち、その方法は、いかなる追加のマーカーの発現レベルを決定する工程も含まない。
【0075】
当業者が理解するように、遺伝子発現レベルは、上記遺伝子の、または上記遺伝子によってコードされるタンパク質のメッセンジャーRNAレベルならびに上記遺伝子を含むゲノム領域のコピー数または転座数を測定することによって、定量され得る。
【0076】
この目的のために、生物学的サンプルは、組織または細胞の構造を物理的にまたは機械的に壊すように処理されて、細胞内の構成要素が核酸を調製するための水溶液中または有機溶液中に放出され得る。核酸は、当業者に公知の商業的に利用可能な方法によって抽出される(Sambrook,J.ら、「Molecular Cloning:a Laboratory Manual」,第3版,Cold Spring Harbor Laboratory Press,N.Y.,1−3巻)。
【0077】
したがって、MAF遺伝子発現レベルは、上記遺伝子の転写に起因するRNA(メッセンジャーRNAまたはmRNA)またはあるいは上記遺伝子の相補DNA(cDNA)から定量され得る。ゆえに、本発明の特定の実施形態において、MAF遺伝子発現レベルの定量は、MAF遺伝子のメッセンジャーRNAもしくは上記mRNAのフラグメント、MAF遺伝子の相補DNAもしくは上記cDNAのフラグメントまたはそれらの混合物の定量を含む。
【0078】
MAF遺伝子によってコードされるmRNAレベルまたはその対応するcDNAのmRNAレベルを検出するためおよび定量するために、実質的に任意の従来の方法を本発明の範囲内で使用することができる。非限定的な例証として、上記遺伝子によってコードされるmRNAレベルは、従来の方法、例えば、mRNA増幅および上記mRNA増幅産物の定量を含む方法(例えば、電気泳動および染色、またはあるいはサザンブロットおよび好適なプローブの使用、ノーザンブロットおよび目的の遺伝子(MAF)のmRNAの、またはその対応するcDNAの特異的プローブの使用、S1ヌクレアーゼを用いたマッピング、RT−PCR、ハイブリダイゼーション、マイクロアレイなど)を用いて、好ましくは、好適なマーカーを使用するリアルタイム定量的PCRによって、定量され得る。同様に、MAF遺伝子によってコードされる上記mRNAに対応するcDNAレベルもまた、従来の技法を用いることによって定量され得る;この場合、本発明の方法は、対応するmRNAの逆転写(RT)によって、対応するcDNAを合成し、それに続く増幅および上記cDNA増幅産物の定量のための工程を含む。発現レベルを定量するための従来の方法は、例えば、Sambrookら、2001(上掲)に見出すことができる。これらの方法は、当該分野で公知であり、当業者は、各技法に必要な正規化に精通している。例えば、多重PCRを使用して生成された発現の測定値は、測定された遺伝子の発現をいわゆる「ハウスキーピング」遺伝子(その発現は、すべてのサンプルにわたって一定であるはずであるので、比較するためのベースライン発現を提供する)またはその発現ががんによって調節されると知られている他のコントロール遺伝子と比較することによって正規化されるべきである。
【0079】
特定の実施形態において、MAF遺伝子発現レベルは、定量的ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)またはDNA/RNAアレイまたはヌクレオチドハイブリダイゼーション法によって定量される。
【0080】
さらに、MAF遺伝子発現レベルは、上記遺伝子によってコードされるタンパク質、すなわち、c−Mafタンパク質(c−Maf)[NCBI,アクセッション番号O75444]またはc−Mafタンパク質の任意の機能的に等価なバリアントの発現レベルを定量することによっても定量され得る。2つのc−Mafタンパク質アイソフォーム、403アミノ酸で構成されているαアイソフォーム(NCBI,NP_005351.2)(配列番号4)および373アミノ酸で構成されているβアイソフォーム(NCBI,NP_001026974.1)(配列番号5)が存在する。MAF遺伝子発現レベルは、いずれかのc−Mafタンパク質アイソフォームの発現レベルを定量することによって定量され得る。したがって、特定の実施形態において、MAF遺伝子によってコードされるタンパク質のレベルの定量は、c−Mafタンパク質の定量を含む。
【0081】
本発明の文脈において、「c−Mafタンパク質の機能的に等価なバリアント」は、(i)アミノ酸残基の1つまたは複数が、保存されたまたは保存されていないアミノ酸残基(好ましくは、保存されたアミノ酸残基)によって置換された、c−Mafタンパク質(配列番号4または配列番号5)のバリアント(ここで、そのような置換されたアミノ酸残基は、遺伝暗号によってコードされるアミノ酸残基であってもよいし、そうでなくてもよい)または(ii)1つまたは複数のアミノ酸の挿入または欠失を含みかつc−Mafタンパク質と同じ機能を有する、すなわち、DNA結合転写因子として作用するバリアントと理解される。c−Mafタンパク質のバリアントは、国際特許出願WO2005/046731(その全体が参照により本明細書中に援用される)に示されているような、c−Mafがインビトロにおける細胞増殖を促進する能力に基づく方法、WO2008098351(その全体が参照により本明細書中に援用される)に記載されているような、MAFを発現する細胞においてサイクリンD2プロモーターまたはMAF応答領域(MAREまたはMAF応答エレメント)を含むプロモーターの支配下のレポーター遺伝子の転写能力をいわゆるインヒビターが阻止する能力に基づく方法、またはUS2009048117A(その全体が参照により本明細書中に援用される)に記載されているような、NFATc2およびMAFを発現する細胞においてPMA/イオノマイシンによる刺激に応答してIL−4プロモーターの支配下のレポーター遺伝子の発現をいわゆるインヒビターが阻止する能力に基づく方法を用いて同定され得る。
【0082】
本発明に係るバリアントは、好ましくは、いずれかのc−Mafタンパク質アイソフォーム(配列番号4または配列番号5)のアミノ酸配列と少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%または少なくとも約99%の配列類似性を有する。バリアントと先に定義された特定のc−Mafタンパク質配列との間の類似性の程度は、当業者に広く公知のアルゴリズムおよびコンピュータプロセスを用いて決定される。2つのアミノ酸配列間の類似度は、好ましくは、BLASTPアルゴリズム[BLAST Manual,Altschul,S.ら、NCBI NLM NIH Bethesda,Md.20894,Altschul,S.ら、J.Mol.Biol.215:403−410(1990)]を用いて決定される。
【0083】
c−Mafタンパク質発現レベルは、被験体由来のサンプル中の上記タンパク質の検出および定量を可能にする任意の従来の方法によって定量され得る。非限定的な例証として、上記タンパク質レベルは、例えば、c−Maf結合能を有する抗体(または抗原決定基を含むそのフラグメント)を使用し、続いて、形成された複合体を定量することによって、定量され得る。これらのアッセイにおいて使用される抗体は、標識されていてもよいし、されていなくてもよい。使用され得るマーカーの例証的な例としては、放射性同位体、酵素、フルオロフォア、化学発光試薬、酵素基質または補因子、酵素インヒビター、粒子、色素などが挙げられる。標識されていない抗体(一次抗体)および標識された抗体(二次抗体)を使用する本発明において使用され得る幅広い公知のアッセイがある;これらの技法としては、ウエスタンブロットまたはウエスタントランスファー、ELISA(酵素結合免疫吸着測定法)、RIA(ラジオイムノアッセイ)、競合EIA(競合酵素免疫測定法)、DAS−ELISA(二重抗体サンドイッチELISA)、免疫細胞化学的および免疫組織化学的技法、特異的抗体を含むタンパク質マイクロアレイもしくはバイオチップの使用に基づく技法、またはディップスティックなどの形式でのコロイド沈殿に基づくアッセイが挙げられる。上記c−Mafタンパク質を検出するためおよび定量するための他の方法としては、アフィニティークロマトグラフィー法、リガンド結合アッセイなどが挙げられる。免疫学的方法が使用されるとき、c−Mafタンパク質に高親和性で結合すると知られている任意の抗体または試薬が、その量を検出するために使用され得る。それにもかかわらず、抗体、例えば、ポリクローナル血清、ハイブリドーマの上清またはモノクローナル抗体、抗体フラグメント、Fv、Fab、Fab’およびF(ab’)2、scFv、ヒト化ダイアボディ、トリアボディ(triabody)、テトラボディ(tetrabody)、ナノボディ、アルファボディ、ステープルド(stapled)ペプチド、シクロペプチドおよび抗体の使用が、好ましい。本発明の状況において使用され得る市販の抗c−Mafタンパク質抗体は、販売されている(例えば、抗体ab427、ab55502、ab55502、ab72584、ab76817、ab77071(Abcam plc,330 Science Park,Cambridge CB4 0FL,United Kingdom)、AbD SerotecのO75444モノクローナル抗体(マウス抗ヒトMAFアジド不含モノクローナル抗体、非結合体化、クローン6b8(Mouse Anti−Human MAF Azide free Monoclonal antibody,Unconjugated,Clone 6b8))など)。抗c−Maf抗体を提供している多くの営利会社がある(例えば、Abnova Corporation、Bethyl Laboratories、Santa Cruz Biotechnology、Bioworld Technology、GeneTexなど)。
【0084】
特定の実施形態において、c−Mafタンパク質レベルは、ウエスタンブロット、ELISAまたはタンパク質アレイによって定量される。
【0085】
別の特定の実施形態において、c−Mafタンパク質レベルは、エキソソームまたは循環(circulating)DNAまたは循環腫瘍細胞から定量される。エキソソームは、インビボおよびインビトロにおいてほとんどの細胞型によって分泌される40〜100nmの膜ベシクルである。エキソソームは、コンパートメントの内腔に内向きに出芽することによって、多胞体(MVB)と呼ばれるエンドソームの特定の集団として形成する。MVBと原形質膜とが融合すると、これらの内部ベシクルが分泌される。エキソソームは、当該分野で周知のいくつかの方法によって多種多様な細胞系または体液から単離され得る(Thery C.ら、Curr Protoc Cell Biol.2006 Apr;Chapter 3:Unit 3.22)(その全内容が、本明細書中に参照により援用される)。ExoQuickTMまたはExoTestTMなどのいくつかの市販キットが、エキソソームを単離するために利用可能である。
【0086】
本発明の第1の方法は、第2の工程に、被験体由来のサンプル(例えば、腫瘍サンプル)において得られたMAF遺伝子発現レベルを参照値と比較する工程を含む。
【0087】
いったん、乳がん、例えば、HER2+乳がんを有する被験体由来のサンプル中のMAF遺伝子発現レベルが、測定されて、参照値と比較されたら、上記遺伝子の発現レベルが、上記参照値と比較して上昇している場合、上記被験体は、骨転移を起こす傾向がより高いと結論づけられ得る。
【0088】
MAF遺伝子発現レベルの決定は、参照値と相関するはずである。
【0089】
ある実施形態において、本明細書中で意図されるような参照値(複数可)は、MAFの絶対量を伝達し得る。別の実施形態において、試験されている被験体由来のサンプル中のいずれか1つまたは複数のバイオマーカーの量は、参照値と直接比べて決定され得る(例えば、増加もしくは減少または増加率もしくは減少率に関して)。有益なことに、これにより、いずれの1つまたは複数のバイオマーカーのそれぞれの絶対量を最初に決定する必要なく、被験体由来のサンプル中の該1つまたは複数のバイオマーカーの量を参照値と比較すること(換言すれば、参照値に対する被験体由来のサンプル中のいずれか1つまたは複数のバイオマーカーの相対量を測定すること)が可能になり得る。
【0090】
好ましい実施形態において、参照値は、コントロールサンプルまたは参照サンプルにおけるMAF遺伝子発現レベルである。解析されるべき腫瘍のタイプに応じて、コントロールサンプルまたは参照サンプルの正確な性質は変動し得る。したがって、予後が評価されるべき事象において、参照サンプルは、転移していないHER2+乳がんを有する被験体由来のサンプル、または転移していないHER2+乳がんを有する被験体由来の生検サンプルの腫瘍組織コレクションにおいて測定されたMAF遺伝子発現レベルの中央値に対応するサンプルである。
【0091】
上記参照サンプルは、代表的には、被験体集団由来の等量のサンプルを合わせることによって得られる。一般に、代表的な参照サンプルは、臨床的に十分に考証されている被験体および転移が無いことが十分に特徴付けられている被験体から得られる。そのようなサンプルでは、バイオマーカー(MAF遺伝子)の正常濃度(参照濃度)が、例えば、参照集団の平均濃度を提供することによって決定され得る。マーカーの参照濃度を決定する場合に、様々な考慮がなされる。そのような考慮すべき事柄は、患者の年齢、体重、性別、全般的な身体的状態などである。例えば、好ましくは、上記の考慮すべき事柄に従って、例えば、様々な年齢カテゴリーに従って分類された、等量の少なくとも約2人、少なくとも約10人、少なくとも約100人から好ましくは、約1000人を超える被験体の群が、参照群としてみなされる。参照レベルが由来するサンプル集合は、好ましくは、その研究の患者対象と同じタイプのがんに罹患している被験体によって形成される。
【0092】
特定の実施形態において、MAF発現の「上昇した」または「低下した」発現に対する参照値は、有している疾患が上で述べられた方法のいずれかによって十分に考証された被験体から単離された1つまたはいくつかのサンプルにおいてアッセイを行うことを含む従来の手段によってMAF発現レベルのパーセンタイルを計算することによって決定される。次いで、MAFの「低下した」レベルは、好ましくは、MAF発現レベルが正常集団における約50パーセンタイル以下である(例えば、正常集団における約60パーセンタイル以下、正常集団における約70パーセンタイル以下、正常集団における約80パーセンタイル以下、正常集団における約90パーセンタイル以下および正常集団における約95パーセンタイル以下である発現レベルを含む)サンプルに対して割り当てられ得る。次いで、「上昇した」MAF遺伝子発現レベルは、好ましくは、MAF遺伝子発現レベルが正常集団における約50パーセンタイル以上である(例えば、正常集団における約60パーセンタイル以上、正常集団における約70パーセンタイル以上、正常集団における約80パーセンタイル以上、正常集団における約90パーセンタイル以上および正常集団における約95パーセンタイル以上である発現レベルを含む)サンプルに対して割り当てられ得る。
【0093】
当業者は、原発性乳房腫瘍が転移する傾向の予測が、同定されるすべての被験体(すなわち、被験体の100%)に対して正しくある必要はないことを理解する。それにもかかわらず、その用語は、被験体の統計学的に有意な一部(例えば、コホート研究におけるコホート)の同定を可能にすることを必要とする。ある一部が統計学的に有意であるかどうかは、当業者によって、様々な周知の統計評価ツール、例えば、信頼区間の決定、p値の決定、スチューデントt検定、マン・ホイットニー検定などを使用する単純な様式で決定され得る。詳細は、DowdyおよびWearden,Statistics for Research,John Wiley and Sons,New York 1983に提供されている。好ましい信頼区間は、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約97%、少なくとも約98%または少なくとも約99%である。p値は、好ましくは、0.1、0.05、0.01、0.005または0.0001である。より好ましくは、集団の被験体の少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%または少なくとも約90%が、本発明の方法によって適切に同定され得る。
【0094】
なおも別の実施形態において、骨への転移は、溶骨性骨転移である。
【0095】
なおも別の実施形態において、平均より高いMAFの発現レベルは、骨転移の上昇したリスクを示し、上記リスクは、MAF発現のレベルに比例する。したがって、乳がんに罹患している被験体における骨転移のリスクは、用量依存的である。
【0096】
MAFの発現レベルに基づいて、HER2+乳がんからの骨転移に罹患している患者の臨床転帰を予測するための方法
別の態様において、本発明は、骨転移性HER2+乳がんに罹患している患者の臨床転帰を予測するためのインビトロでの方法(本明細書中以後、本発明の第2の方法)に関し、その方法は:
i)上記被験体のサンプル中のMAF遺伝子の発現レベルを定量する工程、および
ii)工程i)において得られた発現レベルを参照値と比較する工程
を含み、ここで、上記参照値と比較して上昇した上記遺伝子の発現レベルは、不良な臨床転帰を示す。
【0097】
本発明の第2の方法は、第1の工程に、HER2+乳がんに罹患している被験体のサンプル中のMAF遺伝子発現レベルを定量する工程を含む。好ましい実施形態において、サンプルは、腫瘍組織サンプルである。
【0098】
好ましい実施形態において、本発明の第2の方法は、MAF遺伝子発現レベルだけを単一マーカーとして定量する工程を含み、すなわち、その方法は、いかなる追加のマーカーの発現レベルを決定する工程も含まない。
【0099】
第2の工程において、被験体の腫瘍サンプルにおいて得られたMAF遺伝子発現レベルは、参照値と比較される。好ましい実施形態において、参照値は、コントロールサンプル中の上記遺伝子の発現レベルである。MAF遺伝子発現レベルの決定は、コントロールサンプルまたは参照サンプルの値と相関するはずである。解析されるべき腫瘍のタイプに応じて、コントロールサンプルの正確な性質は変動し得る。したがって、本発明の第2の方法を含む場合において、参照サンプルは、骨転移に罹患していない乳がんを有する被験体のサンプルまたは転移に罹患していない乳がんを有する被験体の生検サンプルの腫瘍組織コレクションにおいて測定されたMAF遺伝子発現レベルの中央値に対応するサンプルである。
【0100】
いったん、サンプル中のMAF遺伝子発現レベルが、測定されて、コントロールサンプルと比較されたら、上記遺伝子の発現レベルが、コントロールサンプル中の発現レベルと比較して上昇している場合、それは、不良な臨床転帰を示す。
【0101】
具体的な実施形態において、骨転移は、溶骨性転移である。
【0102】
別の具体的な実施形態において、MAF遺伝子発現レベルの定量は、上記遺伝子のメッセンジャーRNA(mRNA)または上記mRNAのフラグメント、上記遺伝子の相補DNA(cDNA)または上記cDNAのフラグメントを定量する工程を含む。より好ましい実施形態において、発現レベルは、定量的ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)またはDNAアレイもしくはRNAアレイにより定量される。
【0103】
別の実施形態において、MAF遺伝子発現レベルの定量は、上記遺伝子によってコードされるタンパク質またはそのバリアントのレベルを定量する工程を含む。なおもより好ましい実施形態において、タンパク質レベルは、ウエスタンブロット、免疫組織化学検査、ELISAまたはタンパク質アレイにより決定される。
【0104】
別の実施形態において、参照サンプルは、転移に罹患していない被験体由来のHER2+乳がんの腫瘍組織サンプルである。
【0105】
患者の臨床転帰の決定のために広く認められている任意のパラメータが、本発明において使用され得、それらとしては、以下が挙げられるが、これらに限定されない:
・本明細書中で使用されるとき、研究中の期間に疾患を再発しなかった完全寛解の被験体の比率のことを記載する、無病進行。
・本明細書とともに使用されるとき、被験体が疾患の兆候なしに生存している、その疾患に対する処置後の時間の長さと理解される、無病生存率(DFS)。
・本発明において使用されるとき、完全奏効または部分奏効がみとめられる処置された被験体の比率のことを記載する、客観的奏効。
・本発明において使用されるとき、6ヶ月以上、完全奏効、部分奏効、低奏功(minor response)または安定病態がみとめられる、処置された被験体の比率に関する、腫瘍制御(tumour control)。
・本明細書中で使用されるとき、処置開始からがんの成長が最初に決定されるまでの時間と定義される、無進行生存期間。
・本明細書中で使用されるとき、疾患が処置された後、疾患が悪化し始めるまでの時間に関する、進行までの期間(TTP)。用語「進行」は、先に定義されている。
・本明細書中で使用されるとき、治療の開始後、最初の6ヶ月で進行しない被験体のパーセンテージに関する、6ヶ月無進行生存率または「PFS6」率、および
・本明細書中で使用されるとき、研究に登録された被験体の半数が未だ生存している時間に関する、生存期間中央値。
【0106】
用語「不良」または「良好」は、本明細書中で使用されるとき、被験体が好ましいまたは好ましくない転帰を示すことを意味する臨床転帰のことを指す。当業者によって理解されるように、そのような確率の評価は、診断される被験体の約100%に対して正しいことが好ましいが、正しくない場合もある。しかしながら、この用語は、被験体の統計学的に有意な一部が、所与の転帰についての素因を有すると同定され得ることを要求する。ある一部が統計学的に有意であるかどうかは、当業者によって、様々な周知の統計評価ツール、例えば、信頼区間の決定、p値の決定、スチューデントt検定、マン・ホイットニー検定などを使用して容易に決定され得る。詳細には、DowdyおよびWearden,Statistics for Research,John Wiley & Sons,New York 1983に見出される。好ましい信頼区間は、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、少なくとも約95%である。p値は、好ましくは、0.05、0.01、0.005もしくは0.0001またはそれ未満である。より好ましくは、集団の被験体の少なくとも約60パーセント、少なくとも約70パーセント、少なくとも約80パーセントまたは少なくとも約90パーセントが、本発明の方法によって適切に同定され得る。
【0107】
HER2+乳房腫瘍を有する患者において個別化治療をデザインするための方法
当該分野において公知であるように、がんに罹患している被験体に施されるべき処置は、後者が悪性腫瘍であるかどうか、すなわち、それが転移を起こす高い確率を有するかどうか、または後者が良性の腫瘍であるかどうかに左右される。第1の仮定では、一般に好まれる処置は、化学療法などの全身性処置であり、第2の仮定では、一般に好まれる処置は、放射線治療などの局所性処置である。
【0108】
ゆえに、本発明に記載されるように、HER2+がん細胞におけるMAF遺伝子の過剰発現が、骨転移の存在に関係することを考えれば、MAF遺伝子の発現レベルは、上記癌に罹患している被験体に最も適した治療に関して決定するために有用である。
【0109】
したがって、別の態様において、本発明は、HER2+乳がんに罹患している被験体のために個別化治療をデザインするためのインビトロでの方法(本明細書中以後、本発明の第3の方法)に関し、その方法は、
i)上記被験体の腫瘍サンプル(例えば、腫瘍組織サンプル、循環腫瘍細胞、循環腫瘍DNAまたはエキソソームから誘導された腫瘍)中のMAF遺伝子発現レベルを定量する工程、および
ii)i)において得られた発現レベルを参照値と比較する工程
を含み、ここで、その発現レベルが、上記参照値と比較して上昇している場合、上記被験体は、骨転移の予防および/または処置を目指す治療を受けるのに適格である。その発現レベルが、上記参照値と比較して上昇していない場合、上記被験体は、骨転移の予防および/または処置を目指す治療を受けるのに適格ではない。一部の実施形態では、上記サンプルは、腫瘍由来のサンプルであり、このサンプルとしては、腫瘍サンプル、循環腫瘍サンプル、循環腫瘍DNAまたは腫瘍由来のエキソソームが挙げられる。
【0110】
特定の実施形態において、骨転移は、溶骨性転移である。
【0111】
本発明の第3の方法は、第1の工程に、HER2+乳がんに罹患している被験体のサンプル中のMAF遺伝子発現レベルを定量する工程を含む。好ましい実施形態において、サンプルは、腫瘍組織サンプルである。
【0112】
別の特定の実施形態において、本発明の第3の方法は、MAF遺伝子発現レベルだけを単一マーカーとして定量する工程を含み、すなわち、その方法は、いかなる追加のマーカーの発現レベルを決定する工程も含まない。
【0113】
本発明の第3の方法の場合、サンプルは、被験体の原発腫瘍組織サンプルであり得る。
【0114】
第2の工程において、被験体の腫瘍サンプルにおいて得られたMAF遺伝子発現レベルは、参照値と比較される。好ましい実施形態において、参照値は、コントロールサンプル中の上記遺伝子のMAF遺伝子発現レベルである。MAF遺伝子発現レベルの決定は、コントロールサンプルまたは参照サンプルの値と関係づけられるはずである。解析されるべき腫瘍のタイプに応じて、コントロールサンプルの正確な性質は変動し得る。したがって、好ましくは、参照サンプルは、転移していないHER2+乳がんを有する被験体のサンプル、または転移していないHER2+乳がんを有する被験体の生検サンプルの腫瘍組織コレクションにおいて測定されたMAF遺伝子発現レベルの中央値に対応するサンプルである。
【0115】
いったん、サンプル中のMAF遺伝子発現レベルが、測定されて、参照値と比較されたら、上記遺伝子の発現レベルが、参照値と比較して上昇している場合、上記被験体は、転移の予防(被験体がまだ転移を起こしていない場合)および/または処置、または転移を予防しないかおよび/または処置しないこと(被験体がすでに転移を受けている場合)を目指す治療を受けるのに、または治療を受けないのに、適格であると結論づけられ得る。
【0116】
がんが転移していたとき、化学療法、ホルモン処置、免疫療法またはそれらの組み合わせを含むがこれらに限定されない全身性処置が使用され得る。さらに、放射線治療および/または手術が使用され得る。処置の選択は、通常、原発がんのタイプ、サイズ、転移の位置、患者の年齢、全般的な健康状態、および以前に使用された処置のタイプに左右される。
【0117】
全身性処置は、全身に到達する処置であり、転移の予防または阻害(被験体がまだ転移を受けていない場合)および/または転移の処置(被験体がすでに転移を経験している場合)を目指す療法(therapies therapy)を表し得る。例えば:
・化学療法は、がん細胞を破壊する医薬の使用である。それらの医薬は、通常、経口または静脈内の経路によって投与される。時折、化学療法は、放射線処置とともに使用される。乳がんに対する好適な化学療法処置としては、アントラサイクリン(ドキソルビシン、エピルビシン、ペグ化リポソームドキソルビシン)、タキサン(パクリタキセル、ドセタキセル、アルブミンナノ粒子結合型パクリタキセル)、5−フルオロウラシル(5−FU持続注入、カペシタビン)、ビンカアルカロイド(ビノレルビン、ビンブラスチン)、ゲムシタビン、白金塩(シスプラチン、カルボプラチン)、シクロホスファミド、エトポシド、および上記の1つまたは複数の組み合わせ、例えば、シクロホスファミド/アントラサイクリン +/− 5−フルオロウラシルレジメン(例えば、ドキソルビシン/シクロホスファミド(AC)、エピルビシン/シクロホスファミド、(EC)シクロホスファミド/エピルビシン/5−フルオロウラシル(CEF)、シクロホスファミド/ドキソルビシン/5−フルオロウラシル(CAF)、5−フルオロウラシル/エピルビシン/シクロホスファミド(FEC))、シクロホスファミド/メトトレキサート(metothrexate)/5−フルオロウラシル(CMF)、アントラサイクリン/タキサン(例えば、ドキソルビシン/パクリタキセルまたはドキソルビシン/ドセタキセル)、ドセタキセル/カペシタビン、ゲムシタビン/パクリタキセル、タキサン/白金レジメン(例えば、パクリタキセル/カルボプラチンまたはドセタキセル/カルボプラチン)が挙げられるがこれらに限定されない。
・免疫療法は、がんと戦う患者の免疫系自体を助ける処置である。患者における転移を処置するために使用される免疫療法にはいくつかのタイプがある。これらとしては、サイトカイン、モノクローナル抗体および抗腫瘍ワクチンが挙げられるがこれらに限定されない。
【0118】
別の態様において、処置は、アルファラディン(ラジウム−223二塩化物)である。アルファラディンは、がん細胞を殺すために、ラジウム−223の崩壊からのアルファ線を使用する。ラジウム−223は、天然に、カルシウム模倣物としてのその特性のおかげで骨転移に対して自身を標的化する。アルファ線は、2〜10個の細胞という非常に短い範囲(ベータまたはガンマ線に基づく現行の放射線治療と比べて)を有するので、周囲の健常な組織(特に骨髄)にもたらす損傷はより少ない。カルシウムとよく似た特性を有するので、ラジウム−223は、身体内の骨を構築するためにカルシウムが使用されている位置(去勢抵抗性の進行前立腺がんを有する男性の骨格転移に見られるようなより速い異常な骨成長の部位を含む)に引き込まれる。ラジウム−223は、注射後、異常に骨が成長している部位に血流によって運ばれる。がんが身体内で生じ始めた位置は、原発腫瘍として公知である。これらの細胞のうちのいくつかは、離脱して、血流によって身体の別の部位に運ばれ得る。次いで、それらのがん細胞は、身体のその位置に定着して、新しい腫瘍を形成し得る。これが起きる場合、それは、二次がんまたは転移と呼ばれる。末期の前立腺がんを有するほとんどの患者は、骨にその疾患の最大の負担を被る。ラジウム−223を用いる目的は、この二次がんを選択的に標的化することである。骨に取り込まれない任意のラジウム−223は、すみやかに腸へと経路を定められ、排泄される。
【0119】
別の態様において、処置は、mTorインヒビターである。いくつかの態様において、mTorインヒビターは、mTor/PI3キナーゼの二重インヒビターである。いくつかの態様において、mTorインヒビターは、転移を予防するためまたは阻害するために使用される。いくつかの態様において、mTorインヒビターは:ABI009(シロリムス)、ラパマイシン(シロリムス)、Abraxane(パクリタキセル)、Absorb(エベロリムス)、Afinitor(エベロリムス)、Gleevecと併用のAfinitor、AS703026(ピマセルチブ(pimasertib))、Axxess(ウミロリムス(umirolimus))、AZD2014、BEZ235、Biofreedom(ウミロリムス)、BioMatrix(ウミロリムス)、BioMatrix flex(ウミロリムス)、CC115、CC223、Combo Bio−engineered Sirolimus Eluting Stent ORBUSNEICH(シロリムス)、Curaxin CBLC102(メパクリン)、DE109(シロリムス)、DS3078、Endeavor DES(ゾタロリムス)、Endeavor Resolute(ゾタロリムス)、Femara(レトロゾール)、Hocena(アントロキノノール(antroquinonol))、INK128、Inspiron(シロリムス)、IPI504(レタスピマイシン(retaspimycin)塩酸塩)、KRN951(チボザニブ(tivozanib))、ME344、MGA031(テプリズマブ(teplizumab))、MiStent SES(シロリムス)、MKC1、Nobori(ウミロリムス)、OSI027、OVI123(コルジセピン)、Palomid 529、PF04691502、Promus Element(エベロリムス)、PWT33597、Rapamune(シロリムス)、Resolute DES(ゾタロリムス)、RG7422、SAR245409、SF1126、SGN75(ボルセツズマブマホドチン(vorsetuzumab mafodotin))、Synergy(エベロリムス)、Taltorvic(リダフォロリムス(ridaforolimus))、Tarceva(エルロチニブ)、Torisel(テムシロリムス)、Xience Prime(エベロリムス)、Xience V(エベロリムス)、Zomaxx(ゾタロリムス)、Zortress(エベロリムス)、ゾタロリムス溶出性末梢ステント(Peripheral Stent)MEDTRONIC(ゾタロリムス)、AP23841、AP24170、ARmTOR26、BN107、BN108、Canstatin GENZYME(カンスタチン(canstatin))、CU906、EC0371、EC0565、KI1004、LOR220、NV128、Rapamycin ONCOIMMUNE(シロリムス)、SB2602、Sirolimus PNP SAMYANG BIOPHARMACEUTICALS(シロリムス)、TOP216、VLI27、VS5584、WYE125132、XL388、Advacan(エベロリムス)、AZD8055、Cypher Select Plus シロリムス溶出性冠動脈ステント(シロリムス)、Cypher シロリムス溶出性冠動脈ステント(シロリムス)、薬物コーティングされたバルーン(シロリムス)、E−Magic Plus(シロリムス)、Emtor(シロリムス)、Esprit(エベロリムス)、Evertor(エベロリムス)、HBF0079、LCP−Siro(シロリムス)、Limus CLARIS(シロリムス)、mTORインヒビター CELLZOME、Nevo シロリムス溶出性冠動脈ステント(シロリムス)、nPT−mTOR、Rapacan(シロリムス)、Renacept(シロリムス)、ReZolve(シロリムス)、Rocas(シロリムス)、SF1126、Sirolim(シロリムス)、Sirolimus NORTH CHINA(シロリムス)、Sirolimus RANBAXY(シロリムス)、Sirolimus WATSON(シロリムス)Siropan(シロリムス)、Sirova(シロリムス)、Supralimus(シロリムス)、Supralimus−Core(シロリムス)、Tacrolimus WATSON(タクロリムス)、TAFA93、Temsirolimus ACCORD(テムシロリムス)、Temsirolimus SANDOZ(テムシロリムス)、TOP216、Xience Prime(エベロリムス)、Xience V(エベロリムス)からなる群より選択される。具体的な態様において、mTorインヒビターは、Afinitor(エベロリムス)(http://www.afinitor.com/index.jsp?usertrack.filter_applied=true&NovaId=4029462064338207963;最終アクセス日2012年11月28日)である。別の態様において、エベロリムスは、アロマターゼインヒビターと組合わされる(例えば、Baselga,J.ら、Everolimus in Postmenopausal Hormone−Receptor Positive Advanced Breast Cancer.2012.N.Engl.J.Med.366(6):520−529(これは本明細書中で参照により援用される)を参照のこと)。別の態様において、mTorインヒビターは、当該分野で公知の方法によって特定され得る(例えば、Zhou,H.ら、Updates of mTor inhibitors.2010.Anticancer Agents Med.Chem.10(7):571−81(これは本明細書中で参照により援用される)を参照のこと)。いくつかの態様において、mTorインヒビターは、ホルモンレセプターが陽性である患者において転移を処置するためまたは予防するためまたは阻害するために使用される(例えば、Baselga,J.ら、Everolimus in Postmenopausal Hormone−Receptor Positive Advanced Breast Cancer.2012.N.Engl.J.Med.366(6):520−529を参照のこと)。いくつかの実施形態において、患者は、ER+である。いくつかの態様において、mTorインヒビターは、進行乳がんを有する患者において転移を処置するためまたは予防するためまたは阻害するために使用される。いくつかの態様において、mTorインヒビターは、第2の処置と組み合わせて使用される。いくつかの態様において、第2の処置は、本明細書中に記載される任意の処置である。
【0120】
別の態様において、処置は、Srcキナーゼインヒビターである。いくつかの態様において、Srcインヒビターは、転移を予防するためまたは阻害するために使用される。いくつかの態様において、Srcキナーゼインヒビターは、以下の群:AZD0530(サラカチニブ(saracatinib))、Bosulif(ボスチニブ(bosutinib))、ENMD981693、KD020、KX01、Sprycel(ダサチニブ(dasatinib))、Yervoy(イピリムマブ(ipilimumab))、AP23464、AP23485、AP23588、AZD0424、c−Srcキナーゼインヒビター KISSEI、CU201、KX2361、SKS927、SRN004、SUNK706、TG100435、TG100948、AP23451、Dasatinib HETERO(ダサチニブ)、Dasatinib VALEANT(ダサチニブ)、Fontrax(ダサチニブ)、Srcキナーゼインヒビター KINEX、VX680(トザセルチブ(tozasertib)乳酸塩)、XL228およびSUNK706から選択される。いくつかの実施形態において、Srcキナーゼインヒビターは、ダサチニブである。別の態様において、Srcキナーゼインヒビターは、当該分野で公知の方法によって特定され得る(例えば、Sen,B.and Johnson,F.M.Regulation of Src Family Kinases in Human Cancers.2011.J.Signal Transduction.2011:14 pages(これは本明細書中で参照により援用される)を参照のこと)。いくつかの態様において、Srcキナーゼインヒビターは、SRC応答性シグネチャ(SRS)が陽性である患者において転移を処置するためまたは予防するためまたは阻害するために使用される。いくつかの態様において、患者は、SRS+かつER−である(例えば、Zhang,CH.−F,ら、Latent Bone Metastasis in Breast Cancer Tied to Src−Dependent survival signals.2009.Cancer Cell.16:67−78(これは本明細書中で参照により援用される)を参照のこと)。いくつかの態様において、Srcキナーゼインヒビターは、進行乳がんを有する患者において転移を処置するためまたは予防するためまたは阻害するために使用される。いくつかの態様において、Srcキナーゼインヒビターは、第2の処置と組み合わせて使用される。いくつかの態様において、第2の処置は、本明細書中に記載される任意の処置である。
【0121】
別の態様において、処置は、COX−2インヒビターである。いくつかの態様において、COX−2インヒビターは、転移を予防するためまたは阻害するために使用される。いくつかの態様において、COX−2インヒビターは、以下の群:ABT963、Acetaminophen ER JOHNSON(アセトアミノフェン)、Acular X(ケトロラクトロメタミン)、BAY1019036(アスピリン)、BAY987111(ジフェンヒドラミン、ナプロキセンナトリウム)、BAYl1902(ピロキシカム)、BCIBUCH001(イブプロフェン)、Capoxigem(アプリコキシブ(apricoxib))、CS502、CS670(ペルビプロフェン(pelubiprofen))、Diclofenac HPBCD(ジクロフェナク)、Diractin(ケトプロフェン)、GW406381、HCT1026(ニトロフルルビプロフェン(nitroflurbiprofen))、Hyanalgese−D(ジクロフェナク)、HydrocoDex(アセトアミノフェン、デキストロメトルファン、ヒドロコドン)、Ibuprofen Sodium PFIZER(イブプロフェンナトリウム)、Ibuprofen with Acetaminophen PFIZER(アセトアミノフェン、イブプロフェン)、Impracor(ケトプロフェン)、IP880(ジクロフェナク)、IP940(インドメタシン)、ISV205(ジクロフェナクナトリウム)、JNS013(アセトアミノフェン、トラマドール塩酸塩)、Ketoprofen TDS(ケトプロフェン)、LTNS001(ナプロキセンエテメシル(naproxen etemesil))、Mesalamine SALIX(メサラミン)、Mesalamine SOFAR(メサラミン)、Mesalazine(メサラミン)、ML3000(リコフェロン(licofelone))、MRX7EAT(エトドラク)、Naproxen IROKO(ナプロキセン)、NCX4016(ニトロアスピリン)、NCX701(ニトロアセトアミノフェン)、Nuprin SCOLR(イブプロフェン)、OMS103HP(アミトリプチリン塩酸塩、ケトプロフェン、オキシメタゾリン塩酸塩)、Oralease(ジクロフェナク)、OxycoDex(デキストロメトルファン、オキシコドン)、P54、PercoDex(アセトアミノフェン、デキストロメトルファン、オキシコドン)、PL3100(ナプロキセン、ホスファチジルコリン)、PSD508、R−Ketoprofen(ケトプロフェン)、Remura(ブロムフェナクナトリウム)、ROX828(ケトロラクトロメタミン)、RP19583(ケトプロフェンリジン)、RQ00317076、SDX101(R−エトドラク)、TDS943(ジクロフェナクナトリウム)、TDT070(ケトプロフェン)、TPR100、TQ1011(ケトプロフェン)、TT063(S−フルルビプロフェン)、UR8880(シミコキシブ(cimicoxib))、V0498TA01A(イブプロフェン)、VT122(エトドラク、プロプラノロール)、XP20B(アセトアミノフェン、デキストロプロポキシフェン)、XP21B(ジクロフェナクカリウム)、XP21L(ジクロフェナクカリウム)、Zoenasa(アセチルシステイン、メサラミン)、Acephen、Actifed Plus、Actifed−P、Acular、Acular LS、Acular PF、Acular X、Acuvail、Advil、Advil Allergy Sinus、Advil Cold and Sinus、Advil Congestion Relief、Advil PM、Advil PM Capsule、Air Salonpas、Airtal、Alcohol−Free NyQuil Cold & Flu Relief、Aleve、Aleve ABDI IBRAHIM、Aleve−D、Alka−Seltzer、Alka−Seltzer BAYER、Alka−Seltzer Extra Strength、Alka−Seltzer Lemon−Lime、Alka−Seltzer Original、Alka−Seltzer Plus、Alka−Seltzer plus Cold and Cough、Alka−Seltzer plus Cold and Cough Formula、Alka−Seltzer Plus Day and Night Cold Formula、Alka−Seltzer Plus Day Non−Drowsy Cold Formula、Alka−Seltzer Plus Flu Formula、Alka−Seltzer Plus Night Cold Formula、Alka−Seltzer Plus Sinus Formula、Alka−Seltzer Plus Sparkling Original Cold Formula、Alka−Seltzer PM、Alka−Seltzer Wake−Up Call、Anacin、Anaprox、Anaprox MINERVA、Ansaid、Apitoxin、Apranax、Apranax abdi、Arcoxia、Arthritis Formula Bengay、Arthrotec、Asacol、Asacol HD、Asacol MEDUNA ARZNEIMITTEL、Asacol ORIFARM、Aspirin BAYER、Aspirin Complex、Aspirin Migran、AZD3582、Azulfidine、Baralgan M、BAY1019036、BAY987111、BAYl1902、BCIBUCH001、Benadryl Allergy、Benadryl Day and Night、Benylin 4 Flu、Benylin Cold and Flu、Benylin Cold and Flu Day and Night、Benylin Cold and Sinus Day and Night、Benylin Cold and Sinus Plus、Benylin Day and Night Cold and Flu Relief、Benylin1 All−In−One、Brexin、Brexin ANGELINI、Bromday、Bufferin、Buscopan Plus、Caldolor、Calmatel、Cambia、Canasa、Capoxigem、Cataflam、Celebrex、Celebrex ORIFARM、Children’s Advil Allergy Sinus、Children’s Tylenol、Children’s Tylenol Cough and Runny Nose、Children’s Tylenol plus cold、Children’s Tylenol plus Cold and Cough、Children’s Tylenol plus cold and stuffy nose、Children’s Tylenol plus Flu、Children’s Tylenol plus cold & allergy、Children’s Tylenol plus Cough & Runny Nose、Children’s Tylenol plus Cough & Sore Throat、Children’s Tylenol plus multi symptom cold、Clinoril、Codral Cold and Flu、Codral Day and Night Day Tablets、Codral Day and Night Night Tablets、Codral Nightime、Colazal、Combunox、Contac Cold plus Flu、Contac Cold plus Flu Non−Drowsy、Coricidin D、Coricidin HBP Cold and Flu、Coricidin HBP Day and Night Multi−Symptom Cold、Coricidin HBP Maximum Strength Flu、Coricidin HBP Nighttime Multi−Symptom Cold、Coricidin II Extra Strength Cold and Flu、CS502、CS670、Daypro、Daypro Alta、DDS06C、Demazin Cold and Flu、Demazin Cough、Cold and Flu、Demazin day/night Cold and Flu、Demazin PE Cold and Flu、Demazin PE day/night Cold and Flu、Diclofenac HPBCD、Dimetapp Day Relief、Dimetapp Multi−Symptom Cold and Flu、Dimetapp Night Relief、Dimetapp Pain and Fever Relief、Dimetapp PE Sinus Pain、Dimetapp PE Sinus Pain plus Allergy、Dipentum、Diractin、Disprin Cold ’n’ Fever、Disprin Extra、Disprin Forte.Disprin Plus、Dristan Cold、Dristan Junior、Drixoral Plus、Duexis、Dynastat、Efferalgan、Efferalgan Plus Vitamin C、Efferalgan Vitamin C、Elixsure IB、Excedrin Back and Body、Excedrin Migraine、Excedrin PM、Excedrin Sinus Headache、Excedrin Tension Headache、Falcol、Fansamac、Feldene、FeverAll、Fiorinal、Fiorinal with Codeine、Flanax、Flector Patch、Flucam、Fortagesic、Gerbin、Giazo、Gladio、Goody’s Back and Body Pain、Goody’s Cool Orange、Goody’s Extra Strength、Goody’s PM、Greaseless Bengay、GW406381、HCT1026、He Xing Yi、Hyanalgese−D、HydrocoDex、Ibuprofen Sodium PFIZER、Ibuprofen with、Acetaminophen PFIZER、Icy Hot SANOFI AVENTIS、Impracor、Indocin、Indomethacin APP PHARMA、Indomethacin MYLAN、Infants’ Tylenol、IP880、IP940、Iremod、ISV205、JNS013、Jr.Tylenol、Junifen、Junior Strength Advil、Junior Strength Motrin、Ketoprofen TDS、Lemsip Max、Lemsip Max All in One、Lemsip Max All Night、Lemsip Max Cold and Flu、Lialda、Listerine Mouth Wash、Lloyds Cream、Lodine、Lorfit P、Loxonin、LTNS001、Mersyndol、Mesalamine SALIX、Mesalamine SOFAR、Mesalazine、Mesasal GLAXO、Mesasal SANOFI、Mesulid、
Metsal Heat Rub、Midol Complete、Midol Extended Relief、Midol Liquid Gels、Midol PM、Midol Teen Formula、Migranin COATED TABLETS、ML3000、Mobic、Mohrus、Motrin、Motrin Cold and Sinus Pain、Motrin PM、Movalis ASPEN、MRX7EAT、Nalfon、Nalfon PEDINOL、Naprelan、Naprosyn、Naprosyn RPG LIFE SCIENCE、Naproxen IROKO、NCX4016、NCX701、NeoProfen LUNDBECK、Nevanac、Nexcede、Niflan、Norgesic MEDICIS、Novalgin、Nuprin SCOLR、Nurofen、Nurofen Cold and Flu、Nurofen Max Strength Migraine、Nurofen Plus、Nuromol、NyQuil with Vitamin C、Ocufen、OMS103HP、Oralease、Orudis ABBOTT JAPAN、Oruvail、Osteluc、OxycoDex、P54、Panadol、Panadol Actifast、Paradine、Paramax、Parfenac、Pedea、Pennsaid、Pentasa、Pentasa ORIFARM、Peon、Percodan、Percodan−Demi、PercoDex、Percogesic、Perfalgan、PL2200、PL3100、Ponstel、Prexige、Prolensa、PSD508、R−Ketoprofen、Rantudil、Relafen、Remura、Robaxisal、Rotec、Rowasa、ROX828、RP19583、RQ00317076、Rubor、Salofalk、Salonpas、Saridon、SDX101、Seltouch、sfRowasa、Shinbaro、Sinumax、Sinutab、Sinutab、sinus、Spalt、Sprix、Strefen、Sudafed Cold and Cough、Sudafed Head Cold and Sinus、Sudafed PE Cold plus Cough、Sudafed PE Pressure plus Pain、Sudafed PE、Severe Cold、Sudafed PE Sinus Day plus Night Relief Day Tablets、Sudafed PE Sinus Day plus Night Relief Night Tablets、Sudafed PE Sinus plus Anti−inflammatory Pain Relief、Sudafed Sinus Advance、Surgam、Synalgos−DC、Synflex、Tavist allergy/sinus/headache、TDS943、TDT070、Theraflu Cold and Sore Throat、Theraflu Daytime Severe Cold and Cough、Theraflu Daytime Warming Relief,Theraflu Warming Relief Caplets Daytime Multi−Symptom Cold、Theraflu Warming Relief Cold and Chest Congestion、Thomapyrin、Thomapyrin C、Thomapyrin Effervescent、Thomapyrin Medium、Tilcotil、Tispol、Tolectin、Toradol、TPR100、TQ1011、Trauma−Salbe、Trauma−Salbe Kwizda、Treo、Treximet、Trovex、TT063、Tylenol、Tylenol Allergy Multi−Symptom、Tylenol Back Pain、Tylenol Cold & Cough Daytime、Tylenol Cold & Cough Nighttime、Tylenol Cold and Sinus Daytime、Tylenol Cold and Sinus Nighttime、Tylenol Cold Head Congestion Severe、Tylenol Cold Multi Symptom Daytime、Tylenol Cold Multi Symptom Nighttime Liquid、Tylenol Cold Multi Symptom Severe、Tylenol Cold Non−Drowsiness Formula、Tylenol Cold Severe Congestion Daytime、Tylenol Complete Cold,Cough and Flu Night time、Tylenol Flu Nighttime、Tylenol Menstrual、Tylenol PM、Tylenol Sinus Congestion & Pain Daytime、Tylenol Sinus Congestion & Pain Nighttime、Tylenol Sinus Congestion & Pain Severe、Tylenol Sinus Severe Congestion Daytime、Tylenol Ultra Relief、Tylenol with Caffeine and Codeine phosphate、Tylenol with Codeine phosphate、Ultra Strength Bengay Cream、Ultracet、UR8880、V0498TA01A、Vicks NyQuil Cold and Flu Relief、Vicoprofen、Vimovo、Voltaren Emulgel、Voltaren GEL、Voltaren NOVARTIS CONSUMER HEALTH GMBH、Voltaren XR、VT122、Xefo、Xefo Rapid、Xefocam、Xibrom、XL3、Xodol、XP20B、XP21B、XP21L、ZipsorおよびZoenasaから選択される。別の態様において、COX−2インヒビターは、当該分野で公知の方法によって特定され得る(例えば、Dannhardt,G.and Kiefer,W.Cyclooxygenase inhibitors−current status and future prospects.2001.Eur.J.Med.Chem.36:109−126(これは本明細書中で参照により援用される)を参照のこと)。いくつかの態様において、COX−2インヒビターは、進行乳がんを有する患者において転移を処置するためまたは予防するためまたは阻害するために使用される。いくつかの態様において、COX−2インヒビターは、第2の処置と組み合わせて使用される。いくつかの態様において、第2の処置は、本明細書中に記載される任意の処置である。いくつかの態様において、COX−2インヒビターは、デノスマブ、Zometa(http://www.us.zometa.com/index.jsp?usertrack.filter_applied=true&NovaId=2935376934467633633;最終アクセス日2012年12月2日)、CarbozantinibまたはCabozantinib、PTHLH(副甲状腺ホルモン様ホルモン)またはPTHrP(副甲状腺ホルモン関連タンパク質)を阻止する抗体またはペプチドおよびEverolimusからなる群より選択される第2の処置と組み合わせて使用される。
【0122】
別の態様において、骨分解を回避するためおよび/または予防するために使用される処置剤としては、以下が挙げられるが、これらに限定されない:
・副甲状腺ホルモン(PTH)インヒビターおよび副甲状腺様ホルモン(PTHLH)インヒビター(阻止抗体を含む)またはそれらの組換え型(PTHのアミノ酸7〜34に対応するテリパラチド)。このホルモンは、破骨細胞を刺激してその活性を高めることによって作用する。
・ラネル酸ストロンチウムは、代替の経口処置であり、骨芽細胞の増殖を刺激し、破骨細胞の増殖を阻害するので、「二重作用骨剤(dual action bone agents)」(DABA)と呼ばれる薬物の群の一部を形成する。
・「エストロゲンレセプター調節因子」(estrogen receptor modulator)(SERM)は、機序に関係なくエストロゲンがレセプターに結合するのを干渉するかまたは阻害する化合物のことを指す。エストロゲンレセプター調節因子の例としては、とりわけ、エストロゲンプロゲスターゲン、エストラジオール、ドロロキシフェン、ラロキシフェン、ラソホキシフェン(lasofoxifene)、TSE−424、タモキシフェン、イドキシフェン(idoxifene)、LY353381、LY117081、トレミフェン、フルベストラント(fluvestrant)、4−[7−(2,2−ジメチル−1−オキソプロポキシ−4−メチル−2−[4−[2−(1−ピペリジニル)エトキシ]フェニル]−2H−1−ベンゾピラン−3−イル]−フェニル−2,2−ジメチルプロパノエート 4,4’ジヒドロキシベンゾフェノン−2,4−ジニトロフェニル−ヒドラゾンおよびSH646が挙げられる。
・カルシトニンは、カルシトニンレセプターを介して破骨細胞の活性を直接阻害する。カルシトニンレセプターは、破骨細胞の表面上で同定されている。
・ビスホスホネートは、骨粗鬆症および骨転移を伴うがん(後者は、乳がんおよび前立腺がんに関連する高カルシウム血症を伴うかまたは伴わない)などの、骨吸収および再吸収を伴う疾患の予防および処置のために使用される医薬品の群である。本発明の第5の方法によってデザインされる治療において使用され得るビスホスホネートの例としては、窒素含有ビスホスホネート(例えば、パミドロネート、ネリドロネート(neridronate)、オルパドロネート(olpadronate)、アレンドロネート、イバンドロネート、リセドロネート、インカドロネート、ゾレドロネート(zoledronate)またはゾレドロン酸など)および窒素非含有ビスホスホネート(例えば、エチドロネート、クロドロネート、チルドロネートなど)が挙げられるが、これらに限定されない。
・「カテプシンKインヒビター」とは、カテプシンKシステインプロテアーゼ活性に干渉する化合物のことを指す。カテプシンKインヒビターの非限定的な例としては、4−アミノ−ピリミジン−2−カルボニトリル誘導体(Novartis Pharma GMBHの名称下の国際特許出願WO03/020278に記載されている)、公報WO03/020721(Novartis Pharma GMBH)および公報WO04/000843(ASTRAZENECA AB)に記載されているピロロ−ピリミジン、ならびにAxys Pharmaceuticalsの公報PCT WO00/55126、Merck Frosst Canada & Co.およびAxys PharmaceuticalsのWO01/49288に記載されているインヒビターが挙げられる。
・本明細書中で使用されるとき「DKK−1(Dickkopf−1)インヒビター」は、DKK−1活性を低下させることができる任意の化合物のことを指す。DKK−1は、主に成体の骨において発現され、溶骨性病変を有するミエローマ患者においてアップレギュレートされる、可溶性Wnt経路アンタゴニストである。DKK−1を標的化する薬剤は、多発性骨髄腫患者における溶骨性骨疾患の予防に役割を果たし得る。Novartis製のBHQ880は、ファースト・イン・クラスの完全にヒトの抗DKK−1中和抗体である。前臨床試験は、BHQ880が骨形成を促進し、それによって、腫瘍が誘導する溶骨性疾患を阻害するという仮説を支持している(Ettenberg S.ら、American Association for Cancer Research Annual Meeting.April 12−16,2008;San Diego,Calif.要旨)。
・本明細書中で使用されるとき「METおよびVEGFR2の二重インヒビター」は、METによって駆動される腫瘍エスケープを阻止するようにデザインされた、MET経路およびVEGF経路の強力な二重インヒビターである任意の化合物のことを指す。METは、腫瘍細胞および内皮細胞だけでなく、骨芽細胞(骨を形成する細胞)および破骨細胞(骨を除去する細胞)においても発現される。HGFは、これらの細胞型のすべてにおいてMETに結合し、MET経路に複数のオートクラインループおよびパラクリンループにおける重要な役割を与える。腫瘍細胞におけるMETの活性化は、転移性の骨病変の確立において重要であるとみられる。同時に、骨芽細胞および破骨細胞におけるMET経路の活性化は、異常な骨の成長(すなわち、芽細胞性の病変)または破壊(すなわち、溶解性の病変)を含む骨転移の病理学的特色をもたらし得る。したがって、MET経路の標的化は、転移性の骨病変の確立および進行を予防する実行可能なストラテジーであり得る。以前はXL184(CAS849217−68−1)として知られていたカボザンチニブ(cabozantinib)(Exelixis,Inc)は、METによって駆動される腫瘍エスケープを阻止するようにデザインされた、MET経路およびVEGF経路の強力な二重インヒビターである。複数の前臨床試験において、カボザンチニブは、腫瘍細胞を死滅させ、転移を減少させ、血管新生(腫瘍の成長を支えるために必要な新しい血管の形成)を阻害することが示されている。別の好適な二重インヒビターは、E7050(N−[2−フルオロ−4−({2−[4−(4−メチルピペラジン−1−イル)ピペリジン−1−イル]カルボニルアミノピリジン−4−イル}オキシ)フェニル]−N’−(4−フルオロフェニル)シクロプロパン−1,1−ジカルボキサミド(2R,3R)−タルトレート)(CAS928037−13−2)またはフォレチニブ(foretinib)(GSK1363089、XL880、CAS849217−64−7としても知られる)である。
・本明細書中で使用されるとき「RANKLインヒビター」は、RANK活性を低下させることができる任意の化合物のことを指す。RANKLは、ストローマ細胞およびT−リンパ球細胞の骨芽細胞膜の表面上に見出され、これらのT−リンパ球細胞は、それを分泌する能力が証明されている唯一の細胞である。その主要な機能は、骨吸収に関わる細胞である破骨細胞の活性化である。RANKLインヒビターは、RANKLがそのレセプター(RANK)に結合するのを阻止すること、RANK媒介性シグナル伝達を阻止すること、またはRANKLの転写もしくは翻訳を阻止することによってRANKLの発現を減少させることによって、作用し得る。本発明における使用に適したRANKLアンタゴニストまたはインヒビターとしては、以下が挙げられるが、これらに限定されない:
・RANKLに結合することができ、RANKタンパク質の細胞外ドメインの全体またはフラグメントを含む、好適なRANKタンパク質。可溶性RANKは、マウスもしくはヒトRANKポリペプチドのシグナルペプチドおよび細胞外ドメインを含み得るか、またはあるいは、シグナルペプチドが除去されたそのタンパク質の成熟型が使用され得る。
・オステオプロテゲリンまたはRANKL結合能を有するそのバリアント。
・RANKL特異的アンチセンス分子。
・RANKLの転写産物をプロセシングすることができるリボザイム。
・特異的な抗RANKL抗体。「抗RANKL抗体またはRANKLに対し指向する抗体」は、1つまたは複数のRANKLの機能を阻害する、核因子κBに対する活性化レセプターのリガンド(RANKL)に特異的に結合することができるすべての抗体と本明細書中で理解される。それらの抗体は、当業者に公知の任意の方法を用いて調製され得る。したがって、ポリクローナル抗体は、阻害されるべきタンパク質で動物を免疫することによって調製される。モノクローナル抗体は、Kohler,Milsteinら(Nature,1975,256:495)に記載されている方法を用いて調製される。本発明の文脈において好適な抗体としては、可変抗原結合領域および定常領域を含むインタクトな抗体、フラグメント「Fab」、「F(ab’)2」および「Fab’」、Fv、scFv、ダイアボディおよび二重特異性抗体が挙げられる。
・特異的な抗RANKLナノボディ。ナノボディは、天然に存在する重鎖抗体の独特の構造的および機能的特性を含む、抗体由来の治療タンパク質である。ナノボディ技術は、ラクダ科動物(ラクダおよびラマ)が軽鎖を欠く完全に機能的な抗体を有するという発見の後に、最初に開発された。ナノボディの一般構造は、
FR1−CDR1−FR2−CDR2−FR3−CDR3−FR4
であり、ここで、FR1からFR4は、フレームワーク領域1〜4であり、CDR1からCDR3は、相補性決定領域1〜3である。これらの重鎖抗体は、単一の可変ドメイン(VHH)および2つの定常ドメイン(CH2およびCH3)を含む。重要なことには、クローニングされ、単離されたVHHドメインは、元の重鎖抗体の完全な抗原結合能を有する完全に安定なポリペプチドである。独特の構造的および機能的特性を有するこれらの新しく発見されたVHHドメインは、Ablynxがナノボディと名付けた新世代の治療用抗体の基礎を形成している。
【0123】
1つの実施形態において、RANKLインヒビターは、RANKL特異的抗体、RANKL特異的ナノボディおよびオステオプロテゲリンからなる群より選択される。具体的な実施形態において、抗RANKL抗体は、モノクローナル抗体である。なおもより具体的な実施形態において、抗RANKL抗体は、デノスマブ(denosumab)(Pageau,Steven C.(2009).mAbs 1(3):210−215、CAS番号615258−40−7)(その全内容が本明細書によって参照により援用される)である。デノスマブは、RANKLに結合して、その活性化を妨げる完全にヒトのモノクローナル抗体である(これは、RANKレセプターには結合しない)。デノスマブの様々な態様が、米国特許第6,740,522号;同第7,411,050号;同第7,097,834号;同第7,364,736号(これらの各々の全内容が本明細書によってその全体において参照により援用される)によって包含されている。別の実施形態において、RANKLインヒビターは、デノスマブと同じエピトープに結合する抗体、抗体フラグメントまたは融合構築物。
【0124】
好ましい実施形態において、抗RANKLナノボディは、WO2008142164(その内容は参照により本願に援用される)に記載されているようなナノボディのいずれかである。なおもより好ましい実施形態において、抗RANKL抗体は、ALX−0141(Ablynx)である。ALX−0141は、閉経後の骨粗鬆症、関節リウマチ(reumatoid arthritis)、がんおよびある特定の医薬に関連する骨減少を阻害するように、および健常な骨代謝のバランスを再建するように、デザインされた。
【0125】
好ましい実施形態において、骨分解を予防する薬剤は、ビスホスホネート、RANKLインヒビター、PTHおよびPTHLHインヒビターまたはPRGアナログ、ラネル酸ストロンチウム、DKK−1インヒビター、METおよびVEGFR2の二重インヒビター、エストロゲンレセプター調節因子、ラジウム−223カルシトニンならびにカテプシンKインヒビターからなる群より選択される。より好ましい実施形態において、骨分解を予防する薬剤は、ビスホスホネートである。なおもより好ましい実施形態において、ビスホスホネートは、ゾレドロン酸である。
【0126】
1つの実施形態において、CCR5アンタゴニストは、骨への原発性乳がん腫瘍の転移を予防するためまたは阻害するために投与される。1つの実施形態において、CCR5アンタゴニストは、大分子である。別の実施形態において、CCR5アンタゴニストは、小分子である。いくつかの実施形態において、CCR5アンタゴニストは、マラビロク(maraviroc)(Velasco−Vela’quez,M.ら、2012.CCR5 Antagonist Blocks Metastasis of Basal Breast Cancer Cells.Cancer Research.72:3839−3850)である。いくつかの実施形態において、CCR5アンタゴニストは、ビクリビロク(vicriviroc)(Velasco−Vela’quez,M.ら、2012.CCR5 Antagonist Blocks Metastasis of Basal Breast Cancer Cells.Cancer Research.72:3839−3850)である。いくつかの態様において、CCR5アンタゴニストは、アプラビロク(aplaviroc)(Demarest J.F.ら、2005.Update on Aplaviroc:An HIV Entry Inhibitor Targeting CCR5.Retrovirology 2(Suppl.1):S13)である。いくつかの態様において、CCR5アンタゴニストは、スピロピペリジンCCR5アンタゴニスト(Rotstein D.M.ら、2009.Spiropiperidine CCR5 antagonists.Bioorganic & Medicinal Chemistry Letters.19(18):5401−5406)である。いくつかの実施形態において、CCR5アンタゴニストは、INCB009471(Kuritzkes,D.R.2009.HIV−1 entry inhibitors:an overview.Curr.Opin.HIV AIDS.4(2):82−7)である。
【0127】
好ましい実施形態において、METおよびVEGFR2の二重インヒビターは、カボザンチニブ、フォレチニブおよびE7050からなる群より選択される。
【0128】
好ましい実施形態において、ラジウム223治療は、アルファラディンである。
【0129】
あるいは、転移を処置するためおよび/もしくは予防するために上で述べられた薬剤のうちの2つ以上の薬剤が組み合わされる組合せ処置が行われ得るか、または上記薬剤は、他のサプリメント(例えば、カルシウムまたはビタミンD)もしくはホルモン処置と組合わされ得る。
【0130】
乳がん患者における早期の骨転移を予測するための方法
別の態様において、本発明は、HER2+乳がんなどの乳がんに罹患している被験体における骨転移のリスクを決定するためのインビトロでの方法に関し、その方法は、上記被験体のサンプル中のMAF遺伝子の発現レベルを決定する工程を含み、ここで、平均値+1標準偏差より高い上記遺伝子の発現レベルは、早期の骨転移の上昇したリスクを示す。
【0131】
好ましい実施形態において、骨転移は、非常に早期の骨転移である。
【0132】
好ましい実施形態において、骨転移は、溶骨性転移である。
【0133】
「早期の骨転移」は、本明細書中で使用されるとき、乳がんの患者における手術後5年より前に現れる骨転移に関する。
【0134】
「非常に早期の骨転移」は、本明細書中で使用されるとき、乳がんの患者における手術後3年より前に現れる骨転移に関する。
【0135】
本発明の第4の方法は、第1の工程に、HER2+乳がんなどの乳がんに罹患している被験体のサンプル中のMAF遺伝子発現レベルを定量する工程を含む。好ましい実施形態において、サンプルは、腫瘍組織サンプルである。
【0136】
好ましい実施形態において、本発明の第4の方法は、MAF遺伝子発現レベルだけを単一マーカーとして定量する工程を含み、すなわち、その方法は、いかなる追加のマーカーの発現レベルを決定する工程も含まない。MAF遺伝子発現レベルは、本発明の第1の方法に対して先に開示されたように定量され得る。
【0137】
好ましい実施形態において、乳がんは、HER2+乳がんである。
【0138】
第2の工程において、平均値+1標準偏差より高い上記遺伝子の発現レベルは、早期の骨転移の上昇したリスクを示す。
【0139】
「平均レベル」は、本明細書中で使用されるとき、一群の等しくない値の全体的な有意性を要約するかまたは表す、MAF発現レベルの単一の値(平均値、最頻値または中央値として)に関する。好ましい実施形態において、平均レベルは、乳がん腫瘍の代表的なコホートから得られる発現レベルの平均に対応する。その患者コホートは、評価しようとしている個々の患者を代表する年齢によって定義される。
【0140】
「標準偏差」は、本明細書中で使用されるとき、数値の集合のばらつきの尺度に関する。例えば、MAFの正常な平均レベルに対する標準偏差は、乳房腫瘍サンプルに見出されるMAFレベルの集合のばらつきである。そのデータから離れて広がるほど、偏差は大きくなる。標準偏差は、度数分布における平均値からの、実測値の平方偏差の平均値の平方根を求めることによって得ることができる。
【0141】
いったん、乳がん(例えば、HER2+乳がん)を有する被験体由来のサンプル中のMAF遺伝子発現レベルが、測定されて、平均レベルと比較されたら、上記遺伝子の発現レベルが、平均レベルと比較して平均+1標準偏差より高い場合、上記被験体は、早期の骨転移を起こす傾向がより高いと結論づけられ得る。
【0142】
骨転移を伴うHER2+乳がん患者において個別化治療をデザインするための方法
別の態様において、本発明は、骨転移を伴うHER2+乳がんを有する被験体のために個別化治療をデザインするためのインビトロでの方法(本明細書中以後、本発明の第5の方法)に関し、その方法は、
i)上記被験体の骨転移サンプル中のMAF遺伝子発現レベルを定量する工程、および
ii)工程(i)において得られた発現レベルを参照値と比較する工程
を含み、ここで、MAF遺伝子発現レベルが、上記参照値と比較して上昇している場合、上記被験体は、骨分解の予防を目指す治療を受けるのに適格である。
【0143】
好ましい実施形態において、骨転移は、溶骨性転移である。
【0144】
本発明の第5の方法は、第1の工程に、HER2+乳がんに罹患している被験体のサンプル中のMAF遺伝子発現レベル(またはMAFの転座もしくは増幅)を定量する工程を含む。本発明の第5の方法の場合、サンプルは、骨転移からの組織サンプルであり得る。
【0145】
好ましい実施形態において、本発明の第5の方法は、MAF遺伝子発現レベルだけを単一マーカーとして定量する工程を含み、すなわち、その方法は、いかなる追加のマーカーの発現レベルを決定する工程も含まない。
【0146】
第2の工程において、被験体の腫瘍サンプルにおいて得られたMAF遺伝子発現レベル(またはMAFの転座もしくは増幅)は、参照値と比較される。好ましい実施形態において、参照値は、コントロールサンプルにおけるMAF遺伝子発現レベルである。解析されるべき腫瘍のタイプに応じて、コントロールサンプルの正確な性質は変動し得る。したがって、本発明の第5の方法を含む場合において、参照サンプルは、転移に罹患していないHER2+乳がんを有する被験体のサンプル、または転移に罹患していないHER2+乳がんを有する被験体の生検サンプルの腫瘍組織コレクションにおいて測定されたMAF遺伝子発現レベルの中央値に対応するサンプルである。
【0147】
いったん、サンプル中のMAF遺伝子発現レベルが、測定されて、参照値(例えば、コントロールサンプルのMAF遺伝子発現レベル)と比較されたら、上記遺伝子の発現レベルが、参照値と比較して上昇している場合、これは、上記被験体が、骨分解の回避または予防を目指す治療を受けるのに適格であることを示している。
【0148】
骨分解の回避および/または予防のために使用される薬剤の例証的な例としては、以下が挙げられるが、これらに限定されない:
・副甲状腺ホルモン(PTH)インヒビターおよび副甲状腺様ホルモン(PTHLH)インヒビター(阻止抗体を含む)またはそれらの組換え型(PTHのアミノ酸7〜34に対応するテリパラチド)。このホルモンは、破骨細胞を刺激してその活性を高めることによって作用する。
・ラネル酸ストロンチウムは、代替の経口処置であり、骨芽細胞の増殖を刺激し、破骨細胞の増殖を阻害するので、「二重作用骨剤」(DABA)と呼ばれる薬物の群の一部を形成する。
・「エストロゲンレセプター調節因子」(SERM)は、機序に関係なくエストロゲンがレセプターに結合するのを干渉するかまたは阻害する化合物のことを指す。エストロゲンレセプター調節因子の例としては、とりわけ、エストロゲンプロゲスターゲン、エストラジオール、ドロロキシフェン、ラロキシフェン、ラソホキシフェン、TSE−424、タモキシフェン、イドキシフェン、LY353381、LY117081、トレミフェン、フルベストラント、4−[7−(2,2−ジメチル−1−オキソプロポキシ−4−メチル−2−[4−[2−(1−ピペリジニル)エトキシ]フェニル]−2H−1−ベンゾピラン−3−イル]−フェニル−2,2−ジメチルプロパノエート 4,4’ジヒドロキシベンゾフェノン−2,4−ジニトロフェニル−ヒドラゾンおよびSH646が挙げられる。
・カルシトニンは、カルシトニンレセプターを介して破骨細胞の活性を直接阻害する。カルシトニンレセプターは、破骨細胞の表面上で同定されている。
・ビスホスホネートは、骨粗鬆症および骨転移を伴うがん(後者は、乳がんおよび前立腺がんに関連する高カルシウム血症を伴うかまたは伴わない)などの、骨吸収および再吸収を伴う疾患の予防および処置のために使用される医薬品の群である。本発明の第5の方法によってデザインされる治療において使用され得るビスホスホネートの例としては、窒素含有ビスホスホネート(例えば、パミドロネート、ネリドロネート、オルパドロネート、アレンドロネート、イバンドロネート、リセドロネート、インカドロネート、ゾレドロネートまたはゾレドロン酸など)および窒素非含有ビスホスホネート(例えば、エチドロネート、クロドロネート、チルドロネートなど)が挙げられるが、これらに限定されない。
・アルファラディン(ラジウム−223二塩化物)。アルファラディンは、がん細胞を死滅させるために、ラジウム−223の崩壊からのアルファ線を使用する。ラジウム−223は、カルシウム模倣物としてのその特性のおかげで骨転移に向けて自然に自身を標的化する。アルファ線は、2〜10個の細胞という非常に短い範囲(ベータまたはガンマ線に基づく現行の放射線治療と比べて)を有するので、周囲の健常な組織(特に骨髄)にほとんど損傷をもたらさない。カルシウムとよく似た特性を有するので、ラジウム−223は、身体内の骨を構築するためにカルシウムが使用されている位置(去勢抵抗性の進行前立腺がんを有する男性の骨格転移に認められるようなより速い異常な骨成長の部位を含む)に引き込まれる。ラジウム−223は、注射後、異常に骨が成長している部位に血流によって運ばれる。がんが身体内で生じ始めた位置は、原発腫瘍として公知である。これらの細胞のうちのいくつかは、離脱して、血流によって身体の別の部位に運ばれ得る。次いで、それらのがん細胞は、身体のその位置に定着して、新しい腫瘍を形成し得る。これが起きる場合、それは、二次がんまたは転移と呼ばれる。後期の前立腺がんを有するほとんどの患者は、骨にその疾患の最大の負荷を被る。ラジウム−223を用いる目的は、この二次がんを選択的に標的化することである。骨に取り込まれない任意のラジウム−223は、すみやかに腸を経由して排泄される。
・「カテプシンKインヒビター」とは、カテプシンKシステインプロテアーゼ活性に干渉する化合物のことを指す。カテプシンKインヒビターの非限定的な例としては、4−アミノ−ピリミジン−2−カルボニトリル誘導体(Novartis Pharma GMBHの名称下の国際特許出願WO03/020278に記載されている)、公報WO03/020721(Novartis Pharma GMBH)および公報WO04/000843(ASTRAZENECA AB)に記載されているピロロ−ピリミジン、ならびにAxys Pharmaceuticalsの公報PCT WO00/55126、Merck Frosst Canada & Co.およびAxys PharmaceuticalsのWO01/49288に記載されているインヒビターが挙げられる。
・本明細書中で使用されるとき「DKK−1(Dickkopf−1)インヒビター」は、DKK−1活性を低下させることができる任意の化合物のことを指す。DKK−1は、主に成体の骨において発現され、溶骨性病変を有するミエローマ患者においてアップレギュレートされる、可溶性Wnt経路アンタゴニストである。DKK−1を標的化する薬剤は、多発性骨髄腫患者における溶骨性骨疾患の予防に役割を果たし得る。Novartis製のBHQ880は、ファースト・イン・クラスの完全にヒトの抗DKK−1中和抗体である。前臨床試験は、BHQ880が骨形成を促進し、それによって、腫瘍が誘導する溶骨性疾患を阻害するという仮説を支持している(Ettenberg S.ら、American Association for Cancer Research Annual Meeting.4月 12−16,2008;San Diego,Calif.要旨)。
・本明細書中で使用されるとき「METおよびVEGFR2の二重インヒビター」は、METによって駆動される腫瘍エスケープを阻止するようにデザインされた、MET経路およびVEGF経路の強力な二重インヒビターである任意の化合物のことを指す。METは、腫瘍細胞および内皮細胞だけでなく、骨芽細胞(骨を形成する細胞)および破骨細胞(骨を除去する細胞)においても発現される。HGFは、これらの細胞型のすべてにおけるMETに結合し、MET経路に、複数のオートクラインループおよびパラクリンループにおいて重要な役割を与える。腫瘍細胞におけるMETの活性化は、転移性の骨病変の確立において重要であるとみられる。同時に、骨芽細胞および破骨細胞におけるMET経路の活性化は、異常な骨の成長(すなわち、芽細胞性の病変)または破壊(すなわち、溶解性の病変)を含む骨転移の病理学的特色をもたらし得る。したがって、MET経路の標的化は、転移性の骨病変の確立および進行の予防の実行可能なストラテジーであり得る。以前はXL184(CAS849217−68−1)として知られていたカボザンチニブ(Exelixis,Inc)は、METによって駆動される腫瘍エスケープを阻止するようにデザインされた、MET経路およびVEGF経路の強力な二重インヒビターである。複数の前臨床試験において、カボザンチニブは、腫瘍細胞を死滅させ、転移を減少させ、血管新生(腫瘍の成長を支えるために必要な新しい血管の形成)を阻害することが示されている。別の好適な二重インヒビターは、E7050(N−[2−フルオロ−4−({2−[4−(4−メチルピペラジン−1−イル)ピペリジン−1−イル]カルボニルアミノピリジン−4−イル}オキシ)フェニル]−N’−(4−フルオロフェニル)シクロプロパン−1,1−ジカルボキサミド(2R,3R)−タルトレート)(CAS928037−13−2)またはフォレチニブ(GSK1363089、XL880、CAS849217−64−7としても知られる)である。
・本明細書中で使用されるとき「RANKLインヒビター」は、RANK活性を低下させることができる任意の化合物のことを指す。RANKLは、ストローマ細胞およびT−リンパ球細胞の骨芽細胞膜の表面上に見出され、これらのT−リンパ球細胞は、それを分泌する能力が証明されている唯一の細胞である。その主要な機能は、骨吸収に関わる細胞である破骨細胞の活性化である。RANKLインヒビターは、RANKLがそのレセプター(RANK)に結合するのを阻止すること、RANK媒介性シグナル伝達を阻止すること、またはRANKLの転写もしくは翻訳を阻止することによってRANKLの発現を減少させることによって、作用し得る。本発明における使用に適したRANKLアンタゴニストまたはインヒビターとしては、以下が挙げられるが、これらに限定されない:
・RANKLに結合することができ、RANKタンパク質の細胞外ドメインの全体またはフラグメントを含む、好適なRANKタンパク質。可溶性RANKは、マウスもしくはヒトRANKポリペプチドのシグナルペプチドおよび細胞外ドメインを含み得るか、またはあるいは、シグナルペプチドが除去されたそのタンパク質の成熟型が使用され得る。
・オステオプロテゲリンまたはRANKL結合能を有するそのバリアント。
・RANKL特異的アンチセンス分子。
・RANKLの転写産物をプロセシングすることができるリボザイム。
・特異的な抗RANKL抗体。「抗RANKL抗体またはRANKLに対し指向する抗体」は、1つまたは複数のRANKLの機能を阻害する、核因子κBに対する活性化レセプターのリガンド(RANKL)に特異的に結合することができるすべての抗体と本明細書中で理解される。それらの抗体は、当業者に公知の任意の方法を用いて調製され得る。したがって、ポリクローナル抗体は、阻害されるべきタンパク質で動物を免疫することによ
って調製される。モノクローナル抗体は、Kohler,Milsteinら(Nature,1975,256:495)に記載されている方法を用いて調製される。本発明の文脈において好適な抗体としては、可変抗原結合領域および定常領域を含むインタクトな抗体、フラグメント「Fab」、「F(ab’)2」および「Fab’」、Fv、scFv、ダイアボディおよび二重特異性抗体が挙げられる。
・特異的な抗RANKLナノボディ。ナノボディは、天然に存在する重鎖抗体の独特の構造的および機能的特性を含む、抗体由来の治療タンパク質である。ナノボディ技術は、ラクダ科動物(ラクダおよびラマ)が軽鎖を欠く完全に機能的な抗体を有するという発見の後に、最初に開発された。ナノボディの一般構造は、
FR1−CDR1−FR2−CDR2−FR3−CDR3−FR4
であり、ここで、FR1からFR4は、フレームワーク領域1〜4であり、CDR1からCDR3は、相補性決定領域1〜3である。これらの重鎖抗体は、単一の可変ドメイン(VHH)および2つの定常ドメイン(CH2およびCH3)を含む。重要なことには、クローニングされ、単離されたVHHドメインは、元の重鎖抗体の完全な抗原結合能を有する完全に安定なポリペプチドである。独特の構造的および機能的特性を有するこれらの新しく発見されたVHHドメインは、Ablynxがナノボディと名付けた新世代の治療用抗体の基礎を形成している。
【0149】
1つの実施形態において、RANKLインヒビターは、RANKL特異的抗体、RANKL特異的ナノボディおよびオステオプロテゲリンからなる群より選択される。具体的な実施形態において、抗RANKL抗体は、モノクローナル抗体である。なおもより具体的な実施形態において、抗RANKL抗体は、デノスマブ(Pageau,Steven C.(2009).mAbs 1(3):210−215、CAS番号615258−40−7)(その全内容が本明細書によって参照により援用される)である。デノスマブは、RANKLに結合して、その活性化を妨げる完全にヒトのモノクローナル抗体である(これは、RANKレセプターには結合しない)。デノスマブの様々な態様が、米国特許第6,740,522号;同第7,411,050号;同第7,097,834号;同第7,364,736号(これらの各々の全内容が本明細書によって参照により援用される)によって包含されている。別の実施形態において、RANKLインヒビターは、デノスマブと同じエピトープに結合する抗体、抗体フラグメントまたは融合構築物。
【0150】
好ましい実施形態において、抗RANKLナノボディは、WO2008142164(その内容は参照により本願に援用される)に記載されているようなナノボディのいずれかである。なおもより好ましい実施形態において、抗RANKL抗体は、ALX−0141(Ablynx)である。ALX−0141は、閉経後の骨粗鬆症、関節リウマチ、がんおよびある特定の薬剤に関連する骨減少を阻害するように、および健常な骨代謝のバランスを再建するように、デザインされた。
【0151】
好ましい実施形態において、骨分解を予防する薬剤は、ビスホスホネート、RANKLインヒビター、PTHおよびPTHLHインヒビターまたはPRGアナログ、ラネル酸ストロンチウム、DKK−1インヒビター、METおよびVEGFR2の二重インヒビター、エストロゲンレセプター調節因子、ラジウム−223、カルシトニンならびにカテプシンKインヒビターからなる群より選択される。より好ましい実施形態において、骨分解を予防する薬剤は、ビスホスホネートである。なおもより好ましい実施形態において、ビスホスホネートは、ゾレドロン酸である。
【0152】
1つの実施形態において、CCR5アンタゴニストは、骨への原発性乳がん腫瘍の転移を予防するためまたは阻害するために投与される。1つの実施形態において、CCR5アンタゴニストは、大分子である。別の実施形態において、CCR5アンタゴニストは、小分子である。いくつかの実施形態において、CCR5アンタゴニストは、Maraviroc(Velasco−Vela’quez,M.ら、2012.CCR5 Antagonist Blocks Metastasis of Basal Breast Cancer Cells.Cancer Research.72:3839−3850)である。いくつかの実施形態において、CCR5アンタゴニストは、Vicriviroc(Velasco−Vela’quez,M.ら、2012.CCR5 Antagonist Blocks Metastasis of Basal Breast Cancer Cells.Cancer Research.72:3839−3850)である。いくつかの態様において、CCR5アンタゴニストは、Aplaviroc(Demarest J.F.ら、2005.Update on Aplaviroc:An HIV Entry Inhibitor Targeting CCR5.Retrovirology 2(Suppl.1):S13)である。いくつかの態様において、CCR5アンタゴニストは、スピロピペリジンCCR5アンタゴニスト(Rotstein D.M.ら、2009.Spiropiperidine CCR5 antagonists.Bioorganic & Medicinal Chemistry Letters.19(18):5401−5406)である。いくつかの実施形態において、CCR5アンタゴニストは、INCB009471(Kuritzkes,D.R.2009.HIV−1 entry inhibitors:an overview.Curr.Opin.HIV AIDS.4(2):82−7)である。
【0153】
好ましい実施形態において、METおよびVEGFR2の二重インヒビターは、Cabozantinib、ForetinibおよびE7050からなる群より選択される。
【0154】
好ましい実施形態において、ラジウム223治療は、アルファラディンである。
【0155】
あるいは、転移を処置するためおよび/もしくは予防するために上で述べられた薬剤のうちの2つ以上の薬剤が組み合わされる組合せ処置が行われ得るか、または上記薬剤は、他のサプリメント(例えば、カルシウムまたはビタミンD)もしくはホルモン処置と組合わされ得る。
【0156】
MAF遺伝子の増幅の検出に基づく、HER2+乳がんにおける転移の予後診断の方法
別の態様において、本発明は、HER2+乳がんに罹患している被験体における上記がんの骨転移を予測するためのインビトロでの方法(本明細書中以後、本発明の第6の方法)に関し、その方法は、上記被験体のサンプル中のMAF遺伝子が、参照遺伝子コピー数と比べて増幅されているかを決定する工程を含み、ここで、上記参照遺伝子コピー数と比較したときのMAF遺伝子の増幅は、骨転移を起こす上昇したリスクを示す。
【0157】
いくつかの実施形態において、増幅は、16q23遺伝子座の領域における増幅である。いくつかの実施形態において、増幅は、およそ16番染色体の約79,392,959bp〜約79,663,806bp(セントロメアからテロメアまで)の染色体領域の任意の部分における増幅である。いくつかの実施形態において、増幅は、16番染色体の約79,392,959bp〜約79,663,806bpであるがDNA反復エレメントを排除したゲノム領域における増幅である。いくつかの実施形態において、増幅は、その領域に特異的なプローブを使用して測定される。
【0158】
特定の実施形態において、MAF遺伝子の増幅の程度は、上記遺伝子を含む染色体領域の増幅の決定によって決定され得る。好ましくは、その増幅がMAF遺伝子の増幅の存在を示す染色体領域は、MAF遺伝子を含む遺伝子座16q22−q24である。遺伝子座16q22−q24は、16番染色体、上記染色体の長腕およびバンド22〜バンド24の範囲に位置する。この領域は、NCBIデータベースにおいてコンティグNT_010498.15およびNT_010542.15と対応する。別の好ましい実施形態において、MAF遺伝子の増幅の程度は、上記遺伝子に特異的なプローブを使用することによって決定され得る。別の好ましい実施形態において、MAF遺伝子の増幅は、14q32および16q23に対するプローブを含むVysis LSI IGH/MAF Dual Color二重融合プローブを使用することによって決定される。
【0159】
本発明の第6の方法は、第1の工程に、MAF遺伝子が被験体のサンプルにおいて増幅されているかを決定する工程を含む。好ましい実施形態において、サンプルは、腫瘍組織サンプルである。その目的のために、腫瘍サンプル中のMAF遺伝子の増幅は、コントロールサンプルと比較される。
【0160】
特定の実施形態において、HER2+乳がんを有する被験体において骨転移を起こす傾向の予後診断のための本発明の第6の方法は、上記被験体のサンプル中のMAF遺伝子コピー数を決定する工程および上記コピー数をコントロールサンプルまたは参照サンプルのコピー数と比較する工程を含み、ここで、MAFコピー数が、コントロールサンプルのMAFコピー数より多い場合、その被験体は、骨転移を起こす傾向がより高い。
【0161】
コントロールサンプルとは、転移に罹患していないHER2+乳がんを有する被験体のサンプル、または転移に罹患していない、それぞれHER2+乳がんを有する被験体の生検サンプルの腫瘍組織コレクションにおいて測定されたMAF遺伝子コピー数の中央値に対応するサンプルのことを指す。上記参照サンプルは、代表的には、被験体集団由来の等量のサンプルを合わせることによって得られる。MAF遺伝子コピー数が、コントロールサンプル中の上記遺伝子のコピー数と比較して増加している場合、被験体は、転移を起こす傾向がより高い。
【0162】
好ましい実施形態において、MAF遺伝子コピー数が、参照サンプルまたはコントロールサンプルが有するコピー数より多いとき、MAF遺伝子は、参照遺伝子コピー数と比較して、増幅されている。1つの例において、MAF遺伝子のゲノムコピー数が、試験サンプルにおいて、コントロールサンプルと比べて少なくとも、約2倍増加している(すなわち、約6コピー)、約3倍増加している(すなわち、約8コピー)、約4倍、約5倍、約6倍、約7倍、約8倍、約9倍、約10倍、約15倍、約20倍、約25倍、約30倍、約35倍、約40倍、約45倍または約50倍増加している場合、MAF遺伝子は、「増幅されている」と言われる。別の例において、細胞1つあたりのMAF遺伝子のゲノムコピー数が、少なくとも約3、約4、約5、約6、約7、約8、約9、約10、約11、約12、約13、約14、約15、約16、約17、約18、約19、約20、約21、約22、約23、約24、約25、約26、約27、約28、約29、約30などである場合、MAF遺伝子は、「増幅されている」と言われる。
【0163】
特定の実施形態において、増幅またはコピー数は、インサイチュハイブリダイゼーションまたはPCRによって決定される。
【0164】
MAF遺伝子または染色体領域16q22−q24が増幅されているかを決定するための方法は、当該分野において広く公知である。上記方法としては、インサイチュハイブリダイゼーション(ISH)(例えば、蛍光インサイチュハイブリダイゼーション(FISH)、色素形成インサイチュハイブリダイゼーション(CISH)またはシルバーインサイチュハイブリダイゼーション(SISH))、ゲノム比較ハイブリダイゼーションまたはポリメラーゼ連鎖反応(例えば、リアルタイム定量的PCR)が挙げられるがこれらに限定されない。いずれのISH法の場合も、増幅またはコピー数は、染色体または核
における、蛍光の点、有色の点または銀を有する点の数を数えることによって測定され得る。
【0165】
蛍光インサイチュハイブリダイゼーション(FISH)は、染色体における特定のDNA配列の有無を検出するためおよびその特定のDNA配列の位置を特定するために使用される、細胞遺伝学的技法である。FISHは、染色体のいくつかの部分にだけ結合する蛍光プローブ(このプローブは、それらの部分と高い程度の配列類似性を示す)を使用する。代表的なFISH法では、DNAプローブは、ニックトランスレーションまたはPCRなどの酵素反応を用いてDNAに組み込まれる、代表的には、フッ素−dUTP、ジゴキシゲニン−dUTP、ビオチン−dUTPまたはハプテン−dUTPの形態の、蛍光分子またはハプテンで標識される。遺伝物質(染色体)を含むサンプルを、スライドガラスに載せ、ホルムアミド処理によって変性させる。次いで、標識されたプローブを、当業者が決定する好適な条件下で、その遺伝物質を含むサンプルとハイブリダイズさせる。ハイブリダイゼーションの後、直接(フッ素で標識されたプローブの場合)または間接的に(ハプテンを検出する蛍光標識された抗体を使用して)サンプルを観察する。
【0166】
CISHの場合、プローブを、ジゴキシゲニン、ビオチンまたはフルオレセインで標識し、好適な条件において、遺伝物質を含むサンプルとハイブリダイズさせる。
【0167】
DNAに結合し得る任意のマーキング分子または標識分子が、本発明の第4の方法において使用されるプローブを標識するために使用され得、それにより、核酸分子の検出が可能になる。標識するための標識の例としては、放射性同位体、酵素基質、補因子、リガンド、化学発光剤、フルオロフォア、ハプテン、酵素およびそれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。標識するための方法および種々の目的のために適した標識を選択するための指針は、例えば、Sambrookら(Molecular Cloning:A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor,New York,1989)およびAusubelら(Current Protocols in Molecular Biology,John Wiley and Sons,New York,1998)に見られ得る。
【0168】
MAF遺伝子の増幅、16q23遺伝子座の増幅を直接決定すること、または遺伝子座16q22−q24の増幅を決定することによって、増幅の存在が決定され、コントロールサンプル中の上記遺伝子の増幅と比較されたら、その後、MAF遺伝子における増幅が検出される場合、被験体が骨転移を起こす傾向がより高いという事実が示される。
【0169】
MAF遺伝子の増幅の決定は、転移に罹患していないHER2+乳がんを有する被験体のサンプルにおいて計測されたMAF遺伝子の増幅のレベルに対応するか、または転移に罹患していないHER2+乳がんを有する被験体の生検サンプルの腫瘍組織コレクションにおいて測定されたMAF遺伝子の増幅の中央値に対応する、コントロールサンプルまたは参照サンプルの値と相関させることを必要とする。上記参照サンプルは、代表的には、被験体集団由来の等量のサンプルを合わせることによって得られる。一般に、代表的な参照サンプルは、臨床的に十分に考証されている被験体および転移が無いことが十分に特徴付けられている被験体から得られる。参照レベルが由来するサンプルコレクションは、好ましくは、その研究の患者対象と同じタイプのがんに罹患している被験体で構成されている。いったん、この中央値が確立されたら、患者の腫瘍組織におけるc−MAFの増幅のレベルは、この中央値と比較され得、ゆえに、増幅が存在する場合、被験体は、転移を起こす傾向がより高い。
【0170】
好ましい実施形態において、骨転移は、溶骨性骨転移である。本明細書中で使用される
とき、「溶骨性骨転移」と言う表現は、腫瘍細胞による破骨細胞活性の刺激に起因して転移の近傍で骨吸収(骨密度の進行性消失)が生じ、重篤な疼痛、病理学的骨折、高カルシウム血症、脊髄圧迫、および神経圧迫に起因する他の症候群を特徴とする、転移のタイプを指す。
【0171】
MAF遺伝子の転座の検出に基づく、HER2+乳がんにおける転移の予後診断の方法
別の態様において、本発明は、HER2+乳がんに罹患している患者の臨床転帰を予測するためのインビトロでの方法に関し、その方法は、上記被験体のサンプル中のMAF遺伝子が、転座しているかを決定する工程を含み、ここで、MAF遺伝子の転座は、不良な臨床転帰を示す。
【0172】
別の態様において、本発明は、HER2+乳がんに罹患している患者の臨床転帰を予測するためのインビトロでの方法に関し、その方法は、上記被験体のサンプル中のMAF遺伝子が、転座しているかを決定する工程を含み、ここで、MAF遺伝子の転座は、不良な臨床転帰を示す。
【0173】
いくつかの実施形態において、転座遺伝子は、16q23遺伝子座の領域由来である。いくつかの実施形態において、転座遺伝子は、およそ16番染色体の約79,392,959bp〜約79,663,806bp(セントロメアからテロメアまで)の染色体領域の任意の部分由来である。いくつかの実施形態において、転座遺伝子は、およそ16番染色体の約79,392,959bp〜約79,663,806bpであるがDNA反復エレメントを排除したゲノム領域由来である。いくつかの実施形態において、転座は、その領域に特異的なプローブを使用して測定される。
【0174】
特定の実施形態において、MAF遺伝子の転座は、上記遺伝子を含む染色体領域の転座の決定によって決定され得る。1つの実施形態において、転座は、t(14,16)転座である。別の実施形態において、転座している染色体領域は、遺伝子座16q22−q24由来である。遺伝子座16q22−q24は、16番染色体、上記染色体の長腕およびバンド22〜バンド24の範囲に位置する。この領域は、NCBIデータベースにおいてコンティグNT_010498.15およびNT_010542.15と対応する。好ましい実施形態において、MAF遺伝子は、14番染色体の遺伝子座14q32に転座し、転座t(14,16)(q32,q23)が生じる。この転座は、IgH遺伝子座における強力なエンハンサーの隣にMAF遺伝子に配置し、このことは、場合によってはMAFの過剰発現をもたらす(Eychene,A.,Rocques,N.,and Puoponnot,C.,A new MAFia in cancer.2008.Nature Reviews:Cancer.8:683−693)。
【0175】
好ましい実施形態において、MAF遺伝子の転座は、上記転座に特異的なプローブを使用することによって決定され得る。いくつかの実施形態において、転座は、二色プローブを使用して測定される。いくつかの実施形態において、転座は、二重融合プローブを使用して測定される。いくつかの実施形態において、転座は、二色の二重融合プローブを使用して測定される。いくつかの実施形態において、転座は、2つの別個のプローブを使用して測定される。
【0176】
別の好ましい実施形態において、MAF遺伝子の転座は、14q32および16q23に対するプローブを含むVysis LSI IGH/MAF Dual Color二重融合プローブ(http://www.abbottmolecular.com/us/products/analyte−specific−reagent/fish/vysis−lsi−igh−maf−dual−color−dual−fusion−probe.html;最終アクセス日2012年11月5日)を使用して決定される。別の好ましい実施形態において、MAF遺伝子の転座は、Kreatech diagnostics MAF/IGH gt(14;16)Fusionプローブ(http://www.kreatech.com/products/repeat−freetm−poseidontm−fish−probes/hematology/maf−igh−gt1416−fusion−probe.html;最終アクセス日2012年11月5日)、Abnova MAF FISHプローブ(http://www.abnova.com/products/products_detail.asp?Catalog_id=FA0375;最終アクセス日2012年11月5日)、Cancer Genetics Italia IGH/MAF Two Color,Two Fusion転座プローブ(http://www.cancergeneticsitalia.com/dna−fish−probe/ighmaf/;最終アクセス日2012年11月5日)、Creative Bioarray IGH/MAF−t(14;16)(q32;q23)FISHプローブ(http://www.creative−bioarray.com/products.asp?cid=35&page=10;最終アクセス日2012年11月5日)、Arup LaboratoriesのFISHによる多発性骨髄腫パネル(http://www.aruplab.com/files/technical−bulletins/Multiple%20Myeloma%20%28MM%29%20by%20FISH.pdf;最終アクセス日2012年11月5日)、Agilentの16q23または14q32に特異的なプローブ(http://www.genomics.agilent.com/ProductSearch.aspx?chr 16&start=79483700&end=79754340;最終アクセス日2012年11月5日;http://www.genomics.agilent.com/ProductSearch.aspx?Pageid=3000&ProductID=637;最終アクセス日2012年11月5日)、Dakoの16q23または14q32に特異的なプローブ(http://www.dako.com/us/ar42/psg42806000/baseproducts_surefish.htm?setCountry=true&purl=ar42/psg42806000/baseproducts_surefish.htm?undefined&submit=Accept%20country;最終アクセス日2012年11月5日)、Cytocell IGH/MAF Translocation,Dual Fusion Probe(http://www.zentech.be/uploads/docs/products_info/prenatalogy/cytocell%202012−2013%20catalogue%5B3%5D.pdf;最終アクセス日2012年11月5日)、Metasystems XL IGH/MAF Translocation −Dual Fusion Probe(http://www.metasystems−international.com/index.php?option=com_joodb&view=article&joobase=5&id=12%3Ad−5029−100−og&Itemid=272;最終アクセス日2012年11月5日)、Zeiss FISH Probes XL,100μl,IGH/MAFB(https://www.micro−shop.zeiss.com/?s=440675675dedc6&l=en&p=uk&f=r&i=5000&o=&h=25&n=1&sd=000000−0528−231−uk;最終アクセス日2012年11月5日)またはGenycell Biotech IGH/MAF Dual Fusion Probe(http://www.google.com/url?sa=t&rct=j&q=&esrc=s&source=web&cd=1&ved=0CCQQFjAA&url=http%3A%2F%2Fwww.genycell.es%2Fimages%2Fproductos%2Fbrochures%2Flphmie6_86.ppt&ei=MhGYUOi3GKWH0QGlt4DoDw&usg=AFQjCNEqQMbT8vQGjJbi9riEf3lVgoFTFQ&sig2=V5IS8juEMVHB18Mv2Xx_Ww;最終アクセス日2012年11月5日)を使用して決定される。
【0177】
いくつかの実施形態において、プローブ上の標識は、フルオロフォアである。いくつかの実施形態において、プローブ上のフルオロフォアは、橙色である。いくつかの実施形態において、プローブ上のフルオロフォアは、緑色である。いくつかの実施形態において、プローブ上のフルオロフォアは、赤色である。場合によっては、プローブ上のフルオロフォアは、黄色である。いくつかの実施形態において、1つのプローブは、赤色フルオロフォアで標識され、1つは、緑色フルオロフォアで標識される。いくつかの実施形態において、1つのプローブは、緑色フルオロフォアで標識され、1つは、橙色フルオロフォアで標識される。場合によっては、プローブ上のフルオロフォアは、黄色である。例えば、MAF特異的プローブが、赤色フルオロフォアで標識され、IGH特異的プローブが、緑色フルオロフォアで標識され、白色が見られる場合、それは、それらのシグナルが重なっており、転座が起きていることを示す。
【0178】
いくつかの実施形態において、フルオロフォアは、SpectrumOrangeである。いくつかの実施形態において、フルオロフォアは、SpectrumGreenである。いくつかの実施形態において、フルオロフォアは、DAPIである。いくつかの実施形態において、フルオロフォアは、PlatinumBright405である。いくつかの実施形態において、フルオロフォアは、PlatinumBright415である。いくつかの実施形態において、フルオロフォアは、PlatinumBright495である。いくつかの実施形態において、フルオロフォアは、PlatinumBright505である。いくつかの実施形態において、フルオロフォアは、PlatinumBright550である。いくつかの実施形態において、フルオロフォアは、PlatinumBright547である。いくつかの実施形態において、フルオロフォアは、PlatinumBright570である。いくつかの実施形態において、フルオロフォアは、PlatinumBright590である。いくつかの実施形態において、フルオロフォアは、PlatinumBright647である。いくつかの実施形態において、フルオロフォアは、PlatinumBright495/550である。いくつかの実施形態において、フルオロフォアは、PlatinumBright415/495/550である。いくつかの実施形態において、フルオロフォアは、DAPI/PlatinumBright495/550である。いくつかの実施形態において、フルオロフォアは、FITCである。いくつかの実施形態において、フルオロフォアは、Texas Redである。いくつかの実施形態において、フルオロフォアは、DEACである。いくつかの実施形態において、フルオロフォアは、R6Gである。いくつかの実施形態において、フルオロフォアは、Cy5である。いくつかの実施形態において、フルオロフォアは、FITC、Texas RedおよびDAPIである。いくつかの実施形態において、DAPI対比染色は、転座、増幅またはコピー数の変化を可視化するために使用される。
【0179】
本発明の1つの実施形態は、第1の工程においてMAF遺伝子が被験体のサンプル中で転座しているかを決定する方法を含む。好ましい実施形態において、サンプルは、腫瘍組織サンプルである。
【0180】
特定の実施形態において、HER2+乳がんを有する被験体において骨転移を起こす傾向の予後診断のための本発明の方法は、MAF遺伝子が転座している上記被験体のサンプル中のMAF遺伝子コピー数を決定する工程および上記コピー数をコントロールサンプルまたは参照サンプルのコピー数と比較する工程を含み、ここで、そのMAFのコピー数が、コントロールサンプルのMAFのコピー数と比較して多い場合、その被験体は、骨転移を起こす傾向がより高い。
【0181】
MAF遺伝子または染色体領域16q22−q24が転座しているかを決定するための方法は、当該分野において広く公知であり、MAFの増幅について先に記載された方法を含む。上記方法としては、インサイチュハイブリダイゼーション(ISH)(例えば、蛍光インサイチュハイブリダイゼーション(FISH)、色素形成インサイチュハイブリダイゼーション(CISH)またはシルバーインサイチュハイブリダイゼーション(SISH))、ゲノム比較ハイブリダイゼーションまたはポリメラーゼ連鎖反応(例えば、リアルタイム定量的PCR)が挙げられるがこれらに限定されない。いずれのISH方法の場合も、増幅、コピー数または転座は、染色体または核における、蛍光の点、有色の点または銀を有する点の数を数えることによって決定され得る。他の実施形態において、コピー数の変化および転座の検出は、ホールゲノムシーケンシング、エクソームシーケンシングの使用、または任意のPCRに由来する技術の使用によって検出され得る。例えば、PCRは、転座を検出するためにゲノムDNAのサンプルにおいて行われ得る。1つの実施形態において、定量的PCRが使用される。1つの実施形態において、PCRは、MAF遺伝子に特異的なプライマーおよびIGHプロモーター領域に特異的なプライマーを用いて行われる;生成物が生成される場合、転座が生じている。
【0182】
いくつかの実施形態において、MAF遺伝子の増幅およびコピー数は、MAF遺伝子の転座が決定された後に、決定される。いくつかの実施形態において、プローブを使用して、細胞がMAF遺伝子倍数体であるかが決定される。いくつかの実施形態において、倍数性の決定は、目的の遺伝子からの2種より多いシグナルが存在するかを決定することによって行われる。いくつかの実施形態において、倍数性は、目的の遺伝子に特異的なプローブからのシグナルを測定し、それをセントロメアプローブまたは他のプローブと比較することによって決定される。
【0183】
MAF遺伝子の増幅の検出に基づく、HER2+乳がんにおける臨床転帰の予後診断の方法
別の態様において、本発明は、HER2+乳がんに罹患している患者の臨床転帰を予測するためのインビトロでの方法(本明細書中以後、本発明の第7の方法)に関し、その方法は、上記被験体のサンプル中のMAF遺伝子が、参照遺伝子コピー数と比べて増幅されているかを決定する工程を含み、ここで、上記参照遺伝子コピー数と比較したときのMAF遺伝子の増幅は、不良な臨床転帰を示す。
【0184】
本発明の第7の方法は、第1の工程に、MAF遺伝子が被験体のサンプルにおいて増幅されているかを決定する工程を含む。MAFの増幅の決定は、本質的に本発明の第5の方法に記載されているように行われる。好ましい実施形態において、サンプルは、腫瘍組織サンプルである。好ましい実施形態において、MAF遺伝子の増幅は、遺伝子座16q23または16q22−q24の増幅を決定することによって決定される。別の好ましい実施形態において、MAF遺伝子の増幅は、MAF遺伝子特異的プローブを使用することによって決定される。
【0185】
第2の工程において、本発明の第7の方法は、上記コピー数をコントロールサンプルまたは参照サンプルのコピー数と比較する工程を含み、ここで、そのMAFコピー数が、コントロールサンプルのMAFコピー数と比べて多い場合、これは、不良な臨床転帰を示す。
【0186】
好ましい実施形態において、MAF遺伝子コピー数が、参照サンプルまたはコントロールサンプルが有するコピー数より多いとき、MAF遺伝子は、参照遺伝子コピー数と比較して、増幅されている。1つの例において、MAF遺伝子のゲノムコピー数が、試験サンプルにおいて、コントロールサンプルと比べて少なくとも、約2倍増加(すなわち、約6コピー)、約3倍増加(すなわち、約8コピー)、約4倍、約5倍、約6倍、約7倍、約8倍、約9倍、約10倍、約15倍、約20倍、約25倍、約30倍、約35倍、約40倍、約45倍または約50倍増加している場合、MAF遺伝子は、「増幅されている」と言われる。別の例において、細胞1つあたりのMAF遺伝子のゲノムコピー数が、少なくとも、約3、約4、約5、約6、約7、約8、約9、約10、約11、約12、約13、約14、約15、約16、約17、約18、約19、約20、約21、約22、約23、約24、約25、約26、約27、約28、約29、約30などである場合、MAF遺伝子は、「増幅されている」と言われる。
【0187】
別の実施形態において、参照遺伝子コピー数は、骨転移に罹患していない被験体由来のHER2+乳がんのサンプル中の遺伝子コピー数である。
【0188】
別の実施形態において、増幅は、インサイチュハイブリダイゼーションまたはPCRによって決定される。
【0189】
HER2+乳房腫瘍を有する患者において個別化治療をデザインするための方法
当該分野において公知であるように、がんに罹患している被験体に施されるべき処置は、後者が悪性腫瘍であるか否か、すなわち、それが転移を起こす高い確率を有するか否か、または後者が良性の腫瘍であるか否かに左右される。第1の仮定では、一般に好まれる処置は、化学療法などの全身性処置であり、第2の仮定では、一般に好まれる処置は、放射線治療などの局所性処置である。
【0190】
ゆえに、本願に記載されるように、HER2+乳がん細胞におけるMAF遺伝子の増幅または転座が、骨転移の存在に関係することを考えれば、MAF遺伝子の増幅または転座は、上記がんに罹患している被験体に最も適した治療に関して決定するために有用である。好ましい実施形態において、MAF遺伝子の増幅は、遺伝子座16q23または16q22−q24の増幅を決定することによって決定される。別の好ましい実施形態において、MAF遺伝子の増幅は、MAF遺伝子特異的プローブを使用することによって決定される。
【0191】
したがって、別の態様において、本発明は、HER2+乳がんに罹患している被験体のために個別化治療をデザインするためのインビトロでの方法(本明細書中以後、本発明の第3の方法)に関し、その方法は、
iii)上記被験体のサンプル中のMAF遺伝子の増幅または転座を定量する工程、および
iv)i)において得られた遺伝子の増幅または転座を参照値と比較する工程
を含み、ここで、MAF遺伝子の増幅または転座が、上記参照値と比較して増加している場合、上記被験体は、治療を受けるのに適格であるか、または骨転移の予防および/または処置を目指さない。MAF遺伝子の増幅または転座が、上記参照値と比較して増加していない場合、上記被験体は、骨転移の予防および/または処置を目指す治療を受けるのに適格ではない。
好ましい実施形態において、MAF遺伝子の増幅は、遺伝子座16q23または16q22−q24の増幅を決定することによって決定される。別の好ましい実施形態において、MAF遺伝子の増幅は、MAF遺伝子特異的プローブを使用することによって決定される。
【0192】
特定の実施形態において、骨転移は、溶骨性転移である。
【0193】
本発明の別の方法は、HER2+乳がんに罹患している被験体におけるサンプル中のMAF遺伝子の増幅または転座を定量する工程を含む。好ましい実施形態において、サンプルは、腫瘍組織サンプルである。
【0194】
別の特定の実施形態において、本発明の方法は、MAF遺伝子の増幅または転座だけを単一マーカーとして定量する工程を含み、すなわち、その方法は、いかなる追加のマーカーの発現レベルを決定する工程も含まない。
【0195】
本発明のこの特定の方法の場合、サンプルは、被験体の原発腫瘍組織サンプルであり得る。
【0196】
第2の工程において、被験体の腫瘍サンプルにおいて得られたMAF遺伝子の増幅または転座は、参照値と比較される。好ましい実施形態において、参照値は、コントロールサンプルにおける上記遺伝子のMAF遺伝子の増幅または転座である。MAF遺伝子の増幅または転座の測定は、コントロールサンプルまたは参照サンプルの値と関連させなければならない。解析される腫瘍のタイプに応じて、コントロールサンプルの正確な性質は変動し得る。したがって、好ましくは、参照サンプルは、転移していないHER2+乳がんを有する被験体のサンプル、または転移していないHER2+乳がんを有する被験体の生検サンプルの腫瘍組織コレクションにおいて測定されたMAF遺伝子の増幅もしくは転座に対応するサンプルである。
【0197】
いったん、サンプル中のMAF遺伝子の増幅または転座が、計測されて、参照値と比較されたら、上記遺伝子の遺伝子の増幅または転座が、参照値と比較して増加している場合、上記被験体は、転移の予防(被験体がまだ転移を起こしていない場合)および/または転移の処置、および/または転移を予防しないことおよび/または処置しないこと(被験体がすでに転移を受けている場合)を目指す治療を受けるかまたは受けないのに適格であると結論づけられ得る。
【0198】
がんが転移していたとき、化学療法、ホルモン処置、免疫療法またはそれらの組み合わせを含むがこれらに限定されない全身性処置が使用され得る。さらに、放射線治療および/または手術が使用され得る。処置の選択は、通常、原発がんのタイプ、サイズ、転移の位置、患者の年齢、全般的な健康状態、および以前に使用された処置のタイプに左右される。
【0199】
全身性処置は、全身に到達する処置であり、転移の予防(被験体がまだ転移を受けていない場合)および/または転移の処置(被験体がすでに転移を経験している場合)を目指す療法を表す。例えば:
・化学療法は、がん細胞を破壊する医薬の使用である。それらの医薬は、通常、経口または静脈内の経路によって投与される。時折、化学療法は、放射線処置とともに使用される。乳がんに対する好適な化学療法処置としては、アントラサイクリン(ドキソルビシン、エピルビシン、ペグ化リポソームドキソルビシン)、タキサン(パクリタキセル、ドセタキセル、アルブミンナノ粒子結合型パクリタキセル)、5−フルオロウラシル(5−FU持続注入、カペシタビン)、ビンカアルカロイド(ビノレルビン、ビンブラスチン)、ゲムシタビン、白金塩(シスプラチン、カルボプラチン)、シクロホスファミド、エトポシド、および上記の1つまたは複数の組み合わせ、例えば、シクロホスファミド/アントラサイクリン +/− 5−フルオロウラシルレジメン(例えば、ドキソルビシン/シクロホスファミド(AC)、エピルビシン/シクロホスファミド、(EC)シクロホスファミド/エピルビシン/5−フルオロウラシル(CEF)、シクロホスファミド/ドキソルビシン/5−フルオロウラシル(CAF)、5−フルオロウラシル/エピルビシン/シクロホスファミド(FEC))、シクロホスファミド/メトトレキサート/5−フルオロウラシル(CMF)、アントラサイクリン/タキサン(例えば、ドキソルビシン/パクリタキセルまたはドキソルビシン/ドセタキセル)、ドセタキセル/カペシタビン、ゲムシタビン/パクリタキセル、タキサン/白金レジメン(例えば、パクリタキセル/カルボプラチンまたはドセタキセル/カルボプラチン)が挙げられるがこれらに限定されない。
・免疫療法は、がんと戦う患者の免疫系自体を助ける処置である。患者における転移を処置するために使用される免疫療法にはいくつかのタイプがある。これらとしては、サイトカイン、モノクローナル抗体および抗腫瘍ワクチンが挙げられるがこれらに限定されない。
【0200】
別の態様において、処置は、アルファラディン(ラジウム−223二塩化物)である。アルファラディンは、がん細胞を殺すために、ラジウム−223の崩壊からのアルファ線を使用する。ラジウム−223は、天然に、カルシウム模倣物としてのその特性のおかげで骨転移に対して自身を標的化する。アルファ線は、2〜10個の細胞という非常に短い範囲(ベータまたはガンマ線に基づく現行の放射線治療と比べて)を有するので、周囲の健常な組織(特に骨髄)にもたらす損傷はより少ない。カルシウムとよく似た特性を有するので、ラジウム−223は、身体内の骨を構築するためにカルシウムが使用されている位置(去勢抵抗性の進行前立腺がんを有する男性の骨格転移に見られるようなより速い異常な骨成長の部位を含む)に引き込まれる。ラジウム−223は、注射後、異常に骨が成長している部位に血流によって運ばれる。がんが身体内で生じ始めた位置は、原発腫瘍として公知である。これらの細胞のうちのいくつかは、離脱して、血流によって身体の別の部位に運ばれ得る。次いで、それらのがん細胞は、身体のその位置に定着して、新しい腫瘍を形成し得る。これが起きる場合、それは、二次がんまたは転移と呼ばれる。末期の前立腺がんを有するほとんどの患者は、骨にその疾患の最大の負担を被る。ラジウム−223を用いる目的は、この二次がんを選択的に標的化することである。骨に取り込まれない任意のラジウム−223は、すみやかに腸へと経路を定められ、排泄される。
【0201】
別の態様において、処置は、mTorインヒビターである。いくつかの態様において、mTorインヒビターは、mTor/PI3キナーゼの二重インヒビターである。いくつかの態様において、mTorインヒビターは、転移を予防するためまたは阻害するために使用される。いくつかの態様において、mTorインヒビターは:ABI009(シロリムス)、ラパマイシン(シロリムス)、Abraxane(パクリタキセル)、Absorb(エベロリムス)、Afinitor(エベロリムス)、Gleevecと併用のAfinitor、AS703026(ピマセルチブ)、Axxess(ウミロリムス)、AZD2014、BEZ235、Biofreedom(ウミロリムス)、BioMatrix(ウミロリムス)、BioMatrix flex(ウミロリムス)、CC115、CC223、Combo Bio−engineered Sirolimus Eluting Stent ORBUSNEICH(シロリムス)、Curaxin CBLC102(メパクリン)、DE109(シロリムス)、DS3078、Endeavor DES(ゾタロリムス)、Endeavor Resolute(ゾタロリムス)、Femara(レトロゾール)、Hocena(アントロキノノール)、INK128、Inspiron(シロリムス)、IPI504(レタスピマイシン塩酸塩)、KRN951(チボザニブ)、ME344、MGA031(テプリズマブ)、MiStent SES(シロリムス)、MKC1、Nobori(ウミロリムス)、OSI027、OVI123(コルジセピン)、Palomid529、PF04691502、Promus Element(エベロリムス)、PWT33597、Rapamune(シロリムス)、Resolute DES(ゾタロリムス)、RG7422、SAR245409、SF1126、SGN75(ボルセツズマブマホドチン(vorsetuzumab mafodotin))、Synergy(エベロリムス)、Taltorvic(リダフォロリムス)、Tarceva(エルロチニブ)、Torisel(テムシロリムス)、Xience Prime(エベロリムス)、Xience V(エベロリムス)、Zomaxx(ゾタロリムス)、Zortress(エベロリムス)、ゾタロリムス溶出性末梢ステント(Peripheral Stent) MEDTRONIC(ゾタロリムス)、AP23841、AP24170、ARmTOR26、BN107、BN108、Canstatin GENZYME(カンスタチン)、CU906、EC0371、EC0565、KI1004、LOR220、NV128、Rapamycin ONCOIMMUNE(シロリムス)、SB2602、Sirolimus PNP SAMYANG BIOPHARMACEUTICALS(シロリムス)、TOP216、VLI27、VS5584、WYE125132、XL388、Advacan(エベロリムス)、AZD8055、Cypher Select Plus シロリムス溶出性冠動脈ステント(シロリムス)、Cypher シロリムス溶出性冠動脈ステント(シロリムス)、薬物コーティングされたバルーン(シロリムス)、E−Magic Plus(シロリムス)、Emtor(シロリムス)、Esprit(エベロリムス)、Evertor(エベロリムス)、HBF0079、LCP−Siro(シロリムス)、Limus CLARIS(シロリムス)、mTORインヒビター CELLZOME、Nevo シロリムス溶出性冠動脈ステント(シロリムス)、nPT−mTOR、Rapacan(シロリムス)、Renacept(シロリムス)、ReZolve(シロリムス)、Rocas(シロリムス)、SF1126、Sirolim(シロリムス)、Sirolimus NORTH CHINA(シロリムス)、Sirolimus RANBAXY(シロリムス)、Sirolimus WATSON(シロリムス)Siropan(シロリムス)、Sirova(シロリムス)、Supralimus(シロリムス)、Supralimus−Core(シロリムス)、Tacrolimus WATSON(タクロリムス)、TAFA93、Temsirolimus ACCORD(テムシロリムス)、Temsirolimus SANDOZ(テムシロリムス)、TOP216、Xience Prime(エベロリムス)、Xience V(エベロリムス)からなる群より選択される。具体的な態様において、mTorインヒビターは、Afinitor(エベロリムス)(http://www.afinitor.com/index.jsp?usertrack.filter_applied=true&NovaId=4029462064338207963;最終アクセス日2012年11月28日)である。別の態様において、エベロリムスは、アロマターゼインヒビターと組合わされる(例えば、Baselga,J.ら、Everolimus in Postmenopausal Hormone−Receptor Positive Advanced Breast Cancer.2012.N.Engl.J.Med.366(6):520−529(これは本明細書中で参照により援用される)を参照のこと)。別の態様において、mTorインヒビターは、当該分野で公知の方法によって特定され得る(例えば、Zhou,H.ら、Updates of mTor inhibitors.2010.Anticancer Agents Med.Chem.10(7):571−81(これは本明細書中で参照により援用される)を参照のこと)。いくつかの態様において、mTorインヒビターは、ホルモンレセプターが陽性である患者において転移を処置するためまたは予防するためまたは阻害するために使用される(例えば、Baselga,J.ら、Everolimus in Postmenopausal Hormone−Receptor Positive Advanced Breast Cancer.2012.N.Engl.J.Med.366(6):520−529を参照のこと)。いくつかの実施形態において、患者は、ER+である。いくつかの態様において、mTorインヒビターは、進行乳がんを有する患者において転移を処置するためまたは予防するためまたは阻害するために使用される。いくつかの態様において、mTorインヒビターは、第2の処置と組み合わせて使用される。いくつかの態様において、第2の処置は、本明細書中に記載される任意の処置である。
【0202】
別の態様において、処置は、Srcキナーゼインヒビターである。いくつかの態様にお
いて、Srcインヒビターは、転移を予防するためまたは阻害するために使用される。いくつかの態様において、Srcキナーゼインヒビターは、以下の群:AZD0530(サラカチニブ)、Bosulif(ボスチニブ)、ENMD981693、KD020、KX01、Sprycel(ダサチニブ)、Yervoy(イピリムマブ)、AP23464、AP23485、AP23588、AZD0424、c−Srcキナーゼインヒビター KISSEI、CU201、KX2361、SKS927、SRN004、SUNK706、TG100435、TG100948、AP23451、Dasatinib HETERO(ダサチニブ)、Dasatinib VALEANT(ダサチニブ)、Fontrax(ダサチニブ)、Srcキナーゼインヒビター KINEX、VX680(トザセルチブ乳酸塩)、XL228およびSUNK706から選択される。いくつかの実施形態において、Srcキナーゼインヒビターは、ダサチニブである。別の態様において、Srcキナーゼインヒビターは、当該分野で公知の方法によって特定され得る(例えば、Sen,B.and Johnson,F.M.Regulation of Src Family Kinases in Human Cancers.2011.J.Signal Transduction.2011:14 pages(これは本明細書中で参照により援用される)を参照のこと)。いくつかの態様において、Srcキナーゼインヒビターは、SRC応答性シグネチャ(SRS)が陽性である患者において転移を処置するためまたは予防するためまたは阻害するために使用される。いくつかの態様において、患者は、SRS+かつER−である(例えば、Zhang,CH.−F,ら、Latent Bone Metastasis in Breast Cancer Tied to Src−Dependent survival signals.2009.Cancer Cell.16:67−78(これは本明細書中で参照により援用される)を参照のこと)。いくつかの態様において、Srcキナーゼインヒビターは、進行乳がんを有する患者において転移を処置するためまたは予防するためまたは阻害するために使用される。いくつかの態様において、Srcキナーゼインヒビターは、第2の処置と組み合わせて使用される。いくつかの態様において、第2の処置は、本明細書中に記載される任意の処置である。
【0203】
別の態様において、処置は、COX−2インヒビターである。いくつかの態様において、COX−2インヒビターは、転移を予防するためまたは阻害するために使用される。いくつかの態様において、COX−2インヒビターは、以下の群:ABT963、Acetaminophen ER JOHNSON(アセトアミノフェン)、Acular X(ケトロラクトロメタミン)、BAY1019036(アスピリン)、BAY987111(ジフェンヒドラミン、ナプロキセンナトリウム)、BAYl1902(ピロキシカム)、BCIBUCH001(イブプロフェン)、Capoxigem(アプリコキシブ)、CS502、CS670(ペルビプロフェン)、Diclofenac HPBCD(ジクロフェナク)、Diractin(ケトプロフェン)、GW406381、HCT1026(ニトロフルルビプロフェン)、Hyanalgese−D(ジクロフェナク)、HydrocoDex(アセトアミノフェン、デキストロメトルファン、ヒドロコドン)、Ibuprofen Sodium PFIZER(イブプロフェンナトリウム)、Ibuprofen with Acetaminophen PFIZER(アセトアミノフェン、イブプロフェン)、Impracor(ケトプロフェン)、IP880(ジクロフェナク)、IP940(インドメタシン)、ISV205(ジクロフェナクナトリウム)、JNS013(アセトアミノフェン、トラマドール塩酸塩)、Ketoprofen TDS(ケトプロフェン)、LTNS001(ナプロキセンエテメシル)、Mesalamine SALIX(メサラミン)、Mesalamine SOFAR(メサラミン)、Mesalazine(メサラミン)、ML3000(リコフェロン)、MRX7EAT(エトドラク)、Naproxen IROKO(ナプロキセン)、NCX4016(ニトロアスピリン)、NCX701(ニトロアセトアミノフェン)、Nuprin SCOLR(イブプロフェン)、OMS103HP(アミトリプチリン塩酸塩、ケトプロフェン、オキシメタゾリン塩酸塩)、Oralease(ジクロフェナク)、OxycoDex(デキストロメトルファン、オキシコドン)、P54、PercoDex(アセトアミノフェン、デキストロメトルファン、オキシコドン)、PL3100(ナプロキセン、ホスファチジルコリン)、PSD508、R−Ketoprofen(ケトプロフェン)、Remura(ブロムフェナクナトリウム)、ROX828(ケトロラクトロメタミン)、RP19583(ケトプロフェンリジン)、RQ00317076、SDX101(R−エトドラク)、TDS943(ジクロフェナクナトリウム)、TDT070(ケトプロフェン)、TPR100、TQ1011(ケトプロフェン)、TT063(S−フルルビプロフェン)、UR8880(シミコキシブ)、V0498TA01A(イブプロフェン)、VT122(エトドラク、プロプラノロール)、XP20B(アセトアミノフェン、デキストロプロポキシフェン)、XP21B(ジクロフェナクカリウム)、XP21L(ジクロフェナクカリウム)、Zoenasa(アセチルシステイン、メサラミン)、Acephen、Actifed Plus、Actifed−P、Acular、Acular LS、Acular PF、Acular X、Acuvail、Advil、Advil Allergy Sinus、Advil Cold and Sinus、Advil Congestion Relief、Advil PM、Advil PM Capsule、Air Salonpas、Airtal、Alcohol−Free NyQuil Cold & Flu Relief、Aleve、Aleve ABDI IBRAHIM、Aleve−D、Alka−Seltzer、Alka−Seltzer BAYER、Alka−Seltzer Extra Strength、Alka−Seltzer Lemon−Lime、Alka−Seltzer Original、Alka−Seltzer Plus、Alka−Seltzer plus Cold and Cough、Alka−Seltzer plus Cold and Cough Formula、Alka−Seltzer Plus Day and Night Cold Formula、Alka−Seltzer Plus Day Non−Drowsy Cold Formula、Alka−Seltzer Plus Flu Formula、Alka−Seltzer Plus Night Cold Formula、Alka−Seltzer Plus Sinus Formula、Alka−Seltzer Plus Sparkling Original Cold Formula、Alka−Seltzer PM、Alka−Seltzer Wake−Up Call、Anacin、Anaprox、Anaprox MINERVA、Ansaid、Apitoxin、Apranax、Apranax abdi、Arcoxia、Arthritis Formula Bengay、Arthrotec、Asacol、Asacol HD、Asacol MEDUNA ARZNEIMITTEL、Asacol ORIFARM、Aspirin BAYER、Aspirin Complex、Aspirin Migran、AZD3582、Azulfidine、Baralgan M、BAY1019036、BAY987111、BAYl1902、BCIBUCH001、Benadryl Allergy、Benadryl Day and Night、Benylin 4 Flu、Benylin Cold and Flu、Benylin Cold and Flu Day and Night、Benylin Cold and Sinus Day and Night、Benylin Cold and Sinus Plus、Benylin Day and Night Cold and Flu Relief、Benylin1 All−In−One、Brexin、Brexin ANGELINI、Bromday、Bufferin、Buscopan Plus、Caldolor、Calmatel、Cambia、Canasa、Capoxigem、Cataflam、Celebrex、Celebrex ORIFARM、Children’s Advil Allergy Sinus、Children’s Tylenol、Children’s Tylenol Cough and Runny Nose、Children’s Tylenol plus cold、Children’s Tylenol plus Cold and Cough、Children’s Tylenol plus cold and stuffy nose、Children’s Tylenol plus Flu、Children’s Tylenol plus cold & allergy、Children’s Tylenol plus Cough & Runny Nose、Children’s Tylenol plus Cough & Sore Throat、Children’s Tylenol plus multi symptom cold、Clinoril、Codral Cold and Flu、Codral Day and Night Day Tablets、Codral Day and Night Night Tablets、Codral Nightime、Colazal、Combunox、Contac Cold plus Flu、Contac Cold plus Flu Non−Drowsy、Coricidin D、Coricidin HBP Cold and Flu、Coricidin HBP Day and Night Multi−Symptom Cold、Coricidin HBP Maximum Strength Flu、Coricidin HBP Nighttime Multi−Symptom Cold、Coricidin II Extra Strength Cold and Flu、CS502、CS670、Daypro、Daypro Alta、DDS06C、Demazin Cold and Flu、Demazin Cough、Cold and Flu、Demazin day/night Cold and Flu、Demazin PE Cold and Flu、Demazin PE day/night Cold and Flu、Diclofenac HPBCD、Dimetapp Day Relief、Dimetapp Multi−Symptom Cold and Flu、Dimetapp Night Relief、Dimetapp Pain and Fever Relief、Dimetapp PE Sinus Pain、Dimetapp PE Sinus Pain plus Allergy、Dipentum、Diractin、Disprin Cold ’n’ Fever、Disprin Extra、Disprin Forte.Disprin Plus、Dristan Cold、Dristan Junior、Drixoral Plus、Duexis、Dynastat、Efferalgan、Efferalgan Plus Vitamin C、Efferalgan Vitamin C、Elixsure IB、Excedrin Back and Body、Excedrin Migraine、Excedrin PM、Excedrin Sinus Headache、Excedrin Tension Headache、Falcol、Fansamac、Feldene、FeverAll、Fiorinal、Fiorinal with Codeine、Flanax、Flector Patch、Flucam、Fortagesic、Gerbin、Giazo、Gladio、Goody’s Back and Body Pain、Goody’s Cool Orange、Goody’s Extra Strength、Goody’s PM、Greaseless Bengay、GW406381、HCT1026、He Xing Yi、Hyanalgese−D、HydrocoDex、Ibuprofen Sodium PFIZER、Ibuprofen with、Acetaminophen PFIZER、Icy Hot SANOFI AVENTIS、Impracor、Indocin、Indomethacin APP PHARMA、Indomethacin MYLAN、Infants’ Tylenol、IP880、IP940、Iremod、ISV205、JNS013、Jr.Tylenol、Junifen、Junior Strength Advil、Junior Strength Motrin、Ketoprofen TDS、Lemsip Max、Lemsip Max All in One、Lemsip Max All Night、Lemsip Max Cold and Flu、Lialda、Listerine Mouth Wash、Lloyds Cream、Lodine、Lorfit P、Loxonin、LTNS001、Mersyndol、Mesalamine SALIX、Mesalamine SOFAR、Mesalazine、Mesasal GLAXO、Mesasal SANOFI、Mesulid、Metsal Heat Rub、Midol Complete、Midol Extended Relief、Midol Liquid Gels、Midol PM、
Midol Teen Formula、Migranin COATED TABLETS、ML3000、Mobic、Mohrus、Motrin、Motrin Cold and Sinus Pain、Motrin PM、Movalis ASPEN、MRX7EAT、Nalfon、Nalfon PEDINOL、Naprelan、Naprosyn、Naprosyn RPG LIFE SCIENCE、Naproxen IROKO、NCX4016、NCX701、NeoProfen LUNDBECK、Nevanac、Nexcede、Niflan、Norgesic MEDICIS、Novalgin、Nuprin SCOLR、Nurofen、Nurofen Cold and Flu、Nurofen Max Strength Migraine、Nurofen Plus、Nuromol、NyQuil with Vitamin C、Ocufen、OMS103HP、Oralease、Orudis ABBOTT JAPAN、Oruvail、Osteluc、OxycoDex、P54、Panadol、Panadol Actifast、Paradine、Paramax、Parfenac、Pedea、Pennsaid、Pentasa、Pentasa ORIFARM、Peon、Percodan、Percodan−Demi、PercoDex、Percogesic、Perfalgan、PL2200、PL3100、Ponstel、Prexige、Prolensa、PSD508、R−Ketoprofen、Rantudil、Relafen、Remura、Robaxisal、Rotec、Rowasa、ROX828、RP19583、RQ00317076、Rubor、Salofalk、Salonpas、Saridon、SDX101、Seltouch、sfRowasa、Shinbaro、Sinumax、Sinutab、Sinutab、sinus、Spalt、Sprix、Strefen、Sudafed Cold and Cough、Sudafed Head Cold and Sinus、Sudafed PE Cold plus Cough、Sudafed PE Pressure plus Pain、Sudafed PE、Severe Cold、Sudafed PE Sinus Day plus Night Relief Day Tablets、Sudafed PE Sinus Day plus Night Relief Night Tablets、Sudafed PE Sinus plus Anti−inflammatory Pain Relief、Sudafed Sinus Advance、Surgam、Synalgos−DC、Synflex、Tavist allergy/sinus/headache、TDS943、TDT070、Theraflu Cold and Sore Throat、Theraflu Daytime Severe Cold and Cough、Theraflu Daytime Warming Relief,Theraflu Warming Relief Caplets Daytime Multi−Symptom Cold、Theraflu Warming Relief Cold and Chest Congestion、Thomapyrin、Thomapyrin C、Thomapyrin Effervescent、Thomapyrin Medium、Tilcotil、Tispol、Tolectin、Toradol、TPR100、TQ1011、Trauma−Salbe、Trauma−Salbe Kwizda、Treo、Treximet、Trovex、TT063、Tylenol、Tylenol Allergy Multi−Symptom、Tylenol Back Pain、Tylenol Cold & Cough Daytime、Tylenol Cold & Cough Nighttime、Tylenol Cold and Sinus Daytime、Tylenol Cold and Sinus Nighttime、Tylenol Cold Head Congestion Severe、Tylenol Cold Multi Symptom Daytime、Tylenol Cold Multi Symptom Nighttime Liquid、Tylenol Cold Multi Symptom Severe、Tylenol Cold Non−Drowsiness Formula、Tylenol Cold Severe Congestion Daytime、Tylenol Complete Cold,Cough and Flu Night time、Tylenol Flu Nighttime、Tylenol Menstrual、Tylenol PM、Tylenol Sinus Congestion & Pain Daytime、Tylenol Sinus Congestion & Pain Nighttime、Tylenol Sinus Congestion & Pain Severe、Tylenol Sinus Severe Congestion Daytime、Tylenol Ultra Relief、Tylenol with Caffeine and Codeine phosphate、Tylenol with Codeine phosphate、Ultra Strength Bengay Cream、Ultracet、UR8880、V0498TA01A、Vicks NyQuil Cold and Flu Relief、Vicoprofen、Vimovo、Voltaren Emulgel、Voltaren GEL、Voltaren NOVARTIS CONSUMER HEALTH GMBH、Voltaren XR、VT122、Xefo、Xefo Rapid、Xefocam、Xibrom、XL3、Xodol、XP20B、XP21B、XP21L、ZipsorおよびZoenasaから選択される。別の態様において、COX−2インヒビターは、当該分野で公知の方法によって特定され得る(例えば、Dannhardt,G.and Kiefer,W.Cyclooxygenase inhibitors−current status and future prospects.2001.Eur.J.Med.Chem.36:109−126(これは本明細書中で参照により援用される)を参照のこと)。いくつかの態様において、COX−2インヒビターは、進行乳がんを有する患者において転移を処置するためまたは予防するためまたは阻害するために使用される。いくつかの態様において、COX−2インヒビターは、第2の処置と組み合わせて使用される。いくつかの態様において、第2の処置は、本明細書中に記載される任意の処置である。いくつかの態様において、COX−2インヒビターは、デノスマブ、Zometa(http://www.us.zometa.com/index.jsp?usertrack.filter_applied=true&NovaId=2935376934467633633;最終アクセス日2012年12月2日)、CarbozantinibまたはCabozantinib、PTHLH(副甲状腺ホルモン様ホルモン)またはPTHrP(副甲状腺ホルモン関連タンパク質)を阻止する抗体またはペプチドおよびEverolimusからなる群より選択される第2の処置と組み合わせて使用される。
【0204】
別の態様において、骨分解を回避するためおよび/または予防するために使用される処置剤としては、以下が挙げられるが、これらに限定されない:
・副甲状腺ホルモン(PTH)インヒビターおよび副甲状腺様ホルモン(PTHLH)インヒビター(阻止抗体を含む)またはそれらの組換え型(PTHのアミノ酸7〜34に対応するテリパラチド)。このホルモンは、破骨細胞を刺激してその活性を高めることによって作用する。
・ラネル酸ストロンチウムは、代替の経口処置であり、骨芽細胞の増殖を刺激し、破骨細胞の増殖を阻害するので、「二重作用骨剤」(DABA)と呼ばれる薬物の群の一部を形成する。
・「エストロゲンレセプター調節因子」(SERM)は、機序に関係なくエストロゲンがレセプターに結合するのを干渉するかまたは阻害する化合物のことを指す。エストロゲンレセプター調節因子の例としては、とりわけ、エストロゲンプロゲスターゲン、エストラジオール、ドロロキシフェン、ラロキシフェン、ラソホキシフェン、TSE−424、タモキシフェン、イドキシフェン、LY353381、LY117081、トレミフェン、フルベストラント、4−[7−(2,2−ジメチル−1−オキソプロポキシ−4−メチル−2−[4−[2−(1−ピペリジニル)エトキシ]フェニル]−2H−1−ベンゾピラン−3−イル]−フェニル−2,2−ジメチルプロパノエート4,4’ジヒドロキシベンゾフェノン−2,4−ジニトロフェニル−ヒドラゾンおよびSH646が挙げられる。
・カルシトニンは、カルシトニンレセプターを介して破骨細胞の活性を直接阻害する。カルシトニンレセプターは、破骨細胞の表面上で同定されている。
・ビスホスホネートは、骨粗鬆症および骨転移を伴うがん(後者は、乳がんおよび前立腺がんに関連する高カルシウム血症を伴うかまたは伴わない)などの、骨吸収および再吸収を伴う疾患の予防および処置のために使用される医薬品の群である。本発明の第5の方法によってデザインされる治療において使用され得るビスホスホネートの例としては、窒素含有ビスホスホネート(例えば、パミドロネート、ネリドロネート、オルパドロネート、アレンドロネート、イバンドロネート、リセドロネート、インカドロネート、ゾレドロネートまたはゾレドロン酸など)および窒素非含有ビスホスホネート(例えば、エチドロネート、クロドロネート、チルドロネートなど)が挙げられるが、これらに限定されない。
・「カテプシンKインヒビター」とは、カテプシンKシステインプロテアーゼ活性を干渉する化合物のことを指す。カテプシンKインヒビターの非限定的な例としては、4−アミノ−ピリミジン−2−カルボニトリル誘導体(Novartis Pharma GMBHの名称における国際特許出願WO03/020278に記載されている)、公報WO03/020721(Novartis Pharma GMBH)および公報WO04/000843(ASTRAZENECA AB)に記載されているピロロ−ピリミジン、ならびにAxys Pharmaceuticalsの公報PCT WO00/55126、Merck Frosst Canada & Co.およびAxys PharmaceuticalsのWO01/49288に記載されているインヒビターが挙げられる。
・本明細書中で使用されるとき「DKK−1(Dickkopf−1)インヒビター」は、DKK−1活性を低下させることができる任意の化合物のことを指す。DKK−1は、主に成体の骨において発現され、溶骨性病変を有するミエローマ患者においてアップレギュレートされる、可溶性Wnt経路アンタゴニストである。DKK−1を標的化する薬剤は、多発性骨髄腫患者における溶骨性骨疾患を予防する際に役割を果たし得る。Novartis製のBHQ880は、ファースト・イン・クラスの完全にヒトの抗DKK−1中和抗体である。前臨床試験は、BHQ880が骨形成を促進し、それによって、腫瘍が誘導する溶骨性疾患を阻害するという仮説を支持している(Ettenberg S.ら、American Association for Cancer Research Annual Meeting.April 12−16,2008;San Diego,Calif.Abstract)。
・本明細書中で使用されるとき「METおよびVEGFR2の二重インヒビター」は、METによって駆動される腫瘍エスケープを阻止するようにデザインされた、MET経路およびVEGF経路の強力な二重インヒビターである任意の化合物のことを指す。METは、腫瘍細胞および内皮細胞だけでなく、骨芽細胞(骨を形成する細胞)および破骨細胞(骨を除去する細胞)においても発現される。HGFは、これらの細胞型のすべてにおけるMETに結合し、MET経路に複数のオートクラインループおよびパラクリンループにおける重要な役割を与える。腫瘍細胞におけるMETの活性化は、転移性の骨病変の確立において重要であるとみられる。同時に、骨芽細胞および破骨細胞におけるMET経路の活性化は、異常な骨の成長(すなわち、芽細胞性の病変)または破壊(すなわち、溶解性の病変)を含む骨転移の病理学的特色をもたらし得る。したがって、MET経路の標的化は、転移性の骨病変の確立および進行を予防する際の実行可能なストラテジーであり得る。
以前はXL184(CAS849217−68−1)として知られていたCabozantinib(Exelixis,Inc)は、METによって駆動される腫瘍エスケープを阻止するようにデザインされた、MET経路およびVEGF経路の強力な二重インヒビターである。複数の前臨床試験において、カボザンチニブは、腫瘍細胞を殺し、転移を減少させ、血管新生(腫瘍の成長を支えるために必要な新しい血管の形成)を阻害すると示されている。別の好適な二重インヒビターは、E7050(N−[2−フルオロ−4−({2−[4−(4−メチルピペラジン−1−イル)ピペリジン−1−イル]カルボニルアミノピリジン−4−イル}オキシ)フェニル]−N’−(4−フルオロフェニル)シクロプロパン−1,1−ジカルボキサミド(2R,3R)−タルトレート)(CAS928037−13−2)またはForetinib(GSK1363089、XL880、CAS849217−64−7としても知られる)である。
・本明細書中で使用されるとき「RANKLインヒビター」は、RANK活性を低下させることができる任意の化合物のことを指す。RANKLは、ストローマ細胞およびT−リンパ球細胞の骨芽細胞膜の表面上に見られ、これらのT−リンパ球細胞は、それを分泌する能力が証明されている唯一の細胞である。その主要な機能は、骨吸収に関わる細胞である破骨細胞の活性化である。RANKLインヒビターは、RANKLがそのレセプター(RANK)に結合するのを阻止すること、RANK媒介性シグナル伝達を阻止すること、またはRANKLの転写もしくは翻訳を阻止することによってRANKLの発現を減少させることによって、作用し得る。本発明における使用に適したRANKLアンタゴニストまたはインヒビターとしては、以下が挙げられるが、これらに限定されない:
・RANKLに結合することができ、RANKタンパク質の細胞外ドメインの全体またはフラグメントを含む、好適なRANKタンパク質。可溶性RANKは、マウスもしくはヒトRANKポリペプチドのシグナルペプチドおよび細胞外ドメインを含み得るか、またはあるいは、シグナルペプチドが除去されたそのタンパク質の成熟型が使用され得る。
・オステオプロテゲリンまたはRANKL結合能を有するそのバリアント。
・RANKL特異的アンチセンス分子。
・RANKLの転写産物をプロセシングすることができるリボザイム。
・特異的な抗RANKL抗体。「抗RANKL抗体またはRANKLに対する抗体」は、1つまたは複数のRANKLの機能を阻害する、核因子κBに対する活性化レセプターのリガンド(RANKL)に特異的に結合することができるすべての抗体と本明細書中で理解される。それらの抗体は、当業者に公知の任意の方法を用いて調製され得る。したがって、ポリクローナル抗体は、阻害されるべきタンパク質で動物を免疫することによって調製される。モノクローナル抗体は、Kohler,Milsteinら(Nature,1975,256:495)に記載されている方法を用いて調製される。本発明の文脈において好適な抗体としては、可変抗原結合領域および定常領域を含むインタクトな抗体、フラグメント「Fab」、「F(ab’)2」および「Fab’」、Fv、scFv、ダイアボディおよび二重特異性抗体が挙げられる。
・特異的な抗RANKLナノボディ。ナノボディは、天然に存在する重鎖抗体の独特の構造的および機能的特性を含む、抗体由来の治療的タンパク質である。ナノボディ技術は、ラクダ科動物(ラクダおよびラマ)が軽鎖を欠く完全に機能的な抗体を有するという発見の後に、最初に開発された。ナノボディの一般構造は、
FR1−CDR1−FR2−CDR2−FR3−CDR3−FR4
であり、ここで、FR1からFR4は、フレームワーク領域1〜4であり、CDR1からCDR3は、相補性決定領域1〜3である。これらの重鎖抗体は、1つの可変ドメイン(VHH)および2つの定常ドメイン(CH2およびCH3)を含む。重要なことには、クローニングされ、単離されたVHHドメインは、元の重鎖抗体の完全な抗原結合能を有する完全に安定なポリペプチドである。独特の構造的および機能的特性を有するこれらの新しく発見されたVHHドメインは、Ablynxがナノボディと名付けた治療用抗体の新時代の基礎を形成している。
【0205】
1つの実施形態において、RANKLインヒビターは、RANKL特異的抗体、RANKL特異的ナノボディおよびオステオプロテゲリンからなる群より選択される。具体的な実施形態において、抗RANKL抗体は、モノクローナル抗体である。なおもより具体的な実施形態において、抗RANKL抗体は、デノスマブ(Pageau,Steven C.(2009).mAbs 1(3):210−215、CAS番号615258−40−7)(その全内容が本明細書によって参照により援用される)である。デノスマブは、RANKLに結合して、その活性化を妨げる完全にヒトのモノクローナル抗体である(これは、RANKレセプターには結合しない)。デノスマブの様々な態様が、米国特許第6,740,522号;同第7,411,050号;同第7,097,834号;同第7,364,736号(これらの各々の全内容が本明細書によって参照により援用される)によって包含されている。別の実施形態において、RANKLインヒビターは、デノスマブと同じエピトープに結合する抗体、抗体フラグメントまたは融合構築物。
【0206】
好ましい実施形態において、抗RANKLナノボディは、WO2008142164(その内容は参照により本願に援用される)に記載されているようなナノボディのいずれかである。なおもより好ましい実施形態において、抗RANKL抗体は、ALX−0141(Ablynx)である。ALX−0141は、閉経後の骨粗鬆症、関節リウマチ、がんおよびある特定の薬剤に関連する骨減少を阻害するように、および健常な骨代謝のバランスを再建するように、デザインされた。
【0207】
好ましい実施形態において、骨分解を予防する薬剤は、ビスホスホネート、RANKLインヒビター、PTHおよびPTHLHインヒビターまたはPRGアナログ、ラネル酸ストロンチウム、DKK−1インヒビター、METおよびVEGFR2の二重インヒビター、エストロゲンレセプター調節因子、ラジウム−223カルシトニンならびにカテプシンKインヒビターからなる群より選択される。より好ましい実施形態において、骨分解を予防する薬剤は、ビスホスホネートである。なおもより好ましい実施形態において、ビスホスホネートは、ゾレドロン酸である。
【0208】
1つの実施形態において、CCR5アンタゴニストは、骨への原発性乳がん腫瘍の転移を予防するためまたは阻害するために投与される。1つの実施形態において、CCR5アンタゴニストは、大分子である。別の実施形態において、CCR5アンタゴニストは、小分子である。いくつかの実施形態において、CCR5アンタゴニストは、Maraviroc(Velasco−Vela’quez,M.ら、2012.CCR5 Antagonist Blocks Metastasis of Basal Breast Cancer Cells.Cancer Research.72:3839−3850)である。いくつかの実施形態において、CCR5アンタゴニストは、Vicriviroc(Velasco−Vela’quez,M.ら、2012.CCR5 Antagonist Blocks Metastasis of Basal Breast Cancer Cells.Cancer Research.72:3839−3850)である。いくつかの態様において、CCR5アンタゴニストは、Aplaviroc(Demarest J.F.ら、2005.Update on Aplaviroc:An HIV Entry Inhibitor Targeting CCR5.Retrovirology 2(Suppl.1):S13)である。いくつかの態様において、CCR5アンタゴニストは、スピロピペリジンCCR5アンタゴニスト(Rotstein D.M.ら、2009.Spiropiperidine CCR5 antagonists.Bioorganic & Medicinal Chemistry Letters.19(18):5401−5406)である。いくつかの実施形態において、CCR5アンタゴニストは、INCB009471(Kuritzkes,D.R.2009.HIV−1 entry inhibitors:an overview.Curr.Opin.HIV AIDS.4(2):82−7)である。
【0209】
好ましい実施形態において、METおよびVEGFR2の二重インヒビターは、Cabozantinib、ForetinibおよびE7050からなる群より選択される。
【0210】
好ましい実施形態において、ラジウム223治療は、アルファラディンである。
【0211】
あるいは、転移を処置するためおよび/もしくは予防するために上で述べられた薬剤のうちの2つ以上の薬剤が組み合わされる組合せ処置が行われ得るか、または上記薬剤は、他のサプリメント(例えば、カルシウムまたはビタミンD)もしくはホルモン処置と組み合わされ得る。
【0212】
c−Maf阻害剤を使用して、HER2+乳がんからの骨転移を処置するための方法
別の態様において、本発明は、HER2+乳がんからの骨転移の処置または予防において使用するためのc−Maf阻害剤(本明細書中以後、本発明の阻害剤)に関する。
【0213】
別の態様において、本発明は、HER2+乳がんからの骨転移の処置または予防のための医薬を製造するための、c−Maf阻害剤の使用に関する。
【0214】
別の態様において、本発明は、HER2+乳がんからの骨転移の処置または予防を必要とする被験体へのc−Maf阻害剤の投与を含む、上記被験体におけるそのような処置または予防のための方法に関する。
【0215】
別の態様において、本発明は、HER2+乳がんに罹患している被験体における骨転移のリスクを予防するためまたは減少させるための方法に関し、上記方法は、骨転移を予防するかまたは減少させる薬剤を上記被験体に投与する工程を含み、ここで、上記薬剤は、上記被験体におけるc−Mafの発現レベルの定量から決定された処置レジメンに従って投与される。
【0216】
非限定的な例証として、本発明における使用に適したc−Maf阻害剤としては、アンチセンスオリゴヌクレオチド、干渉RNA(siRNA)、触媒RNA、特異的なリボザイム、阻害性抗体もしくはナノボディ、ドミナントネガティブc−Mafバリアント、または表1もしくは表2の化合物が挙げられる。
【0217】
アンチセンスオリゴヌクレオチド
本発明のさらなる態様は、発現を阻害する、例えば、活性が阻害されるべきであるc−Mafをコードする核酸の転写および/または翻訳を阻害するための、単離された「アンチセンス」核酸の使用に関する。アンチセンス核酸は、従来の塩基相補性によって、または、例えば、二重らせんの主溝(large groove)における特異的な相互作用を介して二本鎖DNAに結合する場合、薬物の潜在的な標的に結合し得る。通常、これらの方法は、当該分野において通常使用される一連の技法のことを指し、それらには、オリゴヌクレオチド配列への特異的結合に基づく任意の方法が含まれる。
【0218】
本発明のアンチセンス構築物は、例えば、細胞において転写されるときに、c−Mafをコードする細胞mRNAの少なくとも1つの独特の部分に相補的なRNAを生成する発現プラスミドとして、分配され得る。あるいは、アンチセンス構築物は、細胞に導入されたら、標的核酸のmRNAおよび/または遺伝子配列とハイブリダイズして遺伝子発現の阻害をもたらす、エキソビボにおいて生成されたオリゴヌクレオチドプローブである。そのようなオリゴヌクレオチドプローブは、好ましくは、内因性ヌクレアーゼ、例えば、エキソヌクレアーゼおよび/またはエンドヌクレアーゼに抵抗性であるがゆえにインビボにおいて安定である、改変されたオリゴヌクレオチドである。アンチセンスオリゴヌクレオチドとしてそれらを使用するための核酸分子の例は、ホスホルアミデート、ホスホチオネートおよびメチルホスホネートのDNAアナログである(米国特許第5,176,996号;同第5,264,564号;および同第5,256,775号も参照のこと)(これらの各々は、その全体が参照により本明細書中に援用される)。さらに、アンチセンス治療において有用なオリゴマーを構築するための一般的なアプロキシメーション(approximations)は、例えば、Van der Krolら、BioTechniques 6:958−976,1988;およびSteinら、Cancer Res 48:2659−2668,1988に概説されている。
【0219】
アンチセンスオリゴヌクレオチドに関して、標的遺伝子の翻訳開始部位由来のオリゴデオキシリボヌクレオチド領域、例えば、約−10〜約+10が、好ましい。アンチセンスアプロキシメーションは、標的ポリペプチドをコードするmRNAに相補的なオリゴヌクレオチドのデザイン(DNAまたはRNAのいずれか)を含む。アンチセンスオリゴヌクレオチドは、転写されたmRNAに結合して、翻訳が妨げられる。
【0220】
mRNAの5’末端、例えば、開始コドンAUGを含むそこまでの非翻訳5’配列に相補的なオリゴヌクレオチドは、翻訳を阻害するために最も効率的な様式で機能するに違いない。それにもかかわらず、mRNAの非翻訳3’配列に相補的な配列もまた、mRNA翻訳を阻害するために効率的であることが最近示された(Wagner,Nature 372:333,1994)。ゆえに、mRNAの翻訳を阻害するアンチセンスアプロキシメーションでは、遺伝子の非コード領域である非翻訳5’または3’領域において相補的なオリゴヌクレオチドが、使用され得る。mRNAの非翻訳5’領域に相補的なオリゴヌクレオチドは、開始コドンAUGの相補体を含まなければならない。mRNAのコード領域に相補的なオリゴヌクレオチドは、それほど効率的な翻訳インヒビターでないが、それらも、本発明に従って使用され得る。それらが、mRNAの5’領域、3’領域またはコード領域とハイブリダイズするようにデザインされる場合、アンチセンス核酸は、少なくとも6ヌクレオチド長を有しなければならず、好ましくは、およそ100未満、より好ましくは、およそ50、25、17または10未満のヌクレオチド長を有しなければならない。
【0221】
好ましくは、まず、アンチセンスオリゴヌクレオチドが遺伝子発現を阻害する能力を定量するインビトロ研究を行う。好ましくは、これらの研究は、オリゴヌクレオチドのアンチセンス遺伝子阻害と非特異的な生物学的作用とを識別するコントロールを使用する。また、好ましくは、これらの研究は、標的RNAまたはタンパク質のレベルをRNAまたはタンパク質の内部コントロールのレベルと比較した。アンチセンスオリゴヌクレオチドを使用して得られる結果は、コントロールオリゴヌクレオチドを使用して得られる結果と比較され得る。好ましくは、コントロールオリゴヌクレオチドは、アッセイされるオリゴヌクレオチドとほぼ同じ長さであり、オリゴヌクレオチド配列は、標的配列への特異的なハイブリダイゼーションを妨げるために必要であると考えられるアンチセンス配列にすぎないものと異ならない。
【0222】
アンチセンスオリゴヌクレオチドは、一本鎖もしくは二本鎖のDNAもしくはRNA、またはそれらのキメラ混合物もしくは誘導体もしくは修飾されたバージョンであり得る。オリゴヌクレオチドは、例えば、分子の安定性、そのハイブリダイゼーション能力などを改善するために、塩基の基、糖の基またはリン酸骨格において修飾され得る。オリゴヌクレオチドは、他の結合基(例えば、ペプチド(例えば、オリゴヌクレオチドを宿主細胞のレセプターに導くためのペプチド)または細胞膜を通じた輸送を促進するための物質(例えば、Letsingerら、Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.86:6553−6556,1989;Lemaitreら、Proc.Natl.Acad.Sci.84:648−652,1987;PCT公開番号WO88/09810を参照のこと)もしくは血液脳関門を通じた輸送を促進するための物質(例えば、PCT公開番号WO89/10134を参照のこと)、挿入剤(例えば、Zon,Pharm.Res.5:539−549,1988を参照のこと))を含み得る。このために、オリゴヌクレオチドは、別の分子、例えば、ペプチド、輸送剤(transporting agent)、ハイブリダイゼーションによって惹起される切断剤などに結合体化され得る。
【0223】
アンチセンスオリゴヌクレオチドは、修飾された塩基の少なくとも1つの基を含み得る。アンチセンスオリゴヌクレオチドは、アラビノース、2−フルオロアラビノース、キシルロースおよびヘキソースを含むがこれらに限定されない群から選択される少なくとも1つの修飾された糖の基も含み得る。アンチセンスオリゴヌクレオチドは、中性ペプチドに類似の骨格も含み得る。そのような分子は、ペプチド核酸(PNA)オリゴマーとして知られており、例えば、Perry−O’Keefeら、Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.93:14670,1996およびEglomら、Nature 365:566,1993に記載されている。
【0224】
なおも別の実施形態において、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、少なくとも1つの修飾されたリン酸骨格を含む。なおも別の実施形態において、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、アルファ−アノマーオリゴヌクレオチドである。
【0225】
標的mRNA配列のコード領域に相補的なアンチセンスオリゴヌクレオチドを使用することができるが、転写される非翻訳領域に相補的なアンチセンスオリゴヌクレオチドを使用することもできる。
【0226】
場合によっては、内因性のmRNA翻訳を抑制するのに十分な細胞内濃度のアンチセンスに到達することが難しいことがある。ゆえに、好ましいアプロキシメーションは、アンチセンスオリゴヌクレオチドを強力なpol IIIまたはpol IIプロモーターの支配下に配置した組換えDNA構築物を使用する。
【0227】
あるいは、遺伝子制御領域(すなわち、プロモーターおよび/またはエンハンサー)に相補的なデオキシリボヌクレオチド配列に、体内の標的細胞において遺伝子転写を妨げる三重らせん構造を形成するように指示することによって、標的遺伝子発現を減少させることができる(Helene,Anticancer Drug Des.6(6):569−84,1991を広く参照のこと)。ある特定の実施形態において、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、アンチセンスモルホリンである。
【0228】
siRNA
低分子干渉RNAまたはsiRNAは、RNA干渉によって標的遺伝子の発現を阻害することができる物質である。siRNAは、化学的に合成され得るか、インビトロ転写によって得ることができるか、または標的細胞においてインビボで合成され得る。代表的には、siRNAは、15〜40ヌクレオチド長の二本鎖RNAからなり、1〜6ヌクレオチドの3’および/または5’突出領域を含み得る。その突出領域の長さは、siRNA分子の全長と無関係である。siRNAは、転写後の標的メッセンジャーの分解またはサイレンシングによって作用する。
【0229】
本発明のsiRNAは、MAFをコードする遺伝子のmRNAまたは上記タンパク質をコードする遺伝子配列と実質的に相同である。「実質的に相同」は、siRNAが、RNA干渉によって後者を分解することができるほど、標的mRNAと十分に相補的または類似である配列を有すると理解される。上記干渉を引き起こすために適したsiRNAとしては、RNAによって形成されるsiRNA、ならびに種々の化学修飾を含むsiRNA、例えば:
・ヌクレオチド間の結合が天然に見られる結合と異なる(例えば、ホスホロチオネート結合)siRNA
・フルオロフォアなどの機能的な試薬とRNA鎖の結合体
・2’位の種々のヒドロキシル官能基での修飾による、RNA鎖の末端、特に3’末端の修飾
・2’−O−メチルリボースまたは2’−O−フルオロリボースのような2’位におけるO−アルキル化残基などの改変された糖を有するヌクレオチド
・ハロゲン化された塩基(例えば、5−ブロモウラシルおよび5−ヨードウラシル)、アルキル化された塩基(例えば、7−メチルグアノシン)などの改変された塩基を有するヌクレオチド
が挙げられる。
【0230】
siRNAは、そのままで、すなわち、上述の特徴を有する二本鎖RNAの形態で、使用され得る。あるいは、siRNAのセンス鎖配列およびアンチセンス鎖配列を含むベクターを、目的の細胞におけるその発現に好適なプロモーターの支配下で使用することが、可能である。
【0231】
siRNAの発現に適したベクターは、siRNAの2本の鎖をコードする2つのDNA領域が、転写の際にループを形成するスペーサー領域によって分断された1本の同じDNA鎖においてタンデムに配置されているベクターであり、単一のプロモーターが、shRNAを生じるDNA分子の転写を指示する。
【0232】
あるいは、siRNAを形成する各鎖が、異なる転写単位の転写から形成されるベクターを使用することも可能である。これらのベクターは、その後、分岐(divergent)転写ベクターと収束(convergent)転写ベクターとに分割される。分岐転写ベクターでは、siRNAを形成する各DNA鎖の転写が、同じであっても異なってもよいそれ自体のプロモーターに依存するように、その各DNA鎖をコードする転写単位が、ベクター内でタンデムに配置される(Wang,J.ら、2003,Proc.Natl.Acad.Sci.USA.,100:5103−5106およびLee,N.S.ら、2002,Nat.Biotechnol.,20:500−505)。収束転写ベクターでは、siRNAを生じるDNA領域は、2つの逆方向のプロモーターに隣接したDNA領域のセンス鎖およびアンチセンス鎖を形成する。センスおよびアンチセンスのRNA鎖の転写の後、後者は、機能的siRNAを形成するためにハイブリッドを形成する。2つのU6プロモーター(Tran,N.ら、2003,BMC Biotechnol.,3:21)、マウスU6プロモーターおよびヒトH1プロモーター(Zheng,L.ら、2004,Proc.Natl.Acad.Sci.USA.,135−140およびWO2005026322)ならびにヒトU6プロモーターおよびマウスH1プロモーター(Kaykas,A.and Moon,R.,2004,BMC Cell Biol.,5:16)が使用される逆方向プロモーター系を有するベクターが記載されている。
【0233】
収束発現ベクターまたは分岐発現ベクターからのsiRNAの発現におけるその使用に適したプロモーターには、siRNAを発現させようとする細胞と適合性の任意のプロモーターまたはプロモーター対が含まれる。したがって、本発明に適したプロモーターとしては、構成的プロモーター(例えば、真核生物ウイルス(例えば、ポリオーマウイルス、アデノウイルス、SV40、CMV、トリ肉腫ウイルス、B型肝炎ウイルス)のゲノムに由来するプロモーター)、メタロチオネイン遺伝子プロモーター、単純ヘルペスウイルスのチミジンキナーゼ遺伝子プロモーター、レトロウイルスLTR領域、免疫グロブリン遺伝子プロモーター、アクチン遺伝子プロモーター、EF−1アルファ遺伝子プロモーター、ならびにタンパク質発現が分子または外来性シグナルの添加に依存する誘導性プロモーター、例えば、テトラサイクリンシステム、NFカッパーB/UV光システム、Cre/Loxシステムおよび熱ショック遺伝子プロモーター、WO/2006/135436に記載されている制御可能なRNAポリメラーゼIIプロモーターならびに組織特異的プロモーター(例えば、WO2006012221に記載されているPSAプロモーター)が挙げられるが、必ずしもこれらに限定されない。好ましい実施形態において、プロモーターは、恒常的に作用するRNAポリメラーゼIIIプロモーターである。RNAポリメラーゼIIIプロモーターは、限られた数の遺伝子(例えば、5S RNA、tRNA、7SL RNAおよびU6 snRNA)にしか見られない。他のRNAポリメラーゼIIIプロモーターとは異なり、III型プロモーターは、いかなる遺伝子内配列も必要とせず、むしろ、−34および−24位におけるTATAボックス、−66〜−47の近位配列エレメントすなわちPSE、および場合によっては、−265〜−149位の遠位配列エレメントすなわちDSEを含む5’方向の配列を必要とする。好ましい実施形態において、III型RNAポリメラーゼIIIプロモーターは、ヒトまたはマウスのH1遺伝子およびU6遺伝子のプロモーターである。なおもより好ましい実施形態において、プロモーターは、2つのヒトまたはマウスのU6プロモーター、マウスU6プロモーターおよびヒトH1プロモーターまたはヒトU6プロモーターおよびマウスH1プロモーターである。本発明の文脈において、ERアルファ遺伝子プロモーターまたはサイクリンD1遺伝子プロモーターは、特に好適であり、ゆえに、乳房腫瘍、好ましくは、HER2+乳房腫瘍において目的の遺伝子を特異的に発現させるために特に好ましい。
【0234】
siRNAは、siRNAを形成する逆平行鎖がループまたはヘアピン領域によって接続されていることを特徴とするいわゆるshRNA(短ヘアピンRNA)から細胞内に産生され得る。shRNAは、プラスミドまたはウイルス、特にレトロウイルスによってコードされ得、プロモーターの支配下にある。shRNAの発現に適したプロモーターは、siRNAの発現についての上記のパラグラフにおいて示されたプロモーターである。
【0235】
siRNAおよびshRNAの発現に適したベクターとしては、原核生物発現ベクター(例えば、pUC18、pUC19、Bluescriptおよびそれらの誘導体、mp18、mp19、pBR322、pMB9、CoIEl、pCRl、RP4)、ファージベクターおよびシャトルベクター(例えば、pSA3およびpAT28)、酵母発現ベクター(例えば、2−ミクロンプラスミドタイプのベクター、インテグレーションプラスミド、YEPベクター、セントロメアプラスミドなど)、昆虫細胞発現ベクター(例えば、pACシリーズベクターおよびpVLシリーズベクター)、植物発現ベクター(例えば、pIBI、pEarleyGate、pAVA、pCAMBIA、pGSA、pGWB、pMDC、pMY、pOREシリーズベクターなど)およびウイルスベクターベース(アデノウイルス、アデノウイルス随伴ウイルスならびにレトロウイルス、特にレンチウイルス)の高等真核生物細胞発現ベクターまたは非ウイルスベクター(例えば、pcDNA3、pHCMV/Zeo、pCR3.1、pEFl/His、pIND/GS、pRc/HCMV2、pSV40/Zeo2、pTRACER−HCMV、pUB6/V5−His、pVAXl、pZeoSV2、pCI、pSVLおよびpKSV−10、pBPV−1、pML2dおよびpTDTl)が挙げられる。好ましい実施形態において、ベクターは、レンチウイルスベクターである。
【0236】
本発明のsiRNAおよびshRNAは、当業者に公知の一連の技法を用いて得ること
ができる。siRNAをデザインするための基礎と考えられるヌクレオチド配列の領域は、限定的でなく、それは、コード配列(開始コドンと終止コドンの間)の領域を含み得るか、またはあるいは、好ましくは、25〜50ヌクレオチド長で、開始コドンに対して3’方向の任意の位置の非翻訳5’または3’領域の配列を含み得る。siRNAをデザインする1つの方法は、AA(N19)TTモチーフの識別(ここで、Nは、MAF遺伝子配列内の任意のヌクレオチドであり得る)および高G/C含有量を有するそれらのモチーフの選択を含む。上記モチーフが見つからない場合、NA(N21)モチーフ(ここで、Nは、任意のヌクレオチドであり得る)を識別することができる。
【0237】
MAF特異的siRNAには、WO2005046731に記載されているsiRNAが含まれ、その鎖のうちの一方は、ACGGCUCGAGCAGCGACAA(配列番号6)である。他のMAF特異的siRNA配列としては、CUUACCAGUGUGUUCACAA(配列番号7)、UGGAAGACUACUACUGGAUG(配列番号8)、AUUUGCAGUCAUGGAGAACC(配列番号9)、CAAGGAGAAAUACGAGAAGU(配列番号10)、ACAAGGAGAAAUACGAGAAG(配列番号11)およびACCUGGAAGACUACUACUGG(配列番号12)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0238】
DNA酵素
他方で、本発明は、本発明のMAF遺伝子の発現を阻害するDNA酵素の使用も企図する。DNA酵素は、アンチセンス技術とリボザイム技術の両方の機構的な特色のいくつかを組み込んでいる。DNA酵素は、アンチセンスオリゴヌクレオチドと同様の特定の標的核酸配列を認識するが、それにもかかわらず、リボザイムと同様に触媒性であり、標的核酸を特異的に切断するように、デザインされる。
【0239】
リボザイム
活性が阻害されるべきであるMAFをコードするmRNAの翻訳を妨げるために標的mRNAの転写産物を触媒的に切断するためにデザインされたリボザイム分子もまた、使用され得る。リボザイムは、特定のRNAの切断を触媒することができる酵素的RNA分子である(概説として、Rossi,Current Biology 4:469−471,1994を参照のこと)。リボザイムの作用機序は、相補的な標的RNAへのリボザイム分子配列の特異的なハイブリダイゼーションとその後のエンドヌクレアーゼによる切断事象を含む。リボザイム分子の組成は、好ましくは、標的mRNAに相補的な1つまたは複数の配列およびmRNAの切断を担う周知の配列または機能的に等価な配列を含む(例えば、米国特許第5093246号を参照のこと)。
【0240】
本発明において使用されるリボザイムは、エンドリボヌクレアーゼRNAであるハンマーヘッド型リボザイム(本明細書中以後、「Cech型リボザイム」)(Zaugら、Science 224:574−578,1984を含む。
【0241】
リボザイムは、改変されたオリゴヌクレオチド(例えば、安定性、標的化などを改善するように改変されたオリゴヌクレオチド)によって形成され得、そしてそれらはインビボで標的遺伝子を発現する細胞に分配されるべきである。好ましい分配方法は、トランスフェクトされた細胞が、内因性の標的メッセンジャーを破壊して翻訳を阻害するのに十分な量のリボザイムを産生するように、強力な構成的pol IIIまたはpol IIプロモーターの支配下においてリボザイムを「コードする」DNA構築物を使用することを含む。リボザイムは、触媒的であるので、他のアンチセンス分子とは異なり、その効率のために、低い細胞内濃度しか必要ない。
【0242】
阻害性抗体
本発明の文脈において、「阻害性抗体」は、c−Mafタンパク質に特異的に結合して、上記タンパク質の機能の1つまたは複数、好ましくは、転写に関連する機能を阻害することができる任意の抗体と理解される。それらの抗体は、当業者に公知である任意の方法(そのうちのいくつかが上で述べられた)を使用して、調製され得る。したがって、ポリクローナル抗体は、阻害されるべきタンパク質で動物を免疫することによって調製される。モノクローナル抗体は、Kohler,Milsteinら(Nature,1975,256:495)によって記載された方法を用いて調製される。本発明の文脈において、好適な抗体としては、可変抗原結合領域および定常領域を含むインタクトな抗体、「Fab」、「F(ab’)2」および「Fab’」、Fv、scFvフラグメント、ダイアボディ、二重特異性抗体、アルファボディ、シクロペプチドおよびステープルドペプチドが挙げられる。いったん、c−Mafタンパク質結合能を有する抗体が同定されたら、このタンパク質の活性を阻害することができる抗体が、阻害剤識別アッセイを用いて選択される。
【0243】
阻害性ペプチド
本明細書中で使用されるとき、用語「阻害性ペプチド」とは、上で説明されたようにc−Mafタンパク質に結合してその活性を阻害することができる、すなわち、c−Mafの遺伝子転写を活性化させることができることを妨げる、ペプチドのことを指す。
【0244】
ネガティブc−Mafドミナント
MAFファミリーのタンパク質は、ホモ二量体化およびAP−1ファミリーの他のメンバー(例えば、FosおよびJun)とのヘテロ二量体化をすることができるので、c−Maf活性を阻害する1つの方法は、c−Mafと二量体化することができるが転写を活性化させる能力を欠くネガティブドミナントの使用によるものである。したがって、ネガティブc−Mafドミナントは、細胞に存在し、トランス活性化ドメイン(例えば、mafK、mafF、mafgおよびpi8)を含むアミノ末端の3分の2を欠く、任意の小さいmafタンパク質であり得る(Fujiwaraら(1993)Oncogene 8,2371−2380;Igarashiら(1995)J.Biol.Chem.270,7615−7624;Andrewsら(1993)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 90,11488−11492;Kataokaら(1995)Mol.Cell.Biol.15,2180−2190)(Kataokaら(1996)Oncogene 12,53−62)。
【0245】
あるいは、ネガティブc−Mafドミナントには、他のタンパク質と二量体化する能力を維持しているが転写を活性化する能力を欠くc−Mafバリアントが含まれる。これらのバリアントは、例えば、タンパク質のN末端に位置するc−Mafトランス活性化ドメインを欠いているバリアントである。したがって、例証的な様式では、ネガティブc−Mafドミナントバリアントには、少なくともアミノ酸1〜122、少なくともアミノ酸1〜187または少なくともアミノ酸1〜257(米国特許第6274338号に記載されているようなヒトMAFのナンバリングを考慮することによって)が除去されているバリアントが含まれる。
【0246】
本発明は、ネガティブc−Mafドミナントバリアントと、標的細胞における発現に適したプロモーターの作動性の支配下のMafをコードするポリヌクレオチドとの両方の使用を企図する。本発明のポリヌクレオチド転写を制御するために使用され得るプロモーターは、構成的プロモーター、すなわち、基底レベルの転写を指示するプロモーター、または転写活性に外部のシグナルが必要である誘導性プロモーターであり得る。転写の制御に適した構成的プロモーターは、とりわけ、CMVプロモーター、SV40プロモーター、DHFRプロモーター、マウス乳腺腫瘍ウイルス(MMTV)プロモーター、1a伸長因子(EF1a)プロモーター、アルブミンプロモーター、ApoA1プロモーター、ケラチンプロモーター、CD3プロモーター、免疫グロブリン重鎖または軽鎖プロモーター、ニューロフィラメントプロモーター、ニューロン特異的エノラーゼプロモーター、L7プロモーター、CD2プロモーター、ミオシン軽鎖キナーゼプロモーター、HOX遺伝子プロモーター、チミジンキナーゼプロモーター、RNAポリメラーゼIIプロモーター、MyoD遺伝子プロモーター、ホスホグリセリン酸キナーゼ(PGK)遺伝子プロモーター、低密度リポタンパク質(LDL)プロモーター、アクチン遺伝子プロモーターである。好ましい実施形態において、トランス活性化因子の発現を制御するプロモーターは、PGK遺伝子プロモーターである。好ましい実施形態において、本発明のポリヌクレオチド転写を制御するプロモーターは、T7ファージのRNAポリメラーゼプロモーターである。
【0247】
好ましくは、本発明の文脈において使用され得る誘導性プロモーターは、誘導剤(inducer agent)の非存在下ではゼロまたは無視できる基底発現を示す誘導剤に応答するプロモーターであり、3’位に位置する遺伝子の活性化を促進することができる。誘導剤のタイプに応じて、誘導性プロモーターは、Tet on/offプロモーター(Gossen,M.and H.Bujard(1992)Proc.Natl.Acad.Sci.USA,89:5547−5551;Gossen,M.ら、1995,Science 268:1766−1769;Rossi,F.M.V.and H.M.Blau,1998,Curr.Opin.Biotechnol.9:451−456);Pip on/offプロモーター(米国特許第6287813号);抗黄体ホルモン依存性プロモーター(US2004132086)、エクジソン依存性プロモーター(Christophersonら、1992,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,89:6314−6318;Noら、1996,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,93:3346−3351,Suhrら、1998,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,95:7999−8004およびWO9738117)、メタロチオネイン依存性プロモーター(WO8604920)およびラパマイシン依存性プロモーター(Riveraら、1996,Nat.Med.2:1028−32)として分類される。
【0248】
ネガティブc−Mafドミナントバリアントをコードするポリヌクレオチドの発現に適したベクターとしては、原核生物発現ベクター由来のベクター(例えば、pUC18、pUC19、Bluescriptおよびそれらの誘導体、mp18、mp19、pBR322、pMB9、ColEl、pCRl、RP4)、ファージおよびシャトルベクター(例えば、pSA3およびpAT28)、酵母発現ベクター(例えば、2−ミクロンタイプのプラスミドベクター、インテグレーションプラスミド、YEPベクター、セントロメアプラスミドなど)、昆虫細胞発現ベクター(例えば、pACシリーズベクターおよびpVLシリーズベクター)、植物発現ベクター(例えば、pIBI、pEarleyGate、pAVA、pCAMBIA、pGSA、pGWB、pMDC、pMY、pOREシリーズベクターなど)およびウイルスベクターベース(アデノウイルス、アデノウイルス随伴ウイルスならびにレトロウイルスおよび特にレンチウイルス)の高等真核生物細胞発現ベクターまたは非ウイルスベクター(例えば、pSilencer 4.1−CMV(Ambion)、pcDNA3、pcDNA3.1/hyg pHCMV/Zeo、pCR3.1、pEFl/His、pIND/GS、pRc/HCMV2、pSV40/Zeo2、pTRACER−HCMV、pUB6/V5−His、pVAXl、pZeoSV2、pCI、pSVLおよびpKSV−10、pBPV−1、pML2dおよびpTDTl)が挙げられる。
【0249】
小分子
本発明における使用に適した他のc−Maf阻害性化合物としては以下が挙げられる:
【表1-1】

【表1-2】

【表1-3】

【表1-4】

【表1-5】
【0250】
他のc−Mafインヒビターは、特許出願WO2005063252(その全体が本明細書中に参照により援用される)に記載されている(例えば、以下の表(表2)に示されるもの)。
【表2-1】

【表2-2】

【表2-3】
【0251】
好ましい実施形態において、骨転移は、溶骨性転移である。
【0252】
c−Maf阻害剤は、代表的には、薬学的に許容され得るキャリアとともに投与される。
【0253】
用語「キャリア」とは、希釈剤または賦形剤のことを指し、それによって、活性成分が投与される。そのような薬学的キャリアは、滅菌された液体(例えば、水および油(石油、動物、植物または合成起源のものを含む(例えば、落花生油、大豆油、鉱油、ゴマ油など)))であり得る。特に注射可能な溶液用の、水または食塩水溶液ならびにデキストロース水溶液およびグリセロール水溶液が、キャリアとして使用されるのが好ましい。好適な薬学的キャリアは、E.W.Martin,1995によって「Remington’s Pharmaceutical Sciences」に記載されている。好ましくは、本発明のキャリアは、州政府もしくは連邦政府の規制当局によって承認されたものであるか、または米国薬局方、もしくは動物、より具体的には人間におけるその使用について一般に認識されている他の薬局方に列挙されているものである。
【0254】
本発明の薬学的組成物の所望の薬学的剤形を製造するために必要なキャリアおよび補助物質は、他の因子のなかでも、選択される薬学的剤形に依存する。薬学的組成物の前記薬学的剤形は、当業者に公知の従来の方法に従って製造されるだろう。活性成分を投与するための種々の方法、使用されるべき賦形剤およびそれらを生成するためのプロセスの概説は、「Tratado de Farmacia Galenica」,C.Fauli i Trillo,Luzan 5,S.A.1993 Editionに見られる。薬学的組成物の例としては、経口投与、局所投与または非経口投与用の、任意の固体組成物(錠剤、丸剤、カプセル剤、顆粒剤など)または液体組成物(溶液、懸濁液またはエマルジョン)が挙げられる。さらに、薬学的組成物は、必要であると見なされる場合、安定剤、懸濁剤、保存剤、界面活性剤などを含み得る。
【0255】
医薬において使用するために、c−Maf阻害剤は、単離されたものとして、またはさらなる活性剤とともに、プロドラッグ、塩、溶媒和化合物もしくは包接化合物の形態で見出され得、薬学的に許容され得る賦形剤とともに製剤化され得る。本発明におけるその使用にとって好ましい賦形剤としては、糖、デンプン、セルロース、ゴムおよびタンパク質が挙げられる。特定の実施形態において、本発明の薬学的組成物は、固体の薬学的剤形(例えば、錠剤、カプセル剤、丸剤、顆粒剤、坐剤、液体の形態を得るために再構成され得る滅菌された結晶または無定形固体など)、液体の薬学的剤形(例えば、溶液、懸濁液、エマルジョン、エリキシル剤、ローション、軟膏など)または半固体の薬学的剤形(ゲル、軟膏、クリームなど)として製剤化されるだろう。本発明の薬学的組成物は、経口経路、静脈内経路、筋肉内経路、動脈内経路、髄内(intramedularry)経路、鞘内経路、心室内経路(intraventricular router)、経皮的経路、皮下経路、腹腔内経路、鼻腔内経路、腸管経路、局所経路、舌下経路または直腸経路が挙げられるがこれらに限定されない任意の経路によって投与され得る。活性成分を投与するための種々の方法、使用されるべき賦形剤およびそれらの製造プロセスの概説は、Tratado de Farmacia Galenica,C.Fauli i Trillo,Luzan 5,S.A.,1993 EditionおよびRemington’s Pharmaceutical Sciences(A.R.Gennaro,Ed.),20th edition,Williams & Wilkins PA,USA(2000)に見られる。薬学的に許容され得るキャリアの例は、当該分野において公知であり、それらとしては、リン酸緩衝食塩水溶液、水、エマルジョン(例えば、油/水エマルジョン)、種々のタイプの湿潤剤、滅菌された溶液などが挙げられる。前記キャリアを含む組成物は、当該分野で公知の従来のプロセスによって製剤化され得る。
【0256】
核酸(siRNA、siRNAもしくはshRNAをコードするポリヌクレオチド、またはネガティブMAFドミナントをコードするポリヌクレオチド)が投与される場合、本発明は、前記核酸を投与するために個々に調製された薬学的組成物を企図する。その薬学的組成物は、前記裸の核酸、すなわち、身体のヌクレアーゼによる分解から核酸を保護する化合物の非存在下の核酸を含み得、それは、トランスフェクションのために使用される試薬に関連する毒性が排除されるという利点を必要とする。裸の化合物に適した投与経路としては、血管内経路、腫瘍内経路、頭蓋内経路、腹腔内経路、脾臓内経路、筋肉内経路、網膜下経路、皮下経路、粘膜経路、局所経路および経口経路が挙げられる(Templeton,2002,DNA Cell Biol.,21:857−867)。あるいは、それらの核酸は、コレステロールに結合体化された、または細胞膜を通過して転座を促進することができる化合物(例えば、HIV−1 TATタンパク質由来のTatペプチド、D.melanogasterアンテナペディアタンパク質のホメオドメインの3番目のらせん、単純ヘルペスウイルスVP22タンパク質、アルギニンオリゴマー、およびWO07069090に記載されているようなペプチド)に結合体化された、リポソームの一部を形成して、投与され得る(Lindgren,A.ら、2000,Trends Pharmacol.Sci,21:99−103、Schwarze,S.R.ら、2000,Trends Pharmacol.Sci.,21:45−48、Lundberg,Mら、2003,Mol Therapy 8:143−150およびSnyder,E.L.and Dowdy,S.F.,2004,Pharm.Res.21:389−393)。あるいは、そのポリヌクレオチドは、アデノ随伴ウイルスまたはレトロウイルス(例えば、マウス白血病ウイルス(MLV)またはレンチウイルス(HIV、FIV、EIAV)に基づくウイルス)において、プラスミドベクターまたはウイルスベクター、好ましくは、アデノウイルスベースのベクターの一部を形成して、投与され得る。
【0257】
c−Maf阻害剤またはそれらを含む薬学的組成物は、体重1キログラムあたり10mg未満、好ましくは、体重1kgあたり約、約2、約1、約0.5、約0.1、約0.05、約0.01、約0.005、約0.001、約0.0005、約0.0001、約0.00005または約0.00001mg未満の用量で投与され得る。単位用量は、注射、吸入または局所投与によって投与され得る。
【0258】
用量は、処置される状態の重症度および応答に依存し、それは、数日間〜数ヶ月間またはその状態が鎮静するまで、変動し得る。患者の身体におけるその薬剤の濃度を定期的に測定することによって、最適な投与量が決定され得る。動物モデルにおける事前のインビトロまたはインビボアッセイによって得られるEC50値から、最適な用量が決定され得る。単位用量は、1日に1回または1日に1回未満、好ましくは、約2日ごと、約4日ごと、約8日ごとまたは約30日ごとに1回未満で投与され得る。あるいは、開始用量の後、1回または数回の維持用量(通常、開始用量よりも少ない量)を投与することが可能である。維持レジメンは、約0.01μg〜約1.4mg/kg体重/日、例えば、約10、約1、約0.1、約0.01、約0.001または約0.00001mg/kg体重/日の用量範囲での患者の処置を含み得る。維持用量は、好ましくは、約5日ごと、約10日ごとまたは約30日ごとにせいぜい1回投与される。処置は、患者が罹患している障害のタイプ、その重症度および患者の状態に従って変動する時間にわたって継続されなければならない。処置の後、その疾患がその処置に応答しない場合、用量を増加すべきかどうか、またはその疾患の改善がみとめられる場合もしくは望まれない副作用がみとめられる場合、用量を減少させるかどうかを決定するために、患者の進行をモニターしなければならない。
【0259】
上昇したMafレベルを有する、骨転移を伴う乳がん患者における骨分解の処置または予防
別の態様において、本発明は、HER2+乳がんに罹患しており、かつ転移サンプルにおいてコントロールサンプルと比較して上昇したMAFレベルを有する被験体における骨転移の処置において使用するための、c−Maf阻害剤、または骨分解を回避するかもしくは予防することができる薬剤に関する。
【0260】
別の態様において、本発明は、HER2+乳がんに罹患しており、かつ転移サンプルにおいてコントロールサンプルと比較して上昇したMAFレベルを有する被験体における骨転移の処置のための医薬を製造するための、c−Maf阻害剤、または骨分解を回避するかもしくは予防することができる薬剤の使用に関する。
【0261】
あるいは、本発明は、HER2+乳がんに罹患しており、かつ転移サンプルにおいてコントロールサンプルと比較して上昇したMAFレベルを有する被験体における分解の予防および/または処置の方法に関し、その方法は、c−Maf阻害剤、または骨分解を回避するためもしくは予防するための薬剤を前記被験体に投与する工程を含む。
【0262】
特定の実施形態において、骨転移は、溶骨性転移である。
【0263】
本発明に記載される治療方法に適した、c−Maf阻害剤、および骨分解を回避するかまたは予防することができる薬剤は、個別化治療法の文脈において、上で詳細に記載されている。
【0264】
参照サンプルまたはコントロールサンプルは、転移に罹患していないHER2+乳がんを有する被験体のサンプル、または転移に罹患していないHER2+乳がんを有する被験体の生検サンプルの腫瘍組織コレクションにおいて計測されたMAF遺伝子発現レベルの中央値に対応するサンプルである。
【0265】
MAFレベルがコントロールサンプルと比較して上昇しているかどうかを決定するためまたは定量するための方法は、本発明の第1の方法に関して詳細に記載されてきたが、骨分解を回避するためまたは予防するための薬剤にも等しく適用可能である。
【0266】
あるいは、骨分解を回避するためまたは予防するための、上で述べられた薬剤のうちの2つ以上の薬剤が組合わされることにより転移が処置されるおよび/もしくは予防される組合わせ処置が行われ得るか、または前記薬剤が、他のサプリメント(例えば、カルシウムまたはビタミンD)もしくはホルモンと組合わされ得る。
【0267】
骨分解を回避するためまたは予防するための薬剤は、代表的には、薬学的に許容され得るキャリアとともに投与される。用語「キャリア」およびキャリアのタイプは、c−Maf阻害剤、ならびにそれらが投与され得る形態および用量について上で定義されてきたが、骨分解を回避するためまたは予防するための薬剤にも等しく適用可能である。
【0268】
以下の例は、本発明を例証するものであって、その範囲を限定しない。
【0269】
本発明のキット
別の態様において、本発明は、HER2+乳がんに罹患している被験体における前記がんの骨転移を予測するためのキットに関し、そのキットは:a)前記被験体のサンプル中のMAFの発現レベルを定量するための手段;およびb)前記サンプル中の定量されたMAFの発現レベルを参照MAF発現レベルと比較するための手段を備える。
【0270】
別の態様において、本発明は、HER2+乳がんからの骨転移に罹患している被験体の臨床転帰を予測するためのキットに関し、そのキットは:a)前記被験体のサンプル中のMAFの発現レベルを定量するための手段;およびb)前記サンプル中の定量されたMAFの発現レベルを参照MAF発現レベルと比較するための手段を備える。
【0271】
別の態様において、本発明は、HER2+乳がんに罹患している被験体に対する治療を決定するためのキットに関し、そのキットは:a)前記被験体のサンプル中のMAFの発現レベルを定量するための手段;b)前記サンプル中の定量されたMAFの発現レベルを参照MAF発現レベルと比較するための手段;およびc)定量された発現レベルと参照発現レベルとの比較に基づいて、前記被験体において骨転移を予防するためおよび/または減少させるための治療を決定するための手段を備える。
【0272】
別の態様において、本発明は、i)HER2+乳がんに罹患している被験体のサンプル中のMAFの発現レベルを定量するための試薬、およびii)骨転移のリスクと相関するように予め決定されている1つまたは複数のMAF遺伝子発現レベル指標を備えるキットに関する。
【0273】
16q23および16q22−24遺伝子座の増幅および転座を含む前記被験体のサンプル中のMAFの発現レベルを定量するための手段は、先に詳細に記載された。
【0274】
好ましい実施形態において、発現を定量するための手段は、MAF遺伝子に特異的に結合および/または増幅するプローブおよび/またはプライマーのセットを含む。
【0275】
特定の実施形態において、乳がんは、HER2+乳がんである。
【0276】
本発明の方法の特定の実施形態のすべてが、本発明のキットおよびそれらの使用に適用可能である。
【0277】
乳がんに罹患している被験体のサンプルをタイプ分けするための方法
別の態様において、本発明は、乳がんに罹患している被験体のサンプルをタイプ分けするためのインビトロでの方法に関し、その方法は:
a)前記被験体からサンプルを提供する工程;
b)前記サンプル中のMAFの発現レベルを定量する工程;
c)定量されたMAFの発現レベルをMAF発現の所定の参照レベルと比較することによって前記サンプルをタイプ分けする工程;
を含み、ここで、前記タイプ分けは、前記被験体における骨転移のリスクに関する予後情報を提供する。
【0278】
16q23および16q22−24遺伝子座の増幅および転座を含む、前記被験体のサンプル中のMAFの発現レベルを定量するための手段は、先に詳細に記載された。
【0279】
特定の実施形態において、乳がんは、HER2+乳がんである。
【0280】
好ましい実施形態において、サンプルは、腫瘍組織サンプルである。
【0281】
乳がんに罹患している被験体を分類するための方法
別の態様において、本発明は、乳がんに罹患している被験体をコホートに分類するための方法に関し、その方法は:a)前記被験体のサンプル中のMAFの発現レベルを決定する工程;b)前記サンプル中のMAFの発現レベルをMAF発現の所定の参照レベルと比較する工程;およびc)そのサンプル中のMAFの前記発現レベルに基づいて、前記被験体をコホートに分類する工程を含む。
【0282】
16q23および16q22−24遺伝子座の増幅および転座を含む、前記被験体のサンプル中のMAFの発現レベルを定量するための手段は、先に詳細に記載された。
【0283】
特定の実施形態において、乳がんは、HER2+乳がんである。
【0284】
好ましい実施形態において、サンプルは、腫瘍組織サンプルである。
【0285】
好ましい実施形態において、前記コホートは、前記参照発現レベルと比較して、匹敵するMAF発現レベルを有すると定された少なくとも1つの他の個体を含む。
【0286】
別の好ましい実施形態において、前記サンプル中のMAFの前記発現レベルは、前記所定の参照レベルと比べて上昇しており、コホートのメンバーは、骨転移の上昇したリスクを有すると分類される。
【0287】
別の好ましい実施形態において、前記コホートは、臨床試験を行うためのコホートである。好ましい実施形態において、サンプルは、腫瘍組織サンプルである。
【実施例】
【0288】
実施例1
実験手順およびデータセット
乳がん原発腫瘍サンプルコホート:
使用した乳がんコホートは、ステージI、IIまたはIII BCを有し、転移部位を含め、臨床的な追跡の注釈が付けられている患者由来の334個より多くの原発乳がん検体から構成された(Rojo F.,Ann Oncol(2012)23(5):1156−1164)。組織マイクロアレイを標準的な手順に従って処理した。乳がん腫瘍を、ER+、トリプルネガティブおよびHER2+を含めたさまざまなサブタイプに分類し、次いで、これらの腫瘍におけるMAF(MAF)発現および16q22−24増幅が目的のサブタイプにおける骨転移事象と相関するかを試験するために、適切な統計解析を行った。
【0289】
このコホートにおける統計解析は、以下の前提に基づいた:
【0290】
A)累積発生率
【0291】
図1bについて、コックス原因特異的比例ハザードモデル(Cox cause-specific proportional hazard model)に競合事象(任意の時間での骨転移前の死亡)をあてはめ、尤度比検定を行った後にp値を得た。
【0292】
B)ベースラインの特徴の比較(表S1)。
【0293】
齢の差を、スチューデントt検定で検定した。すべての他の変数を、フィッシャー正確確率検定で検定した。
【0294】
FISH決定による16q22−24 DNAゲノム増幅の骨転移を予測する予後診断能力の検証
16q22−24ゲノム増幅が骨転移リスクを特異的に予測する能力をさらに検証するために、本発明者らは、ステージI、IIまたはIIIのBCを有し、追跡の注釈が付けられている患者由来の334個の原発性乳がん検体から構成されるセットにおいて、FISHによって(本発明者らは、16q23ゲノム領域を決定する商業的に入手可能な診断プローブであるIGH/MAF Abbot Vysisプローブを使用し、セントロメアの16番染色体プローブである16q11.2(CEP16)を使用して16q23のコピー数を標準化した)、16q22−24染色体領域ゲノムの増大を解析した(Rojo F.,Ann Oncol(2012)23(5):1156−1164)。組織マイクロアレイを標準的な手順に従って処理した。スライドを、MAF(16q23)とともにインキュベートし、そしてCEP16プローブを使用して独立して染色した。DAPI対比染色を適用し、適切な顕微鏡を用いて画像を取得した。腫瘍1個あたり平均50細胞に基づき、16q23/CEP16<1.5 FISHを陰性とし、16q23/CEP16>1.5 FISHを陽性とすることにしたがって上記患者を階層化した(図1a)。
【0295】
ステージI、IIおよびIIIのBCヒト原発腫瘍セット(n=334)における、任意の時点での骨転移(連続した線)および骨における再発前の死亡(破線)についての累積発生率のプロット(図1b)を決定し、統計的有意性が示された。
【0296】
MAF発現レベルに基づいてHER2+乳がんと診断された被験体における処置レジメンの決定
腫瘍組織サンプルを、HER2+乳がんを有すると診断された被験体から得る。そのサンプルを、組織の薄切片に切断し、パラフィンに包埋する。各パラフィン切片をスライドの上に載せる。そのスライドを抗MAF抗体とともにインキュベートする。MAFに結合した抗体の可視化および検出のために、蛍光色素と結合体化された抗体を使用する。その蛍光色素に励起ビームを提供することによって、スライドを可視化する。蛍光顕微鏡によって蛍光シグナルの画像を得る。その腫瘍サンプル中の蛍光シグナルを参照サンプルの蛍光シグナルと比較することによって、腫瘍サンプルにおけるMAFの相対的な発現レベルを得る。腫瘍サンプルにおける強度は、参照サンプルにおける強度と相関し、ここで、参照サンプルと比べて腫瘍サンプルにおけるより高い強度は、原発性乳がんを有する被験体の骨への転移の上昇したリスクと相関する。あるいは、16q22−24遺伝子座、16q23遺伝子座またはMAF遺伝子の増幅または転座が、インサイチュハイブリダイゼーション技法または類似のものを用いて決定される。
【0297】
上昇した骨転移のリスクの予後診断に基づいて、骨転移に対する予防的処置として抗RANKL抗体デノスマブを被験体に投与する。120mgのデノスマブを6ヶ月間にわたって1ヶ月に1回、被験体の皮下に(SC)投与する。次の4年半にわたって、120mgのSCを3ヶ月ごとに投与する。5年間にわたって、経口カルシウム(少なくとも500mg)およびビタミンD(少なくとも400IU)。5年後、被験体は、骨転移のいかなる証拠もない。骨転移のリスクの上昇がないとの予後診断に基づいて、患者は、この抗RANKL抗体を投与されない。
【0298】
本明細書中に記載される例および実施形態は、単なる例証目的であり、それを考慮した様々な改変または変更が、当業者に示唆され、本願の精神および範囲とともに含められるべきであることが理解される。
【0299】
本明細書に引用されたすべての刊行物、特許、特許出願、インターネットサイトおよびアクセッション番号/データベース配列(ポリヌクレオチド配列とポリペプチド配列の両方を含む)は、各個別の刊行物、特許、特許出願、インターネットサイトまたはアクセッション番号/データベース配列が、参照により援用されると具体的かつ個別に示されたのと同程度にすべての目的のためにそれらの全体が本明細書中に参照により援用される。
【表S1】
図1
【配列表】
[この文献には参照ファイルがあります.J-PlatPatにて入手可能です(IP Forceでは現在のところ参照ファイルは掲載していません)]